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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1122651
審判番号 不服2002-23910  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-12 
確定日 2005-09-07 
事件の表示 平成 5年特許願第283061号「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 5月23日出願公開、特開平 7-134577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年11月12日に出願されたものであって、本願の請求項2に係る発明は、平成14年9月9日付け手続補正書及び平成15年1月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものであって、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。
・本願発明「異なる特性を持つ同期信号と映像信号とで構成する画像信号を発生する複数の信号源からの画像入力に対して,前記特性に対応するモードによる表示のための駆動を行う駆動回路を備えた表示装置において,
前記駆動回路は,
それぞれ固有の表示モードの画像信号を発生する複数の信号源からの同期信号と映像信号の対で構成する複数の画像信号が入力され,外部から供給される入力切替信号により前記複数の画像信号の中の何れか一つの同期信号と映像信号の対を選択する選択手段と,
前記入力切替信号を受け取って入力切替が行われる毎に予め設定された一定時間継続する入力切替制御信号を発生する入力切替制御信号発生手段と,
前記入力切替制御信号の出力により制御され,黒色レベルを発生する黒レベル発生手段からの信号入力と,前記選択手段で選択された映像信号入力とが供給され,前記入力切替制御信号が発生されないと前記映像信号入力を選択し,前記切替制御信号が発生する期間は黒レベル発生手段からの信号入力を選択して出力する映像信号切替手段とを備え,
前記映像信号切替手段から発生した映像信号を映像信号処理回路で処理して表示手段へ出力することを特徴とする表示装置。」

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-27727号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、
(A-1)「【産業上の利用分野】本発明は異なったモード又はタイミングの映像信号が混在する多数の入力映像信号を任意に切換えて複数のディスプレイ装置にそれぞれ表示するビデオスイッチ切換え方法及び装置に関する。」(第1欄第36〜39行)こと、
(A-2)「図1は本発明方法及び装置の1実施例の構成を示すブロック図である。図1中、1は互いに異なった走査周波数又はタイミングをもつ複数の映像信号S1 〜Snを入力し,選択信号Sc1 〜Scnにより所望の映像信号を選択して出力するビデオスイッチマトリックス回路、3D1 〜3Dnは該回路1より出力する選択された映像信号を表示する複数の自動走査線調節型(オートスキャンタイプ)CRTディスプレイ装置である。・・・4は所望の映像信号を選択する指示信号Si1 〜Sinを出力するキーボードである。2はこのキーボード4より出力する指示信号Si1 〜Sinを入力して所望の映像信号を選択する選択信号Ss1 〜Ssnを出力し,かつ複数の映像信号S1〜Snの切換えと同時に一定時間(数10ms)、画像消去信号Sa1 〜San及び/又は選択された映像信号が最適となる画像サイズ制御信号Sv1〜Svnを別々の伝送路を経てディスプレイ装置3D1〜3Dnに出力する制御装置である。・・・上記構成の本実施例において定められ範囲の異なった走査周波数をもつ複数の映像信号S1〜Snがビデオスイッチマトリックス回路1に入力されており、これらの映像信号S1 〜Snを切換えて複数のCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnに表示する場合、キーボード4を操作してこれより出力する指示信号、例えばSi1 を制御装置2に入力し、該指示信号Si1 に基づいてこれより出力する選択信号Ss1 により複数の映像信号S1〜Snのうちから該選択信号Sc1 に応じた映像信号S1 を切換え選択すると同時に制御装置2より一定時間(数10ms)の画像消去信号Sa1を該当するCRTディスプレイ装置3D1に出力し、該CRTディスプレイ装置3D1の走査が入力映像信号S1 に非同期状態となる数10ms間だけ画面が表示されない。・・・このように画像消去信号Sa1がCRTディスプレイ装置3D1に入力され、非同期期間だけ画面の表示が行われないため、乱れた画面が表示されることはなく、見ぐるしくなることはない。該期間経過後、映像信号S1 による画面がCRTディスプレイ装置3D1 に鮮明に表示されることになる。その他の映像信号S2〜Snによる画面表示についても同様に説明することができる。」(第3欄第33行〜第4欄第22行)こと、
(A-3)「又定められた範囲で互いに異なったタイミングを持つ複数の映像信号S1 〜Snがビデオスイッチマトリックス回路1に入力されており、これらの映像信号S1〜Snを切換えて複数のCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnに表示する場合、キーボード4を操作してこれより出力する指示信号、例えばSi1 を制御装置2に入力し、該指示信号Si1 に基づいてこれより出力する選択信号Ss1 により複数の映像信号S1 〜Snのうちから該選択信号Sc1 に応じた映像信号S1を切換え選択すると同時に制御装置2より選択された映像信号S1 が最適となる画像サイズ制御信号Sv1を該当するCRTディスプレイ装置3D1に入力し、選択された映像信号S1 が自動的に所望の画像サイズに制御されて該CRTディスプレイ装置3D1 に表示されることになる。」(第4欄第23〜37行)ことが記載されている。
