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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R |
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管理番号 | 1123627 |
審判番号 | 不服2002-13860 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-24 |
確定日 | 2005-10-11 |
事件の表示 | 平成10年特許願第291574号「車両用モニタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月25日出願公開、特開2000-118298、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.本願は、平成10年10月14日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成14年 4月22日受付の手続補正書及び同年 7月24日受付の手続補正書により補正された明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。) 「【請求項1】 被撮像物からの反射光を集光して周囲の反射像を映し出す凸面鏡、及びこの凸面鏡による反射像を撮像して画像信号を出力する撮像手段から成り車両の車室内のリヤウィンド上部近辺に取り付けられる1個の全方位視覚センサと、 前記全方位視覚センサによる画像信号が入力されて全方位画像を形成する画像入力部と、 前記全方位画像を仮想的な円筒に投影して成る円筒投影画像に変換処理して車両後方の画像を選択する画像変換部と、 前記画像変換部により選択された画像を表示する表示部と、 トランスミッションのシフトレバーの位置を検出して検出した位置に応じた信号を出力するシフトレバーセンサとを備え、 前記画像変換部が、前記シフトレバーセンサの出力信号に基づく前記シフトレバーの位置とターンスイッチの切換信号との組み合わせから車両の前進または後退とターンスイッチの右または左への切り換えを検出し、検出結果に応じて選択範囲を可変することを特徴とする車両用モニタ装置。 【請求項2】 前記画像変換部が、後退状態で前記ターンスイッチのオフを検出したときに後方を中心とする所定範囲の後方画像を選択し、前進状態における前記ターンスイッチの右への切り換えを検出したときに前記後方画像のうち右後方を中心とする画像のみを選択し、前進状態における前記ターンスイッチの左への切り換えを検出したときに前記後方画像のうち左後方を中心とする画像のみを選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用モニタ装置。 【請求項3】 前記画像変換部が、後退状態で前記ターンスイッチのオフを検出したときに後方を中心とする後方画像を選択し、前進状態における前記ターンスイッチの右への切り換えを検出したときに前記後方画像とほぼ同じ視野角での右後方を中心とする右後方画像を選択し、前進状態における前記ターンスイッチの左への切り換えを検出したときに前記後方画像とほぼ同じ視野角で左後方を中心とする左後方画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用モニタ装置。」 2.引用例等及びその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された「特開平9―118178号公報」(以下、「引用例1」という。) 上記引用例1には、以下の事項が記載されている。 (a)「【課題】車両周囲の被写体と自車両の位置関係や車両の形状を容易に把握することができる車両周囲モニタ装置を提供する。 【解決手段】車両周囲モニタ装置は、車両の左側後端部に取り付けた広角カメラCと、車両内に搭載したモニタとで構成され、広角カメラCは、車両周囲の光景を映出する凸面鏡1と、その凸面鏡1の反射虚像を撮影する撮影装置2と、凸面鏡1と撮影装置2とを連結する透明パイプ3と、透明パイプ3の蓋となるキャップ4と、撮影装置2を覆うケース5で構成される。広角カメラCによって路面を略等倍率に撮影した画像の車両部分に、画像処理回路で車両周囲部分の画像の倍率に略等しい車両イメージを合成し、その合成画像をモニタに表示する。」(【要約】の項) 上記引用例1の記載において、広角カメラCは、本願発明1の全方位視覚センサに該当する。 また、上記広角カメラCからの画像信号は、本願発明1と同じく画像入力部に入力され、表示部に表示するものである。 しかしながら、本願発明1のように、 「トランスミッションのシフトレバーの位置を検出して検出した位置に応じた信号を出力するシフトレバーセンサとを備え、 前記画像変換部が、前記シフトレバーセンサの出力信号に基づく前記シフトレバーの位置とターンスイッチの切換信号との組み合わせから車両の前進または後退とターンスイッチの右または左への切り換えを検出し、検出結果に応じて選択範囲を可変する」 ものではなく、「全方位画像を仮想的な円筒に投影して成る円筒投影画像に変換処理」するものでもない。 