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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200480135 審決 特許
無効2010800166 審決 特許
無効200680157 審決 特許
無効200580136 審決 特許
無効200335136 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない A61K
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない A61K
管理番号 1118554
審判番号 無効2004-35012  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-01-09 
確定日 2005-04-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3205315号発明「ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3205315号の請求項1〜4に係る発明についての出願は、平成11年4月28日に出願され、平成13年6月29日にその発明についての特許権の設定登録がされ、平成16年1月9日に請求人により無効審判の請求がされ、さらに平成16年12月17日に特許権者により訂正請求がされたものである。

2.訂正請求について
(1)訂正内容
訂正事項a.
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を
「セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるものを有効成分とする、内臓脂肪低減剤。」と訂正する。
訂正事項b.
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
訂正事項c.
特許明細書の特許請求の範囲の「請求項3」を「請求項2」と訂正し、さらに、その内容を「セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるものを有効成分として含有してなる、内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料」と訂正する。
訂正事項d.
特許明細書の特許請求の範囲の「請求項4」を「請求項3」と訂正し、さらに、その内容を「ペットフードとして用いられる、請求項2に記載の内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料。」と訂正する。
訂正事項e.
特許明細書の段落番号【0024】に記載の「実施例2」を「参考例」と訂正する。
(2)訂正の適否に対する判断
訂正事項a.は、有効成分及びその用途を限定するものであり、訂正事項b.は請求項2を削除するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正事項c.及びd.のうち、請求項番号の訂正は、訂正事項b.により請求項2を削除したことに伴い、請求項番号を繰り上げたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、他の訂正は、訂正事項a.と同じく有効成分及びその用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項e.は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることが明らかである。
そして、上記訂正事項は、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、平成16年12月17日付けの訂正の請求は、特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法第126条第2及び3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるものを有効成分とする、内臓脂肪低減剤。」(以下、「本件発明1」という。)
【請求項2】セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるものを有効成分として含有してなる、内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料。(以下、「本件発明2」という。)
【請求項3】ペットフードとして用いられる、請求項2に記載の内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料。(以下、「本件発明3」という。)

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
