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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1119318
審判番号 不服2002-19175  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-03 
確定日 2005-07-07 
事件の表示 平成 8年特許願第 72681号「自動車の自動変速機のシフト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 7日出願公開、特開平 9-263153〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明1
本願は、平成8年3月27日の出願であって、その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成13年10月29日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】シフトレバーをシフト方向及びセレクト方向へ回動可能な状態で支持して、該シフトレバーが、A/Tモードシフト路のドライブレンジ位置とマニュアルモードシフト路の中立位置とを横路で繋いだ形状の移動路内を移動自在になるようにし、
該シフトレバーの回動支持部付近から、先端をいずれかの方向へ傾倒させた状態で且つ該先端にチェックピンを備えた構造のチェック部を形成すると共に、シフトレバーの近くに前記移動路に相応した形状のチェック溝が形成されたチェックプレートを配置し、チェックピンの先端をチェック溝に沿って係合させることにより、シフトレバーが前記移動路に沿って移動するようになっている自動車の自動変速機のシフト装置において、
前記チェック部がシフトレバーのシフト方向及びセレクト方向と合致しない方向へ傾倒した状態で形成され、チェックプレートが該チェック部に対応する位置に配置されていることを特徴とする自動車の自動変速機のシフト装置。」

2.刊行物に記載された発明
(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-301311号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「変速機用シフト装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「本実施例の構成は、図1に示す如く、上面に、自動変速モード用シフトパターン99及びマニュアル変速モード用シフトパターン95等からなるシフトパターンを有するケース9と、当該ケース9内に収納され、上記各シフトパターン95、99内にて作動するシフトレバー1と、当該シフトレバー1の下端部に設けられ、当該シフトレバー1のシフト作動を担うシフトジョイント6と、当該シフトジョイント6に対して、その直角方向に回転軸を有するとともに、主にセレクト作動を担うセレクトジョイント11と、上記シフトレバー1の下方部に設けられ、当該シフトレバー1の自動変速モードとマニュアル変速モードとの間の切り換え操作の際、及びマニュアル変速モードにおけるシフト操作の際に、節度感を与える役目を果す節度感付与装置5と、からなることを基本とするものである。」(第3頁3欄38行〜4欄2行参照)
(イ)「この節度感付与装置5は、図1に示す如く、上記シフトレバー1とセレクトジョイント11との結合部に設けられるブラケット4と、当該ブラケット4の先端部に設けられた反力機構2と、当該反力機構2を形成するプランジャ22の先端部が係合する係合リセス331、332、333等を有する係合部材3と、からなることを基本とするものである。
このような構成において、上記反力機構2は、図1ないし図3に示す如く、ブラケット4の先端部に取り付けられるホルダ29と、当該ホルダ29内に収納されるスプリング21及びプランジャ22とからなるものである。そして、当該プランジャ22は、上記スプリング21のばね反力によって、常時、係合部材3側へ押し付けられるようになっているものである。
このような押付力によって、上記プランジャ22の先端部が係合する係合部材3は、摩擦係数の小さな(低い)プラスチック材等からなるものであり、図2に示すシフトレバー1の軸線とシフト操作時における回転中心であるO2 との交点を中心として形成される球面の一部からなるものである。このような球面部の一部に、図1に示す如く、シフト操作方向に沿った2条の係合溝31、33と、当該係合溝31、33の間に形成される山脈状の凸起32とが設けられている構成からなるものである。この山脈状の凸起32を上記プランジャ22の先端部が乗り越えることによって、自動変速モードからマニュアル変速モードへの切り換え操作を行なう際の節度感が付与されるようになっている(図2参照)。」(第3頁4欄20行〜47行参照)
(ウ)図4には従来技術として、シフトレバー10が、自動変速方式に関するシフトパターン20のドライブレンジ位置とマニュアル変速方式に関するシフトパターン30の中立位置とを横路で繋いだ形状の移動路内を移動自在とした例が記載されている。

以上の記載事項及び図面からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「シフトレバー1をシフト作動及びセレクト作動可能な状態で支持して、該シフトレバー1が、自動変速モード用シフトパターン99とマニュアル変速モード用シフトパターン95とを横路で繋いだ形状の移動路内を移動自在になるようにし、
該シフトレバー1とセレクトジョイント11との結合部に先端をいずれかの方向に傾倒させた状態でブラケット4を設けると共に、該ブラケット4の先端にプランジャ22を設け、プランジャ22の先端部が係合する係合部材3を、シフトレバー1の軸線とシフト操作時における回転中心であるO2 との交点を中心として形成される球面部の一部に設け、該係合部材3にシフト操作方向に沿った2条の係合溝31、33を設けた変速機用シフト装置。」

(刊行物2)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-253152号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「シフトレバー装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(エ)「車両の変速機に連結されたレバーが前後左右に操作されることにより複数のシフトレンジのうちの一つに選択されて前記変速機をシフトするシフトレバー装置において、弾性を有し、一端が前記レバーに取り付けられて常にレバーと共に移動するスプリングプレートと、前記各シフトレンジと関係付けられて周囲壁及び底壁が凹凸状に連続する節度溝が形成され、前記スプリングプレートの他端が前記節度溝内に入り込んだ状態で前記レバーの側近に配置され、前記スプリングプレートの他端を前記節度溝に沿って案内することにより前記レバーの前後左右の移動を案内する節度プレートと、を備えたことを特徴とするシフトレバー装置。」(【特許請求の範囲】参照)
(オ)「さらに、スプリングプレート28の取付位置及び節度プレート40の配置位置は、シフトレバー12の移動範囲の外の適宜な箇所に設定することができ、配置位置設定の自由度が拡大してその配置スペースを確保することも容易になり、スペースの有効利用も図ることができる。」(第4頁5欄8行〜13行参照)

