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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1125103
審判番号 不服2002-10634  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-13 
確定日 2005-10-20 
事件の表示 平成 6年特許願第127129号「画像処理装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月28日出願公開、特開平 7-311569〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月18日に出願されたものであって、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成13年12月25日付け手続補正書、平成14年7月10日付け手続補正書及び平成17年7月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。

【本願発明】「複数種類の,記憶媒体または画像信号発生源から与えられる画像信号をそれぞれ所定形式の画像データに変換する画像信号処理手段,
上記画像信号処理手段から出力される画像データを,与えられる縮小率にしたがって,縮小画像を表わす縮小画像データに変換する画像縮小手段,
少なくとも一画面分の画像データを記憶できる画像メモリ,
マルチ画面を構成する複数の分割区画を規定する枠を表示画面に表示し,枠によって規定される複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画の選択を,画面表示された分割区画を利用して受付ける区画選択手段,
上記区画選択手段によって選択されたマルチ画面を構成する分割区画に表示すべき画像について,複数種類の記憶媒体または画像信号発生源のいずれかを選択する選択手段,
上記選択手段によって選択された記憶媒体または画像信号発生源の複数駒の画像データのうち所望のものを指定する指定手段,
上記区画選択手段によって選択された区画に上記指定手段により指定された所望の画像データにより表わされる画像を表示するように,上記選択手段によって選択された記憶媒体または画像信号発生源から与えられかつ上記画像信号処理手段によって変換された画像データ,または上記画像縮小手段によって縮小された縮小画像データをマルチ画面を構成できる配置で上記画像メモリに格納するマルチ画面構成手段,および
上記画像メモリに記憶された画像データを表示に適した画像信号に変換して出力する画像信号出力手段,
を備えた画像処理装置。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成17年5月16日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願出願前の平成5年6月11日に頒布された特開平5-145884号公報(以下、「引用刊行物A」という。)、同じく、本願の出願前の平成4年3月23日に頒布された特開平4-88477号公報(以下、「引用刊行物B」という。)、同じく、本願の出願前の平成5年8月13日に頒布された特開平5-207469号公報(以下、「引用刊行物C」という。)、同じく、本願の出願前の平成2年3月22日に頒布された特開平2-81582号公報(以下、「引用刊行物D」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とういうものである。

3.引用刊行物記載の発明
上記引用刊行物Aには、
(A-1)「【産業上の利用分野】本発明は、画像データ特に静止画像データを光ディスクに記録するファイリング方法およびその装置に関するものである。」(段落番号【0001】)こと、
(A-2)「本発明は・・・より効率の高い画像データの記録保存と、保存された画像のより高い検索および操作性とが可能な新たな画像ファイリング方法およびその装置の提供を目的とする。」(段落番号【0006】)こと、
