• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1120346
審判番号 不服2002-2330  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-13 
確定日 2005-07-21 
事件の表示 平成 5年特許願第 58386号「系統図面表示方法および図面管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月30日出願公開、特開平 6-274135〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成5年3月18日の出願であって、その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成13年5月28日付け、平成13年9月14日付け、平成14年3月12日付け、及び平成17年4月25日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1及び請求項2に係る発明を「本願発明1」及び「本願発明2」という。)。
「【請求項1】
複数に分岐され、開閉器を介して対象制御負荷設備に連結されている電源系統を複数有する系統図面と各電源系統毎の開閉器を筐体にそれぞれ収納した設備盤及び前記複数の電源系統のいずれか一つに対応した遮断器を筐体に複数収納した、各系統毎の電源盤の地理的配置位置図を含む施設図面の図面情報をディジタル情報化して管理し、前記電源系統を表示装置に表示する系統図面表示方法であって、前記電源盤と設備盤の地理的配置位置を予めファイル装置に登録しておき、前記表示装置に表示されているある遮断器が指定されたとき、当該遮断器を始点として接続関係にある下流方向の電源系統を図形の開閉状態を判定しながら前記図面情報を用いて図形追跡を行い、この電源系統の図形追跡により前記指定された遮断器の操作によって影響を受ける図形を複数抽出すると共に、当該影響を受ける複数の図形の追跡結果に連動して前記ファイル装置を検索し前記電源盤と設備盤の地理的配置位置情報から当該影響を受ける電源系統の電源盤と設備盤を含む地理的配置位置図を前記表示装置に表示し、抽出された電源系統の電源盤と設備盤は前記表示装置に表示されている前記電源盤と設備盤の地理的配置位置図において他の電源系統の電源盤と設備盤と識別して表示されるようにしたことを特徴とする系統図面表示方法。
【請求項2】
複数に分岐され、開閉器を介して対象制御負荷設備に連結されている電源系統を複数有する系統図面と各電源系統毎の開閉器を筐体にそれぞれ収納した設備盤及び前記複数の電源系統のいずれか一つに対応した遮断器を筐体に複数収納した、各系統毎の電源盤の地理的配置位置図を含む施設図面の図面情 報をディジタル情報として格納する記憶手段と、前記記憶手段に格納されている図面情報を表示する表示装置と、前記表示装置に表示されている遮断器に対する操作指令を与える操作入力手段と、前記表示装置に表示されているある遮断器が前記操作入力手段により指定されたとき、当該遮断器を始点として接続関係にある下流方向の電源系統を図形の開閉状態を判定しながら前記図面情報を用いて図形追跡を行い、この電源系統の図形追跡により前記指定された遮断器の操作によって影響を受ける図形を複数抽出する図形追跡手段と、前記図形追跡手段で抽出した当該影響を受ける複数の図形の追跡結果に連動して前記記憶手段を検索し前記電源盤と設備盤の地理的配置位置情報から当該影響を受ける電源系統の電源盤と設備盤を含む地理的配置位置図を検索する図形検索手段と、前記図形検索手段で検索された前記地理的配置位置図を前記表示装置に表示する際に、前記図形追跡手段により抽出された電源系統の電源盤と設備盤は他の電源系統の電源盤と設備盤と識別して表示する表示制御手段とを具備することを特徴とする図面管理装置。」
2.引用刊行物
これに対して、当審において、平成17年2月21日付けで通知した拒絶の理由には、本願出願前に頒布された以下の刊行物が引用されており、各刊行物の記載事項は、「2-1.」乃至「2-4.」に記載のとおりである。
刊行物1:特開昭60-219930号公報
刊行物2:特開昭63-254565号公報
刊行物3:特開昭55-66240号公報
刊行物4:特開平1-270110号公報

