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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1128629
審判番号 不服2003-11921  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-26 
確定日 2006-01-06 
事件の表示 平成11年特許願第 40267号「水晶体模擬光学フィルタおよび水晶体模擬光学フィルタの製造方法並びに高齢者視認性の模擬体験用機器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-241624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年2月18日の出願であって、平成15年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成15年6月26日に審判請求がなされるとともに、同年7月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、請求項の削除を目的とした平成15年7月25日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「屈折率の異なる少なくとも2種類の光学薄膜のうち同一光学薄膜を連続積層させないで基板上に複数積層した水晶体模擬光学フィルタであって、該水晶体模擬光学フィルタは、積層される光学薄膜の膜厚を、周期的な繰り返しがないようにして、前記光学薄膜を16層乃至20層の範囲の層数に積層していることを特徴とする水晶体模擬光学フィルタ。」

3.引用刊行物に記載された発明
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-129316号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「模造高齢者眼」の発明に関して、以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「波長約400nmの透過率が0.84±0.03、約600nmの透過率が0.955±0.03で、約400nmから約600nmの透過率が波長の増加に対してほぼ直線的に上昇し、約600nm以上の透過率が0.955±0.03でほぼ一定の特性を有する、年齢増加による人間の眼の水晶体の黄色化特性をシミュレートできる模造高齢者眼。」(第1ページ左下欄第5〜10行)
<記載事項2>
「本発明は、このような点を解決したものであり簡易な特性により、若年齢者に対して高齢者の視覚特性とくに眼の水晶体の黄色化の特性を眼鏡あるいはコンタクトレンズのような簡易な方法によりシミュレートできる模造高齢者眼を提供するものである。」(第2ページ右上欄第3〜8行)
<記載事項3>
「さらに、これらの分光透過率の値にもとずき、20才の水晶体の分光透過率を基準として、30才、40才、50才、60才それぞれの年齢の水晶体の透過率に変換する変換フィルタの分光透過率を求めた。第1図にその結果を示す。第1図で1は、20才の水晶体の分光透過率から30才のそれに変換するフィルタの分光透過率である。つまり、1の特性をもつフィルタを年齢20才の眼の前に眼鏡あるいはコンタクトレンズなどを装着させることにより、20才の眼の特性をもつ観測者が30才の眼の特性を持つことができ、30才の人が視対象物をどのように見ているかを、20才の人でも体験・評価できることになる。2は、20才の水晶体の透過率を40才のそれに変換するフィルタの分光透過率特性を示す。3、4は、それぞれ50才、60才の眼の特性に変換するフィルタの分光透過率特性を示す。このように、第1図に示す1〜4の各フィルタのいずれかを用いれば、20才の視覚特性を30才、40才、50才、60才のいずれかに変換するできることになる。本発明は、第1図に示す1〜4の分光透過特性を有するフィルタを眼鏡あるいはコンタクトレンズなどとして使用する高齢者用の眼の視覚特性をシミュレートする模造高齢者眼に関するものである。」(第2ページ右下欄第2行〜第3ページ左上欄第5行)
<記載事項4>
「第1図に示す1〜4の各フィルタを別々に用いても高齢者眼がシミュレートできるが、第1図の1〜4の分光透過特性から明らかなように、約400nmから約600nmの波長領域では、波長の増加とともに分光透過率はほぼ直線的に上昇し、約600nm以上の波長領域では、分光透過率はほぼ一定である。このような特性を有するため、第1図の1〜4の分光透過特性を総合的に分析した結果、第1図の1の分光透過特性が年齢の増加にともなう水晶体の分光透過率の変化を代表できることが明らかになった。つまり、第1図の1の分光透過率特性を持つフィルタを2枚重ねれば、20才年齢増加させた水晶体の透過率特性に、3枚、4枚、と重ねれば、それぞれ、30才、40才、年齢増加された水晶体の透過率特性をシミュレートすることができる。」(第3ページ左上欄第4〜20行)

したがって、上記記載事項1乃至4及び第1図に基づけば、引用刊行物1には、「年齢増加による人間の眼の水晶体の黄色化特性をシミュレートできるフィルタ」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

