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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G |
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管理番号 | 1128415 |
審判番号 | 不服2003-2914 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-02-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-02-24 |
確定日 | 2005-12-26 |
事件の表示 | 平成11年特許願第217835号「ベッド等における背膝連動制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月13日出願公開、特開2001- 37820号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年7月30日の出願であって、平成15年2月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成15年2月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月20日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年3月20日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年3月20日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「ベッド等の背ボトムを背上げする際、前記背ボトムの背上げ動作に先立って、膝ボトムの膝上げ動作を行わせるようにし、前記背ボトムの背上げ機構および膝ボトムの膝上げ機構の駆動源の動作量から、前記背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角を監視しつつ、背上げおよび膝上げ動作させ、膝ボトムが所定の膝上げ角度に達したら膝上げ機構の動作を停止させ、さらに背上げを続行する場合は、前記背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角が必要以上に狭まらないように、前記膝ボトムを前記所定の膝上げ角度から復帰方向に動作させるようにしたことを特徴とするベッド等における背上げ制御方法。」 と補正された。 上記補正により、補正前請求項1が削除され、補正前請求項1を引用する補正前請求項2が補正後請求項1に対応するものとなった。 そして、補正後請求項1には、引用する補正前請求項1に記載された、発明を特定するのに必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)を含め、補正前請求項2に記載された発明特定事項のすべてが記載されている。 そして、補正後請求項1には、該補正前請求項2に記載された発明特定事項のうち、「背ボトムおよび膝ボトムの調節状態を監視」する工程を、「背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角を監視」する工程に限定し、「膝ボトムが所定の調節状態」に達したら膝上げ機構の動作を停止」させる工程を、「膝ボトムが所定の膝上げ角度に達したら膝上げ機構の動作を停止」させる工程に限定し、更に、「膝ボトムを所定の調節状態から、逆に復帰調節させる」工程を、「背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角が必要以上に狭まらないように、前記膝ボトムを前記所定の膝上げ角度から復帰方向に動作させる」工程に限定したものである。 したがって、上記補正は、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-308547号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がされている。 a. 「床部の背上げ機構および脚上げ機構を備えたベッド等において、所定角度まで背に対応する床部を起床させると共に、脚上げ機構を起動して脚上げを行なうことで床部に対する身体のずれを抑えるようにし、前記背に対応する床部を所定角度から最大起床角度まで起床させる際に、脚に対応する床部を平坦側に戻すようにすることで、床部から身体への圧迫を抑えるようにすることを特徴とするベッド等における床部の連動制御方法。」(請求項1)、 b. 「従来から、ベッド等には、床部起伏機構がすでに広汎に採用されている。前記床部起伏機構には、例えば背上げ機構、膝上げ機構(脚上げ機構)があり、その他、床部全体が上下する床部昇降機構も採用されている。ところで、前記背上げ機構および膝上げ機構は、従来、さまざまな動作の仕方があり、これらの動作を時間と動作角度(背に対応する床部の起伏角度、膝または脚に対応する床部の起伏角度)との関係のグラフで示すと、図5〜図7の通りである。先ず、図5に示す動作パターンでは、背上げ機構および膝上げ機構を同時に起動し、それぞれ一定の割合で起床させていくようにしている。また図6に示す動作パターンでは、当初膝上げ機構を起動して膝または脚に対応する床部を隆起させておき、次いで背上げ機構を起動して背に対応する床部を起床させていく。この背に対応する床部がある角度まで起床すると、今度は、膝上げ機構を逆に起動して膝または脚に対応する床部を下げていくようにする。これは、背に対応する床部と膝に対応する床部との角度がある角度以下になって、使用者が圧迫されないようにするためである。さらに図7に示す動作パターンでは、膝または脚に対応する床部の起床角度をある程度まで抑えておき、背に対応する床部を一定の割合で起床させていくようにしている。」(第2ページ段落【0002】)、 c. 