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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A61H |
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管理番号 | 1117644 |
審判番号 | 訂正2004-39172 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-04-09 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2004-07-21 |
確定日 | 2005-06-10 |
事件の表示 | 特許第3012780号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3012780号発明[請求項の数4、平成7年3月23日(優先権主張平成6年7月29日)特許出願、平成11年12月10日設定登録]の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。 上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項3の記載は次のとおりである。 「底部空気袋が前記施療凹部の底面に配置され、前記各空気袋による下肢に対する圧迫動作において前記底部空気袋用の弁手段を前記脚用空気袋用の弁手段よりも遅れて開くように制御し、前記脚用空気袋を前記底部空気袋による下肢の押出しを妨げるストッパとした前記請求項1又は2に記載のエアーマッサージ機。」 なお、請求項1及び2は、上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 座部及び背凭れ部を有した椅子本体と、前記座部前側に配置して前記椅子本体に取付けられ、かつ、両側壁及び中間壁を有し、これら側壁と中間壁との間に上面及び前後両端を開放して前記椅子本体に座った使用者の下肢を収容し得る一対の施療凹部が形成され、前記中間壁の両側面に脚用空気袋が夫々取付けられるとともに、前記両側壁の内側面にも脚用空気袋が夫々取付けられた脚載置部と、前記各脚用空気袋に連通して設けられこれら脚用空気袋に対してエアーを給排気するエアー給排気装置と、を具備した椅子式のエアーマッサージ機。 【請求項2】 前記施療凹部に収容された使用者の下肢に対する前記脚用空気袋の最大圧迫部が、前記施療凹部の開放上面側に位置する前記下肢の表側部分に接するように前記凹部側面に対し前記脚用空気袋を配置した前記請求項1に記載のエアーマッサージ機。 2.訂正拒絶理由の概要 一方、平成17年2月23日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。 上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)は、刊行物1(意匠登録第296760号公報)及び刊行物2(実願昭57-121347号(実開昭59-100410号)のマイクロフィルム)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、この訂正は、平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.引用刊行物 (1)刊行物1には、「座部及び背凭れ部を有した椅子本体と、前記座部前側に配置して前記椅子本体に取付けられ、かつ、両側壁及び中間壁を有し、これら側壁と中間壁との間に上面及び前後両端を開放して前記椅子本体に座った使用者の下肢を収容し得る一対の凹部が形成され、前記側壁の内側面に出っ張り部分が現れている脚載置部と、を具備した指圧椅子」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が図示されている。 (2)刊行物2には、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「第4図は圧迫治療器の本体5の概略構成図を示している。11は十分な風量をもつ大型のエアコンプレッサであり、本体5とは別に設置される。治療器の本体5内には、エアコンプレッサ11からの空気供給管路に、圧力調整機構をもつレギュレータ12、異常高圧力を検出して圧迫動作を停止させる圧力スイッチ13、風量調整器14、及び電磁弁6が設けられ、図示しない制御回路により電磁弁6を設定された開時間と閉時間で開閉動作させる構造である。16は本体5からの空気供給用のホース6の一部に接続された圧力調整排気弁であり、各エアーバッグ4a〜4fの圧力が設定圧に達した際弁を閉じてエアーバッグ4a〜4bへの空気の供給を停止すると共に、本体5の電磁弁15が閉鎖され、空気圧が低下した際排気弁を開いてエアーバッグ4a〜4f内の空気を排気するように動作する。」(明細書第4頁第3〜19行) ・「なお、上記の実施例では人体の肩部を圧迫治療するための殻体治具を使用したが、例えば、膝関節の筋腱等軟部組織の損傷に対しては、第5図に示すように、膝関節をほぼ包囲する殻体21を形成し、その内側に内側側副靱帯部、外側側副靱帯部、或は膝蓋骨下部等の要所を圧迫する複数のエアーバッグ22をそれぞれ配設して上記と同様の圧迫治療に使用することもできる。」(同書第6頁第7〜14行) ・「一方、上記の実施例では複数のエアーバッグに対し一度に空気を供給したが、順次供給を行って、複数のエアーバッグを順次膨らませて要所を圧迫することも可能である。」(同書第7頁第8〜11行) ・また、第1〜3図には、人体の肩部を包囲する殻体1の内側に、複数のエアーバッグ4a〜4fが配置され、特に、エアーバッグ4fの最大圧迫部は、施療凹部(殻体1)の上面側に位置する肩部の表側部分に接するように配置され、エアーバッグ4a、4bは、施療凹部(殻体1)の底面に配置されている実施例が示されており、さらに、第5図には、脚部を包囲する殻体21の内側に、複数のエアーバッグ22が配置されている実施例が示されている。 上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、「複数のエアーバッグ(空気袋)に、順次空気を供給するエアーバッグ式圧迫治療器」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。 