上記(A-1)〜(A-3)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「互いに異なったモード(走査周波数)又はタイミングをもつ複数の映像信号S1 〜Snを入力し,選択信号Sc1 〜Scnにより所望の映像信号を選択して表示する複数のCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnにおいて、
複数の映像信号S1 〜Snを入力し,選択信号Sc1 〜Scnにより所望の映像信号を選択して出力するビデオスイッチマトリックス回路1と、
キーボード4より出力する指示信号Si1〜Sinを入力して所望の映像信号を選択する選択信号Sc1〜Scn(Ss1〜Ssn)を出力し,かつ複数の映像信号S1 〜Snの切換えと同時に一定時間(数10ms)、画像消去信号Sa1〜San及び/又は選択された映像信号が最適となる画像サイズ制御信号Sv1 〜SvnをCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnに出力する制御装置2とを備え、
画像消去信号Sa1〜Sanが出力されないときはビデオスイッチマトリックス回路1から出力される選択された映像信号をCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnの画面に表示し、画像消去信号Sa1〜Sanが出力されるとCRTディスプレイ装置3D1〜3Dnの画面が表示されないようにするCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dn。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
また、同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-78792号公報(以下、「引用刊行物B」という。)には、
(B-1)「本発明は複数の情報を一つのCRT画面に切り替えて表示するCRT表示装置に係わり、特には、CRT画面切り替え時にも画面が乱れること無く安定に観察の出来る・・・CRT表示方法に関する。」(第1頁左下欄第16行〜右下欄第1行)こと、
(B-2)「第1図において、1は観測画面を制御するための制御回路であって観測すべき画面を切り替える時にはセレクト信号がデータセレクタ34に出され、又、マスク信号が複数の画像用コントローラ2a、2b・・・・・・、2i、・・・・・・、2nのうち次に表示すべき画像情報の画像用コントローラに出される。データセレクタ34には各画像情報と各画像に対応した同期信号が複数の記憶回路3a、3b・・・・・・、3i、・・・・・・、3nと複数の画像用コントローラ2a、2b、・・・・・・、2i、・・・・・・、2nから入力しており、前述したセレクト信号によってそのうちの特定の画像情報とその情報に対応した同期信号が選択されてCRT表示部に出力されている。」(第2頁左下欄第19行〜右下欄第12行)ことが記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「互いに異なったモード(走査周波数)又はタイミング」、「ビデオスイッチマトリックス回路1、制御装置2」、「選択信号Sc1 〜Scn」、「ビデオスイッチマトリックス回路1」、「CRT」は、それぞれ本願発明の「異なる特性」、「駆動回路」、「入力切替信号」、「選択手段」、「表示手段」に相当する。
さらに、引用発明も「互いに異なったモード(走査周波数)又はタイミングをもつ複数の映像信号S1〜Sn」が入力するものであるから、複数の信号源から複数の映像信号S1 〜Snが画像入力が入力されることは明らかである。
そして、上記引用刊行物Aの上記(A-3)には「選択された映像信号S1が自動的に所望の画像サイズに制御されて該CRTディスプレイ装置3D1に表示されることになる。」ことが記載されており、引用発明においても、映像信号を処理してCRTの表示手段に出力する「映像信号処理回路」を有するものである。
また、上記引用刊行物Aの上記(A-2)には「選択信号Sc1 に応じた映像信号S1 を切換え選択すると同時に制御装置2より一定時間(数10ms)の画像消去信号Sa1 を該当するCRTディスプレイ装置3D1 に出力し、該CRTディスプレイ装置3D1 の走査が入力映像信号S1 に非同期状態となる数10ms間だけ画面が表示されない。・・・このように画像消去信号Sa1 がCRTディスプレイ装置3D1 に入力され、非同期期間だけ画面の表示が行われないため、乱れた画面が表示されることはなく、見ぐるしくなることはない。該期間経過後、映像信号S1による画面がCRTディスプレイ装置3D1 に鮮明に表示されることになる。」ことが記載されており、さらに、本願明細書の段落番号【0023】に「このようにして・・・信号源の切替え等が発生すると,予め設定された期間だけ黒等の固定色を表示装置で表示して,信号源の画像や同期回路が安定した時に切替先の乱れのない画像を表示することができる。」ことが記載されていることを考慮すると、引用発明の「画像消去信号Sa1 〜Sanを出力する制御装置2」と本願発明の「入力切替制御信号を発生する入力切替制御信号発生手段」はともに「入力切替信号を受け取って入力切替が行われる毎に予め設定された一定時間継続する制御信号を発生する制御信号発生手段」で共通するものである。
さらに、本願発明の「映像信号切替手段」が「入力切替制御信号が発生されないと映像信号入力を選択し,入力切替制御信号が発生する期間は黒レベル発生手段からの信号入力を選択して出力する」することにより乱れのない画像を表示するようにしていることから、この「映像信号切替手段」は「乱れのない画像を表示する切替手段」と見なすことができる。一方、引用発明も本願発明と同様に「画像消去信号Sa1 〜San」の出力がなくなると「映像信号 による画面がCRTディスプレイ装置3D1に鮮明に表示され」、「画像消去信号Sa1 〜San」が出力されると「画面が表示されない」ことにより、乱れた画面が表示されることがないようにしていることから、引用発明においても「乱れのない画像を表示する切替手段」を有するものと解される。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「異なる特性を持つ画像信号を発生する複数の信号源からの画像入力に対して,前記特性に対応するモードによる表示のための駆動を行う駆動回路を備えた表示装置において,
