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審決分類 審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1117926
異議申立番号 異議2003-73214  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-22 
確定日 2005-05-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第3432321号「積層セラミックス圧電体素子」の請求項1、4、7、8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3432321号の請求項1、4、7に係る特許を取り消す。 特許第3432321号の請求項8に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3432321号の請求項1ないし8に係る発明についての特許出願は、平成7年1月31日になされ、平成15年5月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、池田英治により請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明について特許異議の申立てがなされ、平成16年10月27日付けで取消理由通知がなされたが、その指定期間内に意見書は提出されていない。

請求項8に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて
請求項8については、特許異議申立書には申立ての対象とする請求項として記載されていたが、追って提出された特許異議申立書の手続補正書には、請求項8について、「(3)申立の根拠」、「(4)具体的理由」に何ら記載がないので、特許異議申立の対象となる請求項は、請求項1,請求項4及び請求項7であるものとして扱う。
したがって、請求項8についての特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定により却下すべきものである。

第2 本件特許
本件特許の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1,請求項4及び請求項7に記載された以下のとおりのものである。(以下、「本件発明1」、「本件発明2」及び「本件発明3」という。)

「【請求項1】 電極が形成されたセラミックス圧電体素子を複数枚積層した積層セラミックス圧電体素子において、該積層セラミックス圧電体素子の上下の面では、表面電極を除く部分の面内での凹凸の差が20μm以下である平面に形成されていると共に、前記表面電極の各々が前記平面より1μm以上20μm以下突出して形成されていることを特徴とする、積層セラミックス圧電体素子。」
「【請求項4】 ランジュバン型超音波モータに用いられる積層セラミックス圧電体素子において、該積層セラミックス圧電体素子の上下の面では、表面電極を除く部分の面内での凹凸の差が20μm以下である平面に形成されていると共に、前記表面電極の各々が前記平面より1μm以上20μm以下突出して形成されていることを特徴とする、積層セラミックス圧電体素子。」
「【請求項7】 上記積層セラミックス圧電体素子の内部に存在する電極同士が、該積層セラミックス圧電体素子の内部に形成された層間配線により接続されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6記載の積層セラミックス圧電体素子。」

第3 特許異議申立て
1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人池田英治は、
(1)本件の請求項1、請求項4,及び請求項7に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証(特開昭61-78179号公報)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、本件の請求項1、請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、
(2)本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明は、甲第1号証、参考資料1(実願昭61-172313号(実開昭63-77369号)のマイクロフィルム)及び参考資料2(特開昭62-208680号公報)に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、
(3)また、本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明は、その記載が明りょうでなく、明細書及び図面の記載が不備であるから、特許法第36条第4項、同法第5項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項、同法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、上記(1)ないし(3)の理由により、本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、特許法第113条第1項第2号及び第4号の規定により取り消されるべきである旨主張している。
なお、本件は平成7年1月31日に出願されたものであるから、異議申立書に記載される「特許法第36条第4項又は第6項第2号」は、「特許法第36条第4項又は第5項第2号」の誤記であると認定した。

2.取消理由通知について
取消理由通知の内容は以下のとおりである。
「1.特許法第36条違反について
本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明の欄に「発明」として記載されておらず、また、その記載も明りょうでないから、明細書及び図面の記載が不備であるから、特許法第36条第4項、同法第5項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、本件の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明の特許は、特許法第36条第4項、同法第36条第5項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
2.特許法第29条違反について
本件の請求項1、請求項4,及び請求項7に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、本件の請求項1、請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

本件の請求項1、請求項4及び請求項7に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1、請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

さらに、異議申立人池田英治が提出した特許異議申立書の「3.申立の理由」を参照されたい。
また、池田英治提出の特許異議申立書において、甲第1号証、参考資料1及び参考資料2は、それぞれ、刊行物1ないし刊行物3と読み替えるものとする。



刊行物1.特開昭61- 78179号公報(異議申立人池田英治提出甲第3号証)
刊行物2.実願昭61-172313号(実開昭63-77369号)のマイクロフィルム(同提出の参考資料1)
刊行物3.特開昭62-208680号公報(同参考資料2)」
なお、「刊行物1.特開昭61- 78179号公報(異議申立人池田英治提出甲第3号証)」は、「刊行物1.特開昭61- 78179号公報(異議申立人池田英治提出甲第1号証)」の誤記である。