(A-3)「図1を参照すると、実施例のファイリング処理装置10は、たとえばハイビジョンカメラ20および画像データ伸長装置30などの画像データ源から得られる画像信号を処理してCDライタ50によりコンパクトディスク(CD) 52 に記録保存する画像データファイリング装置である。・・・ファイリング処理装置10におけるファイリング処理は、たとえば、ハイビジョンカメラ20から入力されるアナログ画像信号を対応するディジタル画像データに変換するアナログ/ディジタル変換、色補正および階調補正、画像データの圧縮符号化、ならびにコンパクトディスク規格の記録フォーマットへの変換処理などの処理を含む。このファイリング処理はさらに、本実施例の重要な特徴のひとつとして、後述する複数画像の単一画面への合成も行なう。・・・画像データ伸長装置30は、たとえばディジタル電子スチルカメラ(図示せず)によりメモリカード32などの記憶媒体に記憶された静止画像データをこれから読み出して復号伸長し、結果の画像データをファイリング処理装置10へ出力する機能を有する装置である。本実施例では、画像データ伸長装置30でメモリカード32から得られる画像データは、図2にソース画像 130として示されているように、電子スチルカメラの標準規格、すなわちNTSCなどの標準規格テレビジョン画像と同じ画像サイズ、すなわち 488×640 の画素数である。またハイビジョンカメラ20からは、同図にソース画像 120として示されているように、画素数 960×1280の画像データが得られる。これらのソース画像130 および120 の画像データは、本実施例ではRGB 方式で各画素を8ビット階調で表わす。・・・ファイリング処理装置10は、ファイリング処理機能を実行するためフロッピーディスク(FD)12、ハードディスク(HD)14、一時記憶メモリ16、ならびにCRT などのモニタ表示器、ならびにキーボードおよび(または)マウスを有する表示操作装置40を擁している。」(段落番号【0010】〜【0013】)こと、
(A-4)「本実施例では、コンパクトディスク52・・・・に記録される画像データは、前述の規格サイズ、すなわち2048×3072画素で1画面200 (図2)を構成するフォーマットに収容される。この画像サイズは、ある種の高解像度フィルムスキャナ(図示せず)から得られる画像 110(図2)の画像サイズと同一である。本実施例の装置は、ハイビジョンカメラ20およびメモリカード32から得られる画像データの表わす規格サイズ以外の画像サイズの画像をこの規格サイズのフォーマットでコンパクトディスク52に記録するものである。・・・本実施例では、これらの規格サイズ以外のサイズの画像は、規格サイズの画面領域200 (図2)に複数配置して、いわゆるマルチ画面を作成し、このマルチ画面を表わす画像データを規格サイズの画像としてコンパクトディスク52に記録する。ファイリング処理装置10は、このような複数画像の単一画面への合成処理124(図2)も行なう。」(段落番号【0014】)こと、
(A-5)「動作状態において、たとえばメモリカード32を画像データ伸長装置30に装填し、メモリカード32から所望の画像データを読み出す指示を表示操作装置40に入力すると、画像データ伸長装置30はこれに応動して、カード32に記録されている1コマの画像130 の画像データを読み出し、この画像データはファイリング処理装置10に入力されて一旦一時記憶メモリ16に蓄積される。処理装置10はまた、一時記憶メモリ16上の画像データの表わす画像を表示操作装置40の表示スクリーンに表示する。操作者は、この画像を見ながら表示操作装置40のキーボードまたはマウスを操作して、様々な画像処理の指示を入力することができる。ファイリング処理装置10は、これに応動してメモリ16上の画像データに、色および濃度補正等の画像処理を行ない、画像処理済の画像データをハードディスク14の作業領域に格納する。こうして処理装置10は、メモリカード32に蓄積されている複数の画像130 の画像データのそれぞれについて、カード32から読み出しては画像処理を施し、ハードディスク14にこれを蓄積する操作を行なう。ハイビジョンカメラ20から得られる画像データについても同様にして、画像処理を施してハードディスク14にこれを蓄積することができる。・・・ファイリング処理装置10は、ハードディスク 14 に電子スチルカメラフォーマットのソース画像130 の画像データが16枚分を完成したことに応動してそれらの画像データをハードディスク14から順次読み出し、一時記憶メモリ16における規格サイズの画像 200の記憶領域にこれを一時蓄積する。その際、図3に示すように、2048×3072画素の規格サイズの記憶領域に 488×640 の画素のソース画像 130を順次配列して、いわゆるマルチ画面を作成する。この例では、ソース画像130が♯1から♯16 の順に規格サイズ画面 200の水平および垂直方向に順番に配列され、マルチ画面200Bが完成する。このマルチ画面200Bは表示操作装置40の表示スクリーンに表示される。操作者は、操作表示装置40を操作してソース画像130 の選択や順序の入替えなどの編集を行なう。ハイビジョンカメラ20から得られるソース画像 120の場合は、図4に示すように、規格サイズ画面 200の水平および垂直方向にそれぞれ2画面ずつ、4画面で1つのマルチ画面200Cが構成される。操作者は、表示操作装置40にて編集終了を指示すると、ファイリング処理装置10はこれに応動して一時記憶メモリ16内の画像データ130 を指定された順に並び変え、編集された更新画像200Bが表示操作装置40のスクリーンに表示される。」(段落番号【0015】、【0016】)こと、
