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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B62M
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B62M
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B62M
管理番号 1121883
審判番号 訂正2005-39087  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-07-09 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-06-03 
確定日 2005-07-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2926668号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2926668号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の趣旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2926668号発明(平成 3年12月26日出願、平成11年 5月14日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)ないし(3)のとおり訂正することを求めるものである。

(1)【特許請求の範囲】の【請求項1】について、
「自転車の車体(F)に固定して取り付け可能の取り付けブラケット体(1)と、チェン掛換え輪(7)およびテンション輪(8)を支持する支持体(4)と、前記支持体(4)と前記取り付けブラケット体(1)とを連結する揺動リンク体とを備え、
前記取り付けブラケット体(1)、前記支持体(4)および前記揺動リンク体で構成される四連リンク機構(R)が揺動することにより、前記チェン掛換え輪(7)が前記取り付けブラケット体(1)に対してチェンスプロケット(S)の回転軸芯(Z)に沿って移動可能であるように構成し、
前記テンション輪(8)を前記支持体(4)に対して揺動付勢することにより、前記テンション輪(8)を介してチェン(C)に張力付与するテンションスプリング(12)を備えてある自転車用リヤディレーラであって、
変速操作ワイヤ(9)のアウターワイヤ(9b)の端部と接当するアウター受け部(15)を、前記取り付けブラケット体(1)に備え、
前記取り付けブラケット体(1)が前記車体(F)に取り付けられ、前記チェン(C)が前記チェンスプロケット(S)、前記チェン掛換え輪(7)、および前記テンション輪(8)にかけられた前記自転車用リヤディレーラの使用状態にある際に、
前記支持体(4)が前記取り付けブラケット体(1)より車体前方側に位置する様、前記支持体(4)を配置し、
前記アウター受け部(15)よりも車体後方側に突出する操作アーム(13)を前記揺動リンク体に備え、
前記変速操作ワイヤ(9)のインナーワイヤ(9a)を、前記操作アーム(13)を介して前記揺動リンク体に連結してあることを特徴とする自転車用リヤディレーラ。」
とあるのを、
「自転車の車体(F)に固定して取り付け可能の取り付けブラケット体(1)と、チェン掛換え輪(7)およびテンション輪(8)を支持する支持体(4)と、前記支持体(4)と前記取り付けブラケット体(1)とを連結する揺動リンク体とを備え、
前記取り付けブラケット体(1)、前記支持体(4)および前記揺動リンク体で構成される四連リンク機構(R)が揺動することにより、前記チェン掛換え輪(7)が前記取り付けブラケット体(1)に対してチェンスプロケット(S)の回転軸芯(Z)に沿って移動可能であるように構成し、
前記テンション輪(8)を前記支持体(4)に対して揺動付勢することにより、前記テンション輪(8)を介してチェン(C)に張力付与するテンションスプリング(12)を備えてある自転車用リヤディレーラであって、
変速操作ワイヤ(9)のアウターワイヤ(9b)の端部と接当するアウター受け部(15)を、前記取り付けブラケット体(1)に備え、
前記取り付けブラケット体(1)が前記車体(F)に取り付けられ、前記チェン(C)が前記チェンスプロケット(S)、前記チェン掛換え輪(7)、および前記テンション輪(8)にかけられた前記自転車用リヤディレーラの使用状態にある際に、
前記支持体(4)が前記取り付けブラケット体(1)より車体前方側に位置する様、前記支持体(4)を配置し、
