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審決分類 審判 全部無効 その他 訂正を認める。無効としない A61K
管理番号 1121867
審判番号 無効2003-35217  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-07-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-29 
確定日 2005-03-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3250802号発明「脊椎動物における外因性ポリヌクレオチド配列の発現」の特許無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

国際出願 平成2年3月21日
(外国語特許出願、パリ条約による優先権主張;
1989年3月21日 米国、1990年1月19日 米国)
設定登録(特許第3250802号) 平成13年11月16日
異議申立て(異議2002-71870) 平成14年7月29日
審判請求(無効2003-35208) 平成15年5月23日
審判請求(無効2003-35217) 平成15年5月28日
訂正請求(異議2002-71870) 平成15年5月29日
異議決定(異議2002-71870) 平成15年7月11日
訂正請求(無効2003-35208) 平成15年12月12日
訂正請求(無効2003-35217) 平成15年12月12日
併合審理通知(無効2003-35208、無効2003-35217)
平成16年9月2日

2.訂正について

本件無効審判請求の手続きの継続中に、異議2002-71870において特許3250802号特許明細書についての訂正請求がなされ、異議の決定において当該訂正が認容され、確定している。その内容は設定登録時の特許請求の範囲を別紙のとおりに訂正したものであり、本件無効審判請求事件においてなされた平成15年12月12日付けの訂正請求書における訂正(以下、本件訂正という。)は、その時点における特許明細書(平成15年5月29日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書)を訂正するものである。


イ.本件訂正の内容

a.特許請求の範囲の請求項1の
「・・・前記ポリヌクレオチドは、DNAプラスミドであり、前記脊椎動物の細胞内で非複製性であり、前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織にインビボで導入されるとき、前記脊椎動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療遺伝子生産物は必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される・・・」を、
「・・・前記ポリヌクレオチドは、DNAプラスミドであり、前記脊椎動物の細胞内で非複製性であり、前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織の間質的空間にインビボで、製薬的に許容される液体の担体とともに、導入されるとき、前記脊椎動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療遺伝子生産物は必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される・・・」に、
訂正する。

b.特許請求の範囲の請求項5を削除する。

c.特許請求の範囲の請求項6を削除する。

d.特許請求の範囲の請求項16を削除する。

e.特許請求の範囲の請求項19「・・・前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリベプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される・・・」を、
「(請求項16)・・・前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリぺプチドが必要な前記哺乳動物の組織の間質的空間にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される・・・」に、
訂正する。

f.特許請求の範囲の請求項20「・・・前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリぺプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリぺプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される・・・」を、
「(請求項17)...前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織の間質的空間にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される・・・」に、
訂正する。

ウ.訂正の適否に対する判断
(目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張変更の存否)

訂正事項aは、請求項1においてポリヌクレオチド(DNAプラスミド)の導入される部位を「組織」から「組織の間質的空間」に限定し、さらに「製薬的に許容される液体の担体とともに導入される」としたものであり、製薬的に許容される液体の担体を伴っての間質的空間へのポリヌクレオチドの導入は、特許明細書(平成15年5月29日付訂正請求書に添付された訂正明細書)の第9頁下から2行目〜第10頁第1行、第17頁下から3行目〜第18頁第3行、第24頁第2行〜第9行等に記載されている。
訂正事項e、fについては、いずれも「組織」を「組織の間質的空間」に限定するものであり、訂正事項b〜dについては請求項5、6、16を削除するものである。
そうすると、本件訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条第2項第1号、同法第134条第5項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明

上記のとおり本件訂正は認容されるものであるから、本件特許明細書(平成15年12月12日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書)の特許請求の範囲の請求項1〜36のうち請求項1、16、17は以下のとおりのものである。(請求項2〜15は請求項1を、請求項18〜36は請求項16又は17を実質的に引用して記載したものであるからここでは摘記を省略する。)

【請求項1】
治療または免疫原性処置のため脊椎動物の身体の組織に直接投与するための医薬であって、
脊椎動物の細胞において治療遺伝子生産物を作動的にコードする非統合性でかつ非感染性であるポリヌクレオチドを有効成分とし、
前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、
前記ポリヌクレオチドは、DNAプラスミドであり、前記脊椎動物の細胞内で非複製性であり、
前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織の間質的空間にインビボで、製薬的に許容される液体の担体とともに、導入されるとき、前記脊椎動物の細胞内に取り込まれ、
かつ前記治療遺伝子生産物は必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。

【請求項16】
治療または免疫原性処置のため哺乳動物の組織に投与するための医薬であって、
哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと、
低張液の担体および等張液の担体よりなる群から選ばれた製薬的に許容される液体の担体とからなり、
前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、
前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、
前記ポリヌクレオチドは、前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、
前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織の間質的空間にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、
かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。

【請求項17】
治療または免疫原性処置のため哺乳動物の組織に投与するための医薬であって、
哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと、
低張液の担体および等張夜の担体よりなる群から選ばれた製薬的に許容される液体の担体とのみからなり、
前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、
前記ポリヌクレオチドは、前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、
前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織の間質的空間にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、
かつ前記治療ポリベプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。

4.本件特許の無効について

4-1 当事者の主張

4-1-1 請求人の主張

両無効審判請求事件は、当事者の主張が実質的に同じであるから、以下まとめて記載する。

請求人パウダージェクトファーマシューテイカルズ ピーエルシー及び請求人グラクソ・グループ・リミテッドは「特許第3250802号の全請求項に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、それぞれ以下の証拠を提出して、本件特許の全請求項に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲若しくは図面の説明及びこれらの書類の出願翻訳文若しくは国際出願日における国際出願の図面に記載されていないから、本件特許は旧特許法第184条の15第1項に該当し、無効とすべきであるとし、その具体的理由を次のように主張している。

外国語特許出願に係る本件特許の国際出願日における国際出願であるPCT/US90/01515(国際公開WO90/11092)及びその出願翻訳文(特願平2-505276;特表平4-504125号公報)は、その請求の範囲、発明の背景、発明の要約、発明の詳細な説明および実施例からみて、本質において、2つの別の実施態様、すなわち裸のポリヌクレオチドの投与及びリポソームを用いるポリヌクレオチドの投与に関するものである(リポソームを用いるポリヌクレオチドの投与については、分割出願(特願2000-317778;特開平2001-158751)がされている)。
国際出願の明細書の記載によれば、本件発明の実施には「裸のポリヌクレオチド」の存在は不可欠である。裸のポリヌクレオチドは、国際出願の明細書の発明の詳細な説明中に定義されている。したがって、本件発明の実施に不可欠である裸のポリヌクレオチドは、本件特許の請求項中でも同じ意味を有しなければならない。すなわち、上記裸のポリヌクレオチドの定義に従い、本件特許の各請求頃において、ポリヌクレオチドは細胞内への侵入を容易にするために作用するいかなる運搬用媒介物からも自由であり、かつトランスフェクションを促進するいかなる物質からも自由であると特定されねばならない。
しかしながら、各請求項は、裸のポリヌクレオチドに言及していないし、また各請求項はポリヌクレオチドを細胞内への侵入を容易にするために作用するいかなる運搬用媒介物からも自由であり、かつトランスフェクションを促進するいかなる物質からも自由であるとして定義されていない。
また、非感染性、非統合性という国際出願日における国際出願の明細書や出願翻訳文に記載のない用語が使用されている。本件特許の各請求項に記載された発明は、もはや裸のポリヌクレオチドに関するものではない。
さらに、W090/11092は、裸のポリヌクレオチドの組織の間質空間への投与のみを具体的に記載しているに過ぎないが、この点が本件特許の各請求項の特徴的要素とされていない。
請求項5、6(設定登録時)は「改善に役立つ」又は「防御性の」免疫応答誘導物質に関するが、W090/11092には、改善に役立つ免疫応答誘導物質または防御製麺液応答誘導物質について触れるところがないから、該請求項に記載された発明はW090/11092に記載された発明でない。

(1)無効2002-35208において請求人パウダージェクトファーマシューテイカルズ ピーエルシーが提出した証拠

・甲第1号証 特許第3250802号公報
・甲第2号証 国際公開W090/11092
・甲第3号証 特表平4-504125号公報
・甲第4号証 Benvenisty et al,PNAS 83,9551‐9555,1986
・甲第5号証 Kawai et al,Molecular andCellular Biology,4,
1172‐1174,1984
・甲第6号証 特表平5-503841号公報
・甲第7号証 Farber et al, Biochimica et Biophysica Acta,
390,298‐311,1975
・甲第8号証 Maclauglin et al,J.of Controlled Release,56,
259‐272,1998
・甲第9号証 Appel et al,PNAS 85,7670‐7674,1988

(2)無効2003-35217において請求人グラクソ・グループ・リミテッドが
提出した証拠

・甲第1号証 国際公開W090/11092;(1)の甲第2号証と同一
・甲第2号証 特表平4-504125号公報;(1)の甲第3号証と同一
・甲第3号証 特許第3250802号公報;(1)の甲第1号証と同一
・甲第4号証 欧州特許第465529号明細書についての異議決定書

4-1-2 被請求人の主張

「特許第3250802号の特許無効審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の点を挙げて、本件特許に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書及びこれらの書類の出願翻訳文に実質的に記載されていると主張している。
請求項1、16は「ウイルス粒子、リポソーム調製物、・・を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず」という特定により、細胞内にポリヌクレオチドを導入することを促進する(又は細胞内への侵入を容易にする)全ての物質は訂正後の請求項中に記載された医薬から除外されるから、国際出願明細書及びその翻訳文(特表平4-504125号公報)中に定義された「裸のポリヌクレオチド」と等価である。
「非統合性、非感染性」については、国際出願の明細書及び翻訳文に支持された記載である。
その他の請求人が指摘する無効理由は訂正によりすでに回避されている。

被請求人が提出した証拠

・乙第1号証 生化学辞典第2版 株式会社東京化学同人
1990年11月22日発行
p.929「トランスフェクション」の項
・乙第2号証 LEWIN,B.,GENES,John Wiley & Sons Inc.
(1983)p.677
・乙第3号証 異議2002-71870についての平成15年7月11日付け
異議決定書

4-2 判断

4-2-1 訂正発明において使用される「ポリヌクレオチド材料」
について

(1)「裸のポリヌクレオチド」と同義であるか否かについて

本件の国際出願日における国際出願の明細書の出願翻訳文(以下、翻訳文として特表平4-504125号公報を用い、甲第3号証と称する。)中には「裸のポリヌクレオチドの材料」につき以下の記載がある。

「ポリヌクレオチドの材料
本件発明の方法に従い使用される裸のポリヌクレオチドの材料は DNA およびRNA の配列または治療上有益な適用を有するポリペプチドをコードする DNAおよびRNA配列を含む。これらのポリヌクレオチドの配列は、細胞内への侵入を容易にするために作用するいかなる運搬用媒介物からもそれらが自由であるという意味で裸なのであり、たとえばポリヌクレオチドの配列は、ウイルスの配列、特に遺伝情報を運び得るいかなるウイルスの粒子からも自由である。それらはトランスフェクションを促進するいかなる物質、たとえばリポソームの製剤、リポフェクチン等の荷電された脂質または CaPO4等の沈殿する因子から同様に自由でありかつこれらに対して裸である。」(甲第3号証p8左上欄下23行〜同頁右上欄11行 以下、「記載a」という)

記載aは、「裸のポリヌクレオチドの材料」に関し、前半の「ポリヌクレオチドの配列は、細胞内への侵入を容易にするために作用するいかなる運搬用媒介物からもそれらが自由であるという意味で裸なのであり、たとえば・・・ウイルスの配列、特に・・・ウイルスの粒子からも自由である。」と後半の「それらはトランスフェクションを促進するいかなる物質、たとえばリポソーム・・・荷電された脂質または CaPO4等の沈殿する因子から同様に自由であり・・・裸である。」からなっている。
「トランスフェクション」の語は、乙第1号証によれば「(1)細胞内に直接DNAを導入する手法、あるいは(2)細菌に裸のファージDNA(またはRNA)を感染させ、ファージを増殖させること」を意味するが、翻訳文に記載の発明は動物細胞へのポリヌクレオチド導入を意図したものであり、記載aの「トランスフェクション」が上記(1)の意味で使用されていることは明らかであるから、「トランスフェクションを促進する物質」とは、細胞内に直接ポリヌクレオチドを導入する手法を促進する物質であって、記載a前半の「(ポリヌクレオチドの)細胞内への侵入を容易にするために作用する運搬用媒介物」をも包含するものと解される。
そうすると、記載aの前半部分は、特にポリヌクレオチド配列内部に由来するトランスフェクションを促進する物質としてウイルスの配列やウイルス粒子等の運搬用媒介物を記載し、後半部分はそれ以外の(ポリヌクレオチド配列に由来しない)トランスフェクションを促進する物質を記載したものということができる。

運搬用媒介物が「トランスフェクションを促進する物質」であることは、翻訳文中において
「ある応用においては、特に生体外のトランスフェクションでカチオン性脂質が細胞のトランスフェクションを容易にするために使用され得ることが最近示されてきた。カチオン性脂質に基づくトランスフェクション技術は、他の方法より好ましく、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン・・・・法より能率的でかつ便利であり、かつ前述のように、レトロウイルス仲介のトランスフェクションはオンコジーン活性化の結果または他の不所望な結果をもたらすホスト細胞ゲノムにおける統合現象に通じ得る。」(甲第3号証p15右上欄4〜13行)
とあるように、カチオン性脂質、リン酸カルシウム、DEAEデキストランと並びレトロウイルス(運搬用媒介物に相当する)もトランスフェクションを起こさせるものとして記載されていることからも首肯しうる。

一方、本件特許の請求項1、16においては、「前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず・・」と記載されている。
上記の「ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む、トランスフェクションを促進する作用を有する物質と組み合されておらず」における「ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む」は、「トランスフェクションを促進する物質」を修飾する関係にあり、具体的にどのような物質が含まれるかを例示したものであって、それに続く「トランスフェクションを促進する作用を有する物質と組み合されておらず」は、文字通り、例示された物質はもちろんのこと、それ以外のトランスフェクションを促進する物質とも組合されていないことを意味するものであることが明白である。
そうすると、「トランスフェクションを促進する物質」として、ポリヌクレオチドの配列内部に由来するものも由来しないものも例示した上で、「トランスフェクションを促進する物質と組み合わされておらず」と特定しているのであるから、上記した翻訳文における「裸のポリヌクレオチド」と同義であるということができる。

請求人グラクソ・グループ・リミテッドは「トランスフェクションを促進するいかなる物質も伴っていないということと、細胞内への侵入を容易にするためのいかなる配達用媒介物をも伴っていないこととは明らかに相違し、ポリヌクレオチドを拡張している。」とし、請求人パウダージェクトファーマシューテイカルズ ピーエルシーは、「ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤」は運搬用媒介物およびトランスフェクションを促進する物質を例示したものであって、網羅的であることを意図したものではないことは「裸のポリヌクレオチド」の定義から明らかであるとし、「運搬用媒介物」にはDEAEデキストラン、ポリブレン、金粒子、ラテックス球、キトサン、アスベスト繊維(甲第6号証〜甲第9号証)を含みうると主張している。
しかし、細胞内への侵入を容易にする運搬用媒介物が「トランスフェクションを促進する物質」に含まれることは上述したとおりであるから、かかる主張はいずれも採用できない。

(2)非統合性、非感染性について

請求項1、16、17にはポリヌクレオチドが「非統合性」であることが特定されている。
「統合」とは、乙第2号証によれば、「ウイルスその他のDNA配列が、宿主配列のいずれかの側に共有結合する領域として、宿主ゲノム中に挿入されること」を意味する技術用語であるから、「非統合性ポリヌクレオチド」とは上記の現象が起こらないポリヌクレオチドであると解されるところ、甲第3号証には、上記(1)で摘記した記載aに続き「これらの方法において使用されるDNAの配列は宿主細胞のゲノム内に統合しない配列が可能である。これらは非複製のDNA配列か、またはゲノム-統合能力に欠けるように遺伝子学的に作られた特異的な複製配列でもよい。」(甲第3号証p8右上欄12行〜15行)と記載され、宿主細胞のゲノム内に統合しないDNA配列即ち「非統合性」であるポリヌクレオチドが本件発明において使用されることが明記されている。
また、以下の箇所にも同様にゲノムに統合されないポリヌクレオチドが使用されることが記載されている。

「すべての形態のDNA、それが複製型または非複製型であるとにかかわらず,ゲノムに統合されずかつ発現可能であるものは本発明により考慮される方法の範囲内にある。」(同p9左上欄15-18行)
「我々が発見したところによると、この発明の方法に従えば,非複製型DNA配列は細胞内に導入され、所望のポリペプチドを約6カ月までの期間にわたって生成させることが可能でかつ我々の観察ではDNA配列が細胞のゲノムに統合されていることを示す証拠は発見されていない。」(同p10左上欄14-18行)

請求項1には非統合性に加え非感染性であることの特定もされており、請求人は、翻訳文には「非感染性」についても記載がない点を指摘している。 しかしながら、「感染」とは通常「病原体が体中に侵入すること。又は病気がうつること。」を意味するものであるところ、本件発明のポリヌクレオチドは「ウイルス粒子・・を含む、トランスフェクションを促進する作用を有する物質と組み合されていない」点でウイルス感染の危険はないことはもちろん、遺伝子治療に使用する薬学的生産物(医薬)である以上、本件発明の非統合性のポリヌクレオチドは、「非感染性」であるとの記載の有無に関わらず、もとより「非感染性」であることは自明であるから、この特定により、翻訳文に記載のポリヌクレオチドと実質的に異なる性質が格別に付与されるものではない。

4-2-1 間質的空間への導入について

上記のとおり、平成15年12月12日の訂正請求が認容され、ポリヌクレオチドの導入は組織の間質的空間に限定されたため、請求人が指摘した無効理由は解消されている。

4-2-3 「改善に役立つ」又は「防御性の」免疫応答誘導物質

設定登録時の請求項5、6は異議申立て手続き中にされた平成15年5月29日付け訂正請求が認容された結果、既に削除されており、請求人が指摘した無効理由は解消されている。

5.結論

以上のとおりであるから、本件特許明細書の請求項1、16、17(設定登録時の1、22、23項)に記載されたポリヌクレオチドはいずれも国際出願日における国際出願の出願翻訳文に記載された発明において使用するポリヌクレオチドの範囲内のものであり、そして、これらの記載に関する国際出願明細書とその翻訳文との間にも不一致はない。
したがって、上記の請求項におけるポリヌクレオチドの記載を理由として、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲若しくは図面の説明及びこれらの書類の出願翻訳文若しくは国際出願日における国際出願の図面に記載されていないとすることはできない。
また、その他の請求項に係る発明は上記請求項を引用して記載しているものであるから、同様に請求人の主張、証拠方法によっては、これを無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって結論のとおり審決する。
 
別掲 別紙

1、平成15年5月29日付け訂正請求における訂正事項(確定済み)

a.特許請求の範囲の請求項1「前記ポリヌクレオチドは、トランスフェクションを促進するタンパク質,ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈澱剤と組合されておらず、」を,[前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈澱剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、」に訂正する。

b.特許請求の範囲の請求項1「前記ポリヌクレオチドは,前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織にインビボで導入されるとき、」を、
「前記ポリヌクレオチドは、DNAプラスミドであり、前記脊椎動物の細胞内で非複製性であり、前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織にインビボで導入されるとき、」に訂正する。

c.特許請求の範囲の請求項1「前記脊椎動物の細胞に組込まれ、」を、「前記脊椎動物の細胞内に取り込まれ、」に、訂正する。

d.特許請求の範囲の請求項2「トランスフェクションを促進する材料を伴っていない」を、「トランスフェクションを促進する物質を伴っていない」に、訂正する。

e.特許請求の範囲の請求項11を削除する。

f.特許請求の範囲の請求項12を削除する。

g.特許請求の範囲の請求項13「前記DNAは,プロモータと結合して前記治療遺伝子生産物を作動的にコードするプラスミドである、請求項12に記載の医薬。」を、「(請求項11)前記DNAプラスミドは,プロモーターと結合して前記治療遺伝子生産物を作動的にコードする請求項1に記載の医薬。」に訂正する。

h.特許請求の範囲の請求項14を削除する。

i.特許請求の範囲の請求項22「哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としてのポリヌクレオチドと」を、「(請求項19)……哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと」に訂正する。

j.特許請求の範囲の請求項22「からなり、前記ポリヌクレオチドは」を
「(請求項19)……からなり、前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈澱剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、前記ポリヌクレオチドは」に訂正する。

k.特許請求の範囲の請求項22「前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドおよびメッセンジャーRNAからなる群より選択されるものであり、かつ」を「(請求項19)……前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、前記ポリヌクレオチドは,前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、」に訂正する。

l.特許請求の範囲の請求項22「前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞に組込まれ、」を「(請求項19)……前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、」に訂正する。

m.特許請求の範囲の請求項23「哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としてのポリヌクレオチドと」を「(請求項20)……哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと」に訂正する。

n.特許請求の範囲の請求項23「前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドおよびメッセンジャーRNAからなる群より選択されるものであり、かつ」を
「(請求項20)……前記ポリヌクレオチドは,プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、前記ポリヌクレオチドは,前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、」に訂正する。

o.特許請求の範囲の請求項23「前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき,前記哺乳動物の細胞に組込まれ、」を「(請求項20)……前記ポリヌクレオチドは,前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき,前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、」に訂正する。

p.特許請求の範囲の請求項24「前記ポリヌクレオチドがプロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドである、請求項22または23に記載の医薬。」を「(請求項21)前記DNAプラスミドがプロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードする,請求項19または20に記載の医薬。」に訂正する。

(なお、請求項の削除に伴いその後に続く請求項の番号を繰り上げる訂正が行われている。)

