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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H02M
管理番号 1125221
審判番号 無効2004-80071  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-03 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-06-08 
確定日 2005-10-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3013776号発明「無停電性スイッチングレギュレータ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3013776号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯・本件発明
本件特許第3013776号の請求項1に係る発明(平成8年3月18日出願、平成11年12月17日設定登録。以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「交流電源からの交流を整流する整流回路と、
この整流回路の出力側に高周波トランスの一次巻線と一次側スイッチング素子とが直列に接続された、高周波トランスに対して高周波パルス電圧を発生させるための一次側回路と、
前記高周波トランスの二次巻線に整流、平滑回路が接続された、負荷に対して直流出力電力を供給する二次側回路と、
高周波トランスの三次巻線の巻き始め極性側と二次電池の正極側を接続し、この二次電池の負極側に定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子とを直列に接続し、これを逆流防止ダイオードのアノード側に直列接続するとともに、二次電池の両極間に充電用定電圧定電流制御回路を設けることによって、前記直列ドロッパー制御用素子の抵抗を変化させて充電中の定電圧定電流制御を行う充電回路と、前記三次巻線の巻き終わり極性側と二次電池の負極の間であって、前記充電回路の充電電流路の外側に設けた、前記一次側スイッチング素子と同期して作動する三次側スイッチング素子と、前記二次電池の負極側から三次側スイッチング素子を通って三次巻線の巻き終わり端へ電流が流れることを阻止するための逆流防止ダイオードとを備え、
前記交流電源の電圧が正常範囲内にある時には、前記三次側スイッチング素子がON状態であっても、前記三次巻線に誘起される電圧が二次電池の電圧よりも大であるため、前記三次巻線の巻き始めから二次電池、定電流検出抵抗、直列ドロッパー制御用素子、逆流防止ダイオードを経由し、三次巻線の巻き終わり端に電流が流れて、該二次電池が充電され、前記交流電源の電圧が低下もしくは停止すると、前記三次巻線に誘起される電圧が二次電池の電圧よりも小になるため、二次電池の正極から三次巻線の巻き始めから巻き終わり方向に向かう電流が前記逆流防止ダイオード、三次側スイッチング素子を通って該二次電池の負極に流れ、負荷に対して出力が供給されることを特徴とする無停電性スイッチングレギュレータ。」

第2.請求人の主張
請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし第4号証を提出し、特許第3013776号を無効とすることを求めており、その無効理由の概略は、次のとおりである。

無効理由1:本件発明は、本件特許出願前に頒布された甲第1号証刊行物ないし甲第4号証刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものである。したがって、請求項1に係る発明の本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するから、無効とすべきである。

無効理由2:本件発明は、特許を受けようとする発明が不明確であるから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。したがって、請求項1に係る発明の本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきである。

第3.被請求人の主張
一方、被請求人は、答弁書において概ね以下のように主張している。
1.本件発明の構成要件の「高周波トランスの三次巻線の巻き始め極性側と二次電池の正極側を接続し、この二次電池の負極側に定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子とを直列に接続し、これを逆流防止ダイオードのアノード側に直列接続するとともに、二次電池の両極間に充電用定電圧定電流制御回路を設けることによって、前記直列ドロッパー制御用素子の抵抗を変化させて充電中の定電圧定電流制御を行う充電回路と、」に相当する構成は、甲第1号証記載の発明は備えていない。また、甲第1号証では二次電池の充電回路がチョークコイルを用いたチョークインプット型整流回路で構成されているため、その充電出力電圧は三次巻線に発生する両端電圧値に対して、スイッチング素子のON-OFFデューティ比以下の電圧値、つまり1/2以下となり二次電池を充電することができず、交流電源の電圧が低下もしくは停止した時に二次電池から負極側へ出力電力を供給する際の出力電圧が大きく低下してしまい、負荷を良好に駆動することができない構成である。そのため、負荷を良好に駆動するためには、三次巻線の中間部にタップを切って2つの巻き線を作らなければならない。このことから、本件発明の構成と甲第1号証の構成とが基本的構成において全く異なるものであることは明確である。
2.本件発明と、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を適用して得られる発明との間に効果における差異はない、旨の請求人の主張は誤りである。甲第1号証の図1の回路に、甲第2号証の図4に示す定電圧定電流充電回路を適用した場合、チョークコイルを設けることから、整流用のダイオード、交流を直流に変換するためのコンデンサ、このコンデンサに並列に接続した抵抗などの多数の部品が必要となるが、本件発明ではそれら部品が全く不要になり、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載の発明を適用しただけでは、本件発明を構成することができないことは明確である。同様に、甲第1号証に甲第3号証又は甲第4号証を組み合わせても本件発明を実現することができない。
3.審査段階での補正により特許請求の範囲に追加された「二次電池の負極側から三次側スイッチング素子を通って三次巻線の巻き終わり端へ電流が流れることを阻止するための逆流防止ダイオード」との構成は、出願当初の明細書の【発明の効果】の欄に記載された「放電時には、前記定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子と逆流防止用ダイオードには電流が流れないようにするものである。」に対応するものである。したがって、本件明細書の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとするする発明が明確であり、特許法第36条第6項に規定する要件を満足している。

