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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1119378
異議申立番号 異議2003-71750  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-11 
確定日 2005-04-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3365724号「画像形成装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3365724号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続の経緯 特許出願 平成9年8月12日
特許権設定登録 平成14年11月1日
特許公報発行 平成15年1月14日
特許異議申立(申立人藤本佐恵子、請求項1〜5に係る特許に対して)
平成15年7月11日
特許異議申立(申立人ペンタックス株式会社、請求項1〜5に係る特許に対して) 平成15年7月11日
特許異議申立(申立人市東勇、請求項1〜5に係る特許に対して)
平成15年7月14日
特許異議申立(申立人キャノン株式会社、請求項1〜5に係る特許に対して) 平成15年7月14日
取消理由通知 平成15年11月6日
訂正請求書 平成16年1月19日

[2]訂正の適否
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードは、個別または共通の金属パッケージ内に実装され、かつ各アノード端子は当該金属パッケージに接続されると共に、電源の正極に接続される一方、カソード端子がレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されたことを特徴とする画像形成装置。」を、
「【請求項1】複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードは、共通の金属パッケージ内に実装され、かつ各アノード端子は当該金属パッケージに接続されると共に、電源の正極に接続される一方、カソード端子がレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されたことを特徴とする画像形成装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b
明細書の段落【0007】の第4〜5行目の「個別または共通の金属パッケージ内に実装され、」を、「共通の金属パッケージ内に実装され、」と訂正する。

2.訂正の目的、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、「個別または共通」との択一的な記載の一方を削除するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、上記訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、この訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認める。
上記訂正事項a、bが願書に添付した明細書又は図面に記載した事項(段落【0027】の「ここで、レーザダイオード素子LD1とLD2とは共通のパッケージに、2個1組みとして封入されても良い。」)の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかである。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は平成15年改正前特許法第120条の4第2項ただし書き、並びに同第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項に適合するので、当該訂正を認める。

[3]特許異議申立てについての判断
1.本件発明
上記[2]で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりの、次のものと認める。
「【請求項1】複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードは、共通の金属パッケージ内に実装され、かつ各アノード端子は当該金属パッケージに接続されると共に、電源の正極に接続される一方、カソード端子がレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】各レーザダイオードは、当該レーザダイオードの出射するレーザビームの発光を監視するフォトダイオードを前記金属パッケージ内に備え、フォトダイオードのカソード端子が金属パッケージに電気的に接続されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】各レーザダイオードと、対応する各レーザダイオード駆動回路とが一枚のプリント配線板上に実装されたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】前記レーザダイオード駆動回路が、レーザダイオードに供給する駆動電流をオン・オフするスイッチング回路と、レーザダイオードに供給する駆動電流の値を調整する定電流回路とを一体化した回路からなり、対応するレーザダイオードに近接配置されたことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】前記レーザダイオードに並列にスナバ回路を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。」

2.引用刊行物及びその記載事項
当審が平成15年11月6日付けで通知した取消理由に引用した特開平8-300725号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第1号証。以下「引用例1」という。)には、以下のa〜fの記載がある。
a.「LBP(laser beam printer)やディジタルPPC(plain paper copier)等の書き込み用光学系として使用されるレーザビーム走査光学装置に係り、複数のレーザビームにより同時に複数のラインを並列に走査するマルチビーム走査光学装置に関する。」【0001】
b.「マルチビーム走査光学装置は、レーザダイオードと光量をモニタするためのフォトダイオードとを導電性を有するハウジングに内蔵したレーザ発生装置を2個備えている。」【0004】」
c.「図9のように、レーザダイオードLDのアノードとフォトダイオードPDのカソードとにハウジング電圧を共通に使う方式のレーザ発生装置をマルチビーム走査光学装置の光源として用いる場合、図10のような回路構成となる。ここで、1、1’はそれぞれレーザ発生装置を示している。各ハウジング301、302には、正の電源電圧+B1、+B2が印加される。」【0005】
d.「本発明によれば、例えば、レーザダイオードのアノードを導電性を有するハウジングに接続し、このハウジングを介して外部より電源電圧をアノードに受けるような形態で使用する場合」【0013】
e.「【実施例】以下、本発明を適用したマルチビーム走査光学装置の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例に係るマルチビーム走査光学装置の上面図であり」【0014】
f.図10には、レーザダイオードLDのアノードと、フォトダイオードPDのカソードとをハウジング内部で接続し、これをハウジングに接続し、ハウジングを介して正の電源電圧に接続したレーザ発生装置1、1′をマルチビーム走査光学装置に配設する場合の回路構成が示されている。

