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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1126820 |
審判番号 | 不服2003-6407 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-01-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-04-16 |
確定日 | 2005-11-17 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第155564号「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月23日出願公開、特開平 8- 22343〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年7月7日の出願であって、平成15年3月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成15年4月16日拒絶査定に対する審判請求がされると共に、平成15年5月16日に手続補正書が提出されたものである。 2.平成15年5月16日に提出された手続補正書による補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年5月16日に提出された手続補正書による補正を却下する。 [補正却下の理由] (1)補正後の本願発明(以下本願補正発明) 平成15年5月16日に提出された手続補正書による補正により、特許請求の範囲は、 【特許請求の範囲】 【請求項1】 ディスプレイを有する第1の部分と、操作部を有する第2の部分と、を、レンズ部を有する撮像光学系が内蔵されたヒンジ部によって結合し、このヒンジ部を軸に上記両部分が回動自在になされた携帯型の情報処理装置であって、 上記第1の部分と上記第2の部分との状態が、上記ヒンジ部を挟んで所定の開度となったことを検知する検知部と、 上記検知部によって、上記第1の部分及び上記第2の部分が上記所定の開度となったことが検知された際に、情報の処理を行う情報処理モードから、上記操作部のうち該当する操作子を各種撮影条件の設定ボタン及び撮影用トリガボタンとして機能させ、その他の撮影に使用しない操作子は、当該操作子からの入力があっても撮影信号としては無効にする撮影モードへ切り換えるモード切り換え手段と、 を具備したことを特徴とする情報処理装置。(以下本願補正発明1) 【請求項2】 上記検知部は、上記第1の部分と上記第2の部分とが上記ヒンジ部を挟んで略水平な状態にされたか、または、ヒンジ部を軸に上記ディスプレイを配する面の背面と上記操作部を配する面の背面とが向かい合う状態に開かれたかを検知することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明2) 【請求項3】 上記ヒンジ部の一端部には上記撮像光学系のレンズが設けられ、他端部には光学ファインダが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明3) 【請求項4】 上記検知部によって上記ディスプレイを配する面の背面と上記操作部を配する面の背面とが上記ヒンジ部を挟んで向かい合う状態に開かれたことが検知され、上記モード切り換え手段によって上記撮影モードへ切り換えられた際に、上記ディスプレイを液晶ファインダ及びタッチパネルとして機能させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明4) 【請求項5】 上記液晶ファインダのエリアの中心部には合焦対象エリアが表示され、上記タッチパネルのエリアには各種操作用のアイコンが表示されることを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明5) 【請求項6】 上記ディスプレイは、上記レンズ部を有する撮影光学系で撮影した画像を表示するファインダ機能エリアと、各種操作用のアイコンが表示されたアイコン表示エリアと、を有することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明6) 【請求項7】 上記アイコンを用いて切り換えたモードは上記液晶ファインダ内に表示されることを特徴とする請求項5または6に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明7) 【請求項8】 上記ヒンジ部を除く部位に記録媒体の配置部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。(以下本願補正発明8) と補正された。 