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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1128022 |
審判番号 | 不服2002-12592 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-08 |
確定日 | 2006-01-10 |
事件の表示 | 平成4年特許願第266422号「配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成6年4月28日出願公開、特開平6-120668、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年10月6日の出願であって、その請求項1ないし7に係る発明は、平成11年9月21日付け、平成13年7月25日付け、平成14年8月7日付け及び平成15年1月14日付けの各手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 A.絶縁基板表面に第1の回路を形成する工程 B.その表面に、第1の感光性樹脂層を形成するために、エポキシ樹脂、カチオン重合型光開始剤及び熱硬化剤を含む組成物、又はアクリレートエポキシ樹脂、ラジカル重合型光開始剤及び熱硬化剤を含む組成物を、溶剤に混合し、離型フィルムに塗布し、乾燥することによって得られる、バイアホールを露光・現像で形成するための多層配線板の層間絶縁用感光性樹脂フィルムをラミネートする工程 C.第2の回路となる形状に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して露光し、露光しなかった箇所を選択的に除去する工程 D.残りの感光性樹脂層を粗化する工程 E.その表面に第2の回路を形成する工程 によって、第1の回路と第2の回路を接続するバイアホールを有する配線板の製造法において、 C工程の露光しなかった箇所を選択的に除去するために酸化性の水溶液を用いて、C工程中の除去段階と同時にD工程を行い、その後に中和することを特徴とする配線板の製造法。 【請求項2】 A.絶縁基板表面に第1の回路を形成する工程 B.その表面に第1の感光性樹脂層を形成するために、エポキシ樹脂、カチオン重合型光開始剤及び熱硬化剤を含む組成物、又はアクリレートエポキシ樹脂、ラジカル重合型光開始剤及び熱硬化剤を含む組成物を、溶剤に混合し、離型フィルムに塗布し、乾燥することによって得られる、バイアホールを露光・現像で形成するための多層配線板の層間絶縁用感光性樹脂フィルムをラミネートする工程 C.第2の回路となる形状に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して露光し、露光しなかった箇所を選択的に除去する工程 D.残りの感光性樹脂層を粗化する工程 E.その表面に第2の回路を形成する工程 F.前記工程B〜Eを必要な回路層数に応じて繰り返す工程 によって、第1の回路と第2の回路を接続するバイアホールを有する配線板の製造法において、 C工程の露光しなかった箇所を選択的に除去するために酸化性の水溶液を用い用いて、C工程中の除去段階と同時にD工程を行い、その後に中和することを特徴とする配線板の製造法。 【請求項3】 中和の後、露光した箇所を完全に硬化させた後に、残りの感光性樹脂層を粗化するためにさらに酸化性の水溶液を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線板の製造法。 【請求項4】 第2の回路となる形状に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して露光し、露光しなかった箇所を選択的に除去する工程において、露光した後であって、かつ露光しなかった箇所を選択的に除去する前に、溶剤によって膨潤することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかに記載の配線板の製造法。 【請求項5】 第2の回路となる形状に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して露光し、露光しなかった箇所を選択的に除去する工程において、露光した後、硬化した感光性樹脂表面の一部を粗化する前に、溶剤によって膨潤するために、ジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコール及びこれらの混合物のうちから選択されたものを用いることを特徴とする請求項4に記載の配線板の製造法。 【請求項6】 酸化性の水溶液として、6価のクロム化合物と7価のマンガン化合物からなる群の1種以上と、硫酸、リン酸、弗化ナトリウム、硼弗化水素酸、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群の1種以上との混合物を用いることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれかに記載の配線板の製造法。 【請求項7】 中和工程において、6価のクロム化合物又は7価のマンガン化合物を3価のクロム化合物又は6価のマンガン化合物に変えることを特徴とする請求項6に記載の配線板の製造法。」 (上記の各請求項に係る発明のうち、請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。) 2.原査定の理由の概要 これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1ないし7に係る発明は、本願出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 特開平1-197520号公報号公報(以下、「第1引用例」という。) 特開平1-253730号公報(以下、「第2引用例」という。) 特公平2-39111号公報(以下、「第3引用例」という。) 特公昭63-44821号公報(以下、「第4引用例」という。) 3.