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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1123491
審判番号 不服2003-8242  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-09 
確定日 2005-09-14 
事件の表示 特願2000-34109「レーザー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月17日出願公開、特開2001-223423〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年2月10日の出願であって、その請求項に係る発明は、平成15年2月10日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のものである。
「共振器内にレーザー媒質を配置し、前記レーザー媒質に励起光を入射することにより前記共振器内においてレーザー発振を生じさせて、前記共振器からレーザー光を出射させるレーザー装置において、
前記レーザー媒質は、種結晶を核にして成長させて、レーザー活性イオンとしてネオジムが原子数の比率で1.3%を越える濃度となるように添加されたイットリウムアルミニウムガーネット単結晶
であるレーザー装置。」

2 引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平5-335678号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はレーザ発振素子として好適に使用される固体レーザ用イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)単結晶に関する。」(段落【0001】)
(2)「【0007】
【作用】本発明のYAG単結晶は、原料を一旦溶融して結晶化させることによって製造することができ、その製法については特に限定されないが、CZ法、ブリッジマン法、FZ法、EFG法等の従来法を採用することができる。」(段落【0007】)
(3)「【0013】
【実施例】純度99.99重量%のAl2O3及びY2O3をYAG組成近傍となるように秤量し、さらにこれに所定量のSi元素及び発光元素又は増感元素を添加して焼結棒を作成し、FZ法によって、レーザ用YAG単結晶を製造した。得られたYAG単結晶は直径5mm、厚さ5mmの試料に加工し、この試料の両面を表面粗度0.5nm、平坦度1/4λに精密加工した。
【0014】
・・・
表1に示す実施例1〜7は、Nd,Cr,Tm,Hoの発光元素又は増感元素を1.0原子%〜7.8原子%の範囲で、またSi元素を0.2〜1.0重量%の範囲で組成変動させた結果を示す。」(段落【0013】〜【0014】)
(4)【表1】には、ネオジム添加濃度が3.6at%及び9.2at%であるレーザ用YAG単結晶(実施例3、4)が記載されている。
(5)「【0017】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の固体レーザ用YAG単結晶は、単結晶では従来不可能であった発光元素の高濃度化が可能となるため、小型で高出力のレーザを得ることができ、マイクロチップレーザとしての用途の拡大が期待される。・・・」(段落【0017】)

3 対比・判断
本願発明と引用例の記載事項とを対比する。
(a)引用例に記載の「レーザ発振素子」は、本願発明の「レーザー媒質」に相当する。
(b)引用例に記載の「固体レーザ用イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)単結晶」は、本願発明の「イットリウムアルミニウムガーネット単結晶」に相当する。
(c)引用例の【表1】に記載の実施例3、4におけるネオジム添加濃度3.6at%及び9.2at%は、本願発明の「ネオジムが原子数の比率で1.3%を越える濃度」の範囲内である。(なお、ネオジムが原子数の比率で1.3%を越える濃度のYAG単結晶に関しては、他にAppl.Phys.Lett.65[13](1994)p.1620-1622や英国特許公開1055099号明細書にも記載がある。)
(d)引用例の段落【0007】、【0013】には、YAG単結晶の製造方法としてCZ法やFZ法が記載されていることから、同引用例に記載のYAG単結晶は、「種結晶を核にして成長させた」ものといえる。
(e)引用例には、レーザー用途としてのYAG単結晶が記載されているから、これを用いたレーザー装置も同引用例に記載されているに等しいといえ、しかも、レーザー装置とは、通常、「共振器内にレーザー媒質を配置し、前記レーザー媒質に励起光を入射することにより前記共振器内においてレーザー発振を生じさせて、前記共振器からレーザー光を出射させる」ものであることに鑑みると、同引用例には、YAG単結晶をレーザー媒質とした、上記のようなレーザー装置が実質的に記載されているといえる。

以上の(a)〜(e)から、本願発明に準じて記載すると、引用例には、
「共振器内にレーザー媒質を配置し、前記レーザー媒質に励起光を入射することにより前記共振器内においてレーザー発振を生じさせて、前記共振器からレーザー光を出射させるレーザー装置において、
前記レーザー媒質は、種結晶を核にして成長させて、レーザー活性イオンとしてネオジムが原子数の比率で1.3%を越える濃度となるように添加されたイットリウムアルミニウムガーネット単結晶
であるレーザー装置」
の発明が記載されているから、本願発明と引用文献に記載の発明とはすべての点で一致し、両者の間に相違する点はない。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-07 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-25 
出願番号 特願2000-34109(P2000-34109)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古田 敦浩杉山 輝和  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 吉田 英一
吉田 禎治
発明の名称 レーザー装置  
代理人 上島 淳一  

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