2、本件訂正請求がなされた時点の特許明細書(平成15年5月29日付け訂正請求書に添付された訂正明細書)の特許請求の範囲

【請求項1】 治療または免疫原性処置のため脊椎動物の身体の組織に直接投与するための医薬であって、
脊椎動物の細胞において治療遺伝子生産物を作動的にコードする非統合性でかつ非感染性であるポリヌクレオチドを有効成分とし、
前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、
前記ポリヌクレオチドは、DNAプラスミドであり、前記脊椎動物の細胞内で非複製性であり、前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織にインビボで導入されるとき、前記脊椎動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療遺伝子生産物は必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。
【請求項2】 前記ポリヌクレオチドは、前記脊椎動物の細胞への導入を促進するように作用することができる配達媒体を伴っておらず、かつ前記ポリヌクレオチドは、トランスフェクションを促進する材料を伴っていない、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】 前記治療遺伝子生産物がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】 前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が免疫応答誘導物質である、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】 前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が改善に役立つ免疫応答誘導物質である、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】 前記ペプチド、ポリベプチドまたはタンパク質が防御免疫応答誘導物質である、請求項4に記載の医薬。
【請求項7】 前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が体夜性免疫応答誘導物質である、請求項4に記載の医薬。
【請求項8】 前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が細胞性免疫応答誘導物質である、請求項4に記載の医薬。
【請求項9】 前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が疾病治療物質である、請求項3に記載の医薬。
【請求項10】 前記ペプチド、ポリベプチドまたはタンパク質がインターロイキン-2である、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】 前記DNAプラスミドは、プロモータと結合して前記治療遺伝子生産物を作動的にコードするプラスミドである、請求項1に記載の医薬。
【請求項12】 身体の筋肉に直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項13】 身体の骨格筋に直接投与するために使用されるものである、請求項12に記載の医薬。
【請求項14】 身体の心臓、血液、粘膜または皮膚に直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項15】 身体の組織に注射により直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項16】 脊椎動物の身体に直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項17】 前記疾病治療物質がガン治療物質である、請求項9に記載の医薬。
【請求項18】 前記遺伝子生産物がインターフェロンである、請求項9に記載の医薬。
【請求項19】 治療または免疫原性処置のため哺乳動物の組織に投与するための医薬であって、
哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと、
低張液の担体および等張液の担体よりなる群から選ばれた製薬的に許容される液体の担体とからなり、
前記ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈殿剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、
前記ポリヌクレオチドはプロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、
前記ポリヌクレオチドは、前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、
前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。
【請求項20】 治療または免疫原性処置のため哺乳動物の組織に投与するための医薬であって、
哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと、
低張液の担体および等張夜の担体よりなる群から選ばれた製薬的に許容される液体の担体とのみからなり、
前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、
前記ポリヌクレオチドは、前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、
前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリベプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。
【請求項21】 前記DNAプラスミドがプロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードする、請求項19または20に記載の医薬。
【請求項22】 前記プロモーターが、ラウス肉腫ウイルス長末端反復(RSV LTR)、骨髄増殖性肉腫ウイルス長末端反復(MPSV LTR)、シミアンウイルス40前初期プロモーター(SV40 IEP)、メタロチオネインプロモーターおよびヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーター(CMV IEP)からなる群より選択されるものである、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】 前記組織が筋肉である、請求項21に記載の医薬。
【請求項24】 前記組織が皮膚である、請求項21に記載の医薬。
【請求項25】 前記組織が血液である、請求項21に記載の医薬。
【請求項26】 前記ポリヌクレオチドは注射により前記組織に導入される、請求項21に記載の医薬。
【請求項27】 前記哺乳物はヒトである、請求項21に記載の医薬。
【請求項28】 前記治療ポリペプチドは前記組織の細胞によって生産される、請求項21に記載の医薬。
【請求項29】 前記治療ポリペプチドは、酵素、ホルモン、リンホカイン、受容体、成長因子、調節タンパク質、免疫をもたらすポリプチド、免疫調節因子および抗体からなる群より選択されるものである、請求項21に記載の医薬。
【請求項30】 前記治療ポリベプチドは、ヒト成長ホルモン、インスリン、インターロイキン-2、腫場壊死因子、神経成長因子、表皮増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、因子VIII:C、カルシトニン、チミジンキナーゼ、インターフェロン、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)およびエリトロポエチンからなる群より選択されるものである、請求項29に記載の医薬。
【請求項32】 前記治療ポリペプチドはインターロイキン-2である、請求項21に記載の医薬。
【請求項33】 前記治療ポリペプチドは免疫をもたらすポリペプチドであり、かつ前記治療効果は免疫原性の効果である、請求項32に記載の医薬。
【請求項34】 前記免疫をもたらすポリペプチドは、ウイルスタンパク質および腫蕩関連ポリペプチドからなる群より選択されるものである、請求項33に記載の医薬。
【請求項35】 前記ウイルスタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルスタンパク質、肝炎ウイルスタンパク質およびヘルペスウイルスタンパク質からなる群より選択されるものである、請求項32に記載の医薬。
【請求項36】 前記免疫原性の効果は、体液性のものであり、かつ抗体の生産をもたらすものである、請求項32に記載の医薬。
【請求項39】 前記免疫原性の効果は、細胞性のものであり、かつ細胞傷害性T細胞の生産をもたらすものである、請求項35に記載の医薬。
【請求項37】 前記免疫をもたらすポリペプチドまたはそのフラグメントは、クラスI主要組織適合性分子、クラスII主要組織適合性分子、およびクラスI主要組織適合性分子とクラスII主要粗織適合性分子の組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の分子と共に、前記哺乳動物の細胞膜に運ばれるものである、請求項36に記載の医薬。
【請求項38】 前記ポリペプチドの生産は疾病の治療をもたらすものである、請求項21に記載の医薬。
【請求項39】 前記疾病はガンである、請求項38に記載の医薬。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
脊椎動物における外因性ポリヌクレオチド配列の発現
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】治療または免疫原性処置のため脊椎動物の身体の組織に直接投与するための医薬であって、
脊椎動物の細胞において治療遺伝子生産物を作動的にコードする非統合性でかつ非感染性であるポリヌクレオチドを有効成分とし、
前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈澱剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、
前記ポリヌクレオチドは、DNAプラスミドであり、前記脊椎動物の細胞内で非複製性であり、前記治療遺伝子生産物が必要な脊椎動物の組織の間質的空間にインビボで、製薬的に許容される液体の担体とともに、導入されるとき、前記脊椎動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療遺伝子生産物は必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。
【請求項2】前記ポリヌクレオチドは、前記脊椎動物の細胞への導入を促進するように作用することができる配達媒体を伴っておらず、かつ前記ポリヌクレオチドは、トランスフェクションを促進する物質を伴っていない、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】前記治療遺伝子生産物がペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が免疫応答誘導物質である、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が体液性免疫応答誘導物質である、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が細胞性免疫応答誘導物質である、請求項4に記載の医薬。
【請求項7】前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が疾病治療物質である、請求項3に記載の医薬。
【請求項8】前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質がインターロイキン-2である、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】前記DNAプラスミドは、プロモーターと結合して前記治療遺伝子生産物を作動的にコードする請求項1に記載の医薬。
【請求項10】身体の筋肉に直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項11】身体の骨格筋に直接投与するために使用されるものである、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】身体の心臓、血液、粘膜または皮膚に直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項13】身体の組織に注射により直接投与するために使用されるものである、請求項1に記載の医薬。
【請求項14】前記疾病治療物質がガン治療物質である、請求項7に記載の医薬。
【請求項15】前記遺伝子生産物がインターフェロンである、請求項7に記載の医薬。
【請求項16】治療または免疫原性処置のため哺乳動物の組織に投与するための医薬であって、
哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと、
低張液の担体および等張液の担体よりなる群から選ばれた製薬的に許容される液体の担体とからなり、
前記ポリヌクレオチドは、ウイルス粒子、リポソーム調製物、荷電した脂質および沈澱剤を含む、トランスフェクションを促進する物質と組合されておらず、
前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、
前記ポリヌクレオチドは、前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、
前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織の間質的空間にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。
【請求項17】治療または免疫原性処置のため哺乳動物の組織に投与するための医薬であって、
哺乳動物の細胞において治療ポリペプチドの合成を誘導する有効成分としての非統合性ポリヌクレオチドと、
低張液の担体および等張液の担体よりなる群から選ばれた製薬的に許容される液体の担体とのみからなり、
前記ポリヌクレオチドは、プロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードするDNAプラスミドであり、
前記ポリヌクレオチドは、前記哺乳動物細胞内で非複製性であり、
前記ポリヌクレオチドは、前記治療ポリペプチドが必要な前記哺乳動物の組織の間質的空間にインビボで導入されるとき、前記哺乳動物の細胞内に取り込まれ、かつ前記治療ポリペプチドは必要な治療効果をもたらすのに十分な量で発現される、医薬。
【請求項18】前記DNAプラスミドがプロモーターと結合して前記治療ポリペプチドを作動的にコードする、請求項16または17に記載の医薬。
【請求項19】前記プロモーターが、ラウス肉腫ウイルス長末端反復(RSV LTR)、骨髄増殖性肉腫ウイルス長末端反復(MPSV LTR)、シミアンウイルス40前初期プロモーター(SV40 IEP)、メタロチオネインプロモーターおよびヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーター(CMV IEP)からなる群より選択されるものである、請求項18に記載の医薬。
【請求項20】前記組織が筋肉である、請求項18に記載の医薬。
【請求項21】前記組織が皮膚である、請求項18に記載の医薬。
【請求項22】前記組織が血液である、請求項18に記載の医薬。
【請求項23】前記ポリヌクレオチドは注射により前記組織に導入される、請求項18に記載の医薬。
【請求項24】前記哺乳動物はヒトである、請求項18に記載の医薬。
【請求項25】前記治療ポリペプチドは前記組織の細胞によって生産される、請求項18に記載の医薬。
【請求項26】前記治療ポリペプチドは、酵素、ホルモン、リンホカイン、受容体、成長因子、調節タンパク質、免疫をもたらすポリペプチド、免疫調節因子および抗体からなる群より選択されるものである、請求項18に記載の医薬。
【請求項27】前記治療ポリペプチドは、ヒト成長ホルモン、インスリン、インターロイキン-2、腫瘍壊死因子、神経成長因子、表皮増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、因子VIII:C、カルシトニン、チミジンキナーゼ、インターフェロン、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)およびエリトロポエチンからなる群より選択されるものである、請求項26に記載の医薬。
【請求項28】前記治療ポリペプチドはインターロイキン-2である、請求項27に記載の医薬。
【請求項29】前記治療ポリペプチドは免疫をもたらすポリペプチドであり、かつ前記治療効果は免疫原性の効果である、請求項18に記載の医薬。
【請求項30】前記免疫をもたらすポリペプチドは、ウイルスタンパク質および腫瘍関連ポリペプチドからなる群より選択されるものである、請求項29に記載の医薬。
【請求項31】前記ウイルスタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルスタンパク質、肝炎ウイルスタンパク質およびヘルペスウイルスタンパク質からなる群より選択されるものである、請求項30に記載の医薬。
【請求項32】前記免疫原性の効果は、体液性のものであり、かつ抗体の生産をもたらすものである、請求項29に記載の医薬。
【請求項33】前記免疫原性の効果は、細胞性のものであり、かつ細胞障害性T細胞の生産をもたらすものである、請求項29に記載の医薬。
【請求項34】前記免疫をもたらすポリペプチドまたはそのフラグメントは、クラスI主要組織適合性分子、クラスII主要組織適合性分子、およびクラスI主要組織適合性分子とクラスII主要組織適合性分子の組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の分子と共に、前記哺乳動物の細胞膜に運ばれるものである、請求項33に記載の医薬。
【請求項35】前記ポリペプチドの生産は疾病の治療をもたらすものである、請求項18に記載の医薬。
【請求項36】前記疾病はガンである、請求項35に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
発明の背景
本発明はポリペプチドの制御された発現を達成するために、脊椎動物内に裸のDNAおよびRNA配列を導入することに関する。これは、遺伝子治療、ワクチン投与および生体内細胞に対しポリペプチドを投与する必要があるいかなる治療の状況においても役立つものである。
遺伝子治療における現在の研究は、DNAが患者のゲノム内に組込まれる、「永久の」治癒に焦点がおかれている。ウイルスのベクターは、患者の細胞を形質転換させかつDNAをゲノム内に導入するための手段として現在最も頻繁に使用される手段である。間接的な方法においては、新しい遺伝子情報を保持するウイルスベクターが、身体から取り出された標的細胞に感染させるために使用され、かつこれらの細胞はその後再移植される。出生後の動物への直接の生体内遺伝子移植については、リポソーム内にカプセル化されたDNAおよびウイルス外膜受容体タンパク質を含むプロテオリポソームに包含されたDNAの処方物が報告されている(Nicolau et al.,Proc.Natl.Acad Sci USA80:1068-1072(1983);Kaneda et al.,Science243:375-378(1989);Mannino et al.,Biotechniques6:682-690(1988)。また肯定的な結果がリン酸カルシウム共沈DNAと共に記述されている(Benvenisty and Reshef Proc.Natl.Acad Sci USA83:9551-9555(1986))。
遺伝子治療の医療への応用および組換型レトロウイルスベクターの利用は、安全性への配慮から遅れている。細胞のゲノム内へ外因性DNAを導入することでDNAに障害を引起こしかつ悪性疾患の素因となり得る、受容細胞の遺伝子の変化を引起こし得る。これらの潜在的な問題を回避する方法は、遺伝子治療を安全でかつ有効なものにするうえで重要な利益を有するものと考えられる。
免疫原性タンパク質を用いてワクチン投与を行なうことで多くの疾病の発生を根絶しまたは低減してきたが、免疫原として、他の病原体および症状と関連するタンパク質を使用することには大きな困難が存在している。多くのタンパク質抗原は本来免疫原性のものではない。むしろ、それらは免疫系が働く態様から、ワクチンとしては効果的ではない。
脊椎動物の免疫系は幾つかの相互作用的要素から構成される。最もよく特徴が表われかつ最も重要な部分は体液性および細胞性(細胞溶解性の)ブランチである。体液性免疫は、体液内に分泌しかつ直接的に抗原を認識するタンパク質、すなわち抗体を含む。細胞系は、対照的に、外来の抗原を作り出している他の細胞を認識しかつこれらを殺す特別な細胞に依存している。この基本的機能の違いが免疫防御の2つの異なる戦略を反映している。体液性免疫は主に動物にとって外因性のものである抗原に向けられ、一方細胞系は動物内で活発に合成される抗原に応答する。
体液性免疫のエフェクタである抗体分子は特殊なBリンパ細胞、すなわち抗原に応答するB細胞により分泌される。抗体は抗原に結合および直接的にこれを不活性化し(抗体を中和し)または抗原を破壊するために免疫系の他の細胞を活性化することが可能である。
細胞の免疫認識は特殊なクラスのリンパ細胞、すなわち細胞傷害性T細胞により行なわれる。これらの細胞は抗原全体を認識しないが、クラスI主要組織適合複合体(MHC)分子と呼ばれるタンパク質に結合した標的細胞の表面上に現われる、抗原の分解したペプチドフラグメントに応答する。本質的にすべての核のある細胞はクラスI分子を有している。細胞内で生産されるタンパク質は正常な細胞の代謝の一環として連続的にペプチドに分解されると考えられている。これらのフラグメントはMHC分子に結合しかつ細胞の表面に輸送される。こうして、細胞の免疫系は常に身体のすべての細胞に生産されるタンパク質のスペクトルを常にモニターしかつ外来の抗原を生産するいかなる細胞をも除去すべく平衡を保っている。
ワクチン投与は動物を抗原に応答させる準備のプロセスである。ワクチン投与は、免疫認識よりもより複雑でかつB細胞および細胞傷害性T細胞を巻き込むのみならず、他のタイプのリンパ細胞をも巻き込む。ワクチン投与の間、抗原を認識する細胞(B細胞または細胞傷害性T細胞)はクローン増殖する。加えて、抗原に特異的な補助細胞(ヘルパーT細胞)の数もまた増大する。ワクチン投与はまた抗原を加工しかつ2つの経路のうちの1つを刺激し得る形でそれを提示し得る特殊化された抗原提示細胞をも巻き込む。
ワクチン投与は、ルイ・パスツール(LOUIS PASTEUR)の時代からほとんど変化していない。外来の抗原が動物内に導入され、これが表面免疫グロブリンに結合することにより特異的B細胞を活性化する。これはまた抗原プロセシング細胞によっても吸収され、分解されかつクラスIIMHC分子に結合するこれら細胞の表面上にフラグメントとなって現われる。クラスII分子に結合するペプチドはヘルパークラスT細胞を刺激することが可能である。ヘルパーT細胞および活性化されたB細胞の双方が活性な体液性免疫を生成させるのに必要である。細胞性免疫は類似するも、あまりよく理解されていないメカニズムにより刺激を受けると考えられている。
こうして、2つの異なりかつ顕著な抗原処理の経路は、クラスIIMHC分子に結合した外因性抗原を生産し、それらはTヘルパー細胞を刺激し、同様に分解され、クラスIMHC分子に結合し、細胞傷害性クラスのT細胞により認識される内因性タンパク質を生産する。
MHC分子の分布においてはほとんどまたは全く違いが存在しない。本質的にすべての核を有する細胞はクラスI分子を発現し、一方クラスIIMHCタンパク質は幾つかのタイプのリンパ細胞に制限される。
通常のワクチン投与方法によれば常にヒトの免疫反応がもたらされることになる。これらはまた細胞傷害性免疫をももたらす。体液系は病原体からの引き続いて起こる攻撃からワクチンを投与されたヒトを保護しかつもし病原体がその生存期間内に細胞外の段階を経るならば、細胞内感染が広がることを防止することができるが、しかし、細胞内の病原体を除去するためには相対的にあまり有効ではない。細胞傷害性免疫は感染した細胞を除去することにより体液系を補う。したがって、有効なワクチン投与により双方のタイプの免疫が活性化されるはずである。
細胞傷害性T細胞の応答はウイルス等の細胞内病原体および悪性の細胞を除去するために必要である。十分な応答を確保するために、クラスI分子と関連して十分な濃度で外因的に投与された抗原を提供することは困難であることがわかっている。このことが、腫瘍に特異的な抗原(たとえば乳癌または結腸癌の細胞に対する)、および免疫原性が弱いウイルスタンパク質(たとえばHIV、ヘルペス、非-A型および非-B型肝炎、CMVおよびEBV)に対するワクチンの開発を著しく妨げてきた。
抗体が感染性の増大を示すようなウイルス等の因子に対して免疫処置を行なうには、細胞性免疫応答だけを与えることが望ましいと考えられる。またこのような応答を慢性および潜伏しているウイルス感染ならびに悪性細胞に対して与えることも有益であると考えられる。
合成ペプチドワクチンの使用はこれらの問題を解決することにはならない。というのもペプチドは、組織適合分子と容易に結合せず、血清半減期が短く、急速に分解され、あるいは抗原提示単球およびマクロファージに対して特定的に局在化しないからである。最良の場合でもすべての外因的に投与された抗原は抗原提示マクロファージに結びつく自己タンパク質の母集団と競合しなければならない。
ヘルペスウイルス、非-Aおよび非-B型肝炎、HIVその他からの免疫原性に乏しいウイルスタンパク質に対し、免疫反応を引き出すために多くの努力がなされてきた。これらの病原体を生体外で増殖させることは困難でありかつまた危険なものである。上記のとおり、ウイルスによりコードされるタンパク質に対応する合成ペプチドワクチンが作られてきたが、これらは決定的な落とし穴を伴うものであった。他のウイルスからタンパク質を発現させるためにワクシニアウイルスベクターを使用する試みもなされてきた。しかしながら、結果は満足のいくものではなかった。というのも(a)組換型ワクシニアウイルスは既に免疫のあるヒトの循環から急速に排除されかつ(b)複雑なウイルス抗原の投与は「抗原競合」として知られる現象を誘因し得るからである。そこにおいて、免疫原性の弱いウイルスの部分は免疫反応を引き出すことができず、というのもそれらは投与された抗原のうち他より潜在能力のある領域に負けてしまうからである。
タンパク質またはペプチドワクチンに関するもう1つの大きな問題は、強い免疫反応をもたらすための努力として抗原の注射を繰返し行なう場合に発生し得る過敏反応である。この現象においては抗原に応答して形成されたIgE抗体が激しいかつ時には死に至るアレルギー反応を引き起こす。
したがって、この種のタンパク質またはポリペプチドに対して安全でかつ有効な免疫応答を引き起こすための方法が必要とされている。そのうえ、細胞障害性T細胞反応を誘因し、過敏症および血清中の物質のタンパク質分解を回避しかつ単球およびマクロファージへの物質の局在化を容易にするために、これらの抗原を細胞表面上のクラスI組織適合抗原に結合する方法が非常に必要とされている。
治療用ペプチドの投与は数多くの疾病状態に有効である。このようなペプチドには、インターロイキン-2、腫瘍壊死因子、およびインターフェロン等のリンホカイン、神経成長因子、表皮増殖因子およびヒト成長ホルモン等の成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、因子VIII:C、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、エリトロポエチン、インスリン、カルシトニン、チミジンキナーゼなどが含まれる。そのうえ、(リシン、ジフテリア毒素またはコブラの毒液因子等の)毒性ペプチドを疾病のあるまたは新生物細胞に選択的に配達することにより大きな治療上の利益がもたらされ得る。現在のペプチドデリバリーシステムには、機能的細胞表面受容体を細胞膜に有効に組込むことができないこと、および標的細胞内へまたはこれに対して治療に必要な量のペプチドを配達するために、大量のペプチドを全身的に投薬することの必要性(これは結果として望ましくない全身の副作用をもたらす)を含む重大な問題が存在している。
遺伝子治療、免疫化および細胞への治療用ペプチドのデリバリーに伴う上記の問題に本発明は取組むものである。
発明の要約
本発明は、インビボで脊椎動物の細胞の内部に医薬または免疫原性のポリペプチドを配達するための方法を提供し、この方法は製薬的に許容される注射可能な担体およびポリペプチドを作動的にコードする裸のポリヌクレオチドを含む調製物を細胞を含む組織の間質的空間へ導入するステップを含み、これにより裸のポリヌクレオチドが細胞の内部に取込まれかつ脊椎動物に対して免疫原性または薬理学的効果をもたらすものである。またインビボで筋肉細胞にポリヌクレオチドを導入するための方法も提供され、これは製薬的に許容される担体内に裸のポリヌクレオチドを含む組成物を提供するステップ、その組成物をインビボで脊椎動物の筋肉組織に接触させ、これによりポリヌクレオチドが組織の筋肉細胞に導入されるステップとを含む。このポリヌクレオチドはアンチセンスポリヌクレオチドでもよい。代替的には、このポリヌクレオチドは脊椎動物に対し治療を施す接触ステップの後に筋肉細胞により発現される治療用のペプチドをコードしてもよい。同様に、接触ステップの後に筋肉細胞により発現されかつ免疫反応を発生して、それにより脊椎動物に免疫処置を行なう免疫原性ペプチドをコードしてもよい。
本発明の1つの特に魅力的な局面は、脊椎動物に対するポリペプチドの長期にわたる投与を行なうための方法であって、この方法は脊椎動物の組織内に、ポリペプチドを作動的にコードする裸のDNA配列を間質的に導入し、これにより組織の細胞が少なくとも1ヵ月または少なくとも3ヵ月、より好ましくは少なくとも6ヵ月にわたってポリペプチドを生産するというステップを含む。本発明の具体例において、ポリペプチドを生産する細胞は筋肉細胞等の非増殖性の細胞である。
本発明に従うもう1つの方法は、脊椎動物におけるポリペプチドの一過性の発現を得るための方法であり、この方法はポリペプチドを作動的にコードする裸のmRNA配列を間質的に脊椎動物の組織内に導入し、これによりその組織の細胞が約20日未満、通常は約10日未満、およびしばしば3日または5日未満にわたってポリペプチドを生産するというステップを含む。本発明の方法の多くに関しては、固形の組織への投与が好まれる。
本発明の1つの重要な局面は、筋ジストロフィーの治療のための方法であり、筋ジストロフィーを患う動物の筋肉細胞内へ、インビボで、製薬的に許容される注射可能な担体において、ジストロフィンを作動的にコードするポリヌクレオチドを含む組成物の治療上有効な量を導入し、これによりポリヌクレオチドが細胞内に取込まれかつジストロフィンが生体内で生産されるというステップを含む。好ましくは、ポリヌクレオチドは裸のポリヌクレオチドでありかつその組成物は筋肉組織の間質に導入される。
本発明はまたここに記載された方法すべてにおいて使用が考慮される医薬製品を含む。たとえば、生物学的に活性のポリヌクレオチドを作動的にコードする裸のポリヌクレオチドを含む医薬製品がある。該ポリヌクレオチドは容器内に、生理学的に許容される投与可能な形で含まれ、さらに医薬製品は、薬物の生産、使用または販売を規制する政府の省庁により規定された形で該容器に付随する注意書を有し、その注意書はヒトまたは動物への投与のためのポリヌクレオチドのその形態に関してその省庁が承認したということを表わすものである。このような注意書は、たとえば米国食品医薬品局により承認された処方薬のためのラベルまたは承認された製品挿入物でもよい。
もう1つの具体例において、本発明は医薬製品を提供し、この製品は、組織の細胞にポリペプチドを発現させるため組織内へ間質的に導入するのに適した生理学的に許容される注射可能な担体内の溶液中の生物学的に活性なペプチドを作動的にコードする裸のポリヌクレオチドと、その溶液を収容する容器と、この容器に付随する注意書とを含み、その注意書は薬物の製造、使用または販売を規制する政府の省庁により規定された形式のものであり、その注意書は、ヒトまたは動物に投与するためのポリヌクレオチド溶液の製造、使用または販売に関してその省庁が承認を与えたということを反映する。そのペプチドは免疫原性のものとすることができ、その溶液の投与は、ヒトまたは動物に対するワクチン処置の役割を果たし得る。同様に、ペプチドは治療用にもなり得、ポリペプチドに関し治療の必要な脊椎動物に、この溶液を投与することにより治療上の効果がもたらされる。
本発明はまた医薬製品を提供し、この製品は、組織の細胞にポリヌクレオチドの取込みを引き起こさせかつ治療効果をもたらすため、組織内へ間質的に導入するのに適した生理的に許容される注射可能な担体における溶液での裸のアンチセンスポリヌクレオチドと、その溶液を収める容器と、薬物の製造、使用または販売を管轄する政府の省庁により規定される形式での容器に添付された注意書とを含み、その注意書はヒトまたは動物への投与のためのポリヌクレオチドの溶液の製造、使用、または販売に関してその省庁が承認したということを反映するものである。
本発明の1つの特に重要な局面は、減菌した、製薬的に許容される担体と、ジストロフィンを作動的にコードする製薬的に有効な量の裸のポリヌクレオチドと、担体およびポリヌクレオチドを無菌状態で収める容器とを含む、筋ジストロフィー治療のための医薬製品に関する。
好ましくは、このポリヌクレオチドはDNAである。
もう1つの側面から、本発明は脊椎動物に生物学的に活性のポリペプチドを供給するうえで使用される医薬製品を含み、この製品はポリヌクレオチドを作動的にコードする製薬的に有効な量の裸のポリヌクレオチド、無菌状態で担体とポリヌクレオチドとを収める容器、およびこの容器に付随して、この容器から組織の間質的空間へポリヌクレオチドを移すことを可能にし、これにより組織の細胞がポリヌクレオチドを取込みかつこれを発現するための手段を含むものである。このような移すことを可能にするための手段には針金により突き刺すことが可能な従来の隔壁を含み得る。代替的には、その容器が注射器の場合には、その手段は注射器のプランジャーまたは注射器に取付けられた針を含むと考えられ得る。本発明で使用される容器は、通常1またはそれ以上の単位用量を提供するために少なくとも1、好ましくは少なくとも5または10、より好ましくは少なくとも50または100マイクログラムのポリヌクレオチドを有することになる。多くの用途に関して、この容器は少なくとも500マイクログラムまたは1ミリグラムを有することになり、しばしば少なくとも50または100ミリグラムのポリヌクレオチドを含有することになるであろう。
本発明のもう1つの局面は、脊椎動物に免疫処置を行なううえでの使用のための医薬製品を提供し、この製品は、免疫原性ポリペプチドを作動的にコードする製薬的に有効な量の裸のポリペプチドと、無菌状態でこのポリヌクレオチドを収める封止された容器と、この容器に付随して、容器から組織の間質的空間にポリヌクレオチドを移すことを可能にし、これによりその組織の細胞がポリヌクレオチドを取込みかつこれを発現させるための手段とを含む。
