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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1117899
異議申立番号 異議2003-73058  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-06-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-15 
確定日 2005-03-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3418110号「パチンコ遊技機の不正入賞防止装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3418110号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1・手続の経緯
特許第3418110号の請求項1に係る発明(本件発明)についての特許出願は、平成9年12月8日に出願されたものであって、平成15年4月11日にその特許権の設定登録がなされ、その後、町田彬より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月10日に訂正請求がなされたものである。
2・訂正の適否についての判断
(2-1)訂正の内容
ア・訂正事項a
願書に添付した明細書(以下、特許明細書という。平成15年2月14日付け手続補正によって補正されたもの)の特許請求の範囲を、
「【請求項1】偶然性をもって大当たりが発生することで特別遊技信号が発信され大入賞口の開閉扉が電動開閉装置の作動により開成状態になされるようにしたパチンコ遊技機において、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときその入賞遊技球数を表示すると同時に異常表示手段を作動させ、かつ景品球払出装置を作動させて該入賞球計数スイッチにて計数された遊技球の数と同数の遊技球が遊技者に還元されるようにしたことを特徴としたパチンコ遊技機の不正入賞防止装置」と訂正する。
イ・訂正事項b
特許明細書の段落【0004】の記載を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、偶然性をもって大当たりが発生することで特別遊技信号が発信され大入賞口の開閉扉が電動開閉装置の作動により開成状態になされるようにしたパチンコ遊技機において、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときその入賞遊技球数を表示すると同時に異常表示手段を作動させ、かつ景品球払出装置を作動させて該入賞球計数スイッチにて計数された遊技球の数と同数の遊技球が遊技者に還元されるようにしたことを特徴とする」と訂正する。
ウ・訂正事項c
特許明細書の段落【0005】の記載を削除する。
エ・訂正事項d
特許明細書の段落【0015】の記載を、
「【発明の効果】
このように本発明のパチンコ遊技機は、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときその入賞遊技球数を表示すると同時に異常表示手段を作動させ、かつその不正入賞遊技球を遊技者に還元するようにしたので、不正行為を確実に検出でき、不正な遊技者を利することがないので、不正行為を未然に防止できる効果がある」と訂正する。
(2-2)訂正の目的、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載されていた発明の構成要件及び訂正前の請求項2に記載されていた発明の構成要件を請求項1としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項b〜dは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、
いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(2-3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
3・特許異議の申立ての理由及び再度の取消理由についての判断
(3-1)特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、
甲第1号証(特開昭63-275361号公報)、甲第2号証(特開平8-24417号公報)、甲第3号証(特開平8-266736号公報)、甲第4号証(特開平6-39100号公報)、甲第5号証(実願昭58-122614号(実開昭60-30276号)のマイクロフィルム)、甲第6号証(実願昭58-182600号(実開昭60-88974号)のマイクロフィルム)、甲第7号証(実公昭46-30892号公報)、甲第8号証(実公昭47-33399号公報)及び甲第9号証(実公昭48-29875号公報)
