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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1128343 |
審判番号 | 不服2003-5499 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-04-03 |
確定日 | 2005-12-22 |
事件の表示 | 特願2000-378843「有料グレードアップサービス提案システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月28日出願公開,特開2002-183281〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成12年12月13日の出願であって,平成15年2月26日付で拒絶査定がされ,これに対し,同年4月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年5月2日付で手続補正がなされたものである。 2.平成15年5月2日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年5月2日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は, 「ネットワークを介してサービス対象のクライアントサーバシステムと,サービスセンタ用コンピュータと,料金請求/回収センタ用コンピュータと,を備えたシステムからなり,そして,サービスセンタ用コンピュータと料金請求/回収センタ用コンピュータとは,ネットワークを介して情報を送受して,サービス対象のクライアントサーバシステムにサービスを提案する有料サービス提案システムであって, サービスセンタ用コンピュータは,サービス対象のクライアントサーバシステムの納入状況から納入後一定期間経過を判断してグレードアップの必要性を打診する機能を有したグレードアップ必要性打診手段と,該グレードアップ必要性打診手段によるグレードアップの必要性の打診に応じたサービス対象のクライアントサーバシステム側からのサービス作業の要請に応じて,クライアントサーバシステムの性能向上情報を提供する機能,クライアントサーバシステムのウイルス対策を提案する機能,クライアントサーバシステムの利用環境の改善策を提案する機能を有したグレードアップ作業実施手段とを備え, 料金請求/回収センタ用コンピュータは,グレードアップ作業を実施したサービスに応じた提供サービス料金を請求する機能を備えており, さらに,サービスセンタ用コンピュータは,料金請求/回収センタ用コンピュータが料金請求した提供サービス料金についての入金を確認する機能,を有することを特徴とする有料グレードアップサービス提案システム。」と補正された。 上記補正は,補正前の請求項5に記載された発明である,「サービスセンタ用コンピュータと,料金請求/回収センタ用コンピュータと,からなり,そして,サービスセンタ用コンピュータと料金請求/回収センタ用コンピュータとは,ネットワークを介して情報を送受して,サービス対象のクライアントサーバシステムにサービスを提案するシステムであって, サービス対象のクライアントサーバシステムの納入状況から納入後一定期間経過を判断してグレードアップの必要性を打診する機能,クライアントサーバシステムの性能向上情報を提供する機能,クライアントサーバシステムのウイルス対策を提案する機能,クライアントサーバシステムの利用環境の改善策を提案する機能,提供サービス料金を請求する機能,料金請求して提供サービス料金についての入金を確認する機能,を有することを特徴とするサービス提案システム。」を特定するために必要な事項である限定を付加するものであって,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-148801号公報(平成12年5月30日公開,以下,「引用例」という。)には,図面と共に次の記載が認められる。 (ア) 「【0003】この様なインターネット等の通信サービスにおいては,近年多くの仮想店舗が形成されており,利用者はインターネットを介した通信販売により商品またはサービスを購入することができる。プログラムやデータ等の商品をインターネットを介して購入することもできる。これらの商品又はサービスの代金は,クレジットカードの番号および有効期限をインターネット上で送信することにより支払うことが出来る。」 (イ) 「【0025】本発明の第12の形態の通信システムは,端末とは独立に更新される更新情報を格納し,この更新情報を通信網を介して端末の各々に対して所定回数送信する。従来のインターネットプロバイダは,インターネットブラウザ上で利用者に対して積極的に情報を伝える手段を有さなかった。しかしながら本発明によれば,例えば通信ソフトウエアを更新する必要がある場合のように,利用者に伝える重要性が強い情報を,所定回数だけ確実に端末に表示させることが出来る。 ・・・中略・・・ 【0028】本発明の第15の形態の通信システムでは,更新情報の送信からの経過時間が所定時間よりも長い場合に新たな更新情報を送信する。