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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D
管理番号 1117099
審判番号 不服2002-768  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-16 
確定日 2005-05-20 
事件の表示 平成4年特許願第84706号「客室構造」拒絶査定不服審判事件〔平成5年9月24日出願公開、特開平5-246355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年3月6日の出願であって、その請求項1〜7に係る発明は、平成17年1月31日付けの手続補正書によって全文補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認める(請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】 乗物(1)の内部空間(2)には複数個のカプセル(3)が前後方向に配設され、各々のカプセル(3)の内部は客室(4)となっていて、各々の客室(4)に座席(13)が設けられており、前後に隣接するカプセル(3)は、前方のカプセル(3)の略水平な底部(7)の後端から斜め後上方に立設された隔壁部(9)に対し、後方のカプセル(3)の略水平な底部(7)の前端から斜め後上方に立設された足元部(8)がもぐり込むようにして密着され、相互に分離可能に結合されており、もって前方の客室(4)の頭部空間と後方の客室(4)の足元空間とは隔壁部(9)及び足元部(8)を隔てて上下に重なっていることを特徴とする乗物の客室構造。」

2.引用刊行物の記載
当審における平成16年11月24日付けで通知した拒絶理由に引用された本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1〜10及び今回提示の周知例である本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物11〜14並びにその記載事項は以下のとおりである。

刊行物1:実願平1-144037号(実開平3-82284号)のマイク
ロフィルム
刊行物2:米国特許第1901023号明細書
刊行物3:仏国特許発明第545646号明細書
刊行物4:特公昭40-8847号公報
刊行物5:実願昭56-18375号(実開昭57-131345号)のマ
イクロフィルム
刊行物6:米国特許第2977898号明細書
刊行物7:特開平2-197469号公報
刊行物8:米国特許第2953103号明細書
刊行物9:実公昭62-368号公報
刊行物10:実願昭54-174036号(実開昭56-91844号)の
マイクロフィルム
刊行物11:実願平2-64273号(実開平4-21680号)のマイク
ロフィルム
刊行物12:実願昭61-93815号(実開昭63-1155号)のマイ
クロフィルム
刊行物13:特開平3-292254号公報
刊行物14:独国特許出願公開第3901140号明細書(1990)

(1)刊行物1
刊行物1には、「バス」に関し、第1〜3図とともに次の事項が記載されている。
A)「本考案は、車室内で前後方向に設けられた通路に沿って座席装置を点在配置してなるバスであって、前記通路へ通じる出入口を各々設けて前記車室内を間仕切りし前記車室内に複数の個室を形成するとともに、前記個室内に前記座席装置を各々配設したものである。
(作用)
この構成によれば、座席装置毎が間仕切りによって個室化されているので、他の乗客に話し声が聞えたり、物が見えたりすることをなくすことができ、プライバシーの保護が図れる。」(第2頁第15行〜第3頁第5行)

B)「図において、バス1は、車室内で前後方向に通路2を確保し、この通路2の左右両側に座席装置3,5が前後方向に点在した状態で配設されている。なお、座席装置3,5のうち、通路2を挟んで片側に配置される座席装置3は二人掛け用で、これと反対側に配置される座席装置5は一人掛け用になっている。さらに、各座席装置3,5と通路2、および各座席装置3,5における前後の間は間仕切り6によって隔てられ、この間仕切り6で車室内に複数の個室7が形成された状態になっている。また、この各個室7にはアコーデオンカーテン8で開閉される出入口11(第2図参照)が設けられ、この出入口11で各個室7と通路2とがつながり、この各個室7内にそれぞれ対応する座席装置3,5を設けている。なお、各個室8の出入口11はアコーデオンカーテン8に代えてドア等を用いても良いものである。」(第3頁第12行〜第4頁第8行)

C)「この個室7を形成している間仕切り6は、窓ガラス9がはめ込まれた車体側壁10に対して直角に配置され前後の座席装置3の間を仕切る間仕切り部6Aと、通路2との間を仕切る間仕切り部6Bとを有し、横断面が略L字状に形成されている。また、間仕切り部6Aの上部と間仕切り部6Bの上部には、着色された半透明なアクリル板などがそれぞれ装着された窓12,13が設けられている。そして、この窓12,13を通して個室7の内部が少し見えるようにして、個室化したときにおける例えば防犯上などの各種問題点の解決を図るようにしている。」(第4頁第18行〜第5頁第9行)