3.引用例1に記載された発明の認定

上記記載事項a〜fを含む明細書及び図面の全記載によれば、引用例1には、以下のとおりの発明が記載されていると認められる。
「LBP(laser beam printer)やディジタルPPC(plain paper copier)の書き込み用光学系として使用される複数のレーザビームにより同時に複数のラインを走査するマルチビーム走査光学装置において、レーザ発生装置1、1’は、レーザダイオードLD1、LD2と光量をモニタするためのフォトダイオードPD1、PD2とを、個別の導電性を有するハウジング301、302に内蔵し、かつ、各レーザダイオードのアノードとフォトダイオードのカソードを内部で接続し、これを導電性を有するハウジングに接続し、このハウジングを介して正の電源電圧をレーザダイオードのアノードに受けるようにしたレーザ発生装置。」(以下、「引用発明1」という。)

4.対比
本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点の認定
本件発明1と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「LBP(laser beam printer)やディジタルPPC(plain paper copier)」、「レーザダイオードLD1、LD2」、「ハウジングに内蔵」、「アノード」、「正の電源電圧を受ける」が、
本件発明1の「画像形成装置」、「複数個のレーザダイオード」、「パッケージ内に実装」、「アノード端子」、「電源の正極に接続される」に相当する。
引用発明1において発明の対象は、「マルチビーム走査光学装置」となっているが、該「マルチビーム走査光学装置」は、もっぱら画像形成装置の書き込み用光学系として使用することが記載されている(前記摘示の記載a.)から、本件発明1の「マルチビーム方式の画像形成装置」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードはパッケージ内に実装され、かつ、各アノード端子は当該パッケージに接続されると共に、電源の正極に接続された画像形成装置」で一致し、次の点で相違する。
相違点1:各レーザダイオードは、本件発明1では共通のパッケージ内に実装されるのに対して、引用発明1では個別のパッケージ内に実装されている点。
相違点2:パッケージが、本件発明1では金属であるのに対して、引用発明1では導電性である点
相違点3:レーザダイオードのカソード端子が、本件発明1ではレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されているのに対して、引用発明1ではこの点について明示されていない点

5.相違点についての判断及び本件発明1の進歩性の判断
(1)相違点1について
相違点1について検討するために同じく取消理由に引用した特開平5-145193号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第2号証。以下「引用例2」という。)をみるに、その図3のマルチビームレーザ装置の内部配線例を示す回路図によれば、パッケージ28内に複数のレーザダイオードLD1、LD2、LD3が実装されており、段落【0020】には、「図3は、図2に示すマルチビームレーザ装置のパッケージ28内部における配線を示している。レーザダイオードLD1〜LD3のアノード端子とフォトダイオードPD1〜PD3のカソード端子とは共通接続されて、ピン21に接続されている。」と記載されている。これらの記載によれば、引用例2には、複数個のレーザダイオードが共通のパッケージ内に実装されたマルチビームレーザ装置が記載されているものと認める。そして引用発明1のパッケージ内に複数個のレーザダイオードを実装することに阻害要因もないから、相違点1に係る本件発明1の構成は、引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。
この点に関し、特許権者は、引用例1にはレーザ発生装置間に導電性基板が存在することにより、不具合が生じることが記載されているから、引用例1は本願発明の引用例として適格性を欠いている旨(特許異議意見書第17頁)主張するが、引用例1に不具合が生じると記載されているのは、複数のパッケージに分割して配置された場合であって、引用例2に記載のように複数個のレーザダイオードを同一のパッケージに格納し、パッケージ内でアノード端子を共通化した場合に不具合が生ずるとは記載も示唆もされていない。したがって、引用発明1は阻害要因を有するから、本願発明の引用例として適格性を欠いているという特許権者の主張は採用できない。
なお、複数個のレーザダイオードを共通のパッケージ内に実装することは、特開平9-203874号公報(取消理由に引用した刊行物10)にも、「この実施態様では1個のLDパッケージに3個のLDと1個のPDを収納し、一回の走査で3ビームが走査されるLDアレー2を例示している」(発明の詳細な説明の【0011】)と記載されている。

(2)相違点2について
引用発明1のパッケージは、「導電性を有する」ものであり、導電性を有するものとして金属は典型的なものであり、金属と限定したことによる格別な効果も認められないから、この点は単なる材料限定にすぎない。

