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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B63B
管理番号 1120229
審判番号 無効2004-80134  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-14 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-08-31 
確定日 2005-07-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3125142号発明「船舶の動揺軽減装置の制御方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3125142号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3125142号発明に係る出願は、平成10年 6月 1日になされ、平成12年11月 2日にその発明について特許の設定登録がされ、上記特許に対して、平成16年 8月31日付けでJFEソルデック株式会社より特許無効審判が請求された。
そして、当該審判請求に対して、被請求人は、平成16年11月12日付けで答弁書を提出し、続いて、請求人は、平成16年12月17日付けで弁ぱく書を提出した。
その後、平成17年 2月15日付けで当審から職権審理による無効理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定された期間内に被請求人からは何らの応答も無かったものである。

2.本件発明
本件特許第3125142号発明は、平成15年10月 7日付けの訂正2003-39218号審判請求に対する平成15年11月26日付け審決による訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本件特許発明」という。)

「船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、船の横揺角を検知する傾斜センサー(1)と、その情報を解読させると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と、コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて、傾斜センサー(1)から出力される船の横揺れ状況をコントロール部(2)で解読した船の平均揺動角度が、予め設定してある値との比較に基づき、横揺角が小さくタンク内の液体(17)が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は、復原力に悪影響を与えないように空気ダクト(14)のバルブ(15)を強制的に閉じて液体(17)を停止させ、また、横揺れ状況が変わり悪影響を与える恐れがないと判断した場合は、空気ダクト(14)のバルブ(15)を開き液体(17)の移動を自由にするという液体(17)の制動を自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。」

3.引用例
(1)本件特許の出願前である平成 7年10月 3日に頒布された「特開平7-251793号公報」(以下、「引用例1」という。)には、
(a)「【産業上の利用分野】本発明は、船舶の居住区構造や推進機関の水平振動の制振に適用される制振タンクに関する。」(段落【0001】)
(b)「【従来の技術】船舶の制振タンクとしては、従来、図6斜視図及び図7縦断面図に示すように、U字型タンクにおいて左右の竪型タンクの上部にそれぞれ空気室5を設け、そこに圧力空気管11及び弁10を通して圧力空気を封入している。この制振タンク1は、内部流体6の質量と空気室5の空気のばねから構成される流体式動吸振器であり、その振動数は図5に示すように、空気室5の高さH及び空気室5の圧力pで調節することができる。しかしながら、水平面が変化すると、空気室5の圧力pが一定でも制振タンク1の固有振動数は変化してしまう。」(段落【0002】)
(c)「【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事情に鑑みて提案されたもので、制振タンクが付設される制振対象物体が傾動する場合でも、固有振動数を一定に保つことにより制振効果を高める高性能の制振タンクを提供することを目的とする。」(段落【0003】)
(d)「【作用】このような構成によれば、U字型連通タンクにおいて制振対象構造物の傾斜角度を検出し、この検出信号により演算を行い、空気室の圧力の補正量を算出し、これを基にしてU字型制振タンクの両空気室の空気圧を変化させ、制振タンクの固有振動数を一定の値に維持することができる。」(段落【0005】)
(e)「まず、図1〜図3において、本制振タンク1は左右竪型タンク2a,2bと両者の下部同士を連通する横型タンク3から構成されている。そして左右竪型タンク2a,2bの上部に空気室5a,5bを有し、それ以外の部分を流体6で満たしている。また、空気室5a,5bには空気圧調整弁10や圧力空気管11を介して空気源12から所要の空気が供給されることは、図6〜図7に示した慣用の制振タンクの構造と同一である。なお、空気圧調整弁10は三方弁であるが、これに代えて給気圧調整弁10a及び排気圧調整弁10bを採用することも可能である。」(段落【0007】)
(f)「本発明装置においては、制振対象構造9に傾斜計15が配設され、傾斜計15で検出された傾斜角度は演算装置14に入力され、演算された信号により弁作動装置13が調整弁10を操作するようにしている。」(段落【0008】)
(g)「いま、本制振タンク1を船舶のローリングの制振に適用するならば、その左右方向を船体の左右方向に合わせて制振タンク1を船体に搭載する。そうすると、図2のθはローリング角度を示す。・・・」(段落【0009】)
(h)「さて、U字型連通タンク方式の制振タンクが直立状態から傾斜した場合を考える。まず、図2に示すように、U字型の面内方向に水線面4aがローリング角度θだけ傾斜した場合(水線面7a)の固有振動数は・・・直立状態の固有振動数から変化する。・・・すなわち、本明による制振タンク1ではローリング角度θを検出して、・・・図4に示すように、ローリング角度θに関係なく固有振動数ω0 を一定に保持できる。」(段落【0010】)
(i)「【発明の効果】以上述べたように本発明の制振タンクは、船体のローリング,ピッチングにもかかわらず、制振タンクの固有振動数が変化しないので、制振タンクの制振効果を発揮することができ、その信頼性を大幅に高めることができる。本発明は、船舶のみならず、橋梁,展望塔等の陸上建造物の制振にも広く適用することができる。」(段落【0013】)
との記載がある。