前記アウター受け部(15)よりも車体後方側に突出する操作アーム(13)を前記揺動リンク体に備え、
前記変速操作ワイヤ(9)のインナーワイヤ(9a)を、前記操作アーム(13)を介して前記揺動リンク体に連結してあり、
前記取り付けブラケット体(1)は、前記取り付けブラケット体(1)を前記車体(F)に対して取り付けるためのブラケット連結部(10)を有し、 前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記アウター受け部(15)は前記ブラケット連結部(10)より前記車体(F)の後方の位置において前記取り付けブラケット体(1)に設けられていることを特徴とする自転車用リヤディレーラ。」
と訂正する。

(2)【発明の詳細な説明】の欄中、段落【0004】の【課題を解決するための手段】の項における、
「・・・前記変速操作ワイヤのインナーワイヤを、前記操作アームを介して前記揺動リンク体に連結してあることを特徴とする。・・・操作アームのアウター受け部より車体後方に突出した部分にインナー連結部を設けたり、ブラケット体のブラケット連結部より車体の後方にアウター受け部を設けると、つぎの如く有利である。」を、
「・・・前記変速操作ワイヤのインナーワイヤを、前記操作アームを介して前記揺動リンク体に連結してあり、ブラケット体のブラケット連結部より車体の後方にアウター受け部が設けられていることを特徴とする。・・・操作アームのアウター受け部より車体後方に突出した部分にインナー連結部を設けると、つぎの如く有利である。」と訂正する。

(3)同上、段落【0005】の【作用】の項における、
「・・・かつ、取付けブラケット体が車体に対して動く場合のように変速操作に伴って操作ワイヤが振れ動くことを回避しながら変速操作できる。前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、揺動リンク体が取付けブラケット体に対して傾斜軸芯周りで揺動するようにすると、・・・」を、
「・・・かつ、取付けブラケット体が車体に対して動く場合のように変速操作に伴って操作ワイヤが振れ動くことを回避しながら変速操作できる。また、前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記取付けブラケット体は全体的に前記車体横方向軸芯より前記車体の後方の位置にあるので、ここに前記アウター受け部を設けることにより、取付けブラケット体の形状を大幅に変えること無くアウター受け部を設けることが可能である。前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、揺動リンク体が取付けブラケット体に対して傾斜軸芯周りで揺動するようにすると、・・・」と訂正する。

2.当審の判断
以下、これらの訂正事項について検討する。
(イ)上記(1)の訂正は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項である取り付けブラケット体及びアウター受け部について、取り付けブラケット体の構成及び該取り付けブラケット体の構成要素であるブラケット連結部とアウター受け部との位置関係を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(ロ)上記(2)の訂正は、上記(1)の訂正事項との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(ハ)上記(3)の訂正は、上記(1)の訂正事項との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(ニ)また、訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により構成される発明は、明細書の発明の効果の欄に記載された作用効果を奏するものであるから、実公昭59-3024号公報及び米国特許第4838837号明細書の記載事項を考慮しても特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自転車用リヤディレーラ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車体(F)に固定して取り付け可能の取り付けブラケット体(1)と、チェン掛換え輪(7)およびテンション輪(8)を支持する支持体(4)と、前記支持体(4)と前記取り付けブラケット体(1)とを連結する揺動リンク体とを備え、
