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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正を認める。無効としない H01R
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない H01R
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない H01R
管理番号 1116730
審判番号 無効2002-35395  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-09-20 
確定日 2004-11-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3266198号発明「センサシステム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人及び参加人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3266198号に係る発明は、平成12年3月31日に特許出願(優先権主張日平成11年10月25日)され、平成14年1月11日に特許権の設定登録がされ、その後の平成14年9月20日にサンクス株式会社より本件の特許請求の範囲の請求項1〜18に係る特許について特許無効の審判が請求され、これに対して被請求人より平成14年12月16日に答弁書が提出され、さらに、同じく本件の特許請求の範囲の請求項1〜18に係る特許につき、平成15年7月1日の口頭審理において、参加人本多通信工業株式会社が既に取下げた審判請求事件(無効2002-35411号)で主張する無効理由を当審により口頭で通知し、さらにまた、平成16年2月10日付で当審による無効の理由(以下、「当審による無効の理由」という。)が通知され、これに対して被請求人よりその指定期間内である平成16年3月10日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正請求について
(2-1)訂正事項
本件特許の出願の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書」という。)の訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)は、平成16年3月10日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)によると、次の訂正事項a〜dをその訂正の要旨とするものである。

(訂正事項a)
訂正前の特許請求の範囲の請求項17に、「複数のセンサ本体部を互いに隣接して整列配置すると共に、それらのセンサ本体部のそれぞれには、少なくとも信号線を含む電気コードをコネクタを介して接続してなり、前記センサ本体部と前記コネクタとは着脱自在であり、各コネクタには、センサ本体部に対する給電端子を設け、さらに、それらのコネクタ間には互いの給電端子同士を導通する着脱自在な接続具を設け、いずれかの前記コネクタに電気コード内の給電線を介して供給された電源を、コネクタ列を経由して他の前記コネクタの給電端子へと分配するようにしたセンサシステム。」とあるのを、
訂正後の特許請求の範囲の請求項16として、「複数のセンサ本体部を互いに隣接して整列配置すると共に、それらのセンサ本体部のそれぞれには、コネクタが着脱自在に設けられ、かつ個々のコネクタには、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部に対する給電端子と、該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており、個々のコネクタには、隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具がそれぞれ設けられており、いずれかの前記コネクタに電気コード内の給電線を介して供給された電源を、コネクタ列を経由して他の前記コネクタの給電端子へと分配するようにしたセンサシステム。」と訂正する。
(なお、後記訂正事項dにより、訂正前の請求項17の項番は、訂正後において請求項16に繰り上げられた。)

(訂正事項b)
特許請求の範囲の請求項1に、
「互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部と、それらのセンサ本体部のそれぞれに対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタとを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、前記センサ本体部には、内部電気回路に対する電源をコネクタ側から受け取るための受電端子を含むコネクタ対応接続口が設けられており、前記親コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、前記子コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各センサ本体部へと配電するようにしたセンサシステム。」とあるのを、
「互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部と、それらのセンサ本体部のそれぞれに対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタとを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、前記センサ本体部には、内部電気回路に対する電源をコネクタ側から受け取るための受電端子を含むコネクタ対応接続口が設けられており、前記親コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、前記子コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各センサ本体部へと配電するようにしたセンサシステム。」と訂正する。

(訂正事項c)
特許請求の範囲の請求項5に、「一列横隊において隣接するもの同士で着脱自在に結合可能であって、かつそれぞれ縦方向に沿ってセンサ本体部に対して着脱自在に結合可能である複数のコネクタを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、前記親コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、前記子コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各コネクタのセンサ本体部対応接続口へと配電するようにしたコネクタシステム。」とあるのを、「一列横隊において隣接するもの同士で着脱自在に結合可能であって、かつそれぞれ縦方向に沿ってセンサ本体部に対して着脱自在に結合可能である複数のコネクタを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、前記親コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、前記子コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各コネクタのセンサ本体部対応接続口へと配電するようにしたコネクタシステム。」と訂正する。

(訂正事項d)
訂正前の請求項6を削除し、残りの請求項の項番を順次繰り上げ、これに伴い、訂正後の請求項10〜12、請求項14〜15及び請求項17がそれぞれ引用する請求項の番号を順次繰り上げる。

(2-2)訂正の適否について
(2-2-1)訂正事項a〜cについて
訂正事項aは、当審による無効の理由のうちの理由1(特許法第36条第6項違反)において指摘したところの次の(イ)及び(ロ)の記載不備の点を明確化するものであることが明らかである。
(イ)請求項17に記載された「それらのセンサ本体部のそれぞれには、少なくとも信号線を含む電気コードをコネクタを介して接続してなり」点は、「個々のコネクタには、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードがそれぞれ設けられている」ことを意味するのか、あるいは、「それらのセンサ本体部のそれぞれには、」「いずれかのコネクタにのみ設けられたところの少なくとも信号線を含む電気コード」からの電気的接続が、単に「コネクタを介して接続」していることを意味するのかが明確に把握できず、その構成が不明確である。
(ロ)同請求項17に記載された「コネクタ間には互いの給電端子同士を導通する着脱自在な接続具を設け」の点は、「個々のコネクタには、隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具がそれぞれ設けられている」ことを意味するのか、あるいは、「コネクタ間に」「互いの給電端子同士を導通する着脱自在な接続具」が単に配置されていれば良い(この場合は、接続具として、例えば、単なる導線も想定できる)ことを意味するのかが明確に把握できず、その構成が不明確である。
そして、訂正事項aにより、上記(イ)については、「個々のコネクタには、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードがそれぞれ設けられている」ことを意味することが、また、上記(ロ)については、「個々のコネクタには、隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具がそれぞれ設けられている」ことを意味することが、明確化されたといえる。
また、訂正事項bは、当審による無効の理由のうちの理由1(特許法第36条第6項違反)において指摘したところの次の(ハ)の記載不備の点を明確化するものであることが明らかである。
(ハ)「本件発明1は、個々の親または子コネクタに、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードがそれぞれ設けられているものであるのか、あるいは、複数のセンサ本体部のそれぞれに、いずれかのコネクタ(例えば、親コネクタ)にのみ設けられたところの信号線を含む電気コードからの電気的接続が、単にコネクタ列を経由して接続しているものであるのかが明確に把握できず、その構成が不明確である。」
そして、訂正事項bにより、上記(ハ)については、個々の親または子コネクタに、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードがそれぞれ設けられているものであることが明確化されたといえる。
さらに、訂正事項cは、当審による無効の理由のうちの理由1(特許法第36条第6項違反)において指摘したところの次の(ニ)の記載不備の点を明確化するものであることが明らかである。
(ニ)「本件発明5は、個々の親または子コネクタに、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードがそれぞれ設けられているコネクタシステムであるのか、あるいは、上記センサ本体部のそれぞれに、いずれかのコネクタ(例えば、親コネクタ)にのみ設けられたところの信号線を含む電気コードからの電気的接続が、単にコネクタ列を経由して接続されるコネクタシステムであるのかが明確に把握できず、その構成が不明確である。」
そして、訂正事項cにより、上記(ニ)については、個々の親または子コネクタに、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードがそれぞれ設けられているコネクタシステムであることが明確化されたといえる。(ちなみに、当該明確化のための訂正に伴い、請求項6に記載されていた事項が請求項5に実質的に加えられることとなった。)
さらにまた、訂正事項a〜cが、本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものであることも明らかである。
なお、審判請求人は、平成16年6月28日付け弁駁書において、上記訂正事項aにつき、「個々のコネクタには、」「信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており」の点が、全てのコネクタに設けられた電気コードには信号線以外の給電線等が必ず含まれるという前提に基づき、本件特許明細書には「子コネクタには、信号線からなる電気コードしか設けられていない」という実施例しか記載されていないから、新規事項の追加に該当する旨を主張する。
しかしながら、訂正前の同請求項には「信号線を含む電気コードをコネクタを介して接続してなり」という記載があるとともに、同請求項は、訂正前後を通じてコネクタにつき、そもそも「親コネクタ」と「子コネクタ」とを表現上区別して規定していないのであるから、当該コネクタを専ら一方の「子コネクタ」に特定して理解するという解釈手法、いいかえれば、実施例に開示されたものと整合しないように敢えて理解するという解釈手法に基づく上記請求人の主張は、妥当性がなく採用できない。また、同様な理由から、訂正事項a〜cに関する訂正が認められないとする請求人の他の主張も採用できない。
また同様に、参加人は、平成16年6月28日付け弁駁書において、上述した訂正事項aにおける「個々のコネクタには、」「信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており」の点は、給電端子と電気コードはコネクタの一構成要素であることを特定したものとし、当該一構成要素である電気コードはコネクタ(のハウジング)内部に存在することになるという理解を前提として、発明の詳細な説明中にはこれに該当する実施例がないから、新規事項の追加に該当する旨を主張する。
しかしながら、訂正前後を通じて当該請求項には「いずれかの前記コネクタに電気コード内の給電線を介して供給された電源を、コネクタ列を経由して他の前記コネクタの給電端子へと分配する」との規定、すなわち「コネクタ」に「電気コード」を介して「電源」を供給するという規定があり、また、「個々のコネクタ」に「電気コード」を設ける態様が、参加人が主張するようなコネクタのハウジングの内部にのみ設けられる態様に限られるといえないことも明らかであるので、上記参加人の主張も、請求人の主張につき上述したのと同様の解釈手法に基づくものといえるから、妥当性がなく採用できない。また、訂正事項a〜cに関する訂正が認められないとする参加人の他の主張も、同様に採用できない。

(2-2-2)訂正事項dについて
訂正事項dは、訂正事項cに伴い、特許請求の範囲の第6項を削除するものであり、また、同第6項の削除に伴い、特許請求の範囲の項番号を単に繰り上げるとともに、訂正後の請求項10〜12、請求項14〜15及び請求項17がそれぞれ引用する請求項の番号を順次繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(2-2-3)まとめ
以上検討したことから、上記訂正事項a〜dは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の記載を明確化するもの又は特許請求の範囲を減縮するものといえるから、明りょうでない記載の釈明ないし特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつまた、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないということができる。
したがって、本件訂正は、平成15年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、同改正前特許法第134条第5項において準用する第126条第2項ないし第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人及び参加人の主張
(1)審判請求人は、下記の証拠から、請求項1〜18に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、請求項1〜18に係る発明の特許は、特許法123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであると主張する。
(証拠)
甲第1号証:特開昭62-274576号公報
甲第2号証:特開平9-64712号公報
甲第3号証:実願平1-91286号(実開平3-30382号)のマイクロフィルム

(2)参加人は、下記の理由及び証拠から、請求項1〜18に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、また、請求項10〜12、14に係る発明の特許は特許法第36条第6項第1号ないし第2号の規定に違反して特許されたものであるから、特許法123条第1項第2号及び第4号の規定により無効にすべきものであると主張する(平成15年7月1日の口頭審理において通知したところの参加人である本多通信工業株式会社が請求し、既に取り下げられた無効審判請求事件・無効2002-35411号の審判請求書における無効理由を援用)。
(理由1)請求項1〜18に係る発明は、丙第1号証ないし丙第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(証拠)
丙第1号証:実願平3-45617号(実開平4-129981号)のマイクロフィルム
丙第2号証:特開平9-64712号公報(注:甲第2号証と同じ。)
丙第3号証:特開平11-54227号公報
丙第4号証:特開平9-199217号公報
なお、容易想到性に関する参加人の具体的主張は、参加人の平成15年7月31日付け上申書に示されているとおりであり、丙第2号証(甲第2号証)を主たる引用例とした主張であると解される。

(理由2)請求項10〜12、14に係る発明の「コネクタ本体部」は、明細書の発明の詳細な説明に記載されていない、また、請求項10に記載の「互いに密に隣接して整列配置」点は、請求項14に記載の「互いに隣接して整列配置」点と比較して、どの程度「密に隣接」するのかにつき同上発明の詳細な説明に記載がない。

4.被請求人の主張
(1)審判請求人による無効とすべき主張に対して
被請求人は、平成14年12月16日付答弁書において「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)、主たる引用例である甲第1号証に記載の発明は、多量のデータをパラレルバスラインを介して高速にやり取りする電子機器のためのコネクタを想定したものであって、当該バスラインにおける電源ラインと他の信号ラインとの区別は想定されていないといえるから、当該バスラインから電源ラインのみを残し、他のラインを取り除くという設計上の選択が他の証拠から容易に想到し得るという請求人の主張は合理性がなく失当である旨主張する。
なお、被請求人は、上記平成14年12月16日付答弁書により乙第1号証の1〜3を、また、平成15年6月26日付口頭審理陳述要領書により乙第2号証の1〜2を提出している。

