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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1117142
審判番号 不服2003-2871  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-21 
確定日 2005-05-18 
事件の表示 平成 8年特許願第 77293号「ディスプレイ・システム、インテリジェント・テレビジョン受像装置及び視覚的イメージを表示する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-331410〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年3月29日の出願(パリ条約による優先権主張1995年5月31日、米国)であって、平成14年11月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年2月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月21日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月21日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「テレビジョン受像機と、前記テレビジョン受像機から或距離だけ離れて使用可能な3軸遠隔制御装置と、ディスプレイ・コントローラとを含むディスプレイ・システムであって、
前記テレビジョン受像機は、
ユーザに視覚的イメージを表示するためのビデオ・ディスプレイ装置と、
前記ビデオ・ディスプレイ装置に接続され、ユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送られた信号を受信するための、及び前記視覚的イメージを表示するために前記ビデオ・ディスプレイ装置を駆動するビデオ信号を前記ビデオ・ディスプレイ装置に配送するためのビデオ受信回路と、
を有すること、
前記遠隔制御装置は、
ユーザの手に保持されるようなサイズのハウジングと、
前記ハウジング内に装着され、ユーザによる操作のための手で接触可能な入力装置と、
前記ハウジング内に装着され且つ前記入力装置に結合され、ユーザによる前記入力装置の操作に所定の方法で調整されたコマンド信号をユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送信するためのコマンド送信回路と、
を有すること、及び
前記ディスプレイ・コントローラは、
前記コマンド信号を前記コマンド送信回路から受信すると共に、前記視覚的イメージの変更を指示するイメージ指示信号を前記受信されたコマンド信号から取り出すためのコマンド受信回路と、
システム・バスを有するマイクロプロセッサとは別に構成され、前記イメージ指示信号の受信に応答して前記システム・バスのバス・マスタとされるビデオ・ブリッタを含み、かつ前記コマンド受信回路及び前記ビデオ受信回路に接続され、前記イメージ指示信号を受信し、前記イメージ指示信号に応答して前記視覚的イメージの表示を制御する制御プログラムを実行し、ユーザによる前記遠隔制御装置の操作によって指示されるように前記視覚的イメージを変更するためのコマンド処理回路と
を有し、
前記ビデオ・ブリッタは、前記イメージ指示信号の受信に応答してオペレーションを遂行する間、前記システム・バスを所有すること
を特徴とするディスプレイ・システム。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「コマンド処理回路」について「前記イメージ指示信号に応答して前記視覚的イメージの表示を制御する制御プログラムを実行し」との限定を付加し、同じく「ビデオ・ブリッタ」について「前記イメージ指示信号の受信に応答してオペレーションを遂行する間、前記システム・バスを所有すること」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-336397号公報(平成5年12月17日出願公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、次のとおりの記載がある。
(a)「本発明に係るテレビジョン受像機では、遠隔操作装置からの所定コードを受信し、所定コードに基づいて、画面に表示されるカーソルを移動すると共に、操作メニュー上のカーソルが位置する機能を選択し、選択された機能が動作するように制御する。」(第0017段落)