第4.甲各号証について
請求人の提示した証拠方法は、以下のとおりである。
1. 甲第1号証:特開平6-205546号公報(平成6年7月22日公開)
(1)甲第1号証には、以下の記載がある。
ア.「【請求項1】 交流電源からの交流を整流する平滑コンデンサを含まない整流回路と、
該整流回路の出力側に高周波トランスの1次巻線と1次側スイッチング素子とを直列に接続し、当該1次側スイッチング素子により1次側高周波パルス電圧を発生させる1次側回路と、
前記高周波トランスの2次巻線に整流,平滑回路を接続し、負荷に直流出力電圧を供給する2次側回路と、
前記高周波トランスの3次巻線に電気二重層コンデンサ又は2次電池とチョークコイルと高周波整流ダイオードとを直列に接続した充電回路と、
前記3次巻線の巻始め端と巻終わり端又はその巻線の中途より引き出されたタップとの間に、前記電気二重層コンデンサ又は2次電池と3次側スイッチング素子とを直列に接続した放電回路と、
前記1次側スイッチング素子及び3次側スイッチング素子に同期したパルス信号を出力してスイッチング動作を行わせるとともに、前期2次側回路の出力電圧の変動に応じて当該パルス信号のパルス幅を変調して1次側高周波パルス電圧のパルス幅を制御するパルス幅変調スイッチング制御回路とを備え、
前記整流回路の出力電圧が所定のレベルを越えれば前記充電回路が動作し、前記所定のレベルより下がれば前記放電回路が動作するようにしたことを特徴とする無停電性スイッチングレギュレータ。
【請求項4】 前記整流回路が平滑コンデンサを含む請求項1から3のいずれかに記載の無停電性スイッチングレギュレータ。」(特許請求の範囲)
イ.「【産業上の利用分野】本発明は、高力率で出力リップルの少ないスイッチング方式直流安定化電源、停電対策を必要とするコンピュータ関連機器の無停電直流安定化電源、あるいは携帯用溶接機や電動工具等のAC入力コードレス電源等に幅広く利用される無停電性スイッチングレギュレータに関するものである。」(段落【0001】)
ウ.「【実施例】次に、本発明の実施例を図面に従って説明する。(1)第1実施例
図1は、シングルフォワード型スイッチングレギュレータを示す概略回路図である。この回路では、図8に示す従来のスイッチングレギュレータの1次側に高周波整流ダイオード5が追加され、また入力側平滑コンデンサ3aが除かれるとともに、新たに3次側回路が設けられた以外は従来の回路と同一の構成であるので、従来の回路と対応する部分には同一符号が付してある。3次側回路は、電気二重層コンデンサ15の充電回路と放電回路とからなる。なお、この電気2重層コンデンサ15に代えて2次電池を用いてもよい。
充電回路は、3次巻線N3と電気二重層コンデンサ15とチョークコイル16と高周波整流ダイオード17とフライホィールダイオード18とからなっている。3次巻線N3は1次巻線N1と同極性に巻回されている。電気二重層コンデンサ15のプラス極は3次巻線N3の巻始め端に接続され、マイナス極は平滑チョーク16及び高周波整流ダイオード17を介して3次巻線N3の巻終わり端に接続されている。フライホィールダイオード18はチョークコイル16と高周波ダイオード17のアノード側との中点と、3次巻線N3の巻始め端との間に設けられている。・・・」(段落【0013】【0014】
エ.「放電回路は、前記3次巻線N3及び電気二重層コンデンサ15と、3次側FET19と、逆流阻止ダイオード20とからなっている。3次側FET19のドレイン端子は逆流阻止ダイオード20を介して3次巻線N3の巻終わり端又はその巻線の中途よりひきだされたタップTに接続され、ソース端子は電気二重層コンデンサ15のマイナス極に接続され、ゲート端子は1次側FET6のゲート端子とともにPWMスイッチング制御回路7の出力端子Dに接続されている。これにより、3次側FET19は1次側FET6と同期して高周波スイッチング動作を行うようになっている。・・・」(段落【0015】)
オ.「以下、この3次側回路の動作を説明する。整流器3の直流出力の脈流電圧のレベルが図2中Aで示すようにスライスレベルSを越えている区間Pでは、1次側FET6がONしている時の1次側回路に流れる電流I1によって、図3に示すように、3次側回路に電圧E1が誘起されて3次巻線N3に図3中実線の矢印で示す方向に電流I3が流れる。この電流I3がチョークコイル16によって平滑された電流I4が電気二重層コンデンサ15を充電する。なお、1次側FET6がONしている時には、これに同期して3次側FET19もONしているが、電流I1によって誘起される電圧E1が電気二重層コンデンサ15の充電電圧E4より高くて電気二重層コンデンサ15が充電中であるため、ドレイン電流は極めて微小で流れないに等しい状態である。したがって、この時の3次側FET19は言わば空動作を行っているにすぎない。この区間Pにおいて、以上のように3次側回路が電気二重層コンデンサ15の充電を行なっている間、1次側回路では整流器3の出力電圧によって2次側に、図2中Cで示すように、出力電圧V0が供給される。」(段落【0019】)
カ.「次に、整流器3の直流出力の脈流電圧のレベルが図2中Aで示すようにスライスレベルSより低い区間Qになると、あるいは停電により整流器3の直流出力が得られなくなると、電気二重層コンデンサ15の充電電圧E4が3次巻線N3の誘起電圧E1よりも相対的に高くなる。このため、充電時に充電回路に流れていた電流I3,I4が停止し、放電回路、すなわち電気二重層コンデンサ15より3次巻線N3の巻始め端から中途タップTまでの巻数N3′の部分を経由して逆流阻止ダイオード20及び3次側FET19に放電電流I5が流れる。これにより、充電時には空動作していた3次側FET19は主動作に切り替わり、高周波スイッチング動作を行う。放電電流I5が巻線N3′部分を流れることにより、2次側の2次巻線N2に電圧が誘起され、負荷14に出力電流I7が流れ、図2中Dに示すように出力電圧V0が供給される。・・・」(段落【0020】)