を引用し、
本件発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲号各証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることことができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明についての特許は、取り消されるべきものであると主張している。
(3-2)再度の取消理由の概要
本件特許出願は、特許明細書の記載が不明瞭であって特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、本件発明についての特許は、取り消されるべきものである。
(3-3)本件発明
上記(2-3)の所に記したように、上記訂正が認められるので、本件請求項1に係る発明(本件発明)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2・(2-1)ア・訂正事項a参照)
(3-4)上記(3-2)における再度の取消理由について
上記(2-1)の訂正事項a〜dによって、この理由は解消したものと認められる。
(3-5)上記(3-1)における特許異議の申立ての理由の概要について
(3-5-1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、
その第2の実施例の記載、
特に、
(ア)「パチンコ玉の始動入賞・・・に基づいて、1回または2回開閉状態となる可変入賞球装置105・・・内に進入したパチンコ玉がV入賞口115・・・に入賞し」(第9頁左下欄第1〜8行)、「V入賞口115へ入賞すると・・・V入賞球検出スイッチ117で検出され、その出力パルスは・・・保持回路127へ与えられ・・・保持回路127のハイレベル信号に基づいて、ソレノイド76は・・・オンオフされ、可動翼片109a,109bが開閉される」(第10頁右下欄第17行〜第11頁左上欄第10行)、「V入賞口115へパチンコ玉が入賞することにより、可動翼片109a,109bが連続的に開閉を開始し」(第11頁左下欄第11〜13行)、第9図(第19頁)及び第10図(第19頁)の記載から、
パチンコ玉の始動入賞に基づいて1回または2回開閉状態となる可変入賞球装置105内に進入したパチンコ玉がV入賞口115に入賞しV入賞球検出スイッチ117で検出されると保持回路127のハイレベル信号に基づいて可変入賞球装置105の可動翼片109a,109bがソレノイド76の作動により連続的に開閉される構成が開示されているものと認められること、
(イ)「8回目のV入賞状態では、必ず18進カウンタ576がカウントアップするかまたは入賞玉計数回路580がカウントアップし、そのいずれかの出力に基づいて解除パルス発生回路560が解除パルスを導出する。そしてその出力は保持回路127の保持状態を解除する」(第12頁左上欄第12〜17行)、「ソレノイドドライバ552からの出力が第7図のフリップフロップ400に入力され・・・解除パルス発生回路560から保持回路548および562へ出力される解除信号が・・・第7図に示す遅延回路404に入力される」(第12頁左下欄第6〜11行)、「V入賞検出スイッチ117および入賞球数検出スイッチ89からの出力が・・・第7図に示すアンドゲート402の一方の入力端子に与えられる」(第12頁左下欄第12〜16行)、「第7図の遅延回路404にハイレベル信号が与えられている場合、すなわち、可変入賞球装置が閉成状態に切換わっているときに、第7図のアンド回路402の一方の入力端子にハイレベル信号が与えられた場合、すなわち、パチンコ玉が可変入賞球装置内に進入した場合に・・・表示ランプ5・・・が制御される」(第12頁左下欄第17行〜右下欄第7行)、第9図(第19頁)、第10図(第19頁)及び第7図(第18頁)の記載から、
保持回路127の保持状態が解除されソレノイドドライバ552からの出力が第7図のフリップフロップ400に入力され解除パルス発生回路560から保持回路548及び562へ出力される状態で可変入賞球装置105に入賞したパチンコ玉は入賞球数検出スイッチ89で検出されその出力が第7図に示すアンドゲート402の一方の入力端子に与えられるときに表示ランプ5を作動させる構成が開示されているものと認められること、
(ウ)「遊技者が針金Aを使用して閉成状態に切換わっている可動翼片109bを開成状態にするなどの不正行為」(第12頁左下欄第1〜3行)及び「表示ランプ5およびスピーカ29さらには打球モータM1、景品球打出モータM2が制御される」(第12頁右下欄第5〜7行)の記載から、
