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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1116191
異議申立番号 異議2003-71798  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-14 
確定日 2005-04-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3366644号「部分的成長ホルモン不感受性症候群の治療」の請求項1〜11、14〜17に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3366644号の請求項1〜11、14〜17に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3366644号の請求項1〜17に係る発明は、平成7年3月24日(パリ条約による優先権主張 1994年4月7日 米国)を国際出願日として出願され、平成14年11月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、日本ケミカルリサーチ株式会社により特許異議の申立てがされたものである。

2.特許異議申立の概要
特許異議申立人日本ケミカルリサーチ株式会社は、本件請求項1〜6、8〜10及び15〜17に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定に該当し(理由1)、また、請求項1〜11、14〜17に係る発明は甲第1号証〜甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である(理由2)から、これら請求項に係る発明の特許は取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証〜甲第10号証を提出している。

甲第1号証(Acta Paediatr Suppl 391;82-88,(1993))
甲第2号証(Paediatr Suppl 391:75-8 (1993))
甲第3号証(Journal of Clinical Entocrinology and Metabolism,71(2),269-273(1990))
甲第4号証(Clin Pediatr Endocrinl,2(Suppl 1):33-43(1993))
甲第5号証(The Journal of Pediatrics,123(2):215-222(1993))
甲第6号証(Acta Paediatr Scand,(Suppl)366:24-26(1990))
甲第7号証(「南山堂 医学大事典」第17版;株式会社南山堂 1990年2月1日発行 第2008頁)
甲第8号証(「ホルモンと臨床」 Vol.42,No.1:73〜79頁)
甲第9号証(Clinical Endocrinology Vol.37,249-253 (1992))
甲第10号証(特表平3-503764号公報)

3.本件発明
本件請求項に係る発明のうち、異議申立のあった請求項1〜11、14〜17に係る発明は下記のとおりである。

【請求項1】身長が年齢および性別のわりに標準より-2標準偏差より低く、高親和性成長ホルモン結合タンパク質の血清レベルが標準レベルより少なくとも2標準偏差低く、IGF-Iの血清レベルが標準平均レベルより低く、そして成長ホルモンの平均または最大刺激血清レベルが少なくとも標準であることを特徴とする部分的成長ホルモン不感受性症候群を有するが、ラロン症候群(Laron syndrome)ではないヒト患者の成長速度を高めるための、有効量の成長ホルモンまたは有効量の成長ホルモンおよびIGF-Iならびに製剤学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】成長ホルモンの有効量が0.2mg/kg/週より高いものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】成長ホルモンの有効量が0.25mg/kg/週より高いものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】成長ホルモンの有効量が0.3mg/kg/週に等しいかまたはそれより高いものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】1日に1回投与する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】皮下注射により投与する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】pH7.4〜7.8で製剤化する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】IGF-Iの投与量が50〜240μg/kg/日の用量である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】1日に1回または2回投与する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】皮下注射により投与する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】pH5〜6で製剤化する、請求項1に記載の医薬組成物。

【請求項14】前記患者が異質GHR遺伝子欠損を有する、請求項1または12に記載の医薬組成物。
【請求項15】身長が年齢および性別のわりに標準より-2標準偏差より低く、高親和性成長ホルモン結合タンパク質の血清レベルが標準レベルより少なくとも2標準偏差低く、IGF-Iの血清レベルが標準平均レベルより低く、そして成長ホルモンの平均または最大刺激血清レベルが少なくとも標準であることを特徴とする部分的成長ホルモン不感受性症候群を有するが、ラロン症候群ではないヒト患者に使用するというラベルを付した、有効量の成長ホルモンまたは有効量の成長ホルモンおよびIGF-Iならびに製剤学的に許容される担体を含んでなる、前記患者の成長速度を高めるための請求項1〜14のいずれかに記載された医薬組成物。
【請求項16】身長が年齢および性別のわりに標準より-2標準偏差より低く、高親和性成長ホルモン結合タンパク質の血清レベルが標準レベルより少なくとも2標準偏差低く、IGF-Iの血清レベルが標準平均レベルより低く、そして成長ホルモンの平均または最大刺激血清レベルが少なくとも標準であることを特徴とする部分的成長ホルモン不感受性症候群を有するが、ラロン症候群ではないヒト患者の成長速度を高めるための、有効量の成長ホルモンまたは有効量の成長ホルモンおよびIGF-Iならびに製剤学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物の製造における成長ホルモンまたは成長ホルモンおよびIGF-Iを使用する方法。
【請求項17】(a)有効量の成長ホルモンまたは有効量の成長ホルモンおよびIGF-Iならびに製剤学的に許容される担体、および(b)身長が年齢および性別のわりに標準より-2標準偏差より低く、高親和性成長ホルモン結合タンパク質の血清レベルが標準レベルより少なくとも2標準偏差低く、IGF-Iの血清レベルが標準平均レベルより低く、そして成長ホルモンの平均または最大刺激血清レベルが少なくとも標準であることを特徴とする部分的成長ホルモン不感受性症候群を有するが、ラロン症候群ではないヒト患者に使用することを明記したラベル、を含んでなる、前記患者の成長速度を高めるための請求項1〜14のいずれかに記載された医薬組成物の製造における成長ホルモンまたは成長ホルモンおよびIGF-Iを使用する方法。