(3)相違点3について
相違点3について検討するために同じく取消理由に引用した特開平8-069631号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第3号証。以下「引用例3」という。)をみるに、その図5の回路図によれば、レーザダイオード101のカソード端子と負電源との間に定電流回路502が接続されており、段落【0019】には「そこで図5のように、レーザ・ダイオード101を駆動するパルス電流の振幅を設定する定電流回路502に直列にインダクタ104 を挿入した場合を考える。」と、段落【0020】には「レーザ・ダイオード101に電流を流す場合には、電流切り換え手段501がレーザ・ダイオード101側に切り換わり、定電流回路502およびインダクタ104を流れる電流がレーザ駆動電流となる。」と記載されている。これらの記載によれば、引用例3には、レーザダイオード101のカソード端子がダイオード駆動回路(定電流回路、インダクタ、電流切り換え手段)を介して電源の負極(負電源)に接続された点が記載されている。そして引用例3記載の構成を引用発明1のレーザダイオードのカソード端子に適用し、相違点3に係る本件発明1の構成であるレーザダイオードのカソード端子をレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続することは当業者にとって想到容易である。
更に付言すれば引用例1の第10図においてレーザダイオードLDのカソード端子はボックスに接続されているが、記載がなくともボックスはレーザダイオードLDの駆動回路と認められ、レーザダイオードLDのアノード端子が電源の正極に接続されていることからみて該駆動回路は電源の負極に接続されていると考えるのが普通である。
また、レーザダイオードのカソード端子をレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続することは特開平9-76559号公報(取消理由に引用した刊行物1の「この発明は、レーザプリンタやデジタルコピー等に使用する光学走査装置に関し、特に、複数のビームを利用して光学走査の高速化・高解像度化を実現するマルチビーム型光学走査装置に関する。」(段落【0001】)、「図7に、この発明のレーザダイオード(LD)の駆動部分の一実施例における詳細な構成例を示す。ここで、LD1、LD2がレーザダイオードであり、PD1、PD2はレーザダイオードに流れる電流を制御するダイオードである。TR1、TR2は、印字信号A又はBによってLD1を流れる電流を制御するnpn型のトランジスタである。」(段落【0048】)、図7のレーザダイオード(LD)の駆動部分の構成図によれば、トランジスタTR1(レーザダイオード駆動回路)を介して接地(負極)されている点)にも記載されている。

(4)本件発明1の進歩性の判断
相違点1〜相違点3に係る本件発明1の構成は、いずれも設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら相違点1ないし3に係る構成を含む本件発明1の構成による作用効果も引用発明1並びに引用例2,3記載の発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度のものであって格別のものとも認められない。
したがって、本件発明1は引用発明1並びに引用例2,3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許である。

6.本件発明2の進歩性の判断
本件発明2は、本件発明1に「各レーザダイオードは、当該レーザダイオードの出射するレーザビームの発光を監視するフォトダイオードを前記金属パッケージ内に備え、フォトダイオードのカソード端子が金属パッケージに電気的に接続された」との限定を加えたものである。
引用発明1において、各レーザダイオードと光量をモニタするためのフォトダイオードとは、導電性を有するハウジングに内蔵され、かつ、各レーザダイオードのアノードとフォトダイオードのカソードとはハウジング内で接続され、ハウジングに接続されている。そして、引用発明1の「光量をモニタする」は、本願発明2の「レーザダイオードの出射するレーザビームの発光を監視する」と同意である。
したがって、本件発明2と引用発明1とは、「複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードはパッケージ内に実装され、かつ、各アノード端子は当該パッケージに接続されると共に、電源の正極に接続され、各レーザダイオードは、当該レーザダイオードの出射するレーザビームの発光を監視するフォトダイオードを前記パッケージ内に備え、フォトダイオードのカソード端子がパッケージに接続された画像形成装置」で一致し、次の点で相違する。
相違点1:各レーザダイオードは、本件発明2では共通のパッケージ内に実装されるのに対して、引用発明1では個別のパッケージ内に実装されている点。
相違点2:パッケージが、本件発明2では金属であるのに対して、引用発明1では導電性である点
相違点3:レーザダイオードのカソード端子が、本件発明2ではレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されているのに対して、引用発明2ではこの点について明示されていない点
各相違点については、5.相違点についての判断及び本件発明1の進歩性の判断で検討したとおりである。
なお、相違点1に関して、各レーザダイオード(レーザダイオードLD1〜LD3)が、共通のパッケージ28に実装されたものにおいて、共通のパッケージ内にレーザダイオードの出射するレーザビームの発光を監視するフォトダイオード(PD1〜PD3)を実装したものが引用例2の図3に記載されている。
したがって、本件発明2は引用発明1並びに引用例2,3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許である。

