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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) G01N
審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) G01N
管理番号 1123363
審判番号 無効2001-35463  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-22 
確定日 2005-08-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2733138号発明「抗HCV抗体の免疫アッセイに使用するC型肝炎ウイルス(HCV)抗原の組合せ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2733138号の請求項1ないし12に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2733138号の特許請求の範囲請求項1ないし12に係る発明の出願は、平成3年3月29日(パリ条約に基づく優先権主張、1990年4月4日、米国)に国際出願され、平成9年12月26日に設定登録がなされた。
その後、請求人により平成13年10月22日に本件無効審判が請求され、被請求人は平成14年5月21日に答弁書及び訂正請求書を提出して訂正を求め、請求人は平成14年7月30日に弁ぱく書を提出しているものである。

II.訂正の可否
平成14年5月21日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という)の可否について以下検討する。
1.本件訂正の内容
<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1中のただし書き「該組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100の組合せではない」を、「該組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100との組合せを含まない」に訂正する。
<訂正事項2>
特許請求の範囲の請求項11中のただし書き「(a)および(b)の組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100の組合せではない」を、「(a)および(b)の組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100との組合せを含まない」に訂正する。

2.訂正の可否についての判断
上記訂正事項1および2は、それに先行して記載された第1HCV抗原(a)と別のHCV抗原(第2HCV抗原)(b)との組合せから、先願の当初明細書(甲第1号証参照)に記載された組合せと重複する組合せを除くためのただし書きの記載を、「○と×、△と×、□と×の組合せではない」と、「〜と〜、」という記載が連続し相互関係が完全に明りょうであるとはいえない記載を、各「〜と〜、」という記載が「〜と〜との組合せ」であることを明りょうにし、かつ、3種類の特定組合せを含まないことを明りょうにしている訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的として特許請求の範囲の記載を訂正するものと認められる。
そして、これらの訂正事項は、新規事項には該当しないし、これらの訂正によって、特許請求の範囲が実質上拡張し、又は変更するものでもない。
なお、訂正事項1および2は、上記2つの特定ペプチド同士の3種類の組合せ以外の、それらに他のペプチドを組み合わせた組合せを含む「ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100とを含む組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100とを含む組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100とを含む組合せ」を「含まない」として、さらに第1HCV抗原(a)と別のHCV抗原(第2HCV抗原)との該組合せから除外している記載とは認められないので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには当たらない。

3.まとめ
したがって、本件訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書及び特許法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の同法126条第2項の規定に適合しているので、当該訂正を認める。

III.請求人の主張の要点及び証拠方法
請求人は、概略、次のような無効理由を主張し、証拠方法として甲第1〜11号証を提出している。
(無効理由その1)
本件特許請求の範囲に記載された発明は、完成された発明とは言えず、いわゆる未完成発明であって、特許法第29条第1項柱書きに規定された「産業上利用することができる発明」に該当せず、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
(無効理由その2)
仮に、本件特許請求の範囲に記載された発明が、未完成発明ではないという意味において産業上利用可能な発明であるとしても、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に発明の実施をすることができる程度に、当該発明の構成及び効果が記載されておらず、また、各請求項の記載は意味不明であって、各請求項には発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されておらず、本件特許は、旧特許法(平成2年6月13日法律第30号による改正特許法)第36条第4項及び第5項に規定された要件を具備しない特許出願に対して付与されたものであり、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきものである。
(無効理由その3)
仮に、本件請求項1〜12に係る各発明が、未完成発明ではないという意味において産業上利用可能な発明であり、しかも、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件請求項1〜12に係る各発明の実施をすることができる程度に、当該各発明の構成及び効果が記載されていたとしても、本件請求項1〜12に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に該当し、本件請求項1〜12に係る各発明に付与された各特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証 特開平4-253998号公報(平成4年9月9日公開)
甲第2号証 大阪地裁平成13年(ワ)第2087号において被請求人が提出した平成13年5月31日付け原告第1準備書面
甲第3号証 産業別審査基準「組成物」(特許庁編)
甲第4号証 カタログ「Anti-HCV Seroconversion Panel(PHV903)」(平成6年12月、ボストンバイオメディカ社発行)
甲第5号証 カタログ「オーソHCV Ab ELISA テストIr」
甲第6号証 刊行物「臨床病理 第45巻 第12号」中の論文「C型肝炎患者におけるHCV領域別抗体価の特徴」第1156〜1162頁(平成9年12月、臨床病理刊行会発行)
甲第7号証 カタログ「オーソHCV Ab ELISA テストIII」
甲第8号証 「新明解 国語辞典」第659頁
甲第9号証 本件特許に関し、審査段階で提出された平成9年8月22日付けの意見書
甲第10号証 刊行物「C型肝炎の最新ガイド」平成6年11月15日、(株式会社南江堂発行)
甲第11号証 刊行物「化学物質の小事典」(平成12年12月20日、株式会社岩波書店発行)

IV.被請求人の主張の要点
被請求人は、上記無効理由に対して、概略、次のように主張して、下記の乙号証を提出している。
(1)特許法第29条1項柱書違反(未完成発明)について
請求人の主張は、その悉くが,誤解.独自の推論もしくは解釈、および/または無理矢理の曲解などに基づいており、法的にも科学的にも根拠がない。
よって、本件特許発明を未完成発明とする請求人の主張は、失当なものであり、この点に関して本件審判請求には理由がない。
(2)特許法第36条第4項および第5項違反(記載不備)について
実施可能要件に関する請求人の主張は、本件特許発明を「未完成発明」であるとする主張の単なる焼き直しに過ぎない。
よって、特許法第36条に関する請求人の主張は、失当なものであり、この点に関しても本件審判請求には理由がない。
(3)特許法第29条の2違反(先後願)について
同日付の訂正請求による訂正後の特許請求の範囲に係る発明は、請求人が主張するような、特許法第29条の2に違反して特許された発明ではない。
<乙号証>
乙第1号証: J.Mol.Bio.157:105‐132(1982)
乙第2号証: Ann.Rev.Biochem.47:251‐276(1978)
乙第3号証: Analytical Biochemistry 151:540‐546(1985)
乙第4号証: 特表平6-508024号公報

V.無効理由についての検討
1.本件特許請求の範囲の記載
訂正された本件特許明細書(以下、単に「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「1.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において該抗体を検出するための、化学合成または組換え発現により生成されるHCV抗原の組合せを含む物質の組成物であって、
(a)HCVポリタンパク質のCドメインからのエピトープを含む第IHCV抗原;および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原(第2HCV抗原):
(i)HCYポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(ii)HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(iii)HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
および
(iv)HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原、
ただし、該組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100との組合せを含まない、
を含む、組成物。

2.以下からなる群から選択される第3HCV抗原:
(i)HCVポリタンパク質のNS3ドメイン由来のエピトープを含むHCV抗原;
(ii)HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(iii)HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
および
(iv)HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原、
をさらに含み、ここで、前記第2HCV抗原と該第3HCV抗原とは、HCVポリタンパク質の異なるドメインからのエピトープを含む、請求項1に記載の組成物。

3.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。

4.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。

5.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。

6.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを有する,請求項1または2に記載の組成物。

7.前記組合せが、融合ポリペプチドの形態である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。

8.前記組合せが、前記第1HCV抗原および前記第2HCV抗原のそれぞれが共通の固体マトリックスに結合した形態である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。

9.前記組合せが、前記第IHCV抗原と、前記第2HCV抗原との混合物の形態である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。

10.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において、該抗体を検出する方法であって、抗原抗体反応を起こさせる条件下で、該哺乳類体成分を請求項1〜9のいずれかに記載の組成物に接触させる工程;および該抗体と該組成物中のHCV抗原との免疫複合体の存在を検出する工程、を包含する方法。

11.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において、該抗体を検出する方法であって、
抗原抗体反応を起こさせる条件下で、該幅乳類体成分を、以下の(a)および(b)を含む化学的合成または組換え発現により生成されるHCV抗原のパネルに接触させる工程:
(a)HCVポリタンパク質のCドメインからのエピトープを含む第IHCV抗原;および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原:
(i)HCVポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(ii)HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(iii)HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
および
(iv)HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原、
ただし、(a)および(b)の組合せは、ペプチドpl(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とのc100の組合せを含まない;ならび

該抗体および該HCV抗原の免疫複合体の存在を検出する工程、
を包含する方法。

12.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において、該抗体を検出するアッセイを実施するためのキットであって、パッケージされた状態で、
(a)請求項1〜9のいずれかに記載の組成物、
(b)標準コントロール試薬、および
(c)該アッセイを実施するための指導書、
を組合せて含む、キツト。 」
なお、上記II.1.のように、請求項1および11の記載を除いて、訂正明細書の記載は、本件特許登録時のままである。

2.無効理由その2について
無効理由その2について検討する。
(2.1)発明の詳細な説明の記載
訂正明細書の発明の詳細な説明には、請求人の指摘するように、HCVポリタンパク質の上記各ドメインのどの部位がエピトープであるかは記載されておらず、以下の記載がある。
(ア)(訂正明細書第3頁12行〜4頁15行、本件特許第2733138号公報(以下、単に「本件公報」という。)5欄34行〜6欄9行参照)
「発明の開示
出願人は、HCV抗原の血清学的研究をさらに行い、今日までに同定されているシングルHCVポリペプチドは、いずれもすべての血清に対して免疫学的に反応性をもつわけではないことを確認した。HCVを有する個体からのすべての血清に対して普遍的に反応するシングルポリペプチドがないのは、特に、HCVエピトーブにおける株間の多様性、個体間での体液応答における多様性、および/または疾病状態の血清学上の多様性に起因する。
これらのさらなる研究により、いずれのシングルHCVポリペプチドよりもより効果的な、HCV抗体の検出を提供するHCV抗原の組合せの同定が可能になった。
従って、本発明の1つの局面は、HCV抗原の組合せであって、
(a)Cドメインからの第IHCV抗原、および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原、
(i)NS3ドメインからのHCV抗原、
(ii)NS4ドメインからのHCV抗原、
(iii)SドメインからのHCV抗原、および
(iv)NS5ドメインからのHCV抗原
を含む、HCV抗原の組合せ。
1つの実施態様では、・・・抗原の組合せは、個体抗原の混合物の形態である。」

