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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1117007
審判番号 不服2002-23639  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-09 
確定日 2005-05-16 
事件の表示 特願2001-204487「冷陰極管の駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-119061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年8月30日に出願した特願平6-205293号の一部を平成13年7月5日に新たな特許出願としたものであって、平成14年11月7日付けで拒絶査定がなされ、平成14年12月9日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年12月13日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年12月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成14年12月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、
「積層一体型圧電トランスと、直流入力電圧を交流入力電圧に変換して前記積層一体型圧電トランスに供給するインバータ部とを備える冷陰極管の駆動装置であって、
前記積層一体型圧電トランスは、長手方向に分極された第一の領域と厚み方向に分極された第二の領域を有する圧電トランスであり、前記第一の領域と第二の領域は圧電体シートを積層し一体燒結で形成されており、厚み方向に分極された第二の領域には、前記圧電体シートの表面に内部電極を形成することによって圧電体と内部電極が交互に積層され、前記内部電極が長手方向の側面に設けた外部電極と1層おきに接続され、積層数が6層以上であり、
前記積層一体型圧電トランスは、14V以下の前記交流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が3mA以上の領域でのトランス効率が90%以上であり、
14V以下の前記直流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が5mA以上の領域でのインバータ効率が80%以上であり、液晶ディスプレイに用いることを特徴とする冷陰極管の駆動装置。」
と補正された。
これは、補正前の請求項1に記載した発明の構成事項である「冷陰極管の駆動装置」を、「液晶ディスプレイに用いる冷陰極管の駆動装置」に限定するものであり、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用発明
(2)-1.引用文献1
ア.原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特公平1-20555号公報(平成1年4月17日公告、以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「従って例えばエレクトロルミネセンスを点灯させるための昇圧回路のように数KHz程度の周波数で使用するような要求があった場合には、形が大きくなりすぎ無理があるのである。本発明は、上記欠点を解消するためになされたものであり、数KHz〜数十KHz帯において充分な機能を発揮する小型の圧電トランスを提供せんとするものである。」(2頁左欄39行〜右欄3行)

(イ)「第3図に本発明の圧電トランスを構成素子となる圧電トランス素子を示す。第3図aは、厚み方向に分極された圧電磁器板31の上下両主平面上の一方の端部に寄った領域に駆動電極32,33が設けられた横効果低インピーダンス部分と、長さ方向に圧電磁器板の他端面に向けて分極され圧電磁器板の前記他端面には発電電極34が設けられた縦効果高インピーダンス部分とからなり、長さ方向に縦振動する圧電トランス素子を示したものである。」(2頁右欄4〜13行)

(ウ)「第6図は第5図a,bで示した各圧電トランス素子群A,Bをエポキシ系接着剤等を用いて第6図1点鎖線において強固に接着した本発明の屈曲振動モード圧電トランスの典型的な一例を模式的に示したものである。本発明の圧電トランスの場合、第6図1点鎖線で示した各圧電トランス素子群の接着面が屈曲振動モードの中性線となるように接着する。また、接着方向が重要であり、各々の圧電トランス素子群の最外部にあり中性線に接する2つの圧電トランス素子の駆動部分の分極方向を同一にする必要がある。この理由は屈曲振動の性質上、中性線を境に上側にあるトランス素子群が伸びたとき必ず下側にあるトランス素子群が縮み、また上側にあるトランス素子群が縮んだとき必ず下側にあるトランス素子群が伸びるような駆動を行うことが必要であり、駆動部分のインピーダンスを低くするために並列接続して駆動することが重要だからである。即ち、第6図に示したような電気的結線を行い、電極52a,52bを共通接続して一方の駆動端子61とし、電極53a,53bを共通接続して他方の駆動端子62とする。以上示した理由により駆動端子61と駆動端子62間に電圧を印加すると屈曲振動が励振されるわけである。このようにして屈曲振動が励振されると、圧電トランス素子群Aと圧電トランス素子群Bの変位方向は互いに逆向きであるから、圧電トランス素子群Aと圧電トランス素子群Bの分極方向を第6図のように逆向きにすると電荷が打ち消されずに高電圧が出力端子63から出力されることになる。」(3頁左欄16行〜右欄1行)

(エ)第6図には、トランス素子を8層積層したものが記載されている。

イ.引用文献1に記載のものにおいては、次のことが明らかである。
(ア)圧電トランスが何を駆動するものか明記されていないが、上記(ア)から、エレクトロルミセンス等の点灯装置等の駆動装置に使用可能なものといえる。

