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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60K
管理番号 1119397
異議申立番号 異議2003-73274  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-18 
確定日 2005-03-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3443204号「四輪駆動型作業車」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3343204号の請求項1〜6に係る発明の特許を取り消す。 同請求項7及び請求項8に係る発明の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3443204号の請求項1〜8に係る発明についての出願は、平成7年6月9日に特許出願され、平成15年6月20日にその発明について特許権の設定の登録がされ、その後、請求項1〜6に係る発明の特許について、平成15年12月18日に特許異議申立人・三菱農機株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成16年5月13日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月12日に訂正請求書(後日取下げ)及び特許異議意見書が提出され、平成16年8月11日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年10月5日に訂正請求書及び特許異議意見書の提出がされ、その後、平成16年10月29日付けで再度取消しの理由が通知され、期間を指定して特許異議意見書を提出する機会を与えたが、特許権者・株式会社クボタからは何らの応答もない。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成16年10月5日付けの訂正請求書は、本件特許第3443204号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。
(なお、アンダーラインと符号は、内容理解の便宜のため、当審において付したものである。)

(1)訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】の欄の請求項1の第21行(本件特許公報第3欄第2行)の記載「とを備え、」の後に、特許請求の範囲の減縮を目的として、
『前記第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、』を加入する。
これにより、訂正前の請求項1を、
「A.前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、
B.右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキ(27)と、
C.前輪(1)を左右に操向操作する操向操作機構(22)とを備え、
D.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構(22)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(18),(25)により機械的に連係して、
E.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記操向操作機構(22)と右及び左のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(40),(41)により機械的に連係し、
F.前記第2連係機構(29),(40),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、右及び左のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(40),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
G.前記第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段(21)と、
H.前記第2連係機構(29),(40),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段(32)とを備え、
I.前記第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
J.走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、前記第1及び第2切換手段(21),(32)の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備えてある
K.四輪駆動型作業車。」と訂正する。

(2)訂正事項b
特許明細書の【特許請求の範囲】の欄の請求項2の第21行〜22行(本件特許公報第3欄第37行)の「とを備え、」の後に、
『前記第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、』を加入する。
これにより、訂正前の請求項2を、
「A.前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、
B.右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキ(27)と、
C.前輪(1)を左右に操向操作する操向操作機構(22)とを備え、
D.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構(22)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(18),(25)により機械的に連係して、
E.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記操向操作機構(22)と右及び左のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(40),(41)により機械的に連係し、
F.前記第2連係機構(29),(40),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、右及び左のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(40),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
G.前記第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段(21)と、
H.前記第2連係機構(29),(40),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段(32)とを備え、
I.前記第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
L.前記第1又は第2切換手段(21),(32)が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備えてある
K.四輪駆動型作業車。」と訂正する。

(3)訂正事項c
特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落番号【0006】の欄の第19行(本件特許公報第6欄第30行)の記載「第1連係機構」を「前記第1連係機構」、及び同明細書段落番号【0006】の欄の第20行(本件特許公報第6欄第32行)の記載「第2連係機構」を「前記第2連係機構」、と変更すると共に、同明細書の段落番号【0006】の欄の第20行〜21行(本件特許公報第6欄第33行)の記載「とを備え、」の後に、
『前記第1切換手段の操作方向を、前記第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪が駆動されずに後輪のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、』を加入する。
これにより訂正前の段落番号【0006】の欄を、
「【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は以上のような四輪駆動型作業車において、次のように構成することにある。
[1]
前輪と後輪とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪が後輪よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置と、右及び左の後輪を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキと、前輪を左右に操向操作する操向操作機構とを備え、
操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されるように、操向操作機構と前輪変速装置とを第1連係機構により機械的に連係して、操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように、操向操作機構と右及び左のサイドブレーキとを第2連係機構により機械的に連係し、
第2連係機構の途中部分に備えられたブレーキ操作機構と、右及び左のサイドブレーキペダルとを、第2連係機構とは別に機械的に連係して、右又は左のサイドブレーキペダルが踏み操作されると、右又は左のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成すると共に、
前記第1連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段と、前記第2連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段とを備え、
前記第1切換手段の操作方向を、前記第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪が駆動されずに後輪のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、第1及び第2切換手段の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構を備えてある。」と訂正する。

特許明細書の段落番号【0007】の欄の第16行(本件特許公報第7欄第5行)の記載「第1連係機構」を「前記第1連係機構」、及び同明細書段落番号【0007】の欄の第17行(本件特許公報第7欄第6行)の記載「第2連係機構」を「前記第2連係機構」、と変更すると共に、特許明細書の段落番号【0007】の欄の第17行〜18行(本件特許公報第7欄第8行)の記載「とを備え、」の後に、
『前記第1切換手段の操作方向を、前記第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪が駆動されずに後輪のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、』を加入する。
これにより訂正前の段落番号【0007】の欄を、
「[2]
前輪と後輪とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪が後輪よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置と、右及び左の後輪を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキと、前輪を左右に操向操作する操向操作機構とを備え、
操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されるように、操向操作機構と前輪変速装置とを第1連係機構により機械的に連係して、操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように、操向操作機構と右及び左のサイドブレーキとを第2連係機構により機械的に連係し、
第2連係機構の途中部分に備えられたブレーキ操作機構と、右及び左のサイドブレーキペダルとを、第2連係機構とは別に機械的に連係して、右又は左のサイドブレーキペダルが踏み操作されると、右又は左のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成すると共に、
前記第1連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段と、前記第2連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段とを備え、
前記第1切換手段の操作方向を、前記第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪が駆動されずに後輪のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
第1又は第2切換手段が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構を備えてある。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張、変更の存否
上記訂正事項a及び訂正事項bの特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、また、訂正事項cの特許明細書の段落番号【0006】及び【0007】の欄に係る訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当し、いずれの訂正も新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、特許異議の申立てがされていない請求項7及び請求項8に係る特許については、取消しの理由を発見しないので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件特許発明
上述のとおり訂正が認められたので、本件特許第3443204号の請求項1〜8に係る発明のうち、請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」、「本件特許発明5」及び「本件特許発明6」という。また、それらを総称して、「本件特許発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
(なお、アンダーラインと符号は、内容理解の便宜のため、当審において付したものである。)

【請求項1】
A.前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、
B.右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキ(27)と、
C.前輪(1)を左右に操向操作する操向操作機構(22)とを備え、
D.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構(22)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(18),(25)により機械的に連係して、
E.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記操向操作機構(22)と右及び左のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(40),(41)により機械的に連係し、
F.前記第2連係機構(29),(40),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、右及び左のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(40),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
G.前記第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段(21)と、
H.前記第2連係機構(29),(40),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段(32)とを備え、
I.前記第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
J.走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、前記第1及び第2切換手段(21),(32)の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備えてある
K.四輪駆動型作業車。

【請求項2】
A.前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、
B.右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキ(27)と、
C.前輪(1)を左右に操向操作する操向操作機構(22)とを備え、
D.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構(22)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(18),(25)により機械的に連係して、
E.前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記操向操作機構(22)と右及び左のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(40),(41)により機械的に連係し、
F.前記第2連係機構(29),(40),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、右及び左のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(40),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
G.前記第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段(21)と、
H.前記第2連係機構(29),(40),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段(32)とを備え、
I.前記第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
L.前記第1又は第2切換手段(21),(32)が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備えてある
K.四輪駆動型作業車。

【請求項3】
M.前記第1切換手段(21)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(21)に構成して、前記第2切換手段(32)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(32)に構成し、前記走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(37),(45),(61),(62)を備えて、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)が高速側に操作されていると、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項1記載の四輪駆動型作業車。

【請求項4】
N.前記第1切換手段(21)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(21)に構成して、前記第2切換手段(32)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(32)に構成し、前記走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(37),(45),(61),(62)を備えて、
前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されていると、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項2記載の四輪駆動型作業車。

【請求項5】
O.前記走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)として前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(37),(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(45),(62)を備えると共に、
前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)が両方共に高速側に操作されると、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項3記載の四輪駆動型作業車。

【請求項6】
P.前記走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)として前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(37),(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(45),(62)を備えると共に、
前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されると、前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項4記載の四輪駆動型作業車。

IV.特許異議の申立て理由の概要
申立人は、証拠として、下記の各甲号証を刊行物を提出し、本件特許発明1〜6は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)甲第1号証:特開平6-144046号公報
(2)甲第2号証:実願平2-116443号(実開平4-72028号)のマイクロフィルム
(3)甲第3号証:特開平5-262151号公報

V.平成16年10月29日付け取消理由通知で引用された本件特許発明の出願の日前に頒布された刊行物に記載された発明及び記載事項

(1)刊行物1:特開平6-144046号公報(申立人が甲第1号証として提示)
(2)刊行物2:実願平2-116443号(実開平4-72028号)のマイクロフィルム(同甲第2号証)
(3)刊行物3:特開平5-262151号公報(同甲第3号証)
(4)刊行物4:実願昭62-107116号(実開昭64-11838号)のマイクロフィルム
(5)刊行物5:実願昭62-173997号(実開平1-77527号)のマイクロフィルム
(6)刊行物6:特開平5-85219号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「四輪駆動型作業車」に関し、下記の技術的事項が図面とともに記載されている。

(a)「前輪(1)及び後輪(2)が略等しい速度で駆動される標準状態と、前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態とに切換操作自在な前輪変速装置(7)を、操向操作自在な前輪(1)への伝動系に備え、前輪(1)用のステアリング機構(21)に備えられたカム機構(23)と前記前輪変速装置(7)とを第1連係機構(25)により機械的に連動連結し、前記ステアリング機構(21)により前輪(1)を直進位置から右又は左に設定角度以上に操向操作すると、前記カム機構(23)により前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように構成した四輪駆動型作業車において、
前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるのに連動して旋回中心側の後輪(2)に備えたサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように前記カム機構(23)と左右のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(41)により各々連動連結すると共に、前記第2連係機構(29),(41)を連係作動させる自動ブレーキモードと、連係解除させる自動ブレーキ解除モードとに人為的に切換操作自在なモード切換機構(50)を備え、かつ、走行用の変速機構が設定以上の高速状態に操作されると、自動ブレーキモードにある前記モード切換機構(50)を自動ブレーキ解除モードに自動的に切り換えるとともに、走行変速機構が設定以上の高速状態に操作されている状態では、前記切換機構(50)が自動ブレーキモードになるのを牽制阻止する牽制機構(60)を備えてある四輪駆動型作業車。」(特許請求の範囲【請求項1】参照)

