ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1122797 |
審判番号 | 不服2004-3532 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-11-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-23 |
確定日 | 2005-09-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第525020号「資源割当」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月 5日国際公開、WO95/26535、平成 9年11月 4日国内公表、特表平 9-511080〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1995年3月17日(パリ条約による優先権主張1994年3月25日、オーストリア国)を国際出願日とする出願であって、平成15年11月14日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月23日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年3月23日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年3月23日付の手続補正を却下する。 [理由] (a)本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「メモリと処理部と入出力ポートからなるコンピュータによって、複数の現場力量資源を複数の業務へ割当てる方法において、該方法は、 (1)前記処理部が、該複数の現場力量資源に関するデータであって、現場力量資源に現在割当てられている業務に関して一時的なパラメータを特定するデータを前記メモリへロードするステップと、 (2)前記処理部が、各現場力量資源に関して、ステップ(1)において前記メモリへロードされたデータを処理して、現場力量資源が利用可能になると予想される第1の時間を判断するステップと、 (3)前記処理部が、複数の業務に関するデータに関するデータをメモリへロードするステップと、 (4)前記処理部が、各業務に関して、ステップ(3)において前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務が実行されるよう要求される第2の時間を判断するステップと、 (5)前記処理部が、各業務に関して、ステップ(4)において判断された第2の時間に基づいてコスト関数を割当てるステップであって、該コスト関数は業務が実行される実時間に関連したコストを特定し、該実時間と第2の時間との間の差異に依存するものであるステップと、 (6)前記処理部が、業務と現場力量資源との可能な組合わせの各々に関して、該実時間がステップ(2)において判断された第1の時間であるときに、ステップ(5)において割当てられたコスト関数の値を判断するステップと、 (7)前記処理部が、前記各組み合わせに関して合計予測コストを判断するステップと、 (8)前記処理部が、最小の合計予測コストを生成する組合わせを識別し、該最小の合計予測コストを生成する業務と現場力量資源との組合わせを判断するステップと、を具備する。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、 「請求項1に記載された方法において、請求項1に記載の前記ステップは、前記処理部によって、利用可能になる第1の現場力量資源を示すデータの該入出力ポートを介する受領に応じて実行され、前記処理部は該利用可能な第1の現場力量資源をステップ(8)において識別された組合わせで関係付けられた業務に割当てる。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、 「請求項2に記載された方法において、前記処理部によって、新たな業務を、ステップ(3)においてメモリにロードされた複数の業務に追加することができ、請求項1に記載の前記ステップは、このような追加が行われるときに実行される。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項4は、 「請求項2または請求項3に記載された方法において、第2の現場力量資源がその予測された時間に或いはその近くで利用可能となり、かつ該割当て判断が最後に実行されてから他の変化が生じていないならば、第2の現場力量資源はステップ(8)において識別された最小コストの組合わせで第2の現場力量資源に割当てられた業務に指定される。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は、 「請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法において、第1の業務がある現場力量資源に前記処理部によって指定されると、第1の業務と緊密に関係しかつ該現場力量資源と適合性のある他の業務もまた前記処理部によって該現場力量資源に指定される。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項6は、 「請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法において、業務はそれが実行されるべき時間に基づいて優先順位を付けられ、現場力量資源はそれが最初に利用可能になると予測されるものに基づいて優先順位を付けられ、コスト判断ステップ(6)、(7)及び(8)は前記処理部によって、最も高い優先順位を有する予め定められた業務の数と予め定められた現場力量資源の数の一方又は両方に関して実行される。