また、「HCV抗原」については、エピトープと関連させて、次のように定義されている。
(イ)(訂正明細書第5頁末行〜第6頁9行、本件公報6欄46行〜7欄7行参照)
「定義
「HCV抗原」は、HCVの単離体に見いだされるエピトープを決定する、少なくとも5個のアミノ酸、より普通には、少なくとも8個から10個のアミノ酸のポリペプチドを指す。好ましくは、エピトープは、HCVに特有である。抗原が、英数字コードで示されるときには、エピトープは、英数字によって特定されるHCVドメインからのものである。」

そして、HCV抗原について、次のような説明もされている。
(ウ)(訂正明細書第8頁13行〜第10頁5行、本件公報8欄16行〜9欄10行参照)
「一般に、HCV抗原は、ドメイン全体または切形のドメインを含み、ドメインフラグメントの抗原性は、当業者により容易にスクリーニングされる。組合せに用いられる個体HCV抗原は、好ましくは固定されたドメインの免疫優勢部分(すなわち、ポリペプチドの免疫学的反応性に主に関与する部分)を含み得る。Cドメインの場合、Cドメイン抗原は、このドメインの全配列の大半を含むのが好ましい。C22と名付けられた抗原(以下の実施例4を参照)は、特に好ましい。Sドメイン抗原は、好ましくは、ドメインのN末端の、疎水性サブドメインを含む。この疎水性サブドメインは、図1のアミノ酸199位付近からアミノ酸328位まで伸びている。S2と名付けられたHCV抗原(以下の実施例 3を参照)は、特に好ましい。この疎水性サブドメインの下流側の配列は、必要に応じて、Sドメイン抗原に含まれ得る。
好ましいNS3ドメイン抗原は、C83cと名付けられた抗原である。この抗原は、図1のアミノ酸1192位から1457位を含む。好ましいNS4抗原は、図1のアミノ酸1569位から1931位を含むC100である。好ましいNS5抗原は、図1のアミノ酸2054位から2464位を含む。
HCV抗原は、HCVのアミノ酸配列全体を含むポリペプチドの形態であり得るか、またはHCVに外因性の配列を含み得る(すなわち、外因性配列を含む融合タンパク質の形態であり得る)。組換えによって生産されたHCV抗原の場合、SOD、α因子またはユビキチン等の融合タンパク質として抗原を生産することにより(同一出願人による米国特許・・・)、抗原の発現レベルが増加し、および/または抗原の水溶解性が増加し得る。α因子とユビキチンとの融合のような融合タンパク質は、発現宿主によってプロセシングされ、異種配列が除去される。・・・・の融合タンパク質が作成され得る。例示したドメインからの別のフラグメントも使用され得る。」
(エ)HCV抗原の調製(訂正明細書第10頁6〜8行、本件公報9欄11〜13行参照)
「本発明のHCV抗原は、好ましくは、組換えまたは公知の固相化学合成によって生産される。」

そして、HCV抗原ペプチドの作成例が、訂正明細書第15頁1行〜第26頁3行(本件公報12欄12行〜17欄38行参照)に、「実施例1」ではNS3ドメイン由来のアミノ酸配列1192位〜1457位を含有するHCV抗原C33cを、「実施例2」ではNS3ドメインおよびNS4ドメイン由来のアミノ酸配列1569位〜1931位を含有するHCV抗原C100を、「実施例3」ではSドメイン由来のアミノ酸配列199位〜328位を含有するHCV抗原S2を、「実施例4」ではCドメイン由来のアミノ酸配列1位〜122位を含有するHCV抗原C22を、「実施例5」ではNS5ドメイン由来のアミノ酸配列2054位〜2464位を含有するHCV抗原ポリペプチを、というように由来するHCVのドメインが異なる5種類の抗原ポリペプチドを、それぞれ組み換えにより作成した具体例が記載されている。
さらに、HCVに対する抗体のラジオイムノアッセイ(RIA)が、訂正明細書第26頁4行〜第40頁末行(本件公報17欄39行〜27欄37行参照)に、「実施例6」として、HCVを有すると臨床的に診断された個体の血清中、および供給血液から採取した血清中のHCVに対する抗体を検出する能力を、実施例1〜5のHCV抗原をそれぞれ単独で使用したRIAにより試験した結果が、表1,表2として記載されており、
HCV抗原の組み合わせを用いたHCV抗体のELISA測定についても、訂正明細書第41頁1行〜第42頁19行(本件公報27欄38行〜28欄34行参照)に、「実施例7」として、C22およびC33c抗原の組み合わせでウエルを被覆したプレートを調製したこと、それを用いて、ELISA測定を行うことが記載されている。
他のHCV抗原の組み合わせによるELISAについても、「実施例7」に引き続き、訂正明細書第42頁20〜23行(本件公報27欄35〜38行参照)に、「同様に、C22およびC33c:C22、C33c、およびS2の融合タンパク質、並びにC22およびC100;C22およびS2;C22およびNS5抗原;C22、C33cおよびS2;並びにC22、C100およびS2の組み合わせを用いてELISAを行いうる。」と記載されている。

(2.2)請求項1に記載された「HCV抗原」
本件特許発明における「HCV抗原」は、上記記載(イ)の定義によれば、「少なくとも5個のアミノ酸、より普通には、少なくとも8個から10個のアミノ酸のポリペプチド」を指すが、請求項1に記載された各「HCV抗原」は、例えば第1HCV抗原についての請求項1の記載「(a)HCVポリタンパク質のCドメインからのエピトープを含む第IHCV抗原」のように、「HCVポリタンパク質の××ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」という形式(以下、「請求項1特定形式HCV抗原」という。)で記載されているだけであり、一般にポリペプチドを化学物質として特定できるアミノ酸配列を提示して特定されているものではない。
この請求項1特定形式HCV抗原について、さらにそれを定義あるいは説明する記載は訂正明細書にはない。

(2.3)過度の実験の要否について
前記記載(ウ)の第1段落の記載によれば、「一般に、HCV抗原は、ドメイン全体または切形のドメインを含み、ドメインフラグメントの抗原性は、当業者により容易にスクリーニングされる。」とある。しかしながら、「ドメインフラグメント」といっても、前記記載(イ)の定義によれば、少なくとも5個のアミノ酸からなるポリペプチドから対象になるので、その抗原性を検討しなければならないが、【第2図】の如く、例えば1011個のアミノ酸配列からなるNS5ドメインについては、少なくとも5個のアミノ酸からなる断片(フラグメント)の数は50万通り以上存在し得る。1個の「ドメインフラグメントの抗原性は、当業者により容易にスクリーニングされる」としても、そのような膨大数の断片の抗原性の確認には、ペプチド断片の化学合成あるいは組換え発現により作製、精製、抗原抗体反応試験と、当業者にとって過大な実験を要する。しかも、本件発明では、抗原性のあるドメインフラグメントを利用するとしても、請求項1にあるように、1種類のHCV抗原ペプチドだけ使用するものでなく、必要なHCV抗原の組合せを得るためには、他のドメインについても、ドメインを構成するアミノ酸数がそれぞれ120、590,360、280とNS5ドメインよりも少ないとはいえ、Cドメイン,NS3ドメイン、NS4ドメイン、Sドメインの可能性ある約7800通りから16万通り以上のドメイン断片についても、同様にその抗原性を確認しなければならず、それらの確認作業は、全体として当業者にとって、過大な実験といわざるをえないものである。
しかも、「エピトープ」を構成するアミノ酸配列は、必ずしも連続したアミノ酸配列により形成される「連続エピトープ」だけではなく、ネイティブなタンパク質抗原のポリペプチド鎖が折り畳まれ互いに近接したアミノ酸残基により形成される「不連続エピトープ」が存在し、タンパク質中の大部分のエピトープが不連続エピトープに相当するものと考えられている(必要ならば、例えばR.F.Masseyeff,W.H.Albert,N.A.Staines編 ”Methods of Immunological Analysis” Vol.1 (1993)p.104-114 等参照)。
タンパク質がいくつかのペプチドに断片化された際、「不連続エピトープ」を構成しているアミノ酸は分散し、通常、エピトープを構成していた部分はもはや抗体に認識されなくなることが生じる。またタンパク質抗原が断片化されたことにより、ペプチド断片を構成するアミノ酸配列の立体構造は、どのような断片とされたか、その長さなどにより、それがネイティブなタンパク質抗原上に一部分として存在した場合とは異なる立体構造をとる場合があり、ネイティブなタンパク質抗原上ではエピトープを構成する立体構造であっても、断片化された場合ではエピトープとして機能していた立体構造を必ず維持していることが保証されているものでもないし、逆に異なる立体構造をとることにより、ネイティブなタンパク質抗原上ではみられなかったいずれかの抗体のパラトープと結合するようになる反応性を示す可能性も存在する。
したがって、このような不連続エピトープを考慮すると、各ドメインのアミノ酸配列に基づいて確認の対象となるペプチドの数は、さらに膨大なものとなることは明らかである。
加えて、前記記載(ウ)の第3段落の記載に「HCV抗原は、HCVのアミノ酸配列全体を含むポリペプチドの形態であり得るか、またはHCVに外因性の配列を含み得る(すなわち、外因性配列を含む融合タンパク質の形態であり得る)」と記載されているように、本件発明で使用される「請求項1特定形式HCV抗原」は、外因性の配列を含むポリペプチドをも包含している。
実施例に記載されたような長い配列に1個や2個の外因性のアミノ酸配列が付加された程度ではその抗原性に対して実質上影響がないとしても、一般的にはポリペプチド断片の末端にアミノ酸が付加されれば、その立体構造は影響を受けるので、該断片の長さに比較して付加されるアミノ酸数が多ければ、付加されるアミノ酸による立体配置への影響も大きいといえる。
このような外因性配列の付加や割り込みによるアミノ酸配列の立体構造に与える影響を考慮すると、外因性のアミノ酸配列を含む「請求項1特定形式HCV抗原」には、その外因性のアミノ酸配列につき特定等がなされているものではないから、「HCVポリタンパク質の所定ドメインからポリペプチド断片」が遊離状態で有する「HCVポリタンパク質の所定ドメインからのエピトープ」を、その立体構造を保持したまま有することにより「HCV抗原性」であるポリペプチド以外に、「HCVポリタンパク質の所定ドメインからのポリペプチド断片」が有していた「HCVポリタンパク質の所定ドメインからのエピトープ」は有さず、該断片配列とは別のアミノ酸配列を含むことで形成される、HCVポリタンパク質の所定ドメインあるいは別ドメインからの「エピトープを含むHCV抗原」ポリペプチドが包含されていると認められる。何故なら、「HCV抗原」であるか否かは、複数のHCV肝炎患者血清試料、および対比のための非感染者の血清試料を用いて免疫学的反応性を周知のイムノアッセイ法によって確認するのが常法であって、そのような確認方法では、HCVポリタンパク質のどのドメインからの「エピトープを含むHCV抗原」であるかまで確認はできないからである。
そのような外因性アミノ酸配列を含む「請求項1特定形式HCV抗原」を入手することは、同様に「請求項1特定形式HCV抗原」から除外されていない、HCVのポリタンパク質の所定ドメインからの特に抗原性もない任意のアミノ酸断片配列と外因性の配列との融合タンパク質一般から全体として「HCVポリタンパク質の所定ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」を入手することがそうであるように、そもそも、当業者にとって、過度な実験を要することなく可能なこととは認められない。
なお、訂正明細書の前記記載(ウ)には、組換え発現で抗原を生産させる場合、発現効率等の関係でSOD、α因子またはユビキチン等との融合タンパク質の形態で抗原を生産させることは記載されているが、実施例1ではSODとの融合タンパク質「SOD-C33c」として抗原C33cが合成されていても、以降の抗体と実際に反応させた実施例においては、「C33c」が抗原として使用されている。そうすると、SODは切り離され、融合タンパク質の形態ではHCV抗原として使用されていないとも考えられるし、そもそもHCVポリタンパク質の各ドメインからの断片に融合する外因性配列が、それら3種に限定されているわけでもないので、上記検討結果に影響しない。

