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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
管理番号 1122937
異議申立番号 異議2003-70038  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-05-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-08 
確定日 2005-08-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3300372号「吸収陰唇間装置を使用した女性用衛生システム及びキット」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3300372号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3300372号の請求項1〜7に係る発明についての出願は、平成10年6月15日(優先権主張 1997年6月16日 米国、1998年5月1日 米国)に国際出願され、平成14年4月19日にその特許権の設定登録がされた。その後、藤江佳子により特許異議の申立てがされ、取消しの理由の通知がされたものである。

1.本件特許発明

(請求項1)
女性の着用者の陰唇間空間中に着用されるよう適用され、少なくとも半分が使用中に陰唇間空間中に置かれる吸収陰唇間装置と;そして、
液体透過性トップシート,前記液体とトップシートに接合されているとともに衣服対面表面を有している液体不透過性バックシート,前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核,そして、前記液体不透過性バックシートの前記衣服対面表面上に配置され着用者の下着の股部に付着する為の感圧接着剤を備えている生理用ナプキンと;を備えており、ここにおいては.前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンとが共通の梱包中に包装されていて、前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンの夫々は、前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンとが着用者により同時に着用可能であるように形作られている、ことを特徴とする、女性の着用者により使用される女性用衛生キット。
(請求項2)
前記吸収陰唇間装置が、液体透過性トップシート,前記液体透過性トップシートに接合されている液体不透過性バックシート,そして前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の女性の着用者により使用される女性用衛生キット。
(請求項3)
前記吸収陰唇間装置が、60mmよりも長く、そして130mmよりも短い長さを有しており;前記吸収陰唇間装置が、25mmと50mmとの間の幅を有しており;前記吸収陰唇間装置が厚さを有していて、前記長さと前記幅とが前記吸収陰唇間装置の前記厚さ以上であり;そして、前記吸収陰唇間装置が、長手方向中心線と好ましい曲げの軸とを有していて、前記好ましい曲げの軸が前記長手方向中心線に沿い配置されており、前記吸収陰唇間装置が前記好ましい曲げの軸に沿い折り曲げられ着用者の陰唇間中に挿入された時には前記吸収陰唇間装置の液体透過性トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する、ことを特徴とする請求項2に記載の女性の着用者により使用される女性用衛生キット。
(請求項4)
前記吸収陰唇間装置の液体透過性トップシートがレーヨンを備えている、ことを特徴とする請求項2に記載の女性の着用者により使用される女性用衛生キット。
(請求項5)
水分散試験により測定された特に前記吸収陰唇間装置が少なくとも2つの片へと分散するのに要する時間が2時間以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の女性の着用者により使用される女性用衛生キット。
(請求項6)
前記吸収陰唇間装置は少なくとも70%が生分解性である、ことを特徴とする請求項2に記載の女性の着用者により使用される女性用衛生キット。
(請求項7)
液体透過性トップシート,前記液体透過性トップシートに接合されている液体不透過性バックシート,そして前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核を備えており、女性の着用者の陰唇間空間中に着用されるよう適用され、少なくとも半分が使用中に陰唇間空間中に置かれる吸収陰唇間装置と,そして、着用者の膣口中に挿入されるよう適用される吸収膣用タンポンと,を備えており、ここにおいては、前記吸収陰唇間装置と前記吸収膣用タンポンとが共通の梱包中に包装されていて、前記吸収陰唇間装置と前記吸収膣用タンポンの夫々は、前記吸収陰唇間装置と前記吸収睦用タンポンとが着用者により同時に着用可能であるように形作られている、ことを特徴とする、女性の着用者により使用される女性用衛生キット。

3.異議申立人の主張の概要

ア.本件請求項1〜7に係る各特許発明は、甲第1〜12号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ.本件明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件請求項1〜7に係る特許は、特許法36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたことから、本件請求項1〜7に係る特許はいずれも同法113条第4号により取り消されるべきものである。


4.各証拠の記載の概要

甲第1号証 (実開昭58-43430号公報)
陰裂の長さに対応する吸収部材を外被シートで被覆したものを接着テープ等を介して一体的に附着して隆条堤を形成した生理用パッドが図示され、この隆条堤部分は陰唇間の空間に置かれることが記載されている。
甲第2号証(特開昭64-70051号公報)
不透過性外側カバーと液体透過性身体側ウエブと、これらの間に設けられた吸収剤とを含み、クリトリスおよび恥丘の外部の位置調整用扁平フロント部および会陰、臀部及び外陰部陥凹部の後方部分と一直線上に位置決めするための隆起したピークを有する後方部分を含むヒトの滲出物の吸収用パッドが記載され、さらに係るパッドの長さは約7〜約12インチ、幅が約2〜約4インチであること、吸収剤はレーヨン繊維を含むことの記載がある。図13には裏面に感圧衣類付着用接着剤を備えたパッドが記載されている

甲第3号証 (実願昭62-83851号〈実開昭63-189222号〉のマイクロフィルム)
生理用ショーツ、生理用ナプキン、生理用タンポン等の生理用品を組合わせて1つの包装袋に収納した生理用品セットが記載されている。

