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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1116754
審判番号 不服2003-17793  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-12 
確定日 2005-05-09 
事件の表示 平成 8年特許願第 21123号「チップ型厚膜コンデンサにおける容量値の設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月15日出願公開、特開平 9-213566〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年2月7日の出願であって、平成15年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月30日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年9月30日付けの手続補正について

[補正却下の結論]
平成15年9月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成15年9月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成15年6月27日付けで補正された特許請求の範囲を次のとおり補正する(以下、補正前の請求項1を「補正前請求項1」、補正後の請求項1を「補正後請求項1」という。)とともに、発明の詳細な説明を補正するものである。
「【請求項1】
チップ型絶縁基板の上面に適宜幅寸法にして形成した下層電極膜と、前記絶縁基板の上面に前記下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜と、前記絶縁基板の上面に適宜幅寸法で前記下層電極膜を横断する方向に延びるように前記誘電体膜に重ねて形成した上層電極膜とから成る厚膜コンデンサにおいて、
前記上層電極膜における幅寸法を同じにしたもとで、前記下層電極膜における幅寸法を増減することを特徴とするチップ型厚膜コンデンサにおける容量値の設定方法。」

(2)本件補正についての検討

(2-1)補正事項の整理
補正事項を整理すると以下のとおりである。
【補正事項1】
補正前請求項1を次のように補正する。
「チップ型絶縁基板の上面に適宜幅寸法にして形成した下層電極膜と、前記絶縁基板の上面に前記下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜と、前記絶縁基板の上面に適宜幅寸法で前記下層電極膜を横断する方向に延びるように前記誘電体膜に重ねて形成した上層電極膜とから成る厚膜コンデンサにおいて、
前記上層電極膜における幅寸法を同じにしたもとで、前記下層電極膜における幅寸法を増減することを特徴とするチップ型厚膜コンデンサにおける容量値の設定方法。」
【補正事項2】
明細書の段落0009を変更する。

(2-2)補正の適否についての検討

(2-2-1)新規事項の有無及び補正の目的の適否について
補正事項1は、
a)「チップ型絶縁基板の上面に形成した適宜幅寸法の下層電極膜」(補正前請求項1)を、
「チップ型絶縁基板の上面に適宜幅寸法にして形成した下層電極膜」(補正後請求項1)と補正し、
b)「この下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜」(補正前請求項1)を、
「前記絶縁基板の上面に前記下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜」(補正後請求項1)と補正し、
c)「この誘電体膜の上面に前記下層電極膜を横断するように形成した適宜幅寸法の上層電極膜」(補正前請求項1)を、
「前記絶縁基板の上面に適宜幅寸法で前記下層電極膜を横断する方向に延びるように前記誘電体膜に重ねて形成した上層電極膜」(補正後請求項1)と補正するものである。
前記a)は、「下層電極膜」が「適宜幅寸法」に設定されて形成されたものであることを明確にするように表現を変更するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
前記b)は、「誘電体膜」を形成する部分が「前記絶縁基板の上面」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記c)は、「上層電極膜」を形成する部分が「前記絶縁基板の上面」であり、かつ、「前記誘電体膜に重ねて形成した」ことを限定するとともに、「上層電極膜」が「適宜幅寸法」に設定されて形成されたものであることを明確にするように表現を変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、「下層電極膜」及び「上層電極膜」が「適宜幅寸法」で形成されることは自明の事項であるとともに、図面の図1及び図2を参照すれば、「誘電体膜」及び「上層電極膜」が「絶縁基板の上面」に形成されていることは明らかであるから、補正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

補正事項2は、発明の詳細な説明の記載を補正事項1に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(2-2-2)独立特許要件について
【本件補正後の発明】
本願の補正後請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される前記2.(1)のとおりのものである。