本発明のもう1つの局面は、組織を含む細胞にポリペプチドを生産させるために間質的に組織内に導入するための医薬調製物において生理学的に活性のポリペプチドを作動的にコードする裸のポリヌクレオチドを使用することである。その医薬とは、たとえば筋肉組織内への導入により筋肉細胞がポリペプチドを生産するためのものでもよい。また、ペプチドがジストロフィンでありかつ医薬が筋ジストロフィーの治療のためのものである場合のような使用も考えられる。
本発明に従うもう1つの用途は、脊椎動物の細胞内でのポリヌクレオチドの翻訳を抑制するために脊椎動物の組織内に間質的に導入するための医薬調製物において裸のアンチセンスポリヌクレオチドを使用することである。
ポリヌクレオチドが導入される組織は持続性非分裂細胞であり得る。ポリヌクレオチドはDNAまたはRNA配列のいずれでもよい。ポリヌクレオチドがDNAである場合、それ自体は非複製性であるが、プラスミドに挿入されているDNA配列とすることができる。該プラスミドは、さらにレプリケーターを含む。DNAは宿主細胞ゲノム内へ組込まれないように作られた配列でもよい。ポリヌクレオチドの配列は、細胞内に含有されるかもしくはそこから分泌されるかのいずれかのポリペプチドをコードするものでもよく、またはペプチドの分泌を誘導する配列を含み得る。
DNA配列はまたプロモータ配列を含み得る。1つの好ましい具体例においては、DNA配列は予め定められた細胞においてのみDNAの実質的な転写を可能にする細胞特異的プロモータを含む。DNAはまたDNAを転写するためのポリメラーゼをコードし、かつポリメラーゼのための認識部位を含み得、注射可能な調製物は初回量のポリメラーゼを含み得る。
多くの場合、ポリペプチドの配達が一過性のものとなるようにポリヌクレオチドの翻訳が限定された期間において行なわれることが好まれる。このポリペプチドは、有利に治療用ポリペプチドとすることができ、酵素、ホルモン、リンホカイン、受容体、特に細胞表面の受容体、成長因子または他の調節因子等の調節タンパク質、または生きた脊椎動物の細胞に配達することを所望されかつこれに関し対応するDNAまたはmRNAが得られ得る他のいかなるタンパク質またはペプチドをも含み得る。
好ましい具体例において、ポリヌクレオチドは筋肉組織内に導入され、他の具体例において、ポリヌクレオチドは皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓または血液の組織内へ組込まれる。調製物は様々なルートにより脊椎動物に注射され、その経路は皮内、皮下、くも膜下もしくは静脈であり得、あるいは身体の腔内でもよい。好ましい具体例において、ポリヌクレオチドは筋肉内に注射される。他の具体例において、ポリヌクレオチドを含む調製物は皮膚内に圧入される。吸入と同様、経皮的投与についても考慮される。
1つの好ましい具体例において、ポリヌクレオチドはDNAを転写するためのポリメラーゼとポリペプチドの双方をコードするDNAであり、かつDNAはポリメラーゼのための認識部位を含み、かつ注射可能な調製物はさらに初回量のポリメラーゼを細胞内に提供するための手段を含む。ポリメラーゼの初回量はDNAと共に物理的に存在し得る。一方、それをコードするmRNAを含むことにより与えることができ、そのmRNAは細胞により翻訳される。本発明の具体例において、DNAは好ましくはプラスミドである。好ましくは、ポリメラーゼはファージT7ポリメラーゼであり、かつその認識部位は配列のT7複製起点である。
本発明のもう1つの局面に従い、脊椎動物における特定のポリペプチドの欠陥またはその欠如に関連する疾病を治療するための方法が提供され、この方法は特定のポリペプチドをコードする裸のポリヌクレオチドを含む製薬的に許容される注射可能な担体を含む注射可能な調製物を得るステップと、注射可能な調製物を脊椎動物に導入しかつそのポリヌクレオチドが細胞内へ組込まれることを可能にするステップを含み、そこではポリペプチドがポリヌクレオチドの翻訳生産物として形成されかつそれによりポリヌクレオチドの欠陥または欠如が補われる。好ましい具体例において、この調製物は筋肉組織内へ導入されかつこの方法は反復して適用される。この方法は欠陥またはその欠如が遺伝的欠陥によるものである場合に有利に適用される。ポリヌクレオチドは好ましくは非複製性DNA配列である。DNA配列はまた、複製起点を含むプラスミドベクター内へ組込まれ得る。
好ましい一具体例において、ポリヌクレオチドは非分泌性のポリペプチドをコードし、かつポリペプチドは原位置にとどまる。この具体例によれば、ポリヌクレオチドがポリペプチド:ジストロフィンをコードする場合、デュシェーヌ症候群(Duchennes’s syndrome)のための治療法を提供し、一方、ポリヌクレオチドがポリペプチド:フェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードする場合には、この方法はフェニルケトン尿症のための治療法を含む。もう1つの好ましい具体例において、ポリヌクレオチドは、細胞により分泌されかつ脊椎動物の循環内へ解き放たれるポリペプチドをコードし、特に好ましい具体例において、ポリヌクレオチドはヒトの成長ホルモンをコードする。
この方法のもう1つの好ましい具体例において、高コレステロール血症のための治療法が提供され、コレステロールホメオスタシスに関連する受容体をコードするポリヌクレオチドが肝細胞内に導入され、該受容体が細胞により発現される。
本発明のもう1つの局面に従い、脊椎動物に免疫処置を施すための方法が提供され、この方法は免疫原性翻訳生産物をコードする発現可能なポリヌクレオチドを含む調製物を得るステップと、脊椎動物にその調製物を導入するステップとを含み、そこでは、ポリヌクレオチドの翻訳生産物が脊椎動物の細胞により形成され、これが免疫原に対する免疫反応を引き出す。この方法のもう1つの具体例において、注射可能な調製物は、免疫原性ペプチドをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含む製薬的に許容される担体を含み、脊椎動物への該調製物の導入の際には、このポリヌクレオチドが脊椎動物の細胞内に組込まれ、そこで、そのポリヌクレオチドの免疫原性翻訳生産物が形成され、これが免疫原に対する免疫反応を引き起こす。
他の具体例において、調製物は、脊椎動物から得られかつインビトロでポリヌクレオチドによりトランスフェクションされた1つまたは2つ以上の細胞を含み、これによりポリヌクレオチドは細胞内に組込まれ、そこにおいてポリヌクレオチドの免疫原性翻訳生産物が形成され、これにより、その調製物を脊椎動物へ導入すると、免疫原に対する免疫反応が引き起こされる。本発明の任意の具体例において、免疫原性生産物は細胞により分泌され得、あるいは主要組織適合抗原のコンテクストにおいて脊椎動物の細胞により提示され得、これにより免疫原に対する免疫反応が引起こされる。この方法は、脊椎動物からの非分裂性分化細胞を使用して行なうことが可能で、その細胞は血液サンプルから得られるリンパ球とすることができる。一方、分裂可能な部分的に分化した繊維芽細胞を使用して行なうこともできる。好ましい具体例において、この方法は、免疫原性翻訳生産物をコードするポリヌクレオチドを筋肉組織内に組込むことにより行なわれる。
免疫処置のために使用されるポリヌクレオチドは好ましくはmRNA配列であるが、非複製性DNA配列も使用され得る。ポリヌクレオチドは注射可能な担体のみを使用して身体の組織内に導入することができる。脊椎動物から得られた細胞の生体外トランスフェクションが行なわれる方法では、リポソーム調製物が好ましい。
担体は好ましくはスクロース溶液によりもたらされるような等張性、低張または若干高張のものでありかつ比較的低いイオン強度を有する。調製物はさらにポリペプチドの形態でまたはポリヌクレオチドとしてリポソーム内に組込まれるサイトカインの源を有利に含み得る。
この方法は体液性免疫反応、細胞性免疫反応、またはこれらの組合わさったものを選択的に引起こすために使用され得る。細胞がクラスIの主要組織適合複合体を発現しかつ免疫原性ペプチドがクラスI複合体のコンテキストで提示される具体例においては、免疫反応は細胞性のものでありかつ細胞傷害性T細胞の生産を含む。
このような具体例の1つにおいて、免疫原性ペプチドはウイルスと結合し、クラスI抗原のコンテキストで提示されかつウイルスに感染した細胞を破壊する能力がある細胞傷害性T細胞を刺激する。細胞傷害性T細胞反応もまた、ポリヌクレオチドが体液性エピトープを欠く切り詰められたウイルス抗原をコードする場合の方法に従いもたらされ得る。
これらのうちもう1つの具体例において、免疫原性ペプチドは腫瘍と結合し、クラスI抗原のコンテキストで提示されかつ腫瘍細胞を破壊する能力がある細胞傷害性T細胞を刺激する。注射可能な調製物が、動物から採取されインビトロでトランスフェクトされたクラスIおよびクラスIIの主要組織適合抗原を発現する細胞を含むさらにもう1つの具体例において、免疫反応は体液性および細胞性の両方であり、抗体および細胞傷害性T細胞の生産を含む。
もう1つの具体例において、脊椎動物に免疫処置を施す方法が提供され、この方法は、免疫原性ペプチドをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含む正に荷電されたリポソームを得るステップと、脊椎動物にそのリポソームを導入するステップとを含み、それによりそのリポソームが単球、マクロファージまたは他の細胞に組込まれ、そこで、ポリヌクレオチドの免疫原性翻訳生産物が形成されかつその生産物が主要組織適合複合体のコンテキストにおいて細胞により処理されかつ提示され、それにより免疫原に対する免疫反応が引起こされる。ここでも、ポリヌクレオチドは好ましくはmRNAであるが、DNAが使用されてもよい。そして先程と同様、この方法は注射可能な担体中のポリヌクレオチドのみを使用して、リポソーム抜きで実施されてもよい。
本発明はまた、ポリペプチドと、DNAを転写するためのポリメラーゼとをコードするDNAの使用をも包含し、かつDNAはポリメラーゼのための認識部位を含む。ポリメラーゼの初回量は調製物の中にそれをコードするmRNAを含むことにより提供され、そのmRNAは細胞により翻訳される。そのmRNAには、細胞におけるその分解を遅延させる手段を設けることが好ましい。これには、mRNAをキャッピングすること、mRNAを環状化すること、またはmRNAの5′末端を化学的にブロックすることを含み得る。本発明で使用されるDNAは線状DNAの形態でもよいしまたはプラスミドでもよい。エピソームのDNAも考えられる。1つの好ましいポリメラーゼとしてはファージT7RNAポリメラーゼがありかつ好ましい認識部位としてはT7RNAポリメラーゼプロモーターがある。
発明のより詳細な説明
本発明の実施には、脊椎動物の細胞内へ組込まれるポリペプチドを作動的にコードする裸のポリヌクレオチドを得ることが必要である。ポリヌクレオチドは、プロモータ等の標的細胞による発現のために必要なすべての遺伝子情報を有している場合にポリペプチドを作動的にコードする。これらのポリヌクレオチドは、脊椎動物の細胞に注入可能な物質を配達する任意の方法によって、たとえば筋肉または皮膚等の組織の間質的空間内へ注射することにより、循環系または自身のキャビティ内への導入、または吸入もしくは吹込み等により脊椎動物に対して投与され得る。裸のポリヌクレオチドは注射されるかまたは他の態様では製薬的に許容される液体の担体で動物に配達される。すべての適用に関し、この液体の担体は水または部分的に水であり、無菌の、パイロジェンを含まない水を含む。調製物のpHは適当に調節されかつ緩衝される。
リポソームの使用を必要とする本発明の具体例において、たとえば、ポリヌクレオチドがリポソームと結合される場合、リポソーム、好ましくはカチオン性のまたはプラスに荷電されたリポソームを成形するための材料が必要であり、かつリポソームの調製物がこれらの材料から作られることが必要である。リポソームの材料が準備できれば、ポリヌクレオチドは、免疫を施す因子として使用するためインビトロで細胞をトランスフェクトするのに有利に使用することができ、あるいは、リポソームが食細胞により取込まれ得る体の部位へポリヌクレオチドを投与するのに有利に使用することができる。
ポリヌクレオチドの材料
本発明の方法に従い使用される裸のポリヌクレオチドの材料は、DNAおよびRNAの配列または治療上有益な用途を有するポリペプチドをコードするDNAおよびRNA配列を含む。これらのポリヌクレオチドの配列は、細胞内への侵入を容易にするために作用するいかなる配達用媒介物をも伴っていないという意味で「裸」であり、たとえばそのようなポリヌクレオチドの配列は、ウイルスの配列、特に遺伝情報を運び得るいかなるウイルス粒子をも伴っていない。それらは、トランスフェクションを促進するいかなる物質、たとえばリポソームの製剤、リポフェクチン等の荷電した脂質またはCaPO4等の沈殿剤を同様に伴っておらず、これらに対して裸である。
これらの方法において使用されるDNAの配列は宿主細胞のゲノム内に統合しない配列が可能である。これらは非複製性のDNA配列か、またはゲノム-統合能力に欠けるように遺伝子操作により作られた特異的な複製配列でもよい。
本発明のポリヌクレオチドの配列は、細胞により取込まれた後に治療的な効果を有するDNAまたはRNA配列である。それら自身が治療用であるポリヌクレオチドの例としてはアンチセンスDNAおよびRNA、アンチセンスRNAをコードするDNA、または欠陥のあるまたは不良の内因性の分子を置換するtRNAもしくはrRNAをコードするDNAがある。本発明のポリヌクレオチドはまた治療用ポリペプチドをコードすることができる。ポリペプチドは大きさに関わりなくかつグリコシル化しているかどうかに関わりなくポリヌクレオチドの何らかの翻訳生産物であると理解される。治療用ポリペプチドは、主要な例として、動物における欠陥のあるまたは欠失のある種を補うことができるポリペプチド、または毒性の効果を通じて身体から有害な細胞を制限または除去する役割を果たすものを含む。
本発明により提供される治療用ポリヌクレオチドはまた体液性または細胞性反応またはその双方を引起こす内因性の免疫原として作用し得る免疫供与ポリペプチドをコードし得る。本発明に従い使用されるポリヌクレオチドはまた抗体をコードし得る。この点に関して、「抗体」という用語は、任意のクラスの免疫グロブリン全体、二重または多重の抗原特異性もしくはエピトープ特異性を有するキメラ抗体およびハイブリッド抗体、ならびにハイブリッドフラグメントを含むF(ab)2、Fab’、Fab等のフラグメントを包含する。「抗体」の意味に含まれるものとしてはこの他にこのようなフラグメントの接合体、および、たとえば米国特許第4,704,692号に記載されるようないわゆる抗原結合タンパク質(単鎖抗体)があり、この特許の内容はここに引用により援用される。
したがって、抗体の可変領域をコードする分離されたポリヌクレオチドを本発明に従い導入することができ、これは処置を受けた対象が生体の原位置で抗体を生産することを可能にする。抗体をコードするポリヌクレオチドを得ることに関する代表的な方法に関しては、Ward et al.Nature,341:544-546(1989);Gillies et al.,Biotechnol.7:799-804(1989);およびNakatani et al.,loc,cit,805-810(1989)を参照のこと。抗体の方は、たとえば病原体に伴う表面抗原に結合することにより治療的効果を奏すると考えられる。一方、コードされる抗体として、たとえば米国特許第4,699,880号に記載されるような抗イディオタイプ抗体(他の抗体と結合する抗体)が可能である。このような抗イディオタイプ抗体は、治療を受ける個体において内生的抗体または外来の抗体と結合することが可能で、それによりたとえば自己免疫疾患が原因の免疫反応に関連する病的状態を改善したりまたはこれを防止することができる。
本発明のポリヌクレオチド配列は好ましくは治療のまたは免疫原性のポリペプチドをコードし、かつこれらの配列はこれらポリペプチドの発現を制御する調節タンパク質をコードする他のポリヌクレオチド配列と共同して使用され得る。この調節タンパク質は、その転写を調節するようにゲノムのDNAに結合することにより作用することができ、一方、メッセンジャーRNAに結合してその安定性または翻訳効率を増加させたりまたは減少させたりすることができる。
インビボの細胞に配達されるポリヌクレオチド材料は様々な形式をとることが可能で、かつ本発明は何か特定のポリペプチドまたはポリペプチドの群をコードする何か特定のポリヌクレオチドに限定されるわけではない。遺伝子のフラグメントのみを含んでもよいし、複数のポリペプチド配列をコードしてもよいし、付加的に認識およびプロモータ配列を含んでもよい。多数の生理学的に活性のペプチドおよび抗原または免疫原をコードする遺伝子を含むプラスミドが文献で報告されており、当業者により容易に入手可能である。
ポリヌクレオチドがDNAである場合、様々な脊椎動物系においての使用に適するプロモータがよく知られている。たとえば、マウスの系における使用に適当な強いプロモータには、RSV LTR、MPSV LTR、SV40 IEP、およびメタロチオネインプロモータが含まれる。これに対し、ヒトにおいてはCMV IEP等のプロモータが有利に使用され得る。すべての形態のDNAで、それが複製性または非複製性であるにかかわらず、ゲノムに統合されずかつ発現可能であるものは本発明により考慮される方法の範囲内にある。
自動化された核酸合成装置が入手可能であるので、DNAおよびRNA双方とも、ヌクレオチド配列が知られているとき直接的に、あるいはPCRクローニングおよび醗酵の組合せにより合成され得る。そのうえ、所望のポリペプチドの配列が知られている場合には、ポリヌクレオチドのための適当なコード配列が推定され得る。
ポリヌクレオチドがmRNAである場合、対応するDNAからインビトロで容易に準備することが可能である。たとえば、従来技術では、ファージRNAポリメラーゼSP6、T3またはT7を利用して、個々のリボヌクレオシドトリホスフェートの存在下でDNAテンプレートからmRNAを調製する。T7複製起点等の適切なファージプロモータを、転写されるべき遺伝子のすぐ上流のテンプレートDNAに配置する。このような態様でT7を利用するシステムがよく知られており、かつ文献にも記載され、たとえばCurrent Protocols in Molecular Biology,§3.8(VOL.1 1988)等に記載されている。
本発明において使用されるmRNAを入手するための特に好ましい方法が例2〜5に示されている。一般的に、しかしながら、当該技術の一般的な技術者により容易に製作され得るpXGBプラスミドまたは任意の類似のプラスミドを本発明を実施するうえでほぼ無制限な数のcDNAと共に使用できることは明らかなはずである。このようなプラスミドは、5′非翻訳領域、3′非翻訳領域およびポリAトラクトのためのテンプレートが続く必要なRNAポリメラーゼのためのプロモータを有利に含み得る。これら5′領域と3′領域の間に、任意の必要なcDNAをプラスミドに挿入することを容易にする特有の制限部位が存在すべきである。そこで、必要な遺伝子を含有するプラスミドをクローン化した後、ポリアデニル化領域において切断することによりプラスミドを線状化し、インビトロで転写してmRNA転写物を形成する。これら転写物は好ましくは例5で示されるような5′キャップを設けられる。代替的には、5′キャップを必要としないEMC等の5′非翻訳配列が使用され得る。
上記がmRNAを準備するための好ましい方法を表わしている一方、多くの代替的方法がさらに存在することは当業者に明らかである。たとえば、mRNAは市販のヌクレオチド合成装置により準備され得る。代替的には、環状形のmRNAが準備され得る。抗エキソヌクレアーゼRNAたとえば環状mRNA、化学的にブロックされたmRNAおよび5′キャップを有するmRNA等が好ましく、というのはそれらが生体内においてより長い半減期を有するからである。
特に、1つの好ましいmRNAには、興味の遺伝子に先行してポリオウイルスの5′非翻訳領域がある自己環状化mRNAがある。この環状mRNAが極度に長い半減期を有し(Harland & Misher,Development102:837-852(1988))かつポリオウイルス5′非翻訳領域が通常の5′キャップなしでmRNAの翻訳を促進することができる(Pelletier & Sonnenberg,Nature334:320-325(1988)ここに引用により援用する)ことが実証されている。
この材料は、自己スプライシング性でありかつ環状の「ラリアット」(投げ輪)mRNAを生成させるDNAテンプレートから、Been & Cech,Cell47:206-216(1986)(ここに引用により援用する)の方法を利用して調製され得る。我々は、このテンプレートをMniatis,T.et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor,New York(1982)の方法に従い、興味の遺伝子のすぐ上流にポリオウイルスの5′非翻訳領域を含めることにより修飾した。
加えて、本発明はRNAse(RNアーゼまたはリボヌクレアーゼ)によるアクセスを防止する目的で5′および/または3′末端で化学的にブロックされたmRNAの使用を含む(この酵素(RNAse)はエキソヌクレアーゼであり、したがって鎖の真ん中でRNAを分割することはない)。このような化学的ブロックによりインビボでのRNAの半減期を実質的に延ばすことができる。RNAを修飾するために使用することができる2つの試薬がClonetech Lanoratories,Inc.,Palo Alto,Californiaから入手可能であり、これらはC2 Amino Modifier(カタログ番号5204-1)と、Amino-7-dUTP(カタログ番号K1022-1)である。これらの材料はRNAに反応性の基を付加する。これらの試薬のいずれかを興味のRNA分子に導入した後、適切な反応性の置換基を製造者の指示に従いRNAに連結することができる。十分な大きさを有する基を付加することによりRNAseによる化学的に修飾されたRNAへのアクセスが防止され得る。
一過性の遺伝子治療
過去に提案された遺伝子治療と異なり、本発明の1つの主要な利点は、細胞におけるポリヌクレオチドの合成が一過性の性質のものである点である。(我々はこれを可逆的遺伝子治療またはTGTと呼ぶ)。本発明に従いmRNAを導入すると、その効果は一般的には約1日持続することになる。また過去に提案された遺伝子治療と顕著に異なる点は、mRNAはタンパク質の合成を誘導するために核に浸透する必要がなく、したがってmRNAは遺伝を担う性質を有している必要がないことである。
しかしながら、幾つかの状況においては、宿主の生体のゲノム内へ外因的ポリ核酸を組込むことなしに効果がより持続することが望まれる。このような効果を奏するために、本発明の好ましい具体例は、細胞内へ特異的ポリペプチドをコードするDNA配列を導入するステップを設ける。我々が発見したところによると、本発明の方法に従えば、非複製性DNA配列を細胞内に導入し、所望のポリペプチドを約6ヵ月までの期間にわたって生成させることが可能であり、さらに我々の観察では、当該DNA配列が細胞のゲノムに統合されていることを示す証拠は見出されていない。一方、さらに長期にわたる効果が、内部にDNA配列を挿入されたベクタープラスミドによって細胞にDNA配列を導入することにより達成され得る。好ましくは、プラスミドはさらにレプリケーターを含む。このようなプラスミドは当業者には周知であり、たとえば、レプリケーターpMB1を有するプラスミドpBR322またはレプリケーターColE1を有するプラスミドpMK16がそれである(Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,New York(1988)§II:1.5.2.)。
例1および13に記載されるような筋肉細胞内へ導入されたDNAおよびmRNAの発現過程の研究結果から、DNA発現よりも持続時間は短いが、mRNAの発現はより急速であることが示された。迅速でかつ長く持続する遺伝子の発現は、DNAと、たとえばファージポリメラーゼT7、T3およびSP6などのRNAポリメラーゼとを含むリポソームの調製物を細胞内に投与することにより達成され得る。リポソームはまた、実際の酵素自体を含むかまたはその酵素をコードするmRNAを含むことにより、適当なRNAポリメラーゼの開始源を含む。リポソームが生体内に導入される場合、DNAおよびRNAポリメラーゼの開始源が細胞へ配達される。RNAポリメラーゼは導入されたDNA上のプロモータを認識して双方の遺伝子を転写し、結果としてより多くのRNAポリメラーゼおよび所望のポリペプチドを含む翻訳生産物を生じさせる。これらの材料の生産は、導入されたDNA(通常プラスミドの形態である)が分解するまで継続する。この態様で、インビボでの所望のポリペプチドの生産が2〜3時間で達成され、1ヶ月またはそれ以上の期間にわたって継続され得る。
遺伝病の治療に限定されるわけではないが、本発明の方法はしたがって失われたまたは欠陥のある遺伝子の配達および機能的発現を要する治療法に適用することができる。
ポリヌクレオチドは筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、睾丸、卵巣、子宮、直腸、神経系、目、腺および結合組織の組織を含む動物の身体組織の間質的空間に配達され得る。組織の間質的空間とは、生体組織の細網繊維の間、管もしくは室の壁の弾性繊維の間、線維組織のコラーゲン繊維の間の細胞間液状ムコ多糖マトリクス、あるいは筋肉細胞を収める結合組織内のまたは骨小腔の同様のマトリクスを含む。これは同様に、循環系のプラズマおよびリンパ管チャネルのリンパ液により占められる空間である。筋肉組織の間質的空間への配達は以下の理由により好まれる。ポリヌクレオチドは、筋肉細胞を含む組織への注射により都合よく配達することができる。分化した持続して非分裂の細胞にポリヌクレオチドを配達し、発現させることが好ましいが、配達および発現を、分化していないあるいは完全に分化していない細胞、たとえば血液の幹細胞または皮膚の繊維芽細胞において行ってもよい。我々の発見によれば、インビボの筋肉細胞は特にポリヌクレオチドを取込みかつこれを発現する能力に優れている。この能力は、多核細胞、筋小胞体および横行管状系を含む、筋肉の特異的組織構造に起因するものかもしれない。ポリヌクレオチドは横行管状系を介し筋肉に入ることが可能で、この系は細胞外体液を含みかつ筋肉細胞の奥深く延びている。ポリヌクレオチドが損傷を受けた筋肉細胞に入りそれからその細胞が回復するということも可能である。
筋肉はまた、数多くの治療上の用途においてポリヌクレオチドの配達および発現のための場所として有利に使用することができる。というのも、動物は比較的大きな筋肉の塊を有しており、それは皮膚を介する直接的注射により都合よくアクセスされ、この理由から比較的多量のポリヌクレオチドを複数回の注射により筋肉に与えることが可能で、長期間にわたって治療を延長するために繰返し注射を行なうことが簡単にでき、特別の熟練または装置なしに安全に行うことができるからである。
一連の一般的戦略において、ポリヌクレオチドを注射しかつ発現させるための場所として筋肉組織を使用することが可能であるが、これは典型的な例であり、これに限定されるものではない。第1に、欠陥のあるまたは欠損のある遺伝子生産物に関連する筋肉の障害は、非分泌遺伝子生産物をコードするポリヌクレオチドを疾病のある筋肉組織内に導入することにより治療され得る。第2の戦略として、遺伝子生産物の欠如による他の生体または組織の障害およびその結果としての循環する毒性代謝物の蓄積は、筋肉組織に特定の治療用ポリペプチドを導入することにより治療することができ、そこにおいて、非分泌遺伝子生産物が発現され、循環する代謝物を浄化する。第3の戦略として、分泌可能な治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを筋肉組織に注射することができ、そこから、ポリペプチドは循環系に放出され、代謝の標的を探すようになる。この使用は例18の、筋肉内へ注射された成長ホルモン遺伝子の発現において示される。ある種のDNAセグメントは分泌を命令する「信号」としての役割を果たすことが知られており、(Wickner,W.T.and H.F.Lodish,Science230:400-407(1985))、これらは有利に使用され得る。さらに、免疫化の戦略として、筋肉細胞に免疫原ペプチドをコードするポリヌクレオチドを注射してもよく、これらのペプチドは、免疫原に対し選択された免疫反応を誘発するよう主要組織適合複合体の抗原のコンテキストにおいて筋肉細胞により提示されることになる。
筋肉以外で、注射されるポリヌクレオチドをより低い効率で取込みかつ発現させる他の組織は、それでもある種の条件下で治療用ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを生産するために注射場所として有利に使用され得る。そのような条件の1つが、たとえばコレステロールホメオスタシスと関連する肝細胞の細胞表面受容体等の特異のタイプの細胞と共同して存在しなければ有効でないポリペプチドを与えるポリヌクレオチドの使用である(Brown and Goldstein,Science232:34-47(1986))。この適用において、またたとえば酵素またはホルモンが遺伝子生産物であるような場合の多くの他の適用においては、価値ある治療結果をもたらすために、高いレベルの発現を達成する必要がない。
TGTの1つの応用は筋ジストロフィの治療におけるものである。筋ジストロフィの遺伝子的根拠はちょうど解かれ始めたところである。デュシェーヌ/ベッカー(Duchenne/Becker)筋ジストロフィに関連する遺伝子は近年クローン化され、ジストロフィン(dystrophin)と呼ばれる比較的大きなタンパク質をコードする。レトロウイルスのベクターはそれほど有用ではないようであり、なぜならそれらはジストロフィンのための比較的大きなサイズのcDNA(約13kb)を収容することができないからである。ごく最近の報告された研究は筋芽細胞を移植することに集中しているが、この方策の利用性は依然としてはっきりしないままである。明らかに、魅力的な方策はデュシェーヌを有する患者の筋肉の中においてジストロフィン遺伝子を直接発現させることであるだろう。ほとんどの患者が呼吸不全で死ぬので、呼吸に関与する筋肉が第1の目標になるであろう。
別の応用は嚢胞性線維病の治療においてである。嚢胞性線維病に対する遺伝子が最近同定された(Goodfellow,P.Nature,341(6238):102-3(Sept.14,1989);Rommens,J.et al.Science,245(4922):1059-1065(September8,1989);Beardsley,T.et al.Scientific American,261(5):28-30(1989))。徴候の著しい改善は、適当な肺細胞内の機能不全タンパク質の発現によって達成可能であるはずである。気管支の上皮細胞は適当な目標とする肺細胞であるはずである。また、それらは遺伝子の肺への点滴注入に続く遺伝子移植に利用しやすいであろう。嚢胞性線維病は常染色体の劣性障害であるので、肺の徴候を顕著に改善するには嚢胞性線維病遺伝子産物の通常のレベルのわずか5%程度を達成すればよいであろう。
中間代謝の生化学的遺伝子欠陥もまたTGTによって治療され得る。これらの病気はフェニルケトン尿症、ガラクトース血症、カエデシロップ病、ホモシスチン尿症、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、およびアデノシンデアミナーゼ欠乏症を含む。これらの障害のほとんどにおける病気の原因は、循環毒性代謝物のフェニルケトン尿症(PKU)のモデルに適合する。すなわち、酵素遮断のために、体に対して毒性のある生化学物質が体液に蓄積される。これらの障害はいくつかの理由から遺伝子療法に理想的である。第一に、患者が顕著に改善するよう循環する毒性代謝物質を顕著に十分取除くためには、酵素活性の通常のレベルのわずか5%程度を達成すればよいと考えられるからである。第二に、移植される遺伝子は、様々な組織において最もよく発現され得るであろうし、さらに毒性の生化学物質を取除くことができるであろうからである。
可逆的遺伝子療法はまた、細胞室内または核内のタンパク質発現を必要とする治療法において使用され得る。幾つかのタンパク質は核DNAにおける特定のプロモータ領域に結合することによって転写を制御することができるということが知られている。他のタンパク質はRNAに結合し、その分解、核からの輸送、または翻訳効率を制御する。このクラスのタンパク質は活性のために細胞内に配達されねばならない。組換転写または翻訳制御のタンパク質の細胞外の配達は、生物学的活性をもたらさないと考えられるが、TGTによるDNAまたはRNAの機能的配達は活性であるであろう。TGTから恩恵を被るであろうこの型の代表的なタンパク質はNEF、TAT、ステロイド受容体およびレチノイド受容体を含む。
遺伝子療法は、AIDS患者のHIV感染に対する抵抗を増加するための対策において使用され得る。AIDS抵抗性遺伝子、たとえば、NEF遺伝子または溶解性CD4遺伝子のような出芽を防ぐものをAIDS患者のT細胞に導入することにより、その患者のT細胞はそれほど活性なAIDSウイルスを生産することができなくなるであろうし、こうして免疫系の細胞をうまく調節し、T細胞依存性の免疫応答を装備する能力を改善する。かくして、本発明に従い、AIDS患者自身のT細胞群が患者の血液から分離される。これら細胞は、次にインビトロでトランスフェクトされ、それから患者の血液に再導入される。ウイルス抵抗性細胞は通常の細胞に対して選択的な利点を有し、結局、患者のリンパ系を再増殖させる。マクロファージまたは他の標的細胞に対するDNAの全身性のデリバリーは、体外の治療法に加えて使用され得る。この方法によりマクロファージ貯蔵器におけるウイルスを全滅させることは予想されないであろうが、それはT細胞のレベルを増加し、かつ患者の免疫応答を改善する。
ここに示された全身性の方法のすべてにおいて、効果的なDNAまたはmRNAの用量は、通常、約0.05μg/kgから約50mg/kgの範囲で、通常約0.005〜5mg/kgであるだろう。しかしながら、理解されるであろうように、この用量はDNAまたはmRNAによってコードされるペプチドおよび使用される特定のペプチドの活性に従って当業者には明白な態様で変化するであろう。アデノシンデアミナーゼのマウスまたはヒトへの配達について、たとえば、適当なレベルの翻訳物は、約0.5ないし5mg/kgのDNAまたはmRNAの用量で達成される。例10を参照されたい。この情報から、活性の知られた他のペプチドに対する用量が容易に決定され得る。
重要なタンパク質の欠乏に起因する病気は、これらのタンパク質をコードするDNAまたはmRNAを分化した細胞に導入することによって適当に治療されてもよい。神経成長因子および繊維芽細胞成長因子のような様々な成長因子がアルツハイマー病の動物モデルにおいて生存するニューロンの細胞に影響を及ぼすことが示されている。年をとったラットのモデルでは、NGF注入がコリン作動系ニューロンの損失を後退させた。房脳弓外傷のラットにおいては、遺伝子的に修飾された線維芽細胞からのNGF注入または分泌もまたコリン作動系機能の損失を防いだ。コリン作動系活性はアルツハイマー病を有する患者において減少する。成長因子を発現する導入された遺伝子の脳内での発現は、特定のニューロン群の機能の損失を後退させることができる。