不正入賞防止装置が開示されているものと認められること、
からみて、
「パチンコ玉の始動入賞に基づいて1回または2回開閉状態となる可変入賞球装置105内に進入したパチンコ玉がV入賞口115に入賞しV入賞球検出スイッチ117で検出されると保持回路127のハイレベル信号に基づいて可変入賞球装置105の可動翼片109a,109bがソレノイド76の作動により連続的に開閉されるようにしたパチンコ遊技機において、保持回路127の保持状態が解除されソレノイドドライバ552からの出力が第7図のフリップフロップ400に入力され解除パルス発生回路560から保持回路548及び562へ出力される解除信号が第7図に示す遅延回路404に入力される状態で可変入賞球装置105に入賞したパチンコ玉は入賞球数検出スイッチ89で検出されその出力が第7図に示すアンドゲート402の一方の入力端子に与えられるときに表示ランプ5を作動させるようにしたパチンコ遊技機の不正入賞防止装置」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
(3-5-2)対比
甲第1号証の第2頁右下欄第1〜3行の「パチンコ遊技機内部にピアノ線や針金などを侵入させて可変入賞球装置の開閉板などを引掛けて開成状態でロックするなどの不正行為」という記載からみて、甲第1号証に記載された発明は、本件発明と同様の不正行為(訂正明細書の段落【0001】の「パチンコ遊技機において、針金、ピアノ線等を使って該大入賞口を開き打球を入賞させるような不正行為」参照)に対処するものであると認められるので、先ず、本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
本件発明(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)とを対比すると、
後者の
「パチンコ玉の始動入賞に基づいて1回または2回開閉状態となる可変入賞球装置105内に進入したパチンコ玉がV入賞口115に入賞しV入賞球検出スイッチ117で検出されると」、「保持回路127のハイレベル信号に基づいて」、「可変入賞球装置105」、「可動翼片109a,109b」、「ソレノイド76」、「保持回路127の保持状態が解除されソレノイドドライバ552からの出力が第7図のフリップフロップ400に入力され解除パルス発生回路560から保持回路548及び562へ出力される解除信号が第7図に示す遅延回路404に入力される」、「パチンコ玉は入賞球数検出スイッチ89で検出されその出力が第7図に示すアンドゲート402の一方の入力端子に与えられる」及び「表示ランプ5」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「偶然性をもって大当たりが発生することで」、「特別遊技信号が発信され」、「大入賞口」、「開閉扉」、「電動開閉装置」、「特別遊技信号が発信されてない」、「遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動した」及び「異常表示手段」
に相当するものと認められるから、
両者は、
「偶然性をもって大当たりが発生することで特別遊技信号が発信され大入賞口の開閉扉が電動開閉装置により作動されるようにしたパチンコ遊技機において、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときに異常表示手段を作動させるようにしたパチンコ遊技機の不正入賞防止装置」である、
点において一致し、
ア・大当たりが発生すると開閉扉が、
前者は、開成状態になされる、
のに対し、
後者は、連続的に開閉される、
イ・特別遊技信号が発信されてない状態のときに、大入賞口に遊技球が入賞したことを入賞球計数スイッチが検出したとき、
(イ-1)前者が、その入賞遊技球数を表示する、
のに対し、
後者が、その入賞遊技球数を表示するのかどうか明らかではない、
(イ-2)前者が、景品球払出装置を作動させて該入賞球計数スイッチにて計数された遊技球の数と同数の遊技球を遊技者に還元する、
のに対し、
後者が、かかる構成を備えていない、
点において相違しているものと認められる。
(3-5-3)判断
次に、これらの相違点について検討する。
(3-5-3-1)相違点ア・について
相違点ア・は、要するに、前者が、甲第1号証に記載された第1の実施例のような所謂第1種のパチンコ遊技機であるのに対し、後者が、甲第1号証に記載された第2の実施例のような所謂第2種のパチンコ遊技機であることに基づく相違であって、パチンコ遊技機が所謂第1種のものであれば前者のように、また、パチンコ遊技機が所謂第2種のものであれば後者のようになることは自明であるから、相違点ア・は、実質的な相違ではないというべきである。
(3-5-3-2)相違点(イ-1)について