(b)「先ず、遠隔操作装置について説明する。この遠隔操作装置(以下リモコンという)10は、図1に示すように、後述するテレビジョン受像機の画面に表示されるカーソルを移動するためのポインティングディバイスである例えばジョイスティック11と、ビデオテープレコーダ(以下VTRという)等の複数のビデオ機器からの映像信号を切り換え選択するためのキースイッチ(以下ダイレクトファンクションキー)群12と、上記ジョイスティック11及びダイレクトファンクションキー群12の出力を所定コードに変換するコンピュータ(以下CPUという)13と、該CPU13からの所定コードを例えば赤外線によって送信する送信部14と、上記CPU13等に電力を供給する電源部15とを備えている。」(第0019段落)
(c)「そして、このリモコン(所謂コマンダ)10は、ジョイスティック11及びダイレクトファンクションキー群12の出力を所定コード、例えば従来のリモコンで用いられているフォーマットに準拠した所定コードに変換すると共に、この所定コードにより変調された赤外線をテレビジョン受像機に送出するようになっている。」(第0020段落)
(d)「このジョイスティック11は、スティックを所謂ニュートラルポジションに対して前後左右に例えば約30度(以下最大傾斜角という)の範囲で自在に傾けることができ、離すとニュートラルポジションに戻ると共に、スティックとクリックスイッチ11cが連動しており、スティックをその軸方向に押すとクリックスイッチ11cがオンするようになっている。」(第0023段落)
(e)「そして、CPU13は、上述のようにして生成した所定コード(カーソル移動コード、クリックコード、制御コマンドコード)を送信部14に供給する。この送信部14は、上述の図1に示すように、例えば赤外線を発光する発光ダイオード14aと、該発光ダイオード14aを駆動するトランジスタ14bとからなり、CPU13は、トランジスタ14bに所定コードに基づいてベース電流を供給することにより、発光ダイオード14aからは所定コードで変調された赤外線が送出される。」(第0043段落)
(f)「このテレビジョン受像機20は、例えば図6に示すように、入力映像信号に基づいた画像を画面に表示する映像部21と、複数の機能に対する操作メニュー及びカーソルを上記映像部21の画面に表示するグラフィック表示部22と、ソース機器からの音声信号に基づく音を出力する音声部23と、上記リモコン10からの所定コードを受信し、この所定コードに基づいて、上記グラフィック表示部22により表示されるカーソルが移動すると共に、操作メニュー上のカーソルが位置する機能を選択し、選択された機能が動作するように上記映像部21〜音声部23を制御する制御部24と、該制御部24からの制御コマンドコードをビデオ機器やCDプレーヤ等のオーディオ機器に送信する送信部25とを備えている。」(第0055段落)
(g)「このブラウン管21iには、グラフィック表示部22からのRGB信号に基づいて、切換スイッチ21cで選択されたソース機器を制御するために必要な操作メニューが表示される。例えば図8に示すように、再生、停止、早送り、録画等を示す所謂アイコンからなるVTR用の操作メニュー41とカーソル42が表示される。
具体的には、上記グラフィック表示部22は、上述の図6に示すように、グラフィックデータを記憶しているビデオRAM(以下VRAMという)22aと、該VRAM22aからのグラフィックデータの読出等を制御するコントローラ22bとを備える。そして、VRAM22aには、例えば、このテレビジョン受像機20が具備する機能の項目(以下メニュータイトルという)、カーソル、VTRやCDプレーヤ等のAV機器用の操作メニュー、チャンネル番号等を表示するためのグラフィックデータが予め記憶されており、コントローラ22bは、制御部24からの命令に基づいて、これらのグラフィックデータを読み出すと共に、RGB信号に変換して切換スイッチ21hに供給するようにVRAM22aを制御する。例えば、コントローラ22bは、VTR用の操作メニューを表示する命令に基づいて、VTR用の操作メニューのグラフィックデータと、カーソルのグラフィックデータを読み出す制御を行い、VRAM22aは、これらのグラフィックデータを読み出すと共に、グラフィックデータをRGB信号と輝度信号Yに変換して、切換スイッチ21hに供給する。切換スイッチ21hは、この輝度信号Yに基づいて、VRAM22aからのRGB信号とRGBINF21gからのRGB信号を切り換え選択する。この結果、例えば上述の図8に示すように、領域31に操作メニュー41とカーソル42が表示される。」(第0059-0060段落)