(b)「図1に示すように、左右の後輪2を各々独立に制動可能なサイドブレーキ27を左右一対備えている。次に、この左右のサイドブレーキ27の操作構造について説明する。左右一対のサイドブレーキ27に対して一対のブレーキ操作機構33が備えられている。このブレーキ操作機構33には図5及び図6に示すように、軸芯P2周りにL字状のブレーキアーム28が揺動自在に支持されており、ブレーキアーム28の図中下端とサイドブレーキ27とが、ロッドからなる第2連係機構29により各々連動連結されている。図1及び図6に示すように機体の操縦部の右側に左右一対のサイドブレーキペダル30が備えられており、図1,5,6に示すようにサイドブレーキペダル30とブレーキアーム28の一端が、連係ロッド31及び連結ピン32により連動連結されている。以上の構造により例えば左側のサイドブレーキペダル30を踏み操作すると、図7に示すように連係ロッド31が図中上方に引き操作され、ブレーキアーム28が図中反時計方向に揺動して、第2連係機構29により左側のサイドブレーキ27が制動側に操作される。」(第3頁第4欄50行〜第4頁第5欄19行、段落【0014】参照)

(c)「又、図14に示すように、変速レバー61を高速域(HI)〔図では8速〕に操作するとともに、クリープ変速レバー62を高速(H)に操作すると、支点ピン70が上昇した状態で天秤アーム69が時計方向に回動されることとなって、ワイヤ連結ピン80が牽制ワイヤ一端76aの長孔融通77の範囲を越えて大きく上昇し、これによって牽制ワイヤ76の一端76aが上方に引張される。
この際、前記モード切換機構50が自動ブレーキモードに切換えられていると、つまり操作レバー52がON位置に操作保持されていると、牽制ワイヤ76の引張操作によってT字レバー51がデテント機構56の保持力に打ち勝って図中時計方向に回動され、操作レバー52がOFF位置に強制的に切換えられ、モード切換機構50は自動ブレーキ解除モードとなる。
逆に、変速レバー61が高速域(HI)に、又、クリープ変速レバー62が高速(H)に夫々操作されている状態で、前記操作レバー52をON位置に操作しようとしても、上記のように牽制機構60によって牽制ワイヤ76が強制的に引張されているために、操作レバー52をON位置に操作することが不能となる。
つまり、変速レバー61とクリープ変速レバー62が共に高速に操作されている高速走行状態で自動ブレーキモードを現出することを相互に牽制阻止するように構成されているのである。」(第6頁第9欄19行〜第10欄1行、段落【0030】〜【0033】参照)

したがって、刊行物1には、上記摘記事項(a)〜(c)、及び図1〜図17の記載からみて、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

【引用発明】
A.前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、
B.右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右のサイドブレーキ(27)と、
C.前輪(1)を左右に操向操作するステアリング機構(21)とを備え、
D.前記ステアリング機構(21)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記ステアリング機構(21)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(25)により機械的に連係して、
E.前記ステアリング機構(21)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記ステアリング機構(21)と左右のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(41)により機械的に連係し、
F.前記第2連係機構(29),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、左右のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
H.前記第2連係機構(29),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な操作レバー(52)とを備え、
J’.走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、前記操作レバー(52)の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構(60)を備えてある
K.四輪駆動型作業車。

(刊行物2)
刊行物2には、「農用作業車」に関し、下記の技術的事項が図面とともに記載されている。

(d)「左右一対の前輪(2a)と左右一対の後輪(2b)の平均周速度が同一、又は、略同一となるように伝動する同速伝動状態と、左右一対の前輪(2a)の平均周速度が左右一対の後輪(2b)の平均周速度よりも大となるように伝動する増速伝動状態とに切換え可能な前輪用変速装置(4)を設け、その前輪用変速装置(4)を、ステアリングハンドルの一定以上の旋回操作に伴って増速伝動状態に切換えるべく、ステアリング機構(7)の一定以上の旋回角を検出するステアリング角検出用カム機構(K)の揺動アーム(10)と、前輪用変速装置(4)のシフト軸(4a)とを連係具(11)を介して連係してある農用作業車において、前記揺動アーム(10)に連係の連係具(11)と、前記前輪用変速装置(4)のシフト軸(4a)とを、一端側を支点にして揺動する中継アーム(12)の中間部に前記連係具(11)を、他端側に前輪用変速装置(14)のシフト軸(4a)を連結し、さらに、前記連係具(11)と前記中継アーム(12)との連結部に長孔融通部(17)を設けるとともに、前記中継アーム(12)の揺動支点(P)を位置変更可能に構成して、前記中継アーム(12)の揺動支点(P)の位置変更により、前記長孔融通部(17)を介して前輪増速がもたらされない状態と前輪増速がもたらされる状態とに切換え可能に構成してある農用作業車。」(実用新案登録請求の範囲)

(e)「本考案は、トラクタや乗用芝刈機等の農用作業車に関し、詳しくは、左右一対の前輪と左右一対の後輪の平均周速度が同一、又は、略同一となるように伝動する同速伝動状態と、左右一対の前輪の平均周速度が左右一対の後輪の平均周速度よりも大となるように伝動する増速伝動状態とに切換え可能な前輪用変速装置を設け、その前輪用変速装置をステアリングハンドルの一定以上の旋回操作に伴って増速伝動状態に切換えるべく、ステアリング機構の一定以上の旋回角を検出するステアリング角検出用カム機構の揺動アームと、前輪用変速装置のシフト軸とを連係具を介して連係してある農用作業車に関する。」(明細書第2頁13行〜第3頁6行)

(f)「切換レバー(18)には、走行ミッションケース(M)内のトランスミッションを高・低に変速する副変速レバー(24)に接当可能な接当ピン(25)が設けられ、副変速レバー(24)を高速(H)側に操作すると増速伝動操作位置にある切換レバー(18)を標準伝動操作位置に切換えるべく構成してあり、路上高速走行時、前輪増速が働かないようになっている。」(明細書第10頁20行〜第11頁第7行)

(g)また、第1図及び第2図並びに明細書全般の記載を参酌すれば、切換レバー(18)は、左右一対の前輪と左右一対の後輪の平均周速度が同一、又は、略同一となるように伝動する同速伝動状態と、左右一対の前輪の平均周速度が左右一対の後輪の平均周速度よりも大となるように伝動する増速状態とに切換え可能な前輪用変速装置であること、切換レバー(18)と前輪用変速装置が機械的に連結していること、切換レバー(18)と副変速レバー(24)は人為的に操作するものであることが看取できる。

(刊行物3)
刊行物3には、「四輪駆動型作業車」に関し、下記の技術的事項が図面とともに記載されている。

(h)「前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(6)と、左右一対の後輪(2)のうちの選択された一方を制動可能な左右一対のサイドブレーキ(11R),(11L)と、直進位置からの前記前輪(1)の左右の操向角度を検出する操向角度検出手段(18)と、前記前輪(1)が直進位置から左右一方に設定角度以上に操向操作されると、この操向操作に連動して前記前輪変速装置(6)を標準状態から増速状態に切換操作する第1操作手段(16)と、前記前輪(1)が直進位置から左右一方に設定角度以上に操向操作されると、この操向操作に連動して前記サイドブレーキ(11R),(11L)のうちの旋回中心側を制動側に操作する第2操作手段(16)とを備えると共に、走行用の変速装置が高速域(H)に操作されると、この操作に連動して前記第1及び第2操作手段(16)の作動を停止させる第1牽制手段(19),(24)と、前記変速装置が中速域(M)に操作されると、この操作に連動して前記第1操作手段(16)の作動を許し、前記第2操作手段(16)の作動を停止させる第2牽制手段(19),(24)と、前記変速装置が低速域(L)に操作されると、この操作に連動して前記第1及び第2操作手段(16)の作動を許す第3牽制手段(19),(24)とを備えている四輪駆動型作業車。」(特許請求の範囲【請求項1】参照)

(i)「【発明が解決しようとする課題】
前述のような構成を備えている場合、高速走行状態での旋回時において前輪変速装置が増速状態に切換操作され旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されると、高速走行状態で非常に小さな小回り旋回が行われる状態となるので、このような非常に小さな小回り旋回は低速走行状態で行う必要がある。そこで、前記公報(当審注:特開平3-243429号公報)の構成においては、旋回時に前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されないように、且つ旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されないようにする手動操作式の切換弁(前記公報の図1の25)を装備している。この場合、高速走行状態においては事前に切換弁を操作して前輪変速装置が増速状態に切換操作されず、サイドブレーキも制動側に操作されない状態に切換操作しておく必要があるが、高速走行状態時に作業者が切換弁の操作を忘れて、そのままの状態で旋回してしまうと、急激に小回り旋回を開始するような状態となってしまうので、操作性及び安全性の面で改良の余地がある。」(第2頁第1欄50行〜第2欄16行、段落【0003】参照)

(j)「【作用】前述のように構成すると、作業者が走行用の変速装置を高速域(高速走行状態に対応)に変速操作すれば、旋回時に前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されることはなく、旋回中心側のサイドブレーキも制動側に操作されることはない。これにより、高速走行状態で安全に旋回が行える。逆に、作業者が走行用の変速装置を低速域(低速走行状態に対応)に変速操作すれば、旋回時に前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作され、旋回中心側のサイドブレーキも制動側に操作される。これにより、前輪変速装置による増速された前輪の旋回方向への引っ張り作用と、旋回中心側の後輪に対する制動作用によって、旋回中心側の後輪を中心とした非常に小さな小回り旋回が、低速走行状態で安全に行える。以上のように、作業者が行う変速操作に連動して自動的に、前輪変速装置とサイドブレーキの両方ともに操作されない状態(高速走行状態時)と、両方ともに操作される状態(低速走行状態時)との切換操作が行われるので、高速走行状態時に前輪変速装置とサイドブレーキの両方ともに操作されない状態への切換操作が忘れられることはない。」(第3頁第3欄13行〜32行、段落【0006】参照)

(刊行物4)
刊行物4には、「作業車のレバーガイド構造」に関し、下記の技術的事項が図面とともに記載されている。

(k)「走行用の変速装置を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切換える切換レバー(34)を備えると共に、前記切換レバー(34)を案内するレバーガイド(27)の四輪駆動側位置に入り込んで、切換レバー(34)の四輪駆動側への操作を接当阻止する牽制部材(28)をレバーガイド(27)面に沿って揺動自在に備え、且つ、前記牽制部材(28)の揺動端部を揺動方向に沿って案内する折り返し部(27b)を前記レバーガイド(27)に設けてある作業車のレバーガイド装置。」(実用新案登録請求の範囲、参照)