甲第1号証の第11頁右上欄第20行〜左下欄第5行の「V入賞口115へ入賞した全パチンコ玉数は・・・入賞球数検出スイッチ89で検出され、入賞玉計数回路580で計数される。その計数値は・・・発光ダイオード524が入賞個数だけ点灯、点滅または消灯され、入賞個数が表示される」という記載からみて、後者は入賞遊技球数を表示するものと認められるが、特別遊技信号が発信されてない状態のときにも表示するのかについては甲第1号証の記載からは明らかでなく、仮に、特別遊技信号が発信されてない状態のときにも表示するとしても、甲第1号証の第11頁左下欄第6〜18行の「入賞玉計数回路580が予め定め数、たとえば10個を計数したときは、カウントアップ出力は解除パルス発生回路560へ与えられる・・・したがって、この実施例では・・・可変入賞球装置105へ10個のパチンコ玉が入賞する・・・ことにより、可動翼片109a,109bが閉成状態になる」という記載からみて、例えば10個以上は表示し得ないものであり、また、甲第1号証の第11頁右下欄第13〜16行の「可変入賞球装置105内へ入ったパチンコ玉のいずれかがV入賞口115へ入ることにより・・・入賞玉計数回路580がリセットされ」という記載からみて、特賞状態禁止回路573が能動化していない状態では、可変入賞球装置105へパチンコ玉が入ってもそのいずれかがV入賞口115へ入ってしまうと、入賞玉計数回路580は、リセットされてしまうから、正確な数は表示し得ないものであり、そうすると、甲第1号証には、相違点(イ-1)の前者の構成は、開示されていないという他はない。
そこで、甲第2号証〜甲第9号証に、相違点(イ-1)の前者の構成が開示されているかどうかについてみるに、
甲第2号証の第6頁第9欄第21〜23行の「大当り以外で特別可変入賞口31aへの入賞がある場合での不正を入賞玉検出器35が検出してエラーチェックする」及び第13頁第23欄第13〜19行の「特別遊技状態において異常が発生したときには・・・個数表示LED34は、異常に応じた文字「1」「4」「-」のいずれかを表示し」という記載からみて、甲第2号証記載のものは、不正時に、個数表示LED34に、「1」「4」「-」のいずれかを表示するものと認められるから、甲第2号証には、相違点(イ-1)の前者の構成は、開示されていないものと認められ、
甲第3号証の第5頁第7欄第23〜26行の「入賞玉検出器21あるいは特定玉検出器20が特別可変入賞球装置15への入賞玉を検出したにも関わらず特別遊技中でないことを判別すると、これを不正として判定する」及び第5頁第7欄第32〜36行の「回数表示器23に「E」を表示すると共に個数表示器24に「1」を表示する・・・なお、前記の表示で「E」とはエラーを表す略で「1」とはエラーの種類を示す(ここでは、不正入賞を意味する)」という記載からみて、甲第3号証記載のものは、不正時に、個数表示器24に、「1」を表示するものと認められるから、甲第3号証には、相違点(イ-1)の前者の構成は、開示されていないものと認められ、
甲第4号証の第7頁第11欄第16〜20行の「大入賞口31が・・・開放中にないときに継続入賞スイッチ85あるいは一般入賞スイッチ83a,83bがオンした場合、そのオン回数を基に異常入賞数をカウントする」及び第8頁第14欄第10〜15行の「大入賞口異常判定では、大入賞口31の閉信号の入力時から・・・所定時間(例えば2秒)経過すると、異常入賞数・・・を読み込み、異常入賞数が所定数(例えば3個)になった場合、異常を判定する」という記載からみて、甲第4号証記載のものは、不正入賞遊技球数を例えば3個までカウントするものと認められるものの、3個までカウントする理由が、「開閉扉32を閉じるときは、その閉信号の入力時から所定時間経過した後に、つまり閉動作中に入賞した球の検出を考慮したタイムラグ後に、入賞があれば異常判定を行う」(第9頁第16欄第21〜25行)及び「複数の入賞によって異常判定を行えば、開閉扉32が閉じる際に球が挟まれ、これが所定時間の経過後に検出された場合であっても、誤判定することはない」(第9頁第16欄第29〜32行)であると認められること及び甲第4号証にそもそもカウント数を表示する構成が記載されていないことを勘案すると、甲第4号証には、カウント数を表示する構成は、開示されていないものと認められ、
甲第5号証〜甲第9号証には、そもそも相違点(イ-1)の前者の構成を示唆する記載すらも認められない。
そうすると、相違点(イ-1)の前者の構成は、甲号各証に開示されていないというべきである。
(3-5-3-3)相違点(イ-2)について
甲第1号証の第9頁左上欄第19行〜右上欄第1行の「遊技状態制御回路133からの制御信号により、景品球払出モータM2を停止させることにより、景品球の払出しを阻止することができ」という記載からみて、後者は、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に遊技球が入賞したとき、景品球払出装置を停止させてしまうものと認められるから、甲第1号証には、相違点(イ-2)の前者の構成は、開示されていないものと認められ、