2-1.刊行物1
刊行物1(特開昭60-219930号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「電子計算機に配電線しや断器および区分開閉器の論理的な接続関係を記憶させておき、この論理的な接続関係から電子計算機で配電線しや断器,区分開閉器およびそれら相互を連結する電線路からなる配電系統をCRT表示装置に表示する配電線自動表示方式において、電子計算機には配電線しや断器と区分開閉器の論理的な接続関係の他に、これら配電設備の相対的な位置関係も記憶させておき電子計算機で配電系統をCRT表示装置に表示する際は、記憶しておいた前記配電線しや断器と区分開閉器の論理的な接続関係および相対的な位置関係をもとにCRT表示用データを作成する事を特徴とする配電線自動表示方式。」(1ページ左下欄「特許請求の範囲」)
1b.「配電線しや断器(以下FCBと言う。)および線路区分開閉器(以下SWと言い、FCBとSW両方の総称をブランチと言う。)の遠方監視制御と電子計算機(以下CPUと言う。)を組み合わせた配電線自動制御が実用されるになつてきた。その際運転員の判断および制御のための配電線系統表示が必要となり、その有効な表示手段としてCRT表示装置が使用されている。・・・第1図は配電線の代表的な構成例であり、・・・第2図は、第1図の配電線の構成をCPUに記憶させるためのテーブル(以下ノードテーブルと言う。)であり、各ノードに接続されFCBおよびSWのうち電源側を始端ブランチ、負荷側を終端ブランチとして記憶している。・・・第3図は、FCBおよびSWの投入または開放状態(以下、入切状態と言う。)を記憶しているテーブル(以下ブランチテーブルと言う。)である。・・・第4図は、1配電線をCRT表示装置へ表示するためのデータを作成する概略のアルゴリズムである。・・・以下第4図の各ステツプについて説明する。・・・ステツプbにおいて表示しようとする配電線のFCBに隣接する負荷側ノードをCRT上の位置・・・にセツトする。さらにこれを一時記憶するエリアNFにもセツトする。ステツプC(このステツプの詳細なアルゴリズムは第6図のとおりであり、後で詳述する。)においてNFに隣接する負荷側ノードを1つ見いだす。もし、負荷側ノードがなければステツプeへ処理が進む。逆に負荷側ノードが見いだされたら、そのための一時記憶エリアNTへセツトし、ステツプdへ進む。・・・そして負荷側ノードNTを新しくNFにセツトして、そのNFに対して再度ステツプCから処理を続ける。・・・ステツプeにおいて、もし他に分岐のあるノードが見いだされなければ、1配電線全ノードの作業エリアWKへのセツト完了としステツプfの処理へ移行する。・・・次に以下第6図について説明する。この第6図のアルゴリズムは、第4図のステツプCを詳細に説明したものである。ステツプaにおいて、NFに隣接する終端ブランチのうち一番左に定義されたブランチを第2図のノードテーブルから取り出す。・・・終端ブランチが在ればステツプCにおいて、そのブランチの入切状態を第3図ブランチテーブルから判断する。もし、切状態であればそれに接続される負荷側ノードは、存在しないのでステツプaへ戻り同様な処理を行う。もし入状態であればステツプdへ進む。ステツプdにおいてそのブランチを始端ブランチとするノードを第2図ノードテーブルから見いだし、そのノードを負荷側ノードNTにセツトする。」(1ページ右下欄10行〜3ページ左上欄16行)
1c.「本発明は、第2図ノードテーブル、第3図ブランチテーブルの他に第15図の位置データテーブルを使用する。・・・位置データとは・・・あるノードの終端ブランチのうちその始端ブランチと位置的にほぼ水平になるものを基準ブランチとみなし、そのノードにつながる他の終端ブランチが、始端ブランチと基準ブランチを結ぶ線路より上であれば位置データ1,下であれば位置データ0であることを示している。」(5ページ右上欄2行〜11行)
1d.「配電系統の運用は、現場作業と密接な関係があるため設備の認識上地理的な設備配置に近い表示が必要であるが、前記従来システムでは区分開閉器などの相対的な位置関係を表示することができないという欠点があった。・・・本発明は、上記欠点を解決することを目的としてなされたものであり、設備の相対的な位置関係を考慮した配電系統をCRTへ自動表示する配電線自動表示方式を提供することを目的としている。」(5ページ左上欄2行〜11行)