7.本件発明3の進歩性の判断
本件発明3は、本件発明1または2に「各レーザダイオードと、対応する各レーザダイオード駆動回路とが一枚のプリント配線板上に実装された」との限定を加えたものである。
同じく取消理由に引用した特開平3-002878号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第4号証。以下「引用例4」という。)には、「第1の回路基板3には、半導体レーザダイオードユニット1と...駆動電流スイッチング回路8と可変定電流電源9が実装されて該回路基板3上で電気的に接続される。」(第4頁右下欄1〜4行)
、「半導体レーザダイオードユニット1と駆動電流スイッチング回路8(及び可変定電流電源9)とを比較的に長い外付けのリード線15で接続すると、該リード線15のインピーダンスの影響で、第6図に示すように、駆動電流波形に歪み(オーバーシュートやアンダーシュート)が発生して記録画像の品質低下や半導体レーザダイオードの破壊を発生することが分かった。」(第3頁右上欄15行〜左下欄3行)と記載されており、引用例4の「回路基板3」は、本件発明3の「プリント配線板」に相当する。
よって、引用例4には、本件発明3の限定事項である「各レーザダイオードと、対応する各レーザダイオード駆動回路とが一枚のプリント配線板上に実装された」点が記載されている。そして、引用発明1のレーザダイオードと、対応する各レーザダイオード駆動回路を一枚のプリント配線板上に実装することに阻害要因もないから、引用発明1に引用例4記載の上記構成を適用し、限定事項に係る本件発明3の構成とすることは当業者にとって想到容易である。
なお、各レーザダイオードと、対応する各レーザダイオード駆動回路とを一枚のプリント配線板上に実装した点は、特開平8-316530号公報(取消理由に引用した刊行物3(図2の(b))にも記載されている。
したがって、本件発明3は引用発明1並びに引用例2〜4記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許である。

8.本件発明4の進歩性の判断
本件発明4は、本件発明3に「前記レーザダイオード駆動回路が、レーザダイオードに供給する駆動電流をオン・オフするスイッチング回路と、レーザダイオードに供給する駆動電流の値を調整する定電流回路とを一体化した回路からなり、対応するレーザダイオードに近接配置された」との限定を加えたものである。
同じく取消理由に引用した特開平6-120620号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第5号証。以下「引用例5」という。)の図3の半導体レーザドライバー105は、差動電流スイッチ114と、定電流源L1〜L3とを備えており、引用例5の「差動電流スイッチ114」は、本件発明4の「レーザダイオードに供給する駆動電流をオン・オフするスイッチング回路」に相当するから、引用例5には、本件発明4の限定事項であるレーザダイオード駆動回路が、レーザダイオードに供給する駆動電流をオン・オフするスイッチング回路と、レーザダイオードに供給する駆動電流の値を調整する定電流回路とを一体化した回路が記載されている。そして、このようなレーザダイオード駆動回路を駆動信号の歪みを抑えるために『対応するレーザダイオードに近接配置』することは、前記引用例4に記載されている。したがって、引用例5記載の事項を引用発明1に適用するにあたり、引用例4記載の事項に基づきレーザダイオード駆動回路を対応するレーザダイオードに近接配置して、本件発明4の限定事項に想到することは当業者にとって想到容易である。
また、レーザダイオード駆動回路が、レーザダイオードに供給する駆動電流をオン・オフするスイッチング回路と、レーザダイオードに供給する駆動電流の値を調整する定電流回路とを一体化した回路は、特開平6-30197号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第6号証。以下「引用例6」という。)にも記載されている。
したがって、本件発明4は引用発明1並びに引用例2〜6記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許である。

9.本件発明5の進歩性の判断
本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかに「前記レーザダイオードに並列にスナバ回路を設けた」との限定を加えたものである。
同じく取消理由に引用した特開平5-175579号公報(特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第7号証。以下「引用例7」という。)の図4の従来技術の半導体レーザ駆動回路は、レーザダイオード1に並列に、コンデンサ19と抵抗18とが直列に接続されたフィルタ回路20を設けている。このフィルタ回路20と本件特許発明のスナバ回路とを比較すると、いずれも抵抗とコンデンサとの直列回路で、レーザ電流の立ち上がり、立ち下り時に発生するオーバーシュートを防止するためのものであるから、これらの回路は実質的に同じものである。
したがって、本件発明5は引用発明1並びに引用例2〜7記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、請求項5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許である。