(l)「機体後部のミッションケース(5)下部には前輪(1a),(1b)に対する動力伝達状態を3状態に、つまり前輪(1a),(1b)への動力伝達が断たれた後二輪駆動状態、前輪(1a),(1b)と後輪(2a),(2b)の駆動速度が常時等しい標準四輪駆動状態、旋回時に前輪(1a),(1b)が後輪(2a),(2b)よりも増速される増速四輪駆動状態の3状態に切換える前輪変速装置(6)を備えている。」(明細書第5頁6行〜13行、参照)

(m)「次に、前記切換レバー(34)に対するレバーガイド(27)の構造について詳述すると、第1図及び第2図に示すようにレバーガイド(27)には正面視逆L字状の開口(27a)が設けられると共に、レバーガイド(27)の軸芯(P1)周りに牽制部材(28)が揺動自在に取付けられている。」(明細書第8頁20行〜第9頁5行、参照)

(n)「第1図に示す状態は切換レバー(34)を後二輪駆動位置(2WD)に操作している状態であり、切換部材(24)が第3図に示すように操作軸(23)のスプライン部(23a)より離間操作され、…(中略)…接当阻止しているのである。
次に、第4図に示すように牽制部材(28)の操作部(28a)を手で持って牽制部材(28)を時計回りに操作し、切換レバー(34)を下方の標準四輪駆動位置(4WD-I)に操作すると、第5図に示すように切換部材(24)及び円筒軸(22)がスプリング(31)の付勢力によって回動し、これによりシフト部材(16)が第1従動ギヤ(9)に咬合うように操作される。」(明細書第9頁18行〜第11頁1行、参照)

(o)「次に、第4図に示す状態から切換レバー(34)を増速四輪駆動位置(4WD-II)に操作すると、…(中略)…咬合する状態となる。この状態で操作ハンドル(32)と前輪変速装置(6)とが連係した状態となるのであり、通常の直進状態においては切換部材(24)はスプリング(31)の付勢力で第5図に示す状態に位置して、前輪(1a),(1b)と後輪(2a),(2b)とが略等しい速度で駆動される。そして、操作ハンドル(32)を設定角度以上に操向操作すると操作軸(23)と共に円筒軸(22)、切換部材(24)等が回動操作されて、シフト部材(16)が摩擦クラッチ(12)を押圧入り操作して前輪(1a),(1b)が後輪(2a),(2b)よりも増速された状態となるのである。」(明細書第11頁7行〜第12頁4行、参照)

(p)また、第1図〜第5図の記載を参酌すれば、切換レバー(34)をレバーガイド(27)面に沿って標準四輪駆動位置(4WD-I)と増速四輪駆動位置(4WD-II)に切換操作が行われる操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なるレバーガイド(27)面に沿う操作方向で後二輪駆動位置(2WD)を現出可能としていること、が看取できる。

(刊行物5)
刊行物5には、「作業車の前輪変速操作構造」に関し、下記の技術的事項が図面とともに記載されている。

(q)「本考案は操向操作自在な前輪への伝動系に、後輪駆動速度に略等しい駆動速度で伝動する標準駆動状態と、後輪駆動速度より大きい駆動速度で伝動する増速駆動状態に切換える前輪変速装置を備えると共に、操縦ハンドルと前記前輪変速装置を連係させて、直進状態から設定角度以上の操向操作により前輪変速装置が増速駆動側に操作されるように連係してある作業車の前輪変速操作構造に関する。」(明細書第2頁5行〜13行、参照)

(r)「次に、前輪変速装置(10)と操縦ハンドル(12)とを連係状態と連係解除状態とに切換える切換レバー(14)の連係構造について詳述すると第1図及び第2図に示すように、ミッションケーン(6)側面の左右軸芯(P4)周りにボス部材(24)が回動自在に軸支されると共に、ボス部材(24)先端の縦方向に円筒部材(25)が固定されている。前記ボス部材(24)の下面に固定されたブラケット(24a)の前後軸芯(P5)周りには正面視逆L字状の操作部材(26)が揺動自在に軸支されており、操作部材(26)の一端が前輪変速装置(10)内に挿入されている。
さらに、前記円筒部材(25)に切換レバー(14)が上下方向に摺動自在に挿通され、切換レバー(14)の下端が前記操作部材(26)の他端に連結されている。この切換レバー(14)を第2図に示すレバーガイド(27)に沿って操作することにより、操作部材(26)がボス部材(24)の左右軸芯(P4)周りに揺動操作されて、後輪(2)のみの2輪駆動状態(2WD)と、操縦ハンドル(12)及び前輪変速装置(10)とが連係しない通常の4輪駆動状態(4WD-I)に切換操作することができるのである。
そして、切換レバー(14)をボジション(4WD-I)において上方に引き上げ、操作部材(26)をブラケット(24a)の前後軸芯(P5)周りに揺動操作することにより、操縦ハンドル(12)と前輪変速装置(10)とが連係した4輪駆動状態(4WD-II)、つまり旋回時に前輪増速状態が現出される状態に切換操作することができるのである。」(明細書第9頁5行〜第10頁16行、参照)

(s)また、第1図及び第2図の記載を参酌すれば、切換レバー(14)は、後輪(2)のみの2輪駆動状態(2WD)と、操縦ハンドル(12)及び前輪変速装置(10)とが連係しない通常の4輪駆動状態(4WD-I)に切換操作するときと、通常の4輪駆動状態(4WD-I)と操縦ハンドル(12)と前輪変速装置(10)とが連係した4輪駆動状態(4WD-II)に切換操作するときとでは、異なる方向に操作することが看取できる。

VI.対比・判断
1.本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能に照らして、係る引用発明に記載された「前輪変速装置(7)」は本件特許発明1の「前輪変速装置(7)」に相当し、以下同様に、「左右のサイドブレーキ(27)」は「左右一対のサイドブレーキ(27)」に、「ステアリング機構(21)」は「操向操作機構(22)」に、「第1連係機構(25)、」は「第1連係機構(18),(25)」に、「第2連係機構(29),(41)」は「第2連係機構(29),(40),(41)」に、「左右のサイドブレーキペダル(30)」は「右及び左のサイドブレーキペダル(30)」に、「操作レバー(52)」は「第2切換レバー(32)」に、「変速レバー(61)」は「第1変速レバー(37),(61)」に、「クリープ変速レバー(62)」は「第2変速レバー(45),(62)」に、それぞれ相当するということができ、両者は下記の一致点、及び相違点を有する。

<一致点>
A.前輪と後輪とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪が後輪よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置と、
B.右及び左の後輪を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキと、
C.前輪を左右に操向操作する操向操作機構とを備え、
D.前記操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構と前輪変速装置とを第1連係機構により機械的に連係して、
E.前記操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように、前記操向操作機構と右及び左のサイドブレーキとを第2連係機構により機械的に連係し、
F.前記第2連係機構の途中部分に備えられたブレーキ操作機構と、右及び左のサイドブレーキペダルとを、前記第2連係機構とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダルが踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成すると共に、
H.前記第2連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段とを備え、
J’.走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、前記第2切換手段の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構を備えてある、
K.四輪駆動型作業車。

<相違点>
(1)相違点1
本件特許発明1が構成要件Gに係る「第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在」な「第1切換手段(21)」を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

(2)相違点2
本件特許発明1が構成要件Jに係る「走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、第1及び第2切換手段(21),(32)の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構(36)」を備えているのに対し、引用発明は、構成要件J'に係る走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、操作レバー(52)の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構(60)を備えている点。

(3)相違点3
本件特許発明1が構成要件Iに係る「第1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成」しているのに対して、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

そこで、上記相違点1〜3について検討する。

(4)相違点1及び2について
刊行物2には、上記摘記事項(d)〜(g)の記載からみて、左右一対の前輪と左右一対の後輪の平均周速度が同一、又は、略同一となるように伝動する同速伝動状態と、左右一対の前輪の平均周速度が左右一対の後輪の平均周速度よりも大となるように伝動する増速状態とに切換え可能な前輪用変速装置に連係した切換レバー(18)が記載されており、走行ミッションケース(M)内のトランスミッションを高・低に変速する副変速レバー(24)に接当可能な接当ピン(25)が設けられ、副変速レバー(24)を高速(H)側に操作すると増速伝動操作位置にある切換レバー(18)を標準伝動操作位置に切換えるべく構成してあり、路上高速走行時、前輪増速が働かないようになっていることが記載されている。
そして、それぞれの有する機能からみて、該「切換レバー(18)」が本件特許発明1の「第1切換手段」に相当し、以下同様に、「接当ピン(25)」が「牽制機構」に相当するものと認められるから、第1連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段を備えると共に、走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、第1切換手段の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構を備えることは、上記刊行物2に記載された公知の技術的事項にすぎない。
さらに、刊行物3には、上記摘記事項(h)〜(j)に記載のとおり、作業者が走行用の変速装置を高速域(高速走行状態に対応)に変速操作すれば、旋回時に前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されることはなく、旋回中心側のサイドブレーキも制動側に操作されることはないこと、したがって、高速走行状態で安全に旋回が行えること、逆に、作業者が走行用の変速装置を低速域(低速走行状態に対応)に変速操作すれば、旋回時に前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作され、旋回中心側のサイドブレーキも制動側に操作されることが開示されている。
これにより、刊行物3には、前輪変速装置による増速された前輪の旋回方向への引っ張り作用と、旋回中心側の後輪に対する制動作用によって、旋回中心側の後輪を中心とした非常に小さな小回り旋回が、低速走行状態で安全に行えることが記載又は示唆されているといえる。
それ故、本件特許発明1の、「旋回時に前輪変速装置が増速状態側に切換操作され、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成した四輪駆動型作業車において、高速での走行時には、旋回時に旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されない状態、及び前輪変速装置が増速状態に切換操作されない状態に事前に設定される構造を得る」(本件訂正明細書の段落【0005】参照)という発明の課題自体、この種の技術分野において既に知られた事項にすぎないから、引用発明に対して、上記刊行物2に記載された第1切換手段並びに牽制機構を備えることに格別な困難性はなく、また、これを妨げる要因は見出し得ない。
したがって、引用発明に刊行物2に記載された前述の公知技術を付加して、その操行操作機構(21)と前輪変速装置(7)とを機械的に連係する第1連係機構(25)に対して、この第1連係機構(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段を備えると共に、係る第1切換手段の連係状態側への切換操作を、走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、牽制機構によって牽制阻止するようになすことは、当業者が容易になし得ることである。
さらに、その場合に、一つの牽制機構を利用して走行用の変速装置と第1及び第2切換手段とを連係する程度のことは、設計上の常套手段にすぎないから、結局、上記相違点1及び2に係る、本件特許発明1に係る前記構成要件G及びJは、刊行物2及び刊行物3に記載された前述の技術的事項を、引用発明に適用することによって、当業者が容易に想到し得るものである。