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項7は、 「請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法において、第1の業務のステップ(6)において判断されたコスト値がしきい値を超えるときは、現場力量資源は前記処理部によって指示されて、現在従事している第2の業務を中断して代わりに第1の業務を実行する。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項8は、 「複数の現場力量資源を複数の業務に割当てるための装置において、該装置は、 現場力量資源に関係するパラメータを記憶するための第1の記憶装置と、 業務に関係するパラメータを記憶するための第2の記憶装置と、 処理部とを具備し、 前記処理部は、 各現場力量資源が利用可能となると予測される第1の時間を前記第1の記憶装置に記憶されたパラメータから判断するための計算手段と 各業務が実行を求められている第2の時間を前記第2の記憶装置に記憶されたパラメータから判断する手段と、 前記第2の時間に基づいて各業務にコスト関数を割り当てるための割当て手段であって、該コスト関数は業務が実行される実時間に関連したコストを特定し、該実時間と第2の時間との間の差異に依存するものと、 業務と現場力量資源との可能性のある組合わせの各々に関して、実時間が第1の時間であるときに、割り当てられたコスト関数の値を判断するための第1の判断手段と、 前記各組み合わせに関して合計予測コストを判断し、最小の合計予測コストを生成する組合わせを識別するための第2の判断手段であって、該第2の判断手段は該最小の全予測コストを生成する業務と現場力量資源との組合わせを判断するように構成されているもの と、を具備する。」 と補正された。 本件補正により、特許請求の範囲の請求項9は、 「請求項8に記載された装置において、前記処理部は、業務と現場力量資源の一方または両方に優先順位を付けるための手段と、コスト判断プロセスを実行する最高の優先順位を有する業務と現場力量資源とを選択するための手段とを、さらに具備する。」 と補正された。 (b)本件補正の目的について (b-1)請求項1について 「メモリと処理部と入出力ポートからなるコンピュータが、複数の資源(T1、T2、T3)を複数の業務(J1、J2、J3、J4、J5、J6、J7)へ割当てる方法であって、」を「メモリと処理部と入出力ポートからなるコンピュータによって、複数の現場力量資源を複数の業務へ割当てる方法において、該方法は、」とする補正は、「資源」の事項を限定的に減縮するとともに「(T1、T2、T3)」及び「(J1、J2、J3、J4)」の誤記を削除するものである。 「前記処理部によって、該複数の資源に関するデータと該複数の業務に関するデータとを前記メモリへロードするステップ」を「(1)前記処理部が、該複数の現場力量資源に関するデータであって、現場力量資源に現在割当てられている業務に関して一時的なパラメータを特定するデータを前記メモリへロードするステップ」及び「(3)前記処理部が、複数の業務に関するデータに関するデータをメモリへロードするステップ」にする補正は、「複数の資源に関するデータ」の事項及び「複数の業務に関するデータ」の事項をそれぞれ限定的に減縮するものである。 「前記処理部によって、前記メモリへロードされた」を「前記処理部が、各現場力量資源に関して、ステップ(1)において前記メモリへロードされた」にする補正は、「前記メモリへロードされた」の事項を限定的に減縮するものである。 「各資源が利用可能になると予想される時間」を「現場力量資源が利用可能になると予想される第1の時間」にする補正は、「資源」及び「時間」の事項を限定的に減縮するものである。 「前記処理部によって、前記メモリへロードされた」を「前記処理部が、各業務に関して、ステップ(3)において前記メモリへロードされた」に補正は、「前記メモリへロードされた」の事項を限定的に減縮するものである。 「各業務がいつ実行される必要があるかの時間」を「各業務が実行されるよう要求される第2の時間」にする補正は、「時間」の事項を限定的に減縮するものである。 「前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務に対して業務が実行される時間の関数として計算された時間依存のコスト関数を指定するステップ」を「前記処理部が、各業務に関して、ステップ(4)において判断された第2の時間に基づいてコスト関数を割当てるステップであって、該コスト関数は業務が実行される実時間に関連したコストを特定し、該実時間と第2の時間との間の差異に依存するものであるステップ」にする補正は、「コスト関数を指定する」、「時間」、「コスト関数」の事項を限定的に減縮するものである。 「前記処理部によって、業務と資源との可能な組合わせの各々に対して、各資源が利用可能であると予見される時間とその時間でのそれぞれの業務に対するコスト関数の値とに依存する全体の予定コストを判断するステップ」を「前記処理部が、業務と現場力量資源との可能な組合わせの各々に関して、該実時間がステップ(2)において判断された第1の時間であるときに、ステップ(5)において割当てられたコスト関数の値を判断するステップと、前記処理部が、前記各組み合わせに関して合計予測コストを判断するステップ」にする補正は、「予定コストを判断する」の事項を限定的に減縮するものである。 