(h)「また、上記制御部24は、上述の図6に示すように、上記リモコン10からの所定コードを受信する受信回路24aと、該受信回路24aで受信された所定コードに基づいて、上記グラフィック表示部22により表示されるカーソルが移動すると共に、操作メニュー上のカーソルが位置する機能を選択し、選択された機能が動作するように上記映像部21〜送信部25を制御するコンピュータ(以下CPUという)24bと、上記リモコン10と同等の機能を有し、操作パネルに設けられた操作部24cとを備えている。
そして、受信回路24aは、リモコン10から赤外線によって送られてくる所定コードを受信し、CPU24bは、受信回路24aで受信された所定コードをデコードし、デコード結果に基づいて、チューナ21b、切換スイッチ21c、21d、フレームメモリ21e、コントローラ22b等を制御する。
(中略)
また、例えばカーソル移動コードを受信すると、CPU24bは、このカーソル移動コードをデコードして、ブラウン管21iに表示されているカーソルが移動するように、新たな座標データをコントローラ22bに供給する。そして、クリックコードを受信すると、そのときにカーソルが位置する機能に応じて、切換スイッチ21c、21d、コントローラ22b等を制御すると共に、例えばVTR51aに対する再生を開始する制御コマンドコードを生成し、この生成した制御コマンドコードを送信部25に供給する。」(第0062-0065段落)
(i)「ステップST2において、CPU24bは、受信された所定コードの種類、すなわち受信された所定コードが、上述した制御コマンドコード、カーソル移動コード、ドラッグコードのいずれに該当するかを判別し、制御コマンドコードのときはステップST3に進み、カーソル移動コードのときはステップST4に進み、ドラッグコードのときはステップST5に進む。」(第0069段落)
(j)「ステップST3において、CPU24bは、制御コマンドコードに基づいて、複数のビデオ機器からの映像信号を切り換え選択する制御を行うと共に、選択されたビデオ機器を操作するために必要な操作メニューを表示する制御を行う。
具体的には、例えば、ソース機器をVTR51aにする制御コマンドコードに基づいて、VTR51aからの映像信号が選択されるように切換スイッチ21cを制御すると共に、VTRの操作に必要な操作メニュー及びカーソルを表示する命令をコントローラ22bに供給する。コントローラ22bは、この命令に基づいて、VRAM22aからVTR用の操作メニュー及びカーソルの表示に必要なグラフィックデータを読み出す制御を行い、VRAM22aは、グラフィックデータを読み出すと共に、そのグラフィックデータをRGB信号と輝度信号Yに変換して、切換スイッチ21hに供給する。この結果、例えば上述の図8に示すように、VTRの操作に必要な再生、停止、早送り等のアイコンからなる操作メニュー41が表示される。このように、リモコン10からの制御コマンドコードに基づいて、ソース機器の切り換えを行うと共に、選択したソース機器用の操作メニューを表示することにより、利用者は、所望のソース機器に対する操作メニューを複数の操作メニューからわざわざ選択する操作を行うことなく、選択したソース機器用の操作メニューが自動的に表示され、画面を見ながらVTR等のソース機器を簡単に操作することができる。」(第0070-0071段落)
(k)「一方、ステップST4において、CPU24bは、後述するように、カーソル移動コードに基づいて、ブラウン管21iに表示されるカーソルを移動すると共に、操作メニュー上のカーソルが位置する機能を選択し、選択された機能が動作するように映像部21〜送信部25を制御する。また、このとき、CPU24bは、必要に応じて、ソース機器を制御するための制御コマンドコードを生成する。例えば、利用者が、リモコン10のジョイスティック11を用いてカーソルを、例えば操作メニュー内に表示されたVTRの再生を表すアイコンに移動し、クリックスイッチ11cをオンにすると、CPU24bは、リモコン10から送られてくるクリックコードに基づいて、再生を開始する制御コマンドコードを生成し、この制御コマンドコードを駆動回路25bに供給する。
また、このステップST4において、CPU24bは、後述するように、カーソル移動コードに基づいて、カーソル形状がカーソル表示位置に応じて機能に対応した形状となるようにコントローラ22bを制御する(以下カーソル形状の制御という)。
また、CPU24bは、後述するように、カーソル移動コードの有無を検出し、カーソル移動コードが所定時間無いときに、カーソルの表示を停止するようにコントローラ22bを制御する(以下、カーソル移動コードの有無によるカーソル表示の停止制御という)。