「図6に示す動作パターンのように膝が上がっている状態で、背上げを行なう際、背に対応する床部が上がって膝に対応する床部との角度がある角度以下になると、膝に対応する床部を下げるようにしているが、このように背に対応する床部を上げる前に、膝に対応する床部をある角度以上に上げておかなければ、背に対応する床部が上がっていくにつれて身体が前記床部によって押し込まれて、身体が脚側にずれてしまうこととなる。」(第2ページ段落【0003】)、 d. 「前記背床1aには、図示しない電動式の背上げ機構と動力的に連結されている。また、前記腰床1bは、ベッドフレーム(図示省略)に固設されている。そして、前記膝床1cと脚床1dとの連結部が、脚上げ機構(膝上げ機構)と動力的に連結されている。」(第2ページ段落【0005】)、 e. 「先ず、(1)床部1を平坦な状態から、背床1aの角度を例えば0°から45°まで起床させるときは、脚上げ機構も同時に動作させて膝床1cと脚床1dとの連結箇所を上昇させ、使用者の身体がずれないようにすることを目的とする(図2参照)。次に、(2)背床1aの角度を45°から最大起床角度まで起床させるときは、脚上げ機構を逆に動作させて膝床1cと脚床1dとの連結箇所を下降させていく。これにより、使用者の身体が圧迫されるのを軽減することを目的とする(図3参照)。 前述の背床1aの角度を0°から45°まで起床させるときは、脚上げ機構を大きく動作させて膝床1cと脚床1dとの連結箇所を限界近くまで上昇させるようにしている。そして、背床1aの角度を45°から最大起床角度まで起床させるときは、脚上げ機構を逆に動作させて膝床1cと脚床1dとの連結箇所を下降させていくので、背床1aと膝床1cとがなす角度が徐々に拡がっていき、使用者の身体に対する、床部1から受ける圧迫感を減らすことができる。以上の床部1の制御動作を時間と角度の関係のグラフで示すと、図4のように示すことができる」(第3ページ段落【0006】-【0007】) f. 第4図には、背床と膝床が、初めはそれぞれ一定の速度で傾動していき、途中で膝床だけ、背床とは逆の向きに傾動していくことが示されている。 上記e.の事項から、引用例においては、背床1aと膝床1cとがなす角度(挟み角)が使用者を圧迫しない範囲で、必要以上に狭まらないように背ボトムの背上げ動作と、膝ボトムの膝上げ動作とを行わせているものと解することができる。 また、上記e.の事項の、「脚上げ機構を逆に動作させて膝床1cと脚床1dとの連結箇所を下降させていく」動作の前には、一端、膝上げ機構を停止させることは明白である。 したがって、上記引用例に記載された事項を総合すると、引用例には、 「ベッド等の背床1aを背上げする際、前記背床1aの背上げ動作と同時に膝床1cの膝上げ動作を行わせるようにし、前記背床1aの角度に基づいて、前記背床1aと膝床1cとがなす角度が使用者を圧迫しない範囲で、背上げおよび膝上げ動作させ、背床1aが所定の角度に達したら、膝上げ機構の動作を停止させ、さらに背上げを続行する場合は、前記背床1aと膝床1cとの間の挟み角が必要以上に狭まらないように、前記膝床1cを、その時点の膝上げ角度から逆方向に動作させるようにした、ベッド等における背上げ制御方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 そこで本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「背床1a」及び「膝床1c」は、その技術的意義から見て、それぞれ本願補正発明の「背ボトム」及び「膝ボトム」に相当する。また、引用発明の「その時点の膝上げ角度から逆方向に動作させる」ことは、その技術的意義からみて、本願補正発明の「所定の膝上げ角度から復帰方向に動作させる」ことに相当する。 引用発明の「前記背床1aの背上げ動作と同時に膝床1cの膝上げ動作を行わせる」ことと、本願発明の「前記背ボトムの背上げ動作に先立って、膝ボトムの膝上げ動作を行わせる」こととは、「前記背ボトムの背上げ動作と、膝ボトムの膝上げ動作とを連係して行わせる」点の限りでは一致しているといえる。 そして、引用例に記載された上記d.及びe.の事項、並びに第4図に示されている f. の事項を総合すると、引用発明の制御方法では、背床が所定の角度になるまでは、背床と膝床をそれぞれ一定の速度で傾動するのだから、背床と膝床の間の挟み角は、背床の角度に対して一義的に決定されるものである。 そうすると、引用発明の、「背床1aの角度に基づいて」、「背上げおよび膝上げ動作」させることは、背床と膝床の間の挟み角を監視つつ背上げおよび膝上げ動作させることにほかならない。 したがって、本願補正発明と引用発明は、「背床と膝床の間の挟み角を監視しつつ、背上げおよび膝上げ動作をさせる」限りにおいても一致しているといえる。 したがって、両者は、 「ベッド等の背ボトムを背上げする際、前記背ボトムの背上げ動作と、膝ボトムの膝上げ動作とを連係して行わせるようにし、前記背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角を監視しつつ、背上げおよび膝上げ動作させ、前記背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角が所定の角度に達したら膝上げ機構の動作を停止させ、さらに背上げを続行する場合は、前記背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角が必要以上に狭まらないように、前記膝ボトム所定の膝上げ角度から復帰方向に動作させるようにした、ベッド等における背上げ制御方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 背ボトムの背上げ動作と、膝ボトムの膝上げ動作とを連係して行わせるに際し、本願補正発明においては、「背ボトムの背上げ動作に先立って、膝ボトムの膝上げ動作を行わせる」ようにしているのに対して、引用発明においては、「背床1aの背上げ動作と同時に膝床1cの膝上げ動作を行わせる」ようにしている点。 