(5)相違点3について
刊行物4には、上記摘記事項(k)〜(p)の記載からみて、後二輪駆動状態(2WD)と、操縦ハンドル(32)及び前輪変速装置(6)とが連係しない通常の四輪駆動状態(4WD-I)に切換操作する場合と、該通常の四輪駆動状態(4WD-I)と操縦ハンドル(32)と前輪変速装置(6)とが連係した増速四輪駆動状態(4WD-II)に切換操作する場合とでは、切換レバー(34)をレバーガイド(27)面に沿って標準四輪駆動位置(4WD-I)と増速四輪駆動位置(4WD-II)に切換操作が行われる操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なるレバーガイド(27)面に沿う操作方向で後二輪駆動位置(2WD)を現出可能とすることが記載又は示唆されている。
そして、それぞれの有する機能からみて、該「切換レバー(34)」が本件特許発明1の「第1切換手段」に相当し、以下同様に、「後二輪駆動状態(2WD)」が「前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態」に、「操縦ハンドル(32)と前輪変速装置(6)とが連係した増速四輪駆動状態(4WD-II)」が「第1連係機構(18),(25)の連係状態」に、「標準四輪駆動位置(4WD-I)」が「第1連係機構(18),(25)の連係解除状態」に、それぞれに相当するものと認められるから、第1切換手段の操作方向を、第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成することは、上記刊行物4に記載された公知の技術的事項にすぎない。
また、上記2WD、4WD-I、4WD-IIの3状態に切換える前輪変速装置を備えている四輪駆動型作業車において、上記3状態を切り換える切換レバーの操作方向を(2WD)-(4WD(I,II))方向と、(4WD-I)-(4WD-II)方向とで操作方向を異ならせること自体、上記刊行物4に記載されたもの以外、刊行物5(実願昭62-173997号(実開平1-77527号)のマイクロフィルム)の上記摘記事項(q)〜(s)の記載及び刊行物6(特開平5-85219号公報)の第2頁第2欄43行〜第3頁第3欄17行(【0011】及び【0012】参照)及び図4に記載されたものをはじめ様々な操作方向の組合せが存在することは周知の技術事項である。
したがって、引用発明に対して、上記刊行物4に記載された公知の技術事項を適用することにより、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成Iとすることは、当業者が格別な困難性を有することなく、容易になし得たものであり、また、これを妨げる要因も見出し得ない。

そして、本件特許発明1の効果である「高速での走行時で旋回時において、事前に第1及び第2切換手段を連係解除状態側に切換操作する必要がなくなり、四輪駆動型作業車の操作性を向上させることができた」、また、「走行用の変速装置と第1及び第2切換手段とを牽制機構によって連係しているので、構造の簡素化の面でも有利である」(いずれも訂正明細書の段落【0024】参照)という訂正明細書記載の効果は、引用発明、刊行物2〜4に記載された発明及び上記周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

よって、本件特許発明1は、引用発明、刊行物2〜4に記載された発明及び上記周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.本件特許発明2について
本件特許発明2と引用発明とを対比すると、請求項2は独立項であり、請求項1を引用するものではないが、その技術内容からみて実質的に上記「1.本件特許発明1について」で記載した相違点1及び相違点3を有するものであり、それに加えて下記の相違点4で相違し、その余の点で一致する。

<相違点>
(1)相違点4
本件特許発明2は、構成要件Lに係る「第1又は第2切換手段(21),(32)が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備え」ているのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

そこで、上記相違点4について検討する。

(2)相違点4について
本件訂正明細書の実施例には、「第1切換レバー21を増速四輪駆動位置4WD2に操作していると、又は第2切換レバー32を連係位置ONに操作していると、操作板58の作用又はワイヤ51の作用により、ピン51bが図7に示す増速四輪駆動位置4WD2(連係位置ON)に位置して、ピン51bによりワイヤ50が図7の紙面左方にある程度引き操作されている。
この状態で第2変速レバー45を高速位置Hに操作し、第1変速レバー37を5速位置F5〜8速位置F8に操作しようとしても、この操作はワイヤ50により牽制阻止されて行えない。この状態から、ワイヤ50の作用に抗して第2変速レバー45を高速位置Hに操作し、第1変速レバー37を5速位置F5〜8速位置F8に操作すれば、ワイヤ50が図6及び図7の紙面右方に引き操作されて、第1切換レバー21が増速四輪駆動位置4WD2から標準四輪駆動位置4WD1に操作され、第2切換レバー32が連係位置ONから連係解除位置OFFに操作される。」(本件訂正明細書の段落【0051】,【0052】参照)と記載されている。
してみると、本件特許発明2に係る牽制機構(36)は、第1又は第2切換手段(21),(32)が連係状態側に切換操作されている際に、走行用の変速装置が高速側へ変速操作されると、一旦、ワイヤ(50)により高速側へ変速操作が牽制阻止されるものの、このワイヤ(50)の作用に抗して走行用の変速装置を高速側へ変速操作すれば、変速装置の高速側への変速操作が許容されるものである。
一方、刊行物1に記載された牽制機構についてみるとき、上記摘記事項(a)〜(c)の記載からみて、刊行物1の牽制機構(60)は、モード切換機構(50)が自動ブレーキモードに切換えられている際に、変速レバー(61)を高速域(H1)に操作するとともに、クリーブ変速レバー(62)を高速(H)に操作すると、一旦、デテント機構(56)の保持力により変速レバーの高速側への変速操作が牽制阻止される。そして、このデテント機構(56)の保持力に打ち勝って高速側へ変速操作すれば、変速装置の高速側への変速操作が許容されるものであり、本件特許発明2の牽制機構(36)と刊行物1の牽制機構(60)は、その牽制内容において共通する。
また、刊行物2に記載された牽制機構(25)は、上記摘記事項(d)〜(g)の記載からみて、図1に示されているように切換レバー(18)が増速伝動操作位置に切換えられている際に、副変速レバー(24)を高速(H)側に操作すると、揺動アーム(19)がスプリングにより仮想線側に付勢されていることから、一旦、この付勢力により副変速レバー(24)の高速側への変速操作が牽制阻止される。そして、係る付勢力に抗して高速側へ変速操作すれば、変速装置の高速側への変速操作が許容されるものであって、本件特許発明2の牽制機構(36)と刊行物2の牽制機構(25)は、その牽制内容において共通する。
そうすると、刊行物1または刊行物2には、「第1又は第2切換手段(18),(52)が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構(25),(60)を備える」ことが記載又は示唆されているということができる。
したがって、上記相違点4に係る本件特許発明2の前記構成要件Lは、刊行物1または刊行物2に記載または示唆されているものにすぎない。
また、本件特許発明2の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件特許発明2は、引用発明、刊行物1〜4及び上記従来周知の技術手段に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本件特許発明3について
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、上記「1.本件特許発明1について」で記載した相違点1〜3に加え、下記の相違点5で相違し、その余の点で一致する。

<相違点>
(1)相違点5
本件特許発明3は、構成要件Mに係る「第1切換手段(21)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(21)に構成して、第2切換手段(32)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(32)に構成し、走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(37),(45),(61),(62)を備えて、変速レバー(37),(45),(61),(62)が高速側に操作されていると、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、牽制機構(36)を構成」しているのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

そこで、上記相違点5について検討する。

(2)相違点5について
刊行物2には、上記摘記事項(g)に記載のとおり、第1切換手段(18)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(18)に構成することが記載されており、また、刊行物1には、第2切換手段(52)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(52)に構成することが記載されている。
さらに、刊行物1及び刊行物2には、走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(61),(62),(24)を備えることが記載されている。
したがって、上記相違点5に係る本件特許発明3の前記構成要件Mは、刊行物1及び刊行物2に記載または示唆されているものにすぎない。
また、本件特許発明3の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件特許発明3は、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件特許発明4について
本件特許発明4と引用発明とを対比すると、前述の「2.本件特許発明2について」で記載した相違点1,3,4に加え、下記の相違点6で相違し、その余の点で一致する。

<相違点>
(1)相違点6
本件特許発明4は、構成要件Nに係る「第1切換手段(21)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(21)に構成して、第2切換手段(32)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(32)に構成し、走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(37),(45),(61),(62)を備えて、前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されていると、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、牽制機構(36)を構成」しているのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

そこで、上記相違点6について検討する。

(2)相違点6について
前記「3.本件特許発明3について」の欄で言及した通り、そのような切換レバー及び変速レバーを備えることは公知であって、上記相違点6に係る本件特許発明4の前記構成要件Nは、刊行物1及び刊行物2に記載または示唆されているものにすぎない。
また、本件特許発明4の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件特許発明4は、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件特許発明5について
本件特許発明5と引用発明とを対比すると、前記「3.本件特許発明3について」で記載した相違点1〜3,5に加え、下記の相違点7で相違し、その余の点で一致する。

<相違点>
(1)相違点7
本件特許発明5は、構成要件Oに係る「走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、変速レバー(37),(45),(61),(62)として前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(37),(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(45),(62)を備えると共に、前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)が両方共に高速側に操作されると、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、牽制機構(36)を構成」しているのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

そこで、上記相違点7について検討する。

(2)相違点7について
刊行物1には、上記摘記事項(c)に記載のとおり、走行用の変速装置として第1変速装置(主変速機構M1と副変速機構M3)と第2変速装置(クリープ変速機構M4)とを備え、また、変速レバーとして前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(62)を備えることが記載されている。
したがって、上記相違点7に係る本件特許発明5の前記構成要件Oは、刊行物1に記載または示唆されているものにすぎない。
また、本件特許発明5の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件特許発明5は、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件特許発明6について
本件特許発明6と引用発明とを対比すると、前記「4.本件特許発明4について」で記載した相違点1,3,4及び6に加え、下記の相違点8で相違し、その余の点で一致する。