4.対比・判断 ところで、本件特許に係る無効2001-35508号事件の、「訂正を認める。特許第3012780号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。特許第3012780号の請求項2乃至4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」とした審決(平成14年7月31日)に対し、「特許第3012780号の請求項2乃至4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との部分を取り消すことを求めた審決取消訴訟事件の判決(平成14年(行ケ)第460号、平成16年3月23日判決言渡)において、訂正後の請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)の容易推考性について、以下のように判示されている。 『脚部を押圧するマッサージ装置において,足の両側面を押圧する一対の空気袋に加え,底部に押圧する空気袋を備えた装置が従来知られていたことは,本件明細書自体に記載されているところである・・・(中略)・・・甲4発明(注:刊行物2発明に相当)には,複数の空気袋に,順次空気を供給する構成が開示されている。 そうすると,施療凹部の複数の空気袋に空気を順次供給すること自体は,容易に推考できる。そして,その順序は,一対の脚用空気袋には同時に空気を供給するとの前提に立った場合,底部空気袋に先に供給する(弁手段を開く。),一対の空気袋に先に空気を供給する,すべての空気袋に同時に空気を供給する,の3通りしかない。 3通りしかない構成のうちの一つである,一対の脚用空気袋に空気を供給する弁手段を,底部空気袋のそれより先に開くようにして,一対の脚用空気袋を先に膨張させるようにする構成に想到することは,当業者にとって容易であり,かつ,これを選択することに,格別阻害要因があると認めることもできない。むしろ,このような構成を採れば,先に脚部を施療凹部内部に向けて押し込んで確実に保持することにより,底部空気袋による押圧がより効果的なものとなることは明らかであり,かつ,このことも当業者が容易に想到できるものであると認められる・・・(中略)・・・上記のとおり,甲5発明(注:刊行物1発明に相当)と,甲4発明とを組み合わせると,本件発明3の構成に容易に想到することができる,と認められる。』 そして、上記判決は既に確定しており、当審の判断もこの判示内容に拘束されるものである。 訂正発明3は、本件発明3に「脚用空気袋を底部空気袋による下肢の押出しを妨げるストッパとし」た構成をさらに限定したものである。 しかしながら、本件発明3のように、「底部空気袋を前記施療凹部の底面に配置し、前記各空気袋による下肢に対する圧迫動作において前記底部空気袋用の弁手段を前記脚用空気袋用の弁手段よりも遅れて開くように制御した」構成を備えたものであれば、まず脚用空気袋用の弁手段を開いて脚用空気袋の圧迫動作を開始させ、続いて該圧迫動作中に底部空気袋用の弁手段を開いて底部空気袋の圧迫動作を開始させるような制御がなされる結果、先に動作を開始した脚用空気袋が下肢を押し込んだ後に底部空気袋の圧迫が開始されることが想定されるところであり、その場合に、「脚用空気袋を底部空気袋による下肢の押出しを妨げるストッパとし」た関係が出現することになるといえる。 そうすると、上記の限定した構成は当業者であれば、容易に推考し得る程度のものであり、それにより奏される効果も予測される範囲内のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本件発明3が、刊行物1発明と刊行物2発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到することができるのであれば、訂正発明3も、同様に、刊行物1発明と刊行物2発明を組み合わせることにより、当業者が容易に想到することができる、といわざるをえない。 なお、請求人は、平成17年3月28日付けの意見書において、『本件審決取消訴訟事件の判決で容易であると判断された「各空気袋の弁手段を開くタイミング」から、訂正発明3の「ストッパ機能」が必然的に導き出されるものではなく、両者は異なる技術的事項である。』(意見書第2頁第27〜29行)と主張している。 しかしながら、上記判決において、「このような構成(注:一対の脚用空気袋に空気を供給する弁手段を,底部空気袋のそれより先に開くようにして,一対の脚用空気袋を先に膨張させるようにする構成)を採れば,先に脚部を施療凹部内部に向けて押し込んで確実に保持することにより,底部空気袋による押圧がより効果的なものとなることは明らかであり,かつ,このことも当業者が容易に想到できるものであると認められる」と判示されているように、「脚用空気袋を底部空気袋による下肢の押出しを妨げるストッパとし」た関係は、上記の構成から当業者が容易に想到し得るものといわざるをえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから、訂正発明3は、上記刊行物1発明及び刊行物2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、この訂正は、平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 |
審理終結日 | 2005-04-12 |
結審通知日 | 2005-04-13 |
審決日 | 2005-04-26 |
出願番号 | 特願平7-64103 |
審決分類 |
P
1
41・
121-
Z
(A61H)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 安池 一貴 |
登録日 | 1999-12-10 |
登録番号 | 特許第3012780号(P3012780) |
発明の名称 | エアーマッサージ機 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 尾崎 英男 |
代理人 | 河野 哲 |