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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1123490
審判番号 不服2003-2295  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-13 
確定日 2005-09-14 
事件の表示 平成 9年特許願第282516号「光ジャック」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月23日出願公開、特開平11-109189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月29日の出願であって、平成14年12月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年2月13日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年3月14日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成15年3月14日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成15年3月14日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の【請求項1】に「軸合わせ用の円錐状の凹面が形成された受光用又は発光用の光素子」とあるを、「軸合わせ用の円錐状の凹面が形成され且つ当該凹面の底に受光用又は発光用の素子本体が設けられた光素子」に補正することを含むものである。

(2)明細書等の記載
請求人は、審判請求書の手続補正書において、上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的として、光素子を限定したものであり、その内容は明細書の段落番号0031〜0033、0048、0052、図2、12及び14に明確に記載されている旨主張する。
そこで、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書」という。)を検討するに、当初明細書には、
「【0032】パッケージ23は正面形状が長方形の盤体で、透明樹脂からなる。パッケージ23の正面には、奥に向かって直径が漸減する円錐状の凹面24が設けられている。凹面24の奥には、ストレートな円周面が連続して設けられている。これらは素子本体22に対して同心状に形成されており、その素子本体22は円周面に囲まれた空間内に位置している。
【0033】凹面24に囲まれた凹部には、図2に示すように、ボディ10のプラグ収容部11に挿入されたプラグ70の先尖部71が挿入される。ここで、凹面24の傾斜角度は、先尖部71の傾斜角度と同一又はほぼ同一に設定されている。これにより、先尖部71の外面が凹面24に押し付けられることにより、プラグ70は光素子20の素子本体22に対して軸合わせされる。」
と記載され、図2、12及び14には、上記説明のものが示されており、これらの図から、プラグ70の先尖部71の外面は、円錐状の凹面24に押し付けられ、素子本体22と所定の間隔をもって軸合わせされていることがみてとれる。

(3)当審の判断
当初明細書には、「円錐状の・・・凹面の底」なる用語は記載がない。そして、上記当初明細書【0032】の記載から、「奥に向かって直径が漸減する円錐状の凹面」と「ストレートな円周面」とは、明確に区分されているから、「円錐状の・・・凹面の底」には、少なくとも凹面の奥のストレートな円周面を有せず、円錐状凹面の終端部に底のあるものが含まれるものと解されるが、当初明細書記載のものは、円錐状の凹面に続いてストレートな円周面が設けられているものが記載されているのであるから、上記補正事項は、当初明細書の記載事項に基づくものではない。
してみると、上記補正事項は当初明細書で記載された事項の範囲内でなされたものであるとはいえない。
(なお、仮に、この点が新規事項でないとしても、上記補正事項「円錐状の・・・凹面の底」は、その内容が一義的に決まらず、特許請求の範囲の記載を曖昧にするものであるから、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。)

(4)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年3月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年12月2日付手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「プラグが挿入されるボディと、ボディ内に挿入されたプラグの先端側に位置してボディ内に収容され、前記プラグの先尖状の先端部が対向するパッケージ前面に、該先端部が当接する軸合わせ用の円錐状の凹面が形成された受光用又は発光用の光素子と、ボディ内に挿入されたプラグのクビレ部にその両側から弾性的に係合するようにプラグ内に設けられ、その係合によりプラグの先端部を前記凹面に押し付けるプラグ保持手段とを具備することを特徴とする光ジャック。」(以下、「本願発明」という。)

