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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1120650
審判番号 不服2003-1585  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-27 
確定日 2005-08-03 
事件の表示 平成11年特許願第 10844号「誤操作防止方法及び誤操作防止のためのソフトウエア・プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月28日出願公開、特開2000-207092〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】 本願は、平成11年1月19日の出願であって、その発明を特定するために必要な事項は、平成14年6月19日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたものであって、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものと認められる。
「アプリケーション・ウインドウを表示する表示画面と、前記表示画面上の位置を指定するポインティングデバイスとを備え、マルチウインドウ環境をサポートするオペレーティング・システムの下で動作するコンピュータによって制御される装置において前記アプリケーション・ウインドウに対する誤操作を防止する誤操作防止方法であって、
(a)前記アプリケーション・ウインドウよりも前にあるとき前記アプリケーション・ウインドウに対する前記ポインティングデバイスによるオペレーション入力を抑止する透明ウインドウを生成し、この透明ウインドウを前記アプリケーション・ウインドウよりも後ろに重なるように位置付けておくステップと、
(b)前記アプリケーション・ウインドウに対する前記ポインティングデバイスを用いた所定のオペレーション入力が検出されたことに応答して、前記透明ウインドウを前記アプリケーション・ウインドウよりも前に移動させるステップとを含む誤操作防止方法。」

【2】 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特公平5-52527号公報(以下「引例1」という。)には以下のことが記載されている。
(イ)1 CRT画面をマトリックス状に分割してその画面前方に配置きれた複数個の透明タッチキーからなるタッチパネルと、前記タッチパネルの各透明タッチキーを特定するキーパターンを前記CRT画面に表示するキーパターン表示手段と、前記CRT画面に表示したキーパターン中の何れかの透明タッチキーが押されたときそのキー表示を一定時間消去してそのキーによる入力を禁止するキー入力禁止手段とを有してなる、タッチパネルを備えたキー入力装置。
2 前記キーパターン表示手段が、背景と異なる色でキーパターンを表示するとともに、前記キー入力禁止手段が、タッチキーの押し下げによりキー入力されたと判断したとき、キー入力されたキーの表示色を背景色に変えてキー表示を消去するようにした特許請求の範囲第1項記載のタッチパネルを備えたキー入力装置。(特許請求の範囲)
(ロ)この発明は、CRT画面をマトリックス状に分割してその画面前方に配置された複数個の透明タッチキーからなるタッチパネルと、前記タッチパネルの各透明タッチキーを特定するキーパターンを前記CRT画面に表示するキーパターン表示手段と、前記CRT画面に表示したキーパターン中の何れかの透明タッチキーが押されたときそのキー表示を一定時間消去してそのキーによる入力を禁止するキー入力禁止手段とを有することを特徴とする。(第2頁左欄8〜17行)
(ハ)この発明によれば、タッチパネルの何れかの透明タッチキーが押し下げられたとき、操作されたタッチキーのキー表示を消去するので、キーインしたキーを確実に確認することができ、しかもそのキーによる入力を禁止するので一つのキーが続けて操作されることなく、チャタリングが発生するのを防止することができる。(第2頁左欄18〜24行)
(ニ)次に上記タッチパネル入力部40による入力処理の具体的動作につき第4図〜第6図を参照して説明する。
ステップn1(以下、ステップniを単にniという。)にてまずCRT3にデータ入力要求の案内文言とキーパターンの表示を行う。出金取引においてCRT3に表示される表示内容を第5図に示す。画面の中ほどに横一列にテンキー51が表示され、下段に「取消」キー等の操作キー52が表示される。これらのキ-の表示の間にキーインしたデータを表示する入力データ表示部50も設けられている。このようなキーパターンの表示を見て、操作者が「1」キーを押すと、タッチパネル4による入力有りと判断する(n2)。「1」キーは位置4,Aのタッチスイッチに対応するので、タッチパネル制御部44を介してそのタッチスイッチによる入力信号をCPU41に取り込む(n2)。CPU41はその入力信号をメモリのアドレスに変換する(n3)。続いて、第3図のキー位置メモリM0〜M41等のうち、上記アドレスに該当するメモリを参照し、入力操作されたタッチスイッチに相当する位置のキーの有無を判断する(n4)。上記アドレスに該当するキーがあるときは、「1」キーの入力と判断してn5に進む。そして、タッチパネル4からの入力禁止命令をタッチパネル制御部44に出すとともに、「1」を入力データ表示部50に表示させる。さらに、「1」キーの文字色と文字背景色を、画面上にバックと同じ色にリフレッシュRAMで書き換える。この表示色の書き換えによって第6図に示すように、「1」キーの表示はバックと同じになり画面上から消える。上記のようにして、タッチパネル4によるキー操作が行われたとき、直ちに操作されたキーの表示を消去するとともにそのキーによる入力を禁止するため、操作者によるキー入力の確認を確実に行わせ、これによってキー入力操作の確実性が増し、また同一キーの二度押し等がなくなってチャタリングの発生も防止することができる。画面上から消去したキーによる入力を禁止した後から一定時間(例えば100ms)経過したときは (n6)、CUP41はタッチパネル4からの入力許可命令をタッチパネル制御部44に出すとともに、画面上から消去した「1」キーに対応する文字色と文字背景色を復元させる(n7)。(第3頁左欄4行〜同頁右欄16行)