甲第2号証には、特に、景品球払出装置については何も記載されていないものと認められ、
甲第3号証の第5頁第7欄第31,32行の「不正発生時の遊技不能動化として行い(S5:遊技不能動制御手段)」及び第5頁第7欄第39〜48行の「S5で遊技動作を停止する場合・・・遊技動作の停止とは・・・賞球払い出しの停止・・・等であり」という記載からみて、甲第3号証記載のものは、不正時に、景品球払出装置を停止させてしまうものと認められるから、甲第3号証には、相違点(イ-2)の前者の構成は、開示されていないものと認められ、
甲第4号証の第9頁第16欄第40〜42行の「大入賞口31の開閉扉32が開放したままとなっても、入賞によって賞球が多数払い出されることが的確に回避され」及びには、第9頁第16欄第47〜50行の「異常発生と同時に打球の発射が禁止され、遊技を中断させるので、入賞を防ぐことができ、賞球を最小限に抑えられると共に、特に不正行為に有効である」という記載からみて、甲第3号証記載のものは、不正時に、打球の発射を停止させてしまうものと認められるから、甲第4号証には、相違点(イ-2)の前者の構成は、開示されていないものと認められ、
甲第5号証及び甲第6号証に記載のものは、入賞器の開閉板の開放時に入賞器に所定数以上の球が入った場合、所定数以上の球を入賞扱いとせずに、入賞器から受皿に戻すというものであると認められるところ、これは、針金、ピアノ線等を使って大入賞口を開く不正に対処するものであるとは認められず、かつ、戻すときに景品球払出装置が関与しているとも認められないから、甲第5号証及び甲第6号証には、相違点(イ-2)の前者の構成は、開示されていないものと認められ、
甲第7号証、甲第8号証及び甲第9号証に記載のものは、材質あるいはサイズに関し不正がある球を投入口付近から受皿に戻すというものであると認められるところ、これは、針金、ピアノ線等を使って大入賞口を開く不正に対処するものであるとは認められず、かつ、戻すときに景品球払出装置が関与しているとも認められないから、甲第7号証、甲第8号証及び甲第9号証には、相違点(イ-2)の前者の構成は、開示されていないものと認められる。
そうすると、相違点(イ-2)の前者の構成は、甲号各証に開示されていないというべきである。
(3-5-4)むすび
上記したように、甲号各証には、前者の構成要件である相違点(イ-1)及び(イ-2)の前者の構成は、開示されていないものと認めら、かつ、同構成要件によって、前者は、訂正明細書の段落【0015】に記載された効果を奏するものと認められる(上記2・(2-1)エ・訂正事項d参照)から、前者が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという申立人の主張は採用できない。
(3-6)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠並びに再度の取消理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パチンコ遊技機の不正入賞防止装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 偶然性をもって大当たりが発生することで特別遊技信号が発信され大入賞口の開閉扉が電動開閉装置の作動により開成状態になされるようにしたパチンコ遊技機において、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときその入賞遊技球数を表示すると同時に異常表示手段を作動させ、かつ景品球払出装置を作動させて該入賞球計数スイッチにて計数された遊技球の数と同数の遊技球が遊技者に還元されるようにしたことを特徴としたパチンコ遊技機の不正入賞防止装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大当たりが発生し特別遊技状態となると大入賞口が継続的に開くように構成されたパチンコ遊技機において、針金,ピアノ線等を使って該大入賞口を開き打球を入賞させるような不正行為を防止する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
