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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1128724
審判番号 不服2002-23735  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-10 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 特願2000-159669「デジタルコンテンツのレンタル方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 7日出願公開、特開2001-338049〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年5月30日の出願であって、平成14年11月12日に拒絶査定がなされ、これに対して同年12月10日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同日に手続き補正がなされたものである。

2.平成14年12月10日付けの手続補正に関する補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年12月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)平成14年12月10日日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、補正前の
「【請求項1】 所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と、前記再生ソフトで再生可能なデジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、前記デジタルコンテンツを前記コンピュータにダウンロードしてからの時間を計測し、予め設定した時間を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記時間を計測するプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項2】 所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と、前記再生ソフトで再生可能なデジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、前記デジタルコンテンツを前記再生ソフトを用いて再生した回数をカウントし、予め設定した回数を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項3】 所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と、前記再生ソフトで再生可能なデジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、前記デジタルコンテンツを前記コンピュータにダウンロードしてからの時間を計測し、前記デジタルコンテンツを前記再生ソフトを用いて再生した回数をカウントし、予め設定した時間を経過したか又は予め設定した回数を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記時間を計測するプログラムと前記回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項4】 前記予め設定した時間又は回数は、前記デジタルコンテンツをダウンロードする際に設定されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項5】 前記ユーザーがレンタルしたデジタルコンテンツの情報をレンタル業者のメモリに蓄積しておき、この蓄積されたデジタルコンテンツの情報からユーザーの好みを分析し、好みに合うと判断される新たなデジタルコンテンツがレンタル業者のサーバーに記録されたならば、その旨をユーザーに電子メールで通知することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のデジタルコンテンツのレンタル方法。」
から、
「【請求項1】 レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをインターネットを介してユーザーのコンピュータにインストールする工程と、レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたデジタルコンテンツのレンタルの申し込みを受けると、申し込み時に転送されたユーザーの自己情報と記録された当該ユーザーの自己情報とが一致するか否かを確認した上で、前記再生ソフトで再生可能な当該デジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、ユーザーのコンピュータにおいて前記デジタルコンテンツを前記コンピュータにダウンロードしてからの時間を計測し、予め設定した時間を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記時間を計測するプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項2】 レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをインターネットを介してユーザーのコンピュータにインストールする工程と、レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたデジタルコンテンツのレンタルの申し込みを受けると、申し込み時に転送されたユーザーの自己情報と記録された当該ユーザーの自己情報とが一致するか否かを確認した上で、前記再生ソフトで再生可能な当該デジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、ユーザーのコンピュータにおいて前記デジタルコンテンツを前記再生ソフトを用いて再生した回数をカウントし、予め設定した回数を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項3】 レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをインターネットを介してユーザーのコンピュータにインストールする工程と、レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたデジタルコンテンツのレンタルの申し込みを受けると、申し込み時に転送されたユーザーの自己情報と記録された当該ユーザーの自己情報とが一致するか否かを確認した上で、前記再生ソフトで再生可能な当該デジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、ユーザーのコンピュータにおいて前記デジタルコンテンツを前記コンピュータにダウンロードしてからの時間を計測し、前記デジタルコンテンツを前記再生ソフトを用いて再生した回数をカウントし、予め設定した時間を経過したか又は予め設定した回数を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記時間を計測するプログラムと前記回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項4】 前記予め設定した時間又は回数は、前記デジタルコンテンツをダウンロードする際に設定されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のデジタルコンテンツのレンタル方法。
【請求項5】 前記ユーザーがレンタルしたデジタルコンテンツの情報をレンタル業者のメモリに蓄積しておき、この蓄積されたデジタルコンテンツの情報からユーザーの好みを分析し、好みに合うと判断される新たなデジタルコンテンツがレンタル業者のサーバーに記録されたならば、その旨をユーザーに電子メールで通知することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のデジタルコンテンツのレンタル方法。」
と補正された。
(2)新規事項の有無について
そこで、本件補正について検討すると、本件補正は、請求項1について、「所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程」に「レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに」を、附加する補正事項を含むものである。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、当初明細書という)には、請求人が補正の根拠としている明細書の記載箇所を含め、会員になる手順、自己情報を記録する手順、或いは再生ソフトのインストールする手順に関して、「レンタルの可否を判断」する手順の記載はなく、むしろ、会員がデジタルコンテンツをレンタルする場合の手順に関して、「レンタルの可否を判断」する手順の記載がある。
即ち、請求人の審判請求書で主張している当初明細書段落番号0010には、「一方、レンタル業者200側には、数多くの映画作品がデジタル信号化された状態(デジタルコンテンツ)で記録されたサーバー210がある。このサーバー210もインターネット300に接続されている。また、レンタル業者200側には、会員100に関するデータ、例えば氏名、住所、クレジットカードナンバー、メールアドレス、ID番号、パスワード、今までにレンタルした作品の名称等を記録したメモリ220が設けられている。さらに、レンタル業者200側には、レンタルの可否等を判断する判断部230が設けられている。なお、前記デジタルコンテンツは、汎用の再生ソフトではなく、専用の再生ソフトでのみ再生可能となるような暗号化処理が施されている。また、データ量の圧縮が行われている。」とレンタルの可否等を判断する判断部230についての記載があるが、これは、会員になる手順、自己情報を記録する手順、或いは再生ソフトのインストールする手順に関したものであるとの記載はない。会員がデジタルコンテンツをレンタルする場合の手順に関して、段落番号0018に「レンタルの拒否する」の記載がある。
また、請求人の主張している当初明細書段落番号0013,0014,図3には、「まず、レンタル業者のサーバー210に記録されたデジタルコンテンツをレンタルすることができる会員となる手順について、図3及び図4を参照しつつ説明する。会員100への登録を希望するものは、インターネット300を介してレンタル業者200のホームページ(図4参照)にアクセスし(S11)、所定の自己情報をレンタル業者200に送信する(S12)。図4(A)に示すように、自己情報を入力する画面500Aには、氏名の入力部510A、住所の入力部520A、レンタル料金の決済に用いるクレジットカードナンバーの入力部530A、メールアドレスの入力部540A、ID番号の入力部550A、パスワードの入力部560Aがある。この自己情報をチェックした(S13)レンタル業者200は、会員登録を認める場合には(S14)、前記自己情報をメモリ220に記録するとともに、会員登録を行った旨の連絡を図4(B)に示す画面500Bによって新会員100へと送信する(S16)。この連絡には、図4(B)に示すように、会員100に固有のID番号とパスワードもあわせて記載しておく。このID番号とパスワードとが会員100を識別するキーワードとなる。なお、自己情報のチェックには、クレジットカード会社への問い合わせ等がある。」と会員登録の可否を判断する手順についての記載があるが、ここに、レンタルの可否を判断する手順についての記載はない。