甲第4号証 (実願昭62-47468号〈実開昭63-154023号〉のマイクロフィルム)
使い捨てショーツと生理ナプキン又はタンポンをセットして不透明な袋体乃至箱体に梱包した携帯用の生理用品が記載されている。

甲第5号証 (実願昭50-18481号〈実開昭51-99997号〉のマイクロフィルム)
チリ紙3枚を1組とし、その組合せたもの2個と生理用ナプキン(従来の生理用ナプキン)1個をセットにして1包にしたものが記載されている。

甲第6号証 (特開平7-323045号公報)
吸水性の生理用具(例、ナプキン、タンポン)と、拭取具とが一つの袋に収納された生理用衛生具が記載されている。

甲第7号証 (実願昭47-139166号〈実開昭49-93796号〉のマイクロフィルム)
薄膜外被物aの一方の収納部1内に生理用ナプキン3を具え、他方の収納部2内には清浄綿4を具えた、清浄綿付き生理用ナプキンが記載されている。

甲第9号証 (国際公開第96/07379号パンフレット)
膣前庭に適切に維持され大陰唇と小陰唇によって固定されるパッドが記載され、図12には該パッドが通常のナプキンと共に適合された時の断面図が示されている。

甲第10号証 (「日本女性の外性器」笠井寛司者、フリープレスサービス1995年9月1日)
陰唇の大きさについて記載されている。

甲第11号証 (特開平9-99009号公報)
水崩壊性及び吸水性を有する材質からなる棒状吸収体を体液浸透性及び水崩壊性を有する表面材で包み込むとともに、該表面材の両端余長部分をつまみ片として残してその基部を止着してなる女性用衛生具に関し、これは単独でもナプキンとの併用にも適していると記載されている。

甲第12号証 (特開平8-246320号公報)
生理用ナプキンのような使い捨ての衛生製品の表面ウエブとして生分解性で堆肥化でき、環境によって消化される特定のフィラメントからなる不織布を使用することが記載されている。

なお、甲第8号証は、フレッシュイン・フィット・デパットの使用説明書であるが、頒布日が不明であり、本出願の優先日前に頒布された文書であると認めることはできないから本件異議の証拠として採用しない。

5.判断

イ.記載不備について

ア.の進歩性の判断に先立ち、まず記載不備の点に付き検討する。
記載の不備に関する異議申立人の具体的な理由は、請求項1乃至請求項7に係る発明に関して、請求項1における「前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンの夫々は、前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンとが着用者により同時に着用可能であるように形作られている」、請求項7の「…前記吸収陰唇間装置と前記吸収膣用タンポンの夫々は、前記吸収陰唇間装置と前記吸収膣用タンポンとか着用により同時に着用可能であるように形作られている」の各特定事項が、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、いかなる技術構成により「同時に着用可能であるように形作られている」のか記載されていないというものである。

しかしながら本件特許明細書(特許第3300372号公報)の第3〜5欄の「発明の背景」の記載によれば、生理用ナプキン、タンポン、吸収陰唇間装置は、それぞれ女性の体に対して適用される場所が異なっており、吸収陰唇間装置は、女性の着用者の陰唇間空間中に着用され、生理用ナプキンは、着用者の下着の股部におかれて、下着を通常の着用位置に着用した時に生理用ナプキンは着用者の体の外陰部に隣接して用いられ、吸収膣用タンポンは、着用者の膣口中に挿入されるよう適用されるものである。そして、20欄23〜36行にはこれらを同時着用する使用態様の説明もされている。
上記説明からすれば、吸収陰唇間装置とナプキン、又は吸収陰唇間装置と吸収膣用タンポンの夫々が「着用者により同時に着用可能であるように形作られている」とは、夫々のものが本来の適用空間に着用されるよう形作られている、あるいは本来の使用空間を超え他の装置の着用空間をなくすような形のものではない程度の意味であると解され、同時着用のための格別特殊な形状をとるものではないことは明らかであるし、本件明細書の用語「吸収陰唇間装置」の説明(8欄22〜44行)「本発明の生理用ナプキン70はどのような適切な従来の生理用ナプキンであってもよい。」(19欄45行目〜47行目)「・・どのような適切な従来の月経用タンポンであってよい。」(21欄5〜13行の記載からも、従来の通常の生理用ナプキンやタンポンが「着用者により同時に着用可能であるように形作られている」ものであることが理解できる。
したがって、異議申立人が指摘する上記特定事項についての発明の詳細な説明の記載に不備はなく、特許法第36条第4項の規定を満たさないということはできない。

ア.進歩性について

(本件請求項1に係る発明について)

