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| 審決分類 |
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:なし C22C |
|---|---|
| 管理番号 | 1122890 |
| 異議申立番号 | 異議2003-73251 |
| 総通号数 | 70 |
| 発行国 | 日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 | 特許決定公報 |
| 発行日 | 1998-03-03 |
| 種別 | 異議の決定 |
| 異議申立日 | 2003-12-18 |
| 確定日 | 2005-06-20 |
| 異議申立件数 | 1 |
| 訂正明細書 | 有 |
| 事件の表示 | 特許第3440710号「フィレット部靱性に優れたH形鋼およびその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
| 結論 | 訂正を認める。 特許第3440710号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
| 理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3440710号の請求項1乃至8に係る発明についての出願は、平成8年8月23日に特許出願され、平成15年6月20日にその特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、小矢崎 杏二より請求項1乃至4に係る発明に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成16年12月3日付けで特許異議意見書と訂正請求書が提出されたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 平成16年12月3日付け訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a乃至eのとおりに訂正するものである。 (1)訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1乃至4を削除し、訂正前の請求項5乃至8をそれぞれ訂正後の請求項1乃至4として、次のとおりに訂正する。 「【請求項1】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5 〜1.8 %、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、Al:0.005 〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%を含有し、かつV/Nが3.6 以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec )が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(2)式で定義されるAr3 点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3 -200 ℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ・・・・(1) Ar3 =910 -273 C+25Si-74Mn ・・・・(2) 【請求項2】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5 〜1.8 %、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、Al:0.005 〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%、およびCu:0.05〜0.5 %、Ni:0.05〜0.5 %、Cr:0.05〜0.5 %、Mo:0.01〜0.3 %のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、かつV/Nが3.6 以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec )が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(3)式で定義されるAr3 点(℃)で表される(Ar3 -50℃)〜(Ar3 -200 ℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ・・(1) Ar3 =910 -273 C+25Si-74Mn-56Ni-16Cr-9Mo -5Cu ・・(3) 【請求項3】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5 〜1.8 %、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、Al:0.005 〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%、およびREM :0.001 〜0.030 %あるいはさらにTi:0.001 〜0.030 %を含有し、かつV/Nが3.6 以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec )が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(2)式で定義されるAr3 点(℃)で表される(Ar3 -50℃)〜(Ar3 -200 ℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ・・・・(1) Ar3 =910 -273 C+25Si-74Mn ・・・・(2) 