(A-6)「規格サイズのマルチ画像 200に組み込まれる画像数は、電子スチルカメラ規格のソース画像130 の場合2以上16以下、またハイビジョン規格のソース画像130の場合2以上4以下である。・・・必ずしも1枚の規格サイズの画像に含まれるソース画像がすべて同一サイズに限られることはなく、例えばソース画像120 が2枚、ソース画像130 が8枚というように編集してもよい。」(段落番号【0018】)こと、
(A-7)「マルチ画像200Bおよび200Cに含まれる各ソース画像 130および 120の境界には、画像の枠付け122 (図2)を行なってもよい。この画像の枠付け122 は、規格サイズの画像 200の領域に対するソース画像 130または 120の画像の余白140 (図3および図4)を利用してファイリング処理装置10によって行なわれる。規格サイズの画像領域の1面を収納可能最大画像数、4または16で等分割すると、1区画のサイズはそれぞれ、1024×1536画素または 512×768 画素となる。これらのサイズを対応するソース画像120 または130 のサイズと比較すると、ソース画像の方が小さい。この余白140 はそのまま残しておいてもよいが、画像の枠付けに活用するのが有利である。」(段落番号【0020】)こと、
(A-8)「【発明の効果】このように本発明によれば、・・・再生の際、画素数の少ないソース画像は1画面に複数取り込まれて画面上に表示されるため、複数の画像の一括した視認、検索が容易となる。」(段落番号【0020】)ことが記載されている。
上記(A-1)〜(A-8)を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「伸長装置30を介したメモリカード32およびハイビジョンカメラ20からの異なる規格サイズの各画像データ出力を入力するファイリング処理装置10を備え、ファイリング処理装置10はCRTなどのモニタ表示器、キーボード、マウスを有する表示操作装置40の指示によりメモリカード30およびハイビジョンカメラ20からの異なる規格サイズの各画像データを読み出して一時記憶メモリ16における規格サイズの画像200の記憶領域に境界に枠付けが行われたソース画像を蓄積して表示操作装置40のスクリーンにマルチ画面を表示する画像ファイリング装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
また、上記引用刊行物Bには、
(B-1)「産業上の利用分野 本発明は、画像表示画面を分割した領域に画像を表示し、この画像を順次頁めくりして代えてゆく画像表示装置に関する。」(第1頁左下欄第19行〜右下欄第2行)こと、
(B-2)「第1図は・・・入力画像データはフロッピーディスク、ドラム、光ディスクなどの記録媒体10や通信により入力され、復元処理部11で復元処理される。表示画面15を何分割して表示するかを指定することにより各分割領域の大きさが決まるので、分割領域の大きさに対応して復元処理部11で復元処理された画像データを頁ごとに拡大・縮小を行い表示用画像メモリ13に格納する。次に、この表示用画像メモリ13から頁ごとに画像データを読み出し、画像表示部14の分割領域に各頁を順次表示して頁めくり表示を行う。」(第2頁左下欄最終行〜右下欄第11行)ことが記載されている。
さらに、上記引用刊行物Cには、
(C-1)「遠方監視制御装置の監視局を図4に示し、制御局を図5に示している。この遠方監視制御装置は、監視局に備えたn個のカメラ1〜カメラnが切換スイッチ1を介して画像入力メモリ2に接続され、Dチャネル送信制御部3より得られる制御コードによってカメラが指定される。・・・そして指定されたカメラから入力する画像データを、画像入力メモリ2に蓄積し、さらに画像データ処理制御部4で処理した後、・・・制御局へ送信する。制御局は、後述するモニタ上での一括分割表示の分割数(同図には4分割の場合が図示されている)に応じた数の画像メモリ1〜画像メモリ4を備え、・・また、監視局から送信されて来る画像データは、切換スイッチ11を介して接続された画像メモリに蓄積され、画像メモリ1〜画像メモリ4のいずれに格納するかはDチャネル受信制御部12によって指定される。・・・従って、ISDN回線7のDチャネルを使ってカメラの指定と画像メモリの指定を行うことにより、例えばカメラ1の画像データを画像メモリ1に、カメラ2の画像データを画像メモリ2に、カメラ3の画像データを画像メモリ4に、カメラ4の画像データを画像メモリ4に格納させることができる・・・そして各画像メモリ1〜4から各画像データを読出して、画像データ合成処理部13で図3に示すように合成された4分割画面を作成する。この分割画面を画像出力メモリ14に一旦格納し、・・・モニタ画面15に表示する。」(段落番号【0003】〜【0008】)ことが記載されている。