(2.4)被請求人の主張
被請求人は、「請求項1特定形式HCV抗原」の取得(作製)について、上記乙第1〜3号証を提出して、次のように主張している。
「本件特許発明におけるHCV抗原は、「エピトープ」を含むと規定されていても、その取得(作製)に際し、その抗原に含まれる個々のエピトープを特定する必要はない。例えば「Cドメイン由来のエビトープを含むHCV抗原」は、以下に詳述するように、本件特許の優先権主張日当時の技術で容易に取得(作製)し得たのである。
一般に、タンパク質は、水性溶液中では、その疎水性部分を内側に、親水性部分を外側に向ける。このため、外側に露出されている親水性部分がエピトープとなり得る。したがって、HCVポリタンパク質のアミノ酸配列に基づいて、タンパク質のアミノ酸配列上の疎水性/親水性の解析(Kyte‐Doolittleの方法;乙第1号証)および/または二次構造の解析(Chou‐Fasmanの方法;乙第2号証)等によって、当該アミノ酸配列中のおおよその抗原性領域(抗原と結合し得る部位[すなわち、エピトープ]を有する配列)は容易に同定可能である。この同定手段は、敢えて明細書に記載するまでもなく、本件優先権主張日当時において、当業者に自明の技術であった。実際、本件優先権主張日当時には既に、上記解析法に基づくコンピュータプログラムも存在し(乙第3号証)、当業者は、容易に、アミノ酸配列に基づいて、(エピトープの正確な位置を同定する必要なく)当該配列中の抗原性領域を特定し得たのである。
よって、「エピトープを特定していないから、本件明細書は、当業者が容易に本件特許発明を実施できる記載になっていない」という請求人の主張は、当該分野における本件優先権主張日当時の技術常識を無視したことに起因し、失当である。」

しかしながら、各ドメインの全配列を有するポリペプチド上における「エピトープ」となり得る可能性の高い親水性領域を上記のような解析によってある程度推測可能であり、これにより当業者が実験すべき対象の数がある程度減少するとしても、残された対象の数は依然として膨大であり、当業者に過度の負担を要求するものである点に変わりはない。抗体検出用の抗原として元の抗原をペプチド断片化した場合、必ずしも元の完全な状態のタンパク質抗原上における立体構造と同じであることが保証されているわけではないし、上記の解析方法は、どのような長さの配列にすれば実際に断片化をしても、その立体構造を失うことがないかまで教示しているものではない。(実際、Cell,28巻3号(1982)477〜487頁には、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1分子において、その75%(「エピトープ」が全く存在しないとは考えられない範囲の配列領域を明らかにカバーしている)に相当する、化学合成された20ペプチドについて抗体との反応性を調べたにもかかわらず、完全ヘマグルチニンに対して作られた抗体は20個のペプチドのどれとも反応しなかったことが報告されている。)
したがって、被請求人の主張は認められない。

(2.5)無効理由その2についての結論
以上検討した点は、請求項1ないし12に係る発明すべてに共通する。したがって、請求項1ないし12に係る発明において使用される、第1HCV抗原を始めとするHCV抗原については、訂正明細書の発明の詳細な説明に当業者がそれを容易に入手して発明を容易に実施できる程度に記載されていないと認められるので、本件請求項1ないし12に係る特許は、平成5年改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

4.無効理由その3について
(4-1)本件特許発明
本件訂正請求は、上記II.のとおり訂正が認められるものであるから、本件特許発明は、訂正明細書に記載された上記1.のとおりのものである。

(4-2)甲第1号証先願当初明細書の記載
甲第1号証(特開平4-253998号公報、平成4年9月9日公開)は、特願平2-418240号(パリ条約に基づく優先権主張、1990年11月7日、米国)(以下、単に「先願」という。)の願書に添付された明細書及び図面の内容を公開したもので、次の記載がある。
(1a)請求項1(甲第1号証公報第1欄第2〜12行)
「【請求項1】流体サンプル中におけるHCV抗原に対して免疫学的に反応性の抗体の存在を認識するためのアッセイであって、抗体をポリペプチドに結合するために適切な条件下で、p1、p35、p99、p1192、p1223、p1684、p1689、p1694、p1866、p1899、p380、p380.LG、p447、p607、p643a、p643b、p666、p691及びp2302から構成される群から選択されるHCV抗原の少なくとも1個のエピトープを含むポリペプチドにサンプルを接触させる段階と、抗体-ポリペプチド複合体を検出する段階とを含むアッセイ。」
(1b)請求項3(同第1欄第16〜29行)
「【請求項3】抗体をポリペプチドに結合するために適切な条件下でHCV抗原の少なくとも1個のエピトープから成るポリペプチドにサンプルを接触させ、抗体-ポリペプチド複合体を検出することにより、流体サンプル中におけるHCV抗原に対して免疫学的に反応性の抗体の存在を検出するためのコンビネーションアッセイであって、全体に共通する結合組換ポリペプチドC100-3と、p1、 p35、p99、p1192、p1223、p1684、p1689、p1694、p1866、p1899、p380、p380.LG、p447、p607、p643a、p643b、p666、p691及びp2302から構成される群から選択されるポリペプチドとを有する固体支持体にサンプルを接触させる段階を含むアッセイ。」
(1c)請求項6(同第1欄第49行〜第2欄12行)
「【請求項6】抗体をポリペプチドに結合するために適切な条件下でHCV抗原の別個のエピトープ夫々含む少なくとも2個のポリペプチドに同時にサンプルを接触させ、複合体を呈色試薬と反応させることにより抗体-ポリペプチドを検出することにより、流体サンプル中におけるHCV抗原に対して免疫学的に反応性の抗体の存在を検出するためのイムノドットアッセイであって、p1、 p35、p99、p1192、p1223、p1684、p1689、p1694、p1866、p1899、p380、p380.LG、p447、p607、p643a、p643b、p666、p691、p2302及び固体支持体に結合したC100-3から構成される群から選択されるポリペプチドを使用する段階を含むアッセイ。」
(1d)請求項8(同第2欄第29〜37行)
「【請求項8】p1、 p35、p99、p1192、p1223、p1684、p1689、p1694、p1866、p1899、p380、p380.LG、p447、p607、p643a、p643b、p666、p691及びp2302から構成される群から選択されるHCV抗原の少なくとも1個のエピトープを含むポリペプチドと、1種以上のサンプル調整用試薬と、1種以上の検出及び信号発生用試薬とを含むイムノアッセイキット。」
(1e)サンプル、固体支持体材料(同第7欄40行〜第8欄1行)
「サンプルは全血、血清、血漿、大脳液、精髄液及びリンパ液又は細胞培養物上清のような種々の生物学的サンプルから得られる。固体支持体材料は、セルロース材料(例えば紙及びニトロセルロース)、天然及び合成ポリマー材料(例えばポリアクリルアミド、ポリスチレン及び綿)、多孔質ゲル(例えばシリカゲル、アガロース、デキストラン及びゼラチン)及び無機材料(不活性アルミナ、硫酸マグネシウム及びガラス)を含み得る。適切な固体支持体材料は、微量滴定ウエル、試験管、ビーズ、ストリップ、膜及び微粒子を含む種々の周知の物理的形態としてアッセイで使用されうる。」
(1f)合成ペプチドの固相化(同第21欄15行〜第22欄2行)
「確定アッセイにおいては、C100-3と、合成ペプチドp1684,p1694またはp1866とを別々にポリスチレンビーズ上にコーティングする。所望であれば、ポリスチレンビーズ上にコーティングされた合成ペプチドの組合せを使用することもできる。まずポリスチレンビーズを・・・洗浄し、次いで・・・適当な0.1M緩衝液中の、0.1〜20.0μg/mlに希釈した粗または精製HCV合成ペプチドと一緒にインキュベートした。・・・コーティングはうまく行われた。」
(1g)HCV抗原のパネル(同第30欄30〜36行)
「イムノドットアッセイ系では、ニトロセルロース固体支持体に一列に配置された精製された合成ポリペプチドのパネルを使用する。このように調製した固体支持体をサンプルと接触させ、HCV抗原に対する特異的抗体を捕捉する。捕捉した抗体を結合特異的反応によって検出する。」