第4 むすび
以上のとおり、請求項1ないし5に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であるから、平成15年改正前特許法第113号2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードは、共通の金属パッケージ内に実装され、かつ各アノード端子は当該金属パッケージに接続されると共に、電源の正極に接続される一方、カソード端子がレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】各レーザダイオードは、当該レーザダイオードの出射するレーザビームの発光を監視するフォトダイオードを前記金属パッケージ内に備え、フォトダイオードのカソード端子が金属パッケージに電気的に接続されたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】各レーザダイオードと、対応する各レーザダイオード駆動回路とが一枚のプリント配線板上に実装されたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】前記レーザダイオード駆動回路が、レーザダイオードに供給する駆動電流をオン・オフするスイッチング回路と、レーザダイオードに供給する駆動電流の値を調整する定電流回路とを一体化した回路からなり、対応するレーザダイオードに近接配置されたことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】前記レーザダイオードに並列にスナバ回路を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は電子写真方式の画像形成装置に関し、とくに像形成速度の向上のため複数本のレーザビームを用いて画像を形成するマルチビーム式の複写機やプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】高い解像度で高品質の画像を高速度で印字したいという要求から、最近の電子写真方式の画像形成装置では、複数本のレーザビームで感光体としてのドラム面を並列走査するようにしたマルチビーム方式の実現が試みられている。このような画像形成装置においては、複数本のレーザビームを感光体面上でいかに正確に位置決めできるかということと、各レーザビームによる画像の濃淡誤差をいかに調和させるかということが実用化に当たってこの大きな技術課題となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記後者の技術課題に向けられたものであり、複数本のレーザビーム相互間の濃淡差の相違を容易にして高品質の画像形成を可能ならしめようとするものである。さらに具体的に述べると、マルチビーム方式の画像形成装置においては、レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動回路およびその電流経路などに存在する浮遊容量により、駆動電流が歪みを生じるため、画像濃度の調整が困難になるばかりでなく、各ドットについて画像濃度にムラが生じたり、形成した画像にモアレが見られるという問題点があり、単に各レーザダイオードの駆動電流を調整しただけでは画質の問題を解決することは困難であった。
【0004】この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、各レーザダイオードの駆動回路および電流経路などの浮遊容量の影響を低減させると共に電流波形を整形することにより、各ビームが形成する画像の濃度を容易に調整でき、モアレを生じることのないマルチビーム方式の画像形成装置を提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は複数個の発光素子からの複数本の光ビームの走査によって感光体上に画像形成を行うマルチビーム式画像形成装置において、前記各光ビームを画像信号に応じてオン・オフする際に、各発光素子から発光される光ビームの検出波形とオン・オフ制御のための駆動回路に流れるスイッチング電流波形とが等価形状となるように、各発光素子と駆動回路との間に浮遊する電流消費要素を排除したことを特徴とする画像形成装置を提供するものである。
【0006】つまり、この発明は、並列走査を行う各光ビームを画像信号に応じてオン・オフする際に、各発光素子としてのレーザダイオードに供給される電流波形がオン・オフ制御のための駆動回路に流れるスイッチング電流波形を直接反映したものとなるようにレーザダイオードと駆動回路との間に介在する余分な電流消費要素を除去する考え方を骨子とするものである。
【0007】より具体的には複数個のレーザダイオードから出射する複数のレーザビームによって画像形成を行うマルチビーム方式の画像形成装置において、各レーザダイオードは、共通の金属パッケージ内に実装され、アノード端子が金属パッケージに電気的に接続され、かつ、各レーザダイオードについてアノード端子が電源の正極に接続されると共に、カソード端子がレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されたことを特徴とする画像形成装置を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】レーザダイオードは一般に金属パッケージに実装されていて、カソード側またはアノード側のいずれか一方が当該パッケージに接続された構成を有するが、本発明においては特にアノード端子側を金属パッケージに電気的に接続したレーザダイオードを用いることができる。