同じく、本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭48-88947号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「色補正用ダイクロイック薄膜フィルタ」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
<記載事項5>
「この発明は光学フィルタ、特に透過光の色特性を加減する光学フィルタに関する。」(第1ページ右下欄第6〜7行)
<記載事項6>
「入射光の色温度領域が高いときは、この色温度範囲を変換するためのダイクロイック薄膜コーティングは、入射光の色温度領域が低いときのコーテングよりも層の数が多く要る。(中略)尤も、これらの層数は例示の場合に限定されるものではなく、上記例よりも多く又は少なくしてもよい。」(第2ページ右下欄第16行〜第3ページ左上欄第10行)
<記載事項7>
「第1表は色温度5,500°Kを見掛けの色温度3,200°Kに変換するフィルタの実施例の一例で、低屈折率の材料としてフッ化マグネシウム(MgF2)、高屈折率の材料として酸化チタン(TiO2)の2種を用い、層数は6層である。
第 1 表
層 屈折率 光学的厚さ(単位:波長) 材料
1 1.88 0.2956 MgF2
2 2.85 0.1277 TiO2
3 1.88 0.2187 MgF2
4 2.85 0.2826 TiO2
5 1.88 0.2294 MgF2
6 2.85 0.1949 TiO2
基材 1.52 ― ―
(なお、罫線が引かれているが、表記上省略した。)」(第4ページ左上欄第17行〜同右上欄第3行)
<記載事項8>
「第5図には、色温度5,500°Kを見掛けの色温度3,200°Kに変換するフィルタの理想スペクトル特性曲線i(実線)と表1の実施例のスペクトル特性曲線j(破線)を示す。曲線jは曲線iに極めて近似していることが判る。」(第4ページ右上欄第4〜8行)
<記載事項9>
「第2表は色温度4,500°Kを見掛けの色温度3,200°Kに変換するフィルタの一実施例であり、低屈折率の材料としてフッ化マグネシウム(MgF2)、石英(SiO2)の2種、高屈折率の材料として酸化チタン(TiO2)の計3種の材料を6層に形成したものである。
第 2 表
層 屈折率 光学的厚さ(単位:波長) 材料
1 1.88 0.8148 MgF2
2 2.85 0.1118 TiO2
3 1.55 0.2220 SiO2
4 2.85 0.2868 TiO2
5 1.55 0.2449 SiO2
6 2.85 0.2020 TiO2
基材 1.52 ― ―
(なお、罫線が引かれているが、表記上省略した。)」(第4ページ右上欄第9行〜同左下欄第5行)
<記載事項10>
「第6図は、第2表の実施例のスペクトル特性曲線(破線のl)(原文では筆記体で記載されている。)と色温度5,500°Kを3,200°Kに変換したときの理想スペクトル特性曲線(実線のk)とを対比したものであり、曲線l(原文では筆記体で記載されている。)は曲線kと極めて近似していることが知れる。」(第4ページ左下欄第6〜10行)
<記載事項11>
「第3表は、色温度6,000°Kを見掛けの色温度3,200°Kに変換するフィルタの一実施例を示し、低屈折率の材料としてフッ化マグネシウム(MgF2)1種と、高屈折率の材料として酸化ジルコン(ZrO2)及び酸化チタン(TiO2)2種との計3種の材料を8層に形成したものである。
第 3 表
層 屈折率 光学的厚さ(単位:波長) 材料
1 1.88 0.4079 MgF2
2 2.05 0.1185 ZrO2
3 1.88 0.1886 MgF2
4 2.85 0.2300 TiO2
5 1.88 0.2590 MgF2
6 2.85 0.2310 TiO2
7 1.88 0.1847 MgF2
8 2.05 0.1716 ZrO2
基材 1.52 ― ―
(なお、罫線が引かれているが、表記上省略した。)」(第4ページ左下欄第11行〜同右下欄第7行)
<記載事項12>
「第7図は、第3表の実施例のスペクトル特性曲線(破線のa)と色温度6,000°Kを3,200°Kに変換したときの理想スペクトル特性曲線(実線のm)とを対比して示すもので、この実施例の特性曲線nも理想特性曲線mに近似していることが明瞭である。」(第4ページ右下欄第8行〜第5ページ左上欄第4行)
<記載事項13>
「なお、フィルタの特性を最適なものにするため光学的厚さを若干変えてもよい。上記第1表乃至第5表における光学的厚さは510nmの波長を単位とするものであり、層の番号は若いほど基材の外側にある。」(第5ページ左下欄第3〜4行)
<記載事項14>
第5乃至7図には、第1乃至3表の実施例のフィルタの特性がそれぞれ記載され、いずれのフィルタも約400nmから約700nmの波長の増加に対して光の透過率がほぼ直線的に上昇する特性を有することが記載されている。