「前記処理部によって、最小の全予定コストを生じる組合せを判断するステップ」を「前記処理部が、最小の合計予測コストを生成する組合わせを識別し、該最小の合計予測コストを生成する業務と現場力量資源との組合わせを判断するステップ」にする補正は、「組合せを判断する」の事項を限定的に減縮するものである。 したがって、上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものと誤記を訂正するものであって、特許法第17条の2第4項第2号及び第3号の特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものに該当する。 (b-2)請求項2について 請求項2に関する補正は、「資源」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-3)請求項3について 請求項3に関する補正は、「複数の業務」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-4)請求項4について 請求項4に関する補正は、「最小コストの組合せ」及び「資源」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-5)請求項5について 請求項5に関する補正は、「他の業務」及び「資源」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-6)請求項6について 請求項6に関する補正は、「コスト見積もり」及び「資源」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-7)請求項7について 請求項7に関する補正は、「第1のコスト値」及び「資源」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項7に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-8)請求項8について 請求項8に関する補正は、「コスト関数を各業務に対して指定する」、「コスト関数」、「資源」、「組合せを判断する」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-9)請求項9について 請求項9に関する補正は、「業務と資源」の事項を限定的に減縮するものであるので、請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (b-10)請求項10について 「電気通信網(N)」を「電気通信網」にする補正及び「業務(J1、J2、J3、J4、J5、J6、J7)」を「業務」にする補正は、誤記を削除する補正であるので、請求項10に関する補正は、特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的にするものに該当する。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同第3号の誤記の訂正を目的にするものに該当する そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (c)特許法第29条第1項柱書に規定する要件について 本件補正後の請求項1に記載された事項に基づいて把握される本願補正発明は、 「メモリと処理部と入出力ポートからなるコンピュータによって、複数の現場力量資源を複数の業務へ割当てる方法において、該方法は、 (1)前記処理部が、該複数の現場力量資源に関するデータであって、現場力量資源に現在割当てられている業務に関して一時的なパラメータを特定するデータを前記メモリへロードするステップと、 (2)前記処理部が、各現場力量資源に関して、ステップ(1)において前記メモリへロードされたデータを処理して、現場力量資源が利用可能になると予想される第1の時間を判断するステップと、 (3)前記処理部が、複数の業務に関するデータに関するデータをメモリへロードするステップと、 (4)前記処理部が、各業務に関して、ステップ(3)において前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務が実行されるよう要求される第2の時間を判断するステップと、 (5)前記処理部が、各業務に関して、ステップ(4)において判断された第2の時間に基づいてコスト関数を割当てるステップであって、該コスト関数は業務が実行される実時間に関連したコストを特定し、該実時間と第2の時間との間の差異に依存するものであるステップと、 (6)前記処理部が、業務と現場力量資源との可能な組合わせの各々に関して、該実時間がステップ(2)において判断された第1の時間であるときに、ステップ(5)において割当てられたコスト関数の値を判断するステップと、 (7)前記処理部が、前記各組み合わせに関して合計予測コストを判断するステップと、 (8)前記処理部が、最小の合計予測コストを生成する組合わせを識別し、該最小の合計予測コストを生成する業務と現場力量資源との組合わせを判断するステップと、を具備する。」である。 明細書の記載から総合的に把握すると、本願補正発明が解決しようとする課題は、「複数の業務に対する複数の資源の割当てを最適化するための方法を提供する」ことである。 