【請求項4】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5 〜1.8 %、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、Al:0.005 〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%を含み、Cu:0.05〜0.5 %、Ni:0.05〜0.5 %、Cr:0.05〜0.5 %、Mo:0.01〜0.3 %のうちから選ばれた1種または2種以上、およびREM :0.001 〜0.030 %あるいはさらにTi:0.001 〜0.030 %を含有し、かつV/Nが3.6 以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec )が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(3)式で定義されるAr3 点(℃)で表される(Ar3 -50℃)〜(Ar3 -200 ℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ・・(1) Ar3 =910 -273 C+25Si-74Mn-56Ni-16Cr-9Mo -5Cu ・・(3) 」 (2)訂正事項b:発明の名称を「フィレット部靱性に優れたH形鋼の製造方法」と訂正する。 (3)訂正事項c:特許明細書の段落【0008】の「H形鋼およびその製造方法」を「H形鋼の製造方法」と訂正する。 (4)訂正事項d:特許明細書の段落【0011】乃至【0014】の記載を削除する。 (5)訂正事項e:特許明細書の段落【0015】の「また、本発明は」を「すなわち、本発明は」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、特許異議申立ての対象である請求項1乃至4を削除し、請求項5乃至8の項番号をそれぞれ請求項1乃至4に繰り上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮と明りょうでない記載の釈明に該当する。 訂正事項b乃至eは、請求項1乃至4の削除に伴って発明の名称や特許明細書の記載をその特許請求の範囲の内容と整合させるために訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。 そして、上記訂正事項a乃至eは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、いずれも新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2-3.まとめ したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについて 特許異議申立ての対象とされた請求項1乃至4は、上記訂正によってすべて削除されたから、本件特許異議申立ての理由は、解消された。 よって、上記のとおり決定する。 |
| 発明の名称 |
(54)【発明の名称】 フィレット部靱性に優れたH形鋼の製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(2)式で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ……………(1) Ar3=910-273C+25Si-74Mn ……………(2) 【請求項2】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%、およびCu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(3)式で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ……(1) Ar3=910-273C+25Si-74Mn-56Ni-16Cr-9Mo-5Cu ……(3) 【請求項3】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%、およびREM:0.001〜0.030%あるいはさらにTi:0.001〜0.030%を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(2)式で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ……………(1) Ar3=910-273C+25Si-74Mn ……………(2) 【請求項4】重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%を含み、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上、およびREM:0.001〜0.030%あるいはさらにTi:0.001〜0.030%を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が下記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が下記(3)式で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法。 記 α≦V/N×3.5 ……(1) Ar3=910-273C+25Si-74Mn-56Ni-16Cr-9Mo-5Cu ……(3) 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、土木構造物あるいは建築物に広く適用されるH形鋼に関し、とくにH形鋼のフィレット部の靱性の向上に関する。 【0002】 【従来の技術】 建築物の柱材、梁材には熱間圧延したH形鋼が広く利用されている。このH形鋼には、JIS G 3106で規定される溶接構造用圧延鋼材が多く用いられている。