4.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「年齢増加による人間の眼の水晶体の黄色化特性をシミュレートできるフィルタ」は、本願発明の「水晶体模擬光学フィルタ」に相当するので、両者は、「水晶体模擬光学フィルタ」の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
水晶体模擬光学フィルタについて、本願発明は、屈折率の異なる少なくとも2種類の光学薄膜のうち同一光学薄膜を連続積層させないで基板上に複数積層し、積層される光学薄膜の膜厚を、周期的な繰り返しがないようにして、前記光学薄膜を16層乃至20層の範囲の層数に積層しているのに対して、引用発明は、水晶体模擬光学フィルタの具体的構成についての限定がなされていない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明の水晶体模擬光学フィルタ及び引用刊行物2記載の色補正フィルタは、供に、光学フィルタという技術分野に属する発明である。
また、引用発明の水晶体模擬光学フィルタは、約400nmから約600nmの波長の増加に対して光の透過率がほぼ直線的に上昇する特性を有し、引用刊行物2には、色補正フィルタが約400nmから約700nmの波長の増加に対して光の透過率がほぼ直線的に上昇する特性を有することが記載されているので(記載事項14)、引用発明の水晶体模擬光学フィルタ及び引用刊行物2記載の色補正フィルタは、いずれも光の透過率がほぼ直線的に上昇する波長域がほぼ一致する特性を有する光学フィルタといえる。
さらに、引用刊行物1及び2の記載からみて、引用発明の水晶体模擬光学フィルタの具体的な構成として、引用刊行物2に記載された色補正フィルタの基本的構成、すなわち光学薄膜からなる各層の構成材料、屈折率、積層順序、膜厚の関係を適用する際の阻害要因はないといえる。
したがって、引用刊行物2に記載された色補正フィルタの上記の基本的な構成を引用発明の水晶体模擬光学フィルタに適用することは当業者ならば容易に想到できるといえる。

そして、引用刊行物2の第1乃至3表(記載事項7,9,11)に記載された色補正フィルタの各実施例における、光学薄膜からなる各層の構成材料、屈折率、積層順序、膜厚の関係からみて、引用刊行物2には、屈折率の異なる少なくとも2種類の光学薄膜のうち同一光学薄膜を連続積層させないで基板上に数層積層し、且つ積層される光学薄膜の膜厚を、周期的な繰り返しがないようにした色補正フィルタが記載されているので、引用刊行物2に記載された色補正フィルタの基本的構成を引用発明の水晶体模擬光学フィルタに適用したフィルタは、光学薄膜の層数を除いて、本願発明と同様な構成を有する水晶体模擬光学フィルタとなる。

そこで、本願発明における「光学薄膜を16層乃至20層の範囲の層数に積層している」点について検討する。
引用刊行物2には、色補正フィルタを構成する光学薄膜の層数を実施例の6層、8層に限定されるものではなく、多く又は少なくしてもよいと旨が記載されている点(記載事項6)、本願発明において、各光学薄膜の構成材料、屈折率、積層順序、膜厚等が具体的に限定されていない点、及び本願明細書を参照しても、16〜20層にした点に格別な技術的な意味があるとはいえない点を総合的に勘案すると、引用刊行物2に記載された光学薄膜の8層から本願発明の16層乃至20層の範囲の層数に変更することは、必要に応じて適宜になし得る設計事項といえる。

また、本願発明の効果は、引用刊行物1及び引用刊行物2の記載から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、相違点に係る発明特定事項は、引用発明及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことといえる。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2005-10-26 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-16 
出願番号 特願平11-40267
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 峰 祐治  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 上野 信
青木 和夫
発明の名称 水晶体模擬光学フィルタおよび水晶体模擬光学フィルタの製造方法並びに高齢者視認性の模擬体験用機器  
代理人 秋山 敦  
代理人 秋山 敦  
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