引用例の記載事項 (1)上記第1引用例には、プリント配線板製造用の「樹脂組成物」に関して、当該組成物を「ジアリルフタレートのプレポリマーと、多官能不飽和化合物と、光ラジカル重合開始剤と、エポキシ樹脂と、光カチオン重合開始剤および所定の硬化剤とからなる」ものとするとともに、上記樹脂組成物中の多官能不飽和化合物として、「エポキシ樹脂とアクリル酸あるいはメタクリル酸との反応によって生成されるエポキシアクリレートあるいはエポキシメタクリレート」が選択できること、また、現像には、「1,1,1-トリクロルエタンのような塩素系溶剤」を用いる旨の記載がある。(第1頁左下欄第3〜8行、第2頁右下欄第14行〜第3頁右上欄第7行、第4頁右下欄第17行〜第5頁左上欄第4行、参照) (2)上記第2引用例には、「多層印刷配線板製造に使用しうる層間絶縁皮膜形成用の感光性樹脂組成物」に関して、次のイ〜ハの各事項が記載されている。 イ 当該組成物は、「少なくとも1個以上のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した光重合性化合物」、「活性光線によりラジカルを発生する光重合開始剤」、「エポキシ硬化剤」、「微粒子充填材」、「化成処理により溶解除去可能な微粒子充填材」を含有する。(第1頁左下欄第5行〜同右下欄第11行、参照) ロ 「感光性樹脂組成物中に化成処理により溶解除去可能な微粒子充填材を含むため、感光性樹脂組成物の硬化膜に化成処理を施すことにより、硬化膜表面に微少な凹凸が形成される。このような表面上にめっきを施すと、この微少な凹凸の細部までめっき皮膜が形成される。」(第5頁右上欄第4〜9行) ハ 「銅張り積層板の表面を常法によりフォトエッチングして得られる印刷配線板上に前記感光性樹脂組成物の溶液をナイフコータを用いて塗布し、・・・感光性樹脂層を形成した。 ・・・黒円が形成されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯で・・・露光した。これを、クロロセン溶液で超音波現像処理することにより、印刷配線板上に・・・バイアホールを形成した。次いで、この配線板を超高圧水銀灯で・・・露光し、その後・・・加熱処理することによりフォトマスクフィルムに相当するバイアホールを有する寸法精度に優れた層間絶縁皮膜を得た。 ・・・この層間絶縁皮膜を温度70℃、濃度500g/lのクロム酸で15分粗化し、中和液・・・に浸漬して水洗いする。この被膜は、クロム酸に不溶なシリカ微粒子と、クロム酸に可溶なエポキシ樹脂微粒子を含むため、皮膜表面をクロム酸処理することにより非常に複雑な形状の粗化面を得た。」(第6頁右上欄第2行〜同左下欄第7行) (3)上記第3引用例には、「内層回路板の表面に絶縁層と接着剤層を順次積層する。この後スルーホール用の穴明けを行い、この穴明け後にCrO3水溶液のスミヤ処理液を用いてスミヤ処理を行い、穴内にシーダーを付着し、外層パターン用めつきレジストを塗布し、CrO3、H2SO4及びNaFとからなるスミヤ処理液でスミヤ除去処理と接着剤粗化を同時に行い、無電解銅めつきを行うことによりスルーホールと外層回路を形成して多層配線板を製造する」旨、及び、絶縁層を「エポキシ樹脂系インク」で形成する旨の記載がある。(第2頁第3欄第12〜21行、同欄第30〜32行、参照) (4)上記第4引用例には、化学メツキや電気メツキを用いて所要の回路を形成して印刷配線板とするために使用される接着剤被覆絶縁板の製造法に関して、「接着剤表面の粗化はメチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤で膨潤させたのち酸化性粗化液で溶解する。酸化性粗化液としては、酸化性のクロム混酸、クロム酸、ほう弗化水素酸液等がある」旨の記載がある。(第3頁第5欄第33〜37行、参照) 4.当審の判断 本願発明(請求項1に係る発明)の構成事項と、上記各引用例の記載事項とを対比すると、本願発明における「C工程の露光しなかった箇所を選択的に除去するために酸化性の水溶液を用いて、C工程中の除去段階と同時にD工程を行」う構成(以下、「相違点の構成」という。)は、上記いずれの引用例にも記載されていない。 もっとも、上記第3引用例には、「CrO3、H2SO4及びNaFとからなるスミヤ処理液でスミヤ除去処理と接着剤粗化を同時に行い、無電解銅めつきを行う」旨が記載されており、上記のスミヤ処理液は「酸化性の水溶液」といえるし、接着剤粗化は、本願発明のD工程に相当するものといえる。 しかし、スミヤ(ドリル加工時の摩擦熱で生じた溶融樹脂等の付着物)の除去処理と、現像処理(フォトマスクを介して露光し、露光しなかった箇所を選択的に除去する工程)とは、目的が大きく相違するというべきであり、上記第3引用例の記載に加えて、更に他の引用例の記載事項を併せ検討しても、上記相違点の構成が示唆されているとまではいえない。 そして、上記相違点の構成を含む本願発明の構成に係る作用効果についてみると、(1)従来の技術のように、フォトバイアホールの形成に、膨潤を強力にできる有機溶剤を使用しないので、回路銅と感光性樹脂層との界面に有機溶剤が進入せず、はんだ耐熱性の低下がない、(2)塩素系の溶剤を使用しないため、電食による絶縁抵抗の低下がない、(3)有機溶剤を多量に使用しないので、作業性、安全性に優れる、(4)現像と粗化とを同時に行うこともでき、作業性、経済性に優れる、というものであって、これらの作用効果は、上記各引用例の記載から、当業者が容易に予測できるといえるものではない。 したがって、本願発明は、上記各引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明に更なる限定を加える本願の請求項2以下に係る発明についても同様である。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2005-12-26 |
出願番号 | 特願平4-266422 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H05K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 豊島 ひろみ |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
永安 真 見目 省二 |
発明の名称 | 配線板の製造方法 |
代理人 | 津国 肇 |