2-2.刊行物2
刊行物2(特開昭63-254565号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
2a.「本発明は水道,ガスの配管系統や電気,電話の配線系統などの施設図面をデイジタル情報化して管理する図面管理装置に関する。・・・例えば特公昭61-9667号公報に記載されているように施設図面をデイジタル情報化して管理することが提案されている。施設図面をデイジタル情報化して管理するにはフアイル装置に記憶されている多数の施設図面(地形図、系統図、シンボル図など)をデイスプレイ装置にモニタ表示して行つている。」(1ページ右下欄13行〜2ページ左上欄10行)
2b.「これらの図形データは・・・階層化されたデータ構造をとり、必要に応じて各階層を重ね合わせ第4図(a)のような図形データにすることができる。」(2ページ右下欄6行〜10行)

2-3.刊行物3
刊行物3(特開昭55-66240号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
3a.「配電線用遮断器、区分開閉器、及びそれら相互を接続する区間配電線路により構成される配電系統に設けた区分開閉器の開閉操作を監視する装置において、遠方監視装置と遠方監視制御装置により常時伝送される配電線用遮断器及び区分開閉器の開閉状態の情報から、配電線用遮断器に接続されている区分開閉器と区間を予め判別しておき、操作卓により区分開閉器の選択が行なわれたとき、その選択の信号により操作されるべき区分開閉器が動作したものと仮定し、その仮定のもとに配電線用遮断器に接続されるべき区分開閉器と区間を新たに判別し、これとさきの現時点での配電線用遮断器に接続されている区分開閉器と区間との差異から、前記区分開閉器を動作させた場合に、開操作のさいは停電となる区間、閉操作のさいは通電となる区間を検出し、その区間のコード信号を表示装置に伝送し、前記停電となる区間または前記通電となる区間を、前記区分開閉器が動作する以前に表示する手段を備えたことを特徴とする電力系統操作監視装置。」(1ページ「特許請求の範囲」)
3b.「本発明は、区分開閉器3-1,3-2,3-3,・・・を開閉操作するとき、その操作により停電または通電となる区間2-1,2-2,2-3,2-4,・・・を事前に検出し、それを表示出力することにより誤操作を防止する電力系統操作監視装置を提供することを、その目的とする。・・・操作卓9も従来方式と同じものではあるが、区分開閉器・・・の選択信号を・・・電力系統操作監視装置10へも伝送し、折り返しその監視装置10から送られてくる停電または通電となる区間・・・の情報を受信し、これを表示出力する機能をもつ。」(2ページ右上欄19行〜右下欄5行)

2-4.刊行物4
刊行物4(特開平1-270110号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
4a.「一般にCRTオペレーションはプラントから入力した各種プロセス量と電子計算機内にあらかじめ記憶されている系統図等固定情報を合成して表示された画面によりプラント状態の監視を行いながらプラント機器を選択し操作するという方法が採られている。又、プラント機器異常時は上記画面内に異常情報を表示したり、」(1ページ右下欄7行〜13行)
4b.「プラント機器配置図を図面データとして配置図画面データテーブル2fに・・・記憶する。」(2ページ左下欄12行〜16行)
4c.「配置図画面データテーブル2fから画面データを取り出すとともに・・・プラント機器を正常なものと異常なものを色替えして出力装置3aに表示する。」(3ページ左上欄5行〜9行)
4d.「これらより異常になったプラント機器名称しかオペレータには提供されていなかったものが第2図に示すように異常プラント機器がプラント内のどこに有るのかオペレータに知らせることができる。又、・・・回路上どこかに異常がある場合でも、・・・その回路はプラントのどこの制御盤内に有るのかがわかるため、CRT表示の回路図をもとにチェックすることも可能となる。」(3ページ右上欄6行〜15行)