上記補正は、 (a)補正前の請求項3、請求項5、請求項9〜18を削除したことによって、請求項の番号を変更したことに加え、 請求項1では、 (b)本願補正発明1を特定するために必要な事項である「レンズ部を有する撮影光学系」が「ヒンジ部」に内蔵される構成であることに限定すると共に、 (c)補正前の「撮影が可能な撮影モード」を「、上記操作部のうち該当する操作子を各種撮影条件の設定ボタン及び撮影用トリガボタンとして機能させ、その他の撮影に使用しない操作子は、当該操作子からの入力があっても撮影信号としては無効にする撮影モード」と限定するものであり、 請求項3では、 (d)本願補正発明3を特定するために必要な事項である「撮像光学系のレンズ」が「ヒンジ部」の一端部に設けられることと、「光学ファインダ」が多端部に設けられる構成であることに限定するものであり、 請求項4では、 (e)本願補正発明4を特定するために必要な事項である「ディスプレイを配する面の背面と上記操作部を配する面の背面とが上記ヒンジ部を挟んで向かい合う状態に開かれたことが検知された際に」に「上記モード切り換え手段によって上記撮影モードへ切り換えられた」という限定を付加したものである。 したがって、 (a)の補正は特許法第17条の2第4項第1号の特許請求の範囲の削除を目的とするものに該当する。 (b)〜(e)の補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 そこで、本願補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物とその内容 本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平06-178178号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、第1図〜第13図とともに、次の記載がある。 (イ) 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、このような電子スチル・カメラで撮影した画像をメモリ・カードに記録し、そのカードを携帯型コンピュータに挿入して画像を読み取る方法に於いては、撮像するための手順が多く、また、電子スチル・カメラと携帯型コンピュータを共に持ち歩かねばならず、不便だった。 【0004】 そこで本出願人から携帯型コンピュータに電子スチルカメラを脱着可能にしたシステムが提案されている。 【0005】 そこで本発明はかかるシステムを更に改善することを目的とする。」(引用刊行物1の段落【0003】-【0005】) (ロ) 「【0030】60は情報処理装置300全体を制御する制御手段であり、CPUからなる。62は制御手段60の動作用のプログラム、変数等を記憶する記憶手段でありROM、64は制御手段62でのプログラムの実行に応じて必要な文字、画像、音声等の表示を行う例えば液晶表示装置や、スピーカー等の表示手段、66は制御手段60への各種の動作指示の入力をするためのキーボード等の操作手段である。」(引用刊行物1の段落【0030】) (ハ) 「【0046】制御手段60は、操作手段66に含まれる撮像スイッチがオンならば(S9)、電源制御回路68により電源84の電圧が情報処理装置300及び撮像装置200が動作するのに十分かどうかを判断する(S10)。 【0047】電源84の電圧が情報処理装置300及び撮像装置200が動作するのに十分ではないならば(S10)、表示手段64により警告を行い(S16)、S15に進む。 【0048】電源84の電圧が情報処理装置300及び撮像装置200が動作するのに十分ならば(S10)、制御手段60は、プログラム格納手段50から撮像装置200を動作させるためのプログラムを読みだし、インタフェース52、コネクタ54、コネクタ74、インタフェース72を介して、記憶手段62の領域の一部に記憶させる(S11)。 【0049】制御手段60は、プログラムと共に読み込んだ撮像装置200固有のデータに応じて、電源制御回路42による電圧検出のためのスレッショールド・レベルを設定する(S12)。このスレッショールド・レベルは、電源44の電圧が撮像装置200が撮像するための様々なモードで動作するのに十分かどうかを判断するためのデータで、モードの種類に応じて複数設定される。 【0050】制御手段60は、撮像装置200の電源制御回路42の設定をパワー・オン状態にし(S13)、撮像装置200を動作させるためのプログラムを記憶手段62より読みだし、実行する(S14)。プログラムの実行により、制御手段60は、表示手段64に撮像するのに必要な所定の表示を行い、操作手段66による入力命令に従って撮像装置200の各部を順次動作させ、撮像を行う。 【0051】撮像動作が全て終わったならば、制御手段60は撮像モードの実行を終了し、撮像装置200の電源制御回路42の設定をパワー・オフ状態にして(S15)、表示手段64に文字・数字やアイコン等の画像等により必要な所定の表示を行い、操作手段66による入力を受け付けるように設定し、S2に戻る。 【0052】図3は、図2のS14における撮像プログラム実行の詳細なフローチャートを示す。なお、説明において、制御手段60と撮影制御回路40との間のデータ信号や制御信号のやり取りは、インタフェース72、コネクタ74、コネクタ54、インタフェース52を介して行われるものとする。 【0053】制御手段60は、撮像するのに必要な所定の表示を表示手段64により行うと共に、撮像制御回路40に命じて、撮像手段202の各部を初期状態にする等の、必要な所定の開始処理を行う(S21)。 