最近、耐震性などの点から建築構造物の安全性の向上が要求され、さらに、脆性破壊抑制の観点から、H形鋼にも靱性向上が強く要求されている。 【0003】 熱間圧延により製造されるH形鋼では、従来から、ウェブとフランジが交叉する部分、一般にフィレット部と呼ばれる部分の靱性が、ウェブ部やフランジ部の靱性と比較して低く問題となっていた。 このフィレット部の低靱性については、従来から、フィレット部は、フランジやウェブに比較して、熱間圧延時の加工量が不十分で、再結晶による細粒化が進まず、オーステナイト粒が粗大のままであり、さらに圧延後の冷却速度が、フランジやウェブに比較して遅く、したがって生成されるミクロ組織も他の部位にくらべ粗大化しているためであると言われてきた。 【0004】 最近では、ウェブを薄肉化する傾向であり、このような薄肉ウェブのH形鋼では、圧延時にウェブとフランジの温度差が大きくなり、冷却時にウェブ波が発生するのを防止するため、フランジ外面から強制冷却を施している。 このため、薄肉ウェブH形鋼のフィレット部は、粗大ベイナイトを主体とする組織となっている。 【0005】 また、最近では、H形鋼の寸法精度の要求が厳しくなり、要求される寸法精度内に製品を仕上げるため、冷間矯正が大きくなる傾向にある。この冷間矯正により、H形鋼のフィレット部に導入される歪が増加し、歪時効が生じている。これらが、複合されて、H形鋼フィレット部の靱性が劣化しているものと考えられている。 【0006】 このようなフィレット部の低靱性を改善すべく、多数の提案がなされている。 例えば、特開平4-131356号公報には、Al:0.005%以下、V:0.05〜0.20%、N:0.006〜0.015%および溶存酸素濃度を0.003〜0.015%とした靱性に優れた圧延中形鋼およびその製造方法が提案されている。 また、特開平4-279248号公報には、真空脱ガス処理あるいは予備脱酸処理により酸素濃度を0.003〜0.015%に調整したのち、合金添加、さらに連続鋳造時にTi-Cu、Ti-Ni、Ti-Fe合金等を添加して最終脱酸し、Tiを含む酸化物、Tiを含む酸化物とTiN、MnSの複合粒子の大きさ、分散量を規制した靱性に優れた圧延形鋼の製造方法が提案されている。 【0007】 しかしながら、これらの方法によってもなお、フィレット部は、フランジ部やウェブ部に比較して、なお十分な靱性を有しているとは言えないという問題を残しており、フィレット部についてさらなる靱性の改善が要求されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記した問題を有利に解決し、フィレット部の靱性が優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、フィレット部の靱性を向上するために、まず、フィレット部組織の微細化を検討した。その結果、VとNを複合添加し、圧延後の冷却速度を調整することにより、フィレット部のような圧延加工量の少ない部位でも、JIS G 0552で判定される結晶粒度で5番以上の微細粒を有する組織とすることができることを見いだした。VNは、粗大なオーステナイト粒内に析出し、これらVNを核としてフェライトがオーステナイト粒内に形成されるため、組織が微細なフェライト+パーライトあるいは微細なフェライト+ベーナイトなるのである。これにより、フィレット部の靱性は著しく向上する。 【0010】 また、さらに、本発明者らは、フィレット部に発生する冷間矯正による歪時効の抑制方法を検討し、C量の低減、V含有量とN含有量の比、V/Nの制御および冷却停止温度の制御により、冷間矯正によるフィレット部の歪時効を抑制できることを知見した。 本発明は、上記した知見をもとに構成されたものである。 【0011】 【0012】 【0013】 【0014】 【0015】 すなわち、本発明は、重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が次(1)式 α≦V/N×3.5 ……………(1) を満足し、かつ冷却停止温度が次(2)式 Ar3=910-273C+25Si-74Mn ……………(2) で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法である。 【0016】 また、本発明は、重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%、およびCu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が前記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が次(3)式 Ar3=910-273C+25Si-74Mn-56Ni-16Cr-9Mo-5Cu ……(3) で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法である。 【0017】 また、本発明は、重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%、およびREM:0.001〜0.030%あるいはさらにTi:0.001〜0.030%を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が前記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が前記(2)式で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法である。 