(4-3)請求項1について
先願当初明細書に記載された「p1、p35、p99」は、「HCVポリタンパク質のCドメインからのエピトープを含むHCV抗原」であり、「p1192、p1223」は「HCVポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」であり、「p1684、p1689、p1694、p1866、p1899」は「HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」であり、「p2302」は「HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」であり、「C100」は「HCVポリタンパク質のNS3ドメイン及びNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」であり、「p2302」は「HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原」である。
上記先願記載(1a)、(1b)のように、先願当初明細書に記載されたサンプルと接触させるHCV抗原の組合せには、p1、p35、またはp99という本件請求項1における(a)の「第1HCV抗原」と、p1192またはp1223という同(b)(i)や、p1684、p1689、p1694、p1866、またはp1899という同(b)(ii)や、p2302という(b)(iv)や、C100という(b)(i)及び(ii)の「第2HCV抗原」との組合せという、本件請求項1に記載された組合せも記載されている。そして、請求項1の記載は、これらの組合せから、「ただし、該組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100との組合せを含まない」と特定の組合せについては除外しているが、本件請求項1における(a)の「第1HCV抗原」に当たるp1、p35、またはp99(以下、「先願(a)抗原」という。)と、同(b)(i)のHCV抗原に当たるp1192またはp1223との組合せ、あるいは先願(a)抗原と同(b)(ii)の第2HCV抗原に当たるp1684、p1689、p1694、p1866、またはp1899との組合せ、あるいは先願(a)抗原とp2302という同(b)(iv)の第2HCV抗原との組合せ、さらには、それらの組合せにさらにC100抗原を組み合せた組合せや、先願(a)抗原とp1192とp1223との組合せ、あるいは先願(a)抗原とp1192またはp1223と、p1684、p1689、p1694、p1866およびp1899からなる群から選択されたポリペプチドとの組合せ、あるいは先願(a)抗原とp1684、p1689、p1694、p1866、またはp1899とp2302との組合せなど、いまだ先願当初明細書に記載された組合せと重複する組合せがすべて除外されていない。
そして、複数の抗原ポリペプチドの組合せを共通の固体支持体に固相化する際には、上記記載(1f)にも記載されているように、複数の抗原ポリペプチドの溶液という形態の「組成物」が使用されることになる。また、ミクロタイターウエル(微量滴定ウエル)や試験管の固体表面、シート、膜状物の固体表面に複数種のHCV抗原が固定化された形態のものは、その固体表面を構成する成分が1つにまとまって偏在しているので「組成物」と認められるものではないが、上記記載(1e)にもある、受身凝集アッセイで慣用のラテックスまたはゼラチン粒子などの微小粒子状の固体支持体(固体マトリックス)に異なるHCV抗原の組合せが固定されているものは、適当な分散溶剤に混合された形態になるので、全体として「組成物」として認められるものである。
そうすると、本件請求項1に係る「組成物」の発明は、先願当初明細書に記載された発明と区別できず同一である。

(4-4)請求項2について
前記(4-3)における検討からも明らかなように、請求項1における(b)(i)〜(iv)で特定されたHCV抗原からなる群から選択される第3HCV抗原をさらに使用する組成物の発明である請求項3に係る発明も、先願当初明細書に記載された発明と重複する部分がすべて除かれていないので、結局は先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-5)請求項3,4,6について
前記(4-3)における検討からも明らかなように、請求項1における第2HCV抗原が、それぞれ(b)(i)、(b)(ii)、(b)(iv)のものであると特定された請求項3、4,6に係る発明も、結局は先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-6)請求項5について
先願当初明細書には、HCV抗原として、そのアミノ酸配列がHCVポリタンパク質のSドメインからの配列とNS1ドメインからの配列とにまたがる「p380(380-436)」も記載されており、該HCV抗原は、HCVポリタンパク質のSドメインからの配列を含む以上、「HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原」といえるものであるから、請求項5に係る発明については、先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-7)請求項7について
HCV抗原の組合せが「融合ポリペプチドの形態である」ことは、先願当初明細書には記載されていないので、その点を特定している請求項7に係る発明は、先願当初明細書に記載された発明と同一であるということはできない。

(4-8)請求項8,9について
前記(4-3)において検討したとおり、異なるHCV抗原の組合せが、それぞれのHCV抗原が共通の固体マットリックスに結合した形態のものも、混合物の形態のものも、上記記載(1e)、(1f)に記載されているものであり、請求項8,9に係る発明も先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-9)請求項10について
請求項1〜9に記載の組成物が、上記(4-3)〜(4-8)で検討したとおりであり、先願当初明細書には方法の発明について、上記記載(1a)、(1b),(1e)もあるので、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を用いてHCV抗体を検出する方法に関する請求項10に係る発明も、結局のところ、先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-10)請求項11について
異なるHCV抗原のパネルに哺乳類体成分を接触させHCV抗体を検出する方法は、上記記載(1c)、(1e)、(1g)に記載されており、使用するHCV抗原とHCVポリタンパク質の各ドメインとの関係については、上記(4-3)で検討したとおりである。
そうすると、請求項11に係る発明も、先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-11)請求項12について
先願当初明細書には、HCV抗体を検出するためアッセイを実施するためのHCV抗原の組成物を含むイムノアッセイキットに、「標準コントロール試薬」および「該アッセイを実施するための指導書」をパッケージされた状態で組み合せて含むことは記載されていないが、抗体検出用のイムノアッセイキットにおいて、パッケージされた状態で抗原試薬に「標準コントロール試薬」および「該アッセイを実施するための指導書」を組み合せて含ませることは、先願優先権主張日前に免疫測定における技術常識にすぎず、先願優先権主張日前の免疫測定における技術水準を勘案すれば、先願当初明細書に記載されていたに等しい事項であるから、請求項12に係る発明も、先願当初明細書に記載された発明と同一である。

(4-12)29条の2について
先願当初明細書に記載された発明の発明者は、本件特許出願に係る発明者と同一ではないし、本件特許出願の時にその出願人と当該先願の出願人とが同一の者でもない。
したがって、上記(4-3)〜(4-11)で検討したとおり、請求項1〜6,8〜12に係る発明は、特許法第29条の2第1項の規定により、特許を受けることができないものである。