(2)以上の記載及び図面の記載、並びに技術常識を参酌すると、甲第1号証において以下のことが言える。
ア.図1記載の回路においては、3次側FET19のドレイン端子は逆流阻止ダイオード20を介して3次巻線の中途よりひきだされたタップTに接続されているが、上記(1)エには、「3次側FET19のドレイン端子は逆流阻止ダイオード20を介して3次巻線N3の巻終わり端又はその巻線の中途よりひきだされたタップTに接続され」との記載があり、甲第1号証には、3次巻線N3の巻終わり端よりひきだす回路例も実質的に記載されいる。

(3)以上から、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「交流電源からの交流を整流する整流回路3と、
この整流回路3の出力側に高周波トランス4の一次巻線と一次側FET6とが直列に接続された、高周波トランス4に対して高周波パルス電圧を発生させるための一次側回路と、
前記高周波トランス4の二次巻線に整流、平滑回路が接続された、負荷に対して直流出力電力を供給する二次側回路と、
高周波トランスの三次巻線の巻き始め極性側と電気2重層コンデンサ15の正極側を接続し、この電気2重層コンデンサ15の負極側にチョークコイル16と高周波整流ダイオード17とを直列に接続し、電気2重層コンデンサ15の正極側と、チョークコイル16と高周波整流ダイオード17との接続点とをフライホイールダイオード18を介して接続してなる充電回路と、
前記三次巻線の巻き終わり極性側と電気2重層コンデンサ15の負極の間であって、前記充電回路の充電電流路の外側に設けた、前記一次側FET6と同期して作動する三次側FET19と、前記電気2重層コンデンサ15の負極側から三次側FET19を通って三次巻線の巻き終わり端へ電流が流れることを阻止するための逆流阻止ダイオード20とを備え、
前記交流電源の電圧が正常範囲内にある時には、前記三次側FET19がON状態であっても、前記三次巻線に誘起される電圧が電気2重層コンデンサ15の電圧よりも大であるため、前記三次巻線の巻き始めから電気2重層コンデンサ15、チョークコイル16、高周波整流ダイオード17、三次巻線の巻き終わり端、又はチョークコイル16、フライホイールダイオード18、電気2重層コンデンサ15へと電流が流れて、該電気2重層コンデンサ15が充電され、前記交流電源の電圧が低下もしくは停止すると、前記三次巻線に誘起される電圧が電気2重層コンデンサ15の電圧よりも小になるため、電気2重層コンデンサ15の正極から三次巻線の巻き始めから巻き終わり方向に向かう電流が前記逆流阻止ダイオード20、三次側スイッチング素子を通って該電気2重層コンデンサ15の負極に流れ、負荷に対して出力が供給されることを特徴とする無停電性スイッチングレギュレータ。」(以下「引用発明」という)