4.当審の判断
(1) 理由1について
1.1 請求項1に係る発明について

甲第1号証には、身長が標準から-2.5標準偏差低く、刺激GHレベルが20mIU/l(10μg/ml)である327人の特発性低身長(以下、ISSという。)患者に0.56IU/Kg/週の成長ホルモン(以下、GHという。)治療を行ったところ、理由は不明であるが一部の患者では期待以上の良い反応が見られたが、他の患者は予想以下の成長しか示さなかったことが記載されている。しかし、患者の高親和性成長ホルモン結合性蛋白質(以下、GHBPという。)レベル及びIGF-Iのレベルについては何ら記載されていない。

甲第2号証には、ISSと診断された271人の患者をGHで治療したことが記載されているが、患者のGHBPレベル及びIGF-Iのレベルについては何ら記載されていない。

甲第3号証には、甲第1号証及び第2号証と同様に、ISS患者のGH投与による治療について記載されているが、ISS患者のGHBPの血清レベル及びIGF-Iの血清レベルについては、何ら記載されていない。

甲第4号証には、非内分泌性の低身長患者をGH治療したこと、治療を受けた患者は低身長(標準より-2標準偏差低く)GH刺激応答は正常であるが、ISS患者群とFSS(通常の低身長)患者群等との間でGH投与による効果に有意な差がなかったことが記載されている。ISS患者のIGF-Iのレベルは86.0±34.9 ng/ml(36頁Table 4)で、IGF-Iは標準平均レベルより低いものと認められるが、IGF-IレベルとGH治療効果との関係についても、GHBPレベルについても何ら記載されていない。

甲第5号証には、ISS患者を3年間GH治療した結果が記載されているが、GHBPレベルについては何ら記載されておらず、IGF-Iについては「思春期前に止まった被験者については、治療前の標準化された酸分離IGF-Iは、初年度成長応答と逆相関した。」(219頁15〜16行)と記載されているにとどまり、患者の治療前のIGF-Iレベルについては記載されていない。

甲第6号証には、ISS患者にGH治療を行ったことが記載されており、「治療前のインスリン様成長因子I(IGF-I)レベルは、しかしながら、治療中の成長速度と負の相関を示した。」(26頁7〜9行)と記載されているにすぎず、GH投与を受けたISS患者のGHBPレベルについても、治療前のIGF-Iレベルが標準平均以下であったか否かについても記載されていない。

このように、甲第1号証〜甲第6号証のいずれにもGH投与を受けた患者のGHBPの血清レベルについては何ら記載されておらず、IGF-Iレベルについては甲第4号証に記載されているにすぎない。

異議申立人は、甲第1号証〜3号証には、GHBPの血清レベルが標準レベルよりも-2標準偏差低い(以下、構成要件Bという。)及びIGF-Iの血清レベルが標準平均レベルより低い(以下、構成要件Cという。)を満たす患者をGH治療の対象から除外するとは記載されておらず、甲第4号証〜甲第6号証には構成要件Bを満たす患者をGH治療の対象から除外することは記載されていないから、甲第1号証〜甲第6号証にはこれらの構成要件に関係なくいずれのISS患者もGHの投与によって成長速度を高めることができたことが記載されている旨主張している。
しかし、本件出願(優先日)当時、ISS患者に対するGH治療により期待する効果が得られるか否かの結論はまだ得られていない状態であり(甲第5号証221頁左欄9〜22行等参照。)、また、ISS患者には上記構成要件B及びCを満たす患者が含まれることが当業者に自明であったとも認めることはできないから、甲第1号証〜甲第6号証において構成要件B及びCを満たすISS患者がGH投与により成長速度が高められたことが記載されているということはできない。