なお、会員登録の可否を判断する手順がレンタルの可否を判断する手順であると解釈できる合理的理由もない。
したがって、請求項1について、「所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程」に「レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに」を、附加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。
(3)補正の目的の適否について
補正後の「レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と」について、目的の適否について検討する。
前段の「レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録する」ことは、後段の「所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と」と別な機能の工程であるから、後段の「所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と」を特定するために必要な事項を限定するものといえない。なお、上記前段は、補正前の他の「前記再生ソフトで再生可能なデジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程」、「前記デジタルコンテンツを前記コンピュータにダウンロードしてからの時間を計測し、予め設定した時間を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程」及び「前記時間を計測するプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていること」を特定するために必要な事項のいずれを限定するものでないことも明らかである。
したがって、請求項1について、「所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程」に「レンタル業者のサーバーにおいてユーザーのコンピュータからインターネットを介して転送されたユーザーの自己情報に基づいてユーザーへのレンタルの可否を判断し、レンタル可であるときには前記自己情報を記録するとともに」を、附加する補正は、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的としたものといえない。
また、上記補正の目的は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれのものに該当しないことも明らかである。
(4)むすび
上記2.(2)及び2.(3)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反しているものと認められるから、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)平成14年12月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項2】 所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程と、前記再生ソフトで再生可能なデジタルコンテンツをインターネットを介して前記コンピュータにダウンロードする工程と、前記デジタルコンテンツを前記再生ソフトを用いて再生した回数をカウントし、予め設定した回数を経過したならば、前記コンピュータからデジタルコンテンツを削除する工程とを有しており、前記回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムとは、前記再生ソフトに組み込まれていることを特徴とするデジタルコンテンツのレンタル方法。」
(2)引用例
1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-149707号公報(以下、「引用例1」という。)には、
ア 「【請求項1】 サテライトシステムまたは回線等の情報伝送手段を通じたディジタルデータを記録することのできるデータ記録装置を管理するソフトウェア利用者が、映像、画像、音楽、テキスト等のコンテンツソフトウェアを時間軸圧縮したディジタルデータに変換しコードを割り当てて蓄積するコンテンツ配信手段に対し、配信を希望する前記コンテンツソフトウェアのコードと前記データ記録装置の識別コードとをリクエスト送信すると、前記コンテンツ配信手段はこのリクエストに応じたコンテンツソフトウェアの時間軸圧縮したディジタルデータと前記識別コードを照合する照合コードを前記情報伝送手段を通じてデータ記録装置に対して配信し、該データ記録装置は受信した前記照合コードが自身の識別コードと照合された場合にのみ前記ディジタルデータを記録するとともに、前記データ記録装置に接続されディジタルデータを展開して出力装置に出力する展開装置は前記データ記録装置に圧縮記録されたディジタルデータを展開して前記コンテンツソフトウェアを再生することを特徴とするディジタルコンテンツ配信システム。
