• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1124042
審判番号 不服2002-20419  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-21 
確定日 2005-10-03 
事件の表示 平成 9年特許願第152897号「入力ペン」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月18日出願公開、特開平10-333814〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.(手続きの経緯・本願発明の要旨)
本願は、平成9年5月27日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「感圧式手書き入力装置に用いる入力ペンにおいて、軸筒の前端に合成樹脂製でかつスプリングにより長手方向前方に付勢された前入力部材を設け、更に軸筒の後端にゴム等の軟質弾性物質からなる後入力部材を設け、前入力部材の尖端形状を曲面に形成するとともに後入力部材の尖端形状を曲面に形成し、前記前入力部材の尖端形状を後入力部材の尖端形状に比べて曲率半径を小さく構成し、細かい文字等を入力するための前入力部材と、軟らかいパネルに入力したりポインティング入力を行う後入力部材を設けたことを特徴とする入力ペン。」

2.(引用例)
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-123602号公報(以下、「引用例1」という。)には、次のとおりの記載がある。

(イ)「本発明は、表示パネル面上に被着した透明抵抗膜部の表面に押圧を加えることにより、その位置データがコンピュータに入力される抵抗膜感圧方式入力パネルに用いる入力ペンに関する。
【0002】入力ペンは人が持って記入するので、滑らかに書け且つ使い易く、更に人による強い筆圧にても抵抗膜部を損傷させないことが要望される。」(段落【0001】、【0002】第2頁第1欄第21行〜第27行)
(ロ)「表示パネル面上に被着した透明抵抗膜部の表面に押圧を加えることにより、その位置データがコンピュータに入力される抵抗膜感圧方式入力パネルに用い、押力を付勢してペン先3をペン本体1の先端部2に挿通支持させた入力ペン4であって、先端部2の先端21を過度の押圧にて変形する弾力性部材にて成形した、本発明の入力ペン4により達成される。」(段落【0008】第2頁第2欄第24行〜第30行、図1参照)
(ハ)「即ち、過度な押力を加えるとペン先3は先端部2内に退いてしまい、先端部2の先端21がパネルに押し当たるが、この際先端21は軟らかい弾力性部材(例えば軟らかい合成ゴム)にて成形してあるので、弾力変形して押力を吸収すると同時に、パネルの当たり面積も大きくなり押圧が分散低下して損傷させることは無くなる。
【0010】更に、ペン先3の付勢押力の押力可変手段5を備えれば、適正範囲内にて好みの筆圧に調整して使用できるので、使い勝手が良くなる。又、片手でのみ取り扱う場合には、両端にペン先3を備えた入力ペン4を用いれば、置き方の向きを自由にしても、使い勝手に影響しないで済む。」(段落【0009】、【0010】第2頁第2欄第42行〜第3頁第3欄第3行)
(ニ)「ペン本体1は、2個の外径が異なる樹脂製円管の本体半体11,12とを中央部で中継固着して成形し、両端部にはペン先3を挿通支持する先端部2が螺入固定され、管内にはペン先3に押力を付勢する圧縮コイルばね15が装着され、中央部には付勢押力の押力可変手段が夫々のペン先3に対応して設けてある。・・・(中略)・・・ペン先3は、中央部を太く6mmφ、両側を2mmφとして軸に垂直に段差を設けたナイロン樹脂成型で、両側先端は30度に尖らせ0.2mmの半径に丸めてペン先としている。」(段落【0015】〜【0017】第3頁第3欄第24行〜第47行、図1参照)

以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認められる。
「抵抗膜感圧方式入力パネルに用いる入力ペンにおいて、本体半体11の円管先端にナイロン樹脂製でかつコイルばね15により長手方向前方に付勢されたペン先3を設け、更に本体半体12の先端にもペン先3を設け、前記ペン先3の先端は30度に尖らせ0.2mmに半径に丸めた、両端にペン先3を備えた入力ペン。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-12172号公報(以下、「引用例2」という。)には、次のとおりの記載がある。
(イ)「【0030】図8は、本発明の第3実施例に係る情報処理装置の斜視図であり、同図中、100はタッチパネル4に接触させて情報を入力するための入力用ペンである。この入力用ペン100の両端は、タッチパネル4に接触する接触部100a,100bとなっており、これら接触部100a,100bの形状は互いに曲率が異なる球面となっている。そして、オペレータは入力の目的に応じて入力用ペン100の両端の接触部100a,100bを使い分けるものである。例えば、入力用ペン100の一端側の曲率の小さい接触部100aを線描画のための入力用として、他端側の曲率の大きい接触部100bは描画線の消去の入力用として用いる。この入力用ペン100は、消しゴム付きの鉛筆を模したものであり、入力用ペン100の両端の接触部100a,100bの使い分けが行い易い。」(段落【0030】第4頁第6欄第2行〜第7行、図8参照)
(ロ)「【0032】図9は、図8に示す入力用ペン100の接触部100a,100bがタッチパネル4に接触した時の状態を示す図である。同図の個々の小さな丸4a1がタッチパネル4における接触状態を検出する検出単位素子である。入力用ペン100の一端側の曲率の小さい接触部100aで入力した場合、図9(A)に示す黒丸4b1の部分の検出単位素子が接触するのに対し、他端側の曲率の大きい接触部100bで入力した場合、図9(B)に示すようにより多くの黒丸4c1の部分の検出単位素子が接触する。」(段落【0032】第4頁第6欄第24行〜第33行、図9参照)
(ハ)「【0035】本実施例では、入力用ペン100の両端の接触部100a,100bを設けて使い分けるようにしたが、一端側のみに接触部を有する2本の入力ペンを用いたり、入力用ペンの一端に接触部付のキャップを付け替えできるようにしたものであってもよい。更に、入力用ペン100と同様に両端に接触部を有する入力ペンを2本以上使用するようにしてもよい。
【0036】また、絵の入力の描画モードと消去モードについて説明したが、他の入力モードの切り換え、例えば手書き文字入力の切り換えにも利用できる。」(段落【0035】、【0036】第5頁第7欄第5行〜第26行)
(ニ)「【0053】図17は、本発明の第6実施例に係る入力用ペンの断面図であり、該入力用ペン400は、タッチパネル4との接触部の形状を変化させる機構を有するものである。即ち、入力用ペン400はペン本体401の中心孔401a内に棒状のスライド体402をスライド自在に嵌挿したものである。そして、スライド体402の先端部402aをペン本体401の先端部401bから突出した状態にした場合(図17(A))は、このスライド体402の先端部402aがタッチパネル4に接触する。また、スライド体402の先端部402aがペン本体401の先端部401bから突出しない状態にした場合(図17(B))は、該ペン本体401の先端部401bがタッチパネル4に接触する。これらのペン本体401の先端部401bと、スライド体402の先端部402bは、互いに曲率が異なる球面形状となっているので、上述した第3実施例と同様に、タッチパネル4に対する接触面積を判別することにより、いずれの部分で入力したのかが判別できる。」(段落【0053】第6頁第9欄第34行〜第10欄第1行)

