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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1125104
審判番号 不服2002-16850  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-02 
確定日 2005-10-20 
事件の表示 特願2000-172901「X線用マスクのペリクルの構造およびその製造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月30日出願公開、特開2001- 28334〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年6月9日(パリ条約による優先権主張1999年6月18日、米国)の出願であって、平成14年5月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月2日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年9月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「吸収パターン領域を含むX線マスクと、ウエハ上に前記X線によりパターン化されるべきX線レジストとの間隙に膜部材を位置決めし、前記X線マスクを前記X線レジストの汚染から保護するためのX線で使用するペリクル部材であって、
ワッシャ型のスペーサ部材上に、膜部材を組み合わせて有し、
前記スペーサ部材は、
第1および第2のほぼ平行な表面と、
前記吸収パターンを収納するのに十分な寸法を有し、前記スペーサ部材を貫通する中央開口と、
前記間隙とほぼ同じ前記ワッシャ型のスペーサ部材周辺における、前記第1および第2のほぼ平行な表面間の第1の厚み寸法と、
前記中央開口の縁部における、前記第1および第2のほぼ平行な表面間の第2の厚み寸法とを有し、
前記膜部材は約1μmの厚さを有し、前記スペーサ部材の前記第2のほぼ平行な表面の領域全体に密接に接触し、取り付けられている、ペリクル部材。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるX線マスクと膜部材の間隙を「X線マスクと、ウエハ上に前記X線によりパターン化されるべきX線レジストとの間隙」と限定し、また、ペリクル部材を「X線で使用するペリクル部材」と限定し、さらに、膜部材の厚さを「膜部材は約1μmの厚さ」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2)-1 引用例の記載内容
原審の拒絶の理由で引用した特開平9-68793号公報(以下、引用例1という。)の【0002】及び【0003】段落には、
「【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
LSI、超LSI等の半導体装置あるいは液晶表示板等の製造において、半導体ウェハーあるいは液晶表示板に露光原版(マスク又はレチクル)を通して光を照射することによってパターニングを形成することが行われる。この場合、露光原版にゴミが付着していると、ゴミが光を吸収したり曲げてしまうため、パターニングの変形、エッジのがさつき、基板の汚れ等が生じ、寸法、品質、外観等が損なわれるという問題がある。このため、上述のようなパターン形成作業は、クリーンルームで行われているが、クリーンルーム内でも露光原版を常に清浄に保つことは難しい。そこで、露光原版表面へのゴミの付着を避け、露光光線を良く透過させるペリクルを露光原版に貼着する方法が一般に採用されている。
【0003】
即ち、ペリクルは、ペリクルフレームの一端面にペリクル膜を張設したものであるが、このように露光原版にペリクルを貼着し、保護しておけば、ゴミは露光原版の表面には直接付着せず、ペリクル膜上に付着する。」
と記載されている。
また、【0012】及び【0013】段落には、
「【0012】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1〜4は本発明の実施例に係るペリクル1を示すもので、このペリクル1は、金属などにより形成された四角枠状のペリクルフレーム2の上端面にペリクル膜3が張設されていると共に、下端面に露光原版と貼着するための粘着剤層4が形成され、この粘着剤層4上に剥離フィルム5が剥離可能に積層されて…いるものである。
【0013】
ここで、ペリクルフレーム2、ペリクル膜3の材質に特に制限はなく、公知のものを使用し得、またペリクル膜3は公知の接着剤を用いてペリクルフレームに接着される。…」
と記載されている。
また、【0014】及び【0015】段落には、
「【0014】
而して、本発明のペリクルにおいては、上記ペリクルフレームの内周面をその下端側より上端側が内方に(即ちペリクルの中心部側に)突出するように形成したものである。…図3及び4のペリクルにおいては、ペリクルフレームの下端から高さ方向ほぼ中央部にかけて、その内周面が上方に向うに従い漸次内方に突出するテーパ面として形成され、高さ方向ほぼ中央部から上端にかけては、その内周面が垂直面として形成されたものである。なお、図3はそのテーパ面が平面に、図4はそのテーパ面が曲面として形成されている。
【0015】
このように、ペリクルフレームの内周面は、その下端側より上端側が内方に突出した状態にあれば、その態様は特に制限されず、上述したように、平面状テーパ面でも曲面状テーパ面でもよく、これらを組み合わせた形状でも、垂直面が一部形成されていてもよい…。」
と記載されている。
また、【0017】段落には、
「【0017】
上記ペリクルは、その剥離フィルム5を剥離除去し、フレーム2の下端面に形成された粘着剤層4を露光原版に粘着して使用するものであるが、この場合、露光光線をペリクル膜3を通して、露光原版に照射…。」
と記載されている。
また、【0024】段落には、
「【0024】