(2)参加人による無効とすべき主張に対して(被請求人の平成15年6月26日付口頭審理陳述要領書第13〜16頁の「6.4」及び「6.5」の項参照)
理由1につき、丙第2号証(甲第2号証)の発明に、他の証拠(丙第1号証、丙第3〜4号証)の発明を適用しても、本件発明の構成は得られない。
理由2につき、請求項10〜12、14に、参加人の主張する記載不備はない。

(3)当審による無効の理由に対して
被請求人は、平成16年3月10日に訂正請求をするとともに、同日付け意見書において、本件訂正により当審による無効理由(後記(5-1)参照)は解消された旨主張する。

5.訂正後の発明に係る特許の無効理由の存否について
上記2.のとおり本件訂正は認められるので、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜17に係る発明(以下順に、「本件発明1」〜「本件発明17」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜17に記載した事項により特定されるとおりの次のものと認める。

(本件発明1)
「互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部と、それらのセンサ本体部のそれぞれに対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタとを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、前記センサ本体部には、内部電気回路に対する電源をコネクタ側から受け取るための受電端子を含むコネクタ対応接続口が設けられており、前記親コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、前記子コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各センサ本体部へと配電するようにしたセンサシステム。」
(本件発明2)
「親コネクタの隣接コネクタ対応接続口は一方の側面にのみ設けられ、他方の側面に接続口は存在しないようにされている請求項1に記載のセンサシステム。」
(本件発明3)
「親コネクタの隣接コネクタ対応接続口並びに子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口および第2の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、
子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタに向かって突出する凸部を有し、
親コネクタの隣接コネクタ対応接続口の接続構造および子コネクタの第2の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項1に記載のセンサシステム。」
(本件発明4)
「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項1に記載のセンサシステム。」
(本件発明5)
「一列横隊において隣接するもの同士で着脱自在に結合可能であって、かつそれぞれ縦方向に沿ってセンサ本体部に対して着脱自在に結合可能である複数のコネクタを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、前記親コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、前記子コネクタには、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各コネクタのセンサ本体部対応接続口へと配電するようにしたコネクタシステム。」
(本件発明6)
「親コネクタの隣接コネクタ対応接続口は一方の側面にのみ設けられ、他方の側面に接続口は存在しないようにされている請求項5に記載のコネクタシステム。」
(本件発明7)
「親コネクタの隣接コネクタ対応接続口並びに子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口および第2の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタに向かって突出する凸部を有し、親コネクタの隣接コネクタ対応接続口の接続構造および子コネクタの第2の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項5に記載のコネクタシステム。」
(本件発明8)
「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項5に記載のコネクタシステム。」
(本件発明9)
「互いに密に隣接して整列配置される複数のセンサ本体部の一つに対して着脱自在に結合可能なコネクタ本体を有し、該コネクタ本体には、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する他のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とにコネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられ、前記コネクタ本体に導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつコネクタ本体のセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらにコネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている親コネクタ。」
(本件発明10)
「コネクタ本体の隣接コネクタ対応接続口は一方の側面にのみ設けられ、他方の側面に接続口は存在しないようにされている請求項9に記載の親コネクタ。」
(本件発明11)
「コネクタ本体の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、該接続構造は、隣接する他のコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項9に記載の親コネクタ。」
(本件発明12)
「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項9に記載の親コネクタ。」
(本件発明13)
「互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部の一つに対して着脱自在に結合可能なコネクタ本体を有し、該コネクタ本体には、センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とにコネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられ、前記コネクタ本体には1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつコネクタ本体のセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらにコネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている子コネクタ。」
(本件発明14)
「第1の隣接コネクタ対応接続口および第2の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、第1の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、隣接する一方のコネクタに向かって突出している凸部を有し、第2の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、隣接する他方のコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項13に記載の子コネクタ。」
(本件発明15)
「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項13に記載の子コネクタ。」
(本件発明16)
「複数のセンサ本体部を互いに隣接して整列配置すると共に、それらのセンサ本体部のそれぞれには、コネクタが着脱自在に設けられ、かつ個々のコネクタには、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部に対する給電端子と、該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており、個々のコネクタには、隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具がそれぞれ設けられており、いずれかの前記コネクタに電気コード内の給電線を介して供給された電源を、コネクタ列を経由して他の前記コネクタの給電端子へと分配するようにしたセンサシステム。」
(本件発明17)
「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項16に記載のセンサシステム。」

(5-1)当審により通知した無効理由の概要
当審により通知した無効の理由は、次のとおりである。
(当審理由1)本件発明1〜4、5、7〜9及び17〜18は下記の刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明1〜4、5、7〜9及び17〜18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(刊行物)
刊行物1:特開平9-64712号公報(無効審判請求人であるサンクス株式会社の提示した甲第2号証であって、参加人である本多通信工業株式会社の提示した丙第2号証である。)
刊行物2:特開昭62-274576号公報(無効審判請求人であるサンクス株式会社の提示した甲第1号証である。)
刊行物3:実願平3-45617号(実開平4-129981号)のマイクロフィルム(参加人である本多通信工業株式会社の提示した丙第1号証のマイクロフィルムである。)

(当審理由2)本件発明1、5及び17は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でないといえるから、本件発明1、5及び17に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。

(5-2)無効理由の存否について
(5-2-1)当審による無効の理由について
ところで、上述したように、上記当審理由2の記載不備の点は本件訂正により解消されたといえる(上記(2-2-1)参照)ので、上記当審理由1につき、以下に検討する。

(イ)刊行物記載事項について
刊行物1(特開平9-64712号公報:甲第2号証または丙第2号証)には、図面の図1〜図8とともに次の事項が記載されている。
(a)(【特許請求の範囲】の項)
「【請求項1】 複数の検出スイッチを含み、各検出スイッチは相互に電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有し、前記複数の検出スイッチの各本体部には検出信号を出力するための出力線がそれぞれ接続され、前記複数の検出スイッチのうち1つの検出スイッチの本体部には電力の供給を受けるための電源供給線が接続され、各電気的接続手段は前記1つの検出スイッチの本体部に供給された電力を相互に接続された本体部間で伝達することを特徴とする検出スイッチシステム。
…(中略)…
【請求項7】 検出スイッチ親機または他の検出スイッチ子機に電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有し、前記本体部には検出信号を出力するための出力線が接続され、前記電気的接続手段は前記検出スイッチ親機に供給された電力を前記本体部に伝達しまたは前記他の検出スイッチ子機と前記本体部との間で電力を相互に伝達することを特徴とする検出スイッチ子機。」(公報第2頁第1欄参照)
(b)(発明の詳細な説明における【発明が解決しようとする課題】の項)
「このように、従来の光電スイッチシステムにおいては、各光電スイッチ1に電源300から電力を供給するための配線が複雑であり、光電スイッチ1の数が増加するに従って配線工数が多くなるという問題がある。本発明の目的は、各検出スイッチに電力を供給するための配線を簡略し、配線工数を低減することが可能な検出スイッチ親機、検出スイッチ子機および検出スイッチシステムを提供することである。」(公報第2頁第2欄の段落【0007】〜【0008】参照)
(c)(発明の詳細な説明における【発明の実施の形態】の項)
「図1は本発明の一実施例における光電スイッチシステムの構成を示すブロック図である。 図1の光電スイッチシステムは、1つの光電スイッチ親機1aおよび複数の光電スイッチ子機1bが順次配列されてなる。光電スイッチ親機1aは親機本体部10aおよびセンサヘッド部20からなる。また、光電スイッチ子機1bは子機本体部10bおよびセンサヘッド部20からなる。 親機本体部10aは、電源回路11、遅延回路12、タイミング制御回路13、駆動回路14、発光素子15、受光素子16、増幅回路17、コンパレータ18、検波回路19および出力用トランジスタTRを含む。発光素子15は例えば発光ダイオードからなり、受光素子16は例えばフォトダイオードからなる。センサヘッド部20は一対の光ファイバ21,22を含む。 親機本体部10aにはケーブル100aが接続される。ケーブル100aは、出力用トランジスタTRに接続される出力線L1および電源回路11に接続される一対の電源供給線L2,L3を内蔵する。この電源供給線L2,L3は外部の電源300に接続される。コネクタピンA1,A2間に電源伝達線L4が接続され、コネクタピンB1,B2間に電源伝達線L5が接続されている。これらの電源伝達線L4,L5は電源供給線L2,L3にそれぞれ接続されている。電源回路11は、親機本体部10a内の各部に電力を供給する。遅延回路12の入力端子は外部同期信号を受けるコネクタピンC1に接続され、出力端子はコネクタピンC2に接続されている。 各子機本体部10bは、電源300に直接接続されない点を除いて親機本体部10aと同様の構成を有する。子機本体部10bにはケーブル100bが接続される。ケーブル100bは出力用トランジスタTRに接続される出力線L1を内蔵する。コネクタピンA1,A2間に電源伝達線L4が接続され、コネクタピンB1,B2間に電源伝達線L5が接続されている。これらの電源伝達線L4,L5は電源回路11に接続されている。電源回路11は、子機本体部10b内の各部に電力を供給する。」(公報第3頁第4欄の段落【0023】〜第4頁第5欄の段落【0027】参照)
上記記載事項(a)〜(c)並びに図面に示された内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「従来発明」という。)が記載されていると認められる。
(従来発明)
「1つの光電スイッチ親機1aおよび複数の光電スイッチ子機1bが順次配列されてなる検出スイッチシステムにおいて、親機本体部10aに接続されるケーブル100aが出力線L1および一対の電源供給線L2,L3を内蔵し、子機本体部10bに接続されるケーブル100bが出力線L1を内蔵するとともに、各光電スイッチは相互にコネクタピンを用いた電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有し、各電気的接続手段は前記1つの光電スイッチ親機1aの本体部に供給された電力を相互に接続された本体部間で伝達することを特徴とする検出スイッチシステム。」

また、上記刊行物2(特開昭62-274576号公報:甲第1号証)には、印刷基板をケース中へ収容した電子機器のユニットへの配線を効率よく行わせるために、その全ての配線(信号線ないし給電線等)を、例えば、その第1図に示されるように、当該電子機器と隣接するコネクタとに着脱自在なコネクタの列を介して配線するようにした発明が開示されており、さらに、上記刊行物3(実願平3-45617号(実開平4-129981号)のマイクロフィルム:丙第1号証)には、所望の数連接される電磁弁という電子機器のユニットへの配線を効率よく行わせるために、例えば、その図1に示されるに、当該電磁弁のユニットへ着脱自在なコネクタを用いて各信号線を配線するようにした発明が開示されている。