【請求項2】 データ記録装置が記録するコンテンツソフトウェアごとの再生可能回数をソフトウェア利用者が設定できることを特徴とする請求項1記載のディジタルコンテンツ配信システム。」(2頁1欄、【特許請求の範囲】)、
イ 「このように映像、画像、音楽等のコンテンツソフトウェアのメディアをレンタル店で低料金で賃貸するシステムは、利用者が希望したときに自宅で低料金で鑑賞できるという、従来と比較して時間的・場所的制限や費用負担を大幅に軽減するものであった。しかし新たな制約として、メディアをレンタル店と自宅との間で往復移動させる問題が生じた。また、メディアの借用期間という時間的制限、メディアの汚損・損傷の虞れという問題もある。そこで本発明は、これらの問題を解決すべく、利用者が希望する映像、画像、音楽等の情報量の大きいコンテンツソフトウェアを、メディアを介在させることなく利用者に安価に提供することができるディジタルコンテンツ配信システムを形成することを目的とする。」(2頁2欄、段落番号【0004】〜【0005】、【発明が解決しようとする課題】)、
ウ 「まずソフトウェア利用者は、予めディジタルコンテンツ配信センター1に対し自己の管理するデータ記録装置3を登録し、ID番号等の識別コードを取得しておく。具体的には、データ記録装置3を購入等した際に同梱されている登録カードを、ディジタルコンテンツ配信サービスを希望する利用者がディジタルコンテンツ配信センター1に返送する等により行われる。データ記録装置3としては、デジタルビデオテープレコーダー、録画再生用DVD機、ハードディスクドライブ、各種リムーバブルディスクドライブ等のディジタル信号を記録再生する装置が現状では考えられる。」(3頁3欄、段落番号【0010】〜【0011】、【発明の実施に形態】)、
エ 「ソフトウェア利用者は、ディジタルコンテンツ配信センター1等が提供するカタログやネットワーク情報等を通じて、映像、画像、音楽、テキスト等のコンテンツソフトウェアに関する情報を得るとともに、例として観たい映画があった場合には、ソフトウェア利用者はコンテンツソフトウェアごとの識別コードを電話やパソコン通信等の回線6等を通じてディジタルコンテンツ配信センター1にリクエストする。この際、ソフトウェア利用者はこのコンテンツソフトウェアの利用可能回数(利用可能日数でもよい)、例えば従来の言い方ではレンタルするのか購入するのかについても利用選択ビットとして、上記リクエストと同時に送信するシステムとしてもよい。つぎに、ディジタルコンテンツ配信センター1は、利用者からのリクエストに応じ、一定期間、例えば昼間の12時間に受付けたリクエストが所定の数に達した順に、そのコンテンツソフトウェアを蓄積している記憶装置中の時間軸圧縮したディジタルデータを、サテライトシステム等の情報伝送手段2を通じて自動的に配信する。この際、コンテンツソフトウェアのディジタルデータのみならず、これをリクエストしたソフトウェア利用者の管理するデータ記録装置3の識別コードを照合するための照合コード、及び照合コードごとの上記利用選択ビットも一緒に添付して送信する。この照合コードを用いることで、リクエストしたソフトウェア利用者の管理するデータ記録装置3のみに、配信するコンテンツソフトウェアを記録させることができる。・・・そして、サテライトシステム等の情報伝送手段2を通じて送信されたディジタルデータ、照合コード及び利用選択ビットは、例えば家庭等のサテライト用アンテナで受信され、データ記録装置3へと送られる。データ記録装置3は、受信した照合コードが自身の識別コードと照合されると、受信したディジタルデータを自動的に記録し、上記例によれば6分間で終了する。また、受信した利用選択ビットにより、データ記録装置3はコンテンツソフトウェアごとに利用可能回数を自動的に設定する。一方、受信した照合コードが自身の識別コードと照合されなかった場合には、配信を希望していないコンテンツソフトウェアであると判断して記録しない。」(3頁3欄〜4欄、段落番号【0012】〜【0015】、【発明の実施に形態】)、
オ 「配信を受けたソフトウェア利用者が、コンテンツソフトウェアのディジタルデータが記録されたデータ記録装置3を駆動すると、データ記録装置3から出力された例えば6分間に時間軸圧縮されたディジタルデータは、展開装置4により徐々に展開・解凍されるとともに、出力装置5が家庭用テレビジョンであればコンポジット信号、CRTディスプレイであればRGB信号に変換され、出力装置5に出力されてソフトウェア利用者は例えば実時間120分の映画を楽しむことができる。そして、ソフトウェア利用者がコンテンツソフトウェアの1度のみの利用を希望して利用選択ビットを設定した場合には、データ記録装置3は1度再生し終わったコンテンツソフトウェアについては消去し、また購入する利用選択ビットを設定をした場合には繰り返し何度でも再生することができる。・・・以上詳述した如く、本発明によれば、利用者が希望する映像、画像、音楽等の情報量の大きいコンテンツソフトウェアを、例えばレンタル中のメディアが返却されるまで待つことや番組が放送される日時まで待つということがなくなり、ビデオオンデマンドに準ずる早さで供給することができるとともに、ディジタルコンテンツの配信というメディアの受け渡しに依らないソフトウェア提供方法であることから、ソフトウェア提供者であるディジタルコンテンツ配信センターとしては経営効率が向上し、またソフトウェア利用者はローコストでコンテンツソフトウェアを享受することができるものである。また、データ記録装置が記録するコンテンツソフトウェアごとの再生可能回数をソフトウェア利用者が設定できるようにすることで、ソフトウェア利用者は記録したコンテンツソフトウェアの利用を1度限りとするとか購入して何度でも利用できるようにするとかが容易に選択することができるので、ソフトウェア利用者の希望に応じたソフトウェア利用方法が可能となるものである。」(3頁4欄〜4頁6欄、段落番号【0016】〜【0020】、【発明の実施に形態】及び【発明の効果】)が記載されている。