(イ)圧電トランスには、交流入力電圧が供給されるものであり、何らかの交流入力電圧を供給する装置が存在するものである。

(ウ)第6図に示される電極52a,52b,53a,53bのうちで、上下の外面に配置される52a,52bを除いたものは、圧電トランスの内部に位置することから、これらは、内部電極であるといえる。

ウ.以上から、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。

「積層一体型圧電トランスと、交流入力電圧を前記積層一体型圧電トランスに供給する装置とを備える点灯装置等の駆動装置であって、
前記積層一体型圧電トランスは、長手方向に分極された第一の領域と厚み方向に分極された第二の領域を有する圧電トランスであり、前記第一の領域と第二の領域は圧電体シートを積層し一体に接着して形成されており、厚み方向に分極された第二の領域には、前記圧電体シートの表面に内部電極を形成することによって圧電体と内部電極が交互に積層され、前記内部電極が外部電極と1層おきに接続され、積層数が6層以上であり、
エレクトロルミセンス等の点灯装置等に用いる駆動装置。」(以下「引用発明」という。)

(2)-2.引用文献2
ア.原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-224484号公報(平成6年8月12日公開、以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「駆動部では、厚さ方向に分極した圧電磁器層111を、分極方向が互い違いになるように内部電極112を挟みながら配置し、その内部電極は1枚おきに表面の外部電極113、114(115、116)と接続されている。尚、ここでは圧電磁器層111を奇数である5層としたため、図1(b)において外部電極113が上と左、114が下と右に配置されているが、圧電磁器層111の数が偶数の場合はどちらかの外部電極が1つの側面と2つの主面、もう一方の外部電極は残りの1つの側面だけに配置される。」(段落【0007】)

(イ)「本発明に基づく圧電磁器トランスの実施例として図1に示した構成の圧電磁器トランスをグリーンシート法により作製した。圧電磁器の材料にはPZT(PbZrO3 -PbTiO3 )系圧電磁器を用いた。また、内部電極は112、122、123はPtペーストを圧電材料のグリーンシート上にスクリーン印刷し、圧電材料と共に一体焼成することにより形成した。ここでは圧電磁器と内部電極の材料としてPZT系圧電磁器およびPtを用いたが、圧電性を有する圧電磁器材料およびそれと一体焼成可能である電極材料であれば他の組合せでも動作することは言うまでもない。」(段落【0017】)

イ.以上から、引用文献2には、次のとおりの事項が記載されていると認められる。

「積層一体型圧電トランスにおいて、圧電体シートを積層して一体焼結で形成するとともに、内部電極に接続する外部電極を圧電トランスの長手方向の側面に設けること。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「積層一体型圧電トランスと、交流入力電圧を前記積層一体型圧電トランスに供給する装置とを備える点灯装置等の駆動装置であって、
前記積層一体型圧電トランスは、長手方向に分極された第一の領域と厚み方向に分極された第二の領域を有する圧電トランスであり、前記第一の領域と第二の領域は圧電体シートを積層して、一体に形成されており、厚み方向に分極された第二の領域には、前記圧電体シートの表面に内部電極を形成することによって圧電体と内部電極が交互に積層され、前記内部電極が外部電極と1層おきに接続され、積層数が6層以上であり、
点灯装置等に用いる駆動装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)
本願補正発明においては、液晶ディスプレイの冷陰極管の駆動装置であるのに対し、引用発明においては、エレクトロルミセンス等の点灯装置等に用いる駆動装置である点。

(相違点2)
交流入力電圧を積層一体型圧電トランスに供給する装置として、本願補正発明においては、直流入力電圧を交流入力電圧に変換するインバータ部を備えているのに対し、引用発明においては、そのような特定がされていない点。

(相違点3)
本願補正発明においては、圧電体シートは一体焼結で形成されており、また、外部電極は圧電トランスの長手方向の側面に設けられているのに対し、引用発明においては、圧電シートは接着によって一体化されており、また、外部電極がどこに設けられるのか特定されていない点。

(相違点4)
本願補正発明においては、積層一体型圧電トランスは、14V以下の交流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が3mA以上の領域でのトランス効率が90%以上であり、
14V以下の直流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が5mA以上の領域でのインバータ効率が80%以上であるのに対し、引用発明においては、そのような構成とされていない点。