3.対比・判断
3-1.本願発明1
刊行物1には、上記「2-1.」の1a.乃至1d.の記載から、以下の各事項が記載されているものと認められる。
(1)配電線しや断器,区分開閉器およびそれら相互を連結する電線路からなる配電線系統をCRT表示装置に表示すること。
(2)配電線しや断器,区分開閉器の論理的な接続関係の他に、配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係も電子計算機に記憶しておき、それらをもとに配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係を考慮した配電線系統表示を行うこと。
(3)配電線系統の表示のために、始端となる配電線しや断器の隣接する負荷側ノード(配電線路)を指定し、途中の配電線しや断器,区分開閉器の入切状態を判断しながら、負荷側の全ての配電線路を見出すための処理を行うこと。
(4)このような配電設備の相対的な位置関係を考慮した配電線系統表示を行うことにより、現場作業に必要な地理的な設備配置に近い表示を行うこと。
したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「配電線しや断器,区分開閉器の論理的な接続関係の他に、配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係も電子計算機に記憶しておき、それらをもとに配電線しや断器,区分開閉器およびそれら相互を連結する電線路からなる配電線系統をCRT表示装置に表示する配電線系統表示方法であって、配電線系統の表示のために、始端となる配電線しや断器の隣接する負荷側ノード(配電線路)を指定し、途中の配電線しや断器,区分開閉器の入切状態を判断しながら、負荷側の全ての配電線路を見出すための処理を行い、配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係を考慮した配電線系統表示を行うことを特徴とする配電線系統表示方法」

