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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1122567
審判番号 不服2002-10048  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-04-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-06 
確定日 2005-09-01 
事件の表示 平成10年特許願第282814号「表面弾性波装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月21日出願公開、特開2000-114918〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年10月5日の出願であって、平成14年4月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月8日付で手続補正がなされたものである。
2.平成14年7月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]平成14年7月8日付の手続補正を却下する。
[理由]本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、
「圧電体基板と、この圧電体基板の一方の主面に形成され、上記圧電体基板の表面の所定の方向に表面波を励振する励振電極を有する機能部と、上記圧電体基板の一方の主面に設けられ、少なくとも上記機能部及びバンプ電極に対応する部分が除去された第1の絶縁性フィルムと、上記第1の絶縁性フィルムに装着され、上記機能部との間に所定の空間を保持すると共に、上記機能部の励振電極及び表面波伝搬路を覆いつつ、少なくとも上記バンプ電極に対応する部分が除去された第2の絶縁性フィルムとを有する表面弾性波素子を備え、上記バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させるとともに上記第2の絶縁性フィルムが上記異方性導電材の上記圧電体基板側に接するように上記バンプ電極を上記回路基板にフリップチップ接続したことを特徴とする表面弾性波装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「上記バンプ電極を上記第2の絶縁性フィルムとともに、回路基板との間に介在させた異方性導電材によって上記回路基板にフリップチップ接続するようにした」について「上記バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させるとともに上記第2の絶縁性フィルムが上記異方性導電材の上記圧電体基板側に接するように上記バンプ電極を上記回路基板にフリップチップ接続した」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された欧州特許出願公開第794616号明細書(特開平10-270975号公報参照)(以下、「引用例1」という。)には、図面を参照して以下の記載がある。(以下、欧州特許出願公開第794616号明細書の記載箇所と共に、当該箇所に対応する日本語が記載されていると認められる特開平10-270975号公報の記載を摘記する。)
「(実施例1)図1(A)と図1(B)において、電子部品として、機能素子チップ1の1つの主面21上に機能部2としての表面波伝播面を有する弾性表面波デバイスの例を示す。弾性表面波素子1は、機能部に通常のフォトリソグラフィ手法を用いて、トランスバーサル型の櫛形電極が形成され、機能部外に外部回路との電気的導通を図るための電極パッド103(「103」は「3」の誤記と認められる。)がアルミニウムを主成分とする金属膜により形成されている。」(第7頁右欄第34-46行(特開平10-270975号公報、第8頁右欄第9-16行))

「(実施例2)図5及び図6は、電子部品として、機能素子チップは、1つの主面21上に機能部として5個の弾性表面波共振子を梯子型接続した弾性表面波フィルタの例であって、この例は、この機能素子チップを回路基板上にフェイスダウン実装した例である。図7及び図8において、空間保持体5の支台層5aの形状は、実施例1に示したと同様の方法で形成されるが、特にこの例では、1枚のドライフィルムレジスト110に個々の弾性表面波共振子に対応する開口部50を設けた形状とし、蓋体5bは個々の開口部50を一括して塞ぐような形状のフィルムとされて、支台層5a状に加熱加圧下で接合される。・・・図5及び図6の断面図には、回路基板8への実装後の電子装置につき、チップ1の蓋体5の外面の隔離層9が示されている。図6においては、さらに、金ワイヤを用いたボールボンディング法により、機能素子チップ1の電極パッド3上に導電性突起部6aを形成し、電極間接続部6とする。そして、前記機能チップ1を回路基板8上にフェイスダウンで位置合わせを行い、熱と超音波の併用により、導電性突起部と回路基板8上に形成された配線電極パッド83との接続を行う。最後に、エポキシ系の封止樹脂7を、機能素子チップ1と回路基板8とで形成された間隙に注入し、加熱硬化させることにより、前記機能素子チップ1の機能部2が確実に気密封止された電子部品を得ることができる。」(第8頁右欄第4-51行(特開平10-270975号公報、第9頁左欄第26行-右欄第14行))

同じく引用された特開平10-41776号公報(以下、「引用例2」という。)には、「圧電体基板と、この圧電体基板の一方の主面にそれぞれ形成された機能部と機能部の外部接続部を構成するバンプ電極(金属バンプ)とを有する表面弾性波素子(弾性表面波素子チップ)を備え、この表面弾性波素子のバンプ電極を回路基板(パッケージ基板)にフリップチップ(フェースダウン)接続するようにした表面弾性波装置(弾性表面波装置)において、上記バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材(異方性導電シート)を介在させ、この異方性導電材を介して、上記バンプ電極を回路基板に接続するようにすること。」が記載されていると認められる。

