• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1117393
審判番号 不服2003-7329  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-28 
確定日 2005-05-26 
事件の表示 平成 8年特許願第292791号「LED光源の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-144963〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成8年11月5日の出願であって、平成15年3月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月20日に手続補正がなされたものである。
2.平成15年5月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「チップ配置用及びワイヤボンド用パッドからなるLED用パッドを基材上面に形成した基板を準備する工程と、該基板に前記LED用パッドを囲むように撥油性の高い材料により形成した被膜を設ける工程と、前記被膜が形成された前記基板の前記チップ配置用パッドにLEDチップを固定して前記ワイヤボンド用パッドにワイヤボンド線を接続する工程と、前記撥油性被膜によって規定される領域内に前記LEDチップを埋めるように流動状態の樹脂を配置し、該樹脂を硬化させる工程を備えることを特徴とするLED光源の製造方法。」
と補正された。
上記補正は、上記補正前の請求項1〜4の内、請求項1〜3を削除すると共に、その請求項4を請求項1に繰り上げ、その請求項1の発明を特定するために必要な事項である「チップ配置用パッド」について、「前記被膜が形成された前記基板の」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である、特開昭62-185382号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「(1)セラミック等からなる絶縁性の基板と、該基板の表面に印刷等の方法により形成された回路と、該回路に直接配設された、例えばLED等の発光素子と、前記回路を形成した後に、該発光素子の周囲の上記基板および該回路の表面に塗布された塗料と、該塗料に接し且つ前記発光素子を凸状に覆って固定する、例えばエポキシ樹脂系の接着剤と、から構成されていることを特徴とした発光素子アレイ。」(特許請求の範囲)、

「回路パターンをたとえば印刷形成された基板にLEDのチップをワイヤボンディング等によって直接に固着、エポキシ系樹脂接着剤による接着をする製造方法を採用しようとすると、粘度の低いエポキシ系樹脂接着剤は流出をしてしまい、LEDチップ上に留まらず不要部までを覆ってしまう。このためLEDチップから発せられる光は、接着剤が凸状に形成されることで得られる拡散効果が低下してしまい、表示部へ導くことが困難であった。」(2頁左上欄第13行〜同頁右上欄2行)、

「[発明の目的]本発明は、上述したように従来における解決の困難であった点・不都合な点を解消し、製造工程を簡略化するとともに、照度ムラを低減して均一の照度を得るとともに、また反射効率を向上させ表示部の明るさを向上した発光素子アレイを提供することにある。
[発明の構成]本発案の目的は、絶縁性の材料(セラミック等)により形成され、回路を印刷形成された基板の上に、LED等の発光素子を直接にワイヤボンディング等の手段により前記印刷回路へと配して、該基板表面に反射効率を向上するとともに、ヌレ性が小さく(液体の表面張力を強める)エポキシ系接着剤を弾く、例えばシリコン系の白色塗料を塗布し、エポキシ系接着剤を前記発光素子を覆うように滴下し、該接着剤の凝固後には光拡散効果を高めるように凸状の形状となるように接着した、ことにより構成される。」(2頁右上欄11行〜同頁左下欄11行)、

「[発明の実施例]以下、本発明の好ましい実施例について、図面を参照しながら説明する。第1図は、本発明の一実施例を示すLEDアレイの断面図である。1は基板で、セラミック等の絶縁性の材料からなり、製造工程における加工衝撃に強く、熱に強く、膨張率も低いことから回路印刷形成後も信頼性の高い基板を得られる。また、後述する発光素子のボンディング作業工程においても、その硬質である特性から良好な結果を得易い。2は回路で、金(Ag)、銅(Cu)等を用い基板1上に厚膜印刷方法等により、形成されている。3は塗料で、ヌレ性が少なく従って表面に滴下される液体の表面張力を増す性質を有した、例えばシリコン系の塗料である。また白色系の塗料を選択することにより、発光素子の放つ微弱な光を効率良く被照射資料の存する表示部側へと反射が可能である。4は発光素子で、・・・上記基板1に印刷形成される回路2の所定位置へと直接に接続されている。5は接着剤で、本実施例ではエポキシ系の樹脂を基とする材料を選択していて、前記発光素子4を覆うようにして滴下されて、乾燥凝固して基板1と接触する。これとともに、接着剤5自身の有する表面張力および前記基板1の表面に塗布された塗料3の性質により向上された表面張力とによって凸状となる。さらに、凸状に乾燥凝固した後には発光素子4の発する光を内部にて拡散することで、均一に拡散光を発する。」(2頁左下欄12行〜3頁左上欄4行)、