したがって、上記の記載事項と【図1】〜【図4】を参照すると、上記引用例1には、
「船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つの竪型タンク(2a,2b)と、これら竪型タンクの底部を連結して流体(6)を左右方向へ移動させる横型タンク(3)と、前記の両竪型タンク上部間に設けられる流体(6)の制動を目的とした遠隔駆動式の空気圧調整弁(10)等の手段を介して連通させる圧力空気管(11)を有し、更に、船の横揺角を検知する傾斜計(15)と、その情報を解読させると共に制御信号を出力する演算装置(14)と、演算装置(14)からの制御信号を基に前記空気圧調整弁(10)を遠隔駆動させる弁作動装置(13)とを具備した船舶の制振タンクの制御方法に於いて、傾斜計(15)で検出された傾斜角度が演算装置(14)に入力され、演算された信号により弁作動装置(13)が空気圧調整弁(10)を操作して、制振タンクの固有振動数を一定に保つ制振タンクの制御方法」についての発明。
が記載されているものと認める。

(2)同じく平成 7年12月13日に頒布された「実公平7-54075号公報」(以下、「引用例2」という。)には、
(a)「【従来の技術】 従来より船舶の横揺れを軽減する為に、U字管型の減揺水槽が備えられている。この減揺水槽は、船舶の横揺れによって左右のタンクの液体が液体移動用ダクトを通って移動する時、その移動が横揺れと時間的なずれを生ずることから、船の瞬発的な復原力を抑え横揺れを軽減するように機能するもので、計画した動揺周期の範囲内で船が動揺している時は充分なる減少効果を発揮できるが、積荷や海気象等の影響により設定した動揺周期の範囲を大きく逸脱した動揺時や、或いは逆に海気象の平穏時で動揺しない時は船の復原性を悪くする。更に荷役中や海難損傷等で一定方向に定常傾斜を生じた場合、傾斜した側へ移動用の液体が片寄り、船体傾斜角も大きくなるからこのような状況では安定性の上から液体の移動を停止させなければならない。また、減揺効果の確認方法は、液体の移動時(以下作動という)と液体の移動の停止時(以下非作動という)に於ける船の横揺れ角度をそれぞれ計測しその値を比較する為、何らかの方法で液体の動きを制御する必要がある。そこで、一般的に図5に示す、タンク21,22の上部にバルブ25を介して連通させる空気ダクト24を設けタンク内部は気密状態とする。作勤(「動」の誤記)時は、空気ダクトのバルブ25を開け、或いは非作動時には同じくバルブ25を閉じる簡単な方法で、空気の流通を制御することにより液体の移動も制御する方法が知られている。・・・」(段落【0002】,図5参照。但し、アンダーラインは当審で付加。)
との記載がある。

4.対 比
本件特許発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「竪型タンク(2a,2b)」,「横型タンク(3)」,「流体(6)」,「空気圧調整弁(10)」,「圧力空気管(11)」,「傾斜計(15)」,「演算装置(14)」,「弁作動装置(13)」,「制振タンク」は、それぞれ、本件特許発明の「ウイングタンク(12a,12b)」,「液体通路(13)」,「液体(17)」,「バルブ(15)」,「空気ダクト(14)」,「傾斜センサー(1)」,「コントロール部(2)」,「開閉機器装置部(3)」,「動揺軽減装置」に相当する。したがって、両者は、
[一致点]
「船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、船の横揺角を検知する傾斜センサー(1)と、その情報を解読させると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と、コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した船舶の動揺軽減装置の制御方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本件特許発明においては、「傾斜センサー(1)から出力される船の横揺れ状況をコントロール部(2)で解読した船の平均揺動角度が、予め設定してある値との比較に基づき、横揺角が小さくタンク内の液体(17)が船の復原力に対し悪影響を与えていると判断した場合は、復原力に悪影響を与えないように空気ダクト(14)のバルブ(15)を強制的に閉じて液体(17)を停止させ、また、横揺れ状況が変わり悪影響を与える恐れがないと判断した場合は、空気ダクト(14)のバルブ(15)を開き液体(17)の移動を自由にする」ものであるのに対して、引用発明においては、「傾斜計(15)で検出された傾斜角度が演算装置(14)に入力され、演算された信号により弁作動装置(13)が空気圧調整弁(10)を操作して、制振タンクの固有振動数を一定に保つ」ものである点。