したがって、甲第1号証〜甲第6号証には、本件発明の構成に欠くことのできない事項である構成要件B及びCを満たすISS患者にGHを投与することが記載されていると認めることができないから、本件発明1は甲第1証〜甲第6号証に記載された発明ではない。

1.2 請求項2〜6、8〜10、15〜17に係る発明について

上記のとおり、請求項1に係る発明が甲第1号証〜第6号証に記載された発明でない以上、請求項1について更に限定を加えた発明や、請求項1の組成物の製造に関する発明であるこれらの請求項に係る発明も同様の理由で甲第1号証〜第6号証に記載された発明であるということはできない。

(2) 理由2について

2.1 請求項1に係る発明について

甲第7号証には、ラーロン(Laron)小人症が生長ホルモンに不感であることが記載されている。
甲第8号証には、正常男女の年齢別の血中のIGF-Iの値が記載されている。
甲第9号証には、身長が年齢および性別のわりに標準より-2標準偏差未満低く(正常の身長範囲から-3.7〜-2(平均身長±SEM -2.8±0.1SDS))、GHBPの血清レベルが有意に低く(125I-hGHの特異的結合が、正常値24.8±1.7%に対して、11.1±0.9%)、血漿IGF-Iレベルの平均値は正常(118±14μg/l)であり、正常なGH分泌を有する特発性低身長の子供にGHを投与したところ、成長速度、血漿IGF-Iレベル、GHBPレベルが増加したことから、ISSの子供群は、低レベルのGH結合タンパク質(及び恐らくGH受容体)を有し部分的なGH抵抗性を示すことが記載されている。
甲第10号証には、GH製剤がpH4〜8で製造されることが記載されている。

異議申立人は、甲第1号証〜第6号証には本件発明1の構成要件の全てが明示されていないとしても、甲第7号証の記載事項から、本件発明1の組成物による治療対象となる患者からラロン症候群を除くこと(構成要件F)は自明であり、甲第8号証に記載されたIGF-Iの値からみて甲第4号証における患者のIGF-Iは低値であること、また、甲第5号証及び甲第6号証には治療前のIGF-I濃度が低い患者の方が治療応答が大きいことが記載されているから構成要件Cを採用することは自明であって、甲第9号証の記載からGHBPレベルが極度に低い患者のGHによる治療が有効であったから構成要件Bを採用することも自明である旨主張している。

しかし、甲第9号証におけるGHBPに対する125I-hGHの特異的結合による数値は、血清GHBP濃度と関連する数値であると認められるが、表I(251頁)に示されるとおりGHBP特異的結合の数値に個人差があり、正常な思春期前の子供の値の平均値は示されているが標準偏差(SD)の値は示されていないから、表IにおけるGH投与を受けた個々の患者が構成要件Bを満たしているか否かは不明であり、構成要件Bを満たすISS患者がGHの投与により成長が促進されることが直ちに示唆されるということはできない。
また、甲第9号証には個々の患者のIGF-Iレベルが記載されておらず、治療を受けた患者の血漿IGF-Iレベルの平均値は正常であると記載されているから、GH治療を受けて成長が促進された患者が、構成要件Cを満たしているということもできない。

さらに、甲第1号証〜第10号証の記載事項を総合しても、構成要件B及びCの条件を満たすISS患者がGHの投与により成長が促進されることを導くことが容易であるということはできないから、本件発明1が、甲第1号証〜第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはではない。

2.2 請求項2〜11及び請求項14〜17に係る発明について
上記のとおり、請求項1に係る発明が、甲第1号証〜第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明でない以上、請求項1の発明について更に限定事項を加えた発明や、請求項1の組成物の製造に関する発明であるこれら請求項に係る発明も同様の理由で甲第1号証〜第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるということができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議申立人が主張する理由及び提出された証拠によって、本件請求項1〜11、14〜17に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に上記請求項に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-30 
出願番号 特願平7-526356
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A61K)
P 1 652・ 113- Y (A61K)
最終処分 維持  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 齋藤 恵
横尾 俊一
登録日 2002-11-01 
登録番号 特許第3366644号(P3366644)
権利者 ジェネンテック インコーポレイテッド
発明の名称 部分的成長ホルモン不感受性症候群の治療  
代理人 石井 貞次  
代理人 平木 祐輔  
代理人 早川 康  
代理人 大屋 憲一  
代理人 早坂 巧  
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