VI.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし12に係る特許は、平成5年改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであり、また、本件特許1ないし6,8ないし12に係る特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反してなされたものであるから、平成5年改正前の特許法第123条第1項第3号及び第1号に該当し、その特許を無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
抗HCV抗体の免疫アッセイに使用するC型肝炎ウイルス(HCV)抗原の組合せ
【発明の詳細な説明】
説明
技術分野
本発明は、HCV(以前は、非A非B型肝炎ウイルスと呼ばれていた)の免疫アッセイの分野に関する。特に、本発明は、抗HCV抗体の広範囲な免疫アッセイを可能にするHCV抗原の組成物に関する。
背景
以前、非A非B型肝炎(NANBH)として知られていた疾病は、伝染性の疾患あるいは疾患群であり、ウイルスが誘発すると考えられていた。そしてウイルスに関連する他の形態の肝臓疾患とは区別し得ると見なされていた。これらの他の形態の疾患には、公知の肝炎ウイルス、すなわち、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)およびΔ肝炎ウイルス(HDV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)またはエプスタイン-バーウイルス(EBV)によって引き起こされる肝炎が包含される。NANBHは、輸血した個体において初めて同定された。ヒトからチンパンジーへの伝染およびチンパンジー間における一連の継代は、NANBHが、1種または複数種の伝染性感染因子によるという証拠を与えた。疫学的証拠によると、NANBHには次の3つの型が存在し得ることが示唆される:つまり、飲料水媒介の流行型;血液または非経口伝染型;および散発(集団取得(community acquired))型の3つの型である。しかし、最近まで、NANBHに関与する伝染性因子は同定されておらず、NANBHの臨床診断および同定は、主に他のウイルスマーカーを排除することによって行われてきた。推定されるNANBH抗原および抗体を検出するために使用される方法としては、寒天ゲル拡散法、対向免疫電気泳動法、免疫蛍光顕微鏡法、免疫電子顕微鏡法、放射免疫アッセイ、および酵素結合免疫吸着検定法がある。しかし、これらのアッセイのいずれも、NANBHの診断テストとして用いるために、十分に感度が高く、特異的であり、かつ再現性があるとは証明されていない。
1987年に、Chiron Corporation(本出願の所有者)の科学者たちは、血液媒介のNANBHに明らかに関係している核酸を初めて同定した。EPO公開No.318,216号、Houghtonら、Science244:359(1989)を参照のこと。これらの文献には、新規なウイルスクラスである、C型肝炎ウイルス(HCV)からの単離物のクローニングが記載されている。これらの文献に記載のプロトタイプ単離物は、「HCV1」と名付けられた。HCVは、RNAゲノムを有するフラビ様ウイルスである。
本願に参考のために援用した、米国特許出願第456,637号(Houghtonら)は、HCV cDNAを発現することによる様々な組換えHCVポリペプチドの調製、およびこれらのポリペプチドをHCV患者由来の血清との免疫反応性について、スクリーニングすることについて記載している。このような限定されたスクリーニングにより、テストしたポリペプチドのうち、特に5-1-1、C100、C33c、CA279aおよびCA290aとして同定された5つのポリペプチドの免疫原性が高いことが示された。これらの5つのポリペプチドのうち、5-1-1は、推定されるNS4ドメインに存在し、C100は、推定されるNS3およびNS4ドメインに広がっており、C33cは、推定されるNS3ドメインに存在し、CA279aおよびCA290aは、推定されるCドメインに存在する。さらに、このスクリーニングにより、テストしたシングルポリペプチドのいずれも、すべての血清と免疫学的に反応性があるわけではないことが示された。従って、HCV陽性個体由来のすべてのまたはより多くの試料と反応する、改良されたテストが望まれる。
発明の開示
出願人は、HCV抗原の血清学的研究をさらに行い、今日までに同定されているシングルHCVポリペプチドは、いずれもすべての血清に対して免疫学的に反応性をもつわけではないことを確認した。HCVを有する個体からのすべての血清に対して普遍的に反応するシングルポリペプチドがないのは、特に、HCVエピトープにおける株間の多様性、個体間での体液応答における多様性、および/または疾病状態の血清学上の多様性に起因する。
これらのさらなる研究により、いずれのシングルHCVポリペプチドよりもより効果的な、HCV抗体の検出を提供するHCV抗原の組合せの同定が可能になった。
従って、本発明の1つの局面は、HCV抗原の組合せであって、
(a)Cドメインからの第1HCV抗原、および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原、
(i)NS3ドメインからのHCV抗原、
(ii)NS4ドメインからのHCV抗原、
(iii)SドメインからのHCV抗原、および
(iv)NS5ドメインからのHCV抗原
を含む、HCV抗原の組合せ。
1つの実施態様では、HCV抗原の組合せは、複数の抗原を含む融合タンパク質の形態である。他の実施態様では、抗原の組合せは、共通の固体マトリックスに結合した複数の個体抗原の形態である。さらに他の実施態様では、抗原の組合せは、個体抗原の混合物の形態である。
本発明の他の局面は、HCVに対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分中に、該抗体を検出する方法である。この方法では、抗原抗体反応を起こさせる条件下で、該哺乳類体成分を上記のHCV抗原の組合せに接触させる工程;および該抗体および該抗原の免疫複合体の存在を検出する工程とを包含する。
本発明の他の局面は、HCVに対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分中に、該抗体を検出する別の方法である。この方法では、抗原抗体反応を起こさせる条件下で、該哺乳類体成分を、以下を含むHCV抗原のパネルに同時または連続して接触させる工程;
(a)Cドメインからの第1HCV抗原、および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原、
(i)NS3ドメインからのHCV抗原、
(ii)NS4ドメインからのHCV抗原、
(iii)SドメインからのHCV抗原、および
(iv)NS5ドメインからのHCV抗原、
そして、該抗体および該抗原の免疫複合体の存在を検出する工程とを包含する方法。
本発明の他の局面は、HCVに対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分中に、該抗体を検出するアッセイを実施するためのキットである。このキットは、パッケージされた状態で、
(a)前記HCV抗原の組合せ、
(b)標準コントロール試薬、および
(c)該アッセイを実施するための説明書、
を組合せて含む。
図面の簡単な説明
図面において、
図1は、HCVポリタンパク質のcDNAセンスおよびアンチセンス鎖のヌクレオチド配列、およびセンス鎖によってコードされるアミノ酸配列である。
図2は、HCVポリペプチドの推定されるドメインを示す、図1のアミノ酸配列の概略図である。
発明を実施するための形態
定義
「HCV抗原」は、HCVの単離体に見いだされるエピトープを決定する、少なくとも5個のアミノ酸、より普通には、少なくとも8個から10個のアミノ酸のポリペプチドを指す。好ましくは、エピトープは、HCVに特有である。抗原が、英数字コードで示されるときには、エピトープは、英数字によって特定されるHCVドメインからのものである。
HCV抗原を特徴づけるのに使用される「合成の」は、HCV抗原が、天然源からの単離されるか、または化学合成または組換え合成のような人工によるものであることを示す。
「ドメイン」は、図2に示すHCVポリタンパク質のセグメントを指し、これらは、通常、HCVの推定される構造および非構造タンパク質に対応する。ドメインの記号は、一般に、フラビウイルスタンパク質を名付けるのに使用される従来の方法に従う。図2に示すドメインの位置は、およそのものである。記号「NS」は、「非構造」ドメインを指し、「S」は、エンベロープドメインを指し、「C」は、ヌクレオカプシドまたはコアドメインを指す。
「融合ポリペプチド」は、一種または複数種のHCV抗原が、アミノ酸の1本の連続する鎖の一部となっているポリペプチドを指し、天然には存在しないものである。HCV抗原は、ペプチド結合によって互いに直接結合され得るかまたは、介在アミノ酸配列によって分離され得る。融合ポリペプチドはまた、HCV以外のアミノ酸配列を含み得る。
「共通固体マトリックス」は、個々のHCV抗原、またはHCV抗原を含む融合ポリペプチドが、共有結合または疎水性吸着のような非共有結合手段によって結合している固体を指す。
「哺乳類体成分」は、通常、個体によって生産される抗体を含む、哺乳類個体(例えば、ヒト)の流体または組織を指す。このような成分は、当該技術分野において公知であり、限定されないが、血液、血漿、血清、脊椎液、リンパ液、呼吸器の分泌物、腸管または尿生性殖器管、涙、唾液、乳汁、白血球細胞、および骨髄腫を含む。
「免疫学的に反応性をもつ」は、問題の抗原が、HCVに感染した個体由来の血清の重要な部分に通常存在する抗HCV抗体と、特異的に反応し得ることを意味する。
「免疫複合体」は、抗体が、抗原上のエピトープと結合するときに形成される組合せまたは集合体を指す。
HCV抗原の組合せ
図2は、HCVポリタンパク質の推定ドメインを示す。組合せに用いられる抗原が由来するドメインは、C、S(またはE)、NS3、NS4およびNS5である。Cドメインは、HCVのヌクレオカプシドタンパク質を決定すると考えられる。Cドメインは、図1のポリタンパク質のN末端から、アミノ酸120位付近まで伸長している。Sドメインは、ビリオンエンベロープタンパク質、おそらくはマトリックス(M)タンパク質を決定すると考えられ、図1のアミノ酸120位付近から、アミノ酸400位まで伸長している考えられる。NS3ドメインは、アミノ酸1050位付近から、アミノ酸1640位まで伸長し、ウイルスプロテアーゼを構成すると考えられる。NS4ドメインは、NS3の末端から、アミノ酸2000位付近まで伸長している。NS4タンパク質の機能は、現時点では不明である。最後に、NS5ドメインは、アミノ酸2000位付近から、ポリタンパク質の末端まで伸長し、ウイルスポリメラーゼに対応すると考えられる。
図1に示す配列は、HCV1単離体の配列である。血液を媒介としたHCVのその他の株の配列は、特に、エンベロープ(S)およびヌクレオカプシド(C)ドメインにおいて、図1の配列と異なり得ることが予想される。このように異なる配列を有するHCV抗原の使用は、本発明の範囲内にあるものとする。但し、その改変は、HCVに感染したヒト由来の血清に対する抗原の免疫学的反応性を著しく退化させるものではない。
一般に、HCV抗原は、ドメイン全体または切形のドメインを含み、ドメインフラグメントの抗原性は、当業者により容易にスクリーニングされる。組合せに用いられる個体HCV抗原は、好ましくは固定されたドメインの免疫優勢部分(すなわち、ポリペプチドの免疫学的反応性に主に関与する部分)を含み得る。Cドメインの場合、Cドメイン抗原は、このドメインの全配列の大半を含むのが好ましい。C22と名付けられた抗原(以下の実施例4を参照)は、特に好ましい。Sドメイン抗原は、好ましくは、ドメインのN末端の、疎水性サブドメインを含む。この疎水性サブドメインは、図1のアミノ酸199位付近からアミノ酸328位まで伸びている。S2と名付けられたHCV抗原(以下の実施例3を参照)は、特に好ましい。この疎水性サブドメインの下流側の配列は、必要に応じて、Sドメイン抗原に含まれ得る。
好ましいNS3ドメイン抗原は、C33cと名付けられた抗原である。この抗原は、図1のアミノ酸1192位から1457位を含む。好ましいNS4抗原は、図1のアミノ酸1569位から1931位を含むC100である。好ましいNS5抗原は、図1のアミノ酸2054位から2464位を含む。
HCV抗原は、HCVのアミノ酸配列全体を含むポリペプチドの形態であり得るか、またはHCVに外因性の配列を含み得る(すなわち、外因性配列を含む融合タンパク質の形態であり得る)。組換えによって生産されたHCV抗原の場合、SOD、α因子またはユビキチン等との融合タンパク質として抗原を生産することにより(同一出願人による米国特許第4,751,180号、第4,870,008号、および1989年8月7日出願の米国特許出願第390,599号を参照のこと。これらには、本願に参考のために援用する。これらには、SOD、α因子およびユビキチン融合タンパク質の発現を記載している)、抗原の発現レベルが増加し、および/または抗原の水溶解性が増加し得る。α因子とユビキチンとの融合のような融合タンパク質は、発現宿主によってプロセシングされ、異種配列が除去される。α因子は、分泌システムであるが、ユビキチン融合物は細胞質中に残存する。
さらに、抗原の組合せは、融合タンパク質として生産され得る。例えば、C22およびC33cをコードするDNAの連続フラグメントが、構築され得、発現ベクターにクローニングされ、C22およびC33cの融合タンパク質を発現するのに使用され得る。同様に、C22およびC100;C22およびS2;C22およびNS5抗原;C22、C33cおよびS2;C22、C100およびS2;C22、C33c、C100およびS2の融合タンパク質が作成され得る。例示したドメインからの別のフラグメントも使用され得る。
HCV抗原の調整
本発明のHCV抗原は、好ましくは、組換えまたは公知の固相化学合成によって生産される。しかし、HCV抗原は、抗原に対する抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーを使用して、無関連なHCVまたはHCV粒子から単離され得る。
組換え技術によって生産される場合には、抗原をコードするDNAを構築し、このDNAを発現ベクターにクローニングし、細菌、酵母、昆虫または哺乳類細胞のような宿主細胞を形質転換し、このようなDNAを発現して抗原を生産する、標準手法が用いられ得る。前記のように、発現を向上させ、精製を容易にし、または溶解性を向上させるためには、抗原を融合タンパク質として発現させることが望ましい。代表的なHCV抗原を生産する特定の手法例は、以下の実施例、および特許出願第456,637号において記載する。
免疫アッセイに使用する抗原の調整
複数のHCV抗原は、2つまたはそれ以上の抗原を含む融合タンパク質の形態にHCV抗原を生産するか、それらを個々に共通の固体マトリックス上に固定化するか、または物理的にそれらを混合することにより、組合せられる。抗原の融合タンパク質はまた、固体マトリックスに固定化(結合)され得る。タンパク質を固体マトリックスに共有結合または非共有結合させる方法および手段は、当該技術分野において公知である。固体表面の特性は、アッセイフォーマットにより異なり得る。ミクロタイターウェルで実施されるアッセイでは、固体表面は、ウェルまたはカップの壁であり得る。ビーズを用いるアッセイでは、固体表面は、ビーズの表面であり得る。ディップスティック(dipstick)(すなわち、織物または紙などの多孔性または繊維性物質からできた固体)を用いるアッセイでは、表面は、ディップスティックを形成する物質の表面であり得る。凝集アッセイでは、固体表面は、ラテックスまたはゼラチン粒子の表面であり得る。個々の抗原が、マトリックスに結合される場合には、それらは、表面上に均一に分布されるかまたは、結合抗原のパターンが認められるように、帯のようなパターンで表面に分布され得る。
抗原の簡単な混合物では、任意の適切な溶剤または分散培地における抗原が含まれる。
抗原の組合せを使用するアッセイフォーマット
HCV抗原は、抗体を検出するための既知の抗原を用いる、実質的にすべてのアッセイフォーマットにおいて使用され得る。これらのアッセイのすべてに共通の特性は、抗原と、HCV抗体を含むと思われる体成分とを、成分中に存在する任意のこのような抗体と抗原とが結合する条件下で、接触させることである。このような条件とは、通常、過剰の抗原を用いた生理的温度、pHおよびイオン強度である。抗原と試料とをインキュベートさせ、次に抗原を含む免疫複合体が検出される。
免疫アッセイの設計は、非常に多様であり、多くのフォーマットが当該技術分野において公知である。プロトコルは、例えば、固体支持体または免疫沈降を用い得る。ほとんどのアッセイでは、標識された抗体またはポリペプチドを使用し、その標識は、例えば、酵素分子、蛍光分子、化学発光分子、放射性分子、または染料分子であり得る。免疫複合体からのシグナルを増幅させるアッセイもまた知られている。その例としては、ビオチンおよびアビジンを用いるアッセイ、ならびにELISAアッセイのような、酵素で標識され媒介された免疫アッセイが挙げられる。
免疫アッセイは、限定されるわけではないが、異種または同種フォーマットであり、標準型または競合型であり得る。異種フォーマットの場合、通常、インキュベーション後、試料をポリペプチドから容易に分離するために、ポリペプチドは固体マトリックスまたは支持体に結合される。使用され得る固体支持体の例としては、ニトロセルロース(例えば、膜またはミクロタイターウェルの形態)、ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはミクロタイターウェルの形態)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはミクロタイタープレートの形態)、ポリフッ化ビニリデン(イムロン(ImmulonTM)として知られる)、ジアゾ化紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズがある。例えば、DynatechイムロンTM1もしくはイムロンTM2ミクロタイタープレートまたは0.25インチのポリスチレンビーズ(精密標準プラスチックボール(Precision Plastic Ball))が、異種フォーマットに使用され得る。抗原性ポリペプチドを含む固体支持体は、通常、テスト試料から分離した後、結合抗体の検出前に洗浄される。標準および競合フォーマットが当該技術分野において公知である。
同種フォーマットでは、テスト試料は、溶液中で、抗原の組合せとインキュベートされる。例えば、このフォーマットは、形成される任意の抗原抗体複合体を沈降させ得る条件下であり得る。これらのアッセイには、標準および競合アッセイの両方が当該技術分野において公知である。
標準フォーマットでは、抗体抗原複合体を形成するHCV抗体の量は、直接モニターされる。このモニターは、抗HCV抗体上のエピトープを認識する標識された抗異種(例えば、抗ヒト)抗体が、複合体の形成によって結合するか否かを決定することによって成し遂げられ得る。競合フォーマットでは、試料中のHCV抗体の量は、複合体内における既知の量の標識された抗体(または他の競合リガンド)の結合に対する競合効力をモニターすることによって推定される。
抗HCV抗体を含む形成された複合体(または、競合アッセイの場合には、競合抗体の量)は、フォーマットに従って、任意の多数の公知の技術によって検出される。例えば、複合体中の標識されていないHCV抗体は、標識(例えば、酵素標識)と複合した抗異種Igの結合体を用いて検出され得る。 免疫沈降または凝集アッセイフォーマットでは、HCV抗原と抗体との反応により、溶液または懸濁液から沈降し、沈降物の可視層または膜を形成するネットワークが形成される。テスト試料中に、抗HCV抗体が存在しない場合には、可視沈降物は形成されない。
HCV抗原は、通常、これらの免疫アッセイにおいて使用されるようにキットの形態にパッケージされる。キットは、通常、別々の容器に、抗原の組合せ(固体マトリックスにすでに結合しているか、または抗原をマトリックスに結合させる試薬と共に、それぞれ別々に存在している)コントロール抗体調製物(陽性および/または陰性)、アッセイフォーマットが同一のものを要求する際の標識された抗体、および標識がシグナルを直接生成しないならば、シグナル発生試薬(例えば、酵素基質)を含む。アッセイを実施するための指導書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)は、通常、キットに含まれる。
以下の実施例は、本発明を例示することを目的としており、本発明を決して限定するものではない。
実施例1:HCV抗原C33cの合成
HCV抗原C33cはNS3ドメイン由来の配列を含有する。特に図1のアミノ酸1192位から1457位を含有する。この抗原はヒトのスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)との融合タンパク質としてバクテリア内で以下のように生産された。ベクターpSODcf1(Steinerら(1986)、J.Virol.58:9)は、EcoRIおよびBamHIで完全消化され、得られたEcoRI、BamHI断片は、以下のリンカーに連結されて、pcf1EFが形成された。