従って,例えば最後に更新情報を更新した時を所定時間とすることにより,全ての利用者に対して更新情報を1どづつ送信することが出来る。」 (ウ) 「【0084】商品の代金を支払うために十分な残パラメータがあれば,メッセージ分配装置39は支払応答をメッセージ管理装置24へ送信する(S162)。するとメッセージ管理装置24は,注文データをホストコンピュータ30へ通知する(S164)。ホストコンピュータ30は注文データをRAM94に格納して商品の送信または郵送処理を行う(S166)。次にホストコンピュータ30は購入通知をメッセージ管理装置24に送信する(S168)。 【0085】メッセージ管理装置24は,S156で受信した注文応答中の金額および注文商品のデータとS168で受信した金額および注文商品のデータとが同一であるか否かを判断する(S169)。同一であれば商品が適切に注文されたと判断して購入通知をメッセージ分配装置39へ送信する(S170)。するとメッセージ分配装置39は,先々月のパラメータ,先月のパラメータ,および今月のパラメータの順に,商品の代金を支払うために必要なパラメータ数を減じる(S170)。また,支払をすべき事をログへ記録する(S172)。」 (エ)「【0116】図33に,本実施形態における更新情報の例を示す。更新情報には,ソフトウエアをダウンロードするか否かを入力させるボタンが表示されている。利用者はそのメッセージビューワ76の入手を希望する,あるいは希望しない旨を更新応答としてメッセージ分配装置39に送信する(S130)。メッセージ分配装置39は,その更新応答に応じてソフトウエアをダウンロードするか否かを判断する(S131:更新処理)。ソフトウエアをダウンロードする旨判断した場合には,そのソフトウエアをメッセージビューワ76の接続モジュール80に送信する(S132:ダウンロード)。利用者は,上述の処理により,メッセージビューワ76をアップグレードするソフトウエアを入手することができる。この場合,メッセージビューワ76が切替えられ(S133),アップグレードされたメッセージビューワ76によって,通信,画像表示等が制御させる。利用者は,その他のソフトウエアもメッセージビューワ76とメッセージ分配装置39との通信を通じて入手することができる。ソフトウエアはメッセージ分配装置39から送信されると端末10のハードディスクドライブ50に格納される。」 (オ) 「【0131】11 実施形態11 上記実施形態では,支払システム35はクレジットカードを用いて商品の代金を支払った。しかし「支払システム」には,商品の取扱店に代金を支払う機能を有する全てのシステムが含まれる。例えば,利用者の銀行口座から取扱店に代金を振り替えるシステム,または利用者の銀行口座から一旦支払システム用の銀行口座に代金を引き下ろし,更に商品の取扱店に代金を振り込むシステムであっても良い。」 (3)対比 本願補正発明と引用例に記載された発明(以下,「引用発明」という。)とを比較する。 引用発明に示された,「インターネット等の通信サービスにおいて」,「利用者はインターネットを介し」て「プログラムやデータ等の商品をインターネットを介して購入することもでき」,「これらの商品又はサービスの代金は,クレジットカードの番号および有効期限をインターネット上で送信することにより支払う」(前掲(ア))ことから,「利用者」が本願補正発明の「クライアント」に相当し,クライアントサーバシステムが当業者に自明の事項であることを考慮し,更に課金についても示されていることから,本願補正発明の基本的な構成を備えたシステムが引用発明に示されているといえる。 また,引用例の図35に示された「支払いシステム」は,本願補正発明の「料金請求/回収センタ用コンピュータ」に相当するとみることになんら不都合は生じない。 以上を踏まえると,本願補正発明と引用発明とは,次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】ネットワークを介してサービス対象のシステムと,サービスセンタ用コンピュータと,料金請求/回収センタ用コンピュータと,を備えたシステムからなり,そして,サービスセンタ用コンピュータと料金請求/回収センタ用コンピュータとは,ネットワークを介して情報を送受して,サービス対象のシステムにサービスを提案する有料サービス提案システム。 【相違点1】本願補正発明のサービス対象がクライアントサーバシステムであるのに対し,引用発明の対象とするものが引用例の段落【0025】に「例えば通信ソフトウエアを更新する必要がある場合」と例示されるように,納入されたクライアントサーバシステムでない点。 【相違点2】本願補正発明が,サービスセンタ用コンピュータは,サービス対象のクライアントサーバシステムの納入状況から納入後一定期間経過を判断してグレードアップの必要性を打診する機能を有したグレードアップ必要性打診手段と,該グレードアップ必要性打診手段によるグレードアップの必要性の打診に応じたサービス対象のクライアントサーバシステム側からのサービス作業の要請に応じて,クライアントサーバシステムの性能向上情報を提供する機能,クライアントサーバシステムのウイルス対策を提案する機能,クライアントサーバシステムの利用環境の改善策を提案する機能を有したグレードアップ作業実施手段とを備えているのに対し,引用発明には,具体的なグレードアップ手段について明記されていない点。 