【0018】 また、本発明は、重量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.60%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、N:0.0040〜0.0120%を含み、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上、およびREM:0.001〜0.030%あるいはさらにTi:0.001〜0.030%を含有し、かつV/Nが3.6以上で、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により、H形鋼としたのち、H形鋼のフランジB/2部の冷却速度α(℃/sec)が前記(1)式を満足し、かつ冷却停止温度が前記(3)式で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷することを特徴とするフィレット部の結晶粒度がJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上を有し、フィレット部靱性に優れたフランジ厚40mm未満のH形鋼の製造方法である。 【0019】 【発明の実施の形態】 本発明要件の限定理由を、まず素材の化学組成について説明する。 C:0.01〜0.15% Cは強度を確保するために0.01%以上の含有を必要とするが、0.15%を超えると、母材靱性、溶接性および耐歪時効性が低下するので、Cは0.01〜0.15%の範囲とした。なお、好ましい範囲は0.05〜0.12%である。 【0020】 Si:0.60%以下 Siは強度上昇に有効な元素であるが、0.60%を超えると溶接熱影響部(HAZ)靱性を著しく劣化させるので、0.60%以下に限定した。なお、好ましくは、赤スケール抑制の観点から0.01〜0.40%である。 Mn:0.5〜1.8% MnはSiと同様強度上昇に有効な元素であるが、0.5%未満ではその効果が少なく、1.8%を超えると、粒内フェライトの生成を阻害し、組織を粗大化させるため、靱性を大きく低下させる。このため、Mnは0.5〜1.8%の範囲に限定した。 【0021】 P:0.030%以下 Pは母材、溶接熱影響部の靱性、耐溶接割れ感受性を劣化させるので、極力低減すべき元素であり、上限を0.030%とした。 S:0.030%以下 Sは靱性、延性の圧延異方性を高めるので、極力低減すべき元素であり、上限を0.030%とした。 【0022】 Al:0.005〜0.05% Alは脱酸のために0.005%以上必要であるが、0.05%を超えて添加しても脱酸効果は飽和するので、Alは0.005〜0.05%の範囲とした。 V:0.01〜0.10% Vは圧延冷却中にVNとしてオーステナイト中に析出してフェライト変態核となり、結晶粒を微細化して靱性を向上させる。オーステナイト粒が粗大でも組織を微細化することができるため、粗大オーステナイト粒となるフィレット部でも組織の微細化が可能となり、靱性の向上が期待できる。また、Vは母材強度を高める重要な役割をもち、母材の強度・靱性バランスを確保するために不可欠の元素である。これらの効果を発揮させるためには、0.01%以上の添加が必要であるが、0.10%を超えると、母材の靱性が劣化し強度・靱性バランスがくずれるため、Vは0.01〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましい範囲は0.03〜0.08%である。 【0023】 N:0.0040〜0.0120% NはVと結合してVNを形成し、組織の微細化によりフィレット部の靱性向上および母材の強度向上に寄与する重要な元素である。これらの効果を発揮させるためには、0.0040%以上の含有が必要であるが、0.0120%を超えると、溶接HAZ部の靱性を著しく劣化させるため、Nは0.0040〜0.0120%の範囲とした。なお、好ましい範囲は0.0050〜0.0100%である。 【0024】 V/N:3.6以上 前記したようにVとNは、フィレット部の靱性向上に大きく寄与する重要な元素であるが、VとNの含有量の比、V/Nが不適切な場合には、フリーNを増加させ冷間矯正による歪時効性を高めるため、フィレット部の靱性を低下させる。このため、V/Nを3.6以上に限定した。なお、好ましくは、5.0以上である。 【0025】 Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上 Cu、Ni、Cr、Moは、いずれも熱間圧延後の冷却変態開始温度(Ar3点)を低下させ、オーステナイト粒界からのフェライト変態を抑制し、間接的に粒内フェライト形成を促進し、組織の微細化によるフィレット部の靱性向上に寄与する効果を有している。また、Cu、Ni、Cr、Moは、フェライト以外の第2相組織をベイナイト化し、さらに、第2相組織の割合を増加させる作用を有している。これにより、母材の強度が上昇する。 【0026】 フィレット部の圧延加工が期待できない場合や、十分な冷却速度が得にくい場合や、あるいは高強度を必要とする場合には、これら元素のうちから1種または2種以上を添加できる。 上記した効果を得るためには、Cu、Ni、Cr、Moはそれぞれ0.05%以上、0.05%以上、0.05%以上、0.01%以上の添加が必要となる。Cuは熱間加工性を劣化させるため、多量添加の場合にはNiを同時に添加する必要がある。Cu、Niの0.5%を超える添加は、経済的に高価となるため、Cu、Niの添加は0.5%を上限とした。Cr、Moはそれぞれ0.50%、0.30%を超えて添加すると、溶接性、溶接部靱性を損なうので、Cr、Moはそれぞれ0.50%、0.30%を上限とした。 【0027】 REM:0.001〜0.030%あるいはさらにTi:0.001〜0.030% REMは溶接熱影響部の靱性向上に有効な元素であり、高い溶接部靱性が要求される場合に添加する。溶接熱影響部の靱性向上のためには0.001%以上の添加が必要であるが、0.030%を超えて添加すると母材靱性を低下させるため、REMは0.001〜0.030%の範囲とした。また、TiはREMと複合添加されて溶接熱影響部の靱性向上に有効であり、そのためには0.001%以上の添加が好適であるが、0.030%を超えて添加すると母材靱性を低下させるため、0.001〜0.030%の範囲とした。 【0028】 その他、残部はFeおよび不可避的不純物である。 