甲第3号証には、生理用ショーツ、生理用ナプキン、生理用タンポン等の生理用品を組合わせて1つの包装袋に収納した生理用品セットが記載されている。かかる衛生用品セットと本件請求項1に係る発明とを対比すると、両者は女性の着用者により使用される女性用衛生キットである点で一致するものの、後者では、生理用ナプキンの構造が、液体透過性トップシート,前記液体とトップシートに接合されているとともに衣服対面表面を有している液体不透過性バックシート,前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核,そして、前記液体不透過性バックシートの前記衣服対面表面上に配置され着用者の下着の股部に付着する為の感圧接着剤を備えているものである点が特定され(相違点1)、さらに、吸収陰唇間装置と生理用ナプキンとが共通の梱包中に包装されていて、前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンの夫々は、前記吸収陰唇間装置と前記生理用ナプキンとが着用者により同時に着用可能であるように形作られている(相違点2)点で相違する。
しかしながら、液体透過性トップシート,液体不透過性バックシート,これらのシート間に配置された吸収核,そして、液体不透過性バックシートに着用者の下着の股部に付着する為の感圧接着剤を備えた生理用ナプキンは甲第2号証のナプキンを参照するまでもなく周知であるから、相違点1に格別な技術的特徴は存しない。
また、上記イ.で述べたとおり請求項1における「着用者により同時に着用可能であるように形作られている」とは、それぞれが本来の適用空間に着用されるよう形作られている従来の通常の形態と解されるところ、従来のナプキンを同時に着用して使用することの可能な吸収陰唇間装置も甲第9、11号証に記載されている。
そうすると、甲第3号証の生理用タンポンに代えて甲第9、11号証記載の吸収陰唇間装置を従来の形状や構造を有するナプキンと組み合わせ共通の梱包中に包装することは当業者が容易に想到しうる範囲のことである。

また、上記結論は以下の理由によっても導くことができる。
すなわち、甲第9号証には吸収陰唇間装置が生理用ナプキンと同時に使用されることが図示(図12)されている。この図にはナプキンの構造は示されていないが、甲第1、2号証を見るまでもなく液体透過性トップシート、前記液体透過性トップシートに接合されている液体不透過性バックシート,そして前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核を備え下着股部に付着するための感圧接着剤を有するナプキンは周知であり、また、ナプキンとタンポン、ナプキンとショーツ、ナプキンと清浄綿のように同時に使用する衛生用品を共通の梱包中に包装することも広く行われている(甲第3,4,5、6、7号証)。
そうすると、吸収陰唇間装置と通常の構造の生理用ナプキン(通常の表面が平らな形態のナプキンであれば吸収陰唇間装置と同時着用は可能である)を共通の梱包中に包装し女性用衛生キットの形態とすることは当業者が容易に想到し得ることといわざるを得ない。

(本件請求項2に係る発明について)
本件請求項2に係る発明は請求項1に係る発明における吸収陰唇間装置が、液体透過性トップシート,前記液体透過性トップシートに接合されている液体不透過性バックシート,そして前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核を備えていることを特定したものであるが、甲第9号証及び甲第11号証の吸収陰唇間装置はいずれもかかる層構造を有するものではない。
甲第1号証の第2図には陰裂の長さに対応する吸収部材を外被シートで被覆したものを接着テープ等を介して一体的に附着して隆条堤を形成した生理用パッドが記載され、この隆条堤部分は陰唇間の空間に置かれるが、あくまで生理用パッドの一部として使用されるものであって、独立した吸収陰唇間装置ではない。そして、この隆条堤部分を独立させ、液体透過性トップシート、前記液体透過性トップシートに接合されている液体不透過性バックシート、そして前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核を備えている吸収陰唇間装置とすることについての記載や示唆はない。
さらに甲2〜7、10、12のいずれにも吸収陰唇間装置を上記の層構造とする点の記載はみあたらず、甲第1〜7,9〜12号証を総合勘案してみても吸収陰唇間装置に上記構造を採用する技術的契機は見いだせない。
したがって、甲第1〜7、9〜12号証に記載された発明に基づいて当業者が本件請求項2〜6に係る発明を発明することが容易であったとすることはできない。

(本件請求項3〜7に係る発明について)
上記の通り、本件請求項3〜6に係る発明は、本件請求項2を引用し、さらに特定事項を付加したものであり、また、本件請求項7も、「液体透過性トップシート,前記液体透過性トップシートに接合されている液体不透過性バックシート,そして前記液体透過性トップシートと前記液体不透過性バックシートとの間に配置された吸収核を備えており、女性の着用者の陰唇間空間中に着用されるよう適用され、少なくとも半分が使用中に陰唇間空間中に置かれる吸収陰唇間装置」を備えることが特定されているのであるから、請求項2に係る発明について述べたと同様の理由により当業者が容易に発明できたとすることはできない。

6.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は甲第3〜7、9,11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は特許法第29条第2項に違反してされたものであって、同法113条第2項の規定により取り消されるべきである。
また、本件請求項2〜7に係る発明について、本件明細書の記載に不備はなく、甲第1〜7,9〜12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認めることはできないから、異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、これらの発明の特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項2〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-03-29 
出願番号 特願平11-504748
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (A61F)
P 1 651・ 536- ZC (A61F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 横尾 俊一
深津 弘
登録日 2002-04-19 
登録番号 特許第3300372号(P3300372)
権利者 ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー
発明の名称 吸収陰唇間装置を使用した女性用衛生システム及びキット  
代理人 橋本 良郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 風間 鉄也  
代理人 村松 貞男  

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