アルツハイマー病の治療における本発明に従い、ニューロン成長因子のための遺伝子の、頭蓋腔を覆う細胞へのトランスフェクションによるDNAまたはmRNAの導入が使用され得る。特に、本発明は三次元挿入装置の使用を介する実質組織中への約10μgないし約100μgのDNAまたはmRNAの頭蓋内注射によってこの病気を治療する。具体的に、注射は内側隔壁におけるコリン作動系ニューロンを目標とする。DNAまたはmRNA注射は、5′キャップされた3′ポリアデニル化mRNAについて1日ないし3日置きに、環状mRNAについて1週間ないし21日置きに、DNAについて30日ないし60日置きに繰返される。本発明に従ってDNAの注射もまた意図される。DNAは対応する量で注射されるが、しかし、注射の頻度は非常に減少されるであろう。エピソームのDNAは、たとえば、数ヵ月にわたり活性であり得るだろうし、再注射は患者の顕著な症候の緩解に応じて必要となるにすぎないであろう。
さらに、神経伝達物質合成に寄与する酵素を、導入遺伝子から発現させることができる。たとえば、アセチルコリントランスフェラーゼに対する遺伝子を、特定領域の脳細胞(ニューロンまたはグリア)内で、アセチルコリンレベルを増やしかつ脳機能を改善するために発現させることができるであろう。
ドーパミン、ノルエピエフリン、およびGABAのような他の神経伝達物質の合成に関わる重要な酵素はクローン化されておりかつ入手可能である。これらの重要な酵素は、脳の局在化領域の中へ遺伝子移植によって局所的に増加され得るであろう。これらおよびその他の神経伝達物質の生産が増加すれば、局在化された神経伝達物質機能の操作、そして、神経伝達物質機能の障害が重大な役割を果たす広い範囲の脳の病気に、広く有効であろう。具体的には、これらの病気は、精神分裂症および躁鬱病およびパーキンソン病を含むことができるであろう。パーキンソン病を有する患者は、脳幹神経節内におけるドーパミン合成物の欠如ゆえの次第に無能化する運動性制御に苦しむということはよく認められていることである。ドーパミン合成のための律速段階は、酵素、チロシンヒドロキシラーゼによるチロシンからL-DOPAへの変換である。L-DOPAは、それから汎存酵素、DOPAデカルボキシラーゼによってドーパミンに変換される。それゆえL-DOPAでのよく確立された療法は効果的である(少なくとも最初の数年の治療のためには)。遺伝子療法は、チロシンヒドロキシラーゼおよび可能であればDOPAデカルボキシラーゼに対する遺伝子を発現させることによって同様の薬理学的効果をもたらすことができるであろう。チロシンはCNS内で容易に利用可能である。
アルファ-1-抗トリプシン欠乏症の遺伝子型は、肝臓および肺の両方の疾患をもたらし得る。肝臓疾患は、それほどよく起こらないが、異常タンパク質の蓄積によって引起こされ、遺伝子療法にそれほど馴染みやすくはないだろう。しかしながら、肺合併病には、肺内のアルファ-1-抗トリプシンの発現を増加させることを適用しやすいであろう。これは、無能化しかつ最終的には致命的な気腫ができるのを防げるはずである。
アルファ-1-抗トリプシン欠乏症はまたタバコ喫煙者においても起こり、なぜならタバコ喫煙がアルファ-1-抗トリプシン活性を減少させ、そして気腫をもたらすようセリンプロテアーゼ活性を減少させるからである。さらに、ある最近のデータはタバコ喫煙の抗トリプシン効果を大動脈の動脈瘤に結びつけている。動脈瘤もまた、アルファ-1-抗トリプシンの血液レベルを上昇させることによって防ぐことができ、なぜならこれが動脈瘤を導くプロテアーゼ活性を減少させるであろうからである。
肺の変性疾患を有する患者もまた、疾患の肺組織において蓄積する傾向がある他の毒性代謝物を取除くことができる酵素の発現から利益を得ることができる。スーパーオキシドジスムターゼおよびカタラーゼはこれらの問題を改善するためにTGTによって配達することができるであろう。
TGTは細胞表面受容体の配達を必要とする治療法において使用され得る。遺伝子の機能的な生体内配達のための原理体系を解読する必要がないということが議論され得るであろう。結局、タンパク質の合成および大規模生産のための確立された技術があり、タンパク質は遺伝子発現の最終産物である。この理論は多くのタンパク質分子に適用され、それらは細胞外で作用するか、あるいは細胞表面受容体と相互作用するものであり、たとえば、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、成長ホルモン、インスリン、インターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、エリトロポエチン(EPO)などである。しかしながら、機能的受容体に対し適当な配向でその標的細胞のプラズマ膜に挿入されるべき組換細胞表面受容体を適切に配達することに伴う薬剤配達の問題は、今まで手に負えないもののようであった。
細胞表面受容体をコードするDNAまたはRNAが本発明に従って細胞内に配達されるとき、生成するタンパク質は効果的にかつ機能的に標的細胞表面上に発現され得る。組換細胞表面受容体の機能的な配達の問題が依然として解決されないままであるならば、この療法の問題を解決する唯一の方法は遺伝子配達を介するものであろう。遺伝子発現の核または細胞質制御のための同様の論理が、RNA転写を制御する(増加または減少)ためにDNAに結合される核制御因子に適用され、さらに翻訳効率または分解を増加または減少させるためにRNAに結合する細胞質制御因子に適用される。この態様でTGTは嚢胞性線維病、筋ジストロフィおよび高コレステロール血症の治療のための療法を提供することができるであろう。
血液におけるコレステロールの上昇したレベルは、本発明に従いLDL表面受容体をコードするmRNAを肝細胞に供給することによって減少させることができる。LDLが上昇した患者の肝臓においてこの受容体の生産をわずかに上昇させることは著しい療法上の利益を有する。組換タンパク質の全身投与に基づく療法は本発明と比べものにならない。なぜなら、ただ単に組換タンパク質を投与することでは、標的細胞のプラズマ膜の中に受容体を入れることができないであろうからである。受容体はその生物学的効果を及ぼすために膜の中に適切に挿入されなければならない。受容体発現のレベルを調節することは通常必ずしも必要ではないが、より多くの発現があるとより良い。これは、本発明において使用するためのmRNAの調製に必要な分子生物学を単純化する。たとえば、LDL受容体遺伝子を含む脂質/DNAまたはRNA複合体を調製し、反復的なI.V.注射によって患者に供給することができる。脂質複合体は肝臓により主として摂取されるであろう。複合体の幾つかは肝細胞によって摂取されるであろう。肝臓におけるLDL受容体のレベルは注射の回数が増えるにつれ次第に増加するであろう。より高い肝臓LDL受容体レベルはLDLおよびコレステロールの低下をもたらすであろう。効果的なmRNAの用量は、通常、約0.1ないし約5mg/kgになるであろう。
TGTの他の有益な応用例には、HIVウイルスに感染した患者のマクロファージにチミジンキナーゼ遺伝子を導入することがある。チミジンキナーゼ遺伝子のマクロファージ貯蔵器への導入は、それらの細胞がAZTをリン酸化することをより可能にするであろう。これは、それらのAZT療法に対する抵抗を克服し、AZTがマクロファージにおけるHIV保有体を全滅することができるようにする。チミジンキナーゼ遺伝子を含む脂質/DNA複合体を調製し、静脈注射を繰り返すことにより患者に投与することができる。脂質複合体はマクロファージ貯蔵器によって主に摂取され、マクロファージにおけるチミジンキナーゼレベルの上昇をもたらすであろう。これは、AZT抵抗性細胞をAZTで治療しやすくする。チミジンキナーゼ療法はまた、HTLV IIIプロモータの制御下にチミジンキナーゼ遺伝子をおくことによって集中させることができる。この戦略によれば、チミジンキナーゼは、HIVウイルスによる細胞の感染およびプロモータを活性化するtatタンパク質の製造時にのみ合成されるはずである。類似の療法により、同じHTLV IIIプロモータの制御下でジフテリアトキシンに対する遺伝子を細胞に供給することができ、致命的な結果をHIV感染の後にのみ細胞内に起こすことができる。
これらのAIDS患者は、TGT法に従ってマクロファージにインターフェロン遺伝子を供給することによっても治療され得るであろう。マクロファージで局部的に集中してインターフェロン生産のレベルが増加すれば、マクロファージはHIV感染に対してより抵抗性になり得る。インターフェロンのレベルが局所的に高い間は、全身的なレベルは低いままであり、それにより組換インターフェロン投与後に観察されるような全身性の毒性効果を避けることができる。インターフェロン遺伝子を含む脂質/DNAまたはRNA複合体を、調製し、静脈注射を繰り返すことにより患者に投与することができる。脂質複合体はマクロファージ貯蔵器によって主に取込まれ、マクロファージにおいてインターフェロンの局部的に集中したレベルの上昇をもたらすであろう。これは、HIV感染に対するマクロファージの感受性を低くする。
DNAテンプレート上のジフテリアトキシン遺伝子に癌細胞において当該遺伝子の発現を集中させるための組織特異的エンハンサを供給することにより、TGTを使用して様々な癌が治療され得る。ジフテリアトキシンの細胞内発現は細胞を殺す。これらのプロモータは、組織特異的なものとすることができ、たとえば膵臓癌に対し膵臓特異的プロモータを使用することができる。膵臓細胞に配達された機能的ジフテリアトキシン遺伝子は膵臓全体を全滅させ得るだろう。この戦略は膵臓癌患者のための治療として使用し得るであろう。患者は膵臓なしで生存するのに克服できないような困難を伴うことはないだろう。組織特異的エンハンサは、ジフテリアトキシンの発現が膵臓細胞のみにおいて起こることを確実にするであろう。組織特異的エンハンサの制御下でジフテリアトキシン遺伝子を含むDNA/脂質複合体を、膵臓に血液を送るカニューレ挿入された動脈の中に直接導入することができる。注入は膵臓組織を全滅させるのに必要な時間、所定の投与計画に基づき行なわれるであろう。リシンまたはコブラの毒液因子またはエンテロトキシンに対する遺伝子のようなジフテリアトキシン以外の他の致命的な遺伝子が同様の効果で用いられるであろう。
また、癌細胞のような周期の早い(早く分裂する)細胞だけを殺すであろう細胞周期特異的なプロモータを使用することによって癌を治療することもできるであろう。細胞周期特異的な抹殺はまた、サイクルを繰り返す細胞においてのみ安定しているキラータンパク質(たとえば、S期の間だけ安定なヒストンmRNA)をコードするmRNAを設計することによって達成されるであろう。また、胎児の肝臓細胞において、かつより胎児の状態へ脱分化した胚芽腫細胞においてのみ発現されるアルファ-フェトプロテインの使用のような発生上特異的なプロモータを使用することもできるであろう。
ある種の癌の癌特性を抑制する網膜芽腫遺伝子(およびその仲間の他のもの)のような遺伝子の移植によって特殊化された癌もまた治療することができるであろう。
TGT戦略はペプチドの制御され持続される配達を提供するために使用され得る。従来の薬剤および組換タンパク質薬剤は徐放デバイスから利益を得ることができる。徐放デバイスの目的はより長い期間にわたり薬剤を配達することであり、そのため必要とされる服用の回数が減少される。これは、患者の便利さおよびコンプライアンスにおいて改善をもたらす。徐放を達成することを意図された様々な種類の技術が現われている。
TGTは治療ペプチドの制御された配達を得るために使用され得る。制御された発現は細胞特異的プロモータを含む適当なプロモータを使用することによって得ることができる。本発明によって配達される適当なペプチドは、たとえば、成長ホルモン、インスリン、インターロイキン、インターフェロン、GMCSF、EPOなどを含む。特定の用途に依存して、選択されたDNAまたはRNA構造物が、注射された細胞から、全身性循環に遺伝子生産物を分泌させるように設計することができる。
TGTはまた、治療ポリペプチドまたはペプチドの制御された配達を含み、それは、細胞において発現されるべきポリヌクレオチドと共に、転写および翻訳のプロセスを制御する調節タンパク質をコードする付加的なポリヌクレオチドを含ませることによって達成される。これらのポリヌクレオチドは、ポリペプチド発現について促進制御または抑制制御のどちらかをするように作用し、核内においてかまたは細胞質内におけるタンパク質翻訳事象を制御することによってのどちらかでそれらの効果を及ぼすものを含む。
T7ポリメラーゼ遺伝子は、TGTのより長い持続期間の効果を得るために関心のある遺伝子と共に使用することができる。エプスタインバールウイルスに対する複製起点領域から得られるようなエピソームのDNAを使用することができ、同様に、哺乳類細胞において機能的に活性であり、好ましくはヒトの細胞において活性である、他の複製起点からのものも使用することができる。これは、レトロウイルスベクターに共通する好ましくない統合事象の危険を冒すことなく、多くの細胞分裂の後、細胞から発現を得る方法である。それ自身のプロモータ制御下にあるカルシトニン遺伝子を肝臓または皮膚のような所定の部位に機能的に導入することができれば、カルシトニンの放出を制御することができるであろう。高カルシウム血症を有する癌患者はこの療法が適用され得るグループであるだろう。
TGTを使用する他の遺伝子療法は、ポリペプチドに翻訳されることなく、治療効果を有するポリヌクレオチドの使用を含むことができる。たとえば、TGTは特定の遺伝子の発現を止めるためのアンチセンスポリヌクレオチドの配達において使用され得る。従来のアンチセンス方法論は有効性が乏しいという欠点を有し、それは部分的には、配達されるオリゴヌクレオチド配列が短すぎるからである。しかしながら、TGTでは十分な長さのアンチセンス配列が短いオリゴマーと同様に容易に配達され得る。アンチセンスポリヌクレオチドは、内因性のヌクレオチド配列へそれら自身がハイブリダイズする(それによってその転写または翻訳を妨げる)DNAまたはRNA分子であり得る。その代わりに、アンチセンスDNAは内因性の配列にハイブリダイズするRNAをコードして、翻訳を妨げてもよい。この特質におけるTGTの他の使用は、その存在が病理状態を引起こす欠陥性のまたは不完全な内因性tRNAまたはrRNAを置き替えるためにtRNAまたはrRNAをコードするポリヌクレオチドを配達することを含む。
細胞特異的プロモータはまた、標的細胞にのみ遺伝子の発現を許容するために使用され得る。たとえば、ある遺伝子は腫瘍の特定の型においてのみ成人において高度にプロモートされる。同様に、特殊化された組織、たとえば、目の水晶体組織のようなもののための組織特異的プロモータも同定されており、異種の発現系において使用されている。
上述した療法以外に、本発明の方法は牛乳の生産を増加するため家畜動物に、または食肉のために育成されている動物の筋肉塊に、ポリヌクレオチドを配達するために使用され得る。
DNAおよびmRNAワクチン
本発明の方法に従って、発現可能なDNAおよびmRNAはそこでポリヌクレオチド翻訳産物を形成するために細胞に配達され得る。もし核酸が適切な制御配列を含むのであれば、それらはコードされたタンパク質の比較的多量の合成を誘導する。細胞に配達されるDNAおよびmRNAが免疫ペプチドをコードするとき、本発明の方法は、細胞内ウイルスを含む感染因子あるいは腫瘍細胞に対し、改善されたより効果的な免疫を達成するために適用することができる。
すべての脊椎動物の免疫系は同様に作用するので、上述した用途は哺乳類および鳥類および魚類を含むすべての脊椎動物系において実現され得る。
本発明の方法は、インビボで動物の細胞にポリヌクレオチドを直接注射することにより、あるいは、ある動物の細胞にインビトロでトランスフェクションした後当該細胞をその動物の体内に再導入することにより、適用され得る。ポリヌクレオチドは筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、または血球を含む動物の体の様々な細胞に配達され得る。ポリヌクレオチドのインビボでの直接的配達は、筋肉または皮膚の細胞に対するものが好ましい。ポリヌクレオチドは注射器を使用して筋肉または皮膚に注射されてもよい。それらはまたワクチンガンを使用して筋肉または皮膚に配達されてもよい。
ある応用において、特にインビトロでのトランスフェクションでカチオン性脂質が細胞のトランスフェクションを容易にするために使用できることが最近示されてきた。カチオン性脂質に基づくトランスフェクション技術は、他の方法より好ましく、リン酸カルシウム、DEAEデキストランまたはエレクトロポレーション(電気穿孔)法より効率的でかつ便利であり、また、前述のように、レトロウイルス仲介のトランスフェクションは、癌遺伝子の活性化または他の好ましくない結果を生じさせる宿主細胞ゲノムへの統合事象をもたらし得る。カチオン性脂質の技術がメッセンジャーRNAで効果的にあるということは、本方法に対するさらなる利点であり、なぜならRNAは細胞内ヌクレアーゼにより迅速に代謝され、ホストゲノムに統合されないからである。高レベルの可逆性発現をもたらすトランスフェクション系は、安定して形質転換されたクローンの選択および増殖を必要とする他の方法より好ましい。なぜなら望ましい最初の標的細胞の多くは培養において迅速に分裂しないからである。
カチオン性リポソームを用いて高い効率で細胞をトランスフェクトする能力は免疫化のための他の方法を提供する。抗原のための遺伝子は動物から取出された細胞に導入される。ここで抗原を発現するトランスフェクトされた細胞は、動物に再注入され、免疫系は、(ここで)内因性の抗原に応答し得る。このプロセスは、リンパ細胞をさらに刺激するためのアジュバントまたはリンフォカインのどちらかを一緒に注射することにより促進することができるであろう。
抗原のための遺伝子を含む核酸を用いたワクチン処置もまた、細胞の免疫応答を特に目標とする方法となり得る。分泌されるタンパク質を発現する細胞は、通常の抗原処理経路に入り、体液性と細胞毒性の応答の両方を生ずるであろう。分泌されないタンパク質に対する応答はより選択的である。クラスI MHC分子だけを発現する細胞において合成された分泌されないタンパク質は、細胞毒性のワクチンのみを生産することが予期される。クラスIおよびクラスII分子の両方を有する細胞において同じ抗原が発現されると、細胞障害性およびヘルパーT細胞の両方を刺激することにより、より強力な応答が生じ得る。免疫応答の強化はまた、抗原のための遺伝子を抗原のペプチドフラグメントと共に注入することによって可能となり得る。抗原は、細胞の免疫系にクラスI MHC分子を介して提示され、一方ペプチドはヘルパーT細胞を刺激するためにクラスII MHC分子を介して提示される。いずれの場合でも、この方法は以前可能でなかった方法で免疫応答を刺激し調節する方法を提供する。
サブユニットワクチンの主たる不利な点は、糖タンパク抗原は抗原を作るために使用される組換発現系において正確に修飾されることがほとんどないということである。糖タンパク質抗原のための遺伝子を導入すれば、病原体タンパク質と同様に、タンパク質生産物が同じ腫および細胞において合成され、修飾されかつ処理されることが保証されるであろう。こうして、ヒトウイルス糖タンパク質のための遺伝子の発現は、糖残基の正しい補足を含むであろう。これは重要であり、なぜなら幾つかのウイルス系における中和抗体の本質的な成分が炭水化物エピトープに向けられるということが示されているからである。
免疫応答のための候補である任意の適当な抗原は、体液性のものであろうと細胞性のものであろうと、核酸形において使用され得る。細胞源は、個体から取られた繊維芽細胞とすることができ、これは、クラスI MHC分子のみを発現する便利な細胞源を提供する。その代わりに、末梢血細胞を迅速に全血から分離して、クラスIおよびクラスII MHCタンパク質の両方を含む細胞源を提供することができる。それらはさらに、もし必要であれば、B細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞またはマクロファージ/単球細胞に分別することができる。骨髄細胞はそれほど分化されていないリンパ細胞の源を提供し得る。すべての場合において、細胞は、抗原のための遺伝子を含むDNAでか、またはその遺伝子から転写された適当にキャップされポリアデニル化されたmRNA、環状RNA、化学的に修飾されたRNA、または5′キャッピングを必要としないRNAのいずれかでトランスフェクトされるであろう。トランスフェクトするヌクレオチドの選択は、必要な発現の持続期間に依存し得る。ワクチン接種の目的のためには、mRNAトランスフェクションにおいて起こるように、免疫原性ペプチドの可逆的発現が好ましい。トランスフェクトされた細胞は動物に注射され、発現されたタンパク質は処理され、通常の細胞の経路により免疫系に与えられる。
このような方策はマウスのモデル系において細胞毒性免疫を生ずるために使用されてきた。細胞株、悪性の持続的に成長する細胞はDNAで安定して形質転換され得る。細胞が動物に注射されたとき、それらは発現された抗原に対する細胞性免疫を誘導する。カチオン性脂質配達系は、患者から取られた通常の悪性でない細胞にまでこの方策を拡張することを可能にするであろう。
細胞性免疫を目標とするこの方策に対する幾つかの応用がある。第1のものは、必要とされる抗体が知られているウイルスに対するワクチン接種、または促進されるウイルス感染に対するワクチン接種である。ここで適用し得る2つの対策がある。免疫化の間、細胞性経路を特に目標とすることができ、こうして促進抗体を排除する。一方、感染性を促進する体液性エピトームを排除する切り詰められた抗原の遺伝子でワクチン接種することができる。
DNAまたはmRNAのワクチン療法を使用すれば、抗原性の弱い腫瘍に対する効果的な細胞障害性T細胞応答を誘発する手段を同様に提供することができるであろう。我々は、たとえば、もし細胞の内側で既に処理された型でmRNAによって腫瘍特異的抗原が発現され、細胞表面上のクラスI分子に直接組込まれるならば、細胞障害性T細胞応答が引出されるであろうことを提案する。
第2の応用は、この方策が潜伏ウイルス感染を治療するための方法を提供するということである。幾つかのウイルス(たとえば、B型肝炎、HIVおよびヘルペスBウイルス群)は、ウイルスが細胞内で非活性または部分的に活性な型で維持される潜伏感染を確立し得る。このような感染を治療する方法はほとんどない。しかしながら、潜伏ウイルスタンパク質に対抗する細胞溶解の免疫を誘導することによって、潜伏感染した細胞は標的とされ、排除されるであろう。
この方策の関連のある応用は、慢性の病原体感染の治療に対してである。ゆっくり複製され、かつ細胞から細胞へ直接広がる病原体の多数の例がある。これらの感染は慢性であり、幾つかの場合は数年または数十年続く。これらの例は緩慢なウイルス(たとえばビスナ)、スクレーピー因子およびHIVである。病原体のタンパク質に対する細胞性応答を誘導することによって感染した細胞を排除することができる。
また、この方策は悪性疾患の治療に対しても適用可能であり得る。悪性状態に対して特異的であるタンパク質に対する細胞性免疫応答を開始するワクチン接種は、もし活性化された癌遺伝子、胎児性抗原、または活性化マーカーであれば、これらの細胞の排除を結果としてもたらすであろう。
DNA/mRNAワクチンの使用は、かくして、通常乏しい免疫応答しか引出さないあるウイルスタンパク質および癌特異的抗原の免疫原性を大いに強化する。mRNAワクチン法は、ヘルペスウイルス、非A型、非B型肝炎、およびHIVからの不十分な免疫原性のウイルスタンパク質に対抗する細胞障害性T細胞免疫の誘起に適用可能であるはずで、また、それはこれらのウイルスのインビトロ増殖に伴う危険および困難をとり除くであろう。ウイルス被覆タンパク質のような細胞表面抗原(たとえば、HIVgp120)に関し、抗原は主要組織適合複合体(MHC)のコンテクストにおいて標的細胞の表面に発現され、それはより適当な強力でかつ現実的な免疫応答をもたらすことが予期されるであろう。弱毒化ウイルスワクチンでしばしば観察されるより有効な免疫応答をもたらすのはこの因子である。TGTによる単一抗原遺伝子の配達は、不適当な弱毒化ゆえに低頻度の疾患をもたらし得る弱毒化ウイルスより遥かに安全である。
ワクチン開発段階の間に活用され得るTGTのさらに他の利点がある。ワクチン開発に伴う困難の1つは、最適な免疫応答のため、抗原の異なった構造的変形物をスクリーニングする必要があるということである。もし変形物が組換源から誘導されれば、抗原性について試験され得る前に、通常タンパク質を発現させ、純化しなければならない。これは骨の折れ、かつ時間のかかるプロセスである。インビトロ突然変異誘発では、所定の抗原の多数のクローンを得、かつ配列決定することが可能である。もしこれらの抗原がTGTによるDNAまたはRNAレベルで抗原性に対してスクリーニングされ得るならば、ワクチン開発プログラムはより早く進行され得るであろう。
また、DNA/mRNAワクチンの場合、タンパク質抗原は、決して直接血清抗体に晒されないが、mRNAの翻訳に続き、トランスフェクトされた細胞自身によって常に生産される。これゆえ、アナフィラキシーは問題とならないはずである。こうして、本発明は患者がアレルギー反応の恐れなく、繰返し免疫化されることを可能にする。本発明のDNA/mRNAワクチンの使用はこのような免疫化を可能にする。
抗原の免疫原性をさらに強化するようにこの技術を修飾し得る態様は、容易に想像し得る。T細胞免疫化は、マクロファージまたは他の細胞表面上のクラスIおよびクラスII組織適合抗原の密度を増加することによって、および/または、リンパ球増殖をプロモートするサイトカインを放出するトランスフェクトされた細胞を誘発することによって増大され得る。この目的のために、抗原のためのmRNAを含む同じリポソームにインターフェロンまたはインターロイキン-1をコードする他のmRNA種を組込んでもよい。これらのサイトカインはマクロファージ活性化を強化することが知られている。それらの全身的な使用は副作用ゆえに阻止されてきた。しかしながら、mRNAに、抗原に対するmRNAと共に包含されるときには、それらは抗原を協同で発現する細胞によってのみ発現されるはずである。この状況下で、T細胞免疫性の誘導は大いに強化され得る。
治療処方物
ポリヌクレオチド塩:ここに記述された製薬的に許容されるポリヌクレオチドの塩の投与は、本発明の範囲内に含まれる。このような塩は有機塩基および無機塩基を含む製薬的に許容される非毒性塩基から調製されてもよい。塩はナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む無機塩基から誘導される。塩は、1級、2級および3級アミンの塩、塩基性アミノ酸等を含む製薬的に許容される非毒性の有機塩基から誘導される。医薬としての塩についての役に立つ議論として、その開示がここに引用され援用される、S.M.バージ(Berge)他のJournal of Pharmaceutical Sciences66:1-19,1977年を参照されたい。
好ましい配達の方法である注射のためのポリヌクレオチドは、単位用量形態のアンプルで、あるいは複用量の容器で準備することができる。ポリヌクレオチドは、油性のまたは好ましくは水性の賦形剤において、懸濁液、溶液、または乳剤のような形で存在してもよい。その代わりとして、ポリヌクレオチド塩は、投与のときに無菌の、パイロジェンを含まない水のような適当な賦形剤で再形成するために凍結乾燥された形であってもよい。液体および再形成されるべき凍結乾燥された形の両方とも、注射される溶液のpHを適当に調整するのに必要な量の、作用物質、好ましくは緩衝剤を含むであろう。任意の非経口の用途のため、特にもし処方物が静脈に投与されるべきであれば、溶質の総濃度は製剤が等張、低張、または弱く高張であるように制御されるべきである。糖のような非イオン材料は、張度を調整するために好ましく、かつスクロースは特に好ましい。これらの形のいずれも、でんぷんまたは糖、グリセロールまたは塩化ナトリウム水溶液のような適当な処方の作用物質をさらに含んでもよい。1単位用量の組成物は、液体であろうと固体であろうと、0.1%から99%のポリヌクレオチド材料を含んでもよい。
使用の前にポリヌクレオチドが包装される単位用量アンプルまたは複用量容器には、医薬として有効な用量または有効な用量の倍数について適当な量のポリヌクレオチドまたは溶液を封入した密封容器がある。ポリヌクレオチドは無菌の処方物として包装され、密封容器は使用まで処方物の無菌性を保つよう設計される。
ポリヌクレオチドが包装されている容器にはラベルが貼られ、そのラベルは政府機関、たとえば食品医薬品局(the Food and Drug Administration)によって規定された形式において注意書を有し、その注意書は、ヒトへの投与のためのその中のポリヌクレオチド材料の製造、使用、または販売の連邦法(Federal law)の下でのその機関による承認を反映するものである。
連邦法は、ヒトの治療における薬事的な作用物質の使用は連邦政府の機関によって承認されることを要求する。施行に対する責任は食品医薬品局の責任であり、それは21U.S.C.301-392において詳細に示されているこのような承認を確実にするための適当な規制を公布する。動物の組織から作られる製品を含む生物学的材料に対する規制は42U.S.C.262の下で規定される。同様の承認が大抵の外国によっても要求される。規制は国によって違うが、個々の手続は当業者によく知られている。
用量および投与の方法
投与されるべき用量は、治療されている被験者の状態および大きさならびに治療の頻度および投与の方法に大きく依存する。用量および頻度を含む療法を継続するための養生法は、最初の応答および臨床判断によって導かれてもよい。組織の間質空間の中への注射する非経口法が好ましいが、しかしエアロゾル処方物の吸入のような他の非経口法が、たとえば、鼻、喉、気管支組織または肺の粘膜へのような特定の投与において必要とされるかもしれない。
好ましいプロトコルでは、水性担体中に裸のポリヌクレオチドを含む処方物は、部位毎に10μlから約1mlの量で組織に注射される。処方物におけるポリヌクレオチドの濃度は約0.1μg/mlから約20mg/mlである。
TGTの調節
DNAに基づく遺伝子移植プロトコルが、転写のための適当なシグナル(プロモータ、エンハンサ)およびmRNA転写を処理するための適当なシグナル(スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル)を必要とするように、mRNAに基づくTGTも、トランスフェクされたmRNAの安定性を強化するであろう要素と共に、効率的でかつ正確な翻訳のために適当な構造および配列要素を必要とする。
一般的に、翻訳効率は、RNAの5′非コード領域または非翻訳領域(5′UTR)における特定の配列要素によって制御されることが発見されている。正の配列モチーフは翻訳開始共通配列(GCC)ACCATGG(Kozak,Nucleic Acids Res.15:8125(1987))および5G7メチルGpppGキャップ構造(Drummond et al.Nucleic Acids Res.13:7375(1985))を含む。負の要素は分子5′UTRステムループ(stem-loop)構造(Muesing et al.Cell48:691(1987))およびAUG配列または5′UTRにおける適当なAUGによって先行される短いオープンリーディングクレーム(Kozak,上記、Rao et al.Mol and Cell.Biol.8:284(1988))を含む。さらに、ベータグロブリン5′UTRのような所定の配列モチーフは、(異種5′UTRに隣接して置かれるとき)知られていない機構によって翻訳を強化するように作用し得る。環境シグナルに応答して真核生物の翻訳効率を制御する特定の5′UTR配列の例もまたある。これらは、ヒトフェリチン5′UTR(Hentze et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:6730(1987))およびショウジョウバエhsp705′UTR(Klemenz et al.,EMBO Journal4:2053(1985))を含む。さらに、通常のキャップ依存性翻訳および翻訳制御を迂回し、ウイルスまたはキメラのmRNAの能率的な翻訳を仲介することができるウイルス5′UTR配列がある(Dolph et al.,J.of Virol.62:2059(1988))、Pelletier and Sonnenberg,Nature334,320(1988))。したがって、mRNAに基づくTGTプロトコルは、関心のあるタンパク質に対するコード配列に隣接する適当な5′UTR翻訳要素を含む。
翻訳関係に加えて、mRNA安定性が、mRNAに基づくTGTプロトコルの開発の間、考慮されねばならない。一般的な意見として、キャッピングおよび3′ポリアデニル化は真核性mRNA安定性の主たる正の決定因子であり(Drummond,上記、Ross,Mol.Biol.Med.5,1(1988))、mRNAの5′および3′末端を分解から保護するよう機能する。一方、真核生物のmRNAの安定性に影響を及ぼす調節要素もまた明らかにされてきており、したがってmRNA TGTプロトコルの開発において考慮されねばならない。これらのうち最も注目に値しかつ明らかにされているものは、多くの短い半減期のmRNAにおいて発見されたウリジンの多い3′非翻訳領域(3′UTR)デスタビライザー(destabilizer)配列である(Shaw and Kamen Cell46:659(1986))。しかしながら、それらがmRNA脱安定化をもたらす唯一の配列モチーフでないという証拠がある(Kabnick and Housman,Mol.and Cell.Biol.8:3244(1988))。さらに、環境刺激に応答して細胞性mRNAの半減期を調節する特異的調節配列もまた明らかにされている。これらは、ビテロゲニンmRNA安定性のエストロゲンにより仲介される調節(Brock And Shapiro.Cell34:207(1983))、特異的3′UTRモチーフに起因するトランスフェリン受容体mRNAの安定性の鉄依存性調節(Mullner and Kuhn,Cell53:815(1988))、カゼインmRNAの安定性のプロラクチンにより仲介される制御(Guyette et al.,Cell17:1013(1989))、多数の刺激に対応するフィブロネクチンmRNAの安定性の調節(Dean et al.,J.Cell.Biol.106:2159(1988))、およびヒストンmRNA安定性の制御(Graves et al.,Cell48:615(1987))を含む。さらに、正常な真核生物のmRNA翻訳制御を迂回するウイルスRNA配列が案出されたように、同様に、あるウイルスRNA配列は3′ポリアデニル化なしに安定性を与えることができるようである(McGrae and Woodland,Eur.J.of Biochem.116:467(1981))。例21に従いEMCのような幾つかの5′はキャップなしで機能することが知られている。安定性調節要素のこの例外もまたmRNAに基づくTGTプロトコルを開発する際に注意深く考慮されねばならず、mRNA治療の効果を調節するのに使用され得る。
リポソーム形成材料
リポソームを形成する科学は今ではよく開発されている。リポソームは単一層または多重層の小胞であり、親油性の材料で形成された膜部分および内部の水性部分を有する。水性部分は本発明において標的細胞に配達されるべきポリヌクレオチド材料を含むのに使用される。
ここで使用されるリポソーム形成材料は四級アンモニウム基のようなカチオン性基、および約6ないし約30の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル基のような1つまたはそれ以上の親油性基を有することが好ましい。適当な材料の1つの群はヨーロッパ特許公開番号第0187702号において記述される。これらの材料は次の式を有する。