また、本願補正発明の「(1)前記処理部が、該複数の現場力量資源に関するデータであって、現場力量資源に現在割当てられている業務に関して一時的なパラメータを特定するデータを前記メモリへロードするステップ」及び「(3)前記処理部が、複数の業務に関するデータに関するデータをメモリへロードするステップ」は、コンピュータの処理に必要なデータを入力したことを明示したにすぎない。 よって、本願補正発明における課題の解決手段は、 「(2)前記処理部が、各現場力量資源に関して、ステップ(1)において前記メモリへロードされたデータを処理して、現場力量資源が利用可能になると予想される第1の時間を判断するステップと、 (4)前記処理部が、各業務に関して、ステップ(3)において前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務が実行されるよう要求される第2の時間を判断するステップと、 (5)前記処理部が、各業務に関して、ステップ(4)において判断された第2の時間に基づいてコスト関数を割当てるステップであって、該コスト関数は業務が実行される実時間に関連したコストを特定し、該実時間と第2の時間との間の差異に依存するものであるステップと、 (6)前記処理部が、業務と現場力量資源との可能な組合わせの各々に関して、該実時間がステップ(2)において判断された第1の時間であるときに、ステップ(5)において割当てられたコスト関数の値を判断するステップと、 (7)前記処理部が、前記各組み合わせに関して合計予測コストを判断するステップと、 (8)前記処理部が、最小の合計予測コストを生成する組合わせを識別し、該最小の合計予測コストを生成する業務と現場力量資源との組合わせを判断するステップからなる、処理部及びメモリを備えたコンピュータを用いた一連の処理」であるということになる。 ここで、処理に用いられる現場力量資源に関するデータ、業務に関するデータは、明細書の記載からみて、対象の物理的性質や技術的性質に基づくものであるとは認められない。 また、上記(2)の「各現場力量資源に関して、ステップ(1)において前記メモリへロードされたデータを処理して、現場力量資源が利用可能になると予想される第1の時間を判断するステップ」と上記(4)の「各業務に関して、ステップ(3)において前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務が実行されるよう要求される第2の時間を判断するステップ」は、人為的な取り決めに基づき、入力されたデータから後の処理に必要なデータを判断する処理である。 また、上記(6)の「業務と現場力量資源との可能な組合わせの各々に関して、該実時間がステップ(2)において判断された第1の時間であるときに、ステップ(5)において割当てられたコスト関数の値を判断するステップ」と上記(7)の「前記処理部が、前記各組み合わせに関して合計予測コストを判断するステップ」と上記(8)「最小の合計予測コストを生成する組合わせを識別し、該最小の合計予測コストを生成する業務と現場力量資源との組合わせを判断するステップ」は、合計値が最小となる組合せを判断するアルゴリズムを用いた数学的手法に基づいて判断等行う処理である。 さらに、上記の判断、割当て、識別などの種々の処理を「処理部」が行うことは、コンピュータを使用したことに伴って生じる形式上の限定にすぎない。 以上の事項を考慮すると、上記解決手段は、合計値が最小となる組合せを判断するアルゴリズムを用いた数学的手法に基づく一連の処理を単にコンピュータで行うことを明示したにすぎず、コンピュータの処理部及びメモリがどのように用いられて、課題を解決する具体的な処理がなされるのかを直接的又は間接的に示す具体的な事項が記載されているとは認められない。 したがって、本願補正発明における解決手段は、形式上はコンピュータのハードウエア資源である処理部及びメモリを用いていた手段として表現されているが、上述のとおりコンピュータの処理部及びメモリがどのように用いられて処理がなされるのかを直接的又は間接的に示す具体的な事項が記載されているとは認められないので、前記解決手段は「コンピュータを用いて処理すること」のみであるから、本願補正発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではない。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (d)結び 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年3月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年10月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「メモリと処理部と入出力ポートからなるコンピュータが、複数の資源(T1、T2、T3)を複数の業務(J1、J2、J3、J4、J5、J6、J7)へ割当てる方法であって、 前記処理部によって、該複数の資源に関するデータと該複数の業務に関するデータとを前記メモリへロードするステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各資源が利用可能になると予想される時間を判断するステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務がいつ実行される必要があるかの時間を判断するステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務に対して業務が実行される時間の関数として計算された時間依存のコスト関数を指定するステップと、 前記処理部によって、業務と資源との可能な組合わせの各々に対して、各資源が利用可能であると予見される時間とその時間でのそれぞれの業務に対するコスト関数の値とに依存する全体の予定コストを判断するステップと、 前記処理部によって、最小の全予定コストを生じる組合せを判断するステップと、からなる方法。」 