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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 B65F |
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管理番号 | 1121884 |
審判番号 | 無効2004-80193 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-10-10 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-10-20 |
確定日 | 2005-05-02 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3448507号発明「ゴミ容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3448507号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件特許第3448507号の請求項1に係る発明についての出願は、平成11年3月29日に出願され、平成15年7月4日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。 (2)これに対し、請求人は、平成16年10月20日に請求項1に係る発明の特許について無効審判を請求した。 (3)被請求人は、平成16年12月22日に訂正請求書を提出して明細書の訂正を求めた(以下、この訂正を「本件訂正」という。)。本件訂正の内容は、以下のとおりである。 a)【特許請求の範囲】の、 「【請求項1】基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となされていることを特徴とするゴミ容器。」 とある記載を、 「【請求項1】基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となり、踏板上から足を下ろせば内容器は自重によって自動的に元の位置に復帰することを特徴とするゴミ容器。」 と訂正する(以下、「訂正事項a」という。)。 b)段落【0005】の記載内容を、 「【課題を解決するための手段】本発明のゴミ容器は、基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となり、踏板上から足を下ろせば内容器は自重によって自動的に元の位置に復帰することを特徴とする。」 と訂正する(以下、「訂正事項b」という。)。 2.訂正の可否に対する判断 これらの訂正事項について検討すると、上記訂正事項aは、訂正前の明細書の段落【0022】の「内容器5内にゴミを投入する際には、踏板21を足で下方に踏下げれば、2点鎖線で示されているように、軸2の他端22が内容器5の底面後端を下方から押上げ、内容器5は前方に傾動されて開口される。ゴミの投入後は、踏板21上から足を下ろせば、内容器5はその自重によって自動的に元の位置に復帰して閉口される。」なる記載に基いて、内容器についての復帰態様を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当しない。 また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加に該当しない。 そして、上記いずれの訂正事項も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。 3.本件発明 本件訂正が認められるため、訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(上記1.(3)a)参照。)。 4.請求人の主張 これに対して、請求人は、本件発明に係る特許を無効とする、との審決を求め、以下の1)ないし2)の理由を挙げて、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している。 1)本件発明の構成は甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載の発明を適用することで、容易に構成することができる。したがって、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由1」という。) 2)本件発明の構成は甲第3号証に記載の発明に甲第1、2号証に記載の発明を適用することで、容易に構成することができる。したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由2」という。) (証拠方法) 甲第1号証:実願昭58-56857号(実開昭59-162502号) のマイクロフィルム 甲第2号証:実公平1-9763 号公報 甲第3号証:実公昭36-3967号公報 5.