また、CPU24bは、後述するように、カーソルが所定領域に移動したときに、カーソルの表示を停止するようにコントローラ22bを制御する(以下、カーソルの表示位置によるカーソル表示の停止制御という)。」(第0076-0079段落)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-46538号公報(平成5年2月26日出願公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、次のとおりの記載がある。
(l)「MPUを利用したシステムにおいて、特に高性能システムなどでは、MPU以外に、データの処理等を行う回路やプロセッサを付加し、システム全体の性能を向上させるケースがある。一般的な例として、例えば、MPUの演算能力を強化するための浮動小数点演算プロセッサ(FPU)等が考えられる。
このような付加回路は、MPUのファミリープロセッサとして提供する場合にはコプロセッサ(共働プロセッサ)としてMPU側にコプロセッサ用インタフェースを持たせる例もあるが、通常は、MPU側に手を加えることができず、その対応が難しい。
コプロセッサ形式以外では、付加回路自身がバスマスタ機能を有し、それによってMPUからバス権を獲得し、該MPUと独立に動作できるようにした制御方式がある。画像プロセッサの一部などがこの形式をとるが、やはり上記コプロセッサ形式と同様、その対応が難しく、また、バスのアービトレーションも複雑となり、その切り替えに多大の時間を要するという問題がある。」(第0002-0003段落)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-91787号公報(昭和63年4月22日公開、以下「引用例3」という。)には、図面と共に、次のとおりの記載がある。
(m)「図形処理装置10は中央処理装置11あるいはメインメモリ12から転送されるコマンドとパラメータ情報を中央処理装置11に接続されたデータバスより受け取り、あらかじめ定められた処理手順に従って、フレームバッファ14あるいはメインメモリ12をフレームバッファ14に接続されたアドレス/データバスよりアクセスし文字や図形データを発生する。」(第5頁右上欄第8-15行)
(n)「ホールド(HOLD:出力)
図形処理装置10がシステムバスに対しバス要求を出力し、バスマスタになった後、そのバスを占有している期間中この端子に”High”を出力する。」(第10頁右上欄第9-13行)
(o)「中央処理装置(CPU)11からコマンドを受け取ると、コマンドはコマンドレジスタ1015へセットされ、それに対応したマイクロプログラムが第1のマイクロプログラムROM1011から読み出される。」(第11頁左上欄第1-5行)

(3)対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用例1発明」という。)とを対比する。
(ア)引用例1の上記記載(a)(b)(c)(d)によれば、引用例1発明のテレビジョン受像器を操作する遠隔操作装置は、ジョイスティックを備えるものであり、ジョイスティックは前後左右に動き、スティックを軸方向に押すとクリックスイッチがオンになるようになっているから、引用例1発明の遠隔操作装置は「3軸遠隔制御装置」であるといえる。
(イ)引用例1の上記記載(b)(c)(e)によれば、引用例1発明の遠隔操作装置はジョイスティックの操作を遠隔操作装置のフォーマットに準拠したコードに変換し、変換されたコードにより変調された赤外線をトランジスタと発光ダイオードからなる送信部からテレビジョン受像器に送出するものである。ここで、「赤外線の周波数」は「ユーザによる直接感知の範囲外の周波数」であることは技術常識であるから、引用例1発明の遠隔操作装置は「ユーザによる入力装置の操作に所定の方法で調整されたコマンド信号をユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送信するためのコマンド送信回路」を備えているといえる。
また、遠隔操作装置(リモコン)は、普通、ユーザの手に保持されるサイズであり、引用例1の図5によれば、遠隔操作装置の本体操作パネル面にジョイスティックが設けられている。
したがって、引用例1発明は本願補正発明の構成要件である「遠隔制御装置は、ユーザの手に保持されるようなサイズのハウジングと、前記ハウジング内に装着され、ユーザによる操作のための手で接触可能な入力装置と、前記ハウジング内に装着され且つ前記入力装置に結合され、ユーザによる前記入力装置の操作に所定の方法で調整されたコマンド信号をユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送信するためのコマンド送信回路と、を有すること」に相当する構成を有しているといえる。
