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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04C |
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管理番号 | 1127226 |
審判番号 | 不服2005-8680 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-11 |
確定日 | 2005-12-01 |
事件の表示 | 平成10年特許願第289339号「回転式圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月25日出願公開、特開2000-120572〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件出願は、平成10年10月12日の出願であって、平成17年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年5月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年5月30日付けの手続補正書によって明細書を補正する手続補正がなされた。 [2]平成17年5月30日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成17年5月30日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の特許請求の範囲の記載 平成17年5月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 両端開口を閉塞されるシリンダと、このシリンダ内を回転するローラと、前記ローラ、シリンダとにより圧縮空間を形成すると共に、高圧側と低圧側とを仕切るベーンとを備え、吸入した冷媒を圧縮して吐出する回転式圧縮機において、前記ローラと前記ベーンを揺動自在に接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ローラに形成された円筒形の嵌合部と、この嵌合部に揺動自在に嵌合し、前記ベーンのローラ側に設けられた揺動部とを備え、前記密閉容器内を低圧または中間圧とし、二酸化炭素冷媒を超臨界域で用いる冷媒回路に設けられることを特徴とする回転式圧縮機。」 と補正された。 これは、補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項である「冷媒として二酸化炭素を用い、前記ローラと前記ベーンを揺動自在に接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ローラに形成された円筒形の嵌合部と、この嵌合部に揺動自在に嵌合し、前記ベーンのローラ側に設けられた揺動部とを備えたこと」を、「前記ローラと前記ベーンを揺動自在に接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ローラに形成された円筒形の嵌合部と、この嵌合部に揺動自在に嵌合し、前記ベーンのローラ側に設けられた揺動部とを備え、前記密閉容器内を低圧または中間圧とし、二酸化炭素冷媒を超臨界域で用いる冷媒回路に設けられること」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.引用文献記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-17776号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「【産業上の利用分野】本発明は、冷凍機における冷媒の圧縮機等として広く用いられるロータリー圧縮機に関する。」(第2頁第1欄第35〜37行。) イ.「【実施例】図1に示すものは、冷媒圧縮用のロータリー圧縮機であって、円筒形のケーシング30に、円形のシリンダ室1をもつシリンダ2を内装し、シリンダ室1の内部に、モータに連動する駆動軸3の偏心軸部4と、該偏心軸部4の外周部に嵌合し、シリンダ室1の内部に公転するローラ5とを配設すると共に、シリンダ2に設ける摺動溝6に、ローラ5の外周部に頭部円弧面を当接させ、シリンダ室1を吸入口70に通じる低圧室7と吐出口80に通じる高圧室8とに区画するブレード9を進退自由に介装している。シリンダ2の上底面及び下底面は、図2に示すように、フロント側のシリンダヘッド21及びリア側のシリンダヘッド22により封鎖している。又、吐出口80の出口には、吐出弁81及び弁押え82を介装している。更に、ブレード9の背部は、連通部90を介してケーシング30における高圧の内部空間に臨ませている。 【0016】以上の構成において、ブレード9の頭部とローラ5の外周部との間を、ブレード9に対するローラ5の揺動動作を許容する遊びをもつ連結体10を介して相互に連結する。」(第3頁第3欄第42行から第4欄第16行。) ウ.「更に、図10に示すように、ブレード9の頭部に、高さ方向に延びる円形のジョイント16を一体化して、このジョイント16をローラ5に設ける係合穴17に係合させることにより連結を行うようにしてもよい。」