被請求人の主張 一方、被請求人は、平成16年12月22日付けの答弁書において、本件発明は、甲第1号及び甲第2号証に記載された発明が存在しても、或いは、甲第1号ないし甲第3号証に記載された発明が存在しても、これらから当業者が容易に発明することはできず、特許法第29条第2項の規定に該当せず、本件発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当しない旨主張すると共に、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。 (証拠方法) 乙第1号証:本件審査過程での検索外注利用状況票 乙第2号証:本件審査過程での拒絶理由通知書 乙第3号証:角川漢和中辞典、昭和54年発行、182版、456頁 第1段「支点」の項 乙第4号証:広辞苑、1991年発行、第4版、1199頁第2段 「支点」の項 6.無効理由1について まず、上記無効理由1について検討する。 (1)各甲号証に記載の発明 (1-1)甲第1号証には、「収納装置」に関し、第3〜5図と共に以下の事項が記載されている。 ・「前面開放の収容空間と、この収納空間の前側下部に設けられ、収容空間の底面部より上方に配置して両側端を支持された支持具と、この支持具上に載置され、支持具と相対する底面部分に支持具係合用の凹部を形成し、前記支持具を介して傾倒自在とするとともに、着脱自在とした収納容器とからなる収納装置。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲) ・「本考案は台所等のごみ,ビン等の収納装置に関するものである。」(同第1頁第14〜15行) ・「本考案は家具内に容器を前倒し、ならびに着脱自在に設ける収納装置において、容器の前部底面に円弧状の凹部を形成し、この凹部に家具側に設けた支持金具を嵌合させた構成としたものであり」(同第3頁第9〜13行) ・「以下本考案の一実施例を第3図および第4図にもとづき説明する。図において9は台所等の室内に設置された厨房家具、10は厨房家具1に形成された前面開口の収納箱である。前記、収納箱10の下部前面には上端部をカーリングした支持金具11が固定されている。12は前記収納箱10内に収められる容器であり、底面前部に支持金具11の上端のカーリング径より大径とした円弧状の凹部12aを形成し、この凹部12aに前記支持金具11が嵌合するようになっている。したがって容器12は上方にもち上げることによって容器12は収納箱9に対し容易に着脱が可納である。」(同第3頁第17行〜第4頁第9行) ・「なお、図中の13,13′は容器12の両側壁、14,14′は厨房家具9の両外壁である。・・・17は把手部である。」(同第4頁第12〜18行) ・「上記構成において、容器12を引き出せば支持金具11を中心に手前に回動し、係止用金具15と受け金具16が当るまで開いて止まる。容器12内への収納等が終わり手をはなせば、容器12は重心の関係から元の位置に収納される。」(同第4頁第19行〜第5頁第3行) ・「このように本実施例によれば容器両側壁13,13′と収納箱10の両外壁14,14′との隙間を小さくでき、限られたスペースの中で容器12の収納量が増すとともに見栄えもよく、しかも、支持金具11によって容器底面から支えているため支持強度も大きいという利点がある。」(同第5頁第9〜14行) ・また、第3図及び第4図には、厨房家具9が水平な上面板と後方の外壁と側方の外壁14,14′を有し、さらに、これらの外壁に囲まれた傾斜した上面板、後面板、底面板及び側方の外壁14,14′から構成される収納箱10を有する構成、該収納箱10を構成する各板及び外壁からなる収納空間に容器12が収納される構成、収納箱10の底板の前端上面に支持金具11のカーリングした上端部が突設された構成、容器12は底面前部を支点として前方に傾動可能とされた構成が示されている。 上記の記載事項及び図示内容によれば、甲第1号証には、次の発明 (以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「水平な上面板、後方の外壁及び側方の外壁14,14′を有し、さらに、これらの外壁に囲まれた傾斜した上面板、後面板、底面板及び側方の外壁14,14′から構成される収納箱10を有する厨房家具9の、該収納箱10を構成する各板及び外壁からなる収納空間に、容器12が着脱可能に収納されており、容器12の底面前部に円弧状の凹部12aが形成され、前記凹部12aに収納箱10の底板の前端上面に突設された支持金具11のカーリングした上端部を嵌合し、容器12は把手部17を手で引くことにより、底面前部を支点として前方に傾動可能となり、手をはなせば容器12は重心の関係から元の位置に収納される収納装置。」 (1-2)甲第2号証には、「厨房用塵芥収容装置」に関し、図面と共に以下の事項が記載されている。 ・「前側パネル1aに開口部5が形成された厨房台1と、該厨房台1の開口部5内に、重心よりも前方位置に揺動支点を持つて前方に傾動可能にかつ非前傾状態で前板7aが前記開口部5を閉塞するように支持され、塵芥収容室10を形成する揺動箱7と、該謡動箱7の下方に央部にて上下に揺動自在に支持され、後端に揺動箱7の揺動支点よりも後側の下面を突き上げる突上げ部15を有する操作アーム部材13と、該操作アーム部材13の前端に設けられた操作ペダル16とを備えてなり、前記操作アーム部材13は操作ペダル16への踏込み操作により突上げ部15で非前傾状態にある揺動箱7を前傾思案点を若干越える位置まで前傾動させるように構成されていることを特徴とする厨房用塵芥収容装置。」(実用新案登録請求の範囲) ・「第1図および第2図において、1は上部に2槽のシンク2,2を備えた、厨房台としての流し台であつて、該流し台1の内部は仕切板3,3によつて左右方向に3つの室4,4,…に仕切られている。該流し台1の前側パネル1aには前記中央の室4に対応する部分に矩形状の開口部5が形成され、該開口部5の上縁(前側パネル1a)には後述の係合片19と係合する係止部6が設けられている。 前記流し台1の開口部5内には上面が開放された矩形状の揺動箱7が配設され、該揺動箱7は、その下面において重心よりも前方位置に設けた左右方向に延びる揺動支点としての支持軸8を介して、前方に傾動可能に前記仕切板3,3に支持され、かつ非前傾状態(直立状態)ではその前板7aがその上端部にて前記開口部5の係止部6に当接し前記流し台1の前側パネル1aと面一になつてその開口部5を閉塞するよう設けられている。よつて揺動箱7は所定角度以上に前傾すると自重によるモーメントによつて自動的に前傾するような前傾思案点を有している。また、前記支持軸8は各仕切板3に形成した軸受部としてのU字状溝9内に出入可能に嵌挿されており、よつて揺動箱7は流し台1に対して取外し可能に設けられている。」(第2頁第3欄第24行〜第4欄第4行) ・「前記揺動箱7の下面にはブラケツト12,12が突設され、該ブラケツト12,12間には前後方向に延びる操作アーム部材13がその央部にて支持軸14を介して上下に揺動自在に支持されている。該操作アーム部材13の後端には揺動箱7の揺動支点(支持軸8)よりも後端の下面である下面後端部を突き上げる突上げ部15が形成されている。一方、操作アーム部材13の前端には揺動箱7より前方に延びる操作ペダル16が取り付けられており、揺動箱7の非前傾状態で操作ペダル16の踏込み操作により操作アーム部材13を第2図で反時計回り方向に回動させたとき、該操作アーム部材13はその突上げ部15で揺動箱7を前記前傾思案点を若干越える位置まで前傾動させるように構成されている。」(第2頁第4欄第8〜22行) ・「次に前記実施例の作動について第3図に基づいて説明するに、揺動箱7の揺動支点(支持軸8)が揺動箱7下面において重心より前方位置に設けられているため、図で実線にて示すような揺動箱7の非前傾状態すなわち直立状態ではその重心は前記揺動支点位置より後側に移動しており、この重心による図で時計回り方向の支持軸8回りのモーメントによつて揺動箱7は後方向に付勢され、その前板7aは開口部5の係止部6に当接し流し台1の前側パネル1aと面一になつてその開口部5を閉塞している。 この状態から、揺動箱7の収容部11内への厨房塵芥の投入あるいは該収容器11の揺動箱7に対する出入のために揺動箱7を前傾させる場合には、操作ペダル16を所定量hだけ踏込み操作すると、図で破線にて示すように、この操作ペダル16の踏込み操作に伴つて操作アーム部材13が図で反時計回り方向に回動し、その突上げ部15が揺動箱7の下面後端部を突き上げて該揺動箱7を前傾思案点を若干越える位置まで前傾させる。このことにより、その後は、該揺動箱7にはその自重による支持8回りのモーメントが図で反時計回り方向に作用するようになり、揺動箱7はひき続いて自動的にさらに前傾し、図で二点鎖線にて示すようにストツパチエーン31が緊張した状態の最前傾位置に達すると停止して該最前傾位置に保持される。」(第3頁第5欄第9〜35行) ・「したがつて、操作ペダル16を踏込み操作するだけで揺動箱7が前傾思案点を越え、その後はその自重により自動的に最前傾位置まで前傾動するため、操作ペダル16の僅かな踏込み量によつても揺動箱7の開口面積を大きく確保することができ、よつて揺動箱7の下側のスペースが小さくて済み、揺動箱7の高さ寸法を大きくして塵芥収容量を増加させることができるとともに、揺動箱7の収容器11内への塵芥の投入時や該収容器11の出入時の操作性を高めて使い勝手を向上させることができる。」(第3頁第6欄第21〜31行) ・また、第2図には、操作アーム部材13の前端に設けられた操作ペダル16を足で下方に踏下げることにより、揺動箱7の底面後端を押上げるようにした構成が示されている。 (2)対比 本件発明と甲1発明とを比較すると、その作用・機能からみて、後者における「厨房家具9」が前者における「容器本体」に相当し、以下同様に、「収納空間」が「内部」に、「容器12」が「内容器」に、「底面前部に円弧状の凹部12aが形成され」が「底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設され」に、「底板の前端上面に突設された支持金具11のカーリングした上端部」が「基板上面に突設された突条」に、「重心の関係から元の位置に収納される」が「自重によって自動的に元の位置に復帰する」に、「収納装置」が「ゴミ容器」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明における「底面板」、「水平な上面板」、「後方の外壁及び側方の外壁14,14′」は、それぞれ本件発明における「基板」、「天板」、「天板から垂設された側壁」に相当する。 