2.甲第2号証:米国特許第4644247号明細書(1987年)
(1)甲第2号証には、以下の記載がある。
ア.「技術背景 本発明は、一般にバッテリ・チャージャーに関するもので、特に直列通過バッテリ・チャージャーに関するものである。」〔TECHNICAL FIELD The present invention relates to battery chargers in general, and more particularly to series pass battery chargers.(p1. 5-8)〕
イ.「発明の要約 本発明による安定化直列通過バッテリ・チャージャーは、複数の入力電圧源と、充電対象のバッテリに接続される一対の安定化直流電圧出力端子と、入力電圧源と一対の出力電圧端子に接続されて、直流入力電圧を充電電流と交流入力電源の変動に無関係に動作する直列通過回路、そして、独特の電力消費制御回路から構成される。
電力消費制御回路は、入力電圧源と直流出力電圧間の電圧差を検出し、この電圧差に応じて直列通過制御素子にかかる電圧を制御する。」〔SUMMARY OF THE INVENTION In accordance with the present invention a regulated series pass battery charger is disclosed comprising: a plurality of input voltage sources, a pair of regulated DC voltage output terminals, which are adapted to be connected to the battery to be charged, a series pass circuit which is operatively connected to the input voltage sources and to the pair of output DC voltage terminals, so as to regulate the DC output voltage at a constant value independent of both the charging current and of fluctuations in the input AC voltage sources, and a unique power dissipation control circuit.
The power dissipation control circuit senses the voltage difference between the input voltage source and the DC output voltage so as to control the voltage applied to the series pass control element in response to the aforesaid voltage difference.(p2. 29-46) 〕
ウ.「図4は、一体型ブロック34,三個の抵抗器R4,R5,R6そして二個のコンデンサC1,C2とから構成される調整回路14を示す。調整回路14は、破線で囲まれている。一体型調整器14が、外部直列通過素子T1と接続されて使用されている。一体型素子は、普通、比較的大きな電流を処理できないので、外部直列通過素子T1は、電流容量を増加させるために使用される。直列通過素子T1と並列に直列通過素子を追加接続することにより、電流通過容量が増大する。
図4は、ナショナル・セミコンダクタ(株)のLM105の一体型調整器をブロックとして説明したものである。多くの一体型調整器が市場に存在し、ここで開示した本発明は、現在利用可能な多くの一体型調整器と共に適応可能である。一体型調整器34は、8端子を有していて、その内の一つは使用されない。外部抵抗R4,R5そしてR6とコンデンサC1、C2は、一体型調整器34に接続される。抵抗器R4は、電流検出を行い一体型調整器34に提供し、一体型調整器34においては、この抵抗器の電圧降下が一体型調整器34内のトランジスタのエミッタ-ベース接合部に印加される。抵抗器R5とR6は、出力電圧分割検出器である。コンデンサC2は、一体型調整器34内の誤差アンプの不安定性を補償するものである。コンデンサC1は、発振を抑え、直流出力電圧が高周波の周波数を含む場合、低出力インピーダンスを提供するものである。
この回路の動作は、図1に関する部分のみを説明する。電力消費制御回路12は、直列通過素子T1の電力消費を低減するように機能する。一体型調整器34は、バッテリへの充電電流と入力電源電圧に関係なく、バッテリ端子22と24間の電圧を一定に維持し、充電電流を制限するよう機能する。一体型調整器34は、ツェナー基準電圧源を有し、出力電圧と所定電圧の差を検出する。最後に、この電圧差は、直列通過素子T1を駆動する。
一体型調整器は、1000Vまでの入力電圧で動作する。60アンペア以上の電流を処理できる直列通過素子が使用可能である。一体型調整器34は、本発明を利用できる単なる一実施例に過ぎない。本発明は、外部通過トランジスタを駆動する大部分の一体型調整器に、一般的に適用可能である。」〔FIG. 4 depicts a regulator circuit 14 comprised of a monolithic block 34, three resistors R4, R5, R6, and two capacitors C1 and C2. The regulator 14 circuit is enclosed within dashed lines. The monolithic regulator 14 is used in conjunction with an external series pass element T1. The external series pass element T1 is used to increase the current capacity, since the monolithic elements are generally unable to handle relatively high currents. Additional current carrying capability can be obtained by connecting additional series pass elements in parallel with series pass element T1.