(ロ)対比・判断
(ロ-1)本件発明16に係る特許について
本件発明16と従来発明とを対比すると、その作用ないし機能からみて、後者の「光電スイッチ」が前者の「センサ」に相当することが明らかであるから、後者の「検出スイッチシステム」は前者の「センサシステム」に相当するといえるし、また、その作用ないし構造からみて、後者の「1つの光電スイッチ親機1aおよび複数の光電スイッチ子機1bが順次配列されてなる」は前者の「複数のセンサ本体部を互いに隣接して整列配置する」に、後者の「出力線L1」は前者の「センサ本体部へ接続するための信号線」に、後者の「一対の電源供給線L2,L3」は前者の「給電線」に、後者の「ケーブル100a」及び「ケーブル100b」は前者の「電気コード」に、それぞれ相当するといえるし、さらに、後者の「コネクタピンを用いた電気的接続手段」と前者の「隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具」とは、共に隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段である点で共通するといえるから、両者は、「複数のセンサ本体部を互いに隣接して整列配置すると共に、それらのセンサ本体部のそれぞれには、隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段と、該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており、供給された電源を上記着脱自在な接続手段を介して他へと分配するようにしたセンサシステム。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違するといえる。
(相違点A)センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードの取り付け構造及び隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段に関して、本件発明16が「それらのセンサ本体部のそれぞれには、コネクタが着脱自在に設けられ、かつ個々のコネクタには、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部に対する給電端子と、該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており、個々のコネクタには、隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具がそれぞれ設けられており、いずれかの前記コネクタに電気コード内の給電線を介して供給された電源を、コネクタ列を経由して他の前記コネクタの給電端子へと分配するようにした」構成を採用しているのに対して、従来発明は、このようなコネクタを介在させることなく、センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードを「各光電スイッチ」へ直接接続するとともに、当該「各光電スイッチ」自体が「相互にコネクタピンを用いた電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有」する構成としている点。
そこで、上記相違点Aにつき、以下に検討する。
(相違点Aについて)
ところで、印刷基板をケース中へ収容した電子機器のユニットへの配線を効率よく行わせるために、その全ての配線(信号線ないし給電線等)を、当該電子機器と隣接するコネクタとに着脱自在なコネクタの列を介して配線すること、または、所望の数連接される電磁弁という電子機器のユニットへの配線を効率よく行わせるために、当該電磁弁の個々のユニットへ着脱自在なコネクタを用いて各信号線を配線することは、刊行物2または刊行物3に示されるように、本件特許出願の優先日前に公知の技術であったといえる。
そして、上記刊行物1に記載の従来技術であるセンサシステム(具体的には、検出スイッチシステム)と、上記刊行物2に開示された印刷基板をケース中へ収容した電子機器のユニット、または、上記刊行物3に開示された所望の数連接される電磁弁という電子機器のユニットとは、プログラマブルコントローラないしプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)とこれらコントローラにより制御される出力側の電子機器(例えば、電磁弁、リレー、ランプ等)または入力側の電子機器(例えば、光電スイッチ、近接スイッチ等)として、共に制御システムの一部を構成する要素として相互に配線され、使用されているものであることは、当業者において従来より周知の事項であったといえる(例えば、請求人サンクス株式会社が提出した平成15年6月27日付け口頭審理陳述要領書に添付された別紙2、別紙3のカタログ参照)。
そうすると、従来発明に刊行物2または刊行物3に示されたコネクタ手段を単に採用することは、当業者が容易に想到し得た設計上の変更であるといえる。
しかしながら、従来発明に刊行物2に示されたコネクタによる配線態様(コネクタを用いて全ての配線(信号線及び給電線等)を相互に接続する配線態様)を単に適用すると、当該適用によって容易に得られる構成は、給電線に止まらず信号線をもコネクタ列を介して相互に接続する配線態様を備えるものとなり、本件発明16におけるように、給電線のみを選択し、これをコネクタ列を介して接続するという選択された配線の接続態様を備える構成までは得られないことになる。
また、従来発明に刊行物3に示されたコネクタによる配線態様を適用すると、上記と同様に、当該適用によって容易に得られる構成は、個々のセンサ本体部に接続される信号線ないし給電線を、当該個々のセンサ本体部へ着脱自在とされた各コネクタを介して接続するという配線態様を備えるものとなり、本件発明16におけるように、給電線のみを選択し、これをコネクタ列を介して接続するという選択された配線の接続態様を備える構成までは得られないことになる。
そして、少なくとも、プログラマブルコントローラないしプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)とこれらコントローラにより制御される出力側の電子機器ないし入力側の電子機器として使用されている各種の電子機器において、その駆動電源の供給用のための給電線のみを、上記各種の電子機器自体を介在させることなく、これら電子機器本体に個々に着脱され、別体に構成されたコネクタの列を介して相互に接続するように構成することが、本件発明の出願日前に周知ないし公知の技術であったことを示す証拠を他に見出すことができない。
(ちなみに、丙第1号証(当審理由1の刊行物3)は、審判請求人の平成16年3月18日付け意見書(第10頁〜第11頁参照)にも指摘されているように、信号端子A、Bに接続される線が「給電線」と表現されているものの、当該信号端子に接続される線は、全ての電磁弁に共通のグランド線が接続された「コモン端子C1、C2」と協働して、そこへの通電の有無により個々の電磁弁のソレノイドを動作または非動作とするためのものであるといえるから、上記「給電線」は電源供給用というよりは動作上の「信号線」というべきものであって、当該「信号線」と不可分の協働関係にある「コモン端子C1、C2」を接続する線のみをもって、専ら駆動電源を供給するために接続された線であるということもできない。
また、一見すると本件発明におけるコネクタと同様に見える甲第3号証における「接続コネクタ」は、隣接する光電スイッチを介さなければ電源ラインが接続できないものであるから、従来発明における隣接する光電スイッチ間のコネクタ部分を光電スイッチとは別部材で構成したものに相当し、上述のような、その駆動電源の供給用のための給電線のみを、上記各種の電子機器自体を介在させることなく、これら電子機器本体に個々に着脱され、別体に構成されたコネクタの列を介して相互に接続するように構成したものということはできない。)
さらに、本件発明16は、相違点Aに係る構成を併せて備えることにより、特許明細書に記載のセンサシステムにおける配線構造の簡素化や在庫管理の容易化等を実現できるという作用効果を奏するものといえる。
してみると、相違点Aに係る本件発明16の構成は、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明16は、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(ロ-2)本件発明17に係る特許について
本件発明17は、本件発明16を引用し、さらに、「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である」点を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明16が従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者により容易に想到し得たといえないことは上述したとおりであるから、本件発明17も、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ロ-3)本件発明1に係る特許について
本件発明1と従来発明とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点A-1」という。)で相違するといえる。
(相違点A-1)センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードの取り付け構造及び隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段に関して、本件発明1が「それらのセンサ本体部のそれぞれに対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタとを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、」「親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、」「さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、」「親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各コネクタのセンサ本体部対応接続口へと配電するようにした」構成を採用しているのに対して、従来発明は、このようなコネクタを介在させることなく、センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードを「各光電スイッチ」へ直接接続するとともに、当該「各光電スイッチ」自体が「相互にコネクタピンを用いた電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有」する構成としている点。
(相違点A-1について)
相違点A-1に係る本件発明1の構成は、上記(ロ-1)において相違点Aにつき説示したところのと同様の理由から、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明16は、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(ロ-4)本件発明2〜4に係る特許について
本件発明2〜4は、本件発明1を引用する発明であって、さらに、請求項2〜4の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明1が従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明2〜4も、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ロ-5)本件発明5に係る特許について
本件発明5と従来発明とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点A-5」という。)で相違するといえる。
(相違点A-5)センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードの取り付け構造及び隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段に関して、本件発明5が「それぞれ縦方向に沿ってセンサ本体部に対して着脱自在に結合可能である複数のコネクタを含み、前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、」「親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、」「さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、」「親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各コネクタのセンサ本体部対応接続口へと配電するようにした」構成を採用しているのに対して、従来発明は、このようなコネクタを介在させることなく、センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードを「各光電スイッチ」へ直接接続するとともに、当該「各光電スイッチ」自体が「相互にコネクタピンを用いた電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有」する構成としている点。
(相違点A-5について)
相違点A-5に係る本件発明5の構成は、上記(ロ-1)において相違点Aにつき説示したところのと同様の理由から、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明5は、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(ロ-6)本件発明6〜8に係る特許について
本件発明6〜8は、本件発明5を引用する発明であって、さらに、請求項2〜4の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明5が従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明6〜8も、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ロ-7)本件発明9に係る特許について
本件発明9と従来発明とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点A-9」という。)で相違するといえる。
(相違点A-9)センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードの取り付け構造及び隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段に関して、本件発明9が「隣接して整列配置される複数のセンサ本体部の一つに対して着脱自在に結合可能なコネクタ本体を有し、該コネクタ本体には、」「隣接する他のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、」「給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、」「前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とにコネクタ内部で導通させる内部導体と」「が設けられ」た構成を採用しているのに対して、従来発明は、このようなコネクタを介在させることなく、センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードを「各光電スイッチ」へ直接接続するとともに、当該「各光電スイッチ」自体が「相互にコネクタピンを用いた電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有」する構成としている点。
(相違点A-9について)
相違点A-9に係る本件発明1の構成は、上記(ロ-1)において相違点Aにつき説示したところのと同様の理由から、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明9は、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものということができない。

(ロ-8)本件発明10〜12に係る特許について
本件発明10〜12は、本件発明9を引用する発明であって、さらに、請求項10〜12の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明9が従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明10〜12も、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ロ-9)本件発明13に係る特許について
本件発明13と従来発明とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点A-13」という。)で相違するといえる。
(相違点A-13)センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードの取り付け構造及び隣接するセンサ本体部への電力を供給する線の電気的接続を行う着脱自在な接続手段に関して、本件発明13が「互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部の一つに対して着脱自在に結合可能なコネクタ本体を有し、該コネクタ本体には、」「隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、」「隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、」「が設けられ、」「前記コネクタ本体には1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、」「さらにコネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている」ようにした構成を採用しているのに対して、従来発明は、このようなコネクタを介在させることなく、センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードを「各光電スイッチ」へ直接接続するとともに、当該「各光電スイッチ」自体が「相互にコネクタピンを用いた電気的接続手段を介して接続可能な本体部を有」する構成としている点。
(相違点A-13について)
相違点A-13に係る本件発明13の構成は、上記(ロ-1)において相違点Aにつき説示したところのと同様の理由から、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明13は、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(ロ-10)本件発明14〜15に係る特許について
本件発明14〜15は、本件発明13を引用する発明であって、さらに、請求項14〜15の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明13が従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明14〜15も、従来発明並びに刊行物2ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(5-2-2)請求人の主張する無効の理由について
ところで、容易想到性に関して、請求人は、審判請求書によれば甲第1号証を主たる引用例とし、これに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明を組み合わせることが容易である旨を主張していると解されるし、また、請求人の平成15年6月27日付け口頭審理陳述要領書によれば、甲第2号証を主たる引用例とし、これに甲第1号証、甲第3号証に記載された発明を組み合わせることが容易である旨を主張していると解されるし、さらにまた、請求人の平成15年7月31日付け上申書(例えば、第12頁の(6)及び第16頁の(7)の項参照)によれば、甲第1号証または甲第2号証のいずれかを主たる引用例とした主張であると解される。
そして、甲第2号証を主たる引用例とした場合については、上記「(5-2-1)当審による無効の理由について」で、相違点Aに係る構成が、他のいずれの証拠によっても容易といえないことは上記説示したとおりである。
そこで、ここでは、甲第1号証を主たる引用例とした場合につき、以下検討する。

(イ)本件発明16に係る特許について
(対比・判断)
甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1号証発明」という。)と本件発明16とを対比すると、少なくとも次の点で相違するといえる。
(相違点)
(相違点B)コネクタと接続される対象物が、本件発明16はセンサ本体部であるのに対して、甲第1号証発明は印刷基板をケース中へ収容した電子機器ユニットである点。
(相違点C)本件発明16は、「個々のコネクタには、」「該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられて」いるのに対して、甲第1号証発明におけるコネクタにはそのような電気コードが設けられていない点。
次に、上記相違点につき検討する。
(相違点Bについて)
甲第1号証は、個々の電子機器ユニットの信号線ないし給電線の全てを、コネクタを介して、隣接する電子機器ユニット相互間で接続させる構成を開示するものである。
すなわち、甲第1号証発明の備えるコネクタは、「ユニット相互間の接続および共通回路とユニットとの接続」を目的とするものであるから、全ての隣接する電子機器ユニット間で、その信号線ないし給電線の全てを接続し、導通させることを目的とするものであって、甲第1号証発明は、このような目的に合致する電子機器ユニットをその接続対象とするコネクタの構成を開示したものと解するのが相当である(公報第1頁右下欄や第2頁左上欄の記載参照)。
ところで、プログラマブルコントローラないしプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)とこれらコントローラにより制御される出力側の電子機器(例えば、電磁弁、リレー、ランプ等)や入力側の電子機器(例えば、光電スイッチ、近接スイッチ等)は、共にこれら制御システムの一部を構成する要素として相互に配線され、使用されている関係にあることは、当業者において従来より周知の事項であったということができる。
そうとすると、甲第1号証発明のコネクタが適用される電子機器ユニットの一つとして、センサ本体を単に選択することは、当業者が容易に想到し得た設計上の変更であるということができる。