【引用例】
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭54-154764号(実開昭56-78239号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、第4図及び第5図とともに、次のとおり記載されている。
「本考案を第4図、第5図・・・により説明する。第4図・・・は本考案の一実施例を示す厚膜コンデンサの平面図、第5図は第4図のB-B´における断面図である。第4図、第5図・・・において、1はセラミック基板、2は下層電極、3は誘電体層、4は上層電極、4aは引き出し電極である。
本考案による厚膜コンデンサは第4図、第5図に示すごとく、まずセラミック基板1上に下層電極2を印刷、焼成して形成し、次いで下層電極2を覆う誘電体層3を印刷により形成し、さらに該誘電体層上に上層電極4を印刷し、焼成することにより形成される。前記厚膜コンデンサの容量値は、従来技術と同様に誘電体層の厚みに反比例し、第4図の斜線で示す下層電極2に十字に交差し、対向する上層電極4の面積に比例する。なお、この第4図の斜線で示す面積が本考案による厚膜コンデンサの有効面積となる。」(第3頁第11行〜第4頁第8行)
これによれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「セラミック基板上に形成した下層電極と、前記セラミック基板の上面に前記下層電極を覆うように形成した誘電体層と、前記セラミック基板の上面に前記下層電極と十字に交差するように前記誘電体層に重ねて形成した上層電極とから成る厚膜コンデンサにおいて、
下層電極に対向する上層電極の面積で容量値を設定する方法。」

【対比・判断】
引用発明1の「セラミック基板」、「下層電極」、「誘電体層」及び「上層電極」は、本願補正発明の「絶縁基板」、「下層電極膜」、「誘電体膜」及び「上層電極膜」にそれぞれ相当し、引用発明1の「下層電極」及び「上層電極」も「適宜幅寸法」にして形成されていることは明らかである。
また、引用発明1の「下層電極と十字に交差する」ことは、本願補正発明の「下層電極膜を横断する方向に延びる」ことと同等のものである。
したがって、本願補正発明と引用発明1とは、
「絶縁基板の上面に適宜幅寸法にして形成した下層電極膜と、前記絶縁基板の上面に前記下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜と、前記絶縁基板の上面に適宜幅寸法で前記下層電極膜を横断する方向に延びるように前記誘電体膜に重ねて形成した上層電極膜とから成る厚膜コンデンサの容量値の設定方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明においては、「絶縁基板」が「チップ型絶縁基板」であり、そこに「厚膜コンデンサ」を形成して「チップ型厚膜コンデンサ」としているのに対して、引用発明1の「セラミック基板」及び「厚膜コンデンサ」は、その形状が不明である点。

(相違点2)
本願補正発明においては、「前記上層電極膜における幅寸法を同じにしたもとで、前記下層電極膜における幅寸法を増減すること」により容量値を設定しているのに対して、引用発明1においては、「下層電極に対向する上層電極の面積」で容量値を設定するものの、その「面積」を変えるために、「下層電極」と「上層電極」のいずれの幅寸法を増減させているか不明である点。

以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
厚膜コンデンサをチップ型絶縁基板上に形成してチップ型厚膜コンデンサとすることは、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-86504号公報及び特開平7-272978号公報に記載されているように、当該技術分野において周知の技術的事項であるから、引用発明1における「セラミック基板」をチップ型にして、そこに形成される「厚膜コンデンサ」をチップ型のものとすることは、当業者が適宜なし得た単なる設計的事項にすぎない。

(相違点2について)
引用発明1において、「下層電極に対向する上層電極の面積」で容量値を設定する際には、「下層電極」の幅寸法のみを増減させること、「上層電極」の幅寸法のみを増減させること、又は「下層電極」と「上層電極」の双方の幅寸法を増減させること、の三者択一となるが、引用例には、いずれを選択するにあたっても、それを阻害するような記載は見いだせないから、前記選択肢の中から、本願補正発明の「下層電極膜」に相当する「下層電極」の幅寸法のみを増減させることを選択すること、すなわち、本願補正発明の「上層電極膜」に相当する「上層電極」の幅寸法を同じにしたもとで、「下層電極」の幅寸法を増減させることにより、容量値を設定することは、当業者が適宜なし得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(2-3)むすび
前記(2-2-2)に記載したとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、適法でない補正である補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(3-1)本願発明の認定
平成15年9月30日付けの手続補正は前記2.のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年6月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「チップ型絶縁基板の上面に形成した適宜幅寸法の下層電極膜と、この下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜と、この誘電体膜の上面に前記下層電極膜を横断するように形成した適宜幅寸法の上層電極膜とから成る厚膜コンデンサにおいて、
前記上層電極膜における幅寸法を同じにしたもとで、前記下層電極膜における幅寸法を増減することを特徴とするチップ型厚膜コンデンサにおける容量値の設定方法。」