5.当審の判断
(1)第1に、船舶の横揺れを軽減するために、U字型のタンクを搭載して液体をその中に入れ、船舶の横揺れを検出するセンサー(ジャイロスコープ,傾斜計等)からの信号に基づいて、空気ダクトのバルブを開閉制御することにより、その揺動と船舶の揺れを相殺する技術(ART)自体は従来周知のものである。(例えば、特公昭46-39260号公報,特開昭56-167588号公報,実開平6-40491号公報,実開平7-4291号公報,特開平8-133182号公報等参照。)
(2)そこで、次に上記相違点について検討する。まず、上記引用例2には、従来の技術として、(a)「計画した動揺周期の範囲内で船が動揺している時は充分なる減少効果を発揮できるが、・・・海気象の平穏時で動揺しない時は船の復原性を悪くする。・・・このような状況では安定性の上から液体の移動を停止させなければならない。」こと、(b)「作勤(「動」の誤記)時は、空気ダクトのバルブ25を開け、或いは非作動時には同じくバルブ25を閉じる簡単な方法で、空気の流通を制御することにより液体の移動も制御する方法が知られている」こと、また、(c)「液体の作動時と液体の非作動時に於ける船の横揺れ角度をそれぞれ計測しその値を比較する」ことによって減揺効果を確認することが開示されている。(ここで、引用例2の記載中、「減少効果」とあるのは「減揺効果」と解釈する。)
(3)これより、上記(a)〜(b)の開示事項によれば、少なくとも、「海気象の平穏時で動揺しない時は船の復原性を悪くするから、安定性の上から液体の移動を停止させる、すなわち、空気ダクトのバルブ25を閉じる」こと、また、「充分なる減揺効果を発揮できる時は、空気ダクトのバルブ25を開ける」ことが示唆されていると言える。
(4)また、上記(c)の開示事項によれば、「液体の作動時と非作動時に於ける船の横揺れ角度をそれぞれ計測しその値を比較する」ことによって減揺効果の有無を確認しているものと解されるから、液体の作動時および非作動時における減揺効果の有無と、その時の船の横揺れ角度とが求められることになる。そして、上記のようにして求められた船の横揺れ角度の中から、液体の作動時および非作動時における減揺効果の有無(船の復原力に与える影響)を判断するための所定の角度値が設定され得ることは自明なことである。
(5)更に、船の横揺角につき、上記引用例2においては、単に「横揺れ角度」となっているのに対して、本件特許発明においては、「平均揺動角度」である点でなお一応の相違が認められるが、船の減揺効果の有無を確認するために計測する「揺動角度」が唯1回の計測結果によって決定されることは考え難く、当然に「平均揺動角度」として計測されているとするのが合理的である。仮に、上記引用例2の「揺動角度」が唯1回の計測結果であるとしても、これを「平均揺動角度」に変更することは単なる設計事項に過ぎない。
(6)したがって、引用発明も引用例2に記載の発明も共に船の減揺装置という共通の技術分野に属していることを考慮するならば、上記減揺効果の有無を判断するための所定の角度値をもって、「予め設定してある値」として定義付けた上で、上記引用発明における船舶の動揺軽減装置の制御態様を上記引用例2に開示されている制御態様に変更することにより、上記相違点に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことと認められる。

6.結 論
以上のとおり、本件特許発明は、引用例1ないし2に記載された各発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-12 
結審通知日 2005-05-17 
審決日 2005-05-30 
出願番号 特願平10-187999
審決分類 P 1 113・ 121- Z (B63B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 鈴木 久雄
増岡 亘
登録日 2000-11-02 
登録番号 特許第3125142号(P3125142)
発明の名称 船舶の動揺軽減装置の制御方法  
代理人 吉原 省三  
代理人 中澤 直樹  
代理人 柿内 瑞絵  
代理人 乾 裕介  
代理人 相原 正  
代理人 小松 勉  
代理人 窪田 英一郎  
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