(相違点Cについて)
本件発明でいう「センサ本体部」は、明細書の記載を参酌すると、その段落【0003】に、「ファイバタイプの光電センサのセンサ本体部(以下、単に「センサ本体部」と言う。)」と記載されているように、具体的には、光電センサや検出スイッチ等のセンサ機器の本体部を意味するものであり、また、本件発明16が備える個々のコネクタは、「個々のコネクタには、」「該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられて」いると規定されていることから、それぞれ信号線を含む電気コードを備えているものであって、かつまた、当該信号線はセンサ本体部へ接続されるものであって、給電用の線と異なり、全ての隣接するコネクタ間で接続され、導通されることのないものであることも明らかである。
ところで、相違点Bで指摘したように、甲第1号証発明の電子機器ユニットとしてセンサ本体を単に選択することは当業者により容易に想到し得た設計上の変更であるといえるものの、当該容易に得られた構成は、上述した甲第1号証発明の目的からみて、個々のセンサ本体部に接続される信号線ないし給電線の全てを、コネクタ列を介して、隣接する電子機器ユニット相互間で配線・接続させた構成に止まるというべきである。(当該配線構成により、センサ本体部への給電のための給電線の接続と信号を授受するための信号線の接続が既に得られている。また、対象機器としてセンサ本体を選択することが信号線と給電線との選択的な配線態様をも一義的に定めることとはいえないし(本件特許明細書の段落【0052】に「個々のセンサから信号出力用電気コードを引き出すこと」を「不要」とする配線例も示されている点参照)、逆に、このような選択的な配線態様を得ようとする場合は、甲第1号証発明の上述した配線目的と整合しないことになる。)
そして、上述したように、少なくとも、プログラマブルコントローラないしプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)とこれらコントローラにより制御される出力側の電子機器ないし入力側の電子機器として使用されている各種の電子機器において、その駆動電源の供給用のための給電線のみを、上記各種の電子機器自体を介在させることなく、これら電子機器本体に個々に着脱され、別体に構成されたコネクタの列を介して相互に接続するように構成することが、本件発明の出願日前に周知ないし公知の技術であったことを示す証拠を見出すことができない。
ちなみに、一見すると本件発明におけるコネクタと同様に見える甲第3号証における「接続コネクタ」も、隣接する光電スイッチを介さなければ電源ラインが接続できないものであるから、従来発明における隣接する光電スイッチ間のコネクタ部分を光電スイッチとは別部材で構成したものに相当し、上述のような、その駆動電源の供給用のための給電線のみを、上記各種の電子機器自体を介在させることなく、これら電子機器本体に個々に着脱され、別体に構成されたコネクタの列を介して相互に接続するように構成したものということはできない。
(なお、上述したように、丙第1号証(当審理由1の刊行物3)は、審判請求人の平成16年3月18日付け意見書(第10頁〜第11頁参照)にも指摘されているように、信号端子A、Bに接続される線が「給電線」と表現されているものの、当該信号端子に接続される線は、全ての電磁弁に共通のグランド線が接続された「コモン端子C1、C2」と協働して、そこへの通電の有無により個々の電磁弁のソレノイドを動作または非動作とするためのものであるといえるから、上記「給電線」は電源供給用というよりは動作上の「信号線」というべきものであって、当該「信号線」と不可分の協働関係にある「コモン端子C1、C2」を接続する線のみをもって、専ら駆動電源を供給するために接続された線であるということもできない。)
そうすると、上記相違点Bで指摘した設計上の変更により当該コネクタ列を介して接続されることとなったところの信号線ないし給電線の内から、さらに信号線を選択的に除外して給電線のみを残すという設計上の変更を加えること(選択的な配線態様と変更すること)が当業者により容易に想到し得たということができないから、当該設計上の変更を加えることを前提として選択的に除外されることとなった信号線を個々の電子機器ユニットへのみ接続するために、各コネクタのそれぞれに電気コードをさらに付加することによって相違点Cに係る構成を得るということまでが、当業者により容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明16は、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者により容易に想到し得たということができない。

(ロ)本件発明17に係る特許について
本件発明17は、本件発明16を引用し、さらに、「センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である」点を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明16が甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者により容易に想到し得たといえないことは上述したとおりであるから、本件発明17も、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に当業者が容易に基いて発明をすることができたものということができない。

(ハ)本件発明1に係る特許について
(対比・判断)
甲第1号証発明と本件発明1とを対比すると、少なくとも次の点で相違するといえる。
(相違点)
(相違点B)コネクタと接続される対象物が、本件発明1はセンサ本体部であるのに対して、甲第1号証発明は印刷基板をケース中へ収容した電子機器ユニットである点。
(相違点C-1)本件発明1は、「親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、」「さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され」ているのに対して、甲第1号証発明におけるコネクタにはそのような電気コードが設けられていない点。
(相違点C-1について)
相違点C-1に係る本件発明1の構成は、上記(イ)において相違点Cにつき説示したところのと同様の理由から、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(ニ)本件発明2〜4に係る特許について
本件発明2〜4は、本件発明1を引用する発明であって、さらに、請求項2〜4の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明1が甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明2〜4も、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ホ)本件発明5に係る特許について
(対比・判断)
甲第1号証発明と本件発明5とを対比すると、少なくとも次の点で相違するといえる。
(相違点)
(相違点B)コネクタと接続される対象物が、本件発明1はセンサ本体部であるのに対して、甲第1号証発明は印刷基板をケース中へ収容した電子機器ユニットである点。
(相違点C-5)本件発明5は、「親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、」「さらに子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され」ているのに対して、甲第1号証発明におけるコネクタにはそのような電気コードが設けられていない点。
(相違点C-5について)
相違点C-5に係る本件発明5の構成は、上記(イ)において相違点Cにつき説示したところのと同様の理由から、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明5は、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(ヘ)本件発明6〜8に係る特許について
本件発明6〜8は、本件発明5を引用する発明であって、さらに、請求項2〜4の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明5が甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明6〜8も、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(ト)本件発明9に係る特許について
(対比・判断)
甲第1号証発明と本件発明1とを対比すると、少なくとも次の相違点で相違するといえる。
(相違点)
(相違点B)コネクタと接続される対象物が、本件発明1はセンサ本体部であるのに対して、甲第1号証発明は印刷基板をケース中へ収容した電子機器ユニットである点。
(相違点C-9)本件発明9は、「コネクタ本体には、」「給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、」「前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とにコネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられ」るとともに、「コネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている」構成、すなわち、コネクタ本体は、電気コードを介して給電された電源についてはセンサ本体部対応接続口と隣接コネクタ対応接続口との両者へ導通接続するが、電気コード側の信号線についてはセンサ本体部対応接続口へ(のみ)接続するという選択的な配線態様を採用しているのに対して、甲第1号証発明におけるコネクタはそのような選択的な配線態様を用いていない点。
(相違点C-9について)
相違点C-9に係る本件発明9の構成は、上記(イ)において相違点Cにつき説示したところの「設計上の変更(選択的な配線態様と変更すること)」が容易といえないのと同様の理由から、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明9は、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたたものということができない。

(チ)本件発明10〜12に係る特許について
本件発明10〜12は、本件発明9を引用する発明であって、さらに、請求項10〜12の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明9が甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明10〜12も、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(リ)本件発明13に係る特許について
(対比・判断)
甲第1号証発明と本件発明13とを対比すると、少なくとも次の点で相違するといえる。
(相違点)
(相違点B)コネクタと接続される対象物が、本件発明13はセンサ本体部であるのに対して、甲第1号証発明は印刷基板をケース中へ収容した電子機器ユニットである点。
(相違点C-13)本件発明13は、「コネクタ本体には1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され」ているとともに、「センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と」が設けられ、「さらにコネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている」構成、すなわち、コネクタ本体は、供給された電源についてはセンサ本体部対応接続口と第1と第2の隣接コネクタ対応接続口との三者へ導通接続するが、電気コード側の信号線についてはセンサ本体部対応接続口へのみ接続するという選択的な配線態様を採用しているのに対して、甲第1号証発明におけるコネクタはそのような選択的な配線態様を用いていない点。
(相違点C-13について)
相違点C-13に係る本件発明13の構成は、上記(イ)において相違点Cにつき説示したところの「設計上の変更(選択的な配線態様と変更すること)」が容易といえないのと同様の理由から、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものということができない。
したがって、本件発明13は、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものということができない。

(ヌ)本件発明14〜15に係る特許について
本件発明14〜15は、本件発明13を引用する発明であって、さらに、請求項14〜15の各請求項に記載の事項を技術的に限定したものである。
そうすると、本件発明13が甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者により容易に発明することができたものといえないことは上述したとおりであるから、本件発明14〜15も、甲第1号証発明並びに甲第2号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(5-2-3)参加人の主張する無効の理由について
(イ)無効理由1(容易想到性)について
上記「3.(2)」で指摘したように、無効理由1の容易想到性に関する参加人の主張は、丙第2号証(甲第2号証)を主たる引用例としたものと解されるから、上記「(5-2-1)当審による無効の理由について」において説示したとおりである。
なお、上記相違点Aについて説示した「そして、少なくとも、プログラマブルコントローラないしプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)とこれらコントローラにより制御される出力側の電子機器ないし入力側の電子機器として使用されている各種の電子機器において、その駆動電源の供給用のための給電線のみを、上記各種の電子機器自体を介在させることなく、これら電子機器本体に個々に着脱され、別体に構成されたコネクタの列を介して相互に接続するように構成することが、本件発明の出願日前に周知ないし公知の技術であったことを示す証拠を他に見出すことができない。」とした点は、丙第3号証及び丙第4号証を検討してみても、左右されるものではない。

(ロ)無効理由2(記載不備)について
また、参加人が主張する無効理由2の請求項10〜12、14に係る発明の「コネクタ本体部」は、明細書の発明の詳細な説明に全く記載されていないので記載が不備であるとする点は、当該「コネクタ本体部」という記載がこれら請求項の記載中に無いことから、「コネクタ本体」の誤記と認められるところ、当該「コネクタ本体」が発明の詳細な説明に記載された「コネクタ」に相当するものを意味することが明らかであるから、参加人が主張するような無効理由とすべき記載不備はないといえる。
さらにまた、参加人が主張する無効理由2の請求項10に記載の「互いに密に隣接して整列配置」の点が請求項14に記載の「互いに隣接して整列配置」点と比較して、どの程度「密に隣接」するのかにつき同上発明の詳細な説明に記載がない点で記載が不備であるとする点は、両者に表現上の微差があるものの、被請求人が「「互いに密に隣接」と「互いに隣接」について、意味内容において両者は同じである。」と主張している(平成15年7月1日の第1回口頭審理調書における被請求人の項の「3.(2)」参照)ように、いずれも発明の詳細な説明に記載された「互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部」の整列配置態様(例えば、特許明細書の段落【0056】参照)を表現したものであることが明らかであるから、参加人が主張するような無効理由とすべき記載不備はないといえる。

(5-2-4)まとめ
以上検討したとおり、本件発明1〜17の特許は、審判請求人及び参加人の主張及び証拠方法、並びに当審による無効の理由によって無効とすべきものということができない。
また、本件発明1〜17に係る特許を無効とすべき他の理由も見出し得ない。

