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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1122806
審判番号 不服2003-6042  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-11-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2005-09-08 
事件の表示 特願2002-128666「半導体集積回路装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-329830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成5年3月25日(優先日:平成4年3月27日、出願番号:特願平4-71116号、優先日:平成4年11月30日、出願番号:特願平4-320098号)に出願した特願平5-65784号の一部を平成10年6月30日に新たな特許出願としたのち、さらにその一部を平成14年4月30日に新たな特許出願したものであって、その請求項1〜6に係る発明は、平成15年1月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。」は、次のとおりのものである。

「【請求項1】主面にボンディングパッドを有する半導体チップと、前記半導体チップが搭載され前記搭載される半導体チップの外形寸法よりも小さい外形寸法を有するチップ搭載部と、前記チップ搭載部に繋がる吊りリード部と、前記吊りリード部に設けられた前記半導体チップの位置決めまたは外観検査のための複数の溝と、前記チップ搭載部の周囲を取り囲むように配置されたインナーリード部および前記インナーリード部に接続されかつ前記インナーリード部から外方に向かって延在するアウターリード部からなる複数のリードと、前記半導体チップのボンディングパッドと前記インナーリード部とを接続するボンディングワイヤと、前記インナーリード部および前記半導体チップを封止する樹脂封止部とからなることを特徴とする半導体集積回路装置。」

2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である

特開昭58-66346号公報(以下「刊行物1」という。)
特開昭63-204753号公報(以下「刊行物2」という。)
特開昭61-128551号公報(以下「刊行物3」という。)
特開昭58-186957号公報(以下「刊行物4」という。)
特開昭57-24555号公報(以下「刊行物5」という。)

には、図面とともに、以下の記載がある。

(1)刊行物1
(1a)「半導体ペレットの一主面をリードのアイランド部の平面に固着してなる半導体装置において、前記アイランド部の平面は前記半導体ペレットの一主面に部分的に固着するように前記一主面よりも小なる面積を有することを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲)
(1b)「従来の半導体装置のリードのアイランド部は、・・・小さい半導体ペレットをこのアイランド部に固着しようとした場合、アイランド部の周囲部分が、半導体ペレットとリードとを配線したボンディングワイヤに接触して短絡事故を起こと等の問題があった。」(1頁左下欄下から4行〜右下欄5行)。
(1c)「大きさの著しく異なる半導体ペレットでも、定まった形状を有する一つのリードに、ボンディングワイヤの短絡事故を生じることなく、容易に固着することができるという効果がある。」(1頁右下欄14〜18行)
(1d)「このリードフレームは、半導体ペレット1の一主面(裏面)を固着するためのアイランド部2と、アイランド部2と枠4とを接続したリード3’と、半導体ペレット1の電極にボンディングされるワイヤの他端がボンディングされる多数のリード3とを有する。」(2頁左上欄1〜6行)と記載され、第1図〜第3図では、多数のリード3がアイランド部を取り囲むように複数配置されていることが示されている。
(1e)「第2図は、本発明の第1の実施例のリードフレームを示す平面図である。このリードフレームは、半導体ペレット1’の一主面よりも小さい固着平面を持つY字型をしたアイランド部2’を有する。特にボンディングワイヤが配線される領域の下には、アイランド部2’の周縁が露出していないので、ボンディングワイヤーの短絡事故は起きない。」(2頁左上欄15行〜右上欄1行)
(1g)「以上のように、本発明によれば、あらゆる大きさの半導体ペレットに一形状のリードフレームを適用できるから、特に多種少量生産において形状の異なる多数のプレス金型(・・・)を用意する必要がなくなり、廉価に製造することができる。」(2頁右上欄11〜16行)
(1h)第2図には、半導体ペレットより小さいアイランド部2’と、該アイランド部と枠4とを接続するリードと、該アイランド部および該アイランド部と枠と接続するリードの一部とに搭載される波線で示される半導体ペレット1’と、該半導体ペレットを取り囲むように配置されたリード3とが設けられたリードフレームの平面図が示されている。