【0009】ここで、各レーザダイオードについて、アノード端子が電源の正極に接続されると共に、カソード端子がレーザダイオード駆動回路を介して電源の負極に接続されるが、これによって、金属パッケージ(アノード端子)が電源に接続されることになり、金属パッケージとアース間に存在する浮遊容量は常に電源から充電されるため、この浮遊容量を充電させるための電流によってレーザダイオード駆動電流が影響をうけることがない。
【0010】つまり、レーザダイオードのカソード端子側にレーザダイオード駆動回路が接続され、ビデオ信号によってレーザダイオード駆動電流をスイッチングしてビームをオン・オフ制御するのであるが、この駆動回路を、構成するスイッチング素子にはその駆動電流を設定値に保持する定電流回路が接続されているので、他に余分な電流流入路がないかぎりレーザダイオードの駆動電流は制御された値のスイッチング電流を直接反映したものとなる。
【0011】また、レーザダイオードが、当該レーザダイオードの出射するレーザビームを監視するフォトダイオードを前記金属パッケージ内にさらに備えた構成を有する場合には、フォトダイオードのカソード端子を前記レーザダイオードのアノード側となる金属パッケージに電気的に接続して逆バイアス状態に置くことが好ましい。これによって、フォトダイオードとアース間に存在する浮遊容量が常に電源側で充電されるため、この充電電流が定電流回路でコントロールされたレーザダイオードの駆動電流に影響を与えることがなくなる。
【0012】さらに、各レーザダイオードと各レーザダイオード駆動回路とが一枚のプリント配線基板上に実装されることが好ましい。これによって、レーザダイオードとレーザダイオード駆動回路とを結ぶ導線が短縮され、導線とアース間に存在する浮遊容量が減少し、レーザダイオードの駆動電流波形が安定する。この場合には更にレーザダイオード駆動回路と一体的に電流調整手段付きの定電流回路を構成して各レーザダイオードに出来るだけ近接配置した構成を得るのが望ましい。
【0013】さらに、上記レーザダイオードに並列にスナバ回路をさらに設けることが好ましい。これによってレーザダイオードの駆動電流波形を整形することができる。
【0014】実施例以下、図面に示す実施例を用いてこの発明を詳述する。これによってこの発明が限定されるものではない。
1.プリンタの全体的な構成と動作まず、図1〜図3を用いてこの発明に係るマルチビーム式レーザプリンタの全体的な構成を説明する。図1はプリンタの側面から見た構成図、図2は図1の光学系を示す上面図、図3は図1の光学系の構成を示す斜視図である。
【0015】これらの図に示すように、レーザプリンタは、光学系ハウジング21内に、それぞれ入力信号に対応したビームL1,L2を出射する一対の光源装置1a,1b、光源装置1a,1bから出射される2つのビームL1,L2の断面形状を調整するシリンドリカルレンズ2a,2bを備える。なお、光源装置1a,1bは、図4に示すようにそれぞれビームL1,L2を発光するレーザダイオード30a,30bと、それらを平行光に変換するコリメータレンズ31a,31bを内蔵している。
【0016】さらに、レーザプリンタは、シリンドリカルレンズ2a,2bからのビームL1,L2を6つのミラー面によって反射するポリゴンミラー3,ポリゴンミラー3を矢印A方向に一定速度で回転させるモータ3a,ポリゴンミラー3で反射されたビームの歪曲収差を補正するf・θレンズ4、ビームL1,L2の面倒れを補正するシリンドリカルレンズ22(F・θ機能も有する),およびf・θレンズ4とシリンドリカルレンズ22を通過したビームを反射して感光体ドラム5上の位置P1,P2に結像させる平面鏡6を備える。
【0017】そして、ポリゴンミラー3は、矢印A方向の回転により感光体ドラム5を矢印C方向に走査するが、各走査においてその開始時にビームL1,L2はミラー61を介してフォトダイオードからなるビームセンサ53により受光されるようにそれぞれが配置されている。
【0018】さらに、このプリンタは、図1に示すように、矢印B方向に回転する感光体ドラム5の表面を予め一様に帯電させる帯電用コロナ放電器7,現像ローラ8によって現像剤を感光体ドラム5の表面に供給する現像ユニット9,記録紙10を収容するカセット11,カセット11の記録紙を給紙する給紙ローラ12,記録紙を搬送する一対の搬送ローラ13,所定のタイミングに合わせて記録紙を感光体ドラム5に向かって間欠的に送出するレジストローラ14,レジストローラ14から搬送される記録紙をコロナ放電によって帯電させ感光体ドラム5上の現像された画像を記録紙の表面に転写させる転写用コロナ放電器9,転写された記録紙を感光体ドラム5から分解させる一対の分離ローラ15,分離した記録紙上の画像を加熱定着する一対の定着ローラ17,定着の終了した記録紙を排出する排出ローラ18,排出される記録紙を受取るトレイ19,そして、転写の終了した感光体ドラム5の表面を清掃するクリーニングユニット20を備えている。