6.むすび
したがって、審判請求人及び参加人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1〜17の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人及び参加人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
センサシステム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部と、それらのセンサ本体部のそれぞれに対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタとを含み、
前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、
前記センサ本体部には、内部電気回路に対する電源をコネクタ側から受け取るための受電端子を含むコネクタ対応接続口が設けられており、
前記親コネクタには、
センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、
隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、
給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、
前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、
前記子コネクタには、
センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、
隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、
隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、
前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、
親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、さらに
子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、
それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各センサ本体部へと配電するようにしたセンサシステム。
【請求項2】 親コネクタの隣接コネクタ対応接続口は一方の側面にのみ設けられ、他方の側面に接続口は存在しないようにされている請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】 親コネクタの隣接コネクタ対応接続口並びに子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口および第2の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、
子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタに向かって突出する凸部を有し、
親コネクタの隣接コネクタ対応接続口の接続構造および子コネクタの第2の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】 センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項5】 一列横隊において隣接するもの同士で着脱自在に結合可能であって、かつそれぞれ縦方向に沿ってセンサ本体部に対して着脱自在に結合可能である複数のコネクタを含み、
前記複数のコネクタは、少なくとも1つの親コネクタと1つ又は2つ以上の子コネクタとを含んでおり、
前記親コネクタには、
センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、
隣接するコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、
給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、
前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに親コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、
前記子コネクタには、
センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、
隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、
隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、
前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられており、
親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、さらに
子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられており、
それにより、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由して各コネクタのセンサ本体部対応接続口へと配電するようにしたコネクタシステム。
【請求項6】 親コネクタの隣接コネクタ対応接続口は一方の側面にのみ設けられ、他方の側面に接続口は存在しないようにされている請求項5に記載のコネクタシステム。
【請求項7】 親コネクタの隣接コネクタ対応接続口並びに子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口および第2の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、
子コネクタの第1の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタに向かって突出する凸部を有し、
親コネクタの隣接コネクタ対応接続口の接続構造および子コネクタの第2の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、該接続口に隣接するコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項5に記載のコネクタシステム。
【請求項8】 センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項5に記載のコネクタシステム。
【請求項9】 互いに密に隣接して整列配置される複数のセンサ本体部の一つに対して着脱自在に結合可能なコネクタ本体を有し、
該コネクタ本体には、
センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、
隣接する他のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口と、
給電線を含む電気コードを該コネクタ内部に引き込むための電気コード導入口と、
前記電気コードを介して給電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とにコネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられ、
前記コネクタ本体に導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつコネクタ本体のセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらにコネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている親コネクタ。
【請求項10】 コネクタ本体の隣接コネクタ対応接続口は一方の側面にのみ設けられ、他方の側面に接続口は存在しないようにされている請求項9に記載の親コネクタ。
【請求項11】 コネクタ本体の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、
該接続構造は、隣接する他のコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項9に記載の親コネクタ。
【請求項12】 センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項9に記載の親コネクタ。
【請求項13】 互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部の一つに対して着脱自在に結合可能なコネクタ本体を有し、
該コネクタ本体には、
センサ本体部側の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子を含むセンサ本体部対応接続口と、
隣接する一方のコネクタから電源を受け取るための受電端子を含む第1の隣接コネクタ対応接続口と、
隣接する他方のコネクタに対して電源を供給するための給電端子を含む第2の隣接コネクタ対応接続口と、
前記第1の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、前記センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、前記第2の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とにコネクタ内部で導通させる内部導体と、が設けられ、
前記コネクタ本体には1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつコネクタ本体のセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらにコネクタ本体の内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている子コネクタ。
【請求項14】 第1の隣接コネクタ対応接続口および第2の隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられており、
第1の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、隣接する一方のコネクタに向かって突出している凸部を有し、
第2の隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、隣接する他方のコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接するコネクタに向かって突出している凸部は存在しないようにされている請求項13に記載の子コネクタ。
【請求項15】 センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項13に記載の子コネクタ。
【請求項16】 複数のセンサ本体部を互いに隣接して整列配置すると共に、それらのセンサ本体部のそれぞれには、コネクタが着脱自在に設けられ、かつ
個々のコネクタには、該コネクタと着脱自在なセンサ本体部に対する給電端子と、該センサ本体部へ接続するための信号線を含む電気コードとがそれぞれ設けられており、
個々のコネクタには、隣接するコネクタ間の互いの給電端子同士を接続するための着脱自在な接続具がそれぞれ設けられており、
いずれかの前記コネクタに電気コード内の給電線を介して供給された電源を、コネクタ列を経由して他の前記コネクタの給電端子へと分配するようにしたセンサシステム。
【請求項17】 センサ本体部が、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサのセンサ本体部である請求項16に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多数のヘッド分離型センサ(例えば、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等)のセンサ本体部をDINレール等を介して整列配置してなるセンサシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
FA等の技術分野においては、物体の有無や位置を検出するために、ヘッド分離型センサ(例えば、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等)が多用される。例えばファイバタイプの光電センサの場合、検出光線(赤色光線、赤外線等)の投受光を受け持つセンサヘッドは検出対象物体間近の狭小空間に配置される一方、発光素子や受光素子を内蔵するセンサ本体部については検出対象物体から離れた場所に置かれた制御盤等に収容され、センサヘッドとセンサ本体部との間は光ファイバで結ばれる。なお、センサ本体部ケースの外形は一般に薄型直方体であることが多い。センサ本体部を制御盤内に多数収容する場合、それらセンサ本体部はDINレールを介して互いに密接させた一列横隊の状態で配置されることが多い。
【0003】
ファイバタイプの光電センサのセンサ本体部(以下、単に『センサ本体部』と言う)を密接状態で一列横隊に配置してなるセンサシステムの一例が図17に模式的に示されている。同図に示されるように、制御盤内等に取り付けられるDINレール401には、検出対象の異なる複数のセンサ本体部4021,4022,4023,…402nが多数横一列に装着されている。各センサ本体部4021,4022,4023,…402nのケース前端面からは検出光線の往路並びに復路をそれぞれ構成する光ファイバ403,404が、またケース後端面からは給電線405aと信号線405b(図18参照)とを含む電気コード405がそれぞれ引き出されている。
【0004】
光ファイバ403,404の先端のセンサヘッド部403a,404a間の検出光線光路408が透光もしくは遮光されると、センサ本体部の内部回路が作動して、電気コード405内の信号線405bを通じて検出信号(スイッチング信号や受光量に対応するアナログ信号)が外部へと出力される。この検出信号は、例えば、図18に示されるように、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)407に対して制御入力として供給される。
【0005】
また、図18に示されるように、電源406から各センサ本体部4021,4022,4023,…402nのそれぞれに対する電力供給は、各電気コード405内の給電線405aを介して行われる。なお、給電線405aは正負の2線で構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、センサ本体部4021,4022,4023,…402nを多数密接させて整列配置してなる従来の光電センサシステムにおいては、電気コード405内の給電線405aを介して個々の光電センサ本体部4021,4022,4023,…402nに対して電源を供給せねばならないことから、電気コード405として芯線の多いコードが必要とされることに加えて、その分だけ結線作業にも手間が掛かると言う問題点が指摘されている。
【0007】
一方、この種の光電センサシステムにおける省配線構造としては、特開平9-64712号公報に記載のものが従来より知られている。この公報記載の技術にあっては、1台のセンサ(本体部)親機と、これに密接状態で横列配置される複数台のセンサ(本体部)子機とでセンサシステムを構成している。センサ親機には、信号線と給電線との双方を含む電気コードが、また各センサ子機には信号線のみを含む電気コードがそれぞれ半田付け等の固定的な接合手段を用いて接続される。センサ親機並びに各センサ子機のケース側面には、隣接センサ間で対向するようにして、雄型接続口と雌型接続口とが設けられている。これらの接続口により、センサ親機とセンサ子機との間、及び、隣接センサ子機同士の間を結合すると、電気コードを介してセンサ親機に供給された電源は、一連のセンサ子機へと各センサケース内部の導体を経由して順次に受け渡される。