そして、甲1発明における「把手部17を手で引くこと」と、本件発明における「踏板を足で下方に踏下げること」とは、内容器を傾動するための「所定の操作」という概念で共通し、また、甲1発明における「手をはな」すことと、本件発明における「踏板上から足を下ろ」すこととは、内容器を復帰させるための「所定の操作の解除」という概念で共通している。 したがって、両者は、 「容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合し、内容器は所定の操作により、底面前端を支点として前方に傾動可能となり、所定の操作を解除すれば内容器は自重によって自動的に元の位置に復帰するゴミ容器」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 容器本体に関し、本件発明が、「基板上に天板から垂設された側壁が立設された」構成を有しているのに対し、甲1発明は、基板(底面板)、天板(水平な上面板)、天板から垂設された側壁(後方の外壁及び側方の外壁14,14′)を有するものの、基板が側壁に囲まれた構成である点。 (相違点2) 内容器の所定の操作及びその解除に関し、本件発明が、「踏板を足で下方に踏下げること」により、「底面後端を押上げられ」て内容器が傾動し、また、「踏板上から足を下ろせば」内容器が復帰するようにしたものであるのに対し、甲1発明は、「把手部17を手で引くこと」により内容器が傾動し、また、「手をはなせば」内容器が復帰するようにされている点。 (3)判断 以下、上記の相違点について検討する。 ・相違点1について 容器本体の構成自体は、内部に内容器を着脱可能に収納する範囲内で適宜設計し得るものであると共に、本件発明のように基板上に側壁が立設された構成と、甲1発明のように基板が側壁に囲まれた構成との間に、構成上の差異に基づく格別の効果は何等認められないから、結局、相違点1は、容器本体を構成する際の単なる設計上の相違にすぎないものというべきである。 ・相違点2について 甲第2号証に記載の発明(以下、「甲2発明」という。)は、踏板(操作ペダル16)を足で下方に踏下げることにより、内容器(揺動箱7)は底面後端を押上げられて前傾思案点を若干越える位置まで前傾動するように構成されたゴミ容器(厨房用塵芥収容装置)であるが、甲2発明において、前傾思案点を越えない範囲内であれば、踏板から足を下ろせば内容器は自重で復帰することは明らかである。 したがって、甲2発明は、ゴミ容器の内容器の操作手段として、踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端が押上げられて内容器が傾動し、また、踏板上から足を下ろせば内容器が自重で復帰することを可能とした、足による操作手段を備えたものといえる。 甲1発明及び甲2発明は、いずれもゴミ容器という同一の技術分野に属するものであり、足で操作する手段を採用することにより手がふさがっていても操作可能とすることは、ゴミ容器の分野において良く知られた課題である(例えば、本件特許明細書の段落【0002】の記載、甲第3号証として提出された実公昭36-3967号公報等参照。)から、かかる課題の下に、甲1発明における内容器の操作手段に、上記甲2発明の足による操作手段を適用して、相違点2に係る本件発明の構成とする程度のことは当業者が容易に想到し得たものというべきである。 そして、本件発明により奏される効果も、甲第1号証及び甲第2号証に記載された内容から当業者が予測し得る範囲内のものである。 以上のとおりであるので、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものというべきである。 なお、被請求人は、上記答弁書の第7頁第23行〜第8頁第1行において、「甲第2号証では操作ペダル16への踏込み操作により突上げ部15で非前傾状態にある揺動箱7を前傾動させる点では同じであるが、肝心の揺動支点が揺動箱7の底面前端ではなく、図2、図3に示されるようにほぼ底面中央である。すなわち、甲第2号証のものは前傾思案点を若干越える位置まで前傾動させるようにしたもので、本件発明のように自重によって自動的に元の位置に復帰するのではなく、復帰させるのは、足ばかりでなく手の助けを必要とするものであり、両手が塞がっている場合には操作は不可能である。」また、同第9頁第4〜12行において、「このように、甲第1号証と甲第2号証とが共に塵容器に関するものであっても、本件発明の容器前端を支持点とした踏板に関する構成Dが甲第2号証には開示されておらず、甲第1号証と甲第2号証とを組み合わせても本件発明の構成とはならない。 