なお、【発明の詳細な説明】の【0031】,【0046】及び【図3】に「円筒座標系」について示されているが、これは、実際の路面平面を正確に再現するため、特定の凸面形状を必要とし、その凸面形状を数式化する際、円筒座標系を用いる旨の開示であって、該「円筒座標系」は、半径方向rを変数とするもので、本願発明のような円筒面上の高さzと方向角θのみを用いた「円筒投影画像に変換する」構成を示唆するものではない。 (2)同上「特開平6―227318号公報」(以下、「引用例2」という。) 上記引用例2には、以下の事項が記載されている。 (a)「【構成】3方の状況を知る上での死角をカバーでき、さらに同時刻の画像情報と3に表示することと、画像情報により、障害物等を認識し、運転者へ視覚的、もしくは聴覚的に警報する。これにより、側部後方と正面後方の3方向を認識するようにしている。また、動作状況及びその他の信号によりディスプレイの表示を制御するディスプレイ制御装置を備える。さらに、認識された画像情報により、障害物の判定を行う装置と、危険度を判断する装置を備えている。さらに、処理された情報、及び、画像情報によりディスプレイを通して運転者に警報する。さらに、処理された情報によりスピーカーを通して運転者に警報する。 【効果】一度の視線移動で後方,斜め後方、また、モニタと一部の制御装置の設置のみでシステムを構築することができる。さらに、衝突回避等の警告が行うことができる。」(【要約】の項) (b)「図11に示す状態をノーマルモードとして、左のモニタ3により認識されたものを画面の左側領域に、右のモニタ1により認識されたものを画面の右側領域に同じ大きさで表示し、中間のモニタ2により認識されたものを画面の中央領域に表示する。車両走行中に例えば右に車線変更しようとした場合、ウインカ、もしくはステアの右側への操作の信号により、図11から図9R>9のように右側領域を左側領域より表示領域を大きく変化させ、運転者に対して右後方の様子を見やすく表示する。次に車両が減速状態に入った場合や後退の状態に入った場合、ブレーキやトランスミッションの操作により図10のように中央の表示領域を大きくする。また、図12のように中央の表示領域を小さくし、メッセージを同時に表示できるようにする。」(段落【0020】) よって、上記下線部分には、本願発明1の「トランスミッションのシフトレバーの位置を検出して検出した位置に応じた信号を出力するシフトレバーセンサとを備え、 前記画像変換部が、前記シフトレバーセンサの出力信号に基づく前記シフトレバーの位置とターンスイッチの切換信号との組み合わせから車両の前進または後退とターンスイッチの右または左への切り換えを検出し、検出結果に応じて選択範囲を可変すること」に該当する構成が示されている。 (3)同上「実願昭63―81387号(実開平2―2251号)のマイクロフィルム」(以下、「引用例3」という。) (4)拒絶査定時に提示された「実開昭60―34037号公報」(以下、「周知例1」という。) (5)同上「特開平2―53651号公報」(以下、「周知例2」という。) (6)同上「特開平5―38977号公報」(以下、「周知例3」という。) 上記引用例3及び周知例1ないし3には、いずれも車両の後方モニタシステムに関する発明であって、そのカメラが車室内リヤウィンド上部近辺に取り付けられるのものが示されている。 3.当審の判断 (1)本願発明1について 上記引用例1ないし3及び周知例1ないし3には、本願発明1の特定事項である「全方位視覚センサ」,モニタの「車室内のリヤウィンド上部近辺に取り付け」及び「車両の前進または後退とターンスイッチの右または左への切り換えを検出」等の各事項が、それぞれ開示されていることは認められるが、少なくとも、本願発明1の特定事項の一部である「全方位画像を仮想的な円筒に投影して成る円筒投影画像に変換処理」することの構成についての記載はない。 そして、本願発明1は、前記特定事項によって、「画像変換部による円筒投影画像からの選択範囲が、シフトレバーの位置とターンスイッチの切換信号との組み合わせに応じて可変されるため、特に前進状態でのターン時においてドライバの死角となる範囲の画像を表示することができ」るとの明細書に記載の効果を奏するものと認められる。 したがって、本願発明1は、上記引用例1ないし3及び周知例1ないし3に記載の各発明から当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)本願発明2,3について 本願発明2,3は、本願発明1の特定事項を更に限定するものであるから上記本願発明1についての判断と同様の理由により、上記引用例1ないし3及び周知例1ないし3に記載の各発明から当業者が容易に想到し得るものではない。 4.まとめ 以上のとおり、本願の請求項1ないし3に係る発明は、上記引用例1ないし3及び周知例1ないし3に記載された各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 したがって、本願を原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2005-09-27 |
出願番号 | 特願平10-291574 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 島田 信一 |
特許庁審判長 |
大野 覚美 |
特許庁審判官 |
平岩 正一 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | 車両用モニタ装置 |
代理人 | 梁瀬 右司 |