式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、6〜22の炭素原子のアルキルまたはアルケニルであり、R3、R4およびR5は、同じかまたは異なり、水素、1〜8炭素のアルキル、アリール、7〜11炭素のアラルキルであり、あるいはR3、R4およびR5の2つまたは3つが共同でキヌクリジノ、ピペリジノ、ピロリジノ、またはモルホリノを形成し、nは1〜8であり、かつXは製薬的に許容されるハロゲンのような陰イオンである。これらの化合物は上で示された特許出願において詳しく書かれているように準備されてもよいし、その代わりにとして少なくともそれらの化合物のうちの1つ、N-(2,3-ジ-(9-(Z)-オクタデセニルオキシ))-prop-1-イル-N,N,N,-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)が、ベセスダ・リサーチ・ラボラトリーズ(Bethesda Research laboratories)(BRL)、ゲティズバーグ(Gaithersburg)、メリーランド州(Maryland)20877、アメリカ合衆国(USA)より市販されている。
これらの4級アンモニウムジエーテル化合物は、しかしながら、幾つかの欠点を有する。エーテル結合ゆえに、それらは生体内で容易に代謝されない。長期間の治療が意図されているとき、これらの材料が組織に蓄積し、究極的には脂質蓄積疾患および毒性副作用の結果をもたらす可能性がある。したがって、本発明における使用のための組成物の好ましいクラスは次の式を有するものである。