3.特許法第36条違反について
(1)特許法第36条第5項第2号について(その1)
本件特許明細書の第27段落には、「そこで、本発明においては、積層セラミックス圧電体素子の上下面の平滑性、及び表面電極の面積、或いはその突出量等について詳細に規定することにより、積層セラミックス圧電体素子をランジュバン型の超音波モータ又はアクチュエータに使用した場合に、ボルトとステータとによる締め込み力が該素子の板面に均一に働くようにし、積層セラミックス圧電体素子本来の特性を備えた、実用上充分な性能を有する超音波モータ又はアクチュエータを提供することが出来た。」と記載され、本発明においては、積層セラミックス圧電体素子の「上下面の平滑性」、「表面電極の面積」、表面電極「の突出量」について詳細に規定することにより、はじめて、「積層セラミックス圧電体素子本来の特性を備えた、実用上充分な性能を有する超音波モータ又はアクチュエータを提供すること」ができるものである。
ここで、本件発明1及び本件発明2について検討すると、いづれも、「該積層セラミックス圧電体素子の上下の面では、表面電極を除く部分の面内での凹凸の差が20μm以下である平面に形成されていると共に、前記表面電極の各々が前記平面より1μm以上20μm以下突出して形成されていること」と記載されており、積層セラミックス圧電素子の「上下面の平滑性」及び「表面電極の突出量」のみが規定されている。
ところで、本件特許明細書の図2及び明細書の第31段落の記載、表1及び明細書の第36段落の記載から分かるように、単に、積層セラミックス圧電素子の「上下面の平滑性」及び「表面電極の突出量」のみを限定しても、表面電極の面積が適切な範囲に選定されなければ、積層セラミックス電圧素子が、「積層セラミックス圧電体素子本来の特性を備えた、実用上充分な性能を有する超音波モータ又はアクチュエータを提供する」ことができるものとは認められない。
したがって、本件発明1又は本件発明2は、上記の点については、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではない。
また、本件発明3は、本件発明1又は本件発明2のいずれかを引用しているので、上記の点については、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではない。
よって、本件発明1ないし本件発明3は、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件発明1ないし本件発明3についての特許は、特許法第36条第5号第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(2)特許法第36条第5項第2号について(その2)
本件発明1及び本件発明2における、「該積層セラミックス圧電体素子の上下の面では、表面電極を除く部分の面内での凹凸の差が20μm以下である平面に形成されている」ことについて、「平面」であって「面内での凹凸の差が20μm以下である」ことは論理矛盾があるようである。
しかし、本件特許明細書の第29段落の「素子の上下面は、焼成後にラップを施すことによりその上下面の各々の面内における凹凸の差(以下、“平面度”)が1〜20μmの平滑な平面に形成され、この平滑な素子の上面に、側面の層間配線3と接続する表面電極4がスパッタ法にて厚さ1μmで形成されている。」なる記載を参酌すると、本件発明1又は本件発明2の「積層セラミックス圧電素子の上下の面」上に微少な凹凸はあるものの、「その上下面の各々の面内における凹凸の差(以下、“平面度”)が1〜20μmの平滑な平面」となっていると解釈でき、積層セラミックス圧電体素子としてどのようなものであるかは当業者に理解できるものである。
よって、本件発明1及び本件発明2は、この点については、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしているものと認める。

4.まとめ
よって、本件発明1ないし本件発明3についての特許は、特許法第29条の規定に違反するか否かについて検討するまでもなく、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明は、特許法第36条第5項第2号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の請求項1,請求項4及び請求項7に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法室の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-11 
出願番号 特願平7-34310
審決分類 P 1 652・ 534- Z (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡 和久  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 河本 充雄
橋本 武
登録日 2003-05-23 
登録番号 特許第3432321号(P3432321)
権利者 キヤノン株式会社 太平洋セメント株式会社
発明の名称 積層セラミックス圧電体素子  

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