俗に「フィーバー機」と称される第1種パチンコ遊技機は、周知のように、遊技盤に設けられた始動入賞口に打球が入ることによりカラー液晶ディスプレイ,CRT等の図柄変動表示器が図柄を一定時間変動表示した後に停止し、その停止図柄が所定の確率で偶然性をもって「777」等の特定図柄となった場合に特別遊技状態(大当たり)となり大入賞口の開閉扉が電動開閉装置の作動により開成状態となるようにしたもので、その開成状態の大入賞口に打球が所定個数(通常は10個)入球するか、または開成状態で所定制限時間(通常は30秒)が経過すると、いわゆる第1ラウンドが終わって該大入賞口は一旦は閉じるが、その第1ラウンド中に大入賞口内に設けられている継続入賞口(Vゾーンと称される)に打球が入球していた場合には第2ラウンドが始まりすぐにまた該大入賞口が開かれる。そして開成状態となった大入賞口にまた打球が所定個数(通常は10個)入球するか、または開成状態で所定制限時間(通常は30秒)が経過すると、第2ラウンドが終わって該大入賞口はまた閉じるが、その第2ラウンド中に大入賞口内に設けられている継続入賞口(Vゾーンと称される)に打球が入球していた場合には第3ラウンドが始まりすぐにまた該大入賞口が開かれる。こうして、以降も各ラウンド中に継続入賞口に打球が入賞したことを条件として最終ラウンド(例えば第16ラウンド)になるまで該大入賞口が継続的に開かれるようにしている。こうして特別遊技状態の期間中に大入賞口の開閉扉が所定ラウンド数を限度として継続的に開かれることにより打球が極めて入り易い状況となり多数の景品球を獲得できて遊技者に多くの利益がもたらされるように構成されたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように大当たりが発生し大入賞口が継続的に開成状態となるように構成されたパチンコ遊技機では、例えば不正の目的でピアノ線,セル等をガラス枠内に侵入させ大入賞口の開閉扉を無理に開け遊技球を入賞させるようなことがあった。このような不正行為は従来では早期に発見できずパチンコ店は多大な損害を被っていた。また不正行為を発見できたとしても遊技球をどの程度不正に入賞させたのかが分からないので、その不正遊技者への対処が困難であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、偶然性をもって大当たりが発生することで特別遊技信号が発信され大入賞口の開閉扉が電動開閉装置の作動により開成状態になされるようにしたパチンコ遊技機において、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときその入賞遊技球数を表示すると同時に異常表示手段を作動させ、かつ景品球払出装置を作動させて該入賞球計数スイッチにて計数された遊技球の数と同数の遊技球が遊技者に還元されるようにしたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に図面に従い本発明の実施の形態を説明する。図1にこのパチンコ遊技機の正面を示し、図中、1は景品球受用の上皿、2は下皿、3は打球発射ハンドル、4はスピーカ、5は遊技盤、6は前面枠、7は該遊技盤5上に設けられた液晶ディスプレイからなる図柄変動表示器、8は通過ゲート、9は始動入賞口、10,11は普通入賞口である。
【0007】
12は図2〜図4に示したように取付基板13の中央に開設された長方形状の大入賞口で、該大入賞口12には前方に開閉可能に開閉扉14が軸受15,15により枢支されている。16は該取付基板13の裏側に設けられた電動開閉装置(ソレノイド)で、開閉扉14の裏側に一体に設けられた耳片17にピン18を突設し、該電動開閉装置16の作動軸に固設された連係片19に突部20,21を形成し、該ピン18を突部20,21間に位置させることで該電動開閉装置16の作動で開閉扉14が開閉作動するようにしている。なお22は該大入賞口12の中央部に設けられた継続入賞口、23は該継続入賞口12に入賞した遊技球を検出する継続入賞口スイッチ、24は該大入賞口12に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチである。
【0008】
また該パチンコ遊技機の裏側には前記図柄変動表示器7および電動開閉装置16等を作動させる遊技制御回路基板25が設けられ、該遊技制御回路基板25は図5にブロック図を示したように、始動入賞口9内に設けられた始動入賞口スイッチ26、および前記継続入賞口スイッチ23,入賞球計数スイッチ24からそれぞれ遊技球入賞の電気信号を受ける。なお27は図1にも示したように該パチンコ遊技機の上方の幕板に設けられた2つの7セグメント表示器からなる数字表示器、28は警報ランプからなる警報器である。
【0009】
遊技制御回路基板25は、始動入賞口スイッチ26からの電気信号により作動開始し所定の確率で偶然性をもって特別遊技状態をもたらす大当たり発生手段と、遊技制御手段と、表示器駆動手段と、効果音発生手段と、駆動制御手段等からなる。そして該遊技制御手段からの指令信号により前記図柄変動表示器7,スピーカ4,電動開閉装置16,数字表示器27,警報器28、および景品球払出装置(図示せず)が夫々作動し得るように接続される。
【0010】