<相違点>
(1)相違点8
本件特許発明6は、構成要件Pに係る「走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)として前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(37),(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(45),(62)を備えると共に、前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されると、前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、牽制機構(36)を構成」しているのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか不明である点。

そこで、上記相違点8について検討する。

(2)相違点8について
上記「5.本件特許発明5について」の欄で言及した通り、そのような変速装置及び変速レバーを備えることは公知であって、上記相違点8に係る本件特許発明4の前記構成要素Pは、刊行物1に記載または示唆されているものにすぎない。
また、本件特許発明6の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
よって、本件特許発明6は、引用発明、刊行物1〜4に記載された発明及び上記従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VII.むすび
したがって、本件特許発明1〜6は、刊行物1(甲第1号証)、刊行物2(甲第2号証)、刊行物3(甲第号証)及び刊行物4に記載された発明及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本件特許発明1〜6についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記の結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
四輪駆動型作業車
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキ(27)と、前輪(1)を左右に操向操作する操向操作機構(22)とを備え、
前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構(22)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(18),(25)により機械的に連係して、
前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記操向操作機構(22)と右及び左のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(40),(41)により機械的に連係し、
前記第2連係機構(29),(40),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、右及び左のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(40),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
前記第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段(21)と、前記第2連係機構(29),(40),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段(32)とを備え、
前記1切換手段(21)の操作方向を、前記第1連係構造(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、前記第1及び第2切換手段(21),(32)の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備えてある四輪駆動型作業車。
【請求項2】 前輪(1)と後輪(2)とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪(1)が後輪(2)よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置(7)と、右及び左の後輪(2)を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキ(27)と、前輪(1)を左右に操向操作する操向操作機構(22)とを備え、
前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記前輪変速装置(7)が標準状態から増速状態に切換操作されるように、前記操向操作機構(22)と前輪変速装置(7)とを第1連係機構(18),(25)により機械的に連係して、
前記操向操作機構(22)により前輪(1)が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前記旋回中心側のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように、前記操向操作機構(22)と右及び左のサイドブレーキ(27)とを第2連係機構(29),(40),(41)により機械的に連係し、
前記第2連係機構(29),(40),(41)の途中部分に備えられたブレーキ操作機構(33)と、右及び左のサイドブレーキペダル(30)とを、前記第2連係機構(29),(40),(41)とは別に機械的に連係して、前記右又は左のサイドブレーキペダル(30)が踏み操作されると、前記右又は左のサイドブレーキ(27)が制動側に操作されるように構成すると共に、
前記第1連係機構(18),(25)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段(21)と、前記第2連係機構(29),(40),(41)を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段(32)とを備え、
前記第1切換手段(21)の操作方法を、前記第1連係機構(18),(25)の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪(1)が駆動されずに後輪(2)のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
前記第1又は第2切換手段(21),(32)が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構(36)を備えてある四輪駆動型作業車。
【請求項3】 前記第1切換手段(21)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(21)に構成して、前記第2切換手段(32)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(32)に構成し、前記走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(37),(45),(61),(62)を備えて、
前記変速レバー(37),(45),(61),(62)が高速側に操作されていると、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項1記載の四輪駆動型作業車。
【請求項4】 前記第1切換手段(21)を作業者が人為的に操作する第1切換レバー(21)に構成して、前記第2切換手段(32)を作業者が人為的に操作する第2切換レバー(32)に構成し、前記走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバー(37),(45),(61),(62)を備えて、
前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されていると、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項2記載の四輪駆動型作業車。
【請求項5】 前記走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)として前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(37),(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(45),(62)を備えると共に、
前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)が両方共に高速側に操作されると、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項3記載の四輪駆動型作業車。
【請求項6】 前記走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、前記変速レバー(37),(45),(61),(62)として前記第1変速装置を変速操作する第1変速レバー(37),(61)、及び前記第2変速装置を変速操作する第2変速レバー(45),(62)を備えると共に、
前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されると、前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項4記載の四輪駆動型作業車。
【請求項7】 前記第1変速レバー(37),(61)の操作に伴って作動する第1操作部材(39b),(61)と、前記第2変速レバー(45),(62)の操作に伴って前記第1操作部材(39b),(61)の作動方向に略沿って作動する第2操作部材(53),(62)とを備え、前記第1操作部材(39b),(61)と第2操作部材(53),(62)とに亘りワイヤ(50)を接続し、このワイヤ(50)の中間部と前記第1及び第2切換レバー(21),(32)とを連係して、
前記第1及び第2操作部材(39b),(61),(53),(62)が両方共に高速側に操作されると、これに伴い前記ワイヤ(50)の中間部が前記第1及び第2操作部材(39b),(61),(53),(62)と一緒に移動して、前記第1及び第2切換レバー(21),(32)の連係状態側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項5記載の四輪駆動型作業車。
【請求項8】 前記第1変速レバー(37),(61)の操作に伴って作動する第1操作部材(39b),(61)と、前記第2変速レバー(45),(62)の操作に伴って前記第1操作部材(39b),(61)の作動方向に略沿って作動する第2操作部材(53),(62)とを備え、前記第1操作部材(39b),(61)と第2操作部材(53),(62)とに亘りワイヤ(50)を接続し、このワイヤ(50)の中間部と前記第1及び第2切換レバー(21),(32)とを連係して、
前記第1又は第2切換レバー(21),(32)が連係状態側に操作されると、これに伴い前記ワイヤ(50)の中間部が前記第1又は第2切換レバー(21),(32)と一緒に移動して、前記第1及び第2変速レバー(37),(45),(61),(62)の高速側への操作を牽制阻止するように、前記牽制機構(36)を構成してある請求項6記載の四輪駆動型作業車。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、農用トラクタや乗用型田植機等のような四輪駆動型作業車における旋回用の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
四輪駆動型作業車の一例である農用トラクタにおいては、右及び左の後輪の各々を独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキを備えており、操縦部に備えられた左右一対のサイドブレーキペダルの一方を踏み操作することにより、制動側の後輪を中心とした小回り旋回が可能になる。
【0003】
近年では前述のサイドブレーキに加えて、前輪と後輪とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪が後輪よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置を備え、前輪の操向操作と前輪変速装置及びサイドブレーキを機械的に連係することが提案されている。これにより、操縦ハンドルの操作で前輪を直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作すると、これに連動して自動的に前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作され、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されて、さらに小回り旋回が行える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