【0019】次に、上述のように構成されたプリンタの全体的な動作を説明する。図2、図3に示すように、光源装置1a,1bからビームL1,L2が出射されると、ビームL1,L2は、矢印A方向に回転するポリゴンミラー3によって反射され、f・θレンズ4とシリンドリカルレンズ22と平面鏡6とを介して最初にビームセンサ53に受光され、次に感光体ドラム5の表面上の点P1,P2にそれぞれ結像されポリゴンミラー3の回転に伴って感光体ドラム5上を矢印C方向に走査する。この一走査期間において、ビームL1,L2を受光したビームセンサ53から検出信号が図示しない制御部に入力されると、制御部は、それに同期してビームL1,L2をビデオ信号に対応して所定の印字期間だけ変調する。
【0020】一方、帯電用コロナ放電器7によって予め一様に帯電され矢印B方向に回転する感光体ドラム5の表面には、印字期間において、ビームL1,L2によって走査されて静電潜像が形成される。その静電潜像は、現像ローラ8によって現像剤が付着され顕像化される。
【0021】カセット11に収容された記録紙10は、給紙ローラ12によって搬出され、さらに搬送ローラ13によって搬送されて、その先端がレジストローラ14に到達すると一旦停止する。感光体ドラム5の顕像化の進行状態とタイミングを合わせてレジストローラ14が作動すると、記録紙10はレジストローラ14によって感光体ドラム5の顕像部に接するようにその下部まで搬送される。
【0022】そして、背面から転写用コロナ放電器9が放電して、感光体ドラム5の表面に顕像を形成している現像剤が記録紙側に移動(転写する)。転写された記録紙は、分離ローラ15によって感光体ドラムから引離され、定着ローラ17へ搬送される。
【0023】次に、定着ローラ17によって加熱定着された記録紙が排出ローラ18によってトレイ19へ排出されると、記録紙一枚分の印字工程が終了する。なお、転写の終了した感光体ドラム5の表面はクリーニングユニット20によって清掃され、次の印字工程に対して備えられる。
【0024】2.主要素の詳細な構成と動作次に、この発明が特徴とする光源装置の構成と動作について詳述する。図4は光源装置1a,1bの上面図、図5はその背面図である。これらの図に示すように、発光素子としてのレーザダイオード30a,30bおよびコリメータレンズ31a,31bは、共通の樹脂製ホルダー32に装填され接着剤で接着される。
【0025】そして、レーザダイオード30a,30bはそれぞれプリント配線基板33a,33bに実装され、レーザダイオード30a,30bを駆動するためのレーザダイオード駆動IC34a,34bもそれぞれプリント配線基板33a,33bに実装される。
【0026】図6はプリント配線基板33a上に実装されたレーザダイオード駆動回路の電気回路図である。図6に示すようにレーザダイオード30aはレーザダイオード素子LD1と、レーザダイオード素子LD1の発光をモニターするフォトダイオード素子PD1と、これらを内蔵する金属製のパッケージ(かんパッケージ)P1とから構成され、レーザダイオード素子LD1のアノード端子A1とフォトダイオード素子PD1のカソード端子とがパッケージP1に電気的に接続されている。
【0027】ここで、レーザダイオード素子LD1とLD2とは共通のパッケージに、2個1組みとして封入されても良い。また、各レーザダイオード素子は個別に構成されるのが普通であるが、共通の半導体基板上にそれぞれ素子分離した形で複数のレーザ素子を形成して平行なレーザビームを取り出すようにしたものを用いることもできる。
【0028】レーザダイオード駆動IC34aは、レーザダイオード素子LD1のカソード端子K1に端子T1を介して接続され、外部から入力端子T3を介して供給されるビデオ信号VDに応じてレーザダイオード素子LD1の駆動電流ILをスイッチングするスイッチング素子35aと、外部から入力端子T4を介して供給される制御信号CSに応じて駆動電流ILの大きさを制御する定電流回路36aとを内蔵する。
【0029】また、レーザダイオードLD1のアノード,カソード端子間には、可変抵抗R1とコンデンサC1との直列回路つまり、スナバ回路と、コンデンサC1の放電用の可変抵抗R2とが接続される。
【0030】なお、プリント配線基板33bのレーザダイオード駆動回路も図6に示す回路と同等である。この実施例では、レーザダイオード30a,30bとしてローム株式会社製RLD78NP-D型を、レーザダイオード駆動ICとしてテキサス・インスツルメント社製のSN65ALS542型をそれぞれ用いている。
【0031】このような構成において、アノード端子A1を正極,IC34aの端子T2を負極としてその間に直流電圧が印加され、図8の(a)に示すパルス波形のビデオ信号VDが端子T3に印加されると(1パルスが画像の1ドットに対応する)、レーザダイオード30aの発光強度は図8の(e)のように、ビデオ信号VDに対応してほぼ矩形パルス状に変化する。また、レーザダイオード30bについても同様に発光強度が図8の(e)のようにほぼ矩形パルス状に変化する。
【0032】次に、この実施例の図6に示す回路構成の特性および作用効果を、図7に示す比較例を用いて説明する。
【0033】図7において、レーザダイオード30a,30bは、レーザダイオード素子LD1と、モニター用フォトダイオードPD2と、これらを内蔵する金属製のパッケージP2とから構成され、レーザダイオード素子LD2およびフォトダイオードPD2のカソード端子K2がパッケージP2に電気的に接続されている。
【0034】そして、スイッチング素子35Cの端子T5は約200mmのリードケーブル37を介してカソード端子K2に接続され、スイッチング素子35Cは端子T6を介して定電流回路36Cに接続される。そして、アノード端子A2と定電流回路36Cの端子T7間に直流電圧が印加されるときスイッチング素子の入力端子T8にビデオ信号を供給してレーザダイオード駆動電流ILをスイッチングすると共に、定電流回路36Cの入力端子T9に制御信号CSを供給して駆動電流ILの大きさを制御しようとするものである。