図6に本発明に係るパチンコ遊技機の作動を示すフローチャートを示し、以下このフローチャートに従い説明する。このパチンコ遊技機では、始動入賞口スイッチ26からの入賞信号を捕らえ図柄変動表示器7を変動表示させその停止図柄が「777」等の特定図柄となり大当たりが発生したかどうかを判別するステップdの通常遊技状態のループ中に、前記入賞球計数スイッチ24からの入賞信号を捕らえ大入賞口12への遊技球の入球の有無を検知するステップaを設けている。
【0011】
このステップdにて図柄変動表示器7の停止図柄が「777」等の特定図柄となり大当たりが発生したこととなると、特別遊技信号が発信され(ステップe)て特別遊技状態となり大入賞口12が開成状態となる。(ステップf)。この開成状態では、タイマにより開成状態になってからの経過時間が計測されるとともに、入賞球計数スイッチ24により該大入賞口12に入球した打球数がカウントされ、所定の制限時間(30秒)が経過するかあるいは該大入賞口12に打球が所定個数(10個)入球すると該大入賞口12は一旦は閉じる。(ステップg,h)。しかし大入賞口12に入賞した打球が継続入賞口22に入賞していた場合で、かつ継続回数、即ち大入賞口12の開閉回数が所定回数(16回)に達していない場合は、ステップjからステップfに戻り大入賞口12を再び開成状態とする。このためこの継続条件が満たされる限り大入賞口12は最大16回(16ラウンド)を限度として繰り返し開成され、この間に遊技者は多数の景品球を獲得できる。なお各ラウンドにおける打球の実際の入球個数およびラウンド数は逐次図柄変動表示器7に表示され、遊技客はその表示を参考にラウンドを進行させることができる。
【0012】
一方、上記ステップa〜ステップdの通常遊技状態であるときに、入賞球計数スイッチ24が作動し遊技球の通過が捕捉された場合は、このループから抜けてステップkに移行し、該入賞球計数スイッチ24にて計数された遊技球の数を前記数字表示器27に表示すると同時に警報器28を作動させその異常状態表示させる。(ステップl,m)。
【0013】
また同時に、このパチンコ遊技機の景品球払出装置を還元モードに切り替え、入賞球計数スイッチ24にて計数された遊技球の数と同数の遊技球を遊技者に還元払い出しする。(ステップn)。なおこの異常検出状態はパチンコ遊技機の裏面に設けられたリセットスイッチを操作するまで続く。(ステップo)。
【0014】
このように特別遊技状態でないときに大入賞口12に遊技球が入賞したことを検知することで警報器28が作動し不正行為が行われていることをすぐに検知できるとともに、その不正に入賞された遊技球の数が数字表示器27に表示され、かつその不正入賞遊技球をこのパチンコ遊技機に備えられている景品球払出装置を作動させることにより還元するようにしたので、不正な遊技者に対しては遊技球を還元させるだけであって余計な景品球を払い出すことが一切ないので不正遊技者を利することはなく、このため不正行為を未然に防ぐ効果がある。
【0015】
【発明の効果】
このように本発明のパチンコ遊技機は、特別遊技信号が発信されてない状態で大入賞口に入賞した遊技球を検出する入賞球計数スイッチが作動したときその入賞遊技球数を表示すると同時に異常表示手段を作動させ、かつその不正入賞遊技球を遊技者に還元するようにしたので、不正行為を確実に検出でき、不正な遊技者を利することがないので、不正行為を未然に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るパチンコ遊技機の正面図。
【図2】
本発明に係るパチンコ遊技機の大入賞口の斜視図。
【図3】
図2に示した大入賞口のA-A線断面図。
【図4】
図2に示した大入賞口のB-B線断面図。
【図5】
本発明に係るパチンコ遊技機のブロック図。
【図6】
本発明に係るパチンコ遊技機のフローチャート。
【符号の説明】
5 遊技盤
7 図柄変動表示器
9 始動入賞口
12 大入賞口
14 開閉扉
16 電動開閉装置
22 継続入賞口
23 継続入賞口スイッチ
24 入賞球計数スイッチ
25 遊技制御回路基板
26 始動入賞口スイッチ
27 数字表示器
28 警報器
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-03-15 
出願番号 特願平9-356233
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A63F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡部 葉子
國分 直樹
登録日 2003-04-11 
登録番号 特許第3418110号(P3418110)
権利者 京楽産業株式会社
発明の名称 パチンコ遊技機の不正入賞防止装置  
代理人 伊藤 浩二  
代理人 伊藤 浩二  
代理人 橋本 洋一  
代理人 橋本 洋一  

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