前記取り付けブラケット体(1)、前記支持体(4)および前記揺動リンク体で構成される四連リンク機構(R)が揺動することにより、前記チェン掛換え輪(7)が前記取り付けブラケット体(1)に対してチェンスプロケット(S)の回転軸芯(Z)に沿って移動可能であるように構成し、
前記テンション輪(8)を前記支持体(4)に対して揺動付勢することにより、前記テンション輪(8)を介してチェン(C)に張力付与するテンションスプリング(12)を備えてある自転車用リヤディレーラであって、
変速操作ワイヤ(9)のアウターワイヤ(9b)の端部と接当するアウター受け部(15)を、前記取り付けブラケット体(1)に備え、
前記取り付けブラケット体(1)が前記車体(F)に取り付けられ、前記チェン(C)が前記チェンスプロケット(S)、前記チェン掛換え輪(7)、および前記テンション輪(8)にかけられた前記自転車用リヤディレーラの使用状態にある際に、
前記支持体(4)が前記取り付けブラケット体(1)より車体前方側に位置する様、前記支持体(4)を配置し、
前記アウター受け部(15)よりも車体後方側に突出する操作アーム(13)を前記揺動リンク体に備え、
前記変速操作ワイヤ(9)のインナーワイヤ(9a)を、前記操作アーム(13)を介して前記揺動リンク体に連結してあり、
前記取り付けブラケット体(1)は、前記取り付けブラケット体(1)を前記車体(F)に対して取り付けるためのブラケット連結部(10)を有し、前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記アウター受け部(15)は前記ブラケット連結部(10)より前記車体(F)の後方の位置において前記取り付けブラケット体(1)に設けられていることを特徴とする自転車用リヤディレーラ。
【請求項2】
前記揺動リンク体の前記取り付けブラケット体(1)に対する揺動軸芯(P1)、(P3)が、前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記車体(F)の上方側に行くほど車体内側に位置するように傾斜している請求項1記載の自転車用リヤディレーラ。
【請求項3】
前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記変速操作ワイヤ(9)が前記アウター受け部(15)から前記車体(F)の前方向で、かつ上方向に延出するように前記アウターワイヤ(9b)を支持する支持部(16)を前記アウター受け部(15)に備えてある請求項1記載の自転車用リヤディレーラ。
【請求項4】
前記インナーワイヤ(9a)は、前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記操作アーム(13)の、前記アウター受け部(15)よりも車体後方側に突出した領域に設けられたインナー連結部(13a)に連結されている請求項1記載の自転車用リヤディレーラ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自転車の車体に固定して取り付け可能の取り付けブラケット体と、チェン掛換え輪およびテンション輪を支持する支持体と、前記支持体と前記取り付けブラケット体とを連結する揺動リンク体とを備え、前記取り付けブラケット体、前記支持体および前記揺動リンク体で構成される四連リンク機構が揺動することにより、前記チェン掛換え輪が前記取り付けブラケット体に対してチェンスプロケットの回転軸芯に沿って移動可能であるように構成し、前記テンション輪を前記支持体に対して揺動付勢することにより、前記テンション輪を介してチェンに張力付与するテンションスプリングを備えてある自転車用リヤディレーラに関する。
【0002】
【従来の技術】
上記リヤディレーラにおいて、従来、たとえば実開昭56-134297号公報に示されるように、変速操作ワイヤがディレーラの後方側で湾曲して車体後方向きから車体前方向きに向き変更するようにワイヤ配設をすることにより、ディレーラよりも車体前方側に位置する変速操作装置からの変速操作ワイヤをディレーラに導いて四連リンク機構に連動させることができ、変速操作ワイヤを四連リンク機構に連結するだけで比較的構造簡単に、チェン掛換え輪がチェンスプロケットの回転軸芯方向に移動するように、ディレーラ操作できるようになっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、変速操作ワイヤがディレーラ付近で小半径で湾曲するために、また、ワイヤ湾曲箇所ではインナーワイヤをガイドするアウターワイヤが不可欠であるために、操作ワイヤに起因して生じる操作抵抗が比較的大になり、変速操作が重くなることが多々あった。