本件特許の請求項1〜4に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができず(無効理由1)、また、本件の請求項1〜4に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明及び甲第4〜7号証に記載された公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず(無効理由2)、さらに、本件請求項1に記載されたセサミノールについては、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、セサミノールを含有する体脂肪低減剤の発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていない発明を包含するから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(無効理由3)と主張し、証拠方法として、甲第1号証〜甲第8号証及び参考資料1〜4を提出している。

(2)被請求人の主張
一方、被請求人は、請求人の主張は何れも失当である、と主張し、乙第1号証〜第7号証を提出している。

5.甲第1〜8号証に記載された内容
甲第1号証(Ann.Nutr.Metab.,Vol.37,1993;pp218-224)には、「要約」の項(p218;訳文1頁)に
(甲1-1)「多価不飽和脂肪酸生合成における強力なΔ5-デサチュラーゼ阻害剤であるセサミンが組織脂質の脂肪酸組成および肝機能に及ぼす作用について、げっ歯類で検討した。セサミンとエピセサミンの混合物(51.1:48.2、重量比)を食餌の0.5%のレベルでラットに13日間与えた場合、ジホモ-γ-リノレン酸の割合が肝臓のみならず血漿および血液細胞においても有意に増大し、これらのリグナンによりΔ5-不飽和化が阻害されることを示唆した。食餌の1%レベルにセサミンを調整すると、エタノールの連続吸入に起因するマウスの様々な血液のパラメータの変化、例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼの活性、総コレステロール、トリグリセリドと総ビリルビンの濃度の変化が改善された。さらに、セサミンはマウス肝臓における脂肪小滴の蓄積と空胞性退行変成に対し有意な防御作用を示したが、これは組織学的検査により確認した。セサミンはまたマウスにおいて体重1kgあたり100mgのレベルで四塩化炭素による肝脂質蓄積を予防する傾向があった。これらの結果は、セサミンおよび関連のリグナン化合物が肝機能の改善能力を有することを示している。」と記載されている。
また、「考察」の項(p222-224;訳文7頁)には、
(甲1-2)「本研究では・・・。さらに、準定量的ではあるが、セサミンがエタノールによる肝臓脂質蓄積をも改善することを組織学的検討により示した。・・・。実験2で得たデータは、セサミンがエタノールの連続吸引に起因する・・・および血清中のトリグリセリドと総ピリルビン濃度を低下させることを示した。・・・。肝脂質の減少は、少なくとも一部、正常ラットにおけるセサミンのトリグリセリド低下作用を反映している可能性がある。」と記載されている。
甲第2号証(New Food Industry Vol.39, No.3, 1997, pp25-31)には、「3.肝機能保護作用およびアルコール代謝の促進」の項(26頁)に
(甲2-1)「・・・。著者らは、過剰飲酒に対してあるいは肝機能の保護や改善という観点から、セサミンがどのような効果を示すか調べることにした。まず、マウスを用いエタノール連続吸引による肝障害モデルで実験を行った。CDF1マウス(雄、9週令)を3群に分け、1群は普通食で6日間飼育し、残り2群はエタノールチャンバー(12ppm)内で6日間飼育し、エタノール連続吸引による肝障害および脂肪肝を誘起した(内1群は1%セサミン強化飼料)。6日後に、血清分析、組織病理学的検索により肝機能に与えるセサミンの効果を評価した。(表1略)
表1の結果に示すように、・・・。さらに、エタノール連続吸引による脂肪肝の形成もセサミン投与グループでは有意に抑制されることも判明した。・・・。」と記載されている。
甲第3号証(J.Nutr.Sci.Vitaminol, Vol.44,No.5,1998,pp715-722)には、「要約」の項(訳文第1〜2頁)に、
(甲3-1)「・・・。これらの結果は、食餌性セサミンが、ラット肝臓においてエステル化を抑え外因性遊離脂肪酸の酸化代謝を促進し、少なくとも部分的には、中性脂肪低下作用を及ぼすことを示唆するものである。・・・。」と記載され、また「結果と考察」の項(訳文第3頁〜5頁)に