【0054】なお、表示手段64による「撮像するのに必要な所定の表示」とは、例えば、撮像装置200のシングル撮影、連続撮影、セルフタイマ撮影等の動作モード、測距・測光情報、フラッシュ38の動作状態、電池44の残量、シャッター・スピード値、絞り値、露出補正値、撮像素子の感度を上げるゲイン・アップ動作状態、画像メモリ24の使用状態、圧縮・伸長回路22の動作状態、そして記録媒体90の記録動作状態、撮影枚数、撮影済み容量、残り枚数、残り容量等が、文字・数字やアイコン等の画像を用いて表示手段64に表示される。また、撮像装置200の機能を、レリーズ・ボタン、電子ダイヤル、モード・セレクト・ダイヤル等の一般的なカメラの操作部の画として、表示手段64に表示してもよい。さらに、表示手段64に表示されたカメラの操作部の画を、ペン、マウス、トラックボール、タッチ・パネル、視線検知等のポインティング・デバイスにより選択して操作手段66の入力としてもよい。また、撮像素子からの信号を連続して表示するスルー・モード表示、そして撮像した画像、記録した画像を表示するモニタ・モード表示を、並列に、或は切り替えて行うためのファインダを表示手段64内に設ける。これらにより、情報処理装置300に於いても違和感無くカメラと同様な撮像操作をすることが可能となる。 【0055】制御手段60は、操作手段66に含まれる撮像スイッチがオフならば(S22)、撮像制御回路40に命じて、撮像装置200に於いて必要な所定の終了処理を行い(S35)、表示手段64による撮像表示・ファインダ表示を終了し、撮像プログラム実行(S14)を終了する。 【0056】制御手段60は、操作手段66に含まれる撮像スイッチがオンならば(S22)、撮像制御回路40に電圧検出動作を命じる。撮像制御回路40は、電源制御回路42により電池44の電圧が撮像装置200が動作するのに十分かどうかを調べ、制御手段60に通知する(S23)。なお、S23での電圧検出は、後述する測距・測光動作(S25)に十分かどうかを少なくとも判断する必要がある。 【0057】電池44の電圧が撮像装置200が動作するのに十分ではないならば(S23)、制御手段60は、表示手段64により警告を行い(S34)、撮像制御回路40に命じて、撮像装置200に於いて必要な所定の終了処理を行い(S35)、表示手段64による撮像表示・ファインダ表示を終了し、撮像プログラム実行(S14)を終了する。 【0058】制御手段60は、電池44の電圧が撮像装置200が動作するのに十分であり(S23)、操作手段66により測距・測光スイッチ(SW1)が設定されたならば(S24)、撮像制御回路40に対して測距・測光動作を命じる。撮像制御回路40は、測距回路34及び測光回路36により、測距・測光を行い、撮影レンズ10の焦点を被写体に合わせ、シャッタ時間を決定する(S25)。この測距・測光動作の詳細は後述する。 【0059】制御手段60は、操作手段66により測距・測光スイッチ(SW1)が設定され、電池44の電圧が撮像装置200の動作に十分であり(S26)、操作手段66により撮影スイッチ(SW2)が設定されるまで(S27)、測距・測光動作(S25)を繰り返す。なお、S26での電圧検出は、後述する撮影動作(S29)に十分かどうかを少なくとも判断する必要がある。また、S26での電圧検出は、制御手段60が撮像制御回路40に電圧検出動作を命じ、撮像制御回路40が電源制御回路42により電源44の電圧が撮像装置200が動作するのに十分かどうかを調べて制御手段60に通知することにより行われる。 【0060】電池44の電圧が撮像装置200が動作するのに十分ではないならば(S26)、制御手段60は、表示手段64により警告を行い(S34)、撮像制御回路40に命じて、撮像装置200に於いて必要な所定の終了処理を行い(S35)、表示手段64による撮像表示・ファインダ表示を終了し、撮像プログラム実行(S14)を終了する。 【0061】制御手段60は、電池44の電圧が撮像装置200が動作するのに十分で(S26)、操作手段66により撮影スイッチ(SW2)が設定されたならば(S27)、撮像装置200により撮像した画像データを記憶手段62或は記録媒体90に記録可能か否かを判断し(S28)、記録可能な空き領域が無くなった、或は記録媒体がはずされた等のために記録できないならば、表示手段64により警告を行い(S33)、操作手段66に含まれる撮像スイッチの操作を待つ(S22)。 【0062】制御手段60は、記録可能な領域があるならば(S28)、撮像制御回路40に対して撮影動作を命じる。撮影制御回路40は、撮影動作を実行し、画像メモリ24に画像データを書き込む(S29)。この撮影動作の詳細は後述する」(引用刊行物1の段落【0046】-【0062】) (ニ) 「【0124】 図13は情報処理装置300として携帯型無線電話を用いた例である。 【0125】 表示手段64に、撮像手段202の状態や操作方法を示す表示と、スルー・モード及び又はメモリ・モードのファインダ表示を行う。この例では、状態や操作方法を示す表示を下のウィンドウに、ファインダー表示を上のウィンドウに行っている。この2つのウィンドウに、さらにウィンドウを加え、スルー・モード表示とメモリ・モード表示を共に行ってもよい。表示手段64と別体、或は同一になった操作手段66により撮像手段202の操作を行い、撮像する。