(2)刊行物2
(2a)「(1)リードフレームのダイパッド上に半導体素子が載置された状態で熱硬化性樹脂により樹脂封止された半導体装置において、ダイパッドが半導体素子の底面よりも小形に形成されていることを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲(1))
(2b)「一般に、樹脂封止型の半導体装置は、リードフレームのダイパツド上への半導体素子のダイボンド,ワイヤーボンド,樹脂封止,ダイバーカット,ピン曲げという一連の工程を経由して製造される。」(1頁1〜5行)
(2c)「すなわち、本発明者らは、上記フラットパッケージ,PLCC等の表面実装時におけるパッケージクラックの発生原因について一連の研究を重ねた。その結果、表面実装時における半田加熱により、封止樹脂とダイパッドとの界面に、樹脂中の水分の気化蒸気が集中し、ダイパッドから封止樹脂を底面側に押圧して全体が膨らんだような状態になり、それによってパッケージクラックが発生することを突き止めた。そこで、本発明者らは、このような現象の発生防止についてさらに研究を重ねた結果、ダイパッドの表面積をシリコンチップの底面積よりも小さくすると、上記封止樹脂中の水分の気化蒸気の集中現象が少なくなり、パッケージクラックの発生が防止されるようになることを見いだしこの発明に到達した。」(2頁右上欄9行〜左下欄3行)
(2d)「この発明の半導体装置は、以上のように、半導体素子を載置するダイパッドを、半導体素子の底面よりも小形に形成しているため、表面実装時における半田浸漬等の熱衝撃に対しても強い抵抗力を備えており、表面実装後に耐湿信頼性が低下するというようなことがない。」(4頁右上欄19行〜左下欄4行)
(2e)「これを第1図および第2図に示す。図において、1はパッケージ、2はツリピン、3はチップ、4はダイパッドである。」(4頁左下欄18〜20行)と記載され、第1図には、ダイパッドと、ダイパッドよりも大きいサイズのチップと、ダイパットを支持するツリピンと、封止樹脂がパッケージを構成していることが示されている。

(3)刊行物3
(3a)「半導体チップをマウントすべき金属性のベッド部と、先端をこのベッド部近傍に位置させて配設された金属製リードパターンと、該リードパターンの他端部に連結されてこれを支持する支持体と、該支持体に一端部が連結されると共に他端部が前記ベッド部に連結されてこれを支持するダイバーリード部と、前記ベッド部において半導体チップのマウント予定部周縁の内側近傍から外側近傍に亙る溝幅で形成された凹溝・・・を具備したことを特徴とする半導体装置用リードフレーム。」(特許請求の範囲)
(3b)「上記の実施例になるリードフレームではベッド部表面に形成された環状の凹溝11が半導体チップ7のマウント位置を明示することになる。従ってダイボンディングをマニュアル的に行なう場合に、チップのマウント位置の判明が容易になるという効果が得られる。」(3頁右上欄13〜19行)

(4)刊行物4
(4a)「半導体チップを装着するベッド面に、中心位置を表示する溝を設けたことを特徴とするリードフレーム。」(特許請求の範囲)
(4b)「本発明の実施例を第4図及び第5図により説明する。
第4図はベッド2の半導体集積回路チップ貼付面上に設けた細溝7のパターンの例のいくつかを示しており、第4図(a)のような十字状、第4図(b)のようなX字状、第4図(c)のような放射状、第4図(d)のような格子状等が表わされている。・・・第5図は本発明に係る溝を設けたベッド2の断面図であって、溝の断面形状の例のいくつかを示している。」(2頁右上欄11行〜左下欄2行)
(4c)「[発明の効果] 以上のように、ベッド部にその中心を明示する形状を有する溝を設けたリードフレームを使用すれば、集積回路チップをベッド部に貼り付ける際にベッド部の中央に位置決めすることが容易であるためワイヤの長さのばらつきが少くなり、ワイヤどうしあるいはワイヤとベッドとの間のショートの発生が減少するという効果がある。」(2頁左下欄12〜末行)

(5)刊行物5
(5a)「本発明は、半導体装置に関する。
本発明は、半導体素子固着部を支持するリード部・・・に凹状の溝を1個あるいは複数個設けた半導体用リードフレームである。」(1頁左下欄下から9〜5行)

3.当審の判断
刊行物1には、上記摘記事項(1a)には、半導体ペレットの一主面をリードのアイランド部の平面に固着してなる半導体装置において、前記アイランド部の平面は前記半導体ペレットの一主面に部分的に固着するように前記一主面よりも小なる面積を有する半導体装置が記載され、上記摘記事項(1d)には、半導体ペレットの一主面(裏面)を固着するためのアイランド部と、アイランド部と枠とを接続したリードと、半導体ペレットの電極にボンディングされるワイヤの他端がボンディングされる多数のリードとを有することが記載され、多数のリードがアイランド部を取り囲むように複数配置されていることが示され、上記摘記事項(1h)には、半導体ペレットより小さいアイランド部と、該アイランド部と枠とを接続するリードと、該アイランド部および該アイランド部と枠とを接続するリードの一部とに搭載される半導体ペレットと、該半導体ペレットを取り囲むように配置されたリードとが設けられることが示されているので、上記摘記事項(1a)〜(1h)を総合すると、「電極を有する半導体ペレットと、半導体ペレットの裏面に部分的に固着するように前記裏面よりも小なる面積を有するアイランド部と、アイランド部と枠とを接続したリードと、半導体ペレットを取り囲むように配置された複数のリードとからなり、前記電極と、前記リードは、ワイヤでボンディングされ、前記半導体ペレットは、該アイランド部および該アイランド部と枠とを接続するリードの一部とに搭載されている半導体装置」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