(2)対比
そこで、本願補正発明と上記引用例1に記載されたものとを対比すると、引用例1に記載された「機能素子チップ1」、「導電性突起部6a」、「支台層5a」、「蓋体5b」、「フェイスダウン実装」のそれぞれは、本願補正発明の「圧電体基板」、「バンプ電極」、「第1の絶縁性フィルム」、「第2の絶縁性フィルム」、「フリップチップ接続」のそれぞれに相当する。
また、引用例1の実施例2を示す図7及び図8をみると、その支台層5aは、個々の機能部2に対応する開口部50と、個々の電極パッド3に対応する凹部とを有する形状とされ、その蓋体5bは、上記機能部2を覆い、上記電極パッド3を露出する形状とされており、かつ、上記導電性突起部6は電極パッド3に対応するものであるから、上記支台層5aは、少なくとも導電性突起部6に対応する部分を避けて設けられている。したがって、上記蓋体5bは、「機能部2を覆いつつ、少なくとも導電性突起部6に対応する部分が除去された」ものということができる。
したがって、両者は
「圧電体基板と、この圧電体基板の一方の主面に形成され、上記圧電体基板の表面の所定の方向に表面波を励振する励振電極を有する機能部と、上記圧電体基板の一方の主面に設けられ、少なくとも上記機能部及びバンプ電極に対応する部分が除去された第1の絶縁性フィルムと、上記第1の絶縁性フィルムに装着され、上記機能部との間に所定の空間を保持すると共に、上記機能部の励振電極及び表面波伝搬路を覆いつつ、少なくとも上記バンプ電極に対応する部分が除去された第2の絶縁性フィルムとを有する表面弾性波素子を備え、上記バンプ電極を上記回路基板にフリップチップ接続した表面弾性波装置」である点で一致し、
以下の(a)の点で相違している。
(a)本願補正発明においては、「バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させるとともに第2の絶縁性フィルムが上記異方性導電材の圧電体基板側に接するように」上記バンプ電極を回路基板に接続しているのに対して、引用例1に記載されたものにおいては、バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させておらず、第2の絶縁性フィルムは基板との間に設けられた封止樹脂と接している点。

(3)判断
上記引用例2には、表面弾性波素子のバンプ電極を回路基板にフリップチップ接続するようにした表面弾性波装置において、上記バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させ、この異方性導電材を介して、上記バンプ電極を回路基板に接続するようにしたことが記載されている。
そして、圧電体基板と、この圧電体基板の一方の主面にそれぞれ形成された機能部と機能部の外部接続部を構成するバンプ電極と、上記圧電体基板の一方の主面に設けられ、少なくとも上記機能部及びバンプ電極に対応する部分が除去された第1の絶縁性フィルム(包囲壁)と、上記第1の絶縁性フィルムに装着され、上記機能部との間に所定に空間を保持すると共に、上記機能部を覆いつつ、少なくとも上記バンプ電極に対応する部分が除去された第2の絶縁性フィルム(蓋体)とを有する表面弾性波素子を備え、この表面弾性波素子のバンプ電極を回路基板(チップキャリア、プリント基板)にフリップチップ(フェイスダウン)接続するようにした表面弾性波装置において、上記第2の絶縁性フィルムが上記回路基板に(直接的に、あるいは緩衝層を介して間接的に)接するように上記バンプ電極を上記回路基板に接続することは周知のことである(例えば、特開平10-135772号公報(第3頁段落【0016】〜【0017】の蓋体に関する記載)、特開平9-246905号公報(図6の蓋体及び緩衝層に関する記載(段落【0052】、【0053】、【0044】)、の各記載参照)。
したがって、引用例1に記載された発明において引用例2に記載された技術を適用してバンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させるにあたり、周知技術を参酌すれば、第2の絶縁性フィルムを異方性導電材の圧電体基板側に接するようしてバンプ電極を回路基板に接続した構成とすることに格別の困難性はなく、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用例1、2及び、周知技術から予想できる程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1、2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年7月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年3月12日付手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「圧電体基板と、この圧電体基板の一方の主面に形成され、上記圧電体基板の表面の所定方向に表面波を励振する励振電極を有する機能部と、上記圧電体基板の一方の主面に設けられ、少なくとも上記機能部及びバンプ電極に対応する部分が除去された第1の絶縁性フィルムと、上記第1の絶縁性フィルムに装着され、上記機能部との間に所定の空間を保持すると共に、上記機能部の励振電極及び表面波伝搬路を覆いつつ、少なくとも上記バンプ電極に対応する部分が除去された第2の絶縁性フィルムとを有する表面弾性波素子を備え、この表面弾性波素子の上記バンプ電極を上記第2の絶縁性フィルムとともに、回路基板との間に介在させた異方性導電材によって上記回路基板にフリップチップ接続するようにしたことを特徴とする表面弾性波装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、2および、その記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「上記バンプ電極を上記第2の絶縁性フィルムとともに、回路基板との間に介在させた異方性導電材によって上記回路基板にフリップチップ接続するようにした」について「上記バンプ電極と回路基板との間に異方性導電材を介在させるとともに上記第2の絶縁性フィルムが上記異方性導電材の上記圧電体基板側に接するように上記バンプ電極を上記回路基板にフリップチップ接続した」と限定する構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1、2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-29 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-07-19 
出願番号 特願平10-282814
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
P 1 8・ 575- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 稔山崎 慎一  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 和田 志郎
治田 義孝
発明の名称 表面弾性波装置及びその製造方法  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 高橋 省吾  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 村上 加奈子  

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