なお、Nbはオーステナイトの再結晶を抑制するため、とくにH形鋼のフィレット部ミクロ組織の微細化を阻害し、粗大組織のままとする弊害があるため、実質的には添加しない。 つぎに、フィレット部の結晶粒度をJIS G0552で判定される結晶粒度で5番以上とする。 【0029】 フィレット部の結晶粒度が、JIS G0552で判定される結晶粒度で5番未満では、靱性が低下するため、フィレット部の結晶粒度は5番以上の細粒とする。なお、好ましくは6〜9番である。 つぎに、H形鋼の製造条件について説明する。 上記した化学組成の鋼は転炉、電気炉あるいはその他の溶解炉で溶製し、造塊-分塊法あるいは連続鋳造法でH形鋼の鋼素材とするのが好ましい。 【0030】 鋼素材を熱間圧延により、H形鋼に圧延する。 圧延後、フランジB/2部の平均冷却速度α(℃/sec)が、次(1)式 α≦V/N×3.5 ……………(1) を満足し、かつ冷却停止温度が次(2)、(3)式 Ar3=910-273C+25Si-74Mn ……………(2) Ar3=910-273C+25Si-74Mn-56Ni-16Cr-9Mo-5Cu ……(3) で定義されるAr3点(℃)で表される(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲となる強制冷却を施し、その後空冷する。 【0031】 フランジB/2部の平均冷却速度αが、(1)式を満足しない場合には、オーステナイト域におけるVNの析出が抑制され、フィレット部の靱性が劣化する。 冷却停止温度が(Ar3-50℃)を超えると、フェライトの成長が促進され、フィレット部の組織が粗大化する。また、冷却停止温度が(Ar3-200℃)未満では、残留応力の増加による寸法精度の低下を招くとともに、冷間矯正量の増大により歪時効性が高くなる。このため、冷却停止温度は、(Ar3-50℃)〜(Ar3-200℃)の温度範囲とした。なお、Ar3点の計算は、Ni、Cr、Mo、Cuが添加される場合は、(3)式を用いて行う。 【0032】 強制冷却における冷却方法は、フランジB/2部を中心とした強制空冷、あるいはノズルを利用した水冷が好適である。さらに、上記冷却方法に加えて、フランジ内面からR部を中心に強制空冷あるいはノズル水冷を併用してもよい。 H形鋼の熱間圧延方法は、通常公知の方法が適用でき、本発明では、とくに規定しないが、加熱温度は1100〜1350℃の範囲がより好ましく、圧延終了温度はAr3点よりも高いことが望ましい。なお、圧延途中でフランジを強制空冷あるいは水冷を行ってもよい。 【0033】 【実施例】 転炉で溶製した表1に示す化学組成の鋼を、連続鋳造により鋳片としたのち、熱間圧延により、表2に示すサイズのH形鋼に圧延した。圧延後、表2に示す、冷却速度・冷却停止温度の冷却条件で、冷却したのち、コールドレベラーによる冷間矯正を施し、製品とした。なお、冷却速度および冷却停止温度はフランジB/2部外面のデータである。 【0034】 製造したH形鋼について、図1に示す位置、フランジB/4部およびフィレット部から引張試験片およびシャルピー衝撃試験片を採取し、引張および衝撃特性について調査した。また、フィレット部の結晶粒度をJIS G 0552の規定に従い測定した。それらの結果を表2に示す。 【0035】 【表1】 ![]() 【0036】 【表2】 【表2-1】 ![]() 【0037】 【表3】 【表2-2】 ![]() 【0038】 化学組成およびフィレット部の結晶粒度が本発明の範囲の本発明例No.1、No.2、No.6、No.8、No.9、No.13、No.14では、フィレット部の強度・靱性がフランジ部の強度・靱性とぼぼ同等であった。これに対し、圧延後の冷却条件が本発明の範囲を外れる比較例No.3〜No.5、No.10は、フィレット部の組織が粗大化し、ベイナイト主体の組織となっており、さらに冷間矯正による歪時効により、良好な靱性が得られなかった。また、化学組成、とくにV、NあるいはV/Nが本発明の範囲を外れる比較例No.15〜No.18は、フィレット部の組織が粗大化し、ベイナイト主体の組織となっており、良好な靱性が得られなかった。Nが本発明の範囲より高い比較例No.19は、フィレット部の靱性は良好であったが、入熱10kJ/cmの溶接を想定した再現HAZ部の靱性(vE0)が20Jと低く、溶接構造物用鋼材への適用は困難である。本発明例についても、入熱10kJ/cmの溶接HAZ部の靱性を調査したが、いずれも、vE0が70J以上と、靱性は良好で溶接構造物として適用できる鋼材であることがわかった。 【0039】 また、化学組成、とくにNbが本発明の範囲を外れる比較例No.21、No.22は、フィレット部のフェライト粒が粗大しているため、良好な靱性が得られなかった。 【0040】 【発明の効果】 本発明によれば、圧延H形鋼で長く懸案であったフィレット部の低靱性を改善し、フィレット部の靱性が優れたH形鋼を工業的に容易に製造できるという、産業上極めて有益な効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 圧延H形鋼の形状と実施例における試験片採取位置および測温位置を示す説明図である。 |
| 訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
| 異議決定日 | 2005-06-02 |
| 出願番号 | 特願平8-222805 |
| 審決分類 |
P
1
652・
-
YA
(C22C)
|
| 最終処分 | 維持 |
| 前審関与審査官 | 中村 朝幸 |
| 特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
| 特許庁審判官 |
原 賢一 平塚 義三 |
| 登録日 | 2003-06-20 |
| 登録番号 | 特許第3440710号(P3440710) |
| 権利者 | JFEスチール株式会社 |
| 発明の名称 | フィレット部靱性に優れたH形鋼の製造方法 |
| 代理人 | 小林 英一 |
| 代理人 | 小林 英一 |