FIG. 4 illustrates the use of a National Semiconductor Corporation LM105 monolithic regulator as block 34. There are numerous monolithic regulators on the market and the invention disclosed herein is adaptable to be used with the many monolithic regulators currently available. Monolithic regulator 34 has eight terminals, one of which is unused. External resistors R4, R5 and R6 and capacitors C1 and C2 are connected to monolithic regulator 34. Resistor R4 provides current sensing to monolithic regulator 34, wherein the voltage drop across it is applied to the emitter-base junction of a transistor within monolithic regulator 34. Resistors R5 and R6 conform the output voltage divider-sensor. Capacitor C2 compensates for the instability of the error amplifier in the monolithic regulator 34. Capacitor C1 suppresses oscillations and provides low output impedance when the DC output voltage contains a high frequency AC.
The operation of the circuit is as set forth alone with respect to FIG. 1. The power dissipation control circuit 12 functions to reduce the power dissipation of series pass element T1. The monolithic regulator 34 functions to keep the voltage applied between battery terminals 22 and 24 constant, independent of both charging current to the battery and fluctuations in the input voltage sources and to limit the charging current. The monolithic regulator 34 contains a Zener reference voltage source and senses the difference between the output voltage and a predetermined voltage. Finally, the voltage difference drives the series pass element T1.
Monolithic regulators are available that will operate with an input voltage up to 1000 volts. Series pass elements are available which will handle currents in excess of 60 amperes. The monolithic regulator 34 is only one embodiment that is capable of utilizing the invention. The invention disclosed is generally adaptable to most monolithic regulators that drive external pass transistors.(p6.3-51)〕

3.甲第3号証:特公平1-18663号公報(平成1年4月6日公告)
(1)甲第3号証には、図6とともに以下の記載がある。
ア.「充電・制御回路90は整流器91、シリーズドロツパ用トランジスタ92、制御用IC93(例えば、μA723)等からなり、中間タツプT2から得た電力を整流器91で整流し、トランジスタ92を制御用IC93の安定出力端子の出力電流によつて制御したシリーズドロツパ回路によつて電圧を二次電池8の充電に適したレベルで安定化させ、ダイオードDFを介して二次電池8に加えて充電するとともに、上記IC93の電流制限端子と選電流検出端子との間に接続した微小抵抗RBの電圧降下量によつてIC93内の出力電流制限トランジスタがオンし、トランジスタ92への出力電流をカツトオフし充電電圧をオフする如くなしてある。
従つて上記実施例によれば、通常は商用電源1からのみトランス25に電力が入力され、負荷側へ所定電圧の直流電力が供給されるとともに、中間タツプT2を介して充電・制御回路90に入力される電力によつて二次電池8が充電される。商用電源1に事故、停電等が生じ、その電圧が低下すると、ダイオード52がオンし二次電池8からトランス25に電力が入力され、負荷7には引き続き所定電圧の直流電力が供給される。一方、この際微小抵抗RBに二次電池8からの出力電流が流れるため、その電圧降下が発生し充電・制御回路90は二次電池8への充電電圧をオフする。即ち、二次電池8からの放電電流が充電・制御回路90を通して再び二次電池8へまわり込むのを防止している。その後、商用電源1が復旧しその電圧が回復すると、ダイオード52はオフとなり二次電池8からの電力供給は停止し、電力は商用電源1のみから供給され、同時に微小抵抗RBの電圧降下がなくなるため充電・制御回路90は再び動作を開始し、二次電池8を充電することになる。
」(第4ページ右欄第9-43行)