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-149525号公報(以下「引例2」という。)には以下のことが記載されている。
(ホ)この方法では、ロックを必要とする画像の特定領域に重ね合わせるようにロック用ウインドウを表示する。この場合、ロック用ウインドウ以外の領域にカーソルを移動させて所定の入出力処理を行うと、その画像の加工や命令の入出力が可能となる。しかしながら、ロック用ウインドウ上にカーソルを重ねて操作しても、その操作命令はロック用ウインドウの下にある画像についての処理とは見なされず、その特定領域に限ってデータ入出力処理が禁止される。(段落0008)
(ヘ)図4において、ステップS2でロック用ウインドウ12の生成が行われる。これは図1に示したロック用ウインドウ表示制御部13によって行われる。この動作自体は、マルチウインドウシステムにおいて一定の領域に新たなウインドウを開く操作とまったく同様である。これによって、ロック用ウインドウ12は、予め指定された特定領域11の部分を覆ってその部分の画像4を見えなくする。その結果、ロック用ウインドウ12の上にカーソル5を重ねてマウス3のボタンをクリックしても、その命令はロック用ウインドウ12に関するものとして処理され、その下側にある画像4への入出力は禁止される。(段落0015、図1、4)
(ト)図5に本発明の実施態様説明図を示す。本発明は、例えば次のような各種の態様で実施することが可能である。例えば、図5(a)にはスクリーン全体のロックを行った例を示す。即ち、この図に示すように、ディスプレイ1のスクリーン全体にロック用ウインドウ12を表示する。このようにすれば、従来と同様ディスプレイ1に表示される一切の画像について入出力処理が禁止される。(段落0017、図5(a))
(チ)また、図5(b)には特定のウインドウのロックを行った例を示す。即ち、この図には、例えば3個のウインドウ16-1、16-2、16-3が表示されている。これらの内の1つのウインドウ16-3の上にちょうど同一の大きさのロック用ウインドウ12を重ね合わせる。これによって、ウインドウ16-3を表示して処理が行われるアプリケーションについて、そのデータ入出力処理が禁止される。(段落0018、図5(b))

さらに、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-177466号公報(以下「引例3」という。)には以下のことが記載されている。
(リ)ウインドウ描画部18は、ウインドウの表示情報を生成し、マルチウインドウ制御部12からの指示により非透明モードと半透明モードを切り替える非透明モード・半透明モード切替部13と、非透明モード・半透明モード切替部13によって切り替えられる通常の非透明モードの描画処理を行う非透明モード描画部14と、ウインドウを半透明に描画する半透明モード描画部15を有している。
非透明モードは、上部にあるウインドウによって、下部にある画像のウインドウの重なる部分を覆い隠して表示するモードであり、半透明モードは、上部にあるウインドウによって下部にある画像の表示を妨げることなく上部のウインドウと下部にある画像を混合して表示するモードである。
図3は本発明の一実施の形態におけるウインドウ表示方法の処理の流れを示すフローチャートであり、図4はウインドウ表示の例を示す図、図5は非透明モード・半透明モードの例を示す図である。(段落0023、0024、0025、図5)
(ヌ)次に、表示情報の種類に応じて半透明化パラメータを決定し(ステップS16)、この半透明化パラメータを用いて、半透明モード描画部15は、ステップS14で算出した領域を半透明モードで描画する(ステップS17)。
半透明合成の手法としてはαブレンディングを用いることができる。ディスプレイの画素毎にブレンド比率α(0≦α≦1)をブレンド比率バッファに記憶しておき、ブレンド比率バッファから画素毎にブレンド比率αを読みだして、2つのウインドウの画素A、Bを、
α×A+(1-α)×B
にしたがって、半透明モード描画部15で描画する。半透明化パラメータは上記ブレンド比率αである。
ステップS15の処理において分類したそれぞれのウインドウの表示内容(文字情報、図形情報、自然画像)の組み合わせに従い、予め定められたブレンド比率αを用いて描画を行う。(段落0035、0036、0037)