本発明の目的は、車体側に改造を要しないで使用できながら、比較的構造簡単にしかも変速操作ワイヤの振れを抑制しながら軽く操作できるリヤディレーラを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明による自転車用リヤディレーラにあっては、目的達成のために、冒頭に記したものにおいて、変速操作ワイヤのアウターワイヤの端部と接当するアウター受け部を、前記取り付けブラケット体に備え、前記取り付けブラケット体が前記車体に取り付けられ、前記チェンが前記チェンスプロケット、前記チェン掛換え輪、および前記テンション輪にかけられた前記自転車用リヤディレーラの使用状態にある際に、前記支持体が前記取り付けブラケット体より車体前方側に位置する様、前記支持体を配置し、前記アウター受け部よりも車体後方側に突出する操作アームを前記揺動リンク体に備え、前記変速操作ワイヤのインナーワイヤを、前記操作アームを介して前記揺動リンク体に連結してあり、ブラケット体のブラケット連結部より車体の後方にアウター受け部が設けられていることを特徴とする。本発明を実施するに当たり、チェン掛換え輪が変速操作時にチェンスプロケットの軸芯方向にのみ移動するように構成してもよいのであるが、揺動リンク体の取付けブラケット体に対する揺動軸芯を傾斜軸芯にしたり、変速操作ワイヤがアウター受け部から車体前方向で上方向に延出するようアウターワイヤを支持する支持部をアウター受け部に備えたり、操作アームのアウター受け部より車体後方に突出した部分にインナー連結部を設けると、つぎの如く有利である。
【0005】
【作用】
取付けブラッケット体の連結部を、従来のディレーラにおける連結部と同一の仕様に形成することにより、車体側には特別な改造を付加しなくとも、取付けブラッケット体を車体に組付けることが可能になる。変速操作ワイヤがディレーラの前方から直接にディレーラに至るところのワイヤ配設をしても、アウター受け部と操作アームとの前記配置関係のために、操作ワイヤのアウターワイヤをアウター受け部により取付けブラケット体に接当させると共に、インナーワイヤを前記アウター受け部より車体後方側に突出する操作アームを介して揺動リンク体に連結し、変速操作ワイヤの操作をすると、このワイヤ操作に伴って四連リンク機構が揺動作動して、チェン掛換え輪がチェンスプロケットの回転軸芯に沿う方向に移動するようにしながら、インナーワイヤがアウターワイヤに対して摩擦摺動するような湾曲個所をなくすることが可能となる。しかも、変速操作ワイヤを取り付けブッラケット体が支持することにより、かつ、変速操作の際に取付けブラケット体が車体に対して動かないことにより、揺動リンク体や支持体によって支持させる場合のように、かつ、取付けブラケット体が車体に対して動く場合のように変速操作に伴って操作ワイヤが振れ動くことを回避しながら変速操作できる。また、前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記取付けブラケット体は全体的に前記車体横方向軸芯より前記車体の後方の位置にあるので、ここに前記アウター受け部を設けることにより、取付けブラケット体の形状を大幅に変えること無くアウター受け部を設けることが可能である。前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、揺動リンク体が取付けブラケット体に対して傾斜軸芯周りで揺動するようにすると、変速操作ワイヤがアウター受け部から車体前方側に向いて延びると同時に車体上方向にも向かいながら延びて、変速操作ワイヤが車体横外側に比較的出にくいようにすることが可能になる。前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、変速操作ワイヤが上方に向きながら前方に向かって延びる状態に支持するよう支持部を備えて構成すると、変速操作ワイヤを車体フレームのチェンステイ部に沿わせてディレーラにその前方から導入するところの前引き状態でワイヤ配設する際に変速操作ワイヤに小半径の屈曲が発生しないようにしながら、変速操作ワイヤを車体フレームのバックフォーク部に沿わせてデイレーラにその上方から導入すると共に、変速操作ワイヤに小半径の屈曲が発生しないようにするところの上引き状態のワイヤ配設を採用することが可能になる。前記インナーワイヤを、前記自転車用リヤディレーラが前記使用状態にある際に、前記操作アームの、前記アウター受け部よりも車体後方側に突出した領域に設けられたインナー連結部に連結すると、変速操作ワイヤのインナーワイヤがアウターワイヤに対して摺動する小半径の屈曲部を発生させないワイヤ配設が可能となる。
【0006】
【発明の効果】