「こうした構成を有しているので、その製造方法においては、先ず絶縁性の高いセラミック基板を準備し、その後厚膜印刷形成により導体回路を該基板上に形成する。次に、発光素子であるLEDのチップを前記基板にワイヤ・ボンディングを行う。・・・この後、ヌレ性の良いシリコン系の白色塗料をLEDのチップの周囲の基板および回路の表面に塗布する。これは、セラミックの白色よりさらに反射効率が良いことと、後述する接着剤をよく弾くという性質を利用したいからである。こうした後、LEDチップの上方からエポキシ樹脂系の接着剤を滴下してやる。すると、本来粘性の低い接着剤であるが、前述したヌレ性の良い塗料が塗布してあることから、滴下後に表面張力が増加したようになることから、LEDチップ上に凸状に溜まる。こうして形成した後に、加熱をしたりして促進してもよいが、該接着剤を乾燥させてやる。すると、接着剤は凸レンズの形状を有したまま凝固する。凝固した接着剤は、発光素子の発する光を凸部接着剤の内部にて拡散するので、そこから放たれる光は指向性の高くないものとなる。」(3頁左上欄11行〜同頁右上欄17行)、

「[発明の効果]上述したように本発明を用いることにより、製造工程を簡略化するとともに、照度ムラを低減して均一の照度を得るとともに、また反射効率を向上させ表示部の明るさを向上した発光素子アレイを得ることができる。」(3頁左下欄14〜19行)

と記載され、

第1図には、LEDチップの配置用領域及びワイヤボンド用領域を上面に形成してなる基板と、前記LEDチップ配置用領域に配置されて前記ワイヤボンド用領域にワイヤボンド線を介して接続されるLEDチップと、前記LEDチップをモールドするエポキシ樹脂系接着剤、を備えるLED光源であって、前記LEDチップの配置用領域とワイヤボンド用領域とを合わせた領域を囲むように、前記基板上面に、シリコン系白色塗料により形成した被膜を設けてなるLED光源、が示されている。

以上によれば引用例1には、「LEDチップの配置用領域とワイヤボンド用領域とを合わせた領域を基材上面に形成した基板を準備する工程と、前記LEDチップの配置用領域にLEDチップを固定して前記ワイヤボンド用領域にワイヤボンド線を接続する工程と、該基板に前記LEDチップの配置用領域とワイヤボンド用領域とを合わせた領域を囲むようにシリコン系白色塗料により形成した被膜を設ける工程と、前記シリコン系白色塗料被膜によって規定される領域内に前記LEDチップを埋めるように流動状態のエポキシ樹脂系接着剤を配置し、該樹脂を硬化させる工程を備えることを特徴とするLED光源の製造方法。」(以下「引用例発明」という。)が記載されている。

(3)対比
そこで、本件補正発明と引用例発明とを対比すると、
引用例発明の「LEDチップの配置用領域とワイヤボンド用領域とを合わせた領域」、「シリコン系白色塗料により形成した被膜」及び「流動状態のエポキシ樹脂系接着剤」は、本件補正発明の「チップ配置用及びワイヤボンド用パッドからなるLED用パッド」、「撥油性の高い材料により形成した被膜」及び「流動状態の樹脂」に、それぞれ相当する(本件明細書【0009】、【0011】、【0013】参照)。