そこで、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、半導体ペレットの裏面がアイランド部に固着される場合、ワイヤボンディングされる電極は表面に設けられていること、リードのワイヤボンディングされる部分がインナーリード部であるのは、明らかであり、刊行物1発明の「電極」、「半導体ペレット」、「アイランド部」、「枠とアイランド部を接続するリード」、「半導体ペレットを取り囲むように配置された複数のリード」、「ワイヤ」、「半導体装置」は、それぞれ、本願発明の「ボンディングパッド」、「半導体チップ」、「チップ搭載部」、「吊りリード部」、「チップ搭載部の周囲を取り囲むように配置された・・・複数のリード」、「ボンディングワイヤ」、「半導体集積回路装置」に相当しているので、両者は、
「主面にボンディングパッドを有する半導体チップと、前記半導体チップが搭載され前記搭載される半導体チップの外形寸法よりも小さい外形寸法を有するチップ搭載部と、前記チップ搭載部に繋がる吊りリード部と、前記チップ搭載部の周囲を取り囲むように配置されたインナーリード部を有する複数のリードと、前記半導体チップのボンディングパッドと前記インナーリード部とを接続するボンディングワイヤとからなることを特徴とする半導体集積回路装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

イ.本願発明においては、半導体チップ搭載部の周囲を取り囲むように配置された複数のリードについて、インナーリード部および前記インナーリード部に接続されかつ前記インナーリード部から外方に向かって延在するアウターリード部からなるとされているが、刊行物1発明においては、そのような記載のない点。
ロ.本願発明においては、半導体集積回路が、前記インナーリード部および前記半導体チップを封止する樹脂封止部を有するとされているのに対して、刊行物1発明においては、そのような記載のない点。
ハ.本願発明においては、半導体集積回路が、吊りリード部に設けられた前記半導体チップの位置決めまたは外観検査のための複数の溝を有するとされているのに対して、刊行物1発明においては、そのような記載のない点。

そこで、上記相違点について検討する。

相違点イ、ロについて
リードが、半導体チップとワイヤボンディングされるインナーリード部と、インナーリード部に接続されかつ前記インナーリード部から外方に向かって延在するアウターリード部からなること、および、外部接続端子であるアウターリード部以外、つまり半導体チップ、インナーリード部を樹脂封止することは、半導体装置の技術分野において、いずれも周知慣用の技術的事項であるのだから(特開平3-232257号公報4頁左上欄13〜18行、上記摘記事項(2a)(2b)(2e)参照)、これらの事項を半導体集積回路装置に適用することは、当業者の設計上適宜にできることである。

相違点ハについて
刊行物3の上記摘記事項(3a)(3b)、刊行物4の上記摘記事項(4a)(4b)(4c)から明らかなように、半導体チップの位置決めを容易にするために、チップ搭載部の周縁に溝を設けることは、半導体集積回路装置の技術分野において、普通に行われており、複数の溝を設けることについても刊行物4の上記摘記事項(4b)に記載されるように、種々の態様が知られている。
また、刊行物1発明のように、アイランド部の面積が半導体チップの面積より小さい場合であっても、半導体チップの位置決めをしなければならないことは自明の課題である。そして、その場合のチップ搭載部の周縁とは、アイランド部に繋がる吊りリード部ということになり、刊行物5の上記摘記事項(5a)にみられるように、半導体素子固着部を支持するリード部に溝を複数設けることが従来から行なわれているから、刊行物1発明に上記刊行物3,4に記載されるチップ搭載部周縁に位置決め溝を形成する技術を適用し、吊りリード部に複数の位置決め溝を形成することは、当業者であれば格別の困難性はない。

そして、明細書【0011】〜【0014】,【0051】〜【0053】,【0068に記載される本願発明の効果も、刊行物1の上記摘記事項(1b)(1c)(1g)、刊行物2の上記摘記事項(2c)(2d)、刊行物3の上記摘記事項(3b)、刊行物4の上記摘記事項(4c)に記載されるように、前記刊行物の記載から予測しうる効果であり、当業者の予測を越える顕著なものとはいえない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1〜5に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-05 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-26 
出願番号 特願2002-128666(P2002-128666)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
瀬良 聡機
発明の名称 半導体集積回路装置およびその製造方法  
代理人 筒井 大和  

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