操作手段66による入力は、キーやスイッチにより行うのが一般的であるが、表示手段64による表示をペン、マウス、トラックボール、タッチ・パネル、視線検知等のポインティング・デバイスにより選択して操作手段66の入力としてもよい。 【0126】 また、情報処理装置300の状態を、撮像に適した形態に設定したならば撮像スイッチが設定され、電話等の通信に適した形態に設定したならば撮像スイッチが解除になるようにしてもよい。例えば、図13に於いて、情報処理機器300の開き角度が90度よりかなり大きくなって顔にあてて通話し易い形態に設定されたならば、電話に使用すると判断し撮像スイッチを解除する。一方、情報処理機器300の開き角度が90度位になってファインダ表示を見ながら撮像し易い形態に設定されたならば、撮像に使用すると判断し撮像スイッチを設定する。撮像スイッチは、例えば、情報処理装置300のヒンジ部周辺に配置して、開き角度に応じて設定・解除がなされるように構成すればよい。このようにすれば、本発明をより有効に使用することが可能となる。 【0127】 さらに、情報処理装置300に撮像装置200を装着した際に、撮像装置200の露出部を覆うカバーを設け、このカバーの開けたならば撮像スイッチが設定され、カバーを閉じたならば撮像スイッチが解除されるようにしても良い。このカバーは、情報処理装置300側に設けても、撮像装置200側に設けても、両方に設けても、いずれでも構わない。また、このカバーは、撮像手段202により撮像するのに必要な構成要素、例えば、レンズ10、測距回路34、測光回路36、ホワイト・バランス測定回路46、フラッシュ38等を全て覆っても、これらのうち幾つかのみを覆っても構わない。しかしながら、レンズ10は保護のため、カバーで覆うほうが望ましい。」(引用刊行物1の段落【0124】-【0127】) 以上の記載事項から、引用刊行物1には、 「撮像装置がヒンジ近傍に装着された携帯型の情報処理装置であって、 表示手段を有する部分と、キーボード等の操作手段を有する部分とを、ヒンジ部によって結合し、このヒンジ部を軸に上記両部分が回動自在になされ、 情報処理機器の開き角度が90度よりかなり大きくなって通話し易い形態に設定されたならば、電話に使用すると判断し撮像スイッチを解除し、情報処理機器の開き角度が90度位になってファインダ表示を見ながら撮像し易い形態に設定されたならば、撮像に使用すると判断し撮像スイッチを設定し、 撮像スイッチがオンならば、制御手段は、撮像装置の電源制御回路の設定をパワー・オン状態にし、プログラムの実行により、制御手段は、表示手段に撮像するのに必要な所定の表示を行い、操作手段によって測距・測光スイッチ(SW1)撮影スイッチ(SW2)が設定されることによって、撮像装置の各部を順次動作させ、撮像を行う情報処理装置」 の発明が記載されている。(以下引用刊行物1記載の発明) (3)対比 引用刊行物1記載の発明における「表示手段」、「操作手段」、「撮像装置」と「撮像スイッチ」は、本願補正発明1の「ディスプレイ」、「操作部」、「撮像光学系」と「検知部」に相当するものであり、 引用刊行物1の段落【0030】の「66は制御手段60への各種の動作指示の入力をするためのキーボード等の操作手段である。」記載や段落【0125】の「操作手段66による入力は、キーやスイッチにより行うのが一般的である」との記載から引用刊行物1の「操作手段」のキーボードにおけるキーは本願発明1の「操作子」に相当するものと判断される。 引用刊行物1記載の発明の「開き角度が90度位になって」は本願補正発明1の「所定の開度」に相当する。 引用刊行物1の発明の「電話に使用する」ことは、引用刊行物1の段落【0124】に「情報処理装置300として携帯型無線電話を用いた」とあることから、本願補正発明1の「情報処理モード」に相当するものであり、引用刊行1記載の発明の「撮像に使用する」ことは、本願補正発明1の「撮影モード」に相当するものである。 そうすると、本願補正発明1と引用刊行物1記載の発明とは、 「ディスプレイを有する第1の部分と、操作部を有する第2の部分とを、ヒンジ部によって結合し、このヒンジ部を軸に上記両部分が回動自在になされた、撮像光学系を有する携帯型の情報処理装置であって、 上記第1の部分と上記第2の部分との状態が、上記ヒンジ部を挟んで所定の開度となったことを検知する検知部と、 上記検知部によって、上記第1の部分及び上記第2の部分が上記所定の開度となったことが検知された際に、情報の処理を行う情報処理モードから、撮影モードへ切り換えるモード切り換え手段と、を具備した情報処理装置。」 である点で一致し 引用刊行物1記載の発明では撮像光学系がヒンジ近傍に装着されているのに対して、本願補正発明1ではヒンジ部にレンズ部を有する撮像光学系が内蔵されている点(以下、相違点1)、 引用刊行物1記載の発明では、操作子を各種撮影条件の設定ボタン及び撮影用トリガボタンとして機能させるか否か明確ではない点。(以下相違点2) 引用刊行物1記載の発明では、その他の撮影に使用しない操作子は、当該操作子からの入力があっても撮影信号としては無効にすることが記載されていない点。(以下相違点3) の3点で相違するものと認められる。 (4)判断 上記の相違点について検討する。 