(甲3-2)「結果と考察 食餌性セサミンにより、摂餌量(1日当たり23〜25g)またはラットの発育は影響を受けなかったが、肝臓重量は有意に増加した(表1)。灌流肝臓の脂質濃度に及ぼす食餌性セサミンの影響は認められなかったが、外因性オレイン酸を添加して灌流した肝臓では、リン脂質濃度が有意に上昇した。トリアシルグリセロール及びコレステロールの合成と分泌の割合は、灌流培地に加えた外因性脂肪酸の質と量による影響を受けている(16,20,21)。・・・。したがって本研究では、外因性脂肪酸基質としてオレイン酸を用い、連続した時間間隔で測定したオレイン酸の肝摂取がほぼ同様の数値であることを発見した(14,16,17)。・・・。したがって、外因性脂肪酸を基質とした肝臓によるケトン体生成及びトリアシルグリセロール分泌における逆相関に関する以下の観察は、食餌性セサミン自体の影響に起因すると考えられる。・・・。一方、外因性脂肪酸に依存して増加するトリアシルグリセロールの肝臓での分泌量は、セサミン給餌により、有意に40%減少したが、外因性脂肪酸がない場合、変化は認められなかった。後者の灌流条件でトリアシルグリセロール分泌が減少しなかったのは、肝臓がトリアシルグリセロールの合成と分泌に使用する外因性脂肪酸基質を、使用できなかったことに原因があると考えられる。これらの結果は、食餌性セサミンの中性脂肪低下作用の原因の一部が、肝臓によるトリアシルグリセロールの合成及び分泌の減少にあることを示唆している。食餌性セサミンにより、トリアシルグリセロールの肝臓での分泌の減少が認められたが、その原因機序は不明である。・・・。すなわちこのリグナンの影響は、肝臓におけるコレステロール合成の部分的阻害に加え、コレステロールの腸吸収に対する阻害作用、LDL受容体によるコレステロール除去の増加、あるいはこれら機序の組み合わせなど、肝臓以外での寄与に起因する。・・・。結論として、セサミン給餌ラット肝臓においてトリアシルグリセロールに富むリポ蛋白の分泌が減少するのは、外因性脂肪酸によりケトン体生成が選択的に増加した結果である。」と記載されている。
甲第4号証(細谷憲政著「改訂 人間栄養学」調理栄養教育公社、1997年4月5日、改訂第2版発行)には、「2.脂質の代謝」の項(第33〜34頁)に、「肝臓は脂肪の代謝上重要な臓器であり、活発に合成、分解を営んでいる。摂取するエネルギーが、運動や労働に使うエネルギーよりも多いと、余分のエネルギーは脂肪として皮下の脂肪組織に蓄えられる。これは必要に応じてエネルギー源として利用される。脂肪は、体内で脂肪酸とグリセロールに加水分解され、さらに酸化されてエネルギーを発生する。脂肪酸は酸化(βー酸化)された後、TCAサイクルに入り、完全分解される。・・・。」と記載されている。
甲第5号証(日本農芸化学会 1999年度大会講演要旨集,2p432D(1999.3.31)日発表)には、その【方法と結果】の項に、「・・・。各種のβ酸化系酵素の活性とmRNAレベルもセサミンによって量依存的に増加し、セサミンが強いβ酸化誘導剤であることが明らかとなった。反対に脂肪酸合成系酵素である脂肪酸合成酵素とピルピン酸キナーゼの活性およびそのmRNAレベルはセサミンにより低下し、その低下は、0.1%添加ですでに明らかであった。・・・。」と記載されている。
甲第6号証(並木満夫著「ごまはなぜ身体によいのか」チクマ秀版社、平成10年7月18日、初版発行)には、「ゴマは油脂が多いため、とりすぎると太るのではという心配もありますが、ごく最近の研究から、ゴマのセサミンが肝臓で脂肪酸の分解を促進するという重要な事実が明らかにされました。このことは肥満防止の科学的裏づけになるものと思われます。」と記載(第88頁)されている。
甲第7号証(読売新聞、1999年(平成11年)4月20日(火曜日)、第14頁)には、「ごまリグナンは生体内でどんな働きをするのでしょうか?」の項に「・・・。ごまリグナンは、コレステロールの合成を抑えると同時に、吸収も抑えるものと考えられ、人間でも同じような効果を得られることが確認されています。ほかにも、免疫機能を増強させ食物アレルギーを抑制する可能性や、血圧を下げる作用、体内の脂肪組織を減らす作用などについての研究が進められているところです。」と記載されている。

7.判断
(無効理由1について)
本件発明1は、セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるもの(以下、「セサミン類」ともいう。)を有効成分とする、内臓脂肪低減剤であり、本件発明2は上記有効成分を含有してなる、内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料であり、本件発明3は、本件発明2をさらに技術的に限定するものである。一方、甲第1及び2号証は、それぞれ「肝臓障害に対するセサミンの防御作用」及び「脂肪肝の形成」が「セサミン投与グループでは有意に抑制される」ことを開示するに止まるものであり、甲第3号証は、「ラット肝において食餌性セサミンがケトン体生成を促進し、トリアシルグリセロール分泌を減少させることを、初めて報告する」に止まるものであるから、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明ではない。
また、本件発明2は、本件発明1に係る内臓脂肪低減剤の有効成分を含有する飲食品または飼料に係るものであり、本件発明3は、本件発明2をさらに技術的に限定するものであるから、いずれも上記と同様の理由により、甲第1〜3号証に記載された発明ではない。
したがって、無効理由1は妥当でない。

(無効理由2について)
請求人は、甲第1号証における「準定量的ではあるが、セサミンがエタノールによる肝臓脂質蓄積をも改善することを組織学的検討により示した・・・実験2で得たデータは、セサミンがエタノールの連続吸引に起因する・・・および血清中のトリグリセリドと総ピリルビン濃度を低下させることを示した。・・・肝脂質の減少は、少なくとも一部、正常ラットにおけるセサミンのトリグリセリド低下作用を反映している可能性がある。」(上記(甲1-2))等の記載から、セサミン類(セサミン+エピセサミンの1:1混合物)が体内脂肪の蓄積抑制乃至低減機能を有することが知られていた、と主張する。ここで請求人は体内脂肪に言及しているが、甲第1号証に具体的に記載されているのは、肝臓の内部及び血液中の脂肪である。 甲第2号証も、請求人が同号証の「立証の趣旨」(審判請求書第13頁下から2乃至1行)において記載するように、「セサミン類に、肝臓におけるトリグリセリドの低下効果、及び脂肪滴の減少効果があることは公知である。」ことを記載するに止まるものである。
一方、本件発明1は、セサミン類を有効成分とする内臓脂肪低減剤であって、ここにいう「内臓脂肪」とは、内臓臓器の間に存在する脂肪組織に蓄積された脂肪を意味するものであり(例えば、被請求人の提出した乙第1号証(特開平7-309765号公報)には、段落番号【0002】に「皮下組織にたまる皮下脂肪型肥満よりも、臓器の間にたまる内臓脂肪型肥満・・・」との記載が、また段落番号【0005】には、「・・・体脂肪(皮下脂肪、内臓脂肪)・・・」との記載があり、さらに、請求人が平成16年10月4日付けの上申書に添付した参考資料3には、「腹腔内の内臓脂肪面積対皮下脂肪面積比(V/S))に従って肥満症被験者を2群に分けた。(訳文第4頁、下から11〜10行)との記載がある。)、代謝異常等により内臓臓器(例えば肝臓)内部に蓄積される脂肪(例えば脂肪肝)を意味するものでないことは明らかであり、また、「低減」とは、本件特許明細書の記載、とくに実施例1及び表ー3の記載内容からみて、セサミン投与群は対照群に比べて、みかけ上、上記の意味を有する内臓脂肪に蓄積される脂肪量が抑制されることを意味するものと認められる。
肝臓などの内臓の臓器内部における脂肪の蓄積を抑制乃至低減することと、内臓臓器の間に存在する脂肪組織、すなわち「内臓脂肪」の蓄積を抑制乃至低減することは別のことであるうえ、両者の間にいかなる関係があるかについて、確立された知見はなく、さらには、脂質代謝は、脂質(主としてトリアシルグリセロール)の吸収、輸送、分解、合成等が肝臓のみで行われるものではなく、小腸、血液、リンパ液、肝外体組織、脂肪組織等の各組織内で、別の過程により行われるものであることを考慮すれば、肝臓中の脂肪及び血中の中性脂肪の低減が内臓脂肪の低減に直接に結びつくと考えることはできないので、当業者が甲第1及び2号証の記載事項に基づいて、本件発明1を容易に想到することはできない。
つぎに、甲第3号証に記載された事項について検討すると、同号証は、ラット肝において「食餌性セサミンにより、トリアシルグリセロールの肝臓での分泌の減少が認められたが、その原因機序は不明である。」(上記(甲3-2))ことを記載するに止まり、そのことと内臓臓器周辺の脂肪組織における脂肪の蓄積の抑制乃至低減との関係については、記載も示唆もないものである。
この点について、請求人は、参考資料2(平成16年7月27日付けの口頭審理陳述要領書に添付)、参考資料3及び4(平成16年10月4日付けの上申書に添付)を提出し、肝臓の脂質代謝機能と体脂肪及び内臓脂肪とが密接な関係を有するものであることを主張するので、以下に検討する。
ここで、本件発明1に関しては、体脂肪及び内臓脂肪のうち、内臓脂肪のみが問題となるので、肝臓の脂質代謝機能、とくに脂肪分泌、と内臓脂肪の関係について検討する。
参考資料2(湯浅景元著「体脂肪ー脂肪の蓄積と分解のメカニズム」、1998年5月10日、株式会社山海堂発行、第32〜37頁)には、「貯蔵脂肪が作られるプロセス」として、「ごはん、果物、お菓子などを食べると、・・・。血液の中を流れるブドウ糖は、血管の外に出て、脂肪細胞の膜に達します。・・・インシュリンがすい臓から出されると・・・ブドウ糖は脂肪細胞の中に取り込まれるのです。脂肪細胞に取り込まれたブドウ糖は、そこで脂肪酸とグリセリンに分解されます。そして、この脂肪酸とグリセリンを使って脂肪がつくられます。また、肝臓でもブドウ糖を材料にして脂肪を作ります。この脂肪は血液の中に放出されます。」(第36頁)と記載されているように、新たに摂取したごはんなどから、脂肪が蓄積されるプロセスを説明するものであり、肝臓からのトリグリセリドの分泌量が減少すれば、内臓脂肪が減少する、というような関係を示唆するものではない。
参考資料3(Metabolism, Vol36,No.1,January,1987,pp.54-59)は、「ヒト肥満症におけるグルコース代謝障害および脂質代謝障害に対する腹腔内脂肪蓄積の関与」と題する論文であり、その「考察」には、「大網脂肪細胞のような腹腔内脂肪細胞は代謝活性が高く,カテコールアミンによる脂肪分解の刺激あるいは脂肪代謝機能に対する感受性が極めて高い。・・・、主として大網脂肪細胞と腸管膜脂肪細胞からなる腹腔内内臓脂肪は肝臓における代謝と密接な関係があると云える。肝臓に過剰な遊離脂肪酸(FFA)が流入すると極めて低密度のリポ蛋白質が過剰生産され、高トリグリセリド血症と高コレステロール血症を来たす。」という記載があり、請求人は、参考資料3のこのような記載に基づいて、上記「密接な関係」とは、「内臓脂肪の代謝分解物である遊離脂肪酸の量が増加すると、肝臓でトリグリセライドに再合成されて血中に送り出されることになるため、結果として血清中の脂質量が増加する」という関係を意味するものであると主張する。