旋回時において前述のように、前輪が後輪よりも高速で駆動され旋回中心側の後輪に制動が掛かると小回り旋回が可能になる反面、機体は急激に小回り旋回するような状態になる。従って、高速での走行時には、旋回時に旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されない状態、及び前輪変速装置が増速状態に切換操作されない状態に事前に設定しておく必要がある。
【0005】
本発明は旋回時に前輪変速装置が増速状態側に切換操作され、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成した四輪駆動型作業車において、高速での走行時には、旋回時に旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されない状態、及び前輪変速装置が増速状態に切換操作されない状態に事前に設定される構造を得ることを目的としており、さらにこの構造を簡素に構成することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は以上のような四輪駆動型作業車において、次のように構成することにある。
[1]
前輪と後輪とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪が後輪よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置と、右及び左の後輪を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキと、前輪を左右に操向操作する操向操作機構とを備え、
操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されるように、操向操作機構と前輪変速装置とを第1連係機構により機械的に連係して、操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように、操向操作機構と右及び左のサイドブレーキとを第2連係機構により機械的に連係し、
第2連係機構の途中部分に備えられたブレーキ操作機構と、右及び左のサイドブレーキペダルとを、第2連係機構とは別に機械的に連係して、右又は左のサイドブレーキペダルが踏み操作されると、右又は左のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成すると共に、
前記第1連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段と、前記第2連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段とを備え、
前記第1切換手段の操作方向を、前記第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行われる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪が駆動されずに後輪のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
走行用の変速装置が高速側に変速操作されていると、第1及び第2切換手段の連係状態側への切換操作を牽制阻止する牽制機構を備えてある。
【0007】
[2]
前輪と後輪とが略同じ速度で駆動される標準状態及び前輪が後輪よりも高速で駆動される増速状態に切換操作自在な前輪変速装置と、右及び左の後輪を各々独立に制動可能な左右一対のサイドブレーキと、前輪を左右に操向操作する操向操作機構とを備え、
操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、前輪変速装置が標準状態から増速状態に切換操作されるように、操向操作機構と前輪変速装置とを第1連係機構により機械的に連係して、操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されると、旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されるように、操向操作機構と右及び左のサイドブレーキとを第2連係機構により機械的に連係し、
第2連係機構の途中部分に備えられたブレーキ操作機構と、右及び左のサイドブレーキペダルとを、第2連係機構とは別に機械的に連係して、右又は左のサイドブレーキペダルが踏み操作されると、右又は左のサイドブレーキが制動側に操作されるように構成すると共に、
前記第1連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第1切換手段と、前記第2連係機構を連係状態及び連係解除状態に切換操作自在な第2切換手段とを備え、
前記第1切換手段の操作方向を、前記第1連係機構の連係状態及び連係解除状態への切換操作が行なわれる一つの仮想平面に沿う操作方向と、その操作方向に対して交差する方向の異なる仮想平面に沿う操作方向とに設定して、前記異なる仮想平面に沿う方向での操作によって前記前輪が駆動されずに後輪のみが駆動される二輪駆動状態を現出可能に構成し、
第1又は第2切換手段が連係状態側に切換操作されていると、走行用の変速装置の高速側への変速操作を牽制阻止する牽制機構を備えてある。
【0008】
[3]
前項[1]の構成において、第1切換手段を作業者が人為的に操作する第1切換レバーに構成して、第2切換手段を作業者が人為的に操作する第2切換レバーに構成し、走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバーを備えて、変速レバーが高速側に操作されていると、第1及び第2切換レバーの連係状態側への操作を牽制阻止するように牽制機構を構成してある。
【0009】
[4]
前項[2]の構成において、第1切換手段を作業者が人為的に操作する第1切換レバーに構成して、第2切換手段を作業者が人為的に操作する第2切換レバーに構成し、走行用の変速装置を作業者が人為的に変速操作する変速レバーを備えて、第1又は第2切換レバーが連係状態側に操作されていると、変速レバーの高速側への操作を牽制阻止するように牽制機構を構成してある。
【0010】
[5]
前項[3]の構成において、走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、変速レバーとして第1変速装置を変速操作する第1変速レバー、及び第2変速装置を変速操作する第2変速レバーを備えると共に、
第1及び第2変速レバーが両方共に高速側に操作されると、第1及び第2切換レバーの連係状態側への操作を牽制阻止するように牽制機構を構成してある。
【0011】
[6]
前項[4]の構成において、走行用の変速装置として第1変速装置と第2変速装置とを備え、変速レバーとして第1変速装置を変速操作する第1変速レバー、及び第2変速装置を変速操作する第2変速レバーを備えると共に、
第1又は第2切換レバーが連係状態側に操作されると、第1及び第2変速レバーの高速側への操作を牽制阻止するように、牽制機構を構成してある。
【0012】
[7]
前項[5]の構成において、第1変速レバーの操作に伴って作動する第1操作部材と、第2変速レバーの操作に伴って第1操作部材の作動方向に略沿って作動する第2操作部材とを備え、第1操作部材と第2操作部材とに亘りワイヤを接続し、このワイヤの中間部と第1及び第2切換レバーとを連係して、
第1及び第2操作部材が両方共に高速側に操作されると、これに伴いワイヤの中間部が第1及び第2操作部材と一緒に移動して、第1及び第2切換レバーの連係状態側への操作を牽制阻止するように、牽制機構を構成してある。
【0013】
[8]
前項[6]の構成において、第1変速レバーの操作に伴って作動する第1操作部材と、第2変速レバーの操作に伴って第1操作部材の作動方向に略沿って作動する第2操作部材とを備え、第1操作部材と第2操作部材とに亘りワイヤを接続し、このワイヤの中間部と第1及び第2切換レバーとを連係して、
第1又は第2切換レバーが連係状態側に操作されると、これに伴いワイヤの中間部が第1又は第2切換レバーと一緒に移動して、第1及び第2変速レバーの高速側への操作を牽制阻止するように、牽制機構を構成してある。
【0014】
【作用】
[I]
前項[1]のように構成すると、走行用の変速装置が高速側に変速操作されていれば、一つの牽制機構の作用により第1及び第2切換手段の連係状態側への切換操作が牽制阻止されるので、第1及び第2切換手段を連係解除状態側に残しておかなければならない。従って、この状態で操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されても、前輪変速装置は増速状態に切換操作されずに標準状態に残されるのであり、旋回中心側のサイドブレーキも制動側に操作されない。
【0015】
以上のような牽制機構を備える場合、前輪の操向操作機構と前輪変速装置との間、及び前輪の操向操作機構とサイドブレーキとの間の2箇所に牽制機構を備えることも考えられるが、これに対して前項[1]のように構成すると、一つの牽制機構によって前輪の操向操作機構と前輪変速装置及びサイドブレーキを結び付けることができる。
【0016】
[II]
前項[2]のように構成すると、第1又は第2切換手段が連係状態側(旋回時に前輪変速装置が増速状態に切換操作される状態、又は旋回時に旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作される状態、並びに前述の両方の状態)に切換操作されていれば、一つの牽制機構の作用により走行用の変速装置の高速側への変速操作が牽制阻止されるので、走行用の変速装置を低速側に残しておかなければならない。従って、この状態で操向操作機構により前輪が直進位置から右又は左の設定角度以上に操向操作されて、前輪変速装置が増速状態に切換操作されるか又は旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されても、機体の走行速度は低速の状態である。
【0017】
以上のような牽制機構を備える場合、前輪の操向操作機構と前輪変速装置との間、及び前輪の操向操作機構とサイドブレーキとの間の2箇所に牽制機構を備えることも考えられるが、これに対して前項[2]のように構成すると、一つの牽制機構によって前輪の操向操作機構と前輪変速装置及びサイドブレーキを結び付けることができる。
【0018】
[III]
前項[3]のように構成すると、前項[1]の構成の場合と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[3]のように構成すると変速レバーが高速側に操作されていれば、作業者が第1及び第2切換レバーを連係状態側に操作しようとしても操作できない。このように、第1及び第2切換レバーの連係状態側への操作ができないことによって、機体の走行速度が高速の状態で、前輪変速装置が増速状態に切換操作されるか、又は旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されて旋回する状態を現出させようとしていたことを、作業者が認識するのであり作業者の注意が喚起される。
【0019】
[IV]
前項[4]のように構成すると、前項[2]の構成の場合と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[4]のように構成すると第1又は第2切換レバーが連係状態側に操作されていれば、作業者が変速レバーを高速側に操作しようとしても操作できない。このように、変速レバーの高速側への操作ができないことによって、機体の走行速度が高速の状態で、前輪変速装置が増速状態に切換操作されるか、又は旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作されて旋回する状態を現出させようとしていたことを、作業者が認識するのであり作業者の注意が喚起される。
【0020】
[V]
前項[7]のように構成すると、前項[1]及び[3]の構成の場合と同様に前項[I]及び[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[7]のように構成すると例えば図4及び図6に示すように、第1変速レバー37の操作に伴い第1操作部材39bのみが高速位置F5に操作されても、逆に、第2変速レバー45の操作に伴い第2操作部材53のみが高速位置Hに操作されても、このような片方だけの高速側への操作ではワイヤ50の中間部の移動量は小さく、第1及び第2切換レバー21,32の連係状態側への操作は牽制阻止されない。この場合、第1及び第2切換レバー21,32を連係状態側に操作していると、前輪を右又は左の設定角度以上に操向操作すれば、前輪変速装置が増速状態に切換操作され、旋回中心側のサイドブレーキが自動的に制動側に操作される。
そして、例えば図6及び図7に示すように第1及び第2操作部材39b,53の両方が高速位置F5,Hに操作されると、ワイヤ50の中間部の移動量は充分なものとなるので、第1及び第2切換レバー21,32の連係状態側への操作が牽制阻止される。