4.甲第4号証:特開平6-189547号公報(平成6年7月8日公開)
(1)甲第4号証には、以下の記載がある。
ア.「定電圧定電流回路50は、充電電力発生制御回路51と出力電圧検出回路52とを備えている。尚、本実施例の定電圧定電流回路50はスイッチィング制御方式によるものである。また、この定電圧定電流回路50は公知の技術であるので、その詳細な説明は省略する。」(段落【0013】

第5.対比・判断
1.本件発明と引用発明を対比すると、後者の「一次側FET6」「三次側FET19」「逆流阻止ダイオード20」は、それぞれ前者の「一次側スイッチング素子」「三次側スイッチング素子」「(三次側スイッチング素子と接続された)逆流防止ダイオード」に相当する。また後者の「電気2重層コンデンサ15」と前者の「二次電池」は、充放電可能な「蓄電装置」である点で共通する。
したがって、両者は
[一致点]
「交流電源からの交流を整流する整流回路と、
この整流回路の出力側に高周波トランスの一次巻線と一次側スイッチング素子とが直列に接続された、高周波トランスに対して高周波パルス電圧を発生させるための一次側回路と、
前記高周波トランスの二次巻線に整流、平滑回路が接続された、負荷に対して直流出力電力を供給する二次側回路と、
高周波トランスの三次巻線を含む充電回路と、
前記三次巻線の巻き終わり極性側と蓄電装置の負極の間であって、前記充電回路の充電電流路の外側に設けた、前記一次側スイッチング素子と同期して作動する三次側スイッチング素子と、前記蓄電装置の負極側から三次側スイッチング素子を通って三次巻線の巻き終わり端へ電流が流れることを阻止するための逆流防止ダイオードとを備え、
前記交流電源の電圧が正常範囲内にある時には、前記三次側スイッチング素子がON状態であっても、前記三次巻線に誘起される電圧が蓄電装置の電圧よりも大であるため、前記三次巻線の巻き始めから蓄電装置を経由し、三次巻線の巻き終わり端に電流が流れて、該蓄電装置が充電され、前記交流電源の電圧が低下もしくは停止すると、前記三次巻線に誘起される電圧が蓄電装置の電圧よりも小になるため、蓄電装置の正極から三次巻線の巻き始めから巻き終わり方向に向かう電流が前記逆流防止ダイオード、三次側スイッチング素子を通って該蓄電装置の負極に流れ、負荷に対して出力が供給されることを特徴とする無停電性スイッチングレギュレータ。」
で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
前者の充電回路は、蓄電装置が「二次電池」であるとともに「逆流防止ダイオード」を備え、さらに充電回路の構成要素のうち、高周波トランスの三次巻線、二次電池及び逆流防止ダイオード以外の充電要素は、充電用定電圧定電流制御回路、定電流検出抵抗及び直列ドロッパー制御用素子から構成され、充電回路は「高周波トランスの三次巻線の巻き始め極性側と二次電池の正極側を接続し、この二次電池の負極側に定電流検出抵抗と直列ドロッパー制御用素子とを直列に接続し、これを逆流防止ダイオードのアノード側に直列接続するとともに、二次電池の両極間に充電用定電圧定電流制御回路を設けることによって、前記直列ドロッパー制御用素子の抵抗を変化させて充電中の定電圧定電流制御を行う」ものであり、充電電流は「三次巻線の巻き始めから二次電池、定電流検出抵抗、直列ドロッパー制御用素子、逆流防止ダイオードを経由し、三次巻線の巻き終わり端に電流が流れ」るのに対し、後者の充電回路は、蓄電装置が「電解2重層コンデンサ15」であるとともに、「逆流防止ダイオード」を備えておらず、また充電要素は、チョークコイル16、高周波整流ダイオード17及びフライホイールダイオード18から構成され、前者の如く充電用定電圧定電流制御回路、定電流検出抵抗及び直列ドロッパー制御用素子を備えていないため、充電電流は、定電流検出抵抗、直列ドロッパー制御用素子、逆流防止ダイオードを経由しない点。

