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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1119372
審判番号 不服2003-13793  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-17 
確定日 2005-07-07 
事件の表示 特願2001- 3671「クラッチ機構」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月31日出願公開、特開2001-235783〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年3月30日に出願した特願平5-72429号(国内優先権主張平成4年3月30日)の一部を平成13年1月11日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされた。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「前記回転駆動部材と回転従動部材が出力軸と同軸上に配置され、前記回転従動部材に多角形のクラッチバネを係合配置し、前記多角形のクラッチバネの内側に配置されると共に前記多角形のクラッチバネと係合して滑りクラッチを構成するクラッチ板を前記回転駆動部材に係合配置し、前記回転駆動部材と前記クラッチ板の係合部の形状は十字形のスプライン形状をしていることを特徴とするクラッチ機構。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭51-1772号(実開昭52-94546号)のマイクロフィルム(以下、引用例1という。)には、以下の技術事項が記載されている。

ア.第1図〜第3図に示すように巻取車クラッチは軸1上に配設された歯車2とドラム3とから成る。歯車2は孔4に圧入されているブッシュ5を介して軸1に対して回転可能に配設されており、軸1上の環状溝1aに嵌入した固定環6によって軸方向に対して安全にされている。歯車2は図示しないモーター及びこれに連なるピニオン又はウォーム(歯車2がウォームホイールとして形成されている場合)によって駆動されることができる。(明細書第2頁下から3行〜第3頁7行)

イ.第2図及び第3図から明らかなように、歯車2には穴7が形成されておりこの穴7の直径をDで表わす。更に歯車2には板ばね8,8,8がそれぞれ正三角形の各辺を構成するように配設されており各板ばね8は各両端部をそれぞれスリット9,9に遊嵌させている。板ばね8の巾は第2図から明らかであり、1側縁は歯車2の穴7の底面まで達しており他の側縁はドラム3の広い端面と僅かに間隔を保っている。ドラム3の左端のボス10は外径dを有し、円周上3個所に亘って前記板ばね8,8,8によって形成される正三角形の中心から各辺までの距離に対応して外径が切取られて欠円状10aになっている。ボスの直径dは歯車2の穴7の直径Dよりも僅かに小さい。それによって後に述べる板ばね8の彎曲が可能になる。(明細書第3頁9行〜第4頁5行)

ウ.図示しないモーターからピニオン或はウォームの回転を介して歯車2が軸1に対して回転され、同時に歯車2に配設された3つの板ばね8,8,8とドラム3のボス10の平削面10aとの形状一体的結合によってドラム3に回転が伝達され、ドラム3は軸1と共に回転する。回転方向は正逆いずれも可能である。ドラムの巻取又は巻戻し作動中、アンテナエレメントの伸縮行程端においてドラムに過負荷が作用すると歯車2の前記正三角形に配置された板ばね8,8,8はそれぞれボス10の外径dに対応して彎曲されてボス10の外面と板ばね8,8,8との間にスリップが生じ、歯車2の回転にも拘らずドラムの回転は停止する。(明細書第4頁11行〜第5頁4行)

したがって、引用例1には、上記各記載事項及び図面から、以下の発明(以下、引用発明、という。)が記載されている。
「歯車2とドラム3が軸1と同軸上に配置され、前記歯車2に正三角形の各辺を構成するように配設された板ばね8を係合配置し、前記正三角形の各辺を構成するように配設された板ばね8の内側に配置されると共に前記正三角形の各辺を構成するように配設された板ばね8と係合して滑りクラッチを構成する平削面10aを有するボス10を前記ドラム3に一体に設け、前記歯車2と前記軸1とは歯車2の孔4に圧入されているブッシュ5を介して回転可能に配設されている巻取車クラッチ。」

4.対比
ここで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「歯車2」は本願発明の「回転駆動部材」に相当し、以下同様に、「ドラム3」は「回転従動部材」に、「軸1」は「出力軸」に、「正三角形の各辺を構成するように配設された板ばね8」は「多角形のクラッチバネ」に、「平削面10aを有するボス10」は「クラッチ板」に、「巻取車クラッチ」は「クラッチ機構」に、それぞれ相当する。

そして、本願発明と引用発明とでは、クラッチバネとクラッチ板を配置する回転駆動部材と回転従動部材とが逆であるので、それらを一方の回転部材、他方の回転部材と記載することにすると、両者は、「前記回転駆動部材と回転従動部材が出力軸と同軸上に配置され、一方の回転部材に多角形のクラッチバネを係合配置し、前記多角形のクラッチバネの内側に配置されると共に前記多角形のクラッチバネと係合して滑りクラッチを構成するクラッチ板を他方の回転部材に固定的に配置したことを特徴とするクラッチ機構。」である点で一致し、以下の各点において相違している。

相違点1;
クラッチバネとクラッチ板の配置に関し、本願発明では、回転駆動部材にクラッチ板を配置し、回転従動部材に多角形のクラッチバネを配置しているのに対し、引用発明では、回転従動部材に相当するドラム3に平削面10aを有するボス10を配置し、回転駆動部材に相当する歯車2に正三角形の各辺を構成するように配設された板ばね8を配置している点。

相違点2;
本願発明では、回転駆動部材と前記クラッチ板の係合部の形状は十字形のスプライン形状をしているのに対し、引用発明は、相違点1で述べたように、回転駆動部材に相当する歯車2には正三角形の各辺を構成するように配設された板ばね8が配置されているので、そのような構成を有していない点。

5.当審の判断
各相違点について検討する。
相違点1について
回転駆動部材と回転従動部材との間に、クラッチ板とクラッチバネとからなるクラッチ機構を設ける場合に、いずれの側にクラッチ板を設けても、作用効果に格別の差異はなく、いずれの側にクラッチ板を設けるかは、当業者が必要に応じて決定し得る設計事項である。

相違点2について
軸の回転力を伝達するのに、軸と被動部材との係合部の形状を十字形のスプライン形状とすることは、従来周知(例えば、実願昭59-139851号(実開昭61-55251号)のマイクロフィルム、特開昭61-96237号公報、特開平3-213174号公報、特開平4-1609号公報等参照。)の技術事項である。
引用発明において、回転駆動部材にクラッチ板を設けることは、相違点1で検討したように、当業者にとって設計事項であり、その際、上記周知の技術事項を適用して相違点2の構成とすることは、当業者にとって困難性はない。

また、本願発明の効果も、引用例1、及び従来周知の技術事項から予測できる範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する 。
 
審理終結日 2005-04-26 
結審通知日 2005-05-10 
審決日 2005-05-23 
出願番号 特願2001-3671(P2001-3671)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越河 勉川俣 洋史  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 前川 慎喜
井口 猶二
発明の名称 クラッチ機構  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  
代理人 藤綱 英吉  

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