変速操作ワイヤを四連リンク機構の構成部材に連結するだけの簡単な構造で掛換え輪を移動操作できるものでありながら、変速操作ワイヤをディレーラに対してその前方側から直接に到達させて四連リンク機構に連動させることにより、しかも、変速操作に伴う変速操作ワイヤの振れ動きが発生しないことにより、変速操作ワイヤを極力湾曲しないようにして、かつ、変速操作にかかわらず振れ動かないようにして配設し、操作ワイヤのインナーワイヤがアウターワイヤに対して摺動する部分の曲がり抑制および振れ止めの両面からワイヤ抵抗の軽減化を達成して、軽快に変速操作できるようにできた。しかも、車体側に取付け用改造を要しないで有利に使用できるようにできた。揺動リンク体が取付けブラケット体に対して傾斜軸芯周りで揺動するようにすると、変速操作ワイヤの車体横外側への出代を少なく抑制して安全面等でも有利にワイヤ配設できるようになる。アウター受け部による変速操作ワイヤの斜め支持を可能にすると、前引き用に形成されている車体の他に、上引き用に形成されている車体の場合にも軽く変速操作できる状態に使用できるように、適用範囲の広い有利なものになる。
【0007】
【実施例】
図1および図3に示すように、取付けブラケット体1に一対の揺動リンク体2,3を介して支持体4を連結すると共に、この支持体4が支持するガイドプレート5にチェン掛換え輪7およびテンション輪8を取付けて、支持体4が取付けブラケット体1より車体前方側に位置するようにして車体フレームFに取り付けて、車体フレームFが支持する後輪駆動用チェンスプロケットS・・の下方でチェン掛換え輪7およびテンション輪8をチェンCに作用させるように、かつ、変速操作装置(図示せず)によって操作される変速操作ワイヤ9により操作して、前記スプロケットS・・に対するチェンCの掛換えを行わせるように自転車用リヤディレーラを構成してある。
【0008】
すなわち、取付けブラケット体1は、一端側に備えてある図2の如き取付けねじ10により車体フレームFの後輪取付け用フォークエンド部Eに締付固定することによって車体に連結するように構成すると共に、この連結状態では、変速操作にかかわらず車体フレームFに対して動かないように構成してある。以下、本明細書では図1に示される通り、この取付けブラケット体1が車体フレームFに取り付けられ、チェンCがチェンスプロケットS、チェン掛換え輪7、及びテンション輪8に掛けられた状態である使用状態にある自転車用リヤディレーラについて説明する。このブラケット体連結をすることによって、ディレーラが使用可能なように車体に組付く状態になり、この組付け状態では、ガイドプレート5の支持体4に対する揺動軸芯YがチェンスプロケットSの回動軸芯Zに平行またはほぼ平行になり、前記揺動リンク体2の取付けブラケット体1に対する揺動軸芯P1および支持体4に対する揺動軸芯P2、前記揺動リンク体3の取付けブラケット体1に対する揺動軸芯P3および支持体4に対する揺動軸芯P4のそれぞれが、図2に示す如く車体上方側に行くほど車体内側に位置するところの傾斜軸芯になるように構成してある。揺動リンク体2,3、取付けブラケット体1、支持体4が四連リンク機構Rを構成することにより、かつ、揺動リンク体2,3の前記揺動軸芯P1〜P4が前記傾斜軸芯であることにより、揺動リンク体2,3が取付けブラケット体1に対して揺動するに伴い、チェン掛換え輪7およびテンション輪8がこれらの回転軸芯がチェンスプロケットSの回動軸芯Zに平行またはほぼ平行になるところの対チェンスプロケット姿勢を維持しながら、チェンスプロケットSの下方をチェンスプロケットSの回転軸芯Zに沿った方向および径方向のいずれもの方向に移動するように構成してある。支持体4のガイドプレート5を枢支する部分に内装してある捩じりコイルスプリング型のテンションスプリング12が、支持体4を反力部材としてガイドプレート5を揺動付勢することにより、テンション輪8を支持体4に対して前記軸芯Yまわりで下降揺動する側に付勢すると共に、チェン掛換え輪7を支持体4に対して前記軸芯Yまわりで上昇揺動する側に付勢し、テンション輪8およびチェン掛換え輪7を介してチェンCに張力付与をするように構成してある。つまり、四連リンク機構Rを揺動作動するように操作することにより、チェン掛換え輪7およびテンション輪8がチェンスプロケットSの回転軸芯方向および径方向の両方向に移動してチェンCを複数枚のチェンスプロケットS・・の一つに掛換えると共に、チェンCがいずれのチェンスプロケットSに掛かっても、テンションスプリング12によって付与される付勢力により、チェンCをチェンスプロケットSの駆動に適切な張力状態に張り操作するのである。
【0009】