アミノ酸1192から1457をコードし、EcoRI末端を有するcDNAクローンがpcf1EFに挿入され、pcf1EF/C33cが形成される。この発現構築物をD1210E.coli細胞に形質転換した。
この形質転換細胞を用いて、N末端にSODを有し、C末端C33c HCV抗原をインフレームで有する融合タンパク質を発現させる。発現は、15mlの形質転換細胞の一晩培養物をアンピシリン(100μg/ml)含有する1500mlのルリアブイヨンに接種することにより行われる。細胞をO.D.0.3になるまで増殖させ、IPTGを最終濃度2mMになるように添加して、細胞の濃度がO.D.1に達するまで増殖を続行した。その時点で3,000×gで4℃にて20分間遠心分離機にかけて採取した。パックした細胞は-80℃で数カ月保存可能である。
SOD-C33cのポリペプチドを精製するために、ポリペプチドが発現される細菌細胞を浸透圧衝撃および機械的破砕に供し、SOD-C33cを含む不溶性画分を単離して、NaClアルカリ溶液で分画抽出にかけ、そして抽出物中の融合ポリペプチドをS-セファロースおよびQ-セファロースのカラムでクロマトグラフィーにより精製した。
浸透圧衝撃および機械的破砕により得た粗抽出物を以下の手順により調製した。1グラムのパックした細胞を0.02M Tris HCl、pH7.5、10mM EDTA、20%のスクロースを含有する10mlの溶液中に懸濁して、氷上で10分間インキュベートした。次に細胞を4,000×gで15分間4℃にて遠心分離機にかけてペレット状にした。上清を除去後、細胞ペレットを10mlの緩衝液A1(0.01M Tris HCl、pH7.5、1mM EDTA、14mMβメルカプトエタノール[BME])に再懸濁して、氷上で10分間インキューベートした。細胞を再び4,000×gで15分間4℃でペレット状にした。透明な上清(ペリプラズム画分I)を除去後、細胞ペレットを緩衝液A1に再懸濁して、氷上で10分間インキュベートして、再び4,000×gで15分間4℃で遠心分離機にかけた。透明の上清(ペリプラズム画分II)を除去後、細胞ペレットを5mlの緩衝液A2(0.02M Tris HCl、pH7.5、14mM BME、1mM EDTA、1mM PMSF)に再懸濁した。細胞を破砕させるため、懸濁液(5ml)および7.5mlのダイノミル型の無鉛酸洗浄ガラスビーズ(直径0.10-0.15mm)(Glen-Mills(株)から入手)をファルコンチューブに入れて、2分間最高速度でボルテックスにかけ、続いて少なくとも2分間氷上で冷した。ボルテックス-冷却工程をさらに4回繰り返した。ボルテックス後、スラリーを低い吸引力でガラス漏斗を用いて濾過した。ガラスビーズを2回、緩衝液A2で洗浄し、そして濾液と洗浄液を混ぜ合わせた。
粗抽出物の不溶性画分を20,000×gで15分間4℃で遠心分離機にかけて回収し、10mlの緩衝液A2で2回洗浄し、5mlのMILLI-Q水に再懸濁した。
最終濃度が各々20mMになるようにNaOH(2M)およびNaCl(2M)を懸濁液に添加し、混合物を1分間ボルテックスにかけ、20,000×gで20分間4℃で遠心分離機にかけ、そして上清を維持することにより、SOD-C33c含有画分を、不溶性物質から単離した。
S-セファロースでSOD-C33cを精製するために、上清画分を最終濃度が6M尿素、0.05M Tris HCl、pH7.5、14mM BME、1mM EDTAになるように調整した。この画分を、緩衝液B(0.05M Tris HCl、pH7.5、14mM BME、1mM EDTA)で平衡化したS-セファロース速流動(1.5×10cm)のカラムにかけた。カラムにかけた後、カラムをカラムの2倍容の緩衝液Bで洗浄した。通過および洗浄画分を回収した。アプライおよび洗浄の流速は1ml/分であり、回収された画分は1mlであった。SOD-C33c含有画分を同定するため、画分の部分標本をSDSを含有する10%のポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析して、クーマシーブルーで染色した。画分をさらにSODに対する抗体を用いてウェスタン法によっても分析した。SOD-C33c含有画分をプールした。
SOD-C33cを緩衝液Bで平衡化したQ-セファロースカラム(1.5cm×5cm)でさらに精製した。S-セファロース上でのクロマトグラフィーから得たSOD-C33cを含有するプールされた画分を、カラムにかけた。カラムを緩衝液Bで洗浄して、60mlの緩衝液B中のNaCl0.0から0.4Mのグラジエントで溶出させた。アプライ、洗浄、および溶出の流速は1ml/分であり、回収された画分は1mlであった。Q-セファロースカラムからの全画分をS-セファロースカラムの時と同様に分析した。カラムから溶出されたSOD-C33cのピークは約0.2M NaClの時点であった。
Q-セファロースカラムから得たSOD-C33cは、ポリアクリルアミドSDSゲルおよびヒトSODに対するモノクローナル抗体を用いたイムノブロットでの分析によると、約90%以上の純度であった。
実施例2:HCV抗原C100の合成
HCV抗原C100は、NS3ドメインおよびNS4ドメイン由来の配列を含有する。より詳しくは、図1のアミノ酸1569位から1931位までを含有する。この抗原は酵母で生産された。上述のアミノ酸をコードしEcoRI末端を有する1270bpのcDNA断片が調製された。
この断片が直接S.cerevisiae ADH2/GAPプロモーターに融合されている酵母発現ベクターの構築は、PCR法を用いたC100配列の増幅、次いで増幅された配列をクローニングベクターに連結することを含むプロトコールによってなされる。クローニングの後、C100配列を取り出して、ADH2/GAPプロモータを含有する配列と共に、酵母ベクターの大きな断片に連結させて、酵母発現ベクターを得る。
C100のPCR増幅は、鋳型として、SalIの消化により直鎖状にされたベクターpS3-56C100m’を用いて行われた。pBR322の誘導体であるpS3-56は、ヒトスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子の上流にADH2/GAPDHハイブリッド酵母プロモーター、および下流にアルファ因子転写ターミネーターからなる発現カセットを含有する。
増幅に用いられるオリゴヌクレオチドのプライマーは発現ベクターへのクローニングを促進し、翻訳終止コドンを導入するように設計された。特に、新規な5’-HindIIIおよび3’-SalI部位がPCRオリゴヌクレオチドで作成された。SalI部位を含有するオリゴヌクレオチドはまた二重終止コドン、TAAおよびTGAをコードする。HindIII部位を含有するオリゴヌクレオチドはまたAUGコドンの上流のすぐ近くにあるpgap63由来の非翻訳リーダ配列を含有する。pEco63GAPDH遺伝子はHolland&Holland(1980)およびKniskernら(1986)に記載されている。C100mの直接発現に用いられたPCRプライマー配列は、以下の通りである。