D)「個室7内に配置された座席装置3は、リクライニング機構が設けられ、シートバック3Aが第3図中に実線で示す起立位置から一点鎖線で示す転倒位置までの間で、傾き量を調整しながら倒すことができるようになっている。また、前面側には折畳み可能な補助フットレスト17が設けられており、同図中実線で示す折畳み位置から一点鎖線で示す位置まで引き出して脚を乗せることができるようになっている。そして、シートバック3Aを後側へ倒すと共に、補助フットレスト17,折畳みフットレスト16をそれぞれ引き出すと、同図中一点鎖線で示すように乗客が完全に横になってゆっくりと休息を取ることができる。
したがって、このように各座席装置3,5を個室化してなるバス1では、各個室7内は窓12,13を通して内部が見られるだけで、また間仕切り6で仕切られているので話し声も他の乗客等に伝わりずらくなり、プライバシーが比較的良く守れる。」(第6頁第1〜19行)

上記A)〜D)の記載と併せて第1〜3図を参照すれば、刊行物1には、「バス1の車室内には複数の間仕切り6が前後方向に配設され、各々の間仕切り6の内部は個室7となっていて、各々の個室7に座席装置3,5が設けられているバス。」が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)

(2)刊行物11
刊行物11には、「二人用独立居室」に関し、第1〜11図とともに次の事項が記載されている。
E)「二人用独立居室1は上述の鮪延縄漁船20に適用されているが、船舶一般に適用することができ、また、電車や汽車の客室として適用することもでき、さらに、建築物のカプセルルームにも適用することもできる。」(第12頁第16〜20行)

(3)刊行物12
刊行物12には、「収納箱付き寝台ユニット」に関し、第1〜7図とともに次の事項が記載されている。
F)「本考案は、たとえば小型船舶や車輌などの乗物の寝室、あるいは地上の宿泊施設など狭い居住空間に使用される収納箱付き寝台ユニットに関するものである。」(第1頁第14〜17行)

(4)刊行物13
刊行物13には、「鉄道車両用個室寝台」に関し、第1〜8図とともに次の事項が記載されている。
G)「本発明は、車両内部にそのまま収納連接することができる繊維強化プラスチック(FRP)で構成された2段式の鉄道車両用個室寝台に関する。」(第1頁右下欄第19〜第2頁左上欄1行)

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「バス1」は本願発明の「乗物」に相当し、以下同様に、「車室内」は「内部空間」に、「個室7」は「客室」に、「座席装置3,5」は「座席」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「バス」は、車室内に、乗客が掛ける座席装置3,5を配設した複数の個室7を形成したものであり、刊行物1には、「客室構造」が記載されているといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、「乗物の内部空間には複数の区画が前後方向に配設され、各々の区画の内部は客室となっていて、各々の客室に座席が設けられている乗物の客室構造。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明では、区画を、相互に分離可能に結合されており、略水平な底部と、略水平な底部の後端から立設された隔壁部と、略水平な底部の前端から立設された足元部とを備えるカプセルで形成しているのに対して、
引用発明では、区画を間仕切り6で形成している点。

相違点2:本願発明では、前方の客室の頭部空間と後方の客室の足元空間とは上下に重なっているのに対して、
引用発明では、前方の客室の頭部空間と後方の客室の足元空間とは上下に重なることについては言及がない点。

4.当審の判断
上記各相違点について以下で検討する。
《相違点1について》
建物の内部空間において、客室をカプセルで形成することは、当審において通知した前記拒絶理由にて示したように、刊行物9、10に記載されているように従来周知であるが、そればかりでなく、乗物の内部空間においても、客室をカプセルで形成することは、従来周知(例えば、刊行物11〜13参照。)の技術的事項である。そして、バス等の客室をカプセルで形成する場合、略水平な底部と、略水平な底部の後端から立設された隔壁部と、略水平な底部の前端から立設された足元部とを備えるようにするのは、普通の態様といえるから、本願発明の相違点1に係る構成は、上記周知技術に基づいてこの発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば容易に想到できた事項である。

《相違点2について》
乗物において、乗客定員数を増やして輸送効率を上げるために、前後に隣接する乗客を隔てる部材(座席の背当てを支持する部材、寝台、戸棚等)を傾斜させて設け、前後に隣接する一方の乗客の頭部空間と他方の乗客の足元空間とが上下に重なるように、乗客を配置することは、当審で通知した前記拒絶理由にて示したように、刊行物2〜5に記載されているように従来周知(更には、今回提示の周知例である刊行物14のFIG.1〜3にも示されている。)の技術的事項であり、本願発明の上記相違点2に係る構成は、この周知技術に基づいてこの発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば容易に想到することができた事項である。

そして、上記相違点1、2に係る構成を併せ備える本願発明が奏する作用効果も、引用発明と上記各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものでもない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、この発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-08 
結審通知日 2005-03-15 
審決日 2005-03-31 
出願番号 特願平4-84706
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 聡川村 健一  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 増岡 亘
藤井 俊明
発明の名称 客室構造  
代理人 松原 等  

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