【図面の簡単な説明】

【図3】
本発明の第3実施例を示す断面図である。
【図4】
本発明の第4実施例を示す断面図である。

【図6】
本発明の第6実施例を示す部分断面図である。」
と記載されている。
引用例1記載の図3ないし図6

【図3】



【図4】



【図5】



【図6】



(2)-2 引用例1に記載された発明
上記記載事項及び図面も参照すると、引用例1には、ペリクルフレームの上端面にペリクル膜が張設されているペリクルであって、当該ペリクルは、ゴミを露光原版の表面に付着させないためのものであり、
ペリクルフレームの下端は露光原版に粘着されており、ペリクル膜、露光原版及び半導体ウェハーがこの順で配置され、
ペリクルフレームの下端から高さ方向ほぼ中央部にかけて、その内周面が上方に向うに従い漸次内方に突出するテーパ面として形成され、高さ方向ほぼ中央部から上端にかけては、その内周面が垂直面として形成されたものであるペリクルが記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1に記載された発明とを比較する。
一致点
引用例1に記載された発明の、「露光原版」、「半導体ウェハー」、「ペリクル膜」、「ペリクル」、「ペリクルフレーム」及び「下端面および上端面」は、それぞれ、本願補正発明の、「吸収パターン領域を含むマスク」、「ウエハ」、「膜部材」、「ペリクル部材」、「スペーサ部材」及び「第1および第2のほぼ平行な表面」に相当する。
また、引用例1に記載された発明の「ゴミを露光原版の表面に付着させない」ことは、本願補正発明の「マスクを汚染から保護する」ことに相当する。
さらに、引用例1に記載された発明の「ペリクルフレーム」は、「フレーム」即ち「枠」であるから当然、中央開口を有している。
また、当該「ペリクルフレーム」が、露光原版より小さい寸法であると露光時にウエハに対してペリクルフレームが投影されてしまい、ペリクルフレームとして不適切であるから、引用例1に記載されたペリクルフレームは、吸収パターンを収納するのに十分な寸法を有していることは明らかである。
また、引用例1に記載された発明の「ペリクル」は、ペリクルフレームの上端面にペリクル膜が張設されている構成であるから、引用例1に記載された発明の「ペリクル」は、本願補正発明の「膜部材は、スペーサ部材の第2のほぼ平行な表面の領域全体に密接に接触し、取り付けられている」構成を有している。
また、スペーサ部材について、引用例1にはワッシャ型である旨の記載がないが、引用例1記載の図3及び図4及びその説明並びに本願明細書に特にワッシャ型について説明がないことからみて、引用例1に記載された発明には、ワッシャ型のスペーサ部材が記載されていると認められる。

したがって、両者は、
「吸収パターン領域を含むマスクに膜部材を位置決めし、マスクをレジストの汚染から保護するためのペリクル部材であって、
ワッシャ型のスペーサ部材上に、膜部材を組み合わせて有し、
前記スペーサ部材は、
第1および第2のほぼ平行な表面と、
前記吸収パターンを収納するのに十分な寸法を有し、前記スペーサ部材を貫通する中央開口と、
前記膜部材は、前記スペーサ部材の前記第2のほぼ平行な表面の領域全体に密接に接触し、取り付けられている、ペリクル部材。」
において一致する。