【0008】
このように、特開平9-64712号公報に示されるセンサシステムにあっては、隣接センサ本体部間を接続する雄雌接続口を介してセンサケース内部の導体を経由する電源受け渡しを可能とし、これにより電気コードを介する個々のセンサ子機への電源供給を不要として省配線化を達成している。
【0009】
しかしながら、このようなセンサシステムにあっては、センサ本体部としては電気コードを介して外部から電源を受け取る構造を有するものと、隣接するセンサ本体部から雄雌接続口を介して電源を受け取る構造を有するものとの2種類が必要となり、部品点数や部品管理工数が多い分だけコストアップに繋がる。また、センサ本体部が2種類あるためその在庫管理が煩雑である。
【0010】
また、例えば、いずれかのセンサ(親機又は子機)にトラブルが生じた場合、故障したセンサに繋がれた電気コードも同時に取り替える必要も生じ、結束された電気コード束を解いて新たな電気コードを配線結束する作業が非常に面倒で手間が掛かるばかりか、材料ロスも多くなる。
【0011】
この発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、給電線の本数をシステム全体として大幅に削減することができると共に、親機か子機かの区別がない共通構造のセンサ本体部を採用してコストダウンと在庫管理の容易化を図ることができ、しかも、いずれかのセンサ本体部が故障した場合等には、従前の電気コードは使用したまま、故障したセンサ本体部だけを簡単に交換できるようにしたセンサシステムを提供することにある。
【0012】
この発明の他の目的とするところは、複数のセンサ本体部を横列配置する場合において、センサ配置台数の増減に柔軟に対応することができると共に、センサ配置台数に拘わらず必要最小限の給電線本数を維持できるようにしたコネクタシステムを提供することにある。
【0013】
この発明の他の目的とするところは、上述の給電コネクタシステムの実現に好適な親コネクタを提供することにある。
【0014】
この発明の他の目的とするところは、上述の給電コネクタシステムの実現に好適な子コネクタを提供することにある。
【0015】
この発明のさらに他の目的乃至効果については、以下に述べる実施の形態の記述等を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のセンサシステムは、互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部と、それらのセンサ本体部に対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタとを少なくとも含んでいる。
【0017】
『センサ』には、ファイバタイプの光電センサ、超音波センサ、近接センサ等のヘッド分離型センサが含まれる。通常、この種のセンサシステムは、同一種類のセンサで構成されるが、上述の種々のセンサを混合使用してなるセンサシステムにも本発明は適用可能である。
【0018】
センサ本体部には、対応するコネクタを着脱自在に結合可能とするコネクタ対応接続口が設けられ、コネクタには、対応するセンサ本体部に着脱自在に結合可能とするセンサ本体部対応接続口が設けられる。
【0019】
センサ本体部の『コネクタ対応接続口』には、内部電気回路に対する電源をコネクタ側から受け取るための受電端子が少なくとも含まれている。ここで、『少なくとも含まれている』としたのは、受電端子のほかに、1もしくは2以上の信号端子が存在する場合も含めることを意図したためである。
【0020】
コネクタの『センサ本体部対応接続口』には、センサ本体部の内部電気回路に対して電源を供給するための給電端子が少なくとも含まれている。『少なくとも含まれている』としたのも同様である。
【0021】
センサ本体部とコネクタとは、互いの接続口を介して着脱自在に結合される。センサ本体部とコネクタとの結合時にあっては、コネクタ対応接続口の受電端子と、センサ本体部対応接続口の給電端子とが電気的に接続される。これにより、コネクタからセンサ本体部への給電経路が確立される。
【0022】
センサ本体部とコネクタとが結合される際の着脱方向は、センサ本体部同士の連結方向に対して直交する方向であることが好ましい。このようにすれば、センサ同士の間隔を大きく離さなくてもセンサ本体部とコネクタとの着脱が容易に行える。また、コネクタの連結状態を維持したままで特定のセンサ本体部だけを取り外せるようにしてもよい。
【0023】
『複数のコネクタ』には、少なくとも1つの親コネクタと1つまたは2つ以上の子コネクタとが含まれている。すなわち、親コネクタが2以上ある場合も含まれる。
【0024】
親コネクタ並びに子コネクタには、隣接するコネクタを着脱自在に結合可能とする隣接コネクタ対応接続口が設けられる。
【0025】
親コネクタの『隣接コネクタ対応接続口』には、給電線より導入された電源を隣接コネクタに供給するための給電端子が少なくとも含まれている。
【0026】
子コネクタの『隣接コネクタ対応接続口』には、一方の隣接コネクタから電源を受け取るための受電端子を少なくとも含む隣接コネクタ対応接続口と、当該端子により受け取った電源を他方の隣接コネクタに供給するための給電端子を少なくとも含む隣接コネクタ対応接続口とが含まれる。
【0027】
隣接コネクタ同士は、互いの隣接コネクタ対応接続口を介して互いに着脱自在に結合される。このとき、一方のコネクタの隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子と他方のコネクタの隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子とが互いに電気的に接続される。これにより、一方のコネクタから他方のコネクタへの電源の受け渡し経路が確立される。
【0028】
より具体的には、親コネクタと子コネクタとは、親コネクタの隣接コネクタ対応接続口と子コネクタの隣接コネクタ対応接続口とを介して着脱自在に結合され、その際に、親コネクタの受電端子と子コネクタの給電端子とが電気的に接続される。これにより、親コネクタから子コネクタへの電源受け渡し経路が確立される。
【0029】
親コネクタに結合された子コネクタと、当該子コネクタに更に隣接する子コネクタとは、互いの隣接コネクタ対応接続口を介して着脱自在に結合され、その際に、親コネクタに隣接する子コネクタの給電端子と、当該子コネクタに更に隣接する子コネクタの受電端子とが電気的に接続される。
【0030】
このようにして、少なくとも1つの親コネクタに1または複数の子コネクタを順次結合していくことによりコネクタ列が形成され、親コネクタを先頭とした一連の電源受け渡し経路が確立される。
【0031】
ここで、好ましくは、親コネクタの隣接コネクタ対応接続口は、隣接コネクタの存在する一方の側面にのみ設けられ、他方の側面には存在しないようにされる。これにより、特に、親コネクタがセンサ列の末端に配置されるような場合には、隣接コネクタの存在しない側には給電端子が露出しないから、給電端子に不用意に触れることによる感電や電源短絡等の危険が回避される。
【0032】
親コネクタおよび子コネクタの各隣接コネクタ対応接続口には、隣接するコネクタと機械的接続および電源接続を行うための接続構造が設けられている。ここで、各隣接コネクタ対応接続口の受電端子および給電端子は、電源接続を行うための接続構造に含まれる。
【0033】
好ましくは、子コネクタの受電端子を含む隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、その接続口に隣接するコネクタに向かって突出する凸部を有するものとされる。また、親コネクタの隣接コネクタ対応接続口の接続構造および子コネクタの給電端子を含む隣接コネクタ対応接続口の接続構造は、その接続口に隣接するコネクタの凸部を受ける凹部を有し、隣接コネクタに向かって突出する凸部は存在しないようにされる。このようにすれば、センサ列のいずれの端からもコネクタの接続構造は突出しない。したがって、センサ列のいずれの端にも突起物がないようにできるから、このセンサ列には、コネクタによる電源接続を行わない他の機器をも密着して設置することが可能となる。また、突起物に作業者の衣服等が不用意に引っかかったり物がぶつかったりすることがない。
【0034】
親コネクタには、給電線を少なくとも含む電気コードが接続されるとともに、当該電気コードを介して給電された電源を、センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに、親コネクタ内部で導通させる内部導体が設けられる。
【0035】
すなわち、親コネクタにおいては、電気コードから導入された電源は、該内部導体を介してセンサ本体部対応接続口と隣接コネクタ対応接続口のそれぞれの給電端子へと供給され、更に、それら給電端子からセンサ本体部並びに隣接子コネクタの受電端子へと受け渡し可能とされる。
【0036】
また、子コネクタには、一方の隣接コネクタ対応接続口に含まれる受電端子を介して受電された電源を、センサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、他方の隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに子コネクタ内部で導通させる内部導体とが設けられる。
【0037】
すなわち、子コネクタにおいては、受電端子により受電された電源は、該内部導体を介してセンサ本体部対応接続口に含まれる給電端子と、隣接コネクタ対応接続口に含まれる給電端子とに供給され、更に、それら給電端子から隣接コネクタ及びセンサ本体部の受電端子へと受け渡しが可能とされる。
【0038】
このような態様によれば、親コネクタに隣接して任意個数の子コネクタを連結することにより、電気コードを介して親コネクタに給電された電源を、コネクタ列を経由させて各センサ本体部へと配電可能となる。
【0039】
すなわち、本発明のセンサシステムは、給電線を少なくとも含む電気コードが接続される親コネクタと、親コネクタに電気的に接続される1または複数の子コネクタとを含むコネクタシステムにより、電源供給ラインを構成するというものであるから、センサ本体部に親コネクタ並びに子コネクタを結合し、かつ隣接するコネクタ同士を連結するだけで、各センサ本体部に電源を供給することができる。このため、給電線は親コネクタにのみ接続すればよく、子コネクタには給電線が不要となるから、システム全体の省配線化を達成できる。
【0040】
更に、コネクタとセンサ本体部とは、着脱自在に結合されるものであるから、例えば、センサ本体部にトラブルが生じた場合には、対応するコネクタから該当するセンサ本体部を着脱操作し、センサ本体部のみを交換することでトラブルを解消できる。すなわち、従来システムに見られるような、センサ本体部交換時における電気コードと例えばPLC等の制御機器との再結線や、それに伴う結束作業といったような煩わしい作業は不要となる。
【0041】
加えて、隣接するコネクタ同士の結合はそのままで、コネクタからセンサ本体部を引き抜くことを可能とすれば、センサ本体部の故障等によりシステム内におけるセンサ本体部の整列配置が途切れても、そこから後続するセンサ本体部への電源供給は途切れることはない。
【0042】
尚、本発明のコネクタシステムは、異なる機種の光電センサのように同種であるが異機種のセンサ間の電源接続または光電センサと近接センサのように異種のセンサ間の電源接続にも適用することができる。この場合、センサ本体部の設計においては、隣接するコネクタ同士が接続できるようにコネクタ位置の配慮がなされておればよい。
【0043】
本発明のコネクタシステムを適用すれば、隣接するセンサ本体部と電源接続するための構造をセンサ本体部自体に持たせようとする場合に想定されるような、センサ本体部の設計上の制約をなくすことができる。
【0044】
また、本発明のコネクタシステムに対応して設計されたセンサ本体部は、親コネクタと接続して、他のセンサと電源接続することなく使用することができる。この場合には、従来の電気コード着脱式のセンサと同様の機能、外観を有するセンサとして使用できる。
【0045】
更に、本発明のコネクタシステムに対応して設計されたセンサ本体部は、隣接コネクタとの接続構造を持たない従来構成のコネクタと接続して使用することもできる。この場合、その用途においては不要な隣接センサとの電源接続構造がどこにもない。
【0046】
このように、本発明においては、電源接続構造をコネクタに持たせているので、センサの使用者は、本発明のコネクタシステムを利用できるように標準化されたセンサ本体部を用いて、用途に応じて最適なシステム構成を柔軟に選択することができる。
【0047】
この発明の好ましい実施態様では、親コネクタに導入される電気コードには1若しくは2以上の信号線が給電線のほかに含まれており、かつ親コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに親コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている。
【0048】
また、子コネクタには1若しくは2以上の信号線を含む電気コードが導入され、かつ子コネクタのセンサ本体部対応接続口には対応する数の信号端子が含まれており、さらに子コネクタ内部には電気コード側の信号線のそれぞれとセンサ本体部対応接続口側の対応する信号端子のそれぞれとの間を結ぶ内部導体が設けられている。
【0049】
これにより、各コネクタはセンサ本体部に対する給電機能に加えて、センサ本体部内の信号端子と電気コード内の信号線との接続機能も併有可能となる。
【0050】
すなわち、センサ本体部への電源供給並びにセンサ本体部から例えばPLC等の制御機器への信号の送受信をコネクタを介して行うことが可能となる。
【0051】
また、この態様においても、コネクタとセンサ本体部とは、着脱自在に結合されるものであるから、例えば、センサ本体部にトラブルが生じた場合には、対応するコネクタから該当するセンサ本体部を着脱操作し、センサ本体部のみを交換することでトラブルを解消できる。すなわち、従来システムに見られるような、センサ本体部交換時における電気コードと制御機器等との再結線や、それに伴う再結束といったような煩わしい作業は不要となる。
【0052】
尚、隣接するセンサ本体部間で信号受け渡しが可能なセンサシステムの場合、個々のセンサから信号出力用電気コードを引き出すことは不要となる。この場合、子コネクタは単なる給電専用のコネクタとなる。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るセンサシステム並びにそれに使用するコネクタの実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0054】
図1は本発明のセンサシステムの全体を表す外観斜視図、図2はセンサ本体部とコネクタとの結合時における様子を側面から示した図、図3はセンサ本体部とコネクタとを分離した状態における様子を示す外観斜視図、図4はセンサ本体部とコネクタとを分離した状態における様子を側面から示した図である。
【0055】
図1に示されるように、本実施形態のセンサシステムは、複数のファイバー型光電センサより構成されるセンサシステムとして実現される。
【0056】
このセンサシステムは、互いに隣接して整列配置される複数のセンサ本体部1(1b,1a1〜1an)と、それらセンサ本体部1に対して着脱自在に結合可能であって、かつ隣接するもの同士でも着脱自在に結合可能である複数のコネクタ(1つの親コネクタ3と複数の子コネクタ21〜2n)を含んでなるものである。
【0057】
センサ本体部1は、この例では、DINレール4上に密接して配置される。また、システムの末端(同図正面から見て左端)に配置されるセンサ本体部1bには親コネクタ3が接続され、当該センサ本体部1bの右側に追従するように一列横隊で密接配置される複数のセンサ本体部1a1〜1anには、それぞれ子コネクタ21〜2nが接続される。
【0058】
図2(a)には、子コネクタ2が接続されたセンサ本体部1aが、図2(b)には、親コネクタ3が接続されたセンサ本体部1bがそれぞれ示されている。同図から明らかなように、本実施形態では、子コネクタ2並びに親コネクタ3が接続されるセンサ本体部1a,1bには、同一規格のものが使用される。すなわち、従来の省配線構造を採用したセンサシステムのように、電気コードから給電される親機用と、隣接機から給電される子機用とに合わせて、2種類の構造のセンサ本体部を用意する必要がない。