4.原査定の理由 本願発明に関する原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 「本願発明は、全体として、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないので、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。」 5.当審の判断 そこで、本願発明が、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしているかどうか検討する。 本願の請求項1に記載された事項に基づいて把握される発明は、 「メモリと処理部と入出力ポートからなるコンピュータが、複数の資源(T1、T2、T3)を複数の業務(J1、J2、J3、J4、J5、J6、J7)へ割当てる方法であって、 前記処理部によって、該複数の資源に関するデータと該複数の業務に関するデータとを前記メモリへロードするステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各資源が利用可能になると予想される時間を判断するステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務がいつ実行される必要があるかの時間を判断するステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務に対して業務が実行される時間の関数として計算された時間依存のコスト関数を指定するステップと、 前記処理部によって、業務と資源との可能な組合わせの各々に対して、各資源が利用可能であると予見される時間とその時間でのそれぞれの業務に対するコスト関数の値とに依存する全体の予定コストを判断するステップと、 前記処理部によって、最小の全予定コストを生じる組合せを判断するステップと、からなる方法。」である。 明細書の記載から総合的に把握すると、本願発明が解決しようとする課題は、「複数の業務に対する複数の資源の割当てを最適化するための方法を提供する」ことである。 また、上記の「前記処理部によって、該複数の資源に関するデータと該複数の業務に関するデータとを前記メモリへロードするステップ」は、コンピュータの処理に必要なデータを入力したことを明示したにすぎない。 そして、上記2.(c)で検討した本願補正発明と同様に、本願発明における解決手段は、 「前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各資源が利用可能になると予想される時間を判断するステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務がいつ実行される必要があるかの時間を判断するステップと、 前記処理部によって、前記メモリへロードされたデータを処理して、各業務に対して業務が実行される時間の関数として計算された時間依存のコスト関数を指定するステップと、 前記処理部によって、業務と資源との可能な組合わせの各々に対して、各資源が利用可能であると予見される時間とその時間でのそれぞれの業務に対するコスト関数の値とに依存する全体の予定コストを判断するステップと、 前記処理部によって、最小の全予定コストを生じる組合せを判断するステップからなる、処理部及びメモリを備えたコンピュータを用いた一連の処理」である。 そして、本願発明における解決手段は、上記の2.(c)で検討したように、資源に対する業務割当てのコスト分析アルゴリズムを用いた数学的手法に基づく一連の処理をコンピュータで処理することを明示したにすぎず、コンピュータの処理部及びメモリがどのように用いられて処理がなされるのかを直接的又は間接的に示す具体的な事項が記載されているとは認められない。 したがって、本願発明の前記解決手段は、コンピュータのハードウエア資源である処理部及びメモリを用いていた手段ではあるが、上述のとおりコンピュータの処理部及びメモリがどのように用いられて処理がなされるのかを直接的又は間接的に示す具体的な事項が記載されているとは認められないため、「コンピュータを用いて処理すること」のみであるから、本願発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」でない。 6.まとめ 以上のとおり、本願発明は、特許法上の「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないので、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-17 |
結審通知日 | 2005-03-29 |
審決日 | 2005-04-15 |
出願番号 | 特願平7-525020 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 14- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小太刀 慶明、竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
篠原 功一 久保田 健 |
発明の名称 | 資源割当 |
代理人 | 萩原 誠 |