そしてまた、上記引用刊行物Dには、
(D-1)「本発明は記録画像表示装置、特にマルチ画面と全画面の表示を切り換えて表示する記録画像表示装置に関する。」(第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第1行)こと、
(D-2)「第1図には本発明による記録画像表示装置の一実施例が示されている。本装置は外部ファイル10から画像データを読み出すファイル読取部12を有する。外部ファイル10は、例えば追記型光ディスク記録装置が用いられる。・・・ファイル読取部12の出力は信号線102によりスイッチ14の入力端子に接続されている。スイッチ14は・・・信号線102を信号線104または106と選択的に接続する。これにより、ファイル読取部12からの出力を、2個のフレームバッファFB1およびFB2のいずれかに入力させる。・・・フレームバッファFB1およびFB2の出力は、それぞれ信号線110および108を通してスイッチ20の入力端子に送られる。スイッチ20は・・・信号線108または110を選択して信号線112に接続する。これにより、フレームバッファFB1およびFB2からの出力のいずれかが選択され、信号線112を通してディジタル・アナログ変換器22に入力される。・・・この出力に出力されるアナログ信号は、・・・映像モニタ24に供給される。・・・映像モニタ24は・・・CRT等のカラー画像モニタが有利に適用される。」(第2頁右下欄第2行〜第3頁右上欄第18行)ことが記載されている。
(D-3)第2A図の映像モニタ24を参照すると、マルチ画面として1つの画面を複数の分割区画に分け、分割区画それぞれに画像データを表示していることが読みとれる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「メモリカード32」、「ハイビジョンカメラ20」、「一時記憶メモリ16における規格サイズの画像200の記憶領域」、「画像ファイリング装置」がそれぞれ本願発明の「記録媒体」、「画像信号発生源」、「少なくとも一画面分の画像データを記憶できる画像メモリ」、「画像処理装置」に相当する。 また、引用刊行物Aの上記(A-2)に「ファイリング処理装置10におけるファイリング処理は、たとえば、ハイビジョンカメラ20から入力されるアナログ画像信号を対応するディジタル画像データに変換するアナログ/ディジタル変換、色補正および階調補正、画像データの圧縮符号化、ならびにコンパクトディスク規格の記録フォーマットへの変換処理などの処理を含む。」ことが記載されており、この処理は本願発明の「画像信号をそれぞれ所定形式の画像データに変換する画像信号処理手段」に相当するものである。
さらに、引用刊行物Aの上記(A-4)、(A-6)を参照すると、メモリカード32からの電子スチルカメラ規格のソース画像130を8枚、ハイビジョンカメラ20からのハイビジョン規格のソース画像120を2枚それぞれ選択して規格サイズのマルチ画像200の記録領域に組み込んで編集し、マルチ画面を作成してもよいことが記載されており、引用発明と本願発明とは、ともに「マルチ画面を構成する分割区画に表示すべき画像について,記憶媒体または画像信号発生源のいずれかを選択する選択手段」を有するものである。
そして、引用刊行物Aの上記(A-5)には、「たとえばメモリカード32を画像データ伸長装置30に装填し、メモリカード32から所望の画像データを読み出す指示を表示操作装置40に入力すると、画像データ伸長装置30はこれに応動して、カード32に記録されている1コマの画像130 の画像データを読み出し、この画像データはファイリング処理装置10に入力されて一旦一時記憶メモリ16に蓄積される。」ことが記載されているから、引用発明においても本願発明の「選択手段によって選択された記憶媒体または画像信号発生源の複数駒の画像データのうち所望のものを指定する指定手段」を有するものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「記憶媒体または画像信号発生源から与えられる画像信号をそれぞれ所定形式の画像データに変換する画像信号処理手段,
少なくとも一画面分の画像データを記憶できる画像メモリ,
マルチ画面を構成する分割区画に表示すべき画像について,記憶媒体または画像信号発生源のいずれかを選択する選択手段,
上記選択手段によって選択された記憶媒体または画像信号発生源の複数駒の画像データのうち所望のものを指定する指定手段,
上記指定手段により指定された所望の画像データにより表わされる画像を表示するように,上記選択手段によって選択された記憶媒体または画像信号発生源から与えられかつ上記画像信号処理手段によって変換された画像データをマルチ画面を構成できる配置で上記画像メモリに格納するマルチ画面構成手段