これらの記載ア〜オ及び図面第1図によれば、引用例1には「映像、画像、音楽、テキスト等のコンテンツソフトウェアを再生可能な展開装置4を備えるデジタルコンテンツ配信システムにおいて、前記展開装置4で再生可能なコンテンツソフトウエアをサテライトシステム又は回線等の情報伝達手段2を介してデータ記録装置3に対して配信する工程と、前記コンテンツソフトウエアを前記展開装置4を用いて再生した回数が、ソフトウエア利用者が予め設定した再生可能回数となったならば、前記データ記録装置3からコンテンツソフトウエアを削除する工程を有し、前記回数をカウントし、コンテンツソフトウエアを削除することは前記データ記録装置3が行っていることを特徴とするデジタルコンテンツの配信方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-269077号公報(以下、「引用例2」という。) には、
カ 「本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、通信メディア等を介してソフトウェアコンテンツを提供する場合に、そのソフトウェアコンテンツの使用回数を制限することができるようにするものである。」(2頁2欄、段落番号【0005】、【発明が解決しようとする課題】)、
キ 「請求項1に記載の情報処理装置は、第1の記録媒体に記録されたコンテンツをダウンロードする第1のダウンロード手段と、第2の記録媒体に記録されたコンテンツの残りの実行可能回数を表す実行可能回数情報をダウンロードする第2のダウンロード手段と、コンテンツおよび実行可能回数情報を第3の記録媒体に記録する記録手段とを備えることを特徴とする。」(2頁2欄、段落番号【0006】、【課題を解決するための手段】)
が記載されている。
ク 「図12を参照して、ソフトウェアコンテンツサーバよりダウンロードしたソフトウェアコンテンツを起動する場合の処理手順について説明する。最初に、ステップS11において、ユーザは、操作装置17を操作して、所望のソフトウェアコンテンツの起動を指令する。・・・次に、ステップS12において、サブCPU50上で動作する通信・メモリカード管理ソフトウェアは、ユーザが起動を指示したソフトウェアコンテンツに対応する動作回数トークンを保持するメモリカード86内の認証用データを、入力部57のメモリ用接続端子部を介して読み出し、SBUSIF43、メインバス41を介してメインメモリ45に転送する。・・・ステップS14に進み、メモリカード86から動作回数トークンが読み出され、動作回数トークンが有効であるか否かが判定される。即ち、動作回数トークンによって表される残り動作可能回数が1以上であるか否かが判定される。残り動作可能回数が1以上であると判定された場合、ステップS15に進む。ステップS15において、サブCPU50は、動作回数トークンが表す残り動作可能回数を1度数だけ減少させ、動作回数トークンを再度、メモリカード86に書き込み、更新する。次に、ステップS16において、図15に示すように、サブCPU50上で動作する通信・メモリカード管理ソフトウェアは、新しい認証用データを生成し、それを、ソフトウェアコンテンツが保持されているメモリカード85、およびそのソフトウェアコンテンツに対応する動作回数トークンが保持されているメモリカード86の双方のシステム保護領域にそれぞれ書き込む。ステップS17においては、図16に示すように、ユーザによって指示されたソフトウェアコンテンツがメモリカード85から入力部57のメモリ用接続端子部、サブバス42を介して読み出され、さらに、SBUSIF43、メインバス41を介してメインメモリ45に転送され、起動される。一方、ステップS13において、・・・ステップS14において、動作回数トークンが有効ではない(動作可能回数が0である)と判定された場合、処理を終了する。以上のようにして、サーバからダウンロードしたソフトウェアコンテンツの使用回数を制限することができる。」(6頁9欄〜10欄、段落番号【0053】〜【0061】)
が記載されている。
3)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-203127号公報(以下、「引用例3」という。)には、
ケ 「本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、各端末で実行されるプログラムの使用期限や、該プログラムがゲームプログラムであった場合にそのゲームの難易度、進行状況等を管理する管理装置を備え、各端末は、この管理装置との間でデータ通信を行なうことにより前記使用期限やゲームの難易度、進行状況等を設定、更新、変更する通信システム及び該システムの制御方法を提供することである。」(3頁3欄、段落番号【0007】)、
コ 「また、請求項7記載の発明は、通信端末と、該通信端末で実行されるプログラムの実行範囲を管理する管理装置とからなる端末管理システムの制御方法であって、前記管理装置は、当該通信端末で使用されているプログラム、及び該プログラムの実行範囲を記憶する管理メモリを備え、前記通信端末から前記プログラムの実行範囲を変更する実行範囲変更要求情報を受信すると、前記管理メモリに記憶された対応するプログラムの実行範囲を変更するとともに、前記通信端末へ実行範囲変更情報を送信し、前記通信端末は、予め前記プログラムを全ての実行範囲で実行できるように設定されており、前記管理装置から送信された実行範囲変更情報を受信すると、前記プログラムに設定された実行範囲を変更することを特徴としている。・・・したがって、この請求項1、2及び7記載の発明によれば、端末管理システムