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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1122795
審判番号 不服2003-6039  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2005-09-08 
事件の表示 特願2000-73486「半導体集積回路装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月13日出願公開、特開2000-286374〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成5年3月25日(優先日:平成4年3月27日、出願番号:特願平4-71116号、優先日:平成4年11月30日、出願番号:特願平4-320098号)に出願した特願平5-65784号の一部を平成10年6月30日に新たな特許出願としたのち、さらにその一部を平成12年3月16日に新たな特許出願したものであって、その請求項1〜8に係る発明は、平成14年4月30日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載されているところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】所定の大きさを有する半導体チップを搭載するためのチップ搭載部と、前記チップ搭載部に搭載され、主面に複数のボンディングパッドを有する半導体チップと、前記半導体チップを取り囲むように配置されたインナーリード部、およびこのインナーリード部に繋がり前記インナーリード部から外方に向かって延在する複数のアウターリード部とからなる複数のリードと、前記半導体チップの複数のボンディングパッドと前記インナーリード部とを接続するボンディングワイヤと、前記半導体チップ、前記インナーリード部、および前記ボンディングワイヤを封止する封止樹脂とからなり、さらに、前記チップ搭載部は、交差する吊りリードによって構成され、前記チップ搭載部の吊りリードの幅は前記吊りリードの他の部分よりも幅広となっているとともに前記搭載される半導体チップと対向する側全面が前記搭載される半導体チップにより覆われていることを特徴とする半導体集積回路装置。」

なお、平成14年4月30日付手続補正書の請求項1には、「インナーリード部から外方に向かって延在する複数のインナーリード部とからなる複数のリードと」と記載されているが、この点について、請求人は、審判請求書において、「インナーリード部から外方に向かって延在する複数のアウターリード部」の誤記であると主張しており、本願の分割出願時の明細書には、「インナーリード部から外方に向かって延在する複数のアウターリード部とからなる複数のリードと」と記載され、かつ、リードが、インナーリード部とアウターリード部とからなることは自明のことであるから、上記「インナーリード部と」は、請求人が主張するように、「アウターリード部と」の誤記であると認める。よって、上記のとおり請求項1を認定した。

2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である

特開昭58-66346号公報(以下「刊行物1」という。)
特開昭63-204753号公報(以下「刊行物2」という。)

には、図面とともに、以下の記載がある。

(1)刊行物1
(1a)「半導体ペレットの一主面をリードのアイランド部の平面に固着してなる半導体装置において、前記アイランド部の平面は前記半導体ペレットの一主面に部分的に固着するように前記一主面よりも小なる面積を有することを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲)
(1b)「従来の半導体装置のリードのアイランド部は、・・・小さい半導体ペレットをこのアイランド部に固着しようとした場合、アイランド部の周囲部分が、半導体ペレットとリードとを配線したボンディングワイヤに接触して短絡事故を起こと等の問題があった。」(1頁左下欄下から4行〜右下欄5行)。
(1c)「大きさの著しく異なる半導体ペレットでも、定まった形状を有する一つのリードに、ボンディングワイヤの短絡事故を生じることなく、容易に固着することができるという効果がある。」(1頁右下欄14〜18行)
(1d)「このリードフレームは、半導体ペレット1の一主面(裏面)を固着するためのアイランド部2と、アイランド部2と枠4とを接続したリード3’と、半導体ペレット1の電極にボンディングされるワイヤの他端がボンディングされる多数のリード3とを有する。」(2頁左上欄1〜6行)と記載され、第1図〜第3図では、多数のリード3がアイランド部を取り囲むように複数配置されていることが示されている。
(1e)「第2図は、本発明の第1の実施例のリードフレームを示す平面図である。このリードフレームは、半導体ペレット1’の一主面よりも小さい固着平面を持つY字型をしたアイランド部2’を有する。特にボンディングワイヤが配線される領域の下には、アイランド部2’の周縁が露出していないので、ボンディングワイヤーの短絡事故は起きない。」(2頁左上欄15行〜右上欄1行)
(1g)「以上のように、本発明によれば、あらゆる大きさの半導体ペレットに一形状のリードフレームを適用できるから、特に多種少量生産において形状の異なる多数のプレス金型(・・・)を用意する必要がなくなり、廉価に製造することができる。」(2頁右上欄11〜16行)
(1h)第2図には、半導体ペレットを搭載するためのリードの交差する部分に設けられ、Y字型をしたアイランド部2’と、アイランド部およびアイランド部と枠4を接続するリードの一部とに搭載される波線で示される半導体ペレット1’と、前記半導体ペレットを取り囲むように配置されたリード3とが設けられたリードフレームの平面図が示され、アイランド部と枠を接続するリードの交点からみて、アイランド部は、リードに比較して幅が広くなっていることも示されている。

(2)刊行物2
(2a)「(1)リードフレームのダイパッド上に半導体素子が載置された状態で熱硬化性樹脂により樹脂封止された半導体装置において、ダイパッドが半導体素子の底面よりも小形に形成されていることを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲(1))
(2b)「一般に、樹脂封止型の半導体装置は、リードフレームのダイパツド上への半導体素子のダイボンド,ワイヤーボンド,樹脂封止,ダイバーカット,ピン曲げという一連の工程を経由して製造される。」(1頁右下欄1〜5行)
(2c)「すなわち、本発明者らは、上記フラットパッケージ,PLCC等の表面実装時におけるパッケージクラックの発生原因について一連の研究を重ねた。その結果、表面実装時における半田加熱により、封止樹脂とダイパッドとの界面に、樹脂中の水分の気化蒸気が集中し、ダイパッドから封止樹脂を底面側に押圧して全体が膨らんだような状態になり、それによってパッケージクラックが発生することを突き止めた。そこで、本発明者らは、このような現象の発生防止についてさらに研究を重ねた結果、ダイパッドの表面積をシリコンチップの底面積よりも小さくすると、上記封止樹脂中の水分の気化蒸気の集中現象が少なくなり、パッケージクラックの発生が防止されるようになることを見いだしこの発明に到達した。」(2頁右上欄9行〜左下欄3行)
(2d)「この発明の半導体装置は、以上のように、半導体素子を載置するダイパッドを、半導体素子の底面よりも小形に形成しているため、表面実装時における半田浸漬等の熱衝撃に対しても強い抵抗力を備えており、表面実装後に耐湿信頼性が低下するというようなことがない。」(4頁右上欄19行〜左下欄4行)
(2e)「これを第1図および第2図に示す。図において、1はパッケージ、2はツリピン、3はチップ、4はダイパッドである。」(4頁左下欄18〜20行)と記載され、第1図には、ダイパッドと、ダイパットを支持するツリピンと、ダイパッドよりも大きいサイズのチップと封止樹脂がパッケージを構成していることが示されている。

3.当審の判断
上記摘記事項(1a)には、半導体ペレットの一主面をリードのアイランド部の平面に固着してなる半導体装置において、前記アイランド部の平面は前記半導体ペレットの一主面に部分的に固着するように前記一主面よりも小なる面積を有する半導体装置が記載され、上記摘記事項(1d)には、半導体ペレットの一主面(裏面)を固着するためのアイランド部と、アイランド部と枠を接続したリードと、半導体ペレットの電極にボンディングされるワイヤの他端がボンディングされる多数のリードとを有することが記載され、多数のリードがアイランド部を取り囲むように複数配置されていることが示され、上記摘記事項(1h)には、半導体ペレットを搭載するためのリードの交差する部分に設けられ、Y字型をしたアイランド部と、該アイランド部および該アイランド部と枠を接続するリードの一部とに搭載される半導体ペレットと、前記半導体ペレットを取り囲むように配置されたリードとが設けられること、および、アイランド部と枠を接続するリードの交点からみて、アイランド部は、リードに比較して幅が広くなっていることが示されており、また上記摘記事項(1e)には、アイランド部2’の周縁が露出しないと記載されているから、アイランド部が半導体ペレットにより覆われているものである。したがって、上記摘記事項(1a)〜(1h)を総合すると、刊行物1には、「アイランド部と、アイランド部に搭載される電極を有する半導体ペレットと、半導体ペレットを取り囲むように配置された複数のリードとからなり、前記電極と、前記リードは、ワイヤでボンディングされ、アイランド部は、枠とアイランド部を接続するリードの交差する部分のY字型をしたものであり、かつアイランド部と枠を接続するリードの交点からみて、リードに比較して幅が広くなっており、半導体チップが、アイランド部および該アイランド部と枠を接続するリードの一部とに搭載され、アイランド部が半導体ペレットにより覆われている半導体装置」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

そこで、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、アイランド部を取り囲むように複数配置されているリードとワイヤボンディングされる電極が複数であること、リードのワイヤボンディングされる部分がインナーリード部であるのは、明らかであり、刊行物1発明の「アイランド部」、「電極」「半導体ペレット」「枠とアイランド部を接続するリード」、「ワイヤ」「アイランド部が半導体ペレットにより覆われている」、「半導体装置」は、それぞれ、本願発明の「半導体チップ搭載部」、「ボンディングパッド」、「半導体チップ」、「吊りリード部」、「ボンディングワイヤ」「チップ搭載部は、・・・搭載される半導体チップと対向する側全面が前記搭載される半導体チップにより覆われている」、「半導体集積回路装置」に相当しているので、両者は、
「所定の大きさを有する半導体チップを搭載するためのチップ搭載部と、前記チップ搭載部に搭載され、主面に複数のボンディングパッドを有する半導体チップと、前記半導体チップを取り囲むように配置されたインナーリード部を有する複数のリードと、前記半導体チップの複数のボンディングパッドと前記インナーリード部とを接続するボンディングワイヤとからなり、さらに、前記チップ搭載部は、搭載される半導体チップと対向する側全面が前記搭載される半導体チップにより覆われている半導体集積回路装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

イ.本願発明においては、半導体チップ搭載部の周囲を取り囲むように配置された複数のリードについて、インナーリード部、およびこのインナーリード部に繋がり前記インナーリード部から外方に向かって延在する複数のアウターリード部とからなるとされているが、刊行物1発明においては、そのような記載のない点。
ロ.本願発明においては、半導体チップ、インナーリード部、およびボンディングワイヤを封止する封止樹脂からなるとされているのに対して、刊行物1発明においては、そのような記載のない点。
ハ.本願発明においては、チップ搭載部は、交差する吊りリードによって構成され、前記チップ搭載部の吊りリードの幅は前記吊りリードの他の部分よりも幅広となっているとされているのに対して、刊行物1発明においては、チップ搭載部は、Y字型をしたアイランド部および該アイランド部と枠を接続するリードの一部としており、前記アイランド部は、枠とアイランド部を接続するリードの交差する部分にあり、かつアイランド部と枠を接続するリードの交点からみて、該リードに比較して幅が広くなっている点。

そこで、上記相違点について検討する。

相違点イ、ロについて
リードが、半導体チップとワイヤボンディングされるインナーリード部と、インナーリード部に繋がり前記インナーリード部から外方に向かって延在する部分で構成されていること、および、外部接続端子であるアウターリード部以外、つまり半導体チップ、インナーリード部およびボンディングワイヤを樹脂封止することは、半導体装置の技術分野において、いずれも周知慣用の技術的事項であるのだから(特開平3-232257号公報4頁左上欄13〜18行、上記摘記事項(2a)(2b)(2e)参照)、これらの事項を半導体集積回路装置に適用することは、当業者の設計上適宜にできることである。

相違点ハについて
刊行物1発明のアイランド部はY字型をしており、該アイランド部において、枠を接続するリードは交差しているもので、枠を接続する他のリード部分に比較して幅が広くなっているのであるから、本願発明の交差する吊りリードによって構成され、前記チップ搭載部の吊りリードの幅は前記吊りリードの他の部分よりも幅広となっているチップ搭載部と実質的に同じ構成となっており、かつチップを搭載する同じ機能をはたしている。そして、該アイランド部は、アイランド部と枠を接続するリード(本願発明の吊りリード)と一体のものであり、吊りリードの延長部とみることもできる。一方、本願発明における吊りリードの幅広部を逆にアイランド部とみることもできる。そうすると、両チップ搭載部が、本願発明において、交差する吊りリード、刊行物1発明において、Y字型アイランド部および該アイランド部と枠を接続するリードの一部とされていても、それは単なる表現上の差異にすぎず、相違点ハは、実質的な相違点とはいえない。

そして、明細書【0009】〜【0012】,【0056】〜【0059】,【0065】〜【0066】に記載される本願発明の効果も、刊行物1の上記摘記事項(1b)(1c)(1g)、刊行物2の上記摘記事項(2c)(2d)に記載されるように、前記刊行物の記載から予測しうる効果であり、当業者の予測を越える顕著なものとはいえない。

なお、請求人は、平成15年4月10付け審判請求書3頁の本願発明の作用効果の欄で、「半導体チップとチップ搭載部との接着性の向上および接着時の半導体チップの回転ずれの防止」効果を主張しているが、明細書全体の記載からみて、これらの効果は、半導体チップとチップ搭載部を複数の離間した箇所で接着剤で接着することにより得られるものであり、本願発明に係る請求項1の特定事項に基づく作用効果であるとは認められないから、上記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1〜2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-05 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-26 
出願番号 特願2000-73486(P2000-73486)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
瀬良 聡機
発明の名称 半導体集積回路装置  
代理人 筒井 大和  

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