【0059】
センサ本体部1は、この例では、偏平状で略直方体状のセンサケース10を有している。センサケース10の両側面には、光通信用の一対の投受光用窓11a,11bが設けられており、隣接するセンサ間では、これらの投受光用窓11a,11bを介して赤外線の投受光を行い、これにより、光電センサの各種設定・調整等を行うことを可能としている。
【0060】
センサケース10内には、図示しない制御基板が装着されており、この制御基板には、電源回路、計測制御回路、隣接ユニット間の通信回路等の各種回路や、隣接センサ間での光通信のための発光素子、受光素子等が実装されている。また、センサケース10の底面には、センサ本体部1をDINレール4に装着するためのレール装着溝12が設けられている。
【0061】
センサケース10の前面(図2中向かって左側)10aからは、光ファイバ5a,5bが引き出され、光ファイバ5a,5bの先端は、図1に示されるようにセンサヘッド部6a,6bを構成している。光電センサは、センサヘッド部6a,6bを介して赤色光の投受光を行うことにより検出対象物体7の状態や、有無等を検出する。
【0062】
センサケース10の後面(図2中向かって右側)10bには、親コネクタ3又は子コネクタ2が接続される。更に、親コネクタ3からは電気コード9が、子コネクタ2からは電気コード8がそれぞれ引き出される。
【0063】
センサ本体部1(1a,1b)と各コネクタ2,3とを分離した状態が、図3の斜視図並びに図4の側面図に示されている。尚、図4中(a)には、センサ本体部1aと子コネクタ2が、同図中(b)には、センサ本体部1bと親コネクタ3とがそれぞれ分離された状態が示されている。
【0064】
図3,図4に示されるように、センサ本体部1(1a,1b)の後面10bにはコネクタ対応接続口13が形成されている。このコネクタ対応接続口13と、同図には示されないコネクタのセンサ本体部対応接続口(図6に符号24で示される)とを介して、センサ本体部1と各コネクタ2,3とが着脱自在に結合可能とされる。
【0065】
各コネクタ2,3の上面には、段部を有する弾性突起片204,304がそれぞれ設けられており、また、センサ本体部1のコネクタ対応接続口13の図示されない天井面には、段部で弾性突起片204,304を係止するための係止片が設けられている。これにより、各コネクタ2,3とセンサ本体部1との接続時における抜け止めがなされる。
【0066】
また、コネクタ対応接続口13には、センサケース10内からセンサ本体部1とコネクタとの接続方向に向けて(縦方向に沿って)4本の端子ピン14a〜14dが突出されている。これら4本の端子ピン14a〜14dは、上下方向に所定ピッチ間隔で配置されており、上から順に、制御出力端子ピン(信号用端子ピン)14a、受電端子ピン14b、アナログ出力端子ピン(信号用端子ピン)14c、受電端子(アース側)ピン14dとされる。端子ピン14は、センサケース10内の内部電気回路を構成する図示しない回路基板と電気的に接続されているため、これらの端子ピン14a〜14dを介して、コネクタ2,3からセンサ本体部1への電源供給並びにセンサ本体部1からコネクタへの信号出力が可能となっている。
【0067】
次に、図5乃至図9に基づき、子コネクタ2の構成について詳細に説明する。図5は子コネクタの外観斜視図、図6は子コネクタの正面図、図7及び図8は子コネクタの分解斜視図、図9は子コネクタに使用される分配器を拡大して示した図である。尚、図5(a)には受電用隣接コネクタ対応接続口を含む子コネクタの一方側面が、図5(b)には給電用隣接コネクタ対応接続口を含む子コネクタの他方側面が示されている。
【0068】
図5乃至図8に示されるように、子コネクタ2は、絶縁体よりなるコネクタハウジング20を有する。コネクタハウジング20は、図7,図8にそれぞれ示されるように、センサ本体部対応接続口(図6中、符号24で示される)を有する前部コネクタハウジング20aと、電気コードを導入するための導入口を有する後部コネクタハウジング20bとに分割構成されている。
【0069】
後部コネクタハウジング20bの上端部及び下端部からは、前部コネクタハウジング20a側へと向けて水平に延びる一対の鈎づめ状突起片201a,201bが突出している。これら鈎づめ突起片201a,201bが、前部コネクタハウジング20aの上端部及び下端部に設けられた係止凸部202a,202bによってそれぞれ係止されることにより、両コネクタハウジング20a,20bの結合時における抜け止めがなされる。
【0070】
また、後部コネクタハウジング20bの背面には、電気コード導入口203が設けられており、電気コード導入口203の縁部からは、ストッパリング21を内側から係止するための一対の鈎づめ状突起片203a,203bが後方に向けて突設されている。ここで、ストッパリング21とは電気コード8がコネクタハウジング20から抜け出ることを防止するためのものである。当該ストッパリング21は、電気コード8を後部コネクタハウジング20bの電気コード導入口203に挿入した後、鈎づめ状突起片203a,203bをストッパリング21に設けられた段部210a,210bに係止させることにより装着される。これにより、電気コード8は、鈎づめ状突起片203a,203bにより上下方向から挟み付けられ、電気コード8の抜け止めがなされる。
【0071】
図5(a)の斜視図、図6の正面図及び図8の分解斜視図にそれぞれ示されるように、前部コネクタハウジング20aの左側面(親コネクタ3に近い側となる側面)には、隣接するコネクタから電源を受け取るための受電端子(電源用内部導体片25b,25dの受電端子部253b,253d)を有する受電用隣接コネクタ対応接続口22が設けられている。尚、受電端子(電源用内部導体片25b,25dの受電端子部253b,253d)については後に詳細に説明する。
【0072】
受電用隣接コネクタ対応接続口22は、受電端子(受電端子部253b,253d)の他、クリップ片221と角柱状の挿入片222とを有している。クリップ片221は、先端部に凸部を有する一対の弾性片を上下に並行して設けてなるものである。また、挿入片222は、隣接するコネクタ同士の結合時におけるぐらつきを防止するための角柱状の突起部であり、クリップ片221の下方に位置して設けられる。
【0073】
図5中(b)の斜視図、図6の正面図及び図7の分解斜視図にそれぞれ示されるように、後部コネクタハウジング20bの右側面(親コネクタ3から遠い側となる側面)には、隣接するコネクタへ電源を受け渡すための給電端子(電源用内部導体片25b,25dの隣接コネクタ用給電端子部254b,254d)を含む給電用隣接コネクタ対応接続口23が設けられている。尚、給電端子(電源用内部導体片25b,25d並びに給電端子部254b,254d)については後に詳細に説明する。
【0074】
給電用隣接コネクタ対応接続口23には、給電端子(電源用内部導体片25b,25dの給電端子部254b,254d)の他、クリップ片221を係止するための係止穴231と、角柱状の挿入片222を挿入するための挿入穴232とが上下に配置されている。また、係止穴231には、図6に示されるように、クリップ片221の先端凸部を係止するための段部231a,231bが設けられている。
【0075】
隣接するコネクタ同士は、一方のコネクタの受電用隣接コネクタ対応接続口22と、他方のコネクタの給電用隣接コネクタ対応接続口23とを介して互いに電気的並びに機械的に接続される。具体的には、一方のコネクタの挿入片222を他方のコネクタの挿入穴232に挿入し、同時に、一方のコネクタのクリップ片221を他方のコネクタの係止穴231に挿入して互いに結合する。このとき、クリップ片221が係止穴231により係止されるため、両コネクタ同士の結合状態がしっかりと保たれる。
【0076】
すなわち、クリップ片221と挿入片222とは、隣接するコネクタとの機械的接続構造としての凸部をなしており、受電端子部253b,253dは、隣接するコネクタとの電源接続構造としての凸部をなしている。また、係止穴231と挿入穴232とは、隣接するコネクタとの機械的接続構造としての凹部をなしており、内部に給電端子部254b,254dが設けられている後述する挿入孔233と挿入孔234とは、隣接するコネクタとの電源接続構造としての凹部をなしている。
【0077】
図6に示されるように、子コネクタ2の前面(センサ本体部側)には、センサ本体部対応接続口24が設けられている。センサ本体部対応接続口24は、センサ本体部1の4つの端子ピン14a〜14dを差し込み可能な挿入孔241a〜241dを具備している。
【0078】
挿入孔241a〜241dの内側には、後に詳細に説明するように、子コネクタ2からセンサ本体部1へと電源を受け渡すための給電端子(電源用内部導体片のセンサ本体部用給電端子部251b,251d)と、センサ本体部1から受け渡される信号データを受け取るたの信号端子(信号用内部導体片25a,25cの信号用端子部251a,251c)とが配置される。尚、信号端子(信号用内部導体片25a,25cの信号用端子部251a,251c)についても、後に詳細に説明する。
【0079】
センサ本体部1と子コネクタ2との接続時には、センサ本体部1の4つの端子ピン14a〜14dのそれぞれは、対応する挿入孔241a〜241dにそれぞれ挿入され、これにより子コネクタ2からセンサ本体部1への電源の受け渡し並びにセンサ本体部1から子コネクタ2への信号の受け渡しが可能とされる。
【0080】
図7及び図8に示されるように、コネクタハウジング20内には、独立した4つの導体片25a〜25dを有する分配器25が収容される。
【0081】
前部コネクタハウジング20aと後部コネクタハウジング20bとの接合面には、それら4つの導体片25a〜25dが互いに非接触となるように凹設可能な収容凹部が設けられている。導体片25a〜25dは、この収容凹部に嵌め込まれことによりコネクタハウジング20内に適当な間隔を置いて位置決め固定される。
【0082】
図9の拡大斜視図から明らかなように、導体片25a〜25dは、センサ本体部1から突出される端子ピン14a〜14dに対応してそれぞれ電気的に接続される端子部(信号用端子部251a,251c、センサ本体部用給電端子部251b,251d)を有している。これら端子部251a〜251dは、挿通孔241a〜241dの内側でセンサ本体部1の端子ピン14a〜14dとより確実に接触するための弾性が付与されている。それら端子部251は、挿入孔241a〜241dの内側の所定位置に配置される。
【0083】
また、導体片25a〜25dは、各種電線をハンダ付け等の固定手段により導体片25に接続するための電線接続用端子部252a〜252dを有している。
【0084】
一番上の導体片25aと上から3番目の導体片25cは、電気コード8に内装されている信号用電線8a,8bと、センサ本体部1の信号用端子ピン14a,14cとをそれぞれ電気的に接続するための信号用導体片である。
【0085】
ここで、信号用導体片25aの電線接続用端子部252aには信号用電線8aが、信号用導体片25cの電線接続用端子部252cには信号用電線8bがそれぞれ結線される。
【0086】
センサ本体部1の信号用端子ピン14a,14cは、図6に示される端子ピン挿入孔241a,241cにそれぞれ挿入され、このとき、信号用導体片25aの信号用端子部251aは信号用端子ピン14aを、信号用導体片25cの信号用端子部251cは信号用端子ピン14cを、それぞれ下方から押し上げるようにして弾性的に接触し、これにより、センサ本体部1の信号用端子ピン14a,14cと子コネクタ2の信号用端子部251a,251cは互いに接触される。
【0087】
すなわち、センサ本体部1と子コネクタ2との接続時には、電気コード8に内装されている信号用電線8a,8bは、子コネクタ2の信号用導体片251a,251cを介してセンサ本体部1の信号用端子ピン14a,14cとそれぞれ電気的に接続されることとなる。
【0088】
上から2番目の導体片25bと最下位(4番目)の導体片25dは、左側(本実施形態において親コネクタに近い側)に隣接するコネクタから受け取った電源を、右側の隣接コネクタに受け渡すと共に、センサ本体部1へと受け渡すための電源用内部導体片である。
【0089】
電源用導体片25b,25dは、一方の側部に隣接するコネクタから電源を受け取るための受電用端子部253b,253dを有している。図5(a)に示されるように、受電用端子部253bは、受電用隣接コネクタ対応接続口22のクリップ片221と挿入片222の間に設けられた挿通孔223から、受電用端子部253dは、挿入片222の下方に設けられた挿通孔224から、それぞれの先端部が隣接コネクタへと向けてコネクタハウジング20の外に突出するよう配置される
【0090】
また、電源用導体片25b,25dは、他方の側部に隣接するコネクタに電源を供給するための隣接コネクタ用給電端子部254b,254dを有している。給電端子部254b,254dには、隣接コネクタとの接続時に、隣接コネクタの受電端子部253b,253dを上方から圧接するための弾性が付与されている。図5(b)に示されるように、給電端子部254bは、給電用隣接コネクタ対応接続口23の係止穴231と挿入穴232の間に設けられた挿入孔233の奥に、給電端子部254dは挿入穴232の下方に設けられた挿入孔234の内部に、それぞれ配置される。尚、導体片25b,25dの電線接続用端子部252b,252dは、本実施形態では使用されない。
【0091】
このような構成において、左側(親コネクタに近い側)に隣接するコネクタとの結合時には、子コネクタ2の受電端子部253b,253dは、隣接コネクタの挿入孔233,234内において隣接コネクタの給電端子部254b,254dにより上方から圧接されつつ互いに電気的に接続される。
【0092】
同様にして、右側(親コネクタから遠い側)に隣接するコネクタとの結合時には、給電端子部254b,254dは、隣接コネクタの受電端子部253b,253dをそれぞれ上方から圧接しつつ互いに電気的に接続される。
【0093】
また、センサ本体部1と子コネクタ2との結合時には、センサ本体部1の受電端子ピン14b,14dは、図6に示される端子ピン挿入孔241b,241dにそれぞれ挿入され、このとき、電源用導体片25bの弾性端子部251bは端子ピン14bを、導体片25dの弾性端子部251dは端子ピン14dをそれぞれ下方から押圧しつつ互いに電気的に接続される。
【0094】
すなわち、左側に隣接するコネクタの隣接コネクタ用給電端子部254b,254dと、センサ本体部1の受電用端子ピン14b,14d及び右側に隣接するコネクタの受電用端子部251b,251dとがそれぞれ電気的に接続されることとなる。
【0095】
尚、図1に示されるように、同図正面から見てセンサシステムの右端に配置されている子コネクタ2nは、右側には隣接する子コネクタが存在しない。この場合には、子コネクタ2nからの電源の受け渡しはセンサ本体部1へのみとなる。
【0096】
次に図10乃至図13に基づき、親コネクタ3の構成について説明する。図10は親コネクタの外観斜視図、図11は親コネクタの正面図、図12は親コネクタの分解斜視図、図13は親コネクタに使用される分配器を拡大して示した図である。尚、図10(a)には給電用隣接コネクタ対応接続口を含む親コネクタの一方の側面が、図10(b)には親コネクタの他方の側面が示されている。
【0097】
親コネクタ3は、子コネクタ2と同一構成の部分が多いため、子コネクタ2と同一構成の箇所には、子コネクタ2の説明で使用した符号と同一の下1桁(全体が2桁の場合)、又は、下2桁(全体が3桁の場合)を引用して、その説明を省略する。
【0098】
図10および図12に示されるように、親コネクタの後部コネクタハウジング30bに導入される電気コード9には、信号用電線8a,8bの他、電源用電線9a,9bが内装されている。
【0099】