参考資料4(ANNALS OF NEW YORK ACADEMY OF SCIENCES,1993, Mar 15、pp.270-278)は、「内臓脂肪肥満の病態生理並びに病因」と題する論文であり、訳文第2頁「正常体重の被験者における内臓脂肪蓄積の意義」の項、特に訳文第2頁第6〜7行には、「体重が正常な被験者における局所解剖学的マーカーと代謝性マーカーの相関性を表1に示す。内臓脂肪面積と空腹時の血漿グルコース、トリグリセリドおよびコレステロールとの間には有意な相関性がみられた・・・。」と記載され、訳文第5頁の「内臓脂肪蓄積と代謝障害および循環器系障害のつながり」の項には、「腸間膜脂肪では皮下脂肪よりも脂質生成活性が高いことを立証した。これらの結果は、門脈循環に遊離脂肪酸を遊離し肝臓内に直接移行させる代謝活性が、内臓脂肪では極めて高いことを示している。過剰な遊離脂肪酸は肝臓内における脂質合成の促進およびインスリン抵抗性を惹起し、・・・」と記載されている。
請求人は、これらの記載などに基づいて、「内臓脂肪」の代謝分解によって生成された過剰な遊離脂肪酸は門脈を経て肝臓に入り、肝臓の脂質合成機構によってトリグリセライドに転換されるが、肝臓に入る遊離脂肪酸の量が増えると肝臓で再合成されて血中に送り出される脂質量も増加する、というように、内臓脂肪と肝臓の代謝との間には非常に密接な関係があることが明らかにされている、と主張し、さらに、これらの記載内容は、この血中脂質量が低下すれば、内臓脂肪の蓄積低下につながることを意味する、と主張する。
しかし、参考資料3及び4には、「内臓脂肪」の代謝分解によって生成された過剰な遊離脂肪酸は門脈を経て肝臓に入り、肝臓でトリグリセリドに転換されて血中に分泌されることは記載されていると認められるものの、血中脂質量が低下すると内臓脂肪の蓄積低下につながる、という点については何も記載するところがなく、前述したように、脂質代謝は多数の系が関与するものであるから、請求人のいうような、血中脂質量が低下すると内臓脂肪の蓄積低下につながる、ということを、参考資料3及び4の記載から、導き出すことは、できないことである。
請求人は、参考資料4の表1には、体重が正常な被験者における内臓脂肪面積と空腹時の血中トリグリセリドの量との間に有意な相関関係、すなわち内臓脂肪面積が大きい被験者は、トリグリセリドの量が多く、内臓脂肪面積が小さい被験者はトリグリセリド量が少ないという関係があることが示されているというが、そのことは、同一の被験者においてトリグリセリド量を増やせば常に内臓脂肪面積が大きくなることを意味するものではなく、ましてや、トリグリセリド量を減らせば常に内臓脂肪面積が小さくなることを意味するものでもない(身体の平衡を維持するという観点からは、そのような場合、何らかの系により、トリグリセリド量の変動を小さくすることが起きることも考えられる)ので、やはり、請求人の主張は採用できない。
したがって、セサミン等がラットの灌流肝臓のトリグリセリド分泌量を低減させることを開示する甲第3号証の記載から、セサミン類が内臓脂肪のみかけ上の蓄積を低減することを想到することは当業者にとって容易になし得るものではない。
甲第4〜7号証には、肝臓からのトリグリセリド分泌量が低下すると内臓脂肪の量が低下するという相関関係を記載するところは何もないので、甲第1〜3号証に記載された発明及び甲第4〜7号証に記載された公知技術に基づいて、本件発明1を当業者が容易に想到し得たものということはできない。なお、甲第6号証には、「ごく最近の研究から、ゴマのセサミンが肝臓で脂肪酸の分解を促進するという重要な事実が明らかにされました。このことは肥満防止の科学的裏づけになるものと思われます。」との記載(上記6.)があるが、ここで明らかにされた事実は、ゴマのセサミンが肝臓で脂肪酸の分解を促進する、という事実にとどまるものである。
また、本件発明2は、本件発明1に係る内臓脂肪低減剤の有効成分を含有する飲食品または飼料に係るものであり、本件発明3は、本件発明2をさらに技術的に限定するものであるから、いずれも上記と同様の理由により、甲第1〜3号証に記載された発明及び甲第4〜7号証に記載された公知技術に基づいて、本件発明2及び3を当業者が容易に想到し得たものということはできない。
したがって、無効理由2も妥当でない。

(無効理由3について)
無効理由3は、上記訂正により、有効成分がセサミン類に限定された結果、その根拠のないものとなったので、もはや妥当でない。

8.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明についての特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるものを有効成分とする、内臓脂肪低減剤。
【請求項2】
セサミン、エピセサミン、およびこれらの混合物から選択されるものを有効成分として含有してなる、内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料。
【請求項3】