【3】 そこで、請求項1に記載された発明と引例1に記載された発明とを比較すると、引例1の「CRT画面」、「タッチパネル」は請求項1の「表示画面」、「ポインティングデバイス」に相当する。また、請求項1に記載された発明と引例1に記載された発明は共に、入力を抑止して誤操作を防止する点で共通するから、両者は、
「表示画面と、前記表示画面上の位置を指定するポインティングデバイスとを備え、オペレーティング・システムの下で動作するコンピュータによって制御される装置において誤操作を防止する誤操作防止方法であって、
前記ポインティングデバイスを用いた所定のオペレーション入力が検出されたことに応答して、入力を抑止するステップを含む誤操作防止方法。」である点で一致し、
(a)表示画面で表示され、誤操作を防止するために入力を抑止されるものが、請求項1では、マルチウインドウ環境をサポートするオペレーティング・システムの下で動作するアプリケーション・ウインドウであるのに対して、引例1はキーパターンである点、
(b)入力抑止が、請求項1では後ろに重なるように位置付けられた透明ウインドウを前に移動させて誤操作の防止を行うのに対して、引例1はキー表示色を背景色と同じに表示してキー表示を消去し、キー入力を禁止する点、で相違する。

【4】 次に、この相違点について検討する。
(a)の相違点について
表示画面にマルチウインドウ環境をサポートするオペレーティング・システムの下でのアプリケーション・ウインドウを表示させ、入力箇所とすることは、引例2にも示されるごとく周知技術であり、そして、引例1には、表示画面に表示される入力箇所として入力部分そのものであるキーパターンを表示し、それ全体を入力抑止箇所とすることが示されているから、表示画面の入力箇所としてアプリケーション・ウインドウを表示画面に表示し、アプリケーション・ウインドウ全体を入力抑止箇所とすることは当業者が必要により適宜なしうるものと認められる。
(なお、引例1の表示画面に表示されるキーパターンの各々のキーが、それぞれアプリケーション・ウインドウと解することができると、このときには、マルチウインド環境でのアプリケーションウインドウに関する相違点は実質的に相違していないものとなる。)
(b)の相違点について
引例2には、ウインドウの前にロック用ウインドウを生成して所定の間入力させないことが示されており、また、重なっているウインドウを前後させて前のウインドウの入力を有効なものとし、後ろのウインドウの入力を無効なものとすることは周知技術である。そして、重ねられたウインドウの前のウインドウを半透明とすること(なお、本願の発明も「透明」には「半透明」も含むものとして定義している(段落0012))は引例3に示されているごとく周知技術であって、後ろのウインドウを見る必要性により適宜採用される事項であるから、これらの周知技術を組み合わせ、後ろの入力抑止のためのウインドウを透明ウインドウとし前に移動させて入力の抑止を行うことに格別困難性を要しないものと認められる。
(なお、仮にウインドウを半透明を含まず透明のみとして、透明ウインドウを前に移動するステップとするということは、単に、入力箇所に変化がなく、表示状態も変化せずに入力禁止とするステップとして当業者に自明の技術を表現しているものであり、本願の発明はこの自明の技術を用い、入力を禁止していることにすぎないものと解せられる。そうすると、なおのこと、引例1に示される、入力を禁止することから格別困難性を要する事項とは認められない。)

【5】 したがって、請求項1に記載された発明は、引例1乃至3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-02 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2005-03-22 
出願番号 特願平11-10844
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 植松 伸二
東森 秀朋
発明の名称 誤操作防止方法及び誤操作防止のためのソフトウエア・プログラムを記録した記録媒体  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 上野 剛史  
代理人 坂口 博  

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