図2および図3に示すように、前記揺動リンク体2,3のうちの車体内側に位置する方の揺動リンク体3の前記揺動軸芯P3が位置する方の端部に、インナー連結部13aを備える操作アーム13を揺動リンク体3との一体成型によって連設することにより、揺動リンク体3にインナー連結部13aを備えると共に、このインナー連結部13aは、変速操作ワイヤ9のインナーワイヤ9aを止めねじ14によって締付連結するように構成してある。従って、インナーワイヤ9aを、操作アーム13を介して揺動リンク体3に連結しているのである。取付けブラケット体1に図5の如きアウター受け部15を図1に示される通り前記軸芯Xよりも車体フレームFの後方側に備えると共に、このアウター受け部15は、アウターホルダー16を備えており、変速操作ワイヤ9のアウターワイヤ9bをアウターホルダー16を介して連結するように構成し、かつ、アウターホルダー16の回動操作によってアウターワイヤ端部の前記インナーワイヤ連結部13aに対する位置調節ができるように構成してある。デイレーラが車体に組付いた状態では、前記インナー連結部13aが前記アウター受け部15の車体後方側に位置するように、前記操作アーム13が前記揺動軸芯P3から車体後方向きに突出するように構成し、図1に示す如く変速操作装置からの変速操作ワイヤ9をディレーラの前方側箇所から直接にディレーラに導入し、変速操作ワイヤ9のアウターワイヤ9b側の端部をアウター受け部15に連結して取付けブラケット体1により支持させると共に、インナーワイヤ9a側の端部をインナー連結部13aに連結して揺動リンク体3に連結することにより、変速操作ワイヤ9を四連リンク機構Rに連動させるように構成してある。支持体4の揺動リンク体3が枢着する部分に内装してある捩じりコイルスプリング型のリターンスプリング17が、揺動リンク体3と支持体4とを相対揺動するように付勢することにより、支持体3を取付けブラケット体1に対して車体外側に移動する側に付勢してチェン掛換え輪7に自動復帰力を付与するように構成し、変速操作ワイヤ9の弛み操作に伴い、チェン掛換え輪7が最も車体横外側のチェンスプロケットSにチェンCを掛ける操作位置に自動復帰するように構成してある。つまり、変速操作ワイヤ9の引っ張り操作をすると、インナーワイヤ9aが揺動リンク体3を取付けブラケット体1に対して車体内側に揺動するように操作し、チェン掛換え輪7、テンション輪8が車体内側に移動してチェンCを操作前に掛かっていたチェンスプロケットSより車体内側の大径側のチェンスプロケットSに掛換え操作するのである。変速操作ワイヤ9の緩め操作をすると、インナーワイヤ9aがリターンスプリング17の復帰作用をして揺動リンク体3を取付けブラケット体1に対して車体外側に揺動するように操作し、チェン掛換え輪7、テンション輪8が車体外側に移動してチェンCを操作前に掛かっていたチェンスプロケットSより車体外側の小径側のチェンスプロケットSに掛換え操作するのである。
【0010】
前記取付けブラケット体1において、図4に示すように、車体前後方向視においての前記揺動軸芯P1の鉛直線Cに対する傾斜角A、および前記アウター受け部15の軸芯P5の前記揺動軸芯P1に対する傾斜角Bそれぞれを、
傾斜角A=20°〜60°
傾斜角B=50°〜90°
に設定して、取付けブラケット体1が車体フレームFに組付いた状態でアウターホルダー16がアウター受け部15から車体の上方および前方の両方向に向かって延出するように構成することにより、アウター受け部15は、デイレーラが車体に対する所定の組付け状態になるように取付けブラケット体1が後輪用フォークエンド部Eに連結する状態で、変速操作ワイヤ9がアウター受け部15から車体上方向きでかつ車体前方に向かって延出する状態にアウターワイヤ9bを支持するように構成してある。つまり、アウター受け部15におけるアウターワイヤ9bの取り付け向きの作用により、図1に示す如く変速操作ワイヤ9が車体前方側から車体フレームFのチェンステイ部に沿ってデイレーラに導入する前引き状態でのワイヤ配設の他に、図6に示す如く変速操作ワイヤ9が車体フレームFのバックフォーク部に沿ってデイレーラに導入する上引き状態でのワイヤ配設をも必要に応じて採用できるように、かつ、前引き状態と上引き状態のいずれのワイヤ配設を採用する場合でも、アウター連結15の前記取り付け向きのために、変速操作ワイヤ9の湾曲度合いが操作ワイヤの屈曲による著しい操作抵抗増大を回避できるものになるように配慮してある。
【0011】
〔別実施例〕