2.上記相違点について検討する。
(1)蓄電装置を備えた充放電回路において、充電専用のラインに充電方向とは逆方向の電流が流れるのを阻止し、トランジスタなどの素子破壊、充電ラインにおける蓄電装置の放電を防止するべく逆流防止ダイオードを設けることは、以下に示すとおり従来周知の技術(以下、単に「周知技術1」という)に過ぎない。
ア.甲第2号証の図4に記載された回路の充電ラインには、バッテリ16への充電方向とは逆方向の電流が流れるのを阻止する向きにダイオードD1が配設されている。
イ.甲第3号証の図6に記載された回路の充電ラインには、二次電池8への充電方向とは逆方向の電流が流れるのを阻止する向きにダイオードDfが配設されている。
ウ.実願平1-10211号(実開平2-103742号)のマイクロフィルムには、「このため、従来では第10図に示すように、コンデンサ14,定電圧ダイオード22,逆流阻止用ダイオード23,・・・」(明細書第3頁第3-5行)との記載があり、図10を見ると逆流阻止用ダイオード23は、二次電池への充電方向とは逆方向の電流を阻止する方向に配設されている。

(2)引用発明の蓄電装置は、電気2重層コンデンサであるが、甲第1号証には、「なお、この電気2重層コンデンサ15に代えて2次電池を用いてもよい。」との記載がある(上記第4 1.(1)ウを参照のこと)。甲第1号証には、2次電池を用いた場合に好適な充電回路について具体的回路例の記載はないが、一般に、二次電池に対し急激な充電・放電を頻繁に繰り返し行うと、二次電池の寿命・劣化が早くなることは、当業者にとって周知の事項であり、また、それを防止するために二次電池を定電圧定電流制御にて充電する制御方法、及び定電流検出抵抗や直列ドロッパー制御用素子などを備え、直列ドロッパー制御用素子の抵抗を変化させて充電中の定電圧定電流制御を行う回路は、以下に示すとおり従来周知の技術(以下、単に「周知技術2」という)である。
ア.甲第2号証には、上記第4 2.(1)に示したとおり、電流検出を行う抵抗R4、外部直列通過素子T1、及び該T1を制御する一体型調整器34を備えた充電回路が記載されている。なお、外部直列通過素子T1は、回路構成上、直列ドロッパー制御用素子であることは明らかである。また、上記第4 2.(1)ウによれば、甲第2号証の図4の充電回路における一体型調整器34は、バッテリへの充電電流と入力電源電圧に関係なく、バッテリ端子22と24間の電圧を一定に維持し、充電電流を制限するよう機能するものである。
イ.実願平1-10211号(実開平2-103742号)のマイクロフィルムには、「このため、従来では第10図に示すように、コンデンサ14,定電圧ダイオード22,逆流阻止用ダイオード23,抵抗24,25,トランジスタ26,27を用いた過電圧防止機能を有するものが提案されている。この充電回路の出力特性は、第11図に示すように出力電圧が低い場合には略定電流特性を示し、出力電圧が高くなると出力電流がある電圧以上で急激に減少して略定電圧特性を示し、開放電圧はツェナーダイオードのツェナー電圧により制限される。」(明細書第3頁第3-12行、あわせて図10も参照のこと)との記載がある。
ウ.実願昭61-188930号(実開昭63-93741号)のマイクロフィルムには、「第1トランジスタ22のエミッタ電流は、前記ベース電流I4およびコレクタ電流I3の和、すなわち電流I1であり、この電流I1は2次電池23に流入し充電電流I5となる。・・(略)・・第2図において参照符l1で示されるように、2次電池23の充電電流I5は安定し、2次電池23は定電流充電される。・・(略)・・このように予め定められたツェナーダイオード26のツェナ電圧V2に、第1トランジスタ22のベース-エミッタ間電圧VBE1と、2次電池23の電圧Vとの和が等しくなったとき、2次電池23は定電圧充電され、過充電が防止される。」(明細書第6頁第10行-第8頁第8行、あわせて図1,2を参照のこと)との記載がある。
エ.実公昭48-22507号公報には、「上記構成の本考案回路の動作を第1図について説明すると、1は直流電源、2,4はインピーダンス、例えば抵抗、3,6はトランジスタ、5はツェナーダイオード、7は蓄電池を示す。・・(略)・・インピーダンス4の電圧降下が増大するとトランジスタ6を制御することになり定電流充電が行われる。・・(略)・・充電が進行し蓄電池7の電圧が上昇すると、ツェナーダイオード5に電流が流れ、トランジスタ6を制御し蓄電池7は定電圧充電をおこなう定電圧充電領域に入ると充電電流が減少するのでトランジスタ3は動作しなくなる。」(第1頁右欄第6-36行、あわせて図1,2も参照のこと)。