3.対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「自動変速モード用シフトパターン99」は本願発明1の「A/Tモードシフト路」に相当し、以下同様に「マニュアル変速モード用シフトパターン95」は「マニュアルモードシフト路」に、「シフトレバー1とセレクトジョイント11との結合部」は「シフトレバーの回動支持部付近」に、「ブラケット4」は「チェック部」に、「プランジャ22」は「チェックピン」に、「係合部材3」は「チェックプレート」に、「係合溝31、33」は「チェック溝」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「シフトレバー1の軸線とシフト操作時における回転中心であるO2 との交点を中心として形成される球面部の一部」は図1、2からみて「シフトレバーの近く」に位置している。
そして、引用発明においてもプランジャ22を係合溝31、33に沿って係合させることにより、シフトレバー1が移動路に沿って移動するようになっている。
さらに、引用発明の「ブラケット4」もシフトレバー1から傾倒した状態で形成されており、「係合部材3」は「ブラケット4」に対応する位置に配置されている。
したがって、本願発明1と引用発明とは、本願発明1の用語を使用して記載すると下記の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「シフトレバーをシフト方向及びセレクト方向へ回動可能な状態で支持して、該シフトレバーが、A/Tモードシフト路とマニュアルモードシフト路とを横路で繋いだ形状の移動路内を移動自在になるようにし、
該シフトレバーの回動支持部付近から、先端をいずれかの方向へ傾倒させた状態で且つ該先端にチェックピンを備えた構造のチェック部を形成すると共に、シフトレバーの近くに前記移動路に相応した形状のチェック溝が形成されたチェックプレートを配置し、チェックピンの先端をチェック溝に沿って係合させることにより、シフトレバーが前記移動路に沿って移動するようになっている自動車の自動変速機のシフト装置において、
前記チェック部が傾倒した状態で形成され、チェックプレートが該チェック部に対応する位置に配置されている自動車の自動変速機のシフト装置。」である点。
(相違点1)
本願発明1は、「A/Tモードシフト路のドライブレンジ位置とマニュアルモードシフト路の中立位置」とを横路で繋いだ形状の移動路としているのに対し、引用発明では「A/Tモードシフト路とマニュアルモードシフト路」とを横路で繋いだ形状の移動路としているものの、どの位置で繋いでいるか明らかでない点。
(相違点2)
本願発明1は、チェック部が「シフトレバーのシフト方向及びセレクト方向と合致しない方向へ」傾倒しているのに対し、引用発明では傾倒方向が明らかでない点。

以下、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1には従来技術として、シフトレバー10が、自動変速方式に関するシフトパターン20のドライブレンジ位置とマニュアル変速方式に関するシフトパターン30の中立位置とを横路で繋いだ形状の移動路内を移動自在とした例が記載されており(摘記事項(ウ)参照)、引用発明の移動路の形状としてこの従来技術の移動路の形状を適用することを阻害する事情も格別認められないので、引用発明の移動路を「A/Tモードシフト路のドライブレンジ位置とマニュアルモードシフト路の中立位置」とを横路で繋いだ形状の移動路とすることは当業者が容易に想到できたことである。
(相違点2について)
刊行物2にはスプリングプレート28の取付位置及び節度プレート40の配置位置は、シフトレバー12の移動範囲の外の適宜な箇所に設定することができる点が記載されている。そしてスプリングプレート28の取付位置を適宜な箇所に設定するとは、図3等からみてシフトレバーの周囲適宜の方向に取り付けることを含むことは明らかである。その際、配置スペースの確保やスペースの有効利用の観点でシフトレバーのシフト方向及びセレクト方向と合致しない方向とすることも当業者が適宜選択できる事項である。
ここでこの「スプリングプレート28」は機能的にみて本願発明1の「チェック部」に相当する。
そして引用発明と刊行物2記載の発明はいずれも自動変速機のシフト装置の節度機構に関する技術であるから、刊行物2に記載された発明を引用発明に適用する点に格別の困難性はない。
したがって、引用発明及び刊行物2に記載された発明を知り得た当業者であれば、引用発明のチェック部をシフトレバーのシフト方向及びセレクト方向と合致しない方向へ傾倒するように構成することは格別の創意なくなし得たことである。
なお、刊行物2に記載された発明におけるスプリングプレート28の配置位置の変更は配置スペースの確保やスペースの有効利用を目的として行われるものであるが、本願発明1と別な課題に基づいた構成の変更であっても本願発明1の構成に想到することが容易である点に相違はない。

また、本願発明1の効果を検討すると、「シフトレバーの回転方向に沿ったガタ付きが規制される」との効果が若干あったとしても、その度合いはチェック部のシフト方向及びセレクト方向からのずれ角度によって異なることになる。ところで本願発明1では、チェック部のシフト方向及びセレクト方向からのずれ角度が具体的に限定されているものでなく、わずかなずれ角度しかない場合も含むが、その場合チェック部をシフト方向及びセレクト方向と合致した方向に傾倒した場合と効果の差はほとんどないと考えられる。したがって、チェック部のシフト方向及びセレクト方向からのずれ角度によっては若干の効果があるとしても、本願発明1で限定した構成に基づく効果が格別顕著なものとすることはできない。
そして本願発明1のその他の効果についても、引用発明、刊行物2に記載された発明から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

4.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、刊行物1〜2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-26 
結審通知日 2005-05-10 
審決日 2005-05-23 
出願番号 特願平8-72681
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田々井 正吾川口 真一  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 平田 信勝
村本 佳史
発明の名称 自動車の自動変速機のシフト装置  
代理人 西脇 民雄  
代理人 西脇 民雄  

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