(2)刊行物記載の発明
原審の拒絶の理由に引用した特開平6-140106号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の記載が認められる。
「【0036】
【実施例】[第一実施例]本発明の第一実施例のプラグ・ジャック式光電共用伝送装置は、図1ないし図6の如く、光方式および電気方式を選択的に適用可能とするもので、光伝送用光ファイバーケーブルとの間で光授受を行う光半導体素子22と、電気伝送用小型単頭式電気プラグ23(図6に示す)に接続して電気授受を行う複数個の電気接続端子24と、該光半導体素子22および電気接続端子24を収納保持する保持体25と、前記光半導体素子22と外部回路とを接続するよう前記保持体25の外周面に配置された外部コネクタ26とを備え、前記光ファイバーケーブルの光ファイバープラグ27または電気プラグ23が選択的に接続されることで、光伝送機能と電気伝送機能とを兼有するものである。
【0037】ここで、前記光ファイバーケーブルの光ファイバープラグ27は、図5の如く、一般に流通されている既存の小型単頭式電気プラグ23と類似した形状とされている。すなわち、光ファイバープラグ27の先端には単頭部31が形成され、該単頭部31の基部側にくびれ32が形成されており、図6のように単頭部33およびくびれ34を有する電気プラグ23に対して外観類似の関係にある。
【0038】前記光半導体素子22は、図2の如く、LEDやフォトトランジスタ等の光半導体チップ22aが透光性樹脂22bにて封止された一般的なものが使用される。該光半導体素子22の下面には、前記光半導体チップ22aと外部回路とを電気的に接続するための外部コネクタ26が引き出されている。
【0039】前記保持体25は、非透光性樹脂を用いて金型成形されたもので、前記電気接続端子24が一体成形され、前記光半導体素子22が接着樹脂にて固定収納される。該保持体25の一端面(前面)から光半導体素子22の取付位置にかけては、各プラグ23,27を選択的に挿入するための共通の円筒形挿入孔36が形成されている。・・・
【0042】また、該挿入孔36の内周面には、図2および図3の如く、その孔軸に対し対称となる位置に、複数の溝36aが設けられている。そして、該溝36aに、前記電気接続端子24が配されている。
【0043】該電気接続端子24としては、互いに電気的に独立した金属板24a〜24dが使用される。該各金属板24a〜24dは、弾性を有するリン青銅等にAgメッキ仕上げが施されたもので、その板厚は例えば0.25mmとされる。
【0044】このうち、前記金属板24a,24c,24dは、前記各プラグ23,27の外周面に接触可能となるよう、挿入孔36の内周より内側に突出されている。
【0045】また、前記金属板24bは、前記各プラグ23,27の挿入完了時に、プラグ23,27の単頭部31,33のくびれ32,34に係合する位置で、挿入孔36の内周より内側に突出されている。
【0046】また、該各金属板24a〜24dは、各プラグ23,27の離脱を可能とすべく、挿入孔36の外側に向けて弾性変形可能とされている。・・・
【0048】上記構成の光電共用伝送装置の使用方法を説明する。まず、光ファイバーを通じて光伝送を行う場合は、図5に示す光ファイバープラグ27を保持体25の挿入孔36に挿入する。この際、光ファイバープラグ27の外周面で、電気接続端子24としての金属板24a,24d,24cを外側に押し広げながら進む。さらに、光ファイバープラグ27の単頭部31が金属板24bを外側に押し広げながら進む。そして、光ファイバープラグ27のくびれ32と電気接続端子24の金属板24bとが接触して噛み合った時点で、光ファイバープラグ27に働くトルクがほぼ0となり、完全に嵌合される。そうすると、光ファイバープラグ27の先端面と光半導体素子22の前面の距離は、前述の(1)式から、α(≒0.2mm)となる。この距離は、光ファイバープラグ27と光半導体素子22との間の光学的結合を効率良く安定せしめるのに適しているため、その光学的特性が向上する。」
また、図2、4及び5から、保持体25は、その挿入孔36内周より内側に突出する複数個の電気接続端子24、光ファイバープラグ27の先尖状の単頭部31を案内するテーパ部を有し、その奥に、該保持体25に挿入される光ファイバープラグ27の先端側に位置するように、光半導体素子22を固定収納すると共に、前記電気接続端子の1つを構成し、光ファイバープラグ27のくびれ32に係合する金属板24bが、プラグの挿入方向に向かって狭くなる1対のバネ状部を有していることがみてとれる。

(3)対比
刊行物1記載のもの(以下、「引用発明」という。)と本願発明とを対比する。
(イ)引用発明の「光ファイバープラグ27」、「保持体25」、「LEDやフォトトランジスタ等の光半導体チップ22aが透光性樹脂22bにて封止された光半導体素子22」及び「光電共用伝送装置」は、それぞれ、本願発明の「プラグ」、「ボディ」、「受光用又は発光用の光素子」及び「光ジャック」に相当する。
(ロ)引用発明において、「保持体25」は「該保持体25に挿入される光ファイバープラグ27の先端側に位置するように、光半導体素子22を固定収納」しているから、本願発明の「ボディ内に挿入されたプラグの先端側に位置してボディ内に収容され、前記プラグの先尖状の先端部が対向する受光用又は発光用の光素子」の構成を実質的に備えている。
(ハ)引用発明がプラグ・ジャック式光電共用伝送装置である以上、「単頭部31を案内するテーパ部」は、本願発明の「軸合わせ用の円錐状の凹面」に実質的に相当することは当業者に明らかである。
(ニ)引用発明は、「光ファイバープラグ27のくびれ32に係合する金属板24bが、プラグの挿入方向に向かって狭くなる1対のバネ状部を有している」のであるから、本願発明の「プラグのクビレ部にその両側から弾性的に係合するプラグ保持手段」が備わっている。また、引用発明のものも、くびれ32に金属板24bのバネ状部が係合することにより、光ファイバープラグの単頭部をテーパ部に押し付ける作用を有することは明らかである。(必要であれば、原審で周知例として引用した特開平6-111876号公報【0016】、【0026】を参照。)

したがって、両者は、
「プラグが挿入されるボディと、ボディ内に挿入されたプラグの先端側に位置してボディ内に収容され、前記プラグの先尖状の先端部が対向する受光用又は発光用の光素子と、ボディ内に挿入されたプラグのクビレ部にその両側から弾性的に係合するようにプラグ内に設けられ、その係合によりプラグの先端部を前記凹面に押し付けるプラグ保持手段とを具備することを特徴とする光ジャック。」である点で一致し、下記の点で相違する。

相違点;
本願発明は、光素子のパッケージ前面に、プラグの先尖状の先端部が当接する軸合わせ用の円錐状の凹面が形成されたのに対して、引用発明は、光ファイバープラグ27の先尖状の単頭部31を案内するテーパ部を保持体25に設けた点。

(4)判断
上記相違点につき検討する。
光素子のパッケージの前面に位置決め用のテーパ状の凹部を設けることは、この出願前周知の技術(例えば、特開平6-300941号公報及び原審で周知例として引用した実願昭63-108243号(実開平2-30910号)のマイクロフィルムを参照。)である。
してみると、引用発明において、光ファイバープラグ27の先尖状の単頭部31を案内するテーパ部を保持体25に設ける代わりに、光素子のパッケージ前面にテーパ状の凹部を設け、本願発明の上記相違点の構成を得ることは当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願発明によってもたらされる効果は、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別とはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-06 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-25 
出願番号 特願平9-282516
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 浩司  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 吉野 三寛
吉田 禎治
発明の名称 光ジャック  
代理人 大西 正夫  
代理人 大西 孝治  

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