式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、5〜21の炭素原子のアルキルまたはアルケニルであり、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、水素、1〜8炭素のアルキル、アリール、7〜11炭素のアラルキルであり、あるいはR3、R4およびR5の2つまたは3つが共同でキヌクリジノ、ピペリジノ、ピロリジノ、またはモルホリノを形成し、nは1〜8であり、かつXはハロゲンのような製薬的に許容される陰イオンである。これらの化合物はカルボン酸およびアルキルハロゲン化物を含む求核置換のような従来の技術を使用して、エステル交換、または酸もしくは酸ハロゲン化物を用いるアルコールの縮合により調製されてもよい。
さらに、多くの適当なリポソーム形成カチオン性脂質化合物が文献に記述されている。たとえば、L.Stamatatos,et al.,Biochemistry27:3917-3925(1988);H.Eibl.et al.,Biophysical Chemistry10:261-271(1979)を参照されたい。
リポソームの調製
本発明において使用するための適当なリポソームは商業的に入手可能である。たとえば、DOTMAリポソームはベセスダ・リサーチ・ラボラトリーズ、ゲティスバーグ、メリーランド州からリポフェクチン(Lipofectin)の商標で入手可能である。
その代わりとして、容易に入手可能な、または前述の形のあらたに合成された開始材料からリポソームを調製することができる。DOTAPリポソームの調製は例6に詳細に記述されている。DOTMAリポソームの調製は文献において説明され、たとえば、P.Felgner,et al.,Proc.Nat’1 Acad.Sci.USA84:7413-7417を参照されたい。同様の方法が他のカチオン性脂質材料からリポソームを調製するのに使用され得る。さらに、従来のリポソーム形成材料が負の電荷または中性の電荷を有するリポソームを調製するのに使用され得る。このような材料はホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン等を含む。これらの材料もまた有利に、0%〜約75%の割合でDOTAPまたはDOTMA開始材料と混合され得る。
従来の方法が他の非カチオン性リポソームを調製するのに使用され得る。これらのリポソームはカチオン性リポソームと同様に容易に細胞壁と融合するものではない。しかしながら、それは生体内でマクロファージによって摂取され、したがってポリヌクレオチドのこれらの細胞への配達のため特に効果的である。たとえば、市販のジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOGP)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)がコレステロールの添加と共にまたは添加なしで、従来のリポソームを作るのに様々な組合せで使用され得る。こうして、たとえば、DOPG/DOPC小胞が音波処理バイアルの中への窒素ガスの流れの下でDOPGおよびDOPCの各々50mgを乾燥することによって準備され得る。サンプルは真空ポンプ下に一晩置かれ、かつ脱イオン水で次の日、水和される。サンプルはそれからキャップされたバイアルで、水浴(bath)が15℃で循環される間最大に設定される倒置されたカップ(バス型)プローブを備えたヒートシステムモデル350ソニケータを使用し、2時間音波処理される。一方、負に荷電した小胞が、多重層小胞を生産するために音波処理なしで、または別々のサイズの単一層小胞を生産するためにヌクレオポア(nucleopore)膜を介する射出によって、調製され得る。他の方法が当業者に知られ、かつ利用可能である。
本発明は以下に与えられた23の例を使用して詳細に説明されるが、しかしながら、記述される方法は、ここで記述されるように広く適用可能であり、かつそれらの例によって制限されるように意図されていない。
例1(参考例):リポソームを形成するDOTAPの調製
カチオン性リポソーム形成材料1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)がL.Stamatatos,et al.(上記)またはH.Eibl,et al.(上記)によって報告されているように調製される。
端的には、Stamatatos,et al.は1mmolの3-ブロモ-1,2-プロパンジオール(アルドリッチ(Aldrich))が、5mmolの乾燥ピリジンを含む乾燥した、アルコールを含まないジエチルエーテル(20ml)において3mmolのオレイルクロリド(オレイン酸およびオキサロイルクロリドから新たに調製された)で20℃で48時間アシル化されたということを報告している。ピリジニウムヒドロクロリドの沈殿物がフィルタ除去され、かつ濾液は窒素下で濃縮され、かつ10mlヘキサンにおいて再溶解される。ヘキサン溶液は、pH3.0の等しい量の1:1メタノール/0.1N水性NCOONaで3回、1:1メタノール/0.1N水性NaOHで3回、および1%の水性NaClで1回洗われた。粗3-ブロモ-1,2-ビス-(オレオイルオキシ)プロパンは、それから25℃で乾燥したジメチルスルホキシド(30ml)における15%のトリメチルアミンの溶液で封じられた管において72時間撹拌された。この反応の生成物はクロロホルム(200ml)で溶解され、それは1:1メタノール/100mM水性HCOONa、pH3.0で繰返し洗われ、それから真空で淡黄色のオイルを生ずるように蒸発させられた。この材料は、シリシック酸(Bio-Sil A,Bio-Rad Laboratories)のカラム上で精製され、クロロホルム中0〜15%グラジエントのメタノールで溶出され、9〜10%メタノールにおいて純粋な型で所望の産物をもたらす。精製された産物は無色で、50:15:5:5:2のCHCl3/アセトン/CH3OH/CH3COOH/H2Oで展開された薄層クロマトグラフィープレート(シリカゲルG)上の0.4のRfで移動する粘性油であった。
例2(本発明のためのDNA調製例):関心のある任意の遺伝子のためのDNAテンプレートを作るためのプラスミドの調製
所望のポリペプチドをコードするmRNAの生産のための適当なテンプレートDNAは標準の組換DNA方法論に従って調製することができる。以前に報告されているように(P.Kreig,et al.,Nucleic Acids Res.12:7057-7070(1984))、5′キャップはmRNAの翻訳を容易にする。さらに、3′フランキング領域およびポリA尾部はインビボでのmRNAの半減期を増加すると考えられている。
ベクターpSP64Tをクローン化する容易に入手可能なSP6は、β-グロビンからの5′および3′ブランキング領域、効率的に翻訳されるmRNAを与える。このプラスミドの構成はKreig,et al.(上記)によって詳細にされ、かつここに引用により援用される。開始コドンを含む任意のcDNAがこのプラスミドに導入され得、そして、得られるテンプレートDNAからmRNAが調製され得る。この特定のプラスミドは、関心のあるポリペプチドをコードする任意の必要なcDNAを挿入するためにBglIIで切断され得る。
線状化し、それからインビボでSP6RNAポリメラーゼを用いて転写するとき、良い結果をpSP64Tで得ることができるが、我々はファージT7RNAポリメラーゼと共にpSP64Tのアフリカツメガエルβ-グロビンフランキング配列を使用することを好む。これらのフランキング配列は小さな(約150bp)Hind III-Eco RIフラグメントとしてpSP64Tから精製される。これらの配列は、それから、T4DNAリガーゼによりpIBI31(インターナショナル・バイオテクロノジーズ・インコーポレイティッド(International Biotechnologies,Inc.)ニューヘブン(Newhaven)コネチカット州(Connecticut)06535)から入手可能)からの精製された線状のHind III-Eco RIフラグメント(約2.9Kbp)の中へ挿入される。得られたプラスミド、pXBGと命名は、配向についてスクリーニングされ、かつE.coliにトランスフォームされる。これらのプラスミドは、2つのアフリカツメガエルβ-グロビン配列の間に位置するユニークなBgl II制限部位において関心のある任意の遺伝子を受けいれるように適合する。
例3(本発明のためのプラスミド調製例):クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードするプラスミドの調製
外因性ポリヌクレオチドのインビボ発現を明らかにする便利なマーカー遺伝子は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、CATである。アフリカツメガエルβ-グロビン5′および3′配列によって隣接されるCAT遺伝子を含むプラスミドpSP-CATは、CAT遺伝子をpSP64TのBg III部位に加えることによって調製された。我々は、pSV2-CAT(Accession No.37155 the American Type Culture Collection,Rockville,Maryland、から入手可能)からの小さいBamHI/Hind IIIフラグメントの形態でCAT遺伝子を使用した。しかしながら、CAT遺伝子は一般的に分子生物学において使用されるものであり、数多くのソースから入手可能である。CAT BamHI/Hind IIIフラグメントおよびBg III-開裂pSP64Tの双方は、平滑末端を形成するためにクレノウ(Klenow)フラグメントとともにインキュベートされ、それからT4DNAリガーゼで結合されpSP-CATを形成した。
小さいPstI/Hind IIIフラグメントがそれから生成され精製された。このフラグメントはpSP64Tの5′および3′β-グロビンフランキング配列の間にCAT遺伝子を含む。pIBI31(International Biotechnologies,Inc.)はPstIとHind IIIとで開裂され、長い線状の配列が精製された。このフラグメントはそれからCAT-遺伝子含有配列と合わされ、フラグメントはT4DNAリガーゼで結合され、pT7CAT Anで表わされるプラスミドを形成した。クローンはXgalとアンシピリン耐性を用いるβ-ガラクトシダーゼ活性に基づいて選択される。
例4(本発明のためのDNA調製例):精製されたDNAテンプレートの調製
例3からのプラスミドDNAは、RNAseがない場合を除いて、細菌性RNAを取り除くために2CsClスピンを使用してマニアティス(Maniatis)(上述)により増殖させて調製する。特定的には、例3からのpT7CAT Anを含むE.coliをアンピリシン含有LB培地で増殖させた。細胞はそれからSorvall RC-5遠心分離機(E.I.DuPont,Burbank,California91510)において10分間5000rpmで遠心することによってペレット化され、冷TE,pH8.0に再懸濁され、再び、5000rpm.で10分間遠心分離され、50mMグルコース、25mMトリス(Tris)-Cl pH8.0、10mM EDTAおよび40mg/mlリゾチームの溶液に再懸濁された。ときどき倒置しながら5〜10分間インキュベーションした後、1%SDSを含む0.2 NaOHが加えられ、0℃で10分経過後3M酢酸カリウムおよび2M酢酸が続いた。さらに10分後、材料は再び6000rpmで遠心分離され、その上澄みはピペットで取除かれた。ペレットはそれから0.6容量のイソプロパノール(-20℃)に混合され、混ぜられ、かつ15分間-20℃で保存された。それから材料はHB4揺動バケットロータ装置(DuPont、上述)において、20分間10,000rpmで再び遠心分離され、その後上澄みは取除かれ、ペレットは70%EtOHで洗われるとともに室温で乾燥された。次に、ペレットは3.5ml TEに再懸濁され、それに続いて3.4g CsClおよび350μlの5mg/ml EtBrが加えられた。得られた材料をクイックシールチューブに入れ、チューブを鉱油で上部まで満たした。チューブはVTiSO遠心分離機(Beckman Instruments,Pasadena,California,91051)において80,000rpmで3.5時間遠心された。バンドは取除かれ、材料は再び遠心分離されて、0.95g CsCl/mlおよびTE中0.1mlまたは5mg/ml EtBr/mlで容量を補った。バンドに3容量のTEを加えて、上層がきれいになるまで上層を捨てた後、EtBrは、等しい容量のTE飽和N-ブタノールで抽出された。次に、2.5容量のEtOHが加えられ、材料は-20℃で2時間沈殿された。得られたDNA沈殿物は、インビトロでのmRNAの調製のためのDNAテンプレートとして使用される。
例5(本発明のためのRNA調製例):トランスフェクションのためのmRNAの調製
例4からのDNAは、ポリA尾部の下流で5倍過剰のPstIで線状にされた。線状にされたDNAはそれから2回のフェノール/クロロホルム抽出で精製され、それに続いて2回のクロロホルム抽出が行われた。DNAはそれからNaOAc(0.3M)および2容量のEtOHを用いて沈殿された。ペレットはDEP-処理された脱イオン水中、約1mg/mlに再懸濁された。
次に、転写緩衝液が調製され、これは400mMトリスHCl(pH8.0)、80mM MgCl2、50mM DTTおよび40mMスペルミジンを含む。それから、以下の材料が室温で順に1容量のDEP-処理された水に加えられた。上で調製された1容量のT7転写緩衝液、1mM濃度までのrATP、rCTP、およびrUTP、rGTP 0.5mM濃度、7meG(5′)ppp(5′)Gキャップ類縁体(New England Biolabs,Beverly,Massachusetts,01951)0.5mM濃度、上で調製された線状化DNAテンプレート0.5mg/ml濃度、RNAsin(Promega,Madison,Wisconsin)2000U/ml濃度、およびT7RNAポリメラーゼ(N.E.Biolabs)4000U/ml濃度。
この混合物は37℃で1時間インキュベートされた。混合物のくもりが増えることによって転写反応が成功したことがわかった。
mRNAの生成に続いて、使用されるDNAテンプレートのマイクログラムあたり2UのRQ1 DNAse(Promega)が加えられ、15分間テンプレートを消化させた。それからRNAはクロロホルム/フェノールで2回抽出されるとともに、クロロホルムで2回抽出された。上澄みは2容量のEtOH中0.3MのNaOAcで沈殿され、ペレットは500μlの転写生産物あたり100μlのDEP-処理された脱イオン水に再懸濁された。この溶液をRNAse-フリーセファデックス(Sephadex)G50カラム(Boehringer Mannheim #100411)に通した。得られたmRNAはインビボでの脊椎動物のトランスフェクションに使用するのに十分純粋であった。
例6(参考例):リポソームの調製
数多くのリポソーム調製方法は本発明の実施において有利に使用され得る。1つの特に好ましいリポソームは以下のようにDOTAPから作られる。
1mlクロロホルム中10mgジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(PE)および10mg DOTAP(例1より)の溶液を、窒素の流れの下で蒸発乾固させ、残留溶媒を一夜真空下で除去する。リポソームは脂質を脱イオン水(2ml)に再懸濁し、閉じたバイアルにおいて透明になるまで超音波処理することにより調製される。これらの調製物は少なくとも6か月間安定している。
ポリヌクレオチド複合体は、0.4mg/mlの0.5mlポリヌクレオチド溶液(たとえば例5から)を一定に静かに攪拌しながら、注射器によって、20mg/mlの超音波処理されたDOTMA/PEまたはDOTAP/PEリポソーム0.5ml溶液に、ゆっくり加え、室温で混ぜることによって調製された。この方法により、ポリヌクレオチドをインビボで細胞に自発的に配達する正に荷電した複合体が得られる。正に荷電したリポソームのヌクレオチドに対する割合を様々に変えたものを、任意の特定の状態において特定の必要性に合うよう使用することができる。一方、フェルグナ(Felgner)他(上述)によって報告されるように、材料を混合してリポソーム/ポリヌクレオチド複合体を自発的に形成する前に、ヘペス(Hepes)緩衝生理食塩水(150mM NaCl;20mM Hepes,pH7.4)でポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を希釈することは有利であるかもしれない。多くの例で、しかしながら、生理食塩水の代わりに低いイオン強度を有する溶液(スクロースのような)を使用することは好ましいと考えられる。特に、かかる溶液はポリヌクレオチド/脂質複合体の沈殿を最小限にすることによってポリヌクレオチドの細胞への配達を容易にすると考えられる。
例7(本発明例):ネズミにリポソーム的および非リポソーム的に導入されたmRNAの生体内発現
クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードするmRNAがインビボで細胞をトランスフェクトする能力および続いて起こるCATタンパク質の発現は、示されるように調製された以下の処方物各々0.200mlを、ブレブを形成するネズミの腹筋に直接注射することによって明らかにされた。各処方物の6つの反復試験区がテストされた。12〜14時間後、注射されたおよそ0.1〜0.2グラムの重さの腹筋のセグメントが切除され、切り刻まれ、以下の成分、200mMトリス、pH7.6;2mM MgCl2:および0.1%トリトン(Triron)X-100界面活性剤を有する200μlの水性処方物とともに1.5ml使い捨て乳鉢(Kontes,Morton Grove,Illinois)の中に置かれた。乳鉢の中身はそれから使い捨て乳棒で1分間磨り潰された。乳鉢はそれから(パラフィルム(Parafilm)で)覆われ、1リットルパール(Parr)細胞粉砕器ボンベ(Parr Instrument Company,Moline,Illinois)に置かれるとともに、4℃の窒素で6気圧に押出された。30分後、圧力は組織を粉砕して粗溶解産物を生成させるために速やかに解放された。溶解産物はそれから10分間13,000rpm、4℃でマイクロ遠心分離機で遠心分離された。上澄みはそれから別の容器に移され分析されるまで-20℃で保存された。
次に溶解産物は薄層クロマトグラフィによってCATタンパク質の存在について検定された。まず、各サンプルの75μl(上で調製された上澄み)が5μlC14クロラムフェニコール(Amersham)、20μlの4mMアセチルCoAおよび50μlの1Mトリス、pH7.8とともに37℃で2時間インキュベートされた。その後、20μlの4mMアセチルCoAが加えられ、その混合物は再び37℃で2時間インキュベートされた。得られた溶液は1mlのEtOAcで抽出され、その有機相は取除かれ、真空遠心分離機(SpeedVac,Savant Co.)で凍結乾燥された。ペレットは20μl EtOAcに再懸濁され、シリカゲル薄層クロマトグラフィプレート上にスポットされた。プレートは95%クロロホルム/5%メタノールで45分間展開され、乾燥されかつ放射性ルミネセンスインジケータ(Enhance Spray Surface Radiography,New England Nuclear Corp.)を噴霧された。次いでプレートはコダック(Kodak)XAR5フィルムでサンドイッチされ、-70℃で一夜感光させた。そのフィルムは、製造業者の指示に従って現像された。以下の結果が得られた。