3.(対 比)
そこで、本願発明と上記引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「抵抗膜感圧方式入力パネル」、「入力ペン4」、「円管」、「ナイロン樹脂」、「コイルばね15」、「ペン先3」及び「先端は30度に尖らせ0.2mmに半径を丸め」は、それぞれ本願発明の「感圧式手書き入力装置」、「入力ペン」、「軸筒」、「合成樹脂」、「スプリング」、「入力部材」及び「尖端形状を曲面に形成」に相当するものである。
したがって、両者は、
「感圧式手書き入力装置に用いる入力ペンにおいて、軸筒の前端に合成樹脂製でかつスプリングにより長手方向前方に付勢された入力部材を設け、更に軸筒の後端に入力部材を設け、入力部材の尖端形状を曲面に形成した入力ペン。」で一致するものであり、次の点で相違している。
相違点:
(1)本願発明は、前入力部材で硬いパネルに入力したり細かい文字等を入力し、後入力部材で軟らかいパネルに入力したりポインティング入力を行うようにしたのに対し、引用例1記載の発明においては、そのような使い分けがなされていない点。
(2)本願発明では、後入力部材がゴム等の軟質弾性物質からなり、しかも、前入力部材の尖端部形状を後入力部材の尖端形状に比べて曲率半径を小さくしたのに対し、引用例1記載の発明では、入力部材はどちらも合成樹脂製で尖端形状の曲率半径は同じである点。

4.(当審の判断)
そこで、上記相違点について検討する。

相違点(1)について
上記引用例2には、入力の目的に応じて入力用ペン100を使い分けるための構成として、入力用ペン100の両端部に尖端部の曲率半径の異なる接触部100a,100bを設け、曲率の小さい接触部100aを線描画のための入力用として用いることが示されている。
そして、入力ペンにおいて、文字や図形等を入力する場合と、選択項目等を指示するためポインティング入力する場合とでペン先(入力部材)を使い分けることは周知(特開平8-137600号公報参照)であり、本願明細書の【従来の技術】にも「従来は、細かい文字等の入力を行う場合には、合成樹脂製でかつ曲率半径の小さな尖端形状の入力ペンを使用し、大きな文字やポインティング入力を行う場合には軟質弾性物質でかつ曲率半径の大きな尖端形状の入力ペンを使用していた。」(段落【0053】)と記載されている。
そうすると、引用例1記載の発明において、両端のペン先3のどちらか一方を、ポインティング入力に用いるように使い分けるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点(2)について
ポインティング入力用のペン先3をゴム系の材質で作成すること、及び、入力面との接触面積を大きくすることにより、入力時の衝撃を和らげることは周知(特開平8-137600号公報参照)であり、パネルに入力ペンで圧力を加えるときに、パネルが傷つけられるのを防ぐために入力部材を弾性体により形成することも周知(特開平7-306743号公報(段落【0004】の記載)、特開平7-329488号公報(段落【0010】の記載)参照)である。
さらに、入力ペンの先端の曲率半径を、どこを押しているのかが正確にわかり、且つ、パネルを引っ掻いて傷つけるものにならないように最適にすることも周知(特開平6-60765号公報(段落【0031】の記載)参照)である。
上記相違点(1)の検討で述べたことに加え、上記周知技術に照らせば、引用例1記載の発明において、両側に設けられた入力部材の内のどちらかをゴム等の軟質弾性物質で形成し、かつ、尖端部を曲率半径の大きい曲面とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

また、上記の相違点に基づく本願発明の作用効果も当業者であれば予想できる範囲内のものである。

5.(むすび)
したがって、本願請求項1に係る発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-20 
結審通知日 2005-07-26 
審決日 2005-08-15 
出願番号 特願平9-152897
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史石田 信行  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 和田 志郎
治田 義孝
発明の名称 入力ペン  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