また、甲第2号証の揺動支点をほぼ容器底部中央から底部前端に移す設計変更をしてから、甲第1号証と組み合わせる設計変更を施すにしても、そもそも、前述したように、甲第2号証の作用と本件発明の作用とでは容器を傾斜した際の挙動が異なるのであるから、揺動支点を変更することは単なる設計的事項ではない。」と主張している。 しかし、甲第2号証に記載のものにおいて、踏板(操作ペダル)の踏込み操作により前傾思案点を若干越える位置まで内容器(揺動箱)を前傾動させるようにしたのは、踏板の僅かな踏込み量によっても内容器の開口面積を大きく確保するためであり、かかる利点を無視して内容器の前傾動の全てを踏板の踏込み操作のみで行い得ることは容易に理解されるところであると共に、甲第2号証に記載のものから引用したのは、あくまでも、ゴミ容器の内容器の操作手段として、踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端が押上げられて内容器が傾動し、また、踏板上から足を下ろせば内容器が自重で復帰することを可能とした手段であり、かかる手段を、操作力を加えることにより内容器が底部前端を支点として傾動し、また、操作力を解除すれば内容器が自重で復帰するようにされた甲1発明の操作手段として採用することに、特段の阻害要因が存在するとは認め難い。 さらに、被請求人は、平成17年3月4日付けで提出された上申書及び同年3月11日に実施された口頭審理において、甲1発明と甲2発明との組み合わせに関し、機械や装置発明の分野における進歩性否定の論拠には、積極的な動機付けの根拠が示されるべきである旨主張している。 しかしながら、技術分野の同一性及び課題については、既に述べたとおりであるから、甲1発明と甲2発明との組み合わせには、積極的な動機付けが存在するというべきである。 したがって、被請求人の上記各主張はいずれも採用できない。 7.むすび 以上のとおり、他の無効理由及び証拠について検討するまでもなく、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容 易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ゴミ容器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となり、踏板上から足を下ろせば内容器は自重によって自動的に元の位置に復帰することを特徴とするゴミ容器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ゴミ容器に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、開口部からの臭気の発散や害虫の出入りを防止すると共に、両手が塞がっている際にも蓋の開閉が可能なように、踏板を足で下方に踏下げることにより、蓋が後端を支点として上方に回動可能となされたゴミ容器は、公知である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなゴミ容器に於いては、蓋が上方に回動する為、ゴミ容器の上部空間を有効活用出来ないという問題があった。 【0004】本発明は、上記従来の問題点を解消し、上部空間を有効活用することが出来るゴミ容器を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明のゴミ容器は、基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の内部に、内容器が着脱可能に収納されており、内容器の底面前端に幅方向に沿って凹溝が刻設されるかもしくは突条が垂設され、前記凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合するか又は前記突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合し、内容器は踏板を足で下方に踏下げることにより、底面後端を押上げられ、底面前端を支点として前方に傾動可能となり、踏板上から足を下ろせば内容器は自重によって自動的に元の位置に復帰することを特徴とする。 【0006】本発明のゴミ容器に於いて、基板上に天板から垂設された側壁が立設された容器本体の材質は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の硬質合成樹脂が好適に使用される。 【0007】その形状は、特に限定されず、平面視略矩形状であっても、略円形状であっても何れでもよいが、外観を損ねることなく原料使用量を節減して屈曲変形を防止出来るよう、裏面の全周に鍔縁を周設し、鍔縁内部に略格子状等に補強突条を並設するのが好ましい。 【0008】本発明のゴミ容器に於いて、容器本体の内部に着脱可能に収納される内容器の材質は、特に限定されず、例えば、PP、HDPE等の硬質合成樹脂が好適に使用される。 【0009】その形状は、容器本体の形状に準じて決定されるが、分解時に上下方向に複数個を積重ねることが出来るように、壁面を若干上方が広がるよう傾斜させておくのが、運搬、保管時の占有容積を節減出来るので好ましい。 