ペットフードとして用いられる、請求項2に記載の内臓脂肪低減用飲食品または内臓脂肪低減用飼料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤、並びに飲食品及び飼料分野におけるその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、我が国においても肥満患者が増大し、大きな社会問題になりつつある。厚生省では昨年11月に平成9年国民栄養調査の結果概要を発表し、これにより10年前、20年前と比べて男性は肥満、過体重の割合が増加傾向を示し、20代の4人に1人が、30代では3人に1人の割合であることを指摘している。その要因としては、食物摂取の増大(過食)、運動の減少(運動不足)、体熱発生の変動等が推測される。肥満になると、体脂肪が多く蓄積することによって動脈硬化、高血圧症、糖尿病、心臓病を引き起こし、血管障害、神経障害、抵抗力低下等の合併症を併発することがある。
【0003】
このように、今日の健康を意識した社会では、食物中の脂肪含量に注意が向けられ、飽和脂肪酸が少ない肉が好まれている。更に、人の体脂肪、特に皮下脂肪や内臓脂肪等を調節するダイエット、フィットネス等も大きな関心が持たれている。
かかる背景の下、作用効果に優れ、かつ安全な体脂肪低減剤に対する強い社会的要請がある。
【0004】
ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体、特にセサミンについては、「Journal of Chinese Nutrition Society」、18、1〜11(1993)の菅野(M.Sugano)及び秋本(K.Akimoto)による「サセミン:自然からの多機能性の贈り物(Sesamin:A multifunctional Gift From Nature)」という表題の論文に報告されている。この論文は、セサミンの可能な利点として、サセミンがジホモ-γ-リノレン酸からアラキドン酸への反応を不飽和化する酵素であるδ-5-デサチュラーゼを干渉することを述べている。この論文はまた、セサミンのその他の可能な効果(血中コレステロール低下作用、化学物質及びアルコールの肝解毒の強化、化学的に誘発された乳癌に対する保護作用、および生体内酸化防止作用)を論じた文献を引用している。
本発明者らの知る限り、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体が体脂肪低減作用を有する旨の報告は未だなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安定性が高く、副作用が少ない新規な体脂肪低減剤、並びにそれを含有する飲食品、飼料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、体脂肪低減の指標を、腎周辺脂肪及び副睾丸周辺脂肪とし、鋭意研究を重ねた結果、胡椒種子、胡麻粕又は胡麻油等から抽出又は単離した、あるいは合成により得られたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体が体脂肪低減作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤、並びに該誘導体を含有してなる体脂肪低減作用を有する飲食品、飼料を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体は、次の一般式(I)で表されるものである。
【化2】

(式中、R1〜R6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、あるいはR1とR2及び/又はR4とR5は一緒になってメチレン基もしくはエチレン基を表し、n,m、及び1は0又は1である)
【0008】
具体的には、セサミン、セサミノール、エピセサミン、エピセサミノール、セサモリン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2,6-ビス-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、又は2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェノキシ)-3,7-ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン等の化合物を挙げることができる。中でもセサミン、エピセサミンまたはこれらの混合物が好ましい。
これらの化合物は、配糖体の形であってもよく、また光学活性体も本願発明に含まれる。
【0009】
本発明では、前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体(以下「本発明の誘導体」という)を、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の誘導体は高純度精製物に限ったものではなく、前記ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の1種又は複数種を主成分とする抽出物(以下、「本発明の誘導体を主成分とする抽出物」という)も使用することができる。本発明の誘導体を主成分とする抽出物は、本発明の誘導体を含有する天然物から常法に従って抽出することができる。本発明の誘導体を含有する天然物としては、胡麻油、胡麻粕、胡麻油製造過程の副産物、胡麻種子、五加皮、桐木、白果樹皮、ヒハツ、細辛等を挙げることができる。また本発明の誘導体を主成分とする抽出物における、本発明の誘導体の含有率は一般に0.1重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上であり、特にセサミンとエピセサミンの含有量の合計が0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上が望ましい。