を備えた画像処理装置。」である点で一致し、次の相違点(イ)〜(ニ)で相違している。
・相違点(イ)
画像信号処理手段が記憶媒体または画像信号発生源から与えられる画像信号をそれぞれ所定形式の画像データに変換する際に、本願発明では「複数種類」の記録媒体または画像信号発生源の画像信号をそれぞれ所定形式の画像データに変換するのに対して、引用発明ではそのような構成がない点。

・相違点(ロ)
本願発明では「画像信号処理手段から出力される画像データを,与えられる縮小率にしたがって,縮小画像を表わす縮小画像データに変換する画像縮小手段」を設け、「画像縮小手段によって縮小された縮小画像データ」からもマルチ画面を構成しているのに対して、引用発明ではそのような「画像縮小手段」がない点。

・相違点(ハ)
本願発明では「マルチ画面を構成する複数の分割区画を規定する枠を表示画面に表示し,枠によって規定される複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画の選択を,画面表示された分割区画を利用して受付ける区画選択手段」を有するのに対して、引用発明では「マルチ画面を構成する複数の分割区画を規定する枠を表示画面に表示」しているものの、「枠によって規定される複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画の選択を,画面表示された分割区画を利用して受付ける区画選択手段」がない点。

・相違点(ニ)
画像メモリに記憶された画像データを出力する際に、本願発明では「表示に適した画像信号に変換して出力する画像信号出力手段」を設けているのに対して、引用発明ではそのような「画像信号出力手段」がない点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点(イ)〜(ニ)について判断する。
・相違点(イ)について
引用発明では記録媒体としてのメモリカード32からの画像データと画像信号発生源としてのハイビジョンカメラ20からの画像データとの2つの異なる種類の画像データを所定の形式の画像データに変換してマルチ画面上に表示しているが、上記引用刊行物Aの上記(A-4)には、メモリカード32、ハイビジョンカメラ20の異なる種類の画像データのほかに、ハイビジョンカメラ20と同じく画像信号発生源であるが、異なる種類の画像データである高解像度フィルムスキャナからの画像110を共通の規格サイズの画像200の記憶領域に蓄積することが記載されており、さらに、上記引用刊行物Bの上記(B-2)には画像信号発生源としての通信により入力される画像データのほかにフロッピーディスク、ドラム、光ディスクなどの異なる複数種類の記録媒体10から入力される画像データを共通の復元処理部で処理し、分割した共通の分割領域表示画面、即ち、マルチ画面に表示することが記載されていることから、記録媒体または画像信号発生源を必要に応じて複数種類設ける程度のことは当業者が適宜なし得るものである。

・相違点(ロ)について
引用発明ではメモリカード32、ハイビジョンカメラ20からの異なるサイズの画像データを縮小しないで入力される画像データのサイズのままで一時記憶メモリ16に格納してマルチ画面を構成しているが、上記引用刊行物Bの上記(B-2)には、何分割して表示するかを指定されて決定されるマルチ画面を構成する分割領域の大きさに対応してフロッピーディスク、ドラム、光ディスク、通信などの異なる種類の入力画像データを拡大・縮小して表示用画像メモリに格納することが記載されており、引用発明のマルチ画面も、上記引用刊行物Bのマルチ画面もともに異なる種類の画像データをメモリに格納してマルチ画面表示するものであることから、引用発明においても、メモリカード32、ハイビジョンカメラ20からの画像データを何分割して表示するかを指定されて決定されるマルチ画面を構成する分割領域の大きさに応じて画像データを縮小すること、即ち、分割区画の大きさによって与えられる縮小率にしたがって、縮小画像を表わす縮小画像データに変換することは当業者であれば容易になし得るものである。

・相違点(ハ)について
上記引用刊行物Cの上記(C-1)の「ISDN回線7のDチャネルを使ってカメラの指定と画像メモリの指定を行うことにより、例えばカメラ1の画像データを画像メモリ1に、カメラ2の画像データを画像メモリ2に、カメラ3の画像データを画像メモリ4に、カメラ4の画像データを画像メモリ4に格納させることができる。・・・そして各画像メモリ1〜4から各画像データを読出して、画像データ合成処理部13で図3に示すように合成された4分割画面を作成する。この分割画面を画像出力メモリ14に一旦格納し、・・・モニタ画面15に表示する。」の記載を参照すれば、上記引用刊行物Cには、マルチ画面の各分割画面に対応した画像メモリとカメラをそれぞれ指定してマルチ画面を構成することが記載され、このマルチ画面の各分割画面に対応した画像メモリをそれぞれ指定することはマルチ画面を構成する複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画を選択することを意味することから、上記引用刊行物Cにはマルチ画面を構成する「複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画を選択する区画選択手段」を設けることが記載されている。