および

プライマーおよび鋳型を利用したPCRによる増幅はCetus-Perkin-Elmer PCRキットを用いたものであり、製造元の指示に従って行った。PCR条件は、1分間94℃、2分間37℃、3分間72℃で29サイクルであり、最終インキュベーションは72℃で10分間であった。DNAは4℃から-20℃で一晩保存され得る。
増幅後、PCRの産物をHindIIIおよびSalIで消化した。1.1kbの主産物をゲル上で電気泳動により精製して、そして溶出された精製産物をpBR322のSalI-HindIIIの大きな断片に連結させた。正確な組換え物を単離するために、コンピテントHB101細胞を組換えベクターで形質転換させ、クローニング後、所望の組換え物を、クローンから取り出したHindIII-SalI断片の予想されるサイズを基に同定した。正確なサイズのHindIII-SalI断片を含有するクローンの1つをpBR322/C100-dと命名した。このクローンが増幅したC100を含有することをHindIII-SalI断片の直接配列分析によって確認した。
C100を含有する発現ベクターは、pBR322/C100-d由来のHindIII-SalI断片をpBS24.1の13.1kb BamHI-SalI断片およびADH2/GAPプロモーターを含有する1369bm BamHI-HindIII断片を連結することにより構築された(後者の断片は欧州特許第164,556号に記載されている)。pBS24.1ベクターは、同一出願人による1989年7月19日出願のU.S.S.N.382,805に主に記載されている。ADH2/GAPプロモーター断片は、ベクターpPGAP/AG/HindIIIをHindIIIおよびBamHIで消化して、次に1369bpの断片をゲル上で精製することにより得られた。
コンピテントHB101細胞を組換えベクターで形質転換して、正確な組換え物を、クローン化されたベクターのBamHIおよびSalI消化により生じる2464bp断片および13.1kb断片の生成により同定した。クローン化された正確な組換えベクターの1つをpC100-d#3と命名した。
C100を発現させるために、Saccharomyces cerevisiae株AB122(MATa leu2 ura3-53 prb 1-1122 pep4-3 prcl-407[cir-0])のコンピテント細胞を発現ベクターpC100-d#3で形質転換した。形質転換された細胞をURA-ソルビトールに置いて、個々の形質転換細胞をLeu-プレート上にひろげた。
個々のクローンを2%のグルコースを用いたLeu-、ura-培地で30℃にて24〜36時間培養した。2%グルコースを含有する1リットルの酵母エキストラクトペプトン培地(YEP)に10mlの一晩培養物を接種して、そして得られた培養物を400rpmの攪拌速度、1分間に1リットルの培地に付き1リットルの空気の通気率(すなわち1vvm)で30℃にて48時間増殖させた。培地のpHは制御しなかった。培養物をNew Brunswick Science社製のBioFlo II発酵槽で増殖させた。発酵に続いて、細胞を単離させて、C100の発現について分析した。
形質転換された細胞により発現したC100ポリペプチドの分析を、Leu-プレートから得た単-酵母コロニーから調製した細胞溶解物および粗抽出物で行った。細胞溶解物および粗抽出物をSDSポリアクリアミドゲル電気泳動、およびウェスタンブロットにより分析した。ウェスタンブロットは、酵母で発現したSOD-C100ポリペプチドに対するウサギのポリクローナル抗体でプローブして行った。C100ポリペプチドの予想サイズは364個のアミノ酸であった。ゲル分析の結果、発現したポリペプチドは39.9kのMWrを有していた。
両方の分析法は、ともに発現されたC100ポリペプチドが全細胞溶解物中に存在するが、粗抽出物には存在しないことを示した。これらの結果は、発現されたC100ポリペプチドが不溶性であることを示唆している。
実施例3:HCV抗原S2の発現
HCV抗原S2は、Sドメインの疎水性N末端からの配列を含有し、図1のアミノ酸199位から328位を含む。
S2ポリペプチドをコードする発現ベクターの構築およびそれを酵母で発現させるためのプロトコールは、実施例2で記載のC100ポリペプチドの発現に用いたものと類似していた。
PCR反応のための鋳型は、HindIIIでの消化により直線化されたベクターpBR322/Pil4aであった。Pi14aはアミノ酸199から328をコードするcDNAクローンである。
S2をコードする配列のPCRによる増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは以下の通りである。
S2配列の5’領域においては:

および
S2配列の3’領域においては:

5’領域のプライマーによってHindIII部位およびATG開始コドンが増幅生産物に導入される。3’領域のプライマーにより、翻訳終止コドンおよびSalI部位が増幅生産物に導入される。
PCR条件は、1分間94℃、2分間37℃、3分間72℃で29サイクルであり、最終インキュベーションは72℃で10分間であった。
PCR反応の主な生産物はゲル精製された413bpの断片であった。精製断片を、HindIIIおよびSalI断片で消化したpBR322から得た大きな断片に連結させて、プラスミドpBR322/S2dを作成した。
413bpのHindIII-SalI S2断片と、ADH2/GAPプロモータを含有する1.36kbのBamHI-HindIII断片、および酵母ベクターpBS24.1のBamHI-SalIの大きな断片との連結により、クローン化された組換えベクターが作成された。正しい組換えベクターはBamHIおよびSalIで消化した後の1.77kbの断片の存在により同定された。増幅配列から構築され、ADH2/GAPプロモーターに直接融合されたS2をコードする配列を含有する発現ベクターは、pS2d#9と命名された。
実施例4:HCV C抗原の合成
HCV抗原C22は、Cドメインに由来し、図1のアミノ酸1-122を含有する。
Cポリペプチドをコードする発現ベクターの構築、および酵母中でそれを発現させるためのプロトコールは、上述のC100ポリペプチドの発現に用いられたものと下記の点を除いて同様であった。
PCR反応のための鋳型は、HindIIIで直鎖状にされたPBR322/Ag30aであった。Ag30は、アミノ酸1-122をコードするcDNAクローンである。Cをコードする配列をPCRによって増幅させるためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは以下の通りである。
C配列の5’領域においては:

および
C配列の3’領域においては:

