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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1126825
審判番号 不服2002-23438  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-05 
確定日 2005-11-17 
事件の表示 平成11年特許願第275349号「電子診療録装置におけるセキュリティシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年4月13日出願公開、特開2001-101321〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

この出願は、平成11年9月28日の出願であって、平成14年7月22日付の拒絶理由通知に対して、その指定期間内である平成14年9月30日付で意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成14年10月29日付で拒絶査定がなされた。
そして、この拒絶の査定を不服として、平成14年12月5日に審判請求がなされるとともに特許法第17条の2第1項第3号の規定する期間内である平成14年12月26日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年12月26日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成14年12月26日付の手続補正を却下する。

[理由]

(1)本件手続補正

平成14年12月26日付の手続補正(以下「本件手続補正」という。)は、平成14年9月30日付の手続補正により補正された特許請求の範囲について、以下の補正を行うことを含むものであると認められる。

(A)補正前の請求項1における「電子診療録装置」を構成する「複数のサブシステム」を「第1電子診療録装置と第2電子診療録装置と」と変更し、両装置について「前記第1電子診療録装置は、診療録情報を入力する入力装置と、該入力装置により入力された診療録情報を記憶する第1診療録記憶装置と、該第1診療録記憶装置から診療録情報を取り出して出力する出力装置と、該第1診療録記憶装置から診療録情報を取り出して前記第2電子診療録装置に送信する第1診療録情報送信部と、前記第2電子診療録装置から診療録情報を受信して前記第1診療録記憶装置に記憶する第1診療録情報受信部とを含み、前記第2電子診療録装置は、前記第1電子診療録装置から診療録情報を受信する第2診療録情報受信部と、前記第2診療録情報受信部により受信された診療録情報を記憶する第2診療録記憶装置と、前記第2診療録記憶装置から診療録情報を取り出して前記第1電子診療録装置に送信する第2診療録情報送信部とを含む」ことを追加するとともに、補正前の請求項1における「前記複数のサブシステム間で共通利用できるセキュリティ機能を備えるとともに、該セキュリティ機能が前記電子診療録装置と通信機能を介して接続される、置き換え可能な独立の部品として構成されている」なる事項を、「複数の前記第1電子診療録装置の間で共通利用できる、前記第1電子診療録装置に対するセキュリティ機能を有するとともに、該セキュリティ機能が前記第1電子診療録装置と通信機能を介して接続される、置き換え可能な独立の部品として構成されている第1セキュリティ装置と、複数の前記第2電子診療録装置の間で共通利用できる、前記第2電子診療録装置に対するセキュリティ機能を有するとともに、該セキュリティ機能が前記第2電子診療録装置と通信機能を介して接続される、置き換え可能な独立の部品として構成されている第2セキュリティ装置とを備えた」と変更する補正。

(B)補正前の請求項2、8、9を削除し、補正前の請求項3-7、10、11を新たな請求項2-8にそれぞれ繰り上げる補正。

(C)補正前の請求項4における「前記セキュリティ機能は、前記第1電子診療録装置の一つに対応する一つの第1セキュリティ装置と、前記第2電子診療録装置の一つに対応する一つの第2セキュリティ装置とで構成され」なる事項を削除して新たな請求項3とする補正。

(D)補正前の請求項5における「前記第1セキュリティ装置及び第2セキュリティ装置は、ユーザ認証、アクセス権制御、アクセスログ採取、タイムスタンプ付与、デジタル署名付与のうちのいずれか1又は複数のセキュリティ機能を有する」を「前記第1セキュリティ装置は、ユーザ認証、アクセス権制御、アクセスログ採取、タイムスタンプ付与、デジタル署名付与のうちのいずれか1又は複数のセキュリティ機能を有し、前記第2セキュリティ装置は、アクセスログ採取、タイムスタンプ付与、デジタル署名付与のうちのいずれか1又は複数のセキュリティ機能を有する」と変更し新たな請求項4とする補正。

(2)本件手続補正の目的

上記した補正事項(A)について、審判請求人は、補正前の請求項に記載した事項を限定する補正である旨主張するので、まず、上記した補正事項(A)が、特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的としたものかどうか検討する。
補正前の請求項1の「セキュリティ機能」は、「複数のサブシステム間で共通利用できる」ことを要件としていたのであるから、補正前の請求項1の「複数のサブシステム」を「第1電子診療録装置と第2電子診療録装置と」と限定することにより特許請求の範囲の減縮を図るのであれば、補正後の請求項1における「セキュリティ機能」は、「第1電子診療録装置と第2電子診療録装置との間で共通利用できる」ことを要件として備えていなければならない。
しかしながら、補正後の請求項1における「セキュリティ機能」は、「複数の前記第1電子診療録装置の間で共通利用できる、前記第1電子診療録装置に対するセキュリティ機能」と「複数の前記第2電子診療録装置の間で共通利用できる前記第2電子診療録装置に対するセキュリティ機能」とに補正され、「第1電子診療録装置と第2電子診療録装置との間で共通利用できる」ことは、補正後の請求項1の記載からは把握できない。
してみれば、上記した補正事項(A)は、発明を特定するための事項を変更するものであって、限定するものではないから、いわゆる限定的減縮を目的とするものであるとは認められない。
また、上記した補正事項(C)は、発明特定事項の一部である「前記セキュリティ機能は、前記第1電子診療録装置の一つに対応する一つの第1セキュリティ装置と、前記第2電子診療録装置の一つに対応する一つの第2セキュリティ装置とで構成され」なる事項を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものではない。
したがって、上記補正事項(A)及び(C)は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、これらの補正事項が、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同第3号の誤記の訂正、同第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。