(第5頁第7欄第1〜5行。) これらの記載によれば、引用文献には、「両端開口を閉塞されるシリンダ2と、このシリンダ2内を回転するローラ5と、前記ローラ5、シリンダ2とにより圧縮空間を形成すると共に、高圧室8と低圧室7とを仕切るブレード9とを備え、吸入した冷媒を圧縮して吐出するロータリー圧縮機において、前記ローラ5と前記ブレード9を揺動自在に接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ローラ5に形成された円筒形の係合穴17と、この係合穴17に揺動自在に嵌合し、前記ブレード9のローラ5側に設けられた、高さ方向に延びる円形のジョイント16とを備えたロータリー圧縮機。」との発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。 3.対比 本願補正発明と引用文献記載の発明とを比較すると、引用文献記載の発明の「シリンダ2」、「ローラ5」、「高圧室8と低圧室7とを仕切るブレード9」、「ロータリ圧縮機」、「円筒形の係合穴17」、「高さ方向に延びる円形のジョイント16」は、それぞれ、本願補正発明の「シリンダ」、「ローラ」、「高圧側と低圧側とを仕切るベーン」、「回転式圧縮機」、「円筒形の嵌合部」、「揺動部」に相当する。 したがって、両発明は、 「両端開口を閉塞されるシリンダと、このシリンダ内を回転するローラと、前記ローラ、シリンダとにより圧縮空間を形成すると共に、高圧側と低圧側とを仕切るベーンとを備え、吸入した冷媒を圧縮して吐出する回転式圧縮機において、前記ローラと前記ベーンを揺動自在に接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ローラに形成された円筒形の嵌合部と、この嵌合部に揺動自在に嵌合し、前記ベーンのローラ側に設けられた揺動部とを備えた回転式圧縮機。」である点で一致し、次の点で相違している。 <相違点> 本願補正発明においては、回転式圧縮機が、「密閉容器内を低圧または中間圧とし、二酸化炭素冷媒を超臨界域で用いる冷媒回路に設けられる」ものであるのに対し、引用文献記載の発明においては、このような構成となされていない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 二酸化炭素冷媒を超臨界域で用いる冷媒回路自体は本願出願前に周知の技術的事項である(特開平10-19401号公報、特開平10-115470号公報、特開平10-89785号公報、特開平10-246182号公報、特開平10-253177号公報。)。また、密閉型回転式圧縮機において、冷媒の高い動作圧力、高差圧に対応するため、密閉容器内を低圧または中間圧とすることも、本願出願前に周知の技術的事項である(特開平5-256285号公報、特開平7-318179号公報、特開平9-159297号公報、特開平10-169584号公報。)。 したがって、引用文献記載の発明に上記周知の技術的事項を適用し、引用文献記載の圧縮機を、密閉容器内を低圧または中間圧とし、二酸化炭素冷媒を超臨界域で用いる冷媒回路に設け、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び上記周知の技術的事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。 以上から、本願補正発明は、引用文献記載の発明及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [3]本願発明について 1.以上のとおり、平成17年5月30日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1、2に係る発明は、平成17年1月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。 「【請求項1】両端開口を閉塞されるシリンダと、このシリンダ内を回転するローラと、前記ローラ、シリンダとにより圧縮空間を形成すると共に、高圧側と低圧側とを仕切るベーンとを備え、吸入した冷媒を圧縮して吐出する回転式圧縮機において、冷媒として二酸化炭素を用い、前記ローラと前記ベーンを揺動自在に接続する接続手段を備え、この接続手段は、前記ローラに形成された円筒形の嵌合部と、この嵌合部に揺動自在に嵌合し、前記ベーンのローラ側に設けられた揺動部とを備えたことを特徴とする回転式圧縮機。」 2.引用文献記載の発明 引用文献には、上記[2]2.のとおりのものが記載されている。 3.対比、判断 本願補正発明は、本願発明をさらに限定するものであり、本願補正発明が、上記のとおり、引用文献記載の発明及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-27 |
結審通知日 | 2005-10-04 |
審決日 | 2005-10-17 |
出願番号 | 特願平10-289339 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F04C)
P 1 8・ 575- Z (F04C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田谷 宗隆、亀田 貴志 |
特許庁審判長 |
大橋 康史 |
特許庁審判官 |
関 義彦 飯塚 直樹 |
発明の名称 | 回転式圧縮機 |
代理人 | 芝野 正雅 |