本願発明1(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを比較する。
後者の「配電線しや断機」、「区分開閉器」、「配電線系統」、「CRT表示装置」は、前者の「遮断器」、「開閉器」、「電源系統」、「表示装置」に相当する。また、後者の「配電線しや断器の配電設備」、「区分開閉器の配電設備」は、前者の「電源盤」、「設備盤」に相当するものである。また、後者も「配電線しや断機及び区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係」の情報を電子計算機に記憶しており、電子計算機への情報の記憶に当たってファイル装置を用いる必要があるから、これらの配電設備の相対的な位置関係の情報は予めファイル装置に登録されているものと認められる。
また、後者も複数の分岐された配電線系統を有するものと認められ、後者の「始端となる配電線しや断器の隣接する負荷側ノード(配電線路)を指定し、途中の配電線しや断器,区分開閉器の入切状態を判断しながら、負荷側の全ての配電線路を見出すための処理を行い、配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係のデータを考慮した配電線系統表示を行うこと」と、前者の「ある遮断器が指定されたとき、当該遮断器を始点として接続関係にある下流方向の電源系統を図形の開閉状態を判定しながら前記図面情報を用いて図形追跡を行い、この電源系統の図形追跡により前記指定された遮断器の操作によって影響を受ける図形を複数抽出すると共に、当該影響を受ける複数の図形の追跡結果に連動して前記ファイル装置を検索し前記電源盤と設備盤の地理的配置位置情報から当該影響を受ける電源系統の電源盤と設備盤を含む地理的配置位置図を前記表示装置に表示」することとは、後者の「入切状態」、「負荷側」、「配電線路を見出すための処理」が、前者の「開閉状態」、「下流方向」、「電源系統の追跡」に相当すること、後者の「配電設備の相対的な位置関係」も、「配電設備の配置位置」と言えること、後者の配電線系統追跡の始端は配電線しや断器の隣接する負荷側ノード(配電線路)ではあるものの、隣接する配電線しや断器が始端として指定されたことと実質的に同等のことであること、及び、前記した相当関係を勘案すれば、「ある遮断器が指定されたとき、当該遮断器を始点として接続関係にある下流方向の電源系統を各電源系統毎の開閉器の開閉状態を判定しながら系統情報を用いて電源系統の追跡を行い、この追跡により前記指定された遮断器の操作によって影響を受ける電源系統を抽出すると共に、影響を受ける当該電源系統の追跡結果に連動してファイル装置を検索し、抽出された電源系統の電源盤、設備盤の配置位置を考慮した電源系統表示を行うこと」である。
また、後者の配電線系統表示は、電子計算機で行うことから情報をデジタル情報化して管理していることは明らかであり、また、「系統図面表示方法」と言えるものである。
以上より、両者は、
「複数に分岐され、開閉器を介して対象制御負荷設備に連結されている電源系統を複数有する系統と各電源系統毎の設備盤及び各系統毎の電源盤の地理的配置位置を含む情報をディジタル情報化して管理し、前記電源系統を表示装置に表示する系統図面表示方法であって、前記電源盤と設備盤の配置位置を予めファイル装置に登録しておき、ある遮断器が指定されたとき、当該遮断器を始点として接続関係にある下流方向の電源系統を各電源系統毎の開閉器の開閉状態を判定しながら系統情報を用いて電源系統の追跡を行い、この追跡により前記指定された遮断器の操作によって影響を受ける電源系統を抽出すると共に、影響を受ける当該電源系統の追跡結果に連動してファイル装置を検索し、抽出された電源系統の電源盤、設備盤の配置位置を考慮した電源系統表示を行うことを特徴とする系統図面表示方法。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者が、開閉器を筐体にそれぞれ収納した設備盤、遮断器を筐体に複数収納した電源盤設備盤及び電源盤の地理的配置位置図を含む施設図面を有し、電源盤と設備盤の地理的配置位置をファイル装置に登録しているのに対し、後者は、配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係を電子計算機に記憶してはいるものの、設備の地理的配置位置図を含む施設図面に関する記載がなく、また、筐体と電源盤、設備盤に関する記載もないこと。
[相違点2]
系統の接続関係の追跡に当たって、前者が図形の開閉状態を判定しながら図形追跡を行っているのに対し、後者は図形追跡についての記載がない点。
[相違点3]
電源系統追跡の始点となる遮断器の指定を行うのに、前者が表示装置に表示されている遮断器を指定しているのに対し、後者にはこの点の明記がない点。
[相違点4]
前者が、抽出された電源系統の設備盤、電源盤を地理的配置位置図において他の電源系統のものと識別して表示しているのに対し、後者は配電線しや断器,区分開閉器の配電設備の相対的な位置関係を考慮した配電線系統表示を行ってはいるものの、抽出された電源系統の設備盤、電源盤を地理的配置位置図において他の電源系統のものと識別して表示している点に関しては記載がない点。
上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
電気の配線系統について、系統図の外、地形図を含む施設図面をフアイル装置に記憶しデイジタル情報化して管理することは周知である(例えば、刊行物2[特に、記載事項2a.]、参照)。また、開閉器や遮断器を筐体に収納した電源盤、設備盤は従来周知のものであり、開閉器や遮断器を筐体に収納するに当たり、それぞれ収納するか、複数収納するかは当業者が必要に応じて適宜選択しうるところと認められる。

[相違点2]について
図形追跡自体は、本願明細書中でも言及されているように従来から知られており(段落【0017】に、「高速図形作成部111の処理は特開昭63-6671号公報に詳細に述べられているので詳細説明を省略する。」と記載されている。)、系統の接続関係の追跡に当たって、このような図形追跡の手法を適用することは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。また、図形の開閉状態の判定を行う点については、刊行物1記載の発明も、図形追跡の手法は用いてはいないものの、開閉器の開閉状態を判定しながら系統追跡を行うものであり、本願発明1のように図形追跡の手法を用いて電源系統の追跡を行う場合には、開閉器の開閉状態の判定を図形の開閉状態を判定することにより行うことが合理的であるから、この点は、図形追跡の手法を採用した場合の系統追跡に必要な事項を単に記載した程度のことと認められる。