図10(a)に示されるように、前部コネクタハウジング30aの一方の側面には、子コネクタ2と同様に、給電用隣接コネクタ対応接続口33が設けられている。すなわち、隣接する子コネクタ2のクリップ片221と挿入片222とをそれぞれ受容するための係止穴331と挿入穴332とが上下に設けられており、また、係止穴331と挿入穴332との間には、隣接子コネクタ2の受電用端子部253bを挿入するための挿入孔333が、挿入穴332の下方には受電用端子部253dを挿入するための挿入孔334がそれぞれ設けられている。すなわち、係止穴331と挿入穴332とは、隣接するコネクタとの機械的接続構造としての凹部をなしており、内部に給電端子が設けられている挿入孔333と挿入孔334とは、隣接するコネクタとの電源接続構造としての凹部をなしている。
【0100】
これに対し、図10(b)に示されるように、前部コネクタハウジング30aの他方の側面には隣接コネクタ対応接続口が設けられていない。これは、図1に示されるように親コネクタ3がセンサシステムの左端に配置されるセンサ本体部1bに結合されることに起因している。
【0101】
すなわち、親コネクタの電源受け取りは、隣接コネクタからではなく、電気コード9に内装される電源用電線9a,9bから行われる。このため、図13に示されるように、親コネクタ3で使用される分配器35の電源用内部導体片35b,35dには、隣接コネクタからの電源を受け取るための受電端子(子コネクタの受電端子部253b,253dに相当する)は設けられていない。代わって、電源用電線9a,9bが受電用導体片35b,35dの電線接続用端子部352b,352dにそれぞれ接続され、これにより、電源用電線9a,9bから電源用導体片35b,35dに電源が受け渡される。このため、親コネクタの隣接コネクタが存在しない側(図1中、センサシステムの左側面となる側)には給電端子部が露出しないから、給電端子部に不用意に触れることによる感電や電源短絡等の危険が回避される。
【0102】
また、子コネクタの一方側(親コネクタに近い側)に設けられた隣接コネクタとの機械的接続構造および電源接続構造は凸形状となっており、子コネクタの他方側(親コネクタから遠い側)に設けられた隣接コネクタとの機械的接続構造および電源接続構造は、該凸形状を受ける凹形状となっている。また、親コネクタの右側だけに設けられた隣接コネクタとの機械的接続構造および電源接続構造も同じく凹形状となっている。したがって、これらのコネクタを相互に接続することにより形成されるコネクタ列にあっては、右端に位置する子コネクタ(図1中、2nで示される)の隣接コネクタが存在しない側の接続構造には、凸部が存在しない。
【0103】
すなわち、コネクタ列のどちらの端にも突出する凸部がないから、これらコネクタが接続されるセンサ列は、DINレール上に並べられた他の機器と密着して設置することも可能となる。
【0104】
また、センサ列の端から突起物が出ているような場合には、該突起物に作業者の衣服が引っかかったり、物がぶつかったりするといった虞があるが、本実施形態ではそのような虞はない。なお、センサ列の末端に配置される子コネクタの隣接コネクタが存在しない側の隣接コネクタ対応接続口には、シール等を貼ることにより凹部を含む接続構造を隠すようにしてもよい。そのようにすれば、より電気的安全性を高めることができる。
【0105】
親コネクタ3とセンサ本体部1との結合時には、センサ本体部1の受電端子ピン14b,14dは、図11に示される受電端子ピン挿入孔341b,341dにそれぞれ挿入され、このとき、電源用内部導体片35bのセンサ本体部用給電端子部351bは受電端子ピン14bを、電源用導体片35dのセンサ本体部用給電端子部351dは受電端子ピン14dをそれぞれ下方から押圧し、互いに電気的に接続される。
【0106】
親コネクタ3と隣接子コネクタ2との結合時には、電源用導体片35bの隣接コネクタ用給電端子部354bは隣接子コネクタ2の受電端子部253bを、隣接コネクタ用給電端子部354dは隣接子コネクタの受電端子部253dをそれぞれ上方から押圧し、互いに電気的に接続される。
【0107】
すなわち、親コネクタ3とセンサ本体部1との結合時には、親コネクタ3に接続される電源用電線9a,9bとセンサ本体部1の受電端子ピン14b,14dとは、親コネクタ3の電源用導体片35b,35dを介して電気的に接続されることとなり、又、親コネクタ3と隣接子コネクタ2との結合時には、電源用電線9a,9bと隣接子コネクタ2の受電端子部253b,253dとが、親コネクタ3の電源用導体片35b,35dを介して電気的に接続されることとなる。
【0108】
以上のような構成により、本実施例では、1つの親コネクタ3と複数の子コネクタ21〜2nをそれぞれ対応するセンサ本体部1(1b,1a1〜1an)に接続すると共に、各コネクタ間を連結することによりコネクタ列を形成し、親コネクタ3に供給された電源を各センサ本体部1へと受け渡すことを可能としている。
【0109】
図14には、本実施形態におけるコネクタ列を介したセンサ本体部1への電源の受け渡し並びにコネクタを介したセンサ本体部から信号用電線8a,8bへの信号の受け渡しの様子が概略的に示されている。尚、便宜上、コネクタには、親コネクタ3と子コネクタ21,22のみを、センサ本体部1にはそれらコネクタの接続されるセンサ本体部1b,1a1,1a2のみを示して説明する。
【0110】
同図に示されるように、親コネクタ3又は子コネクタ2(21,22)が接続されるセンサ本体部1(1b,1a1,1a2)から送出される制御出力並びにアナログ出力は、各コネクタ内部の信号用内部導体片35a,35c,25a,25cを介して、信号用端子ピン14a,14cから信号用電線8a,8bへと受け渡される。これにより、センサ本体部1(1b,1a1,1a2)から、例えばPLC等の制御機器への信号送信が可能とされる。
【0111】
一方、親コネクタ3の電源用電線9a,9bから導入される電源は、親コネクタ3の電源用内部導体片35b,35dを介して、親コネクタ3の接続されるセンサ本体部1bの受電端子ピン14b,14dへと受け渡され、これによりセンサ本体部1b内の回路基板へと電源が供給される。
【0112】
同時に、親コネクタ3の電源用電線9a,9bから導入される電源は、親コネクタ3の電源用導体片35b,35dを介して、隣接子コネクタ21の受電端子部253b,253dへと受け渡される。更に、隣接子コネクタ21の受電端子部253b,253dで受け取った電源は、当該子コネクタ21の電源用内部導体片25b,25dを介して、センサ本体部1a1の受電端子ピン14b,14dへと受け渡される。これにより、電気コード9(電源用電線9a,9b)から親コネクタ3に導入された電源が、センサ本体部1a1内の回路基板へと供給される。
【0113】
更に、子コネクタ21の受電端子部253b,253dで受け取った電源は、子コネクタ21の電源用内部導体片25b,25dを介して、隣接子コネクタ22の受電端子部253b,253dへと受け渡される。隣接子コネクタ22の受電端子部253b,253dで受け取った電源は、当該子コネクタ22の電源用内部導体片25b,25dを介して、センサ本体部1a2の受電端子ピン14b,14dへと受け渡される。これにより、親コネクタ3に導入された電源が、センサ本体部1a2の回路基板へと供給される。
【0114】
このようにして、本実施形態におけるセンサシステムにあっては、親コネクタ3に導入された電源は、親コネクタ3に追従するように一列横隊で密接配置される複数の子コネクタ2(21〜2n)間で順次受け渡され、それぞれのコネクタ2,3が接続されるセンサ本体部1(1b,1a1〜1an)の回路基板へと供給される。すなわち、親コネクタ3と複数の子コネクタ2により構成されるコネクタシステムにより、電源供給ラインが実現される。
【0115】
以上の実施例によるセンサシステムの構成を模式図で表すと図15のようになる。すなわち、親コネクタ3に供給された電源は、親コネクタ3と複数個の子コネクタ21〜2nにより構成されるコネクタ列を介して、各コネクタが接続されるセンサ本体部1(1b,1a1〜1an)内の回路基板へと供給されるから、各センサごとに給電線(電気コード9内の電源用電線9a,9b)を接続する必要がなくなる。これにより、給電線の本数をシステム全体として大幅に削減することができる。
【0116】
加えて、電気コード9を介しての電源供給は親コネクタ3を介して行われるため、センサ本体部1としては、親コネクタ対応用又は子コネクタ対応用を問わず、共通構造のものを採用することができる。これにより、センサ本体部同士で電源受け渡しを行う従前のセンサシステムに比べて、部品点数や部品管理工数が低減されるから、コストダウンが可能となる。また、センサ本体部自体には、親機と子機との区別がないので、その在庫管理も容易となる。
【0117】
又、各コネクタ2,3は、センサ本体部1に対して着脱自在に結合可能であるから、例えば、同図中1a3で模式的に示されるように、センサ本体部が故障したような場合には、コネクタ23に接続された従前の電気コード83は使用したまま、故障したセンサ本体部1a3だけを簡単に交換できる。
【0118】
また、隣接するコネクタ同士の結合はそのままで、コネクタからセンサ本体部1を引き抜くことを可能とすれば、例えば、同図中Aで模式的に示されるように、センサ本体部の交換等の理由により、センサ列の途中にセンサ本体部が存在しないような状態にあっても、そこから後続するセンサ本体部1a6〜1anへの電源供給は維持される。
【0119】
加えて、隣接するコネクタ同士は、着脱自在に結合可能であるから、センサ配置台数の増減にも柔軟に対処することができる。
【0120】
尚、本発明とは直接関係しないため、詳細説明を省略としたが、本実施形態のセンサシステムにあっては、図1乃至図4に示される投受光用窓11a,11bを介して、センサ本体部間での光通信を行うことを可能としている。そのため、本実施形態では、個々のセンサ本体部1から送出される制御出力並びにアナログ出力を、隣接するセンサ本体部間でバケツリレー式に送受信を行うことで、例えば、センサ列の端部に配置される専用の通信ユニットから、シリアル通信を介してPLC等の制御機器への信号送信を一括して行う態様のものとすることもできる。このようにすれば個々のセンサから電気コード8(信号用電線8a,8b)を引き出す必要もなくなり、センサシステム全体としてはより一層の省配線化が実現可能となる。
【0121】
このような場合のコネクタ列の一例を示すと図16のようになる。同図に示されるように、コネクタ列の左端に位置する親コネクタ3からは電気コード9が引き出されているが、複数の子コネクタ2からは電気コードは引き出されていない。すなわち、子コネクタ2は単なる給電専用のコネクタとなっている。
【0122】
【発明の効果】
この発明によれば、親コネクタ以外には給電線が不要となるため、給電線の本数をシステム全体として大幅に削減することができると共に、親機用並びに子機用を問わず、共通構造のセンサ本体部を採用してコストダウンと在庫管理の容易化を図ることができ、しかも、いずれかのセンサ本体部が故障した場合等には、従前の電気コードは使用したまま、故障したセンサ本体部だけを簡単に交換できる。
【0123】
また、この発明によれば、複数のセンサ本体部を密接状態で横列配置する場合において、センサ配置台数の増減に柔軟に対応することができると共に、センサ配置台数に拘わらず必要最小限の給電線本数を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のセンサシステム全体を表す外観斜視図である。
【図2】
センサ本体部とコネクタとを同時に示す図である。
【図3】
図2に示すセンサ本体部とコネクタとを分離した状態を示す斜視図である。
【図4】
図2に示すセンサ本体部とコネクタとを分離した状態を示す側面図である。
【図5】
本発明の子コネクタを示す外観斜視図である。
【図6】
本発明の子コネクタの正面図である。
【図7】
本発明の子コネクタを右後方より示した分解斜視図である。
【図8】
本発明の子コネクタを左後方より示した分解斜視図である。
【図9】
本発明の子コネクタに使用される分配器を示した拡大斜視図である。
【図10】
本発明の親コネクタを示す外観斜視図である。
【図11】
本発明の親コネクタの正面図である。
【図12】
本発明の親コネクタの分解斜視図である。
【図13】
本発明の親コネクタに使用される分配器を示した拡大斜視図である。
【図14】
センサ本体部、親コネクタ、子コネクタの結合状態における電源並びに信号の流れを示す回路図である。
【図15】
本発明のセンサシステムの機能説明図である。
【図16】
本発明の他の実施態様を示す図である。
【図17】
従来のセンサシステムの全体を示す概略斜視図である。
【図18】
従来のセンサシステムにおける給電方式を説明するための図である。
【符号の説明】
1 センサ本体部
2 子コネクタ
3 親コネクタ
4 DINレール
5a,5b 光ファイバ
6a,6b センサヘッド部
7 検出対象物体
8,9 電気コード
8a,8b 信号用電線
9a,9b 電源用電線
10 センサケース
10a センサケース前面
10b センサケース後面
11a,11b 投受光用窓
12 レール装着溝
13 コネクタ対応接続口
14 端子ピン
14a 制御出力端子ピン(信号用端子ピン)
14b 受電端子ピン
14c アナログ出力端子ピン(信号用端子ピン)
14d 受電(アース側)端子ピン
20 コネクタハウジング
20a 前部コネクタハウジング
20b 後部コネクタハウジング
21 ストッパリング
22 受電用隣接コネクタ対応接続口
23 給電用隣接コネクタ対応接続口
24 センサ本体部対応接続口
25 分配器
25a,25c 信号用内部導体片
25b,25d 電源用内部導体片
201a,201b 鈎づめ状突起片
202a,202b 係止凸部
203 電気コード導入口
203a,203b 鈎づめ状突起片
204 弾性突起片
210a,210b 段部
221 クリップ片
222 挿入片
223,224 受電端子部挿通孔
231 係止穴
231a,231b 段部
232 挿入穴
233,234 隣接コネクタ給電端子挿入孔
241 端子ピン挿入孔
251a,251c 信号用端子部
251b,251d センサ本体部用給電端子部
252 電線接続用端子部
253b,253d 受電端子部
254b,254d 隣接コネクタ用給電端子部
30 コネクタハウジング
30a 前部コネクタハウジング
30b 後部コネクタハウジング
31 ストッパリング
33 給電用隣接コネクタ対応接続口
34 センサ本体部対応接続口
35 分配器
35a,35c 信号用内部導体片
35b,35d 電源用内部導体片
301a,301b 鈎づめ状突起片
302a,302b 係止凸部
303 電気コード導入口
303a,303b 鈎づめ状突起片
304 弾性突起片
310a,310b 段部
331 係止穴
331a,331b 段部
332 挿入穴
333,334 隣接コネクタ受電端子部挿入孔
341 端子ピン挿入孔
351a,351c 信号端子部
351b,351d センサ本体部用給電端子部
352 電線接続用端子部
354b,354d 隣接コネクタ用給電端子部
401 DINレール
402 センサ本体部
403 投光用光ファイバ
403a,404a センサヘッド部
404 受光用光ファイバ
405 電気コード
405a 給電線
405b 信号線
406 電源
407 プログラマブルコントローラ(PLC)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-09-07 
結審通知日 2004-09-09 
審決日 2004-09-22 
出願番号 特願2000-99098(P2000-99098)
審決分類 P 1 112・ 832- YA (H01R)
P 1 112・ 537- YA (H01R)
P 1 112・ 121- YA (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 岡田 孝博
平上 悦司
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3266198号(P3266198)
発明の名称 センサシステム  
代理人 池田 博毅  
代理人 佐々木 功  
代理人 飯塚 信市  
代理人 山田 基司  
代理人 川村 恭子  
代理人 飯塚 信市  
代理人 生田 哲郎  
代理人 大友 啓次  
代理人 松本 雅利  
代理人 久保 健  

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