【0021】
以上のように、前項[7]では第1及び第2操作部材に亘りワイヤを接続し、このワイヤの中間部と第1及び第2切換レバーを連係すると言う簡単な構成で、所望の機能(第1及び第2切換レバーの連係状態側への操作を牽制阻止する機能)を備えた牽制機構を構成することができる。そして、前項[7]の牽制機構のワイヤでは、長孔内をピンが摺動する際に生じるコジレ現象等が発生することは少ないので、牽制機構がコジレ現象少なく円滑に作動する。
【0022】
[VI]
前項[8]のように構成すると、前項[2]及び[4]の構成の場合と同様に前項[II]及び[IV]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[8]のように構成すると、第1切換レバー又は第2切換レバーが連係状態側に操作されると、ワイヤの中間部が充分に移動して、第1及び第2変速レバーの高速側への操作が牽制阻止される。
【0023】
以上のように、前項[8]では第1及び第2操作部材に亘りワイヤを接続し、このワイヤの中間部と第1及び第2切換レバーを連係すると言う簡単な構成で、所望の機能(第1及び第2変速レバーの高速側への操作を牽制阻止する機能)を備えた牽制機構を構成することができる。そして、前項[8]の牽制機構のワイヤでは、長孔内をピンが摺動する際に生じるコジレ現象等が発生することは少ないので、牽制機構がコジレ現象少なく円滑に作動する。
【0024】
【発明の効果】
請求項1のように構成すると、走行用の変速装置が高速側に変速操作されていれば、牽制機構により第1及び第2切換手段を連係状態側(旋回時に前輪変速装置が増速状態に切換操作される状態、及び旋回時に旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作される状態)に既に切換操作できないので、高速での走行時で旋回時において、事前に第1及び第2切換手段を連係解除状態側に切換操作する必要がなくなり、四輪駆動型作業車の操作性を向上させることができた。
そして、走行用の変速装置と第1及び第2切換手段とを一つの牽制機構によって連係しているので、構造の簡素化の面でも有利である。
【0025】
請求項2のように構成すると、第1又は第2切換手段が連係状態側(旋回時に前輪変速装置が増速状態に切換操作される状態、又は旋回時に旋回中心側のサイドブレーキが制動側に操作される状態、並びに前述の両方の状態)に切換操作されていれば、牽制機構により走行用の変速装置を高速側に既に変速操作できないので、第1又は第2切換手段が連係状態側に切換操作された旋回時において、事前に走行用の変速装置を低速側に変速操作する必要がなくなり、四輪駆動型作業車の操作性を向上させることができた。
そして、走行用の変速装置と第1及び第2切換手段とを一つの牽制機構によって連係しているので、構造の簡素化の面でも有利である。
【0026】
請求項3のように構成すると、請求項1のように構成した場合と同様に前述の請求項1の「発明の効果」を備えている。
請求項3のように構成すると、変速レバーが高速側に操作されていれば、作業者が第1及び第2切換レバーを連係状態側に操作しようとしても操作できず、作業者の注意が喚起されるので、作業者の誤解を招かない構成が得られる。
【0027】
請求項4のように構成すると、請求項2のように構成した場合と同様に前述の請求項2の「発明の効果」を備えている。
請求項4のように構成すると、第1又は第2切換レバーが連係状態側に操作されていれば、作業者が変速レバーを高速側に操作しようとしても操作できず、作業者の注意が喚起されるので、作業者の誤解を招かない構成が得られる。
【0028】
請求項7のように構成すると、請求項1及び3のように構成した場合と同様に前述の請求項1及び3の「発明の効果」を備えている。
請求項7のように構成すると、第1及び第2変速レバーの高速側への操作により第1及び第2切換レバーの連係状態側への操作を牽制阻止する構成を、ワイヤにより簡素に構成することができて、製作コストを抑えた生産性の良い牽制機構が得られる。そして、牽制機構がワイヤによりコジレ現象なく円滑に作動するので、信頼性の高い牽制機構が得られる。
【0029】
請求項8のように構成すると、請求項2及び4のように構成した場合と同様に前述の請求項2及び4の「発明の効果」を備えている。
請求項8のように構成すると、第1又は第2切換レバーの連係状態側への操作により第1及び第2変速レバーの高速側への操作を牽制阻止する構成を、ワイヤにより簡素に構成することができて、製作コストを抑えた生産性の良い牽制機構が得られる。そして、牽制機構がワイヤによりコジレ現象なく円滑に作動するので、信頼性の高い牽制機構が得られる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(1)
図1に示すように前輪1及び後輪2で支持された機体の前部にエンジン3、機体の後部にミッションケース4を搭載して、四輪駆動型作業車の一例である農用トラクタを構成している。図2に示すように、エンジン3からの動力はミッションケース4内の走行用の第1変速装置(8段に変速操作可能)(図示せず)、及び第2変速装置(高低2段に変速操作可能)に伝達され変速操作されて、後輪デフ機構5から右及び左の後輪2に伝達されており、後輪デフ機構5から分岐した動力が、前輪変速装置7から前輪伝動軸8及び前輪デフ機構6を介して右及び左の前輪1に伝達される。
【0031】
次に、前輪変速装置7について説明する。
図2に示すように、後輪デフ機構5の直前から分岐した動力が伝動ギヤ16から第1標準ギヤ12に伝達され、伝動軸11を介して第1増速ギヤ13に伝達される。前輪1への前輪伝動軸8に第2標準ギヤ9及び第2増速ギヤ10が相対回転自在に外嵌されており、第1及び第2標準ギヤ12,9、第1及び第2増速ギヤ13,10が咬合している。
【0032】
前輪伝動軸8にスプライン構造にてスライド自在にシフト部材14が外嵌されており、シフト部材14を第2標準ギヤ9に咬合させると、前輪1が後輪2と略同じ速度で駆動される標準状態で動力が伝達される。逆に、第2増速ギヤ10と前輪伝動軸8との間に構成された摩擦クラッチ15を、シフト部材14により押圧入り操作すると、前輪1が後輪2よりも高速で駆動される増速状態で動力が伝達される。
【0033】
(2)
次に、前輪変速装置7の操作系の構造について説明する。
図2に示すように、シフト部材14用のシフトフォーク17が、軸芯方向に摺動自在な操作軸18(第1連係機構に相当)に、連係切換機構19を介して外嵌され、バネ(図示せず)によりシフトフォーク17が第2標準ギヤ9との咬合側(標準状態側)に付勢されている。連係切換機構19は、操作軸18とシフトフォーク17とを連結して、後述するように操作軸18と一緒にシフトフォーク17がスライド操作される連係状態、及び、操作軸18とシフトフォーク17との連結を解除して、後述するように操作軸18がスライド操作された際に、シフトフォーク17が第2標準ギヤ9との咬合側(標準状態側)に残される連係解除状態に切換操作自在に構成されている。
【0034】
図3(イ)及び図2に示すように、左右の機体フレーム38の間の縦軸芯P2周りにピットマンアーム22(操向操作機構に相当)が揺動自在に支持され、ピットマンアーム22と左右の前輪1とがタイロッド49により連係されている。ピットマンアーム22の下部にカム板23が固定されており、右の機体フレーム38の縦軸芯P1周りにカムアーム24が揺動自在に支持され、カムアーム24のピン24aが、カム板23のカム孔23aに係入されている。連係ロッド25(第1連係機構に相当)が、カムアーム24の先端と前輪変速装置7の操作軸18とに亘って接続されており、パワーステアリング用の油圧シリンダ43が、ピットマンアーム22から横に出たアーム22aと左の機体フレーム38とに亘って連結されている。
【0035】
以上の構造により、図1に示す操縦ハンドル26を操作し油圧シリンダ43によって、ピットマンアーム22を直進位置から右又は左の設定角度以上に揺動操作すると、図3(ロ)に示すようにカム孔23aとピン24aとのカム作用により、カムアーム24が紙面左方に揺動操作されて連係ロッド25がカムアーム24側に引き操作される。
これにより、図2に示す連係切換機構19を連係状態に切換操作していると、操作軸18及びシフトフォーク17が紙面左方にスライド操作され、シフト部材14が摩擦クラッチ15を押圧入り操作して増速状態となる。逆に、連係切換機構19を連係解除状態に切換操作していると、前述のように操作軸18がスライド操作されても、シフトフォーク17が第2標準ギヤ9との咬合側に残されて標準状態が維持される。
【0036】
(3)
図2に示すように、第1標準ギヤ12は伝動軸11にスプライン構造にてスライド操作自在に外嵌されており、図4及び図2に示す第1切換レバー21(第1切換手段に相当)と、第1標準ギヤ12及び前輪変速装置7の連係切換機構19とが、連係機構20を介して連係されている。
【0037】
第1切換レバー21を図8に示すレバーガイド28に沿って増速四輪駆動位置4WD2(連係状態に対応)に操作すると、図2に示すように第1標準ギヤ12が伝動ギヤ16に咬合操作されて、連係切換機構19が連係状態に切換操作される。これにより、直進時に前輪1と後輪2とが略同じ速度で駆動され(標準状態)、旋回時に前輪1が後輪2よりも高速で駆動される(増速状態)。
【0038】
次に第1切換レバー21を標準四輪駆動位置4WD1(連係解除状態に対応)に操作すると、図2に示すように第1標準ギヤ12が伝動ギヤ16に咬合操作された状態で、連係切換機構19が連係解除状態に切換操作される。これにより、直進時でも旋回時でも前輪1と後輪2とが略同じ速度で常時駆動される(標準状態)。
第1切換レバー21を二輪駆動位置2WDに操作すると、図2に示す第1標準ギヤ12が伝動ギヤ16から紙面左方に離間操作されて、連係切換機構19が連係解除状態に切換操作される。これにより、直進時でも旋回時でも前輪1は駆動されず後輪2のみが駆動される。
【0039】
(4)
図2に示すように、右及び左の後輪2を各々独立に制動可能なサイドブレーキ27を左右一対備えており、次にサイドブレーキ27の操作系の構造について説明する。
左右一対のサイドブレーキ27に対して一対のブレーキ操作機構33が備えられ、ブレーキ操作機構33とサイドブレーキ27とが連係ロッド29(第2連係機構に相当)により連動連結されており、機体の操縦部の右側に備えられた左右一対のサイドブレーキペダル30と、右及び左のブレーキ操作機構33とが連係ロッド31により連動連結されている。これにより、右又は左のサイドブレーキペダル30を踏み操作することにより、右又は左のサイドブレーキ27が制動側に操作される。
【0040】
図3(イ)及び図2に示すように、左右の機体フレーム38の間において、縦軸芯P3周りに右操作アーム47及び左操作アーム48が揺動自在に支持されており、右のブレーキ操作機構33と右操作アーム47とが、バネ40(第2連係機構に相当)及びワイヤ41(第2連係機構に相当)により連動連結され、左のブレーキ操作機構33と左操作アーム48とが、バネ40及びワイヤ41により連動連結されている。右及び左操作アーム48を図3(イ)に示す姿勢で止めるストッパー46が備えられている。
【0041】
以上の構造により、例えばピットマンアーム22が左の設定角度以上に揺動操作されると、図3(ロ)に示すようにピットマンアーム22に固定されたカム部材34が左操作アーム48に接当し、左操作アーム48が紙面時計方向に揺動操作される。これにより、左のワイヤ41が左操作アーム48側に引き操作され、左のブレーキ操作機構33及び連係ロッド29を介して、左のサイドブレーキ27が弱制動状態に操作される。
このサイドブレーキ27の弱制動状態とは、機体の旋回に伴い旋回中心側(制動側)の後輪2が引きずられるような状態になると、サイドブレーキ27の制動力が負けて旋回中心側(制動側)の後輪2が少し回転するような状態である。
【0042】
(5)
図2に示す右及び左のブレーキ操作機構33は、ワイヤ41と連係ロッド29とを連係する連係状態、及び連係を解除する連係解除状態に切換操作自在に構成されている。
これにより、ブレーキ操作機構33を連係状態に切換操作していれば、前述のように旋回時にワイヤ41が引き操作されると、連係ロッド29も引き操作されてサイドブレーキ27が弱制動状態に操作される。逆に、ブレーキ操作機構33を連係解除状態に切換操作していれば、前述のように旋回時にワイヤ41が引き操作されても連係ロッド29は引き操作されず、サイドブレーキ27は弱制動状態に操作されない。
【0043】
図2及び図4に示すように、機体の操縦部に第2切換レバー32(第2切換手段に相当)が、軸芯P7周りに揺動操作自在に支持されており、右及び左のブレーキ操作機構33と第2切換レバー32とが、一対のワイヤ35によって接続されている。
これにより、第2切換レバー32を連係位置ON(連係状態に対応)に操作していると、右及び左のブレーキ操作機構33が連係状態に切換操作されて、旋回時に旋回中心側のサイドブレーキ27が弱制動状態に操作される。逆に、第2切換レバー32を連係解除位置OFF(連係解除状態に対応)に操作していると、右及び左のブレーキ操作機構33が連係解除状態に切換操作されて、旋回時に旋回中心側のサイドブレーキ27は弱制動状態に操作されない。