(ウ)引用例1の上記記載(f)及び図6によれば、引用例1発明のテレビジョン受像器は入力映像信号に基づいた画像を画面に表示する映像部を備え、リモコンから所定コードを受信して、所定コードに基づいて映像部を制御するものであるから、引用例1発明は、本願補正発明の構成要件である「テレビジョン受像機は、ユーザに視覚的イメージを表示するためのビデオ・ディスプレイ装置と、前記ビデオ・ディスプレイ装置に接続され、ユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送られた信号を受信するための、及び前記視覚的イメージを表示するために前記ビデオ・ディスプレイ装置を駆動するビデオ信号を前記ビデオ・ディスプレイ装置に配送するためのビデオ受信回路と、を有すること」に相当する構成を有しているといえる。
(エ)引用例1の上記記載(f)(g)(h)及び図6によれば、引用例1発明の制御部24はリモコンからの所定コードを受信する受信回路24aを備え、制御部のCPU24bは所定コード、例えばカーソル移動コードを受信するとデコードして、カーソルが移動するようにグラフィック表示部22のコントローラ22bに座標データを供給し、コントローラ22bは、CPU24bの命令に基づいて、VRAM22aから必要な操作メニュー、カーソルを読み出し、RGB信号として表示部に表示制御するようにVRAM22aを制御するものであるから、引用例1発明の「制御部」が本願補正発明の「コマンド受信回路」、引用例1発明の「グラフィック表示部」が本願補正発明の「コマンド処理回路」に対応し、引用例1発明の「制御部」と「グラフィック表示部」の両者が本願補正発明の「ディスプレイ・コントローラ」に対応するものと認められる。
そして、引用例1の上記記載(i)(j)(k)によれば、引用例1のCPU24bは、受信されたコードがいずれのコードか判断するものであり、制御コマンドコードに該当するときには、選択された機器を操作するために必要な操作メニューを表示するようにコントローラ22bを制御し、カーソル移動コードに該当するときには、カーソル移動コードに基づいてブラウン管に表示されるカーソルを移動するようにコントローラ22bを制御するものであるから、引用例1発明は、本願補正発明の構成要件である「コマンド信号をコマンド送信回路から受信するための、及び前記視覚的イメージの変更を指示するイメージ指示信号を前記受信されたコマンド信号から取り出すためのコマンド受信回路」に相当する構成を有しているといえる。
(オ)引用例1の上記記載(g)(h)及び図6によれば、引用例1発明のコントローラ22bは、制御部24からの命令に基づいて、VRAM22aを制御して、メニューやカーソルをブラウン管に表示するものであるから、コントローラ22aは、「制御部24」(本願補正発明における「コマンド受信回路」)に接続しているといえる。
また、引用例1発明のコントローラ22bは、VRAMを制御してブラウン管に表示するものであるから、本願補正発明における「ビデオ受信回路」に接続しているといえる。
そして、引用例1発明の「制御部からの命令」が本願補正発明の「イメージ指示信号」、引用例1発明の「メニューやカーソルをブラウン管に表示」することが本願補正発明の「視覚的イメージの表示」に相当するものと認められるから、引用例1発明は本願補正発明と同様「コマンド受信回路及びビデオ受信回路に接続され、イメージ指示信号を受信し、イメージ指示信号に応答して視覚的イメージの表示を制御し、ユーザによる遠隔制御装置の操作によって指示されるように視覚的イメージを変更するためのコマンド処理回路」を備えているといえる。

以上を踏まえ、本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、両者は、
「テレビジョン受像機と、前記テレビジョン受像機から或距離だけ離れて使用可能な3軸遠隔制御装置と、ディスプレイ・コントローラとを含むディスプレイ・システムであって、
前記テレビジョン受像機は、
ユーザに視覚的イメージを表示するためのビデオ・ディスプレイ装置と、
前記ビデオ・ディスプレイ装置に接続され、ユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送られた信号を受信するための、及び前記視覚的イメージを表示するために前記ビデオ・ディスプレイ装置を駆動するビデオ信号を前記ビデオ・ディスプレイ装置に配送するためのビデオ受信回路と、
を有すること、
前記遠隔制御装置は、
ユーザの手に保持されるようなサイズのハウジングと、
前記ハウジング内に装着され、ユーザによる操作のための手で接触可能な入力装置と、