【相違点3】本願補正発明の料金請求/回収センタ用コンピュータは,グレードアップ作業を実施したサービスに応じた提供サービス料金を請求する機能を備えており,さらに,サービスセンタ用コンピュータは,料金請求/回収センタ用コンピュータが料金請求した提供サービス料金についての入金を確認する機能,を有するのに対し,引用発明には,支払いシステムが有する機能について詳細に記載されていない点。 (4)当審の判断 ア 相違点1について 本願補正発明のクライアントサーバシステムのグレードアップがソフトウエアの更新を含むことから,引用発明のサービス対象として通信ソフトウエアの更新が例示されている技術を,クライアントサーバシステムのソフトウエアの更新に適用することは,当業者であれば容易に推考できたものと認められる。 イ 相違点2について 引用発明では,プログラムをインターネットを介して購入することができ,第15の形態の通信システムでは,「更新情報の送信からの経過時間が所定時間よりも長い場合に新たな更新情報を送信する」(前掲(イ))ものである。 ここで,プログラムの購入はソフトウエアを更新することに相当し,ソフトウエアには種々のものがあることは,本願出願時点において既に当業者に周知な事項で,ウイルス対策ソフトもその一つである。 この点については,原査定の拒絶の理由に引用された「ウイルス検出通知システム,・・・」と題する特開平11-134190号公報にも開示されている。 また,ソフトウエアを更新する際には,引用例の図33(前掲(エ))に示されるように利用者の確認を取ることは常識であり,利用者の承認の後,ソフトウエアをグレードアップすることは,引用発明にも本願補正発明と同様の技術が示されているといえる。 さらに,提案するサービス内容は,上記ソフトウエアに限らず,ハードウエアの改善を伴う利用環境の改善を含ませることは当業者が適宜実施できる設計事項にすぎない。 そうすると,上記相違点2は,引用発明の記載に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のものと認められる。 ウ 相違点3について 商品やサービスを売買するシステムとして,売手が商品やサービスの料金を請求し,その後,買手からの入金を確認することは,一般社会の常識である。 引用発明においても商品代金の支払いシステムが図35として示され,代金を支払う機能としてクレジットカード以外に,種々のものがあることも示されており(前掲(オ)),上記相違点2は,当業者がビジネスの基本に基づき普通に行うことにすぎず,当業者であれば容易に推考できる程度の事項と認められる。 そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するので,同法159条1項で準用する53条1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成15年5月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項5に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成15年1月27日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「サービスセンタ用コンピュータと,料金請求/回収センタ用コンピュータと,からなり,そして,サービスセンタ用コンピュータと料金請求/回収センタ用コンピュータとは,ネットワークを介して情報を送受して,サービス対象のクライアントサーバシステムにサービスを提案するシステムであって,サービス対象のクライアントサーバシステムの納入状況から納入後一定期間経過を判断してグレードアップの必要性を打診する機能,クライアントサーバシステムの性能向上情報を提供する機能,クライアントサーバシステムのウイルス対策を提案する機能,クライアントサーバシステムの利用環境の改善策を提案する機能,提供サービス料金を請求する機能,料金請求して提供サービス料金についての入金を確認する機能,を有することを特徴とするサービス提案システム。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明からサービス提案システムの詳細な構成を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-10-18 |
結審通知日 | 2005-10-25 |
審決日 | 2005-11-07 |
出願番号 | 特願2000-378843(P2000-378843) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
岡本俊威 佐藤敬介 |
発明の名称 | 有料グレードアップサービス提案システム |
代理人 | 特許業務法人第一国際特許事務所 |