【0010】
本発明の誘導体を医薬品として用いる場合、投与形態は、経口投与が都合よく行われるものであればどのような剤形のものであってもよく、これらを症状に応じてそれぞれ単独で、または組み合わせて使用することができる。
これら各種製剤は、常法に従い目的に応じて主薬に賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また必要に応じて適宜等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤を加えてもよい。
【0011】
また外用剤としては基剤としてワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴール等を用い、通常の方法によって軟膏剤、クリーム剤等を調製することができる。またその投与量は、投与の目的や投与対象者の状況(性別、年齢、体重等)により異なるが、通常、成人に対して経口投与の場合、本発明の誘導体の総量として、1日当たり1mg〜10g、好ましくは1mg〜2g、さらに好ましくは1mg〜200mgの範囲で、また非経口投与の場合、本発明の誘導体の総量として、1日当たり0.1mg〜1g、好ましくは0.1mg〜200mg、さらに好ましくは0.1mg〜100mgの範囲で適宜調節して投与することができる。
【0012】
また本発明の誘導体は、共役リノール酸とともに投与することにより、本発明の体脂肪低減効果が増強される。共役リノール酸と併用する場合、本発明の誘導体と共役リノール酸との配合比率は、本発明の誘導体1重量部に対して共役リノール酸が0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜40重量部の範囲で、適宜調節して投与することができる。
【0013】
本発明の誘導体又は該誘導体を主成分とする抽出物を飲食品、飼料(ペットフードを含む)として用いる場合、その形態は、上記医薬品製剤の形態でもよく、また固形、あるいは液状の食品は嗜好品、例えばパン、めん類、ごはん、菓子類(ビスケット、ケーキ、キャンデー、チョコレート、和菓子)、豆腐およびその加工品などの農産食品、清酒、薬用酒、みりん、食酢、醤油、味噌などの発酵食品、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリン、ショートニング、食用油脂などの油脂食品、ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージなどの畜農食品、かまぼこ、揚げ天、はんぺんなどの水産食品、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などの加工形態であってもよい。
【0014】
また健康食品、機能性食品として用いる場合は、その形態は、上記医薬製剤や飲食品の形態でもよいが、例えば蛋白質(蛋白質源としてはアミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン等の蛋白質が最も広く使用されるが、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物等の他、アミノ酸単体の混合物も使用される)、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等が配合された自然流動食、半消化態栄養食および成分栄養食や、ドリンク剤等の加工形態であってもよい。
【0015】
本発明の飲食品または飼料は、本発明の誘導体を実質的に含有しない食品原料に、本発明の誘導体又は該誘導体を主成分とする抽出物を所要量加えて、一般の製造法により加工製造することができる。その配合量は剤形、食品の形態性状により異なるが、一般には0.001〜50%が好ましいが特に限定されるものではない。
【0016】
本発明の飲食品は、成人に対し、目安として1日当たり本発明の誘導体の総量が1mg〜10g、好ましくは1mg〜2g、さらに好ましくは1mg〜200mgの範囲となる量で経口摂取されることが望ましい。さらに本発明の飲食品において、更に共役リノール酸を配合すると、本発明の誘導体のもつ体脂肪低減作用が増強される。この場合、本発明の誘導体と共役リノール酸との配合率は、本発明の誘導体1重量部に対して共役リノール酸が0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜40重量部の範囲である。
【0017】
以下の実験例は、ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体が体脂肪低減作用を有することを示すものである。