【0035】このような比較例の構成において、アノード端子A2と、定電流回路36Cの端子T7との間に図6と同様に直流電圧を印加し、図8の(a)に示すパルス波形のビデオ信号VDをスイッチング素子35Cの入力端子T8に供給すると、レーザダイオード30aの発光強度は図8の(b)のように振動的に大きく変動し、その大きさを定電流回路36Cの入力端子T9に供給する制御信号CSによって制御することは不能であった。
【0036】これは、レーザダイオード30aの駆動電流ILが回路の浮遊容量により影響されることに原因があると考えられたので、リードケーブル37を除去すると共に、スイッチング素子35Cと定電流回路36Cとを一体化するため、スイッチング素子35Cと定電流回路36Cとの代わりに実施例と同じレーザダイオード駆動ICを用いてこれをレーザダイオード30aと共に一枚のプリント配線基板に実装した。これによってレーザダイオード30aの発光強度波形は図8の(c)のように整形された。
【0037】しかし、図8の(c)の波形は、立上がりが大きくオーバシュートを示すので、アノード端子A2とカソード端子K2間に、実施例と同様に可変抵抗R1とコンデンサC1との直列回路と、可変抵抗R2とを並列接続して、可変抵抗R1とR2を調整すると、発光強度波形は図8の(d)のようになりオーバシュートが除去された。
【0038】しかしながら、最初のドットに対応する発光強度波形の高さが、それに続く他の発光強度波形の高さに比べて高くなっているため、このようなレーザ光で画像を形成するとモアレを生じることが明らかである。
【0039】このように最初のドットに対応する発光強度波形だけが高くなるのは、図7に示すように、レーザダイオード30aおよびフォトダイオードPD2のカソード端子K2が金属製パッケージP2に電気的に接続されているため、パケージP2およびフォトダイオードPD2とアースとの間に比較的大きな浮遊容量が存在し、最初のドットに対応してレーザダイオード素子LD2に流れる電流にその浮遊容量を充電するための電流が重畳されレーザダイオード駆動電流が増大することによるものと考えられる。
【0040】そこで、レーザダイオード30aを実施例と同じものに変更した。つまり、レーザダイオード素子のアノードとフォトダイオード素子のカソードとがパッケージに接続され、パッケージに電源の正極が常時接続され浮遊容量が予め充電されるように回路を構成した。この時、発光強度波形は図8の(e)に示すように全ドットについてほぼ矩形状で大きさの揃った発光強度波形が得られ、その波形高さが制御信号CSにより制御された。それによって、結局、比較例を実施例と同じ回路構成にする必要があるることが確認された。
【0041】このようにしてこの実施例の光源装置によれば、ビデオ信号に対応して安定した発光強度波形が得られるので、画像を形成する各ドットの濃度が均一化され、モアレのような現像を生じることなく高品質な画像を得ることができる。
【0042】
【発明の効果】この発明によれば、レーザダイオードの発光強度波形がほぼ矩形状で画像の各ドットに対して均一になるので、ドット毎の画像濃度のばらつきがなくモアレのない品質の高い画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例のレーザプリンタの構成説明図である。
【図2】図1の光学系を示す上面図である。
【図3】図1の光学系の構成を示す斜視図である。
【図4】実施例の光源装置の上面図である。
【図5】実施例の光源装置の背面図である。
【図6】実施例の光源装置の電気回路図である。
【図7】比較例の図6対応図である。
【図8】実施例と比較例のビデオ信号に対するレーザダイオードの光強度波形である。
【符号の説明】
1a 光源装置
1b 光源装置
2a シリンドリカルレンズ
2b シリンドリカルレンズ
3 ポリゴンミラー
3a モータ
4 f・θレンズ
5 感光体ドラム
6 平面鏡
7 帯電用コロナ放電器
8 現像ローラ
9 現像ユニット
10 記録紙
11 カセット
12 給紙ローラ
13 搬送ローラ
14 レジストローラ
15 分離ローラ
17 定着ローラ
18 排出ローラ
19 トレイ
20 クリーニングユニット
21 光学系ハウジング
22 シリンドリカルレンズ
53 ビームセンサ
61 ミラー
62 ミラー
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-10 
出願番号 特願平9-217682
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 藤井 靖子
井出 和水
登録日 2002-11-01 
登録番号 特許第3365724号(P3365724)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 中島 淳  
代理人 木村 秀二  
代理人 西元 勝一  
代理人 大塚 康弘  
代理人 加藤 和詳  
代理人 松岡 修平  
代理人 西元 勝一  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  

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