故に引用発明の電気2重層コンデンサに代えて二次電池を採用する際、チョークインプット型整流回路に代え周知技術2の回路とすることに格別の困難性はない。
そして充電回路を構成するドロッパートランジスタ、電流検出用抵抗、逆流防止ダイオード、蓄電装置などの回路要素の接続態様は種々の変形例が考えらるところ(例として前記(1)(2)にて示した刊行物に記載された回路を参照のこと)、どの接続態様を採用するかは、当業者が適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
したがって、引用発明に周知技術1及び周知技術2を適用し、前記相違点に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものものである。

(4)また、本件発明を全体としてみても、引用発明、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

3.被請求人の主張について
(1)第3.被請求人の主張1.について
被請求人は、甲第1号証のものは、本件発明の充電回路を備えていない旨主張するが、本件発明の充電回路と、甲第1号証の充電回路との相違については、上記1.のとおりであり、相違点に関する判断は上記2.のとおりである。
また、被請求人は、甲第1号証のものは充電回路がチョークインプット型整流回路であるため、三次巻線の中間部にタップを切って2つの巻線を作らなければならない旨主張するが、甲第1号証には「3次側FET19のドレイン端子は逆流阻止ダイオード20を介して3次巻線N3の巻終わり端又はその巻線の中途よりひきだされたタップTに接続され、」(上記第4.甲各号証について 1.(1)エを参照のこと)との記載がある。さらに甲第1号証の全体の記載及び技術常識を参酌しても、甲第1号証の図1の回路において、3次側FET19のドレイン端子を、逆流阻止ダイオード20を介して3次巻線N3の巻終わり端に接続させることを妨げる技術的根拠も見あたらない。したがって、前記被請求人の主張は採用することができない。
(2)第3.被請求人の主張2.について
被請求人は、甲第1号証の図1の回路に、甲第2号証の図4に示すような定電圧定電流充電回路を適用した場合、チョークコイルを設けることから、整流用のダイオード、交流を直流に変換するためのコンデンサ、このコンデンサに並列に接続した抵抗などの多数の部品が必要となる旨主張するが、甲第1号証に記載された発明のチョークインプット型整流回路に代え、周知技術2の定電圧定電流充電するための回路とすることに格別の困難性がないことは、上記2.(3)にて説示したとおりである。したがって、前記被請求人の主張は採用することができない。

第6.むすび
したがって、本件発明は、本願出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-13 
結審通知日 2005-01-14 
審決日 2005-01-26 
出願番号 特願平8-98982
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H02M)
最終処分 成立  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 佐々木 芳枝
安池 一貴
登録日 1999-12-17 
登録番号 特許第3013776号(P3013776)
発明の名称 無停電性スイッチングレギュレータ  
代理人 牛木 護  
代理人 外山 邦昭  
代理人 柳野 隆生  
代理人 清水 榮松  

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