そして、引用発明のマルチ画面も引用刊行物Cのマルチ画面もともに複数種類の画像データをマルチ画面に表示する点で共通するものであることから、引用発明においても「複数の分割区画を規定する枠を表示画面に表示」するマルチ画面において、「枠によつて規定される複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画を選択する区画選択手段」を設けることは当業者が容易になし得るものである。
さらに、マルチ画面の分割区画された区画を選択する際に、枠やカーソルにより分割区画された区画を指定して区画を選択すること、即ち、画面表示された分割区画を利用して区画を選択することは周知である(例えば、特開平4-295685号公報の段落番号【0036】の「インデックスマルチ画面を見て再生したいところがあるとき、コントロールパネル40の縮小画面選択ボタン44を操作すると、選択した縮小画面の枠の色が変化するような機能をもたせることにより、指定した枠を移動させることにより希望の画面を選択することも可能となる。」の記載、特開平5-145852号公報の段落番号【0004】の「このマルチ画面選択方式における画面選択方法としては、キャラクタ発生回路を用いてマルチ画面上にカーソルを表示し、そのカーソルをマウスまたはカーソル移動キー等を用いて移動させ、選択したい画像上にカーソルを位置させて選択実行の指令を与えることで、その画面を選択し、本来の画面サイズで表示すると云うものがある。」の記載、特開平6-8537号公報の段落番号【0040】の「さて、図9Aに示す画面の状態において、カーソルボタン45〜48を操作することによりカーソル51を所望の画像の位置に移動させ、選択ボタン43を押すことによって、マルチプリントを行う画像と、その位置を設定することができる。例えばいま、画像1、画像3、画像7、画像6の順序に4つの画像を選択したとすると、モニタ24には図9Bに示すように選択された画像の領域内に選択された順序を示す数値が表示される。そして、図9Bに示す状態で実行ボタン44が押されると、制御装置21はどの画像がどのように配置されるのかを認識してグルーピング情報を作成し、図4Bに示すようにメモリカード29の画像情報の関連情報の領域に書き込む。」の記載参照)から、マルチ画面を構成する複数の分割区画のうち画像を表示することを希望する区画を選択する際に、画面表示された分割区画を利用することは当業者が必要に応じて採用する程度の技術事項であって格別のものではない。

・相違点(ニ)について
引用発明では表示に適した画像信号に変換して出力する画像信号出力手段を設けることは記載されていないが、上記引用刊行物Dの上記(D-1)、(D-2)には複数の画像データを同一画面にマルチ表示する際に、「フレームバッファFB1およびFB2の出力のいずれかが選択され、信号線112を通してディジタル・アナログ変換器22に入力される。・・・この出力に出力されるアナログ信号は、・・・映像モニタ24に供給される」ことが記載されており、さらに、引用発明も上記引用刊行物Dに記載された発明もともに複数の画像データをマルチ画面上に表示するものであるから、引用発明においても画像メモリに記憶された画像データを出力する際に表示に適した画像信号に変換して出力する画像信号出力手段を設けることは当業者であれば容易になし得るものである。
そして、本願発明によってもたらされる効果は、上記引用発明、引用刊行物B〜Dに記載された発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであり、格別のものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物B〜Dに記載された発明及び周知の技術事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-19 
結審通知日 2005-08-23 
審決日 2005-09-05 
出願番号 特願平6-127129
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 福田 裕司
後藤 時男
発明の名称 画像処理装置および方法  
代理人 牛久 健司  

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