前記ハウジング内に装着され且つ前記入力装置に結合され、ユーザによる前記入力装置の操作に所定の方法で調整されたコマンド信号をユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送信するためのコマンド送信回路と、
を有すること、及び
前記ディスプレイ・コントローラは、
前記コマンド信号を前記コマンド送信回路から受信すると共に、前記視覚的イメージの変更を指示するイメージ指示信号を前記受信されたコマンド信号から取り出すためのコマンド受信回路と、
前記コマンド受信回路及び前記ビデオ受信回路に接続され、前記イメージ指示信号を受信し、前記イメージ指示信号に応答して前記視覚的イメージの表示を制御し、ユーザによる前記遠隔制御装置の操作によって指示されるように前記視覚的イメージを変更するためのコマンド処理回路と
を有すること、
を特徴とするディスプレイ・システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願補正発明の上記コマンド処理回路が「システム・バスを有するマイクロプロセッサとは別に構成され、イメージ指示信号の受信に応答してシステム・バスのバス・マスタとされるビデオ・ブリッタを含み、ビデオ・ブリッタはオペレーションを遂行する間、システム・バスを所有する」構成を備えるのに対し、引用例1発明ではコマンド処理回路はマイクロプロセッサとは別に構成されているのみで、ビデオ・ブリッタ、バス・マスタ、システム・バスの所有に関する記載がない点。
[相違点2]本願補正発明の上記視覚的イメージの表示制御は「制御プログラムを実行」することにより行われるのに対し、引用例1発明では、表示制御が制御プログラムにより実行されることが明記されていない点。

(4)判断
(4.1)[相違点1]について
本願補正発明でいう「ビデオ・ブリッタ」の「ブリッタ(blitter)」について、明細書での説明に照らすと、いわゆる「ビットブリット処理(BITBLT,bit block transfer,ビットブロック転送)を行うハードウェア」(URL=http://www.multicentric.com/wapi/mctxwapi.dll/getObject?MID=FOLDOC&ObjID=1132を参照)のことであると認められる。そして、ブリッタに関しては、CPUとは別に設けられた表示用のコントローラがビットブリット機能を備えること(例えば、特開昭63-29789号公報(第2頁左上欄第19行-左下欄第4行)、「コントローラ・チップ動向 Windows描画を高速化するアクセラレータ機能」日経バイト 第113号 日経BP社 pp.128-136 1993年6月1日発行、特に、p.130)、及び、ディスプレイコントローラがバス・マスタとして機能し、CPUの指示によりディスプレイコントローラ内のビットブリット機能を有する描画用コプロセッサが動作すること(特開平6-161418号公報(第0018,0028-0029段落、図1))などの記載から、CPUとは別に設けられた表示用コントローラ内にブリッタを設けることは周知技術であると認められる。
一方、引用例2の上記記載(l)には、画像プロセッサがとる形式として、付加回路がバス・マスタ機能を有し、マイクロプロセッサからバス権を獲得し、マイクロプロセッサと独立に動作することが記載されている。また、引用例3の上記記載(m)(n)にも、図形処理装置がシステムバスに対しバス要求を出力し、バス・マスタになった後、そのバスを占有することが記載されている。ここで、ある瞬間にバスの使用権を持つことが許されるのは1つのマスタだけであって、複数のマスタが同時にバスを使用することはできないことは技術常識であるから、引用例2あるいは引用例3において、図形処理の付加回路がバス権を獲得すれば、付加回路が動作している間はシステム・バスを所有するものと認められる。
したがって、引用例1発明の「コントローラ22b」もマイクロプロセッサとは別に構成された画像表示用のコントローラであることから、上記周知技術である「CPUとは別に設けられた表示用のコントローラ内にブリッタを設けること」と、引用例2、3に開示されている「画像処理用の付加回路をマイクロプロセッサとは別に設け、画像処理用の付加回路は、バス・マスタ機能を有し、バス権を獲得してマイクロプロセッサと独立に動作し、動作中はシステム・バスを所有する」技術を引用例1発明のコマンド処理回路に採用して、コマンド処理回路が「システム・バスを有するマイクロプロセッサとは別に構成され、イメージ指示信号の受信に応答してシステム・バスのバス・マスタとされるビデオ・ブリッタを含み、ビデオ・ブリッタはオペレーションを遂行する間、システム・バスを所有する」構成を得ることは当業者が容易になし得たものである。