相違点1について検討するに、 平成14年9月30日付けの拒絶理由通知書において、引用された、特開平06-070314号公報(以下引用刊行物2)の図40〜図41の第13実施例、特開平04-084571号公報(以下引用刊行物3)の第1図にも認められるように、ヒンジ部にレンズ部を有する撮像光学系を内蔵することは周知な構成にすぎないものであり、また、上記引用刊行物2の段落【0001】には、「本発明は、・・・・などの情報処理機能を有する画像処理装置に関する。」と記載されている。 したがって、ヒンジを有する情報処理装置である引用刊行物1記載の発明のヒンジ部に、前記周知な構成を適用して、レンズ部を有する撮像光学系を内蔵することは、当業者が容易になし得ることである。 相違点2について検討するに、 引用刊行物1記載の発明も操作手段によって測距・測光スイッチ(SW1)撮影スイッチ(SW2)が設定されることによって、撮像装置の各部を順次動作させ、撮像を行うものであることから、操作子である引用刊行物1記載の発明の操作子を撮影条件の設定ボタン及び撮影用トリガボタンとして機能させることは、当業者であれば容易に予測し得るところである。 また、撮影のための各種の設定が可能である点については、引用刊行物1の段落【0054】や、段落【0125】の記載より明らかである。 したがって、操作子を各種撮影条件の設定ボタン及び撮影用トリガボタンとして機能させることは、引用刊行物1の記載から当業者が容易に予測しうるところである。 相違点3について検討するに、 引用刊行物1記載の発明の撮影モードにおいて使用する操作子の数が他のモード(情報処理モードや電話に使用する場合)で使用する操作子の数よりも少ないであろうことは、当業者であれば当然予測し得るところである。 また、操作手段を兼用して用いる場合に、複数のモードのそれぞれにおいて使用する操作子の数が異なる場合に、使用しない操作子からの入力があっても無効にすることは、情報処理装置の技術分野においては、慣用技術にすぎないものである(特開平02-170724号公報(第3頁左上欄第10行〜第20行)、特開平04-175812号公報(特許請求の範囲、第1頁右欄第16行〜第2頁右欄第8行)、特開昭61-115117号公報(特許請求の範囲、第1頁右下欄第6行〜第2頁左下欄第8行)、特開平04-148412号公報(特許請求の範囲、第1頁右下欄第3行〜第3頁右上欄第13行)等を参照されたい)。 したがって、該慣用技術を引用刊行物1記載の発明に適用して、撮影に使用しない操作子からの入力があっても撮影信号としては無効にすることは、当業者が容易になし得る事項にすぎない。 よって、本願補正発明1は、引用刊行物1記載の発明に周知及び慣用技術を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明の特許法第29条2項該当性について (1)本願発明 平成15年5月16日に提出された手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成14年12月9日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ディスプレイを有する第1の部分と、操作部を有する第2の部分とをヒンジ部によって結合し、このヒンジ部を軸に上記両部分が回動自在になされた携帯型の情報処理装置であって、 レンズ部を有する撮影光学系と、 上記第1の部分と上記第2の部分とが、上記ヒンジ部を挟んで開閉されたことを検知する検知部と、 上記検知部によって、上記第1の部分及び上記第2の部分が開状態であることを検知された際に、情報の処理を行う情報処理モードから撮影が可能な撮影モードへ切り換えるモード切り換え手段と、 を具備したことを特徴とする情報処理装置。」 (2)引用刊行物とその内容 引用刊行物に記載された発明は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明1から、「レンズ部を有する撮影光学系」が「ヒンジ部」に内蔵される構成を省き、 本願補正発明1の「撮影モード」に関する、「上記操作部のうち該当する操作子を各種撮影条件の設定ボタン及び撮影用トリガボタンとして機能させ、その他の撮影に使用しない操作子は、当該操作子からの入力があっても撮影信号としては無効にする」という限定を省いたものである。 そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した構成を有する本願補正発明1が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物1記載の発明に周知及び慣用の技術手段を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-09 |
結審通知日 | 2005-09-13 |
審決日 | 2005-09-29 |
出願番号 | 特願平6-155564 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 浩、津幡 貴生 |
特許庁審判長 |
大日方 和幸 |
特許庁審判官 |
右田 勝則 治田 義孝 |
発明の名称 | 情報処理装置 |
代理人 | 伊藤 進 |