【実施例】
以下の実施例で使用した共役リノール酸およびセサミンは、次の方法で調製したものである。
〔共役リノール酸(CLA)の調製〕
プロピレングリコール150gに水酸化カリウム50gを溶解し、溶解後20分間窒素バブリングを行ない、170℃まで昇温した。昇温後、サフラワー油100gを加え、窒素気流下で170℃、1時間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、塩酸を加え中性にし、15分間撹拌した。続いて、反応溶液をpH3に調製し、蒸留水を加えて5分間撹拌した。次いで、ヘキサン抽出を3回行ない、ヘキサン溶液を5%NaCl溶液および蒸留水で洗浄し、脱水ロ過を行なった。ロ過後、ヘキサンを留去し、共役リノール酸含有脂肪酸を得た。
【0018】
〔セサミンの調製〕
胡麻油製造過程の副産物であるスカム(脱臭工程で得られた留出物)100部に、溶媒として80%エタノール水溶液400部を加え、撹拌下に1時間加熱環流した後、20℃に冷却、同温度で一夜静置して混合溶液を調製した。得られた混合溶液は溶媒可溶性画分と溶媒不溶性画分とに2層分離していた。この混合溶液から溶媒可溶性画分を成層分離した後、分離した溶媒可溶性画分に48%水酸化カリウム24.7部を添加混合した。この混合溶液を10℃で一夜放置し、セサミン類を析出させた。析出させたセサミン類を吸引濾過して分離し、水100部で洗浄した後、80℃で3時間乾燥し、褐色固体を得た。分析の結果、得られた固体はセサミンとエピセサミンとの1:1混合物(純度99.5%)であることが解った。
【0019】
実施例1
4週齢のSprague-Dawley系雄ラットを予備飼育した後、1.0%リノール酸群(対照群)、0.2%セサミン群、0.2%セサミン+1.0%CLA群の計3群(各群8匹)に分け、表1に示す実験食と水を自由に与えた。使用したCLAの組成は表2に示されるように、9c,11t/9t,11c-18:2および10t,12c-18:2の2つが主なものであった。4週間飼育後、各群8匹のラットについて屠殺し、各臓器を摘出した。
【0020】
その結果、摂取量および体重増加量は群間に有意な差はなかった。
また、表-3に示されるように、肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓、脳の組織重量は群間に差はなかったが、セサミン添加群において対照群よりも腎周辺脂肪組織重量及び副睾丸周辺脂肪組織重量は減少し、さらにCLAと併用するとさらに低下することが確認できた。
以上のことから、セサミン単独あるいはセサミンとCLAとの組合せにより、ラットの摂食量や体重増加量に影響することなく、脂肪組織を減少させることが判明し、体脂肪低減剤として使用できる。
【0021】


【0022】

【0023】

【0024】
参考例
4週齢のSprague-Dawley系雄ラットを5〜11日間予備飼育した後、1.0%リノール酸群(対照群)、0.2%セサミン群、0.2%セサミン+1.0%CLA群の計3群(各群5匹)に分けた。実験食は日本クレア(株)のCE-2(脂質含量4.5%)に大豆油を1.5%添加した基本食とし、摂取方法を自由摂食とした。使用したCLAの組成は表2に示されるように、9c,11t/9t,11c-18:2および10t,12c-18:2の2つが主なものであった。3週間飼育後、肝臓環流実験を行った。
【0025】
その結果、表-4の通り摂取量および体重増加量は群間に差はなかった。
表-5に示されるように、環流肝臓からのトリグリセライド分泌量がセサミン添加群において対照群よりも減少し、CLAと併用することにより更に低下することが確認された。
以上のことから、セサミン単独あるいはセサミンとCLAとの組合せにより、ラットの摂食量や体重増加量に影響することなく、肝臓からのトリグリセライド分泌を減少させ、体脂肪の低減につながると考えられる。
【0026】

【0027】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-02-01 
結審通知日 2005-02-04 
審決日 2005-02-25 
出願番号 特願平11-122799
審決分類 P 1 112・ 121- YA (A61K)
P 1 112・ 531- YA (A61K)
P 1 112・ 113- YA (A61K)
P 1 112・ 534- YA (A61K)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
谷口 博
登録日 2001-06-29 
登録番号 特許第3205315号(P3205315)
発明の名称 ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤  
代理人 宮嶋 学  
代理人 宮嶋 学  
代理人 吉武 賢次  
代理人 堅田 健史  
代理人 紺野 昭男  
代理人 堅田 健史  
代理人 吉武 賢次  
代理人 金谷 宥  
代理人 中村 行孝  
代理人 中村 行孝  
代理人 紺野 昭男  

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