5’領域のプライマーによってHindIII部位が増幅生産物に導入され、3’領域のプライマーによって、翻訳終止コドンおよびSalI部位が導入される。PCR条件は、1分間94℃、2分間37℃、3分間72℃で29サイクルであり、最終インキュベーションは72℃で10分間であった。
PCR増幅による主産物は381bpのポリヌクレオチドである。この断片をpBR322の大きなSalI-HindIII断片に連結させてプラスミドpBR322/C2を作成した。
pBR322/C2から取り出した381bpのHindIII-SalI Cコード断片と、ADH2/GAPプロモータを含有する1.36kbのBamHI-HindIII断片、および酵母ベクターpBS24.1のBamHI-SalIの大きな断片との連結により、クローン化された組換えベクターが作成された。正しい組換えベクターは、BamHIおよびSalIで消化した後の1.74kbの断片の存在により同定された。この増幅配列から構築され、直接ADH2/GAPプロモーターに融合されたCをコードする配列を含有する発現ベクターは、pC22と命名された。
形質転換された細胞により発現されたCポリペプチドの分析を、Leu-プレートから得た単-酵母コロニーから調製した全細胞溶解物および粗抽出物により行った。細胞溶解物および粗抽出物をSDSポリアクリアミドゲル電気泳動により分析した。Cポリペプチドは122個のアミノ酸を有すると予想され、ゲル分析の結果、発現したポリペプチドは約13.6kdのMWrを有している。
実施例5:NS5ポリペプチドの合成
このポリペプチドは、NS5ドメインのN末端からの配列を含有し、詳しくは図1のアミノ酸2054位から2464位を含む。NS5ポリペプチドをコードする発現ベクターの構築、およびその発現のためのプロトコールは、C33cの発現に用いたものと類似していた(実施例1参照)。
実施例6:HCVに対する抗体のラジオイムノアッセイ(RIA)
HCV(非A、非B)を有すると臨床的に診断された個体の血清中、および供給血液から採取した血清中のHCVに対する抗体を検出する実施例1から5のHCV抗原の能力を、RIAフォーマットで試験した。
RIAは、SELECTED METHODS IN CELLULAR IMMUNOLOGY(W.H.Freeman & Co.),pp.373-391に記載のTsuおよびHerzenberg(1980)の手順に基づき行った。一般には、マイクロタイタープレート(Immulon2,Removawell strips)を精製したHCV抗原で被覆した。被覆したプレートを血清試料または適切な対照と共にインキュベートした。インキュベーションの間、抗体は、もし存在するなら、固相抗原に免疫学的に結合する。結合しなかった物質を除去して、マイクロタイタープレートを洗浄後、ヒト抗体-NANBV抗原の複合体は、125I標識ヒツジ抗ヒト免疫グロブリンと共にインキュベートすることにより検出される。結合していない標識抗体を吸引により除去して、プレートを洗浄する。個々のウェルの放射活性を測定する。結合ヒト抗HCV抗体の量はウェルの放射活性に比例する。
詳細には、0.125M Naホウ酸緩衝液、pH8.3、0.075M NaCl(BBS)中に0.1から0.5μgのHCV抗原を含有する100μlの部分標本を、マイクロタイタープレート(Dynatech Immulon2Removawell Strips)の各ウェルに添加した。プレートを4℃にて一晩湿気のあるチャンバーでインキュベートした。その後、抗原液を除去し、ウェルを0.02%のTriton X-100(BBST)を含有するBBSで3回洗浄した。非特異的結合を阻害するため、BBS中の5mg/mlのBSA溶液を100μl添加し、続いて室温で1時間インキュベートして、このインキュベーションの後BSA溶液を除去することにより、ウェルをウシ血清アルブミン(BSA)で被覆した。10mg/mlのBSAを含有する0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2、0.15M NaCl(PBS)で1:100に希釈した血清試料を100μl添加し、そして血清含有ウェルを37℃で1時間インキュベートすることにより、被覆されたウェル中の抗原を血清と反応させた。インキュベーション後、血清試料を吸引により除去して、ウェルをBBSTで5回洗浄した。抗原に結合した抗体を125I標識F’(ab)2ヒツジ抗ヒトIgGを被覆ウェルに結合することにより定量した。100μlの標識プローブの部分標本(比放射能5-20μCi/μg)を各ウェルに添加し、プレートを1時間37℃でインキュベートし、次いで過剰のプローブを吸引により除去して、BBSTで5回洗浄した。各ウェルに結合した放射活性をガンマ放射線を検出するカウンターにより測定した。
下記の表1は、HCVを有すると診断された個体から採取した血清の試験結果を示すものである。






AVH=急性ウィルス肝炎
CVH=慢性ウィルス肝炎
PTVH=輸血後のウィルス肝炎
IVDA=静脈注射濫用者
crypto=潜源性の肝炎
NOS=原因不明
P=陽性
N=陰性
これらの結果によると、すべての血清と反応する単一抗原はない。C22およびC33cが最も反応性が高く、S2は、他の抗原とは反応しない、いくつかの推定急性HCVケース由来のいくつかの血清と反応する。これらの結果に基づくと最も大きい検出の範囲を示す2つの抗原の組み合わせはC22およびC33cである。急性感染を最大に検出したいなら、S2を組み合わせに含めるとよい。
表2は供給血液の試験結果を示す。







供給血液による結果は一般に感染した個体の血清による結果を確認したものとなっている。
実施例7:HCV抗原の組み合わせを用いたHCV抗体のELISA測定
C22およびC33c抗原の組み合わせで被覆したプレートを以下のように調製した。被覆緩衝液(50mMのホウ酸ナトリウム、pH9.0)、21ml/プレート、BSA(25μg/ml)、C22およびC33c(各2.50μg/ml)含有溶液をRemoveawell Immulon Iプレート(Dynatech社)に添加する直前に調製する。5分間混合した後、0.2ml/ウェルの溶液をプレートに添加して、被覆し、37℃で2時間インキュベートして、その後溶液を吸引により除去する。ウェルを1回400μlの洗浄緩衝液(100mMリン酸ナトリウム、pH7.4、140mM塩化ナトリウム、0.1%(M/V)カゼイン、1%(W/V)Trinton x-100、0.01%(W/V)チメロサール)で洗浄する。洗浄溶液を除去後、200μl/ウェルのPostcoat溶液(10mMリン酸ナトリウム、pH7.2、150mM塩化ナトリウム、0.1%(w/v)カゼイン、3%のスクロースおよび2mMのフェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF))を添加して、蒸発を防ぐためプレートを緩く被覆して、室温に30分間放置した。次にウェルを吸引して溶液を除去して、たなを加熱することなく一晩凍結乾燥させる。調製したプレートは乾燥剤(3g Sorbit packs)と共にアルミニウムの袋に密閉して2〜8℃で保存され得る。
ELISA測定を行うために、20μlの血清試料または対照試料を、200μlの試料希釈液(100mMリン酸ナトリウム、pH7.4、500mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、0.1%(W/V)カゼイン、0.01%(W/V)チメロサール、1%(W/V)トリトンX-100、100μg/ml酵母抽出物)を含むウェルに添加する。プレートを密閉して37℃で2時間インキュベートし、次に溶液を吸引により除去して、ウェルを3回400μlの洗浄緩衝液(0.05%Tween20を含有するリン酸緩衝溶液(PBS))で洗浄する。洗浄したウェルを、Ortho(結合)希釈液(10mMリン酸ナトリウム、pH7.2、150mM塩化ナトリウム、50%(V/V)ウシ胎児血清、1%(V/V)熱処理したウマ血清、1mM K3Fe(CN)6、0.05%(W/V)Tween20、0.02%(W/V)チメロサール)に含まれた、200μlのマウス抗ヒトIgG-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合物で処理する。処理は1時間37℃で行い、溶液は吸引により除去して、ウェルを3回400mlの洗浄緩衝液で洗浄して、この緩衝液もまた吸引により除去する。結合した酵素結合物を測定するために、200μlの基質溶液(5mlの現像液当り10mgのO-フェニレンジアミンジヒドロ塩化物)を添加する。現像液はリン酸でpH5.1に調整した50mMのクエン酸ナトリウム、および0.6μl/mlの30%H2O2を含有する。基質溶液を含有するプレートを暗所で30分間室温でインキュベートする。反応を50μl/mlの4N硫酸を添加して中止し、ODを測定する。
同様に、C22およびC33c;C22、C33c、およびS2の融合タンパク質、並びにC22およびC100;C22およびS2;C22およびNS5抗原;C22、C33c、およびS2;並びにC22、C100、およびS2の組み合わせを用いて、ELISAを行い得る。
上述の実施態様を改変して本発明を実行することは、分子生物学、免疫学、および関連分野の当業者に公知であり、それらも本発明の請求項の範囲に包含される。
(57)【特許請求の範囲】
1.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において該抗体を検出するための、化学合成または組換え発現により生成されるHCV抗原の組合せを含む物質の組成物であって、
(a)HCVポリタンパク質のCドメインからのエピトープを含む第1HCV抗原;および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原(第2HCV抗原):
(i)HCVポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(ii)HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(iii)HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
および
(iv)HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原、
ただし、該組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とc100との組合せを含まない、
を含む、組成物。
2.以下からなる群から選択される第3HCV抗原:
(i)HCVポリタンパク質のNS3ドメイン由来のエピトープを含むHCV抗原;
(ii)HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(iii)HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
および
(iv)HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原、
をさらに含み、ここで、前記第2HCV抗原と該第3HCV抗原とは、HCVポリタンパク質の異なるドメインからのエピトープを含む、請求項1に記載の組成物。
3.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。
4.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。
5.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。
6.前記第2HCV抗原が、HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを有する、請求項1または2に記載の組成物。
7.前記組合せが、融合ポリペプチドの形態である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。
8.前記組合せが、前記第1HCV抗原および前記第2HCV抗原のそれぞれが共通の固体マトリックスに結合した形態である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。
9.前記組合せが、前記第1HCV抗原と、前記第2HCV抗原との混合物の形態である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。
10.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において、該抗体を検出する方法であって、抗原抗体反応を起こさせる条件下で、該哺乳類体成分を請求項1〜9のいずれかに記載の組成物に接触させる工程;および該抗体と該組成物中のHCV抗原との免疫複合体の存在を検出する工程、を包含する方法。
11.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において、該抗体を検出する方法であって、
抗原抗体反応を起こさせる条件下で、該哺乳類体成分を、以下の(a)および(b)を含む化学的合成または組換え発現により生成されるHCV抗原のパネルに接触させる工程:
(a)HCVポリタンパク質のCドメインからのエピトープを含む第1HCV抗原;および
(b)以下からなる群から選択される少なくとも1つの別のHCV抗原:
(i)HCVポリタンパク質のNS3ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(ii)HCVポリタンパク質のNS4ドメインからのエピトープを含むHCV抗原;
(iii)HCVポリタンパク質のSドメインからのエピトープを含むHCV抗原;および
(iv)HCVポリタンパク質のNS5ドメインからのエピトープを含むHCV抗原、ただし、(a)および(b)の組合せは、ペプチドp1(アミノ酸1位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp35(アミノ酸35位〜75位)とc100との組合せ、ペプチドp99(アミノ酸99位〜126位)とのc100の組合せを含まない;ならびに
該抗体および該HCV抗原の免疫複合体の存在を検出する工程、
を包含する方法。
12.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体を含むと思われる哺乳類体成分において、該抗体を検出するアッセイを実施するためのキットであって、パッケージされた状態で、
(a)請求項1〜9のいずれかに記載の組成物、
(b)標準コントロール試薬、および
(c)該アッセイを実施するための指導書、
を組合せて含む、キット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-01-07 
結審通知日 2003-01-10 
審決日 2003-01-21 
出願番号 特願平3-507636
審決分類 P 1 112・ 161- ZA (G01N)
P 1 112・ 531- ZA (G01N)
最終処分 成立  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 植野 浩志
渡部 利行
登録日 1997-12-26 
登録番号 特許第2733138号(P2733138)
発明の名称 抗HCV抗体の免疫アッセイに使用するC型肝炎ウイルス(HCV)抗原の組合せ  
代理人 奥村 茂樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 西野 卓嗣  
代理人 山本 秀策  
代理人 小林 幸夫  
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