(3)むすび

よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明

平成14年12月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年9月30日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数のサブシステムから構成された電子診療録装置において、前記複数のサブシステム間で共通利用できるセキュリティ機能を備えるとともに、該セキュリティ機能が前記電子診療録装置と通信機能を介して接続される、置き換え可能な独立の部品として構成されていることを特徴とする電子診療録装置におけるセキュリティシステム。」

(2)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-269534号公報(以下、「引用例1」という。)には、「情報システム」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「第1図に示す情報システム1は病院の相互的に接続された診療所と各部門とで用いられ、各コンピュータ端末に定義された診療所と各部門のステーション条件によって限定された共通の情報を共用する。たとえば、会計部門11は数個のミニコンピュータ114、115あるいは数箇所のワークエリアのサービスを行う一台の大型メインフレームコンピュータを有し、登録コンピュータ端末111、会計コンピュータ端末112、あるいは財務記録コンピュータ端末113を有する。会計部門のコンピュータ端末111、112、113は会計部門コンピュータ114、115を介してメッセージネットワーク19の会計ノード110と相互接続されている。メッセージワーク19はデータメッセージをノード間で伝送するローカルエリアパケット交換網と通常称されるタイプのものならいずれでもよく、本発明を理解するためには詳細な説明は不要である。」(公報第4頁左上欄第2行〜第19行)

(b)「情報システム1の各コンピュータ端末は、記録された経歴と医療データに従って様式ファイルデータベース100112と医療データディクショナリデータベース100222とに各々患者データを記録する患者ファイルデータベース10030を有している。コンピュータ端末は使用者管理10013ならびにセキュリティファイル10014とステーション条件ファイル10015をも有している。セキュリティファイル10014は各コンピュータ端末に固有のものであって、情報システム1と患者ファイルデータベースへのアクセスを制限するのに使用される。セキュリティファイル10014は様式ファイルデータベース100112および医療データディクショナリデータベース100222に記録された経歴と医療データに対して許可されていない使用者がアクセスするのを制限している。セキュリティファイル10014はさらにコンピュータ端末にあるアプリケーションソフトウェアのアクセスを防止し、許可されていない使用者がメッセージネットワーク19にアクセスするのを防止している。」(公報第4頁右下欄第10行〜第5頁左上欄第9行)

(c)「メッセージネットワーク19に接続された各診療所および部門のコンピュータ端末は、第1図に示すように、ステーション条件ファイル10015によって限定された経歴および医療データを記録するのに使用される経歴サブシステム10011と医療データサブシステム10022を有している。ステーション条件ファイル10015によって限定された経歴および医療データは、各コンピュータ端末の様式ファイルデータベース100112および医療データディクショナリデータベース100222に入力され、ステーション条件ファイル10015によって限定された経歴および医療データに適合する患者データをコンピュータ端末に対して入力および読出しを行うのに用いられる。
経歴サブシステム10011は、第2図に示すように、ブレティンボード10016によって同定され、かつ、データベースサーバ100111と様式ファイルデータベース100112とともに用いられて入力され、かつ、照合された経歴データの記録および読出しを行うアプリケーションソフトウェア100110を有している。同様に医療データサブシステム10022は、ブレティンボード10016によって同定され、かつ、データベースサーバ100221と医療データディクショナリデータベース100222とともに用いられて入力されかつ照合された医療データの記録および読出しを行うアプリケーションソフトウェア100220を有している。」(公報第5頁右下欄第6行〜第6頁左上欄第12行)

以上から、引用例1には、
「複数のサブシステムから構成され、患者データを取り扱う情報システムにおいて、アクセス制限機能を備えた情報システム。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

(3)対比

本願発明(以下「前者」という。)と引用例1発明(以下「後者」という。)とを比較すると、後者の「患者データを取り扱う情報システム」は、前者の「電子診療録装置」に相当し、後者の「アクセス制限機能」は、前者の「セキュリティ機能」に相当し、後者の「(アクセス制限機能を備えた)情報システム」は、前者の「電子診療録装置におけるセキュリティシステム」に相当する。

したがって、両者は、
「複数のサブシステムから構成された電子診療録装置において、セキュリティ機能を備える、電子診療録装置におけるセキュリティシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明のセキュリティ機能は、複数のサブシステム間で共通利用でき、電子診療録装置と通信機能を介して接続される、置き換え可能な独立の部品として構成されているのに対し、引用例1発明のアクセス制限機能は、そのように構成されているか不明な点。

(4)判断

[相違点1]について
複数のサブシステムから構成される情報処理システムについて、セキュリティ機能を付与するにあたり、複数のサブシステムから共通利用できる構成とすることは、特開平7-239767号公報、特開昭64-51527号公報、特開平9-97227号公報等に記載のように、当業者の周知技術であり、情報処理システムを構成する各種の機能手段を、置き換え可能な独立の部品として構成し通信機能を介して接続することも、特開平11-175476号公報、特開平9-282281号公報、特開平7-200798号公報等に記載のように、当業者の周知技術である。
そして、これらの周知技術と引用例1発明とは、いずれも情報処理システムに関する技術である点で共通するから、引用例1発明におけるアクセス制限機能を実装するにあたり、これらの周知技術を適用することにより、上記した相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、上記した引用例1の記載及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび

したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-13 
結審通知日 2005-09-20 
審決日 2005-10-03 
出願番号 特願平11-275349
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 直也  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 篠原 功一
阿波 進
発明の名称 電子診療録装置におけるセキュリティシステム  
代理人 工藤 雅司  
代理人 机 昌彦  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  
代理人 工藤 雅司  

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