【0044】
(6)
次に、第1及び第2変速装置の第1及び第2変速レバー37,45と、第1及び第2切換レバー21,32とを連係する牽制機構36について説明する。
ミッションケース4内の第1変速装置(図示せず)は、8段に変速可能なギヤ変速部を油圧シリンダにより変速操作するように構成されており、図4及び図2に示す第1変速レバー37(変速レバーに相当)を横軸芯P4周りに操作して、油圧シリンダ用の制御弁を切換操作することにより、油圧シリンダに作動油を給排操作して第1変速装置の変速操作を行う。
【0045】
図4,5,10(イ)に示すように、回転軸39の両端に操作アーム39a,39b(第1操作部材に相当)が固定され、操作アーム39aに戻しバネ42が取り付けられており、縦軸芯P5周りに一体で揺動するアーム44a,44bの一方のアーム44aに、操作アーム39aが接当している。
図4及び図5に示すように、第2変速レバー45(変速レバーに相当)が横軸芯P6周りに揺動自在に支持され、第2変速装置の変速軸52と第2変速レバー45とに亘り連係ロッド53(第2操作部材に相当)が接続されており、連係ロッド53と操作アーム39bとに亘って一本のワイヤ50が接続されている。
【0046】
図4,6,7に示すように、第2切換レバー32にワイヤ51の一端が接続され、ワイヤ51の他端に連係部材51aが接続されており、ワイヤ50が連係部材51aのピン51bに掛けられている。
図4,8,9に示すように、固定板54の上下の支持板55に操作軸56が回転自在に支持され、操作軸56の下端の操作アーム56aと第1切換レバー21とが連係ロッド57によって接続されている。操作軸56の上端に上下一対の操作板58が固定されており、図6,7,8に示すように操作板58の長孔状の切欠部58aに、連係部材51aのピン51bが支持されている。
【0047】
以上の構造により、第2切換レバー32を連係位置ONに操作するとワイヤ51が引き操作されて、連係部材51a及びピン51bが図6及び図7に紙面左方に移動する。第1切換レバー21を増速四輪駆動位置4WD2に操作すると、操作板58が図7及び図9の紙面左方に揺動操作されて、連係部材51a及びピン51bが操作板58により図6及び図7の紙面左方に移動する。
【0048】
(7)
図4に示す状態は、第1変速レバー37を4速位置F4に操作し、第2変速レバー45を低速位置Lに操作している状態であり、この状態でワイヤ50は弛んでいる。従ってこの状態において、第1切換レバー21(操作板58)の増速四輪駆動位置4WD2への操作、及び第2切換レバー32(ピン51b)の連係位置ONへの操作が、ワイヤ50に牽制阻止されることなく行える。以上の状態において、第1変速レバー37を4速位置F4から低速側に操作すれば(図4の紙面右方)、ワイヤ50はさらに弛むことになる。
【0049】
第2変速レバー45を低速位置Lに残した状態で、第1変速レバー37を4速位置F8から5速位置F5〜8速位置F8に操作すると、図10(イ)から図10(ロ)に示すように第1変速レバー37に固定された操作板59がアーム44bに接当して、アーム44a,44bが紙面反時計方向に回転し、アーム44aにより操作アーム39a,39bが回転軸39周りに図4の紙面反時計方向に回転して、ワイヤ50が引き操作される。逆に、第1変速レバー37を4速位置に残した状態で、第2変速レバー45を低速位置Lから高速位置Hに操作すると、ワイヤ50が引き操作される。
以上の2つの状態では図4に示すワイヤ50の弛みが消えるだけであり、第1切換レバー21の増速四輪駆動位置4WD2への操作、及び第2切換レバー32の連係位置ONへの操作は、牽制阻止されることなく行える。
【0050】
次に、図6及び図7に示すように第2変速レバー45を高速位置Hに操作し、第1変速レバー37を5速位置F5〜8速位置F8に操作すると、前述のようにワイヤ50の弛みが消えた状態から、さらにワイヤ50が図6及び図7の紙面右方に引き操作される。これにより、ワイヤ51のピン51bが標準四輪駆動位置4WD1(連係解除位置OFF)に保持されるので、この状態では第1切換レバー21の増速四輪駆動位置4WD2への操作、及び第2切換レバー32の連係位置ONへの操作は、ワイヤ50により牽制阻止されて行えない。
【0051】
逆に、第1切換レバー21を増速四輪駆動位置4WD2に操作していると、又は第2切換レバー32を連係位置ONに操作していると、操作板58の作用又はワイヤ51の作用により、ピン51bが図7に示す増速四輪駆動位置4WD2(連係位置ON)に位置して、ピン51bによりワイヤ50が図7の紙面左方にある程度引き操作されている。
【0052】
この状態で第2変速レバー45を高速位置Hに操作し、第1変速レバー37を5速位置F5〜8速位置F8に操作しようとしても、この操作はワイヤ50により牽制阻止されて行えない。この状態から、ワイヤ50の作用に抗して第2変速レバー45を高速位置Hに操作し、第1変速レバー37を5速位置F5〜8速位置F8に操作すれば、ワイヤ50が図6及び図7の紙面右方に引き操作されて、第1切換レバー21が増速四輪駆動位置4WD2から標準四輪駆動位置4WD1に操作され、第2切換レバー32が連係位置ONから連係解除位置OFFに操作される。
そして、第1切換レバー21を標準四輪駆動位置4WD1に操作し、且つ第2切換レバー32を連係解除位置OFFに操作していれば、第2変速レバー45の高速位置Hへの操作、及び第1変速レバー37の5速位置F5〜8速位置F8への操作は、牽制阻止されることなく行える。
【0053】
[別実施例]
図4及び図5に示す構成に代えて、図11及び図12に示すように構成してもよい。図11及び図12に示す構成では、走行用として4段に変速操作可能な主変速装置(図示せず)、高低2段に変速操作可能な第1副変速装置(第1変速装置に相当)(図示せず)、及び高低2段に変速操作可能な第2副変速装置(第2変速装置に相当)(図示せず)を備えており、第1副変速装置の第1副変速レバー61(変速レバー、第1変速レバー及び第1操作部材に相当)、及び第2副変速装置の第2副変速レバー62(変速レバー、第2変速レバー及び第2操作部材に相当)を備えている。第1及び第2副変速レバー61,62と、第1及び第2切換レバー21,32とを連係する牽制機構36を備えており、次にこの牽制機構36について説明する。【0054】
図11及び図12に示すように、第1及び第2副変速レバー61,62が横軸芯P8周りに揺動自在に支持されており、第1及び第2副変速レバー61,62に亘って一本のワイヤ50が接続されている。第2切換レバー32にワイヤ51の一端が接続され、ワイヤ51の他端に連係部材51aが接続されて、ワイヤ50が連係部材51aのピン51bに掛けられている。固定のボス部60に操作軸56が回転自在に支持されて、操作軸56の下端の操作アーム56aと第1切換レバー21とがワイヤ63によって接続されている。操作軸56の上端に上下一対の操作板58が固定されており、操作板58の長孔状の切欠部58aに連係部材51aのピン51bが支持されている。
【0055】
以上の構造により、第2切換レバー32を連係位置ONに操作するとワイヤ51が引き操作されて、連係部材51a及びピン51bが紙面左方に移動する。第1切換レバー21を増速四輪駆動位置4WD2に操作すると、操作板58が図12の紙面左方に揺動操作されて、連係部材51a及びピン51bが操作板58により紙面左方に移動する。
【0056】
図11に示す状態は、第1及び第2副変速レバー61,62を低速位置Lに操作している状態であり、この状態でワイヤ50は弛んでいる。これにより、第1切換レバー21(操作板58)の増速四輪駆動位置4WD2への操作、及び第2切換レバー32(ピン51b)の連係位置ONへの操作が、ワイヤ50に牽制阻止されることなく行える。
【0057】
第2副変速レバー62を低速位置Lに残した状態で第1副変速レバー61を高速位置Hに操作したり、逆に第1副変速レバー61を低速位置Lに残した状態で第2副変速レバー62を高速位置Hに操作したりすると、ワイヤ50が引き操作されるが、以上の2つの状態ではワイヤ50の弛みが消えるだけであり、第1切換レバー21の増速四輪駆動位置4WD2への操作、及び第2切換レバー32の連係位置ONへの操作は、牽制阻止されることなく行える。
【0058】
次に、図12に示すように第1及び第2副変速レバー61,62を高速位置Hに操作すると、前述のようにワイヤ50の弛みが消えた状態から、さらにワイヤ50が紙面右方に引き操作される。これによって、ピン51bが標準四輪駆動位置4WD1(連係解除位置OFF)に保持されるので、この状態では第1切換レバー21の増速四輪駆動位置4WD2への操作、及び第2切換レバー32の連係位置ONへの操作は、ワイヤ50により牽制阻止されて行えない。
【0059】
逆に、第1切換レバー21を増速四輪駆動位置4WD2に操作していると、又は第2切換レバー32を連係位置ONに操作していると、操作板58の作用又はワイヤ51の作用により、ピン51bが図12に示す増速四輪駆動位置4WD2(連係位置ON)に位置して、ピン51bによりワイヤ50が図12の紙面左方にある程度引き操作されている。
【0060】
この状態で第1及び第2副変速レバー61,62の両方を高速位置Hに操作しようとしても、この操作はワイヤ50により牽制阻止されて行えない。この状態から、ワイヤ50の作用に抗して第1及び第2副変速レバー61,62の両方を高速位置Hに操作すれば、ワイヤ50が図12の紙面右方に引き操作されて、第1切換レバー21が増速四輪駆動位置4WD2から標準四輪駆動位置4WD1に操作され、第2切換レバー32が連係位置ONから連係解除位置OFFに操作される。
そして、第1切換レバー21を標準四輪駆動位置4WD1に操作し、且つ第2切換レバー32を連係解除位置OFFに操作していれば、第1副変速レバー61の高速位置Hへの操作、及び第2副変速レバー62の高速位置Hへの操作は、牽制阻止されることなく行える。
【0061】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする為に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
農用トラクタの全体側面図
【図2】
前輪のピットマンアームと前輪変速装置及びサイドブレーキとの連係状態を示す平面図
【図3】
ピットマンアームを直進位置に操作している状態、及び左の設定角度以上に揺動操作した状態を示す平面図
【図4】
第1及び第2変速レバーと第1及び第2切換レバーとの連係状態、並びに牽制機構を示す側面図
【図5】
牽制機構、第1及び第2変速レバー付近の正面図
【図6】
第1変速レバーを5速位置〜8速位置に操作し、第2変速レバーを高速位置に操作した状態での牽制機構のワイヤ付近の側面図
【図7】
第1変速レバーを5速位置〜8速位置に操作し、第2変速レバーを高速位置に操作した状態での牽制機構のワイヤ付近の平面図
【図8】
第1切換レバー、牽制機構のワイヤ及び操作板付近の正面図
【図9】
第1切換レバー、牽制機構の操作板付近の平面図
【図10】
第1変速レバーを4速位置から5速位置〜8速位置に操作した状態での牽制機構付近の平面図
【図11】
別実施例における第1及び第2変速レバーと第1及び第2切換レバーとの連係状態、並びに牽制機構を示す側面図
【図12】
別実施例における第1及び第2変速レバーと第1及び第2切換レバーとの連係状態、並びに牽制機構を示す平面図
【符号の説明】
1 前輪
2 後輪
7 前輪変速装置
18,25 第1連係機構
21 第1切換手段、第1切換レバー
22 操向操作機構
27 サイドブレーキ
29,40,41 第2連係機構
30 サイドブレーキペダル
32 第2切換手段、第2切換レバー
33 ブレーキ操作機構
36 牽制機構
37 第1変速レバー、変速レバー
39b 第1操作部材
45 第2変速レバー、変速レバー
50 ワイヤ
53 第2操作部材
61 第1変速レバー、変速レバー、第1操作部材
62 第2変速レバー、変速レバー、第2操作部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-08 
出願番号 特願平7-142965
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (B60K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鳥居 稔田々井 正吾  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 常盤 務
杉山 豊博
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3443204号(P3443204)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 四輪駆動型作業車  
代理人 北村 修一郎  
代理人 北村 修一郎  

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