Optimem:血清フリー培地(Gibco Laboratories,Life Technologies,Inc,Grand Island,N.Y.14072)
DOTMA:(Lipofectinブランド;Bathesda Research Labs,Gaithersburg,MD)
CAT RNA:例5からのもの
すべての処方物はDEPC処理されたRNAseフリー水(International Biotechnologies,Inc.,New Haven,CT06535)において調製した。
例8(参考例):HIVウイルスのgp120タンパク質を生産するためのマウスへのmRNAワクチン投与
HIVウイルスのgp120タンパク質をコードするmRNAを含むリポソーム処方物は、例1〜5に従って調製される。ただし、gp120(The Aids Research and Reagent Program,National Institute of Allergy And Infections Disease,Rockville,MD20852からのpIII env3-1)のための遺伝子は、例4の方法でプラスミドpXBGに挿入される。例6に従って調製された、10%スクロース中200μg/mlのgp120mRNAおよび500μg/μlの1;1D TAP/PEを含む処方物の200μlが、1日に3回マウスの尾の静脈に注射される。最後の注射の後約12〜14時間で、筋肉のセグメントが注射部位から取り出され、例7に従って細胞溶解産物として調製される。HIV特異的タンパク質gp120は例7の方法に従って溶解産物中に同定される。
mRNAをワクチン投与されたマウスの血清に存在するgp120抗体がHIV感染を防御する能力は、HT4-6Cプラーク還元検定によって以下のように測定される。
HT4-6C細胞(CD4+ヒーラ(Hela)細胞)はDr.ブルースチェイスブロ(Burce Chesebro)(Rocky Mountain National Lab,Montana)から入手され、RPMI培地(BRL,Gaithersburg,MD)の培養で増殖される。細胞の集団はそれからバッチに分割される。バッチの中のいくつかはHIVのおよそ105〜106感染単位をおよそ107のHT4-6C細胞に加えることによってHIVに感染させる。他のバッチはHIVとgp120mRNAをワクチン投与されたマウスからのおよそ50μlの血清の双方を加えることによって、HIV感染に対するgp120免疫血清の防御効果をテストされる。3日間のインキュベーションの後、すべてのバッチの細胞は洗われ、固定され、クリスタルバイオレットで染色され、プラークの数が数えられる。gp120免疫血清の防御効果は、HIVだけで処理されたバッチ中の数と比較して、gp120mRNAワクチン投与されたマウス血清およびHIVの双方で処理された細胞のバッチにおけるプラーク数の減少として、測定される。
例9(参考例):HIV投与が続くNEFmRNAを用いたヒト幹細胞保有SCIDマウスへのmRNAワクチン投与
重症複合免疫不全マウス(SCIDマウス(Molecular Biology Institute,(MBI),La Jolla,CA92037)が、モジエル(Mosier)(Mosier他、Nature335:256(1988))の方法に従って、成人ヒト末梢血リンパ球を腹腔へ注射することによって再構築された。次にHIV-1の400〜4000感染単位の腹腔内注射が行われた。マウスは密封されたグローブボックスの中でP3レベル動物封じ込め設備の中で維持された。
HIVの場合、プラスミド(the NIAID,Rockville,MD20852からのpGM92)の形態のnef遺伝子を獲得し、プラスミドからnef遺伝子を取出し、pXBGプラスミドにnef遺伝子を転写のために挿入し、例2〜例5に述べられたように転写生産物nefmRNAを精製することによって、nefタンパク質をコードするmRNAを調製した。次いでnefmRNAは例6に従う処方物に組込まれた。200μg/mlのNEF RNAおよび500μg/mlの1:1DOTAP:DOPE(RNA/リポソーム複合体形態における)を含む10%スクロース溶液200マイクロリットルの尾の静脈注射が実験動物に毎日行なわれる一方で、対照動物は200μg/μlの酵母tRNAおよび500μg/mlの1:1DOTAP/DOPEリポソームを含むRNA/リポソーム複合体を同じように注射された。注射後2、4および8週間で、生検標本が注射されたリンパ器官から採取され、免疫組織化学のために調製された。同じ時点で、血液サンプルが採取され、ELISAキット(Abbott Labs,Chicago,LL)によるp24レベルおよび例8のプラーク検定によるウイルス力価を検定された。HIV-1に対する免疫染色が、HIVに感染した患者からのポリクローナル血清を使って説明されるように(Namikawa他、Science242:1684(1988))行なわれた。陽性の細胞が数えられ、高倍率フィールド(400x)あたりの感染細胞の数が測定された。これらの検定を使って、陽性の染色細胞数の少なくとも2倍減少が8週間で観察され、力価およびp24発現は少なくとも50%低減された。同時にこれらの結果は(生体内)治療の穏やかな抗ウイルス性効果を示す。
10%スクロース中200μg/mlのnefmRNAおよび500μg/mlの1:1DOTAP:DOPEを含む処方物200μlが、ヒト幹細胞含有SCIDマウスの尾の静脈に1日に3回注射される。免疫化に続いて、マウスはHIVウイルスの有効量での感染によってテストされる。血液のサンプルが定期的に尾の静脈から取出され、ELISAキット検定(Abbott labs,Chicago,IL)により特徴的なHIVタンパク質p24の生成がモニターされる。
例10(参考例):生体内mRNAトランスフェクションによってマウスへアデノシンデアミナーゼを与える方法
ヒトアデノシンデアミナーゼ(ADA)遺伝子のcDNAに対する全長配列は、クローンADA211(Adrian,G.他Mol.Cell Biol.4:1712(1984))の1,300bp EcoRI-AccIフラグメントから得られる。それは平滑末端にされ、Bg IIIリンカーに結合され、それからBg IIIで消化される。修飾されたフラグメントはpXBGのBg III部位に挿入される。ADAのmRNAは例2〜例5に従って転写されるとともに精製され、精製されたADAmRNAは例6に従って処方物の中に組込まれる。バルブ(Balb)3T3マウスは、10%スクロース中200μg/mlのADAmRNAおよび500μg/mlのDOTAPを含むこの処方物200μlを尾の静脈に直接注射される。
マウスの肝臓、皮膚および筋肉の組織中のヒトADAの存在は、等電点電気泳動(IEF)法によって確認される。組織抽出物は非変性ゲル上でpH4および5の間で等電点電気泳動された。ゲルはそれからヴァレリオ(Valerio)、D他、Gene31:137-143(1984)によって報告されるように原位置でのADA活性について染色された。
ヒトおよび非ヒトADAの予備分離は、高速タンパク質液体クロマトグラフィ(FPLC)によって実行される。タンパク質は0.05Mから0.5M KClに至る直線勾配での20mMトリス(pH7.5)でファーマシア(Pharmacia)(Piscataway,NJ)モノク(MonoQ)カラム(HR5/5)上で分画される。フラクション内でのADAの活性は、イノシンに変換される14C-アデノシン(Amersham,Chicago,IL)を用いてフラクションを反応させることによって測定される。薄層クロマトグラフィー(0.1M NaPi pH6.8飽和硫酸アンモニウム:n-プロピルアルコール/100:60:2)は、基質アデノシンから放射性イノシンを分離するために使用される。
例11(本発明例):マウスの筋肉に直接注射された純粋RNAおよびDNAの生体内発現マウスの四頭筋に、100μgのpRSVCAT DNAプラスミドか100μgのβgCATβgAn RNAのどちらかを注射し、注射部位の筋肉組織を後にCAT活性についてテストした。
生後5〜6週間の雌および雄バルブ(Balb)/Cマウスは0.3mlの2.5%アベルチン(Avertin)で腹腔内注射によって麻酔された。1.5cm切開が前大腿部で行なわれ、四頭筋は直接視覚化された。DNAおよびRNAは筋肉の末梢挿入部位から膝の中におよそ0.5cmでかつ約0.2cmの深さで1分間にわたって27ゲージ針を通して1cc注射器中0.1mlの溶液で注射された。縫合部が将来の位置確認のために注射部位上に置かれ、皮膚はそれからステンレススチールのクリップで閉じられた。
3T3マウス繊維芽細胞はまた、これらの細胞について述べられた最適の条件(Malone,R.他、Rroc.Nat’l.Acad.Sci.USA86:6077-6081(1989))下で、3mlのオプティメム(Opti-Mem)(商標)(Gibco)中リポフェクチン(Lipofectin)(商標)(BRL)60μgと複合された20μgのDNAまたはRNAとともにインビトロでトランスフェクトされた。同じ繊維芽細胞はまた、アウスベル(Ausubel)他(Eds)Current Protocols in Molecular Biology,Jhon Wiley and Sons,New Yok(1989)に述べられる方法に従って燐酸カルシウムを使用してトランスフェクトされた。
pRSVCAT DNAプラスミドおよびβgCATβgAn RNAは、先行する例に述べられるように調製された。RNAは5′および3′β-グロビン非翻訳配列および3′ポリ-A領域によって隣接されるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)コード配列からなった。
全四頭筋を切除し、その筋肉を200μlの溶解溶液(20mMトリス、pH7.4、2mM MgCl2および0.1%トリトン(Triton)X)を含む1.5mlミクロチューブの中に切り刻み、1分間プラスチック乳棒(Kontes)ですり潰すことによって、筋肉抽出物が調製された。筋肉細胞の完全な粉砕を確実にするために、筋肉組織はそれから15分間4℃でボンベ(Parr)の中で600psiのN2下に置かれた後、圧力は開放された。
繊維芽細胞はプレートからトリプシン分解された後同様に処理され、血清とともに培地の中に取入れられ、PBSで2回洗われ、最終細胞ペレットは200μlの溶解溶液の中に懸濁された。75μlの筋肉および繊維芽細胞抽出物は、C14-クロラムフェニコールとともに2時間反応混合物をインキュベートすることによってCAT活性について検定され、それに続いて例7にすべて示されるように抽出および薄層クロマトグラフィーが行なわれた。
図1は注射された四頭筋の抽出物内のCAT活性を示す2つの別個の実験からのオートラジオグラムを含む。レーン数はオートラジオグラムの一番上に示され、%クロラムフェニコール変換率は底に示される。サンプルの位置づけは以下のとおりである。
レーン1および13:対照繊維芽細胞
レーン2および14:5%スクロースのみを注射された筋肉
レーン3および15:0.005単位の非注射、精製CAT標準
レーン4および16:0.05単位の精製CAT(Sigma)
レーン5〜8:5%スクロース中100μgのβgCATβgAn RNAを注射された筋肉
レーン11、12および17〜20:5%スクロース中100μgのpRSVCAT DNAを注射された筋肉
レーン9および10:60μgのDOTMAとともに70%集密60mmプレートの3T3細胞(106)に脂質導入(リポフェクション)された20μgのβgCATβgAn RNA
レーン21、22:60μgのDOTMAとともに50%集密60mmプレートの3T3細胞にリポフェクションされた20μgのpRSVCAT
レーン23、24:50%集密60mmプレートの3T3細胞中にリポフェクションされた20μgのpRSVCAT燐酸カルシウム。
CAT活性は注射後18時間で4ヵ所のRNA注射部位すべてにおいて容易に検出され、かつ注射後48時間で6ヵ所のDNA注射部位すべてで検出された。4ヵ所のRNA注射部位の2ヵ所(図1、レーン6および8)からの抽出物ならびに6ヵ所のDNA注射部位の2ヵ所(図1、レーン11および20)からの抽出物は、最適な条件下においてインビトロで一時的にトランスフェクトされた繊維芽細部から得られたCAT活性のレベル(図1、レーン9、10、21-24)に匹敵するCAT活性のレベルを含んだ。筋肉に発現されたCAT活性の平均総量は、RNA注射に対して960pg、DNA注射に対して116pgであった。異なる筋肉部位から回収されたCAT活性の変動はおそらく、注射および抽出技術に由来する変動である。なぜなら純粋CAT蛋白質またはpRSVCATでトランスフェクトされた繊維芽細胞を筋肉部位に注射し、ただちにCAT活性の測定のために切除したとき、顕著な変動が観察されたからである。CAT活性はまた、RNAまたはDNA CATベクターを注射された腹筋からも回収され、他の筋肉類がポリヌクレオチドを取込みかつ発現することが可能であることを示した。
例12(本発明例):マウスの筋肉に直接注射された純粋DNAの生体内発現の部位
注射された筋肉の遺伝子発現の部位は、注射に関してE.coli β-ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するpRSVLac-Z DNAベクター(P.NortonおよびJ.Coffin Molec.Cell Biol.5:281-290(1985))を利用し、E.coliのβ-ガラクトシダーゼ活性について筋肉細胞の原位置での細胞化学染色を観察することによって測定された。マウスの四頭筋は前の例で説明されたように露出された。四頭筋に20%スクロース中pRSVLAC-Z DNA100μgを一回注射した。7日後個々の四頭筋がそのまま全部取り出され、5つおきの15μm切片がβ-ガラクトシダーゼ活性について組織化学的に染色された。
筋肉生検は液体N2-冷却イソペンタンの中で凍結された。15μm連続切片はクライオスタットを使用してスライスされ、すぐにゼラチン化スライド上に置かれた。スライドは10分間PBS中1.5%グルタルアルデヒドで固定され、β-ガラクトシダーゼ活性のために4時間染色された(J.Price他Proc.Nat’l Acad.Sci.USA84:156-160(1987))。筋肉はエオシンにより対比染色された。
撮影された切片(図2)は以下のとおりである。
(A):20%スクロースのみを含む溶液を注射された対照筋肉の切片。倍率60×。
(B)(C)および(D):pRSVLacZを注射された筋肉の切片。それぞれ倍率25×、160×および400×。
(E):pRSVLacZを注射された他の筋肉の縦方向の切片。倍率160×。
(F)(G)および(H):0.6mm離れた同じ筋肉の一連の切片。
全四頭筋を含むおよそ4000細胞のうちの60の筋肉細胞(1.5%)および注射領域内の細胞のおよそ10〜30%が、青色に染色された(図2B、CおよびD)。20%スクロース溶液のみを注射された対照筋肉は、バックグラウンド染色を示さなかった(図2A)。いくつかの個々の筋肉細胞内での陽性のβ-ガラクトシダーゼ染色は、一連の切片について少なくとも1.2mmの深さであり、(図2F、GおよびH)、それは、複数核へのトランスフェクションの結果であるか、あるいは1つの核から発現される細胞質蛋白質が筋肉細胞内に広く分配される能力のどちらかであり得る。縦方向切片はまた、少なくとも400μmにわたる筋肉細胞内のβ-ガラクトシダーゼ染色を示した(図2E)。青色の濃い細胞に隣接する細胞の中に、弱い青色染色がしばしばその境界領域に現われた。これは、反応したX-gal生成物が沈殿する前に拡散した組織化学的β-ガラクトシダーゼ染色の産物である可能性が高い。
同様の結果が線状DNAを使って得られる。
例13(本発明例):マウスの筋肉に注射されたRNAおよびDNAの用量作用効果
ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子(LUC)を使った実験により、注射された筋肉から抽出された総ルシフェラーゼに対する用量レベルおよび時間のパラメータの効果を調査した。
RNAおよびDNAベクターが調製され、マウスの四頭筋に前に説明されたように注射された。全四頭筋の筋肉抽出物は、溶解緩衝液が100mM KPi pH7.8、1mM DTTおよび0.1%トリトンXであることを除いては、例11に説明されたように調製された。200μl抽出物のうちの87.5μlがLKB1251蛍光計を使用してルシフェラーゼ活性について分析された(J.de Wet他Molec.Cell Biol.7:725-737(1987))。精製されたホタルルシフェラーゼ(Analytical Luminescence Laboratory)によって対照筋肉抽出物で生成された光単位を測定することによって確立された標準曲線を使用し、光単位をルシフェラーゼのピコグラム(pg)に変換した。注射の前のRNAおよびDNAの調製物は何の汚染ルシフェラーゼ活性も含まなかった。20%スクロースを注射された対照筋肉は何ら検出可能なルシフェラーゼ活性を有しなかった。上述の実験はすべて2〜3回行なわれ、特にDNAについて40日より長いものが3回行なわれた。
図3A〜3Cは以下の結果を示している。
3(A)20%スクロース中、種々の量のβgLUCβgAn RNAを注射した後18時間で測定されたルシフェラーゼ活性、および20%スクロース中、種々の量のpRSVLを注射した後4日で測定されたルシフェラーゼ活性。
3(B)βgLUCBgAn RNA 20μgを100万の3T3繊維芽細胞(Malone,R.他Proc.Nat’l.Acad Sci.USA86:6077-6081(1989))中にリポフェクトした後、および20%スクロース中100μgのβγΛΥ βg An RNAを四頭筋に注射した後、様々な時間で検定されたルシフェラーゼ活性。
3(C)pRSVL DNAを筋肉に注射した後、様々な時間で検定されたルシフェラーゼ活性。
A.遺伝子発現のレベル
用量作用効果は、四頭筋に様々な量のβgLucβgAn RNAまたはDNA pRSVL構造物を注射した際に観察された(図3A)。10倍多いDNAを注射すると、DNA10μg注射の後の33pgルシフェラーゼからDNA100μg注射後の320pgルシフェラーゼへとおよそ10倍のルシフェラーゼ活性増加という結果が得られた。10倍多いRNAの注射はまた、およそ10倍多いルシフェラーゼを生み出した。60mm皿における100万の3T3マウス繊維芽細胞は、オプティメム(Opti-MEM)(Gibco)3ml中リポフェクチン(Lipofectin)(Bethesda Research Labs)60μgと複合されたDNAまたはRNA20μgを用いてリポフェクトされた。2日後、細胞はルシフェラーゼ活性について検定され、4つの別個のプレートからの結果は平均された。繊維芽細胞にトランスフェクトされたpRSVL DNA20μgは、合計でルシフェラーゼ120pg(6pgルシフェラーゼ/μgDNA)を生み出す一方で、筋肉に注射された25μgは平均116pgのルシフェラーゼ(4.6pgルシフェラーゼ/μgDNA:図3A)を生み出した。RNAベクターからの発現は、注射された筋肉におけるよりトランスフェクトされた繊維芽細胞においておよそ7倍効果的であった。繊維芽細胞にトランスフェクトされた20μgのβgLucβgAn RNAは、合計で450pgのルシフェラーゼを生み出し、一方で筋肉に注射された25μgは74pgのルシフェラーゼを生み出した(図3Aおよび3B)。配達されたDNAの量に基づいて、DNAベクターからの発現の効率は、トランスフェクトされた繊維芽細胞および注射された筋肉の双方で同様であった。
B.発現の時間経過
時間経過もまた調査された(図3Bおよび3C)。ルシフェラーゼ活性は、25μgのβgLucβgAn RNAまたは100μgのpRSVL DNAが注射された後、様々な時間で検定された。RNA注射の後、平均ルシフェラーゼ活性は18時間で最大量の74pgに達し、それから60時間で急速に減少して2pgになった。トランスフェクトされた繊維芽細胞において、ルシフェラーゼ活性は8時間で最大であった。筋肉へのDNA注射に続いて、相当量のルシフェラーゼが少なくとも60日間存在した。
図3Bのデータは、ルシフェラーゼ蛋白質および生体外RNA転写が筋肉内で24時間より少ない半減期を有することを示す。したがって、60日間のルシフェラーゼ活性の持続性は、ルシフェラーゼ蛋白質の安定性または生体内RNA転写の安定性のためではないようである。
例14(本発明例):サザンブロット分析によって測定された注射の後の筋肉中のDNAの持続性
筋肉DNAの調製物は、対照である非注射の四頭筋、または20%スクロース中pRSVL100μgを注射した30日後の四頭筋から、得られた。同じ動物からの2つの全四頭筋がプールされ、液体N2中で切り刻まれ、乳鉢と乳棒を使ってすり潰された。全細胞性DNAとHIRT上澄が調製された(F.M.Ausubel他(Eds)Current Protocols in Moleculor Biology,John Wiley,New York(1987))。15μgの全細胞性DNAまたは100μlのHIRT上澄からの10μlが消化され、1.0%アガロースゲル上で精製され、「バキュブロット(vacublot)」装置(LKB)を使ってニトラン(Nytran)(商標)(SchleicherおよびSchuell,New York)に移され、マルチプライマー32P-ルシフェラーゼプローブ(pRSVLのHind III-BamHIフラグメント)とハイブリッド形成された。一夜のハイブリダイゼーションに続いて、膜の最終洗浄が68℃で0.5%SDSを含む0.2×SSCを用いて行なわれた。コダックXAR5フィルムに-75℃で45時間感光させた。
図4は以下のようなサンプルパターンを有するサザンブロットのオートラジオグラムである。
レーン1:0.05ngの非消化pRSVLプラスミド
レーン2:0.05ngのBamHI消化pRSVL
レーン3:ブランク
レーン4:対照筋肉からのHIRT上澄のBamHI消化物
レーン5:対照である非注射の筋肉からの細胞性DNAのBamHI消化物
レーン6、7:pRSVLが注射された筋肉の2つの異なるプールからのHIRT上澄のBamHI消化物
レーン8、9:pRSVLが注射された筋肉の2つの異なるプールからの細胞性DNAのBamHI消化物
レーン10:BamHIおよびDpnIで消化された細胞性DNA(レーン9と同一)
レーン11:BamHIおよびMboIで消化された細胞性DNA(レーン9におけるのと同一)
レーン12:Bg IIIで消化された細胞性DNA
レーン13:Bg IIIで消化されたHIRT上澄
(サイズマーカー(λ/Hind III)は左に示される)。
筋肉DNAのサザンブロット分析は、外来のpRSVL DNAが少なくとも30日間(図4、レーン6〜9)筋肉組織内に存在し、かつ注射後2日および15日に筋肉に存在するDNAのレベルに類似することを示している。BamHI(これは一回pRSVLを切断する。図4、レーン6〜9)で消化された筋肉DNAにおいて、線状にされたpRSVLに対応する5.6kbバンドの存在(図4、レーン2)は、DNAが環状の染色体外の形態か、染色体に組込まれたプラスミドの大きな縦列反復のどちらかで存在することを示唆する。Bg III(これはpRSVLを切断しない)で消化された筋肉DNAにおいて、10kbより小さく(図4、レーン12および13)かつプラスミドpRSVLの開いた環の形態と同じ大きさでのバンドの存在(図4、レーン1)は、DNAが開いた環の形態で染色体外に存在することを示唆する。HIRT上澄におけるpRSVL DNAの出現(図4、レーン6、7および13)およびHIRT上澄みでの形質転換の後アンピシリン耐性にされた細菌におけるpRSVL DNAの出現はまた、DNAが統合されずに存在することを示唆する。外因性DNAの大半は染色体外に存在するようであるが、低レベルの染色体への統合を決定的には除外することはできない。小滴(ブロック)の過度の露光は、ランダムな部位で統合されるプラスミドDNAを表わすであろう10kbより大きいハイブリッド形成したDNAのスポットを明らかにしなかった。pRSVL DNAの感受性は筋肉についてDpn消化(図4、レーン10)に対してであり、MboI消化に対しては抵抗性であること(図4、レーン11)は、DNAが筋肉細胞内で複製されなかったことを示唆する。
例15(本発明例):マウスの筋肉に直接移植された純粋DNAの生体内発現
pRSVL DNAはエタノール中で沈殿され乾燥された。そのペレットは鋭い鉗子で拾い上げられ、先行する例で述べられたように様々な筋肉群の中に入れられた。5日後筋肉は例13で述べられたようにルシフェラーゼ活性について分析された。DNAは以下のような様々な筋肉群で効率的に発現された。