[相違点3]について
刊行物3に、表示機能を有する操作卓により電源系統の接続関係を追跡するための始点となる区分開閉器を選択することが示されており、また、表示画面上の図形で表された機器を指定して処理を行うことも通常行われているところであるから(例えば、特開平3-99369号公報[特に、「図形領域、103中に表示中の特定の図形をカーソルで指示すれば、この特定の図形も強調表示対象となる。」(4ページ左上欄1〜3行)、「カーソルで指示した図形をみて図形ファイル112をサーチして、そのファイル上のどの図形であるかを調べ、次いで階層インデックステーブルを調べて・・・輝色・非輝色テーブル110を作成する。」(4ページ左下欄17行〜右下欄3行)等の記載。]、特開平2-76075号公報[特に、「ディスプレイ装置の表示画面上で任意図形を指定すると該指定図形および該当の関連図形も同時に他と判別表示できる図面管理装置を提供するにある。」(2ページ右上欄15行〜18行)等の記載。]参照。)、この点は、このような周知事項に基づいて当業者が容易に推考しうる程度のことと認められる。

[相違点4]について
系統の対象となる機器等をその地理的配置位置図に他と識別して表示することは、従来周知である(例えば、刊行物4[特に、「4c.」、「4d.」の記載。]、特開平2-239280号公報[特に、「2.表示画面に表示された大規模プラントの系統図を見て各構成機器の操作状態を指定することで当該機器系統における動作をシミュレートする大規模プラント学習解析用小型シミュレータにおいて、大規模プラントの系統図が表示され操作する機器を操作者が指定したとき、当該機器の操作場所を示すデータも表示することを特徴とする大規模プラント学習解析用小型シミュレータの表示方法。3.請求項2において、指定された機器の操作場所を示すデータを表示するとき、合わせてその機器の設置場所を示すデータも表示することを特徴とする大規模プラント学習解析用小型シミュレータの表示方法。」(1ページ「特許請求の範囲」)等の記載。]、特開平4-205181号公報[特に、「断水区域検索部107では、図面上の工事対象管を含み弁により閉領域となる弁及び管路を検索し表示編集部110にて弁管路を強調表示させる。断水区域検索部107はまた強調表示している管路に接続されている需要家を・・・図面ファイルから図面検索部106により検索・・・この検索された需要家を工事の断水需要家とし、表示編集部110により管路図上において家枠を強調表示」(3ページ右上欄12行〜左下欄2行)等の記載。]等、参照。)。
したがって、本願発明1のように抽出された系統の機器を地理的配置位置図において他の系統のものと識別して表示することは、上記のような周知事項に基づいて当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。

そして、本願発明1による効果も、刊行物1乃至刊行物4の記載及び周知事項から当業者が容易に予測しうる範囲のものにすぎない。
したがって、本願発明1は、刊行物1乃至刊行物4記載の発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成17年4月25日付け意見書において、本願の請求項1に係る発明は、「影響系統に該当する電気設備がどこに位置しているかを表示することにより、影響現場へすぐに行ける」という特有の効果を奏する旨主張しているが、上記刊行物1にも「配電系統の運用は、現場作業と密接な関係があるため設備の認識上地理的な設備配置に近い表示が必要である」旨記載され(「1d.」の記載参照。)、影響現場の地理的配置の表示が重要であることは示唆されており、また、例えば、上記した特開平4-205181号公報に示される施設図面をディジタル情報化して管理する図面管理装置も関係する設備を強調表示する等、該当設備の設置場所の表示を行い、影響現場の位置を表示するものと言えるものであるから、設置位置の表示に伴う上記効果も当業者の予測を超えた格別のものと言うことはできず、上記請求人の主張は採用できない。

3-2.本願発明2
本願発明2は、本願発明1と単にカテゴリーが相違するのみで実質的に同等のものであるから、上記本願発明1と同様の理由により、刊行物1乃至刊行物4記載の発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1及び本願発明2は、刊行物1乃至刊行物4記載の発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-23 
結審通知日 2005-05-24 
審決日 2005-06-06 
出願番号 特願平5-58386
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 福田 裕司
後藤 時男
発明の名称 系統図面表示方法および図面管理装置  
代理人 高田 幸彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