(4.2)[相違点2]について
引用例1の上記記載(f)には、コントローラ22bは、制御部24からの命令に基づいて、これらのグラフィックデータを読み出すと共に、RGB信号に変換して切換スイッチ21hに供給するようにVRAM22aを制御すると記載されている。そして、制御装置が「命令に基づいて制御する」場合に「制御プログラムを実行」することにより行うことは、例えば引用例3の上記記載(o)に図形処理装置がCPUからのコマンドを受け取り、マイクロプログラムを読み出すと記載されているように、当業者には周知かつ自明な技術常識であるから、表示制御を「制御プログラムを実行」することにより行うことは当業者が適宜なし得た事項である。

以上判断したとおり、本願補正発明における上記相違点1及び2に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり、また、各相違点を総合しても本願補正発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1ないし3に記載された発明から周知技術及び技術常識を参酌することにより、当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年2月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年5月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「テレビジョン受像機と、前記テレビジョン受像機から或距離だけ離れて使用可能な3軸遠隔制御装置と、ディスプレイ・コントローラとを含むディスプレイ・システムであって、
前記テレビジョン受像機は、
ユーザに視覚的イメージを表示するためのビデオ・ディスプレイ装置と、
前記ビデオ・ディスプレイ装置に接続され、ユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送られた信号を受信するための、及び前記視覚的イメージを表示するために前記ビデオ・ディスプレイ装置を駆動するビデオ信号を前記ビデオ・ディスプレイ装置に配送するためのビデオ受信回路と、
を有すること、
前記遠隔制御装置は、
ユーザの手に保持されるようなサイズのハウジングと、
前記ハウジング内に装着され、ユーザによる操作のための手で接触可能な入力装置と、
前記ハウジング内に装着され且つ前記入力装置に結合され、ユーザによる前記入力装置の操作に所定の方法で調整されたコマンド信号をユーザによる直接感知の範囲外である周波数で送信するためのコマンド送信回路と、
を有すること、及び
前記ディスプレイ・コントローラは、
前記コマンド信号を前記コマンド送信回路から受信すると共に、前記視覚的イメージの変更を指示するイメージ指示信号を前記受信されたコマンド信号から取り出すためのコマンド受信回路と、
システム・バスを有するマイクロプロセッサとは別に構成され、前記イメージ指示信号の受信に応答して前記システム・バスのバス・マスタとされるビデオ・ブリッタを含み、かつ前記コマンド受信回路及び前記ビデオ受信回路に接続され、前記イメージ指示信号を受信して、ユーザによる前記遠隔制御装置の操作によって指示されるように前記視覚的イメージを変更するためのコマンド処理回路と
を有すること、
を特徴とするディスプレイ・システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「コマンド処理回路」の限定事項である「前記イメージ指示信号に応答して前記視覚的イメージの表示を制御する制御プログラムを実行し」との構成を省き、「ビデオ・ブリッタ」の限定事項である「前記イメージ指示信号の受信に応答してオペレーションを遂行する間、前記システム・バスを所有すること」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-08 
結審通知日 2004-12-14 
審決日 2005-01-05 
出願番号 特願平8-77293
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重辻本 泰隆畑中 高行  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 藤内 光武
高瀬 勤
発明の名称 ディスプレイ・システム、インテリジェント・テレビジョン受像装置及び視覚的イメージを表示する方法  
代理人 坂口 博  
復代理人 間山 進也  
代理人 市位 嘉宏  

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