例16(本発明例):肺への直接的遺伝子配達:DNA、DNA/CL複合体または純粋蛋白質の気管内注射
リポフェクチン(Lipofectin)(商標)と複合されたDNAルシフェラーゼベクター(pRSVL)が、20%スクロース(2匹のラット)または5%スクロース(6匹のラット)のどちらかでラット気管内に注射された。注射の2日後、ラットの肺は7つの部分、LUL、LLL、RUL、RML、RLL、AL(以下のように規定される)および気管に分割された。ネズミの肺は左主気管支から分かれた1つの大きな左肺を有するという点でヒトの肺と異なっている。この研究のために左の肺は、左上部部分(LUL)と左下部部分(LLL)とに半分に切断された。右肺は4つの葉、右頭蓋葉(RUL)、右中葉(RML)、右低葉(RLL)および附属葉(AL)を含む。これらの肺を200μlの溶解溶液(20mMトリス、pH7.4mM MgCl2および0.1%トリトンX)を含む別個の1.5mlミクロチューブに切り刻み、1分間プラスチックの乳棒(Kontes)で肺をすり潰すことによって抽出物が調製された。肺細胞の完全な粉砕を確実にするために、肺組織は次いで15分間4℃でパール(Parr)ボンベの中で600psiのN2下に置かれた後、圧力開放された。ルシフェラーゼ検定は約350μlの全容量の中から87.5μlの肺抽出物について行なわれた。

モック:この値は食道に0.3mlの20%スクロース中25μgのDNAを摂取した動物に対する値である(水のみを含むサンプルは22.5l.u.を生じる)。
25μg DNA単独:20%スクロース0.3ml中25μgのpPGKLucを気管内注射により摂取した別の動物を表わす。
25μg DNA/CL:5%スクロース0.3ml中リポフェクチン(Lipofectin)と複合された25μgのpPGKLucを気管内注射により摂取した別の動物を表わす。
注射の2日後、上述の動物は殺され、肺抽出物が調製された。
Luc蛋白質104l.u.:精製されたホタルルシフェラーゼ(Sigma)の30,000光単位(l.u.)の等量を摂取し、それからすぐに殺された動物を表わす。
25μg DNA単独および25μgDNA/CL群の動物でのルシフェラーゼ活性は、モック動物での活性よりも大きくなかった。しかしながら、250μg DNA単独の動物では、対照肺またはブランクに対し、小さいがしかし確実に上昇したl.u.活性が示された(アンダーラインされたもの)。同一の抽出物に対する二重検定によりその結果が確かなものとなった。LKB1251蛍光計を使っての実験は、これらの値がバックグラウンドを超えただけではあるが、真のルシフェラーゼ活性を示すことを明らかにしている。
例17:(本発明例):DNA処方物を直接注射されたマウス肝臓中のルシフェラーゼ活性
DNAルシフェラーゼ発現ベクターpPGKLucが、マウスの左肝臓葉の下部に肝臓内(IH)注射された。pPGKLuc DNAは、それ自体を(20%スクロース1.0ml中450μgのDNA)注射されるか、またはリポフェクチン(Lipofectin)(5%スクロース1.0ml中50μgのDNA+150μgのリポフェクチン)と複合されて注射された。注射の3日後、左肝臓葉は2つの部分(葉が注射された下部部分と注射部位から離れた葉の上部部分)に分割されるとともに、先行する例に述べられたようにルシフェラーゼ活性について検定された。

純粋なpPGKLuc注射を摂取した3匹の動物のうちの2匹、およびpPGKLuc+リポフェクチン注射を摂取した3匹の動物のうちの2匹は、バックグラウンドを著しく超えるルシフェラーゼ活性を有した(アンダーラインのもの)。直接注射された肝臓葉の下部部分は、注射部位から離れた上部部分より大量のルシフェラーゼ活性を有した。同様の結果がpRSVCAT DNA発現ベクターおよびCAT検定を用いて得られた。ルシフェラーゼ活性は、pPGKLuc(+および-リポフェクチン)の類似の調製物をラットの門脈循還に注射した3日後において検出されなかった。
例18(本発明例):肝臓および筋肉に注射された成長ホルモン遺伝子の発現
マウスの肝臓と筋肉の両方にpXGH5(メタロチオネインプロモータ成長ホルモン融合遺伝子)(Selden Richard他、Molec.Cell Biol.6:3173-3179(1986))を注射した。マウスは76mMの硫酸亜鉛水上に置かれた。その後動物は採血され、血清はニコルス(Nichols)GHキット(Kit)を使用して成長ホルモンについて分析された。
A.2匹のマウスに5%スクロース中リポフェクチン60μg/mlと複合された20μgのpXGH5遺伝子を注射した。この溶液1mlが肝臓に注射され、腹側および背側の腹筋には7つの部位に2回0.1mlが注射された。2日後、動物は採血された。1匹の動物の血清はバックグラウンドレベルのままであったが、他方の血清は0.75ng/mlの成長ホルモンを含んだ。
B.3匹のマウスに5%スクロース中1mg/mlのpXGH5を0.1ml注射し、四頭筋に2回、ハムストリング筋に1回、胸筋に1回、小多角骨筋1回、2日に分けて注射した。結果は以下のとおりであった。

例19(本発明例):免疫ペプチドのための遺伝子を直接注射されたマウス内での抗体生成
マウスは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータによって駆動されるgp-120遺伝子からなる20μgのプラスミド構造物を注射された。DNAは例11に述べられた方法に従ってマウスの四頭筋に注射された。マウス5(図5A)は、四頭筋に等張スクロース液中20μgのプラスミドDNAを注射された。マウス2(図5B)は、スクロース溶液単独を注射された。血液サンプルが、注射の前(0日目)に図5に示された時間に採られ、注射後40日を過ぎるまで採られた。各サンプルからの血清は、連続的に希釈され、抗原として酵母の中に作られる組換型gp-120蛋白質を使って、抗体検出のための標準ELISA法検定で検定された。IgGおよびIgM抗体の双方は、図5に示されるように検出された。この研究は遺伝子はそのシグナル配列を保持し、蛋白質は細胞から効率的に放出されることを示す。
例20(参考例):免疫ペプチドのための遺伝子をトランスフェクトされた細胞を注射されたマウスにおける抗体生成
細胞株BALB/C C1.7(TIB80)を、ザ・アメリカン・タイプ・ティシュ・カルチャ・コレクション(the American Type Tissue Culture Collection)から得た。これらの細胞は例19に述べられたgp-120遺伝子構造物でトランスフェクトされた。0.75mlオプティメム(OptiMEM)(Gibco.Inc.)に対して6.1μgのDNAが加えられた。また、30μgの量の陽イオンリポソーム(70:30のモル比でDOTMAとコレステロールを含む)が、他の0.75mlオプティメム(OptiMEM)に加えられた。混合物は合わされ、20%(v/v)胎仔ウシ血清を含む1.5mlのオプティメムが加えられた。この溶液は80%の集密細胞(プレート当りおよそ100万の総細胞)を含む60mmプラスチップペトリ皿に注がれた。リポフェクション後3.2時間で、細胞はトリプシンおよびEDTA処理でプレートから剥され、オプティメム(OptiMEM)で洗われるとともに10%胎仔ウシ血清を含む0.1mlオプティメム(OptiMEM)に再懸濁された。これらの細胞はマウスに注射された(IP)。マウスI2(図6A)はトランスフェクト細胞を注射された。マウスI1(図6A)には同一数の非トランスフェクト細胞を接種した。血液のサンプルは注射の前(0日目)に取られ、さらに図6に示される時間に取られた。血清サンプルは先行する例のように処理された。IgGおよびIgM抗体の双方が図6に示されるように検出された。
例21(参考例):インビトロで細胞にトランスフェクトされたDNAの直接翻訳に対する無キャップ5′配列の使用
2つの異なったDNAテンプレートが構成され、その両者はE.coli β-ガラクトシダーゼによりレポートされる遺伝子を発現するRNAの合成をコードする。コザック(Kozak)コンセンサス配列を含むLac-Z遺伝子がpβGLucβGAnテンプレートのルシフェラーゼコード配列の代わりに挿入され、pβGLacZβGAnテンプレートを形成した。pEMCLacZβGAnテンプレートはpβGLacZβGAnの5′β-グロビン非翻訳配列を脳心筋炎ウイルス(EMCV)からの588bp EcoRl/Ncolフラグメント(Parks,G.他、J.Virology60:376-384(1986)中のpE5LVPO)で置換えることによって作られた。これらのEMC5′非翻訳配列は、網状赤血球溶解産物中インビトロで効率的な翻訳を開始できることが以前に示されていた。我々はこれらの配列もまた培養において繊維芽細胞中にトランスフェクトされたとき効率的な翻訳を誘導できることを明らかにした。青色細胞のパーセンテージは、キャップされたpEMCLacZβGAnRNAでトランスフェクトされた細胞より、キャップされていないpEMCLacZβGAnRNAでトランスフェクトされた細胞の方がわずかに大きかった。非キャップまたはキャップのいずれのpEMCLacZβGAnRNAを用いたトランスフェクションも、キャップされたβGLacZβGAnRNAを用いたトランスフェクションより多い数の陽性のβ-ガラクトシダーゼ細胞を産出した。このEMC5′非翻訳配列は、ワクシニア-T7ポリメラーゼベクターの成分として、非キャップmRNAの翻訳を4〜7倍増加できることが最近示されている(Elroy-Stain,O.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:6126-6130(1989))。これらのEMC配列は従って、非キャップメッセンジャーからの効率的な翻訳を誘導できる能力を有する。
例22(参考例):トランスフェクトされた細胞培養物におけるT7ポリメラーゼ転写
SV40プロモータ(Dunn,J.他、Gene65:259(1988))からT7ポリメラーゼを発現するSV40-T7ポリメラーゼプラスミドを、培養において3T3繊維芽細胞中に、pEMCLacZβGAnテンプレートDNAとともにリポフェクションし、T7ポリメラーゼ転写がプラスミドを介して起こり得ることを明らかにした。次ぎの2つの異なるSV40-T7ポリメラーゼ発現ベクターが使用された。
(a)pSV-Gl-A:細胞質に向けられるT7ポリメラーゼ蛋白質の発現を駆動するpAR3126-SV40プロモータ。
(b)pSVNU-Gl-A:細胞質に向けられるT7ポリメラーゼ蛋白質の発現を駆動するpAR3132-SV40プロモータ。
これらの2つのプラスミドの各々は、1:3および3:1の割合で、pEMCLacZβGAnとともに、3T3細胞の60mmプレート中にリポフェクションされた。青色のβ-ガラクトシダーゼ細胞の数が数えられ、以下に示されるように記録された。

例23(本発明例):メッセンジャーRNAの制御された注入後の脳におけるルシフェラーゼの発現
2匹の成熟したマウスと1匹の生まれたてのマウスに、例17に従って調製された5′キャップを含むβgLucβgAnmRNAを注射した。成熟したマウスにおいて、注射量は20%スクロース中3.6μg/μlのmRNAの保存溶液から行い、注射量は5μlであり、左右の頭頂皮質の各々に2回の注射が行なわれ、したがって、マウス1匹につき4回の注射が行なわれた。組織は、注射後18時間で検定され、例13に従って200μlの脳ホモジェネートを使用し、パール(Parr)ボンベで粉砕し、87.5μlを検定に使用した。結果は以下のとおりである。

生まれたてのマウスは両側前脳に1μlのβgLucβGAn(3.6μg/μl:20%スクロース)を注射され、組織は同様に処理され分析された。

例24(本発明例):インビボでのジストロフィーマウス筋肉におけるジストロフィンの機能的発現
ラウス肉腫(Rous Sarcoma)ウイルスのプロモータの制御下でジストロフィン遺伝子を含むプラスミドが、完全なジストロフィンコード領域およびSV40ポリを含むXp21プラスミドから調製された。セグメントはクンケル(Kunkel)とその同僚によってクローン化されたものである(Brumeister M.,Monaco AP,Gillard EF,van Ommen GJ,Affara NA,Ferguson-Smith MA,Kunkel LM,Lehrach H.,デュシェーヌ(Duchenne)筋ジストロフィー遺伝子を含む、ヒトXp21の10メガベースフィジカルマップ、Genomics1988年4月2日(3):189-202:Hoffman,EPおよびKunkel,Duchenne’s/Becher筋ジストロフィーのLMジストロフィンの異常。Neuron第2巻、1019-1029(1989):Koenig M.,Monaco AP,Kunkel LM.,ジストロフィンの完全な列は棒状のサイトスケルタル(cito-skeletal)蛋白質を予測する。Cell1988年4月22日、53,(2):219-26)。100μlの燐酸塩緩衝塩類溶液中200μgのプラスミドがジストロフィン遺伝子生産物が欠ける突然変異マウス系(MDXマウス:Jackson Labs)の四頭筋に注射された。機能的ジストロフィンの発現は、クンケル(Kunkel)から入手した同じ抗ジストロフィン抗体(蛍光2次抗体を有する抗-60kd抗体)を使用するWatkinis他によって説明された手順に従って、免疫組織化学により注射後7日間モニターされた。ジストロフィーマウスのジストロフィン遺伝子生産物の機能的発現は、注射された動物からの四頭筋の切片において観察される蛍光パターンを、正常な動物で観察される蛍光パターンと比較することによって検出された。(Watkins S.C.,Hoffman E.P.,Slayter H.S.,Kinkel L.M.)、筋原繊維におけるジストロフィンの免疫電子顕微鏡的位置測定(Nature1988年6月30日:333(6176:863-6))。正常なジストロフィンの発現は、筋肉繊維のプラズマ膜下に局在化されるので、四頭筋の切片は細胞を取囲む蛍光パターンを与える。加えて、ジストロフィンの発現はアフィニティ精製された抗-60kd抗体を使用するウェスタンブロット分析によって定量化された。
例25(本発明例):デュシェーヌ筋ジストロフィーの患者の筋肉への修正ジストロフィン遺伝子の直接投与
筋ジストロフィーの患者は、100μlの燐酸緩衝生理食塩水中に機能的ジストロフィン遺伝子(前の例を参照)を含むプラスミド200μgを複数回注射される。軽い麻酔下にある間に、患者は手術をすることなく直接皮膚を介して骨格筋塊全体に5cm間隔で注射される。患者の回復は痙攣緊張および最大随意収縮をモニターすることによって評価された。加えて、注射された領域からの300〜500の筋肉細胞の生検が、組織学試験、筋肉構造の観察およびデュシェーヌ筋ジストロフィーの患者にないジストロフィンの存在の生化学分析のために採取される。助骨ケージおよび横隔膜を動かす肋間筋を含む呼吸筋は、筋ジストロフィー患者において特に重要な障害筋肉類である。肋間筋は、他の骨格筋類が可能であるように、皮膚を介する注射によって到達可能である。横隔膜は、プラスミドDNAの直接注射のため筋肉を露出させる外科的手法によってアクセス可能である。
開示された発明の様々な修正、改良および応用があり、それは当業者に明らかであろうし、本発明の応用はかかる具体例をカバーすることを意図するものとする。本発明を好ましい具体例に関連して説明してきたが、本発明の全範囲は特許請求の範囲に基づいて定められるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1はマウスの筋肉におけるCAT遺伝子の発現を示すクロマトグラフィー研究のオートラジオグラムからなる。
【図2】
図2はpRSVLac-Z DNAベクターを注射した後のベーターガラクトシダーゼ活性に対して染色された筋肉組織の顕微鏡写真からなる。
【図3】
図3はβgLucBgAnの筋肉への注射の後の筋肉におけるルシフェラーゼの活性に関するデータを提示する。
【図4】
図4はpRSVLを注射した筋肉からの抽出液を分析した後のサザンブロットのオートラジオグラムを提示する。
【図5】
図5は免疫原性ペプチドのための遺伝子の注射の後のマウスにおける抗体の生産を示すグラフを含む。
【図6】
図6は免疫原性ペプチドのための遺伝子をトランスフェクションされたマウス細胞の注射の後の、マウスにおける抗体の生産を示すグラフからなる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-10-29 
結審通知日 2004-11-02 
審決日 2004-11-17 
出願番号 特願平2-505276
審決分類 P 1 112・ 09- YA (A61K)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 竹林 則幸
深津 弘
登録日 2001-11-16 
登録番号 特許第3250802号(P3250802)
発明の名称 脊椎動物における外因性ポリヌクレオチド配列の発現  
代理人 福本 積  
代理人 河宮 治  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 平木 祐輔  
代理人 樋口 外治  
代理人 鶴田 準一  
代理人 元山 忠行  
代理人 福本 積  
代理人 大屋 憲一  
代理人 樋口 外治  
代理人 石田 敬  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 松谷 道子  
代理人 福本 積  
代理人 藤田 節  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  
代理人 冨田 憲史  
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