図7および図8は、別実施例のリヤディレーラを示し、インナー連結部13aが平面視において揺動リンク体2の揺動軸芯P1の直後方箇所またはその近くに位置するように操作アーム13を形成すると共に、インナー連結部13aをアウター受け部15の直後方箇所またはその近くに位置するようにして揺動リンク体3に備えてある。つまり、変速操作ワイヤ9が車体前後方向に極力直線状態で車体前後方向に沿って揺動リンク体2に連結し、伝達効率が極めて良い状態で操作力伝達をするように配慮してある。
【0012】
上記実施例の如く、変速操作時にチェン掛換え輪7およびテンション輪8がチェンンスプロケットSの回転軸芯方向の他に径方向にも移動するように、揺動リンク体2,3の取付けブラケット体1に対する揺動軸芯P1,P2を前記傾斜軸芯に形成すると、アウターワイヤ9bから露出してインナー連結部13aに至るインナーワイヤ部分がアウターワイヤ9bに対して腰折れしにくいように構成することから、変速操作ワイヤ9がアウター受け部15から上方に向きながら前方に延びることになり、この結果、変速ワイヤ9の車体横外側への張出を抑制できて有利であるが、変速操作時にチェン掛換え輪7およびテンション輪8がチェンンスプロケットSの回転軸芯方向にのみ移動するように、揺動リンク体2,3の取付けブラケット体1に対する揺動軸芯P1,P2を鉛直軸芯に形成して実施してもよい。
【0013】
取付けブラケット体1の後輪取付け用フォークエンド部Eへの取り付けを可能にするに、上記実施例の如く取付けねじ10を使用する直付けタイプを採用する他、後輪取付け用フォークエンド部Eに後車輪と共締めするところのブラケットタイプを採用してもよい。したがって、これらを連結部10と総称する。
【0014】
変速操作ワイヤのインナーワイヤに対する連結部、すなわちインナー連結部を車体外側に位置する方の揺動リンク体2に備えて実施してもよい。この場合、ワイヤ配置の都合等により、操作ワイヤが引っ張り操作時に揺動リンク体を車体外側に揺動操作するように構成し、チェン掛換え輪がリターンスプリングによって車体内側に復帰移動するように構成してもよい。
【0015】
また、インナー連結部13a、アウター受け部15を揺動リンク体2,3あるいは取付けブラケット体1に備えるに、上記各実施例に示す如く揺動リンク体、取付けブラケット体、支持体それぞれに直接に連設する他、揺動リンク体あるいは取付けブラケット体にこれと一体に作動するように連結する部材に付設して実施してもよいのであり、これらの付設先を、取付けブラケット体1あるいは揺動リンク体と総称する。
【0016】
取付けブラケット体1を構成するに、上記実施例の如く車体フレームFのフォークエンド部Eに回動不能に組付けるように構成する他、ディレーラの使用時にはチェンCの張力により、車体フレームFのフォークエンド部Eに対して移動不能な連結状態になるが、後輪着脱時など、チェンCによる張力付与が解除されると、車輪の着脱が容易になるように使用時より車体後方側に揺動移動するところの連結状態になるように構成して実施してもよい。要するに、少なくともディレーラの使用時において車体フレームFに対して移動しない状態になればよいのである。
【0017】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】リヤディレーラ全体の側面図
【図2】リヤディレーラ操作部の縦断背面図
【図3】リヤディレーラ操作部の横断平面図
【図4】取付けブラケット体の後面図
【図5】取付けブラケット体の側面図
【図6】変速操作ワイヤの別配設要領を示す側面図
【図7】別実施リヤディレーラ全体の側面図
【図8】別実施リヤディレーラの操作部の横断平面図
【符号の説明】
1 取付けブラケット体
4 支持体
7 チェン掛換え輪
8 テンション輪
9 変速操作ワイヤ
9a インナーワイヤ
9b アウターワイヤ
10 連結部
12 テンションスプリング
13a インナー連結部
15 アウター受け部
C チェン
E 後輪取付け用フォークエンド部
F 車体
R 四連リンク機構
S チェンスプロケット
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-06-30 
出願番号 特願平3-343739
審決分類 P 1 41・ 856- Y (B62M)
P 1 41・ 853- Y (B62M)
P 1 41・ 851- Y (B62M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 大野 覚美
柴沼 雅樹
登録日 1999-05-14 
登録番号 特許第2926668号(P2926668)
発明の名称 自転車用リヤディレーラ  
代理人 小野 由己男  
代理人 小野 由己男  

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