相違点2 背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角を監視しつつ、背上げおよび膝上げ動作させるにあたり、本願補正発明においては、「背ボトムの背上げ機構および膝ボトムの膝上げ機構の駆動源の動作量」に基づいて行っているのに対して、引用発明においては、「背床1aの角度」に基づいて行っている点。 相違点3 膝上げ機構の動作を停止させる時点に関して、本願補正発明においては「膝ボトムが所定の膝上げ角度」に達した時点であるのに対して、引用発明においては、「背床1aが所定の角度」に達した時点としている点。 (4)当審の判断 相違点1について 上記引用例に記載された事項b.には、従来技術として「当初膝上げ機構を起動して膝または脚に対応する床部を隆起させておき、次いで背上げ機構を起動して背に対応する床部を起床させていく」ことが記載されている。また、上記c.には、同じく従来技術として、「背に対応する床部を上げる前に、膝に対応する床部をある角度以上に上げておかなければ、背に対応する床部が上がっていくにつれて身体が前記床部によって押し込まれて、身体が脚側にずれてしまう」と記載されている。即ち、引用例には、従来技術として、「背上げ動作の前に、予め、膝上げ動作を行わせる技術」(以下「引用例に記載された技術」という。)が記載されている。 上記引用例に記載されたd.及びe. の事項から、引用発明の背床及び膝床は、それぞれ背上げ機構及び膝上げ機構により駆動されるものであって、且つ、それぞれ独立して制御可能なものであるから、引用発明の、背ボトムの背上げ動作と、膝ボトムの膝上げ動作とを連係して行わせるに際し、上記引用例に記載された技術を参酌して、「背ボトムの背上げ動作に先立って、膝ボトムの膝上げ動作を行わせる」ようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。 相違点2について 上記引用例に記載されたd.及びe.の事項から、引用発明の背床及び膝床は、それぞれ背上げ機構及び膝上げ機構により駆動されるものであること、並びに、上記2.[理由](3)で述べたとおり、引用発明において、背床と膝床の間の挟み角は、背床の角度に対して一義的に決定されるものであることを考慮すると、背床(背ボトム)と膝床(膝ボトム)間の挟み角を、「背床(背ボトム)の角度」に基づいて監視するか、あるいは「背上げ機構および膝上げ機構の駆動源の動作量」に基づいて監視するかは、当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。 相違点3について 上記2.[理由](3)で述べたとおり、引用発明において、背床の背上げ動作と膝床の膝上げ動作は連係して行われるものであり、また、背床と膝床の間の挟み角は、背床の角度に対して一義的に決定されるものであることを考慮すると、膝上げ機構の動作の停止を、膝床が所定の膝上げ角度に達したら行うか、或いは背床の角度が所定角度に達したら行うかは当業者が適宜選択し得る程度のことにすぎない。 そして、上記相違点1乃至3の点を総合して判断しても、本願補正発明が、引用発明及び引用例に記載された技術から予測できない格別の効果を奏するものとも解されない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、及び引用例に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年3月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年6月24日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ベッド等の背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を行う際、前記背ボトムの背上げ機構および膝ボトムの膝上げ機構の駆動源の動作量から、それぞれ背ボトムおよび膝ボトムの調節状態を監視して、膝ボトムが所定の調節状態に達したら膝上げ機構の動作を停止させ、さらに、背ボトムの傾斜調節を続行することで、前記膝ボトムを所定の調節状態から、逆に復帰調節させるように膝上げ機構を作動させるようにしたことを特徴とするベッド等における背膝連動制御方法。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比 本願発明は、上記2.[理由](1)で検討した本願補正発明の、「背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角を監視」するとの限定を省いて、「背ボトムおよび膝ボトムの調節状態を監視」する工程とし、「膝ボトムが所定の膝上げ角度に達したら膝上げ機構の動作を停止」させるとの限定を省いて、「膝ボトムが所定の調節状態に達したら膝上げ機構の動作を停止」させる工程とし、更に、「背ボトムおよび膝ボトム間の挟み角が必要以上に狭まらないように、前記膝ボトムを前記所定の膝上げ角度から復帰方向に動作させる」との限定を省いて、「膝ボトムを所定の調節状態から、逆に復帰調節させる」工程としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.[理由](4)に記載したとおり、引用発明及び引用例に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-01 |
結審通知日 | 2005-11-01 |
審決日 | 2005-11-14 |
出願番号 | 特願平11-217835 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61G)
P 1 8・ 121- Z (A61G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土田 嘉一、山口 直 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
一色 貞好 稲村 正義 |
発明の名称 | ベッド等における背膝連動制御方法 |
代理人 | 三觜 晃司 |