【0010】内容器の前面には、容器本体への着脱が容易なように、把手を設けるのが好ましい。把手の形状は、特に限定されず、例えば、前部上端縁を断面略Γ字状に折返しても、略コ字状の握持部を突設しても、何れでもよい。 【0011】内容器は、底面前端に幅方向に沿って凹溝を刻設し、該凹溝に基板上面に突設された突条を嵌合して、容易に抜落しないようにすると共に、基板上面中央に突設された踏板を足で下方に踏下げることにより、該突条を支点として前方に傾動されるようにするのが好ましい。これにより内容器にゴミが多く投入されていても梃子状に内容器を押上げるので踏下げ力が小さくて済むからである。又は、内容器と基板との凹凸を逆にして、内容器の前端に幅方向に沿って突条を垂設し、該突条を基板上面に刻設された凹溝に嵌合する。 【0012】内容器の上端には、全体形状略コ字状の1対のゴミ袋固定枠が回動可能に枢支されていてもよい。ゴミ袋固定枠の断面形状は、水平状態に回動した際に、内容器の開口端に支承されるよう、略Γ字状とされるのが好ましい。 【0013】内容器内にゴミ袋を配設するには、先ず、ゴミ袋内にゴミ袋を挿入し、ゴミ袋固定枠を上方に押上げ回動させてゴミ袋の上端縁を外方に折返してゴミ袋固定枠に巻回する。次いで、ゴミ袋固定枠を下方に押下げ回動させて、内容器の開口端に支承させればよい。 【0014】ゴミが収納されたゴミ袋を内容器から取出す際には、前記した順序とは逆に、先ず、ゴミ袋固定枠を上方に押上げ回動させて、ゴミ袋の上端縁をゴミ袋固定枠から取外す。次いで、ゴミ袋の口を緊結してゴミがこぼれ出ないように閉塞し、内容器から取出せばよい。 【0015】 【発明の実施の形態】以下本発明のゴミ容器を図面に基づいて説明する。図1は本発明のゴミ容器の一例を示す断面図である。 【0016】図1に於いて、1は全周に垂下縁11が周設された平面視略矩形状の基板であって、基板1の上面中央部には平面視略矩形状の凹陥部12が設けられ、凹陥部12の前端近傍には幅方向に沿って突条13が立設されている。 【0017】基板1の前面中央には平面視略矩形状の凹欠部14が設けられており、凹欠部14の垂下縁11には略矩形状の透孔15が穿設されている。透孔15には前端に踏板21が固着された軸2が挿通されており、軸2は揺動可能に軸着されている。 【0018】3は略矩形状の天板31から前方を除く3面に垂設された側壁であって、基板1の凹陥部12の両側に穿設された図示しない透孔に下端を挿嵌することにより、基板1上に立設されて、容器本体4が形成されている。 【0019】容器本体4の内部には、内容器5が着脱可能に収納されている。内容器5の前面上端には、断面略Γ字状の手掛け51が延設されており、底面の四隅には支持脚52が垂設されている。 【0020】内容器5の底面前端には、幅方向に沿って凹溝53が刻設されており、凹溝53に基板1上面に突設された突条13を嵌合することによって、内容器5は突条13を支点として前方に傾動可能となされている。 【0021】内容器5を容器本体4の内部から抜脱する際には、手掛け51に指先を掛けて内容器5を稍上方に持ち上げ、凹溝53と突条13との嵌合を解除して前方に引出せばよい。 【0022】内容器5内にゴミを投入する際には、踏板21を足で下方に踏下げれば、2点鎖線で示されているように、軸2の他端22が内容器5の底面後端を下方から押上げ、内容器5は前方に傾動されて開口される。ゴミの投入後は、踏板21上から足を下ろせば、内容器5はその自重によって自動的に元の位置に復帰して閉口される。 【0023】 【発明の効果】本発明のゴミ容器は、叙上の通り構成されているので、開口時に一時的に上部空間が蓋によって占有されることがなく、ゴミ容器の上部空間を有効活用することが出来る。又、内容器を傾動させる際も比較的小さな踏下げ力で可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明のゴミ容器の一例を示す断面図。 【符号の説明】 1 基板 2 軸 3 側壁 4 容器本体 5 内容器 11 垂下縁 12 凹陥部 13 突条 14 凹欠部 15 透孔 21 踏板 22 (軸の)他端 31 天板 51 手掛け 52 支持脚 53 凹溝 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2005-03-18 |
出願番号 | 特願平11-86132 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZA
(B65F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 増沢 誠一 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
山本 信平 大元 修二 |
登録日 | 2003-07-04 |
登録番号 | 特許第3448507号(P3448507) |
発明の名称 | ゴミ容器 |
代理人 | 石川 壽彦 |
代理人 | 小原 英一 |
代理人 | 小原 英一 |