(3-2)引用例
これに対して、前出の引用例(実願昭54-154764号(実開昭56-78239号)のマイクロフィルム)には、前記(2-2-2)に示すとおりの記載があり、これによれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「セラミック基板上に形成した下層電極と、前記下層電極を覆うように形成した誘電体層と、前記誘電体層上に前記下層電極と十字に交差するように形成した上層電極とから成る厚膜コンデンサにおいて、
下層電極に対向する上層電極の面積で容量値を設定する方法。」

(3-3)対比・判断
引用発明2の「セラミック基板」、「下層電極」、「誘電体層」及び「上層電極」は、本願発明の「絶縁基板」、「下層電極膜」、「誘電体膜」及び「上層電極膜」にそれぞれ相当し、引用発明2の「下層電極」及び「上層電極」も「適宜幅寸法」であることは明らかである。
また、引用発明2の「下層電極と十字に交差する」ことは、本願発明の「下層電極膜を横断するように形成した」ことと同等のものである。
したがって、本願発明と引用発明2とは、
「絶縁基板の上面に形成した適宜幅寸法の下層電極膜と、この下層電極膜を覆うように形成した誘電体膜と、この誘電体膜の上面に前記下層電極膜を横断するように形成した適宜幅寸法の上層電極膜とから成る厚膜コンデンサの容量値の設定方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明においては、「絶縁基板」が「チップ型絶縁基板」であり、そこに「厚膜コンデンサ」を形成して「チップ型厚膜コンデンサ」としているのに対して、引用発明2の「セラミック基板」及び「厚膜コンデンサ」は、その形状が不明である点。

(相違点2)
本願発明においては、「前記上層電極膜における幅寸法を同じにしたもとで、前記下層電極膜における幅寸法を増減すること」により容量値を設定しているのに対して、引用発明2においては、「下層電極に対向する上層電極の面積」で容量値を設定するものの、その「面積」を変えるために、「下層電極」と「上層電極」のいずれの幅寸法を増減させているか不明である点。

以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
厚膜コンデンサをチップ型絶縁基板上に形成してチップ型厚膜コンデンサとすることは、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-86504号公報及び特開平7-272978号公報に記載されているように、当該技術分野において周知の技術的事項であるから、引用発明2における「セラミック基板」をチップ型にして、そこに形成される「厚膜コンデンサ」をチップ型のものとすることは、当業者が適宜なし得た単なる設計的事項にすぎない。

(相違点2について)
引用発明2において、「下層電極に対向する上層電極の面積」で容量値を設定する際には、「下層電極」の幅寸法のみを増減させること、「上層電極」の幅寸法のみを増減させること、又は「下層電極」と「上層電極」の双方の幅寸法を増減させること、の三者択一となるが、引用例には、いずれを選択するにあたっても、それを阻害するような記載は見いだせないから、前記選択肢の中から、本願発明の「下層電極膜」に相当する「下層電極」の幅寸法のみを増減させることを選択すること、すなわち、本願発明の「上層電極膜」に相当する「上層電極」の幅寸法を同じにしたもとで、「下層電極」の幅寸法を増減させることにより、容量値を設定することは、当業者が適宜なし得たものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおりに審決する。
 
審理終結日 2005-02-24 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2005-03-22 
出願番号 特願平8-21123
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 574- Z (H01G)
P 1 8・ 572- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹井 文雄  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 河本 充雄
瀧内 健夫
発明の名称 チップ型厚膜コンデンサにおける容量値の設定方法  
代理人 西 博幸  
代理人 東野 正  
代理人 石井 暁夫  

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