したがって、両者は、「チップ配置用及びワイヤボンド用パッドからなるLED用パッドを基材上面に形成した基板を準備する工程と、該基板に前記LED用パッドを囲むように撥油性の高い材料により形成した被膜を設ける工程と、前記チップ配置用パッドにLEDチップを固定して前記ワイヤボンド用パッドにワイヤボンド線を接続する工程と、前記撥油性被膜によって規定される領域内に前記LEDチップを埋めるように流動状態の樹脂を配置し、該樹脂を硬化させる工程を備えることを特徴とするLED光源の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本件補正発明は、「LEDパッドを囲むように被膜を形成」後に「チップを固定してワイヤボンド線を接続」するのに対して、
引用例発明は、「チップを固定してワイヤボンド線を接続」後に「LEDパッドを囲むように被膜を形成」する点。

(4)判断
LEDパッド上のLEDチップとその接続配線を樹脂でモールドする場合、LEDパッドを囲むように被膜を形成して置くことで、モールド用樹脂の流出防止と形状の安定化を図ることは広く知られており(例えば、引用例1、特開昭61-144890号公報、特開平7-231120号公報、特開平6-77540号公報等)、その際、「チップの固定及び配線接続」後に「被膜形成する」(引用例1、特開昭61-144890号公報)のか、「被膜形成」後に「チップの固定及び配線接続する」(特開平7-231120号公報(【0010】)、特開平6-77540号公報(【0007】))のか、は当業者が適宜選択し得ることであるから、引用例発明において、「LEDパッドを囲むように被膜を形成」後に、「チップの固定及び配線接続する」ことは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。

また、それによる効果も、引用例1及び周知技術から当業者が当然に予期し得る範囲のものである(引用例1の3頁左下欄14〜19行、特開平7-231120号公報【0008】、特開平6-77540号公報【0010】参照)。

なお、請求人は、「引用例に記載の発明のように、LEDチップを備える基板にシリコン系の白色塗料を塗布する構成によれば、塗布した白色塗料がLEDチップに付着する可能性が高く、付着した塗料によってLEDの光が遮光される不具合、付着した塗料によって透光性樹脂との密着性が低下するという不具合、版を用いて白色塗料の塗布位置を規定しようとする場合に、LEDチップやそのワイヤボンディング線が版と基板の密着性を阻害することによって、白色塗料を高精彩に塗布することが困難になる、などの不都合が発生すると予想されますが、本願発明によれば、そのような不都合も生じませんので、モールド用樹脂の形状安定化を図り、光学特性の均一なLED光源を提供することができるという、上記引用例に記載に発明では成しえない作用効果を奏することができます。」(平成15年5月20日付手続補正書(方式)2頁11〜20行)旨主張するが、上記主張は、「白色塗料の使用」或いは「版を用いた塗布」を前提にする主張であり、何れも本件補正発明の構成に基づかないものであるから、採用することができない。

したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反し、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本件発明について
平成15年5月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本件の請求項に係る発明は、平成14年8月22日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項4に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりである。

「チップ配置用及びワイヤボンド用パッドからなるLED用パッドを基材上面に形成した基板を準備する工程と、該基板に前記LED用パッドを囲むように撥油性の高い材料により形成した被膜を設ける工程と、前記チップ配置用パッドにLEDチップを固定して前記ワイヤボンド用パッドにワイヤボンド線を接続する工程と、前記被膜によって規定される領域内に前記LEDチップを埋めるように流動状態の樹脂を配置し、該樹脂を硬化させる工程を備えることを特徴とするLED光源の製造方法。」

(1)引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本件発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、「チップ配置用パッド」及び「ワイヤボンド用パッド」に係る共通の限定事項である「前記被膜が形成された前記基板の」との構成を省いたものである。

そうすると、本件発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件の請求項4に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-23 
結審通知日 2005-03-29 
審決日 2005-04-11 
出願番号 特願平8-292791
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 町田 光信
吉田 禎治
発明の名称 LED光源の製造方法  
代理人 芝野 正雅  
代理人 芝野 正雅  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