(4)判断
(4)-1.相違点1について
ア.引用発明の駆動装置は、液晶ディスプレイの冷陰極管の駆動装置とはされていない。
しかし、引用発明のものは、エレクトロルミセンス等の点灯装置等に用いる駆動装置であって、点灯装置の駆動装置ということでは共通するものであり、また、圧電トランスによって液晶ディスプレイの冷陰極管を駆動することは、例えば、特開平5-114492号公報(段落【0003】参照)、特開平6-204582号公報(段落【0002】参照)、特開平6-167694号公報(段落【0001】参照)に記載されるとおり、周知の技術に過ぎない。

イ.そうすると、相違点1に関する本願補正発明の構成とすることに、何ら格別の困難性も認められない。

(4)-2.相違点2について
ア.引用発明においては、積層一体型圧電トランスに交流入力電圧を供給する具体的装置は、特定されていない。
しかし、圧電トランスに交流入力電圧を供給するために、直流入力電圧を交流入力電圧に変換するインバータ部を備えることは、例えば、実願平4-67415号(実開平6-9377号)のCD-ROM、実願平3-51817号(実開平5-4779号)のCD-ROM、特開平6-85343号公報(図7のスイッチング回路25を参照)に記載されるとおり、周知の技術に過ぎない。

イ.そうすると、相違点2に関する本願補正発明の構成とすることに、何ら格別の困難性も認められない。

(4)-3.相違点3について
ア.引用発明においては、圧電シートは接着によって一体化されており、また、外部電極がどこに設けられるのか特定されていない。
しかし、引用発明及び本願補正発明と同じく、積層一体型圧電トランスの駆動に関する技術に属する引用文献2に、圧電体シートを積層して一体焼結で形成するとともに、内部電極に接続する外部電極を圧電トランスの長手方向の側面に設けることが記載されている。

イ.そして、引用文献2に記載されたこのような技術を引用発明に適用することを妨げる特段の理由もないことから、相違点3に関する本願補正発明の構成とすることは、容易になし得たものと認められる。

(4)-4.相違点4について
ア.本願補正発明においては、積層一体型圧電トランスは、14V以下の前記交流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が3mA以上の領域でのトランス効率が90%以上であり、14V以下の前記直流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が5mA以上の領域でのインバータ効率が80%以上であるとの数値限定を行っている。

イ.ところで、トランス効率、インバータ効率が高いことが望ましいことは、技術常識であるところ、本願補正発明においては、そのような高効率を得るために、構成要件における何らかのファクターを臨界的意義を有する数値に限定したというようなものではなく、14V以下の交流入力電圧であっても、冷陰極管を流れる管電流が3mA以上の領域でのトランス効率が90%以上であり、14V以下の直流入力電圧であっても、冷陰極管を流れる管電流が5mA以上の領域でのインバータ効率が80%以上であるという望ましい効果を特定したに過ぎないものである。

ウ.そうすると、相違点4に関する本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものであるといえる。

(4)-5.全体について
本願補正発明の全体の作用効果としても、引用発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)以上のとおり、平成14年12月13日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1及び2に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
「積層一体型圧電トランスと、直流入力電圧を交流入力電圧に変換して前記積層一体型圧電トランスに供給するインバータ部とを備える冷陰極管の駆動装置であって、
前記積層一体型圧電トランスは、長手方向に分極された第一の領域と厚み方向に分極された第二の領域を有する圧電トランスであり、前記第一の領域と第二の領域は圧電体シートを積層し一体燒結で形成されており、厚み方向に分極された第二の領域には、前記圧電体シートの表面に内部電極を形成することによって圧電体と内部電極が交互に積層され、前記内部電極が長手方向の側面に設けた外部電極と1層おきに接続され、積層数が6層以上であり、
前記積層一体型圧電トランスは、14V以下の前記交流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が3mA以上の領域でのトランス効率が90%以上であり、
14V以下の前記直流入力電圧で、冷陰極管を流れる管電流が5mA以上の領域でのインバータ効率が80%以上であることを特徴とする冷陰極管の駆動装置。」

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献には、上記2(2)のとおりのものが記載されている。

(3)対比、判断
本願補正発明は、本願発明を限定したものであり、本願補正発明が、上記のとおり、引用発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-18 
結審通知日 2005-03-25 
審決日 2005-03-31 
出願番号 特願2001-204487(P2001-204487)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02M)
P 1 8・ 121- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 安池 一貴
岩本 正義
発明の名称 冷陰極管の駆動装置  

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