前記駆動回路は,
それぞれ固有の表示モードの画像信号を発生する複数の信号源からの複数の画像信号が入力され,外部から供給される入力切替信号により前記複数の画像信号の中の何れか一つの画像信号を選択する選択手段と,
前記入力切替信号を受け取って入力切替が行われる毎に予め設定された一定時間継続する制御信号を発生する制御信号発生手段と,
前記制御信号の出力により制御され,前記制御信号が発生されないと前記映像信号を画面に表示し、前記制御信号が発生する期間は乱れのない画像を表示する切替手段とを備え,
前記切替手段から発生した映像信号を映像信号処理回路で処理して表示手段へ出力することを特徴とする表示装置。」である点で一致し、次の相違点(イ)、(ロ)で相違している。
・相違点(イ)
本願発明では、画像信号が「同期信号と映像信号の対」で構成され、選択手段が「複数の画像信号の何れか1つの同期信号と映像信号の対」を選択するのに対して、引用発明では画像信号が「映像信号」で構成され、選択手段が「複数の映像信号の何れか1つの映像信号」を選択する点。
・相違点(ロ)
本願発明では、制御信号を発生する制御信号発生手段が「入力切替制御信号を発生する入力切替制御信号発生手段」であり、乱れのない画像を表示する切替手段が「入力切替制御信号の出力により制御され,黒色レベルを発生する黒レベル発生手段からの信号入力と,選択手段で選択された映像信号入力とが供給され,入力切替制御信号が発生されないと映像信号入力を選択し,入力切替制御信号が発生する期間は黒レベル発生手段からの信号入力を選択して出力する映像信号切替手段」であるのに対して、引用発明では制御信号を発生する制御信号発生手段が「画像消去信号Sa1 〜Sanを出力する制御装置2」であり、乱れのない画像を表示する切替手段が「画像消去信号Sa1 〜Sanに制御され、画像消去信号Sa1〜Sanが出力されないとビデオスイッチマトリックス回路1から出力される選択された映像信号をCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnの画面に表示し、画像消去信号Sa1〜Sanが出力されるとCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnの画面が表示されないようにする」手段である点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点(イ)、(ロ)について判断する。
・相違点(イ)について
上記引用刊行物Bには画像情報と同期信号が対となった複数の信号を選択して、CRT表示装置のCRT画面に表示することが記載されており、引用発明のCRTディスプレイ装置3D1 〜3Dnも引用刊行物BのCRT表示装置もともにCRT画面上に複数の表示用の信号を選択して表示するものであることから、引用発明においても表示用の信号として映像信号と同期信号とを対とした信号を用いるとともに、選択手段で選択する信号を複数の画像信号の何れか1つの同期信号と映像信号の対で選択することは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(ロ)について
映像信号を切り替え選択したときに生ずるノイズ画面を防止するために映像信号が正常であるかどうかを検出又は判別手段で検出又は判別し、この検出又は判別手段からの出力信号により映像信号と単色信号を切り替え、この出力信号がないときは映像信号を選択し、この出力信号があるときは単色信号を選択して表示装置に出力することは周知であり(例えば特開平2-104175号公報の第1図、特開平4-167893号公報の第1図、第4図、特開平4-192978号公報第1図、第2図参照)、引用発明の「複数の映像信号S1〜Snの切換えと同時に制御装置2からの画像消去信号Sa1〜San」も周知の「映像信号が正常であるかどうかを検出又は判別手段で検出又は判別し、この検出又は判別手段判からの出力信号」も、ともに映像信号を切り替え選択する際に発生する画面の乱れを表示しないようにするための制御信号であるから、引用発明においても制御装置2からの画像消去信号Sa1〜Sanの出力の制御信号によって画面が表示されないようにする代わりに、制御装置からの画像消去信号Sa1〜Sanの出力の制御信号を映像信号と単色信号を切り替える制御信号とするとともに、この制御信号が出力されてないときは映像信号を選択し、制御信号が出力されているときは単一色信号を選択して出力することは当業者であれば容易になし得るものである。そして、本願発明では単一色として黒色レベルと限定しているが、黒レベルを採用することにより格別の効果を生ずるものでもないことから、本願発明で単一色として黒色レベルを採用した点は当業者が適宜なし得る設計上の選択事項にすぎないものである。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、上記引用発明、引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術から予測される範囲内のものであり、格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-30 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-07-19 
出願番号 特願平5-283061
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 福田 裕司
後藤 時男
発明の名称 表示装置  
代理人 長谷川 文廣  
代理人 小笠原 吉義  
代理人 穂坂 和雄  

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