また、相違点は、以下のとおりである。
・本願補正発明は、吸収パターン領域を含むマスクと、ウエハ上にパターン化されるべきレジストとの間隙に膜部材を位置決めするのに対し、引用例1に記載された発明は、ペリクル膜、露光原版及び半導体ウェハーがこの順で配置される点で相違(以下、「相違点1」という。)する。
・本願補正発明は、X線で使用するペリクル部材であるのに対し、引用例1に記載された発明には、X線で使用する旨の記載がない点で相違(以下、「相違点2」という。)する。
・本願補正発明は、間隙とほぼ同じ前記ワッシャ型のスペーサ部材周辺における、前記第1および第2のほぼ平行な表面間の第1の厚み寸法と、
前記中央開口の縁部における、前記第1および第2のほぼ平行な表面間の第2の厚み寸法とを有するのに対し、引用例1に記載された発明には、その旨の記載がない点で相違(以下、「相違点3」という。)する。
・本願補正発明は、膜部材は約1μmの厚さを有するのに対し、引用例1に記載された発明には、その旨の記載がない点で相違(以下、「相違点4」という。)する。

(4)判断
・相違点1について検討する。
吸収パターン領域を含むマスクと、ウエハ上にパターン化されるべきレジストとの間隙に膜部材を位置決めすることは、X線で使用するマスクにおいては周知手段(例えば、特開平9-306820号公報(特に【0045】段落、図1及び図7)及び特開平10-70066号公報(特に【0007】段落)等参照)にすぎないから、相違点1に係る構成については当業者が容易に想到できたことである。

・相違点2について検討する。
X線露光で、マスクに対しペリクル部材を使用することは、上記特開平9-306820号公報及び特開平10-70066号公報に示されるように周知手段にすぎず、相違点2に係る構成については当業者が容易に想到できたことである。

・相違点3について検討する。
引用例1記載のペリクルフレームは、上端面にペリクル膜を張設するものであり、下端面に露光原版を貼着するから、上端面及び下端面は、ほぼ平行であることは明らかである。
また、引用例1記載のペリクルフレームの断面図である図3、図4及び図6並びに【0015】段落を参照すると、引用例1記載のペリクルフレームにおいても、ほぼ平行な表面間の第1の厚み寸法及び第2の厚み寸法を有している。
さらに、X線露光で、マスクに対しペリクル部材を使用する際に、間隙とほぼ同じワッシャ型のスペーサ部材を用いることは、上記特開平9-306820号公報及び上記特開平10-70066号公報に示されるように周知手段にすぎない。
そうすると、相違点3に係る構成については当業者が容易に想到できたことである。

・相違点4について検討する。
膜部材は約1μmの厚さを有することは、X線で使用するマスクにおいては周知手段(例えば、上記特開平9-306820号公報(特に【0040】段落)及び上記特開平10-70066号公報(特に【0019】段落)等参照)にすぎないから、相違点4に係る構成については当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び周知手段から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び周知手段に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、平成17年1月27日付け審尋回答書において、請求項1及び5に記載された「膜部材」を「無機材料」に減縮する意志がある旨の記載があるが、X線用のペリクルにおいて、膜部材を無機材料とすることは周知手段(例えば、上記特開平9-306820号公報(特に【0040】段落)及び上記特開平10-70066号公報(特に【0019】段落)等参照)にすぎないから、上記請求項を減縮しても、依然として特許性は認められない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年9月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年3月20日付け補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「吸収パターン領域を含むX線マスクから間隙を置いて膜部材を位置決めし、前記X線マスクを汚染から保護するためのペリクル部材であって、
ワッシャ型のスペーサ部材上に、膜部材を組み合わせて有し、
前記スペーサ部材は、
第1および第2のほぼ平行な表面と、
前記吸収パターンを収納するのに十分な寸法を有し、前記スペーサ部材を貫通する中央開口と、
前記間隙とほぼ同じ前記ワッシャ型のスペーサ部材周辺における、前記第1および第2のほぼ平行な表面間の第1の厚み寸法と、
前記中央開口縁部における、前記第1および第2のほぼ平行な表面間の第2の厚み寸法とを有し、
前記膜部材は、前記スペーサ部材の前記第2のほぼ平行な表面の領域全体に密接に接触し、取り付けられている、ペリクル部材。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の限定事項である「X線マスクと、ウエハ上に前記X線によりパターン化されるべきX線レジストとの間隙」、「X線で使用するペリクル部材」及び「膜部材は約1μmの厚さ」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明及び周知手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明及び周知手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び周知手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-18 
結審通知日 2005-05-24 
審決日 2005-06-06 
出願番号 特願2000-172901(P2000-172901)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦芝 哲央南 宏輔  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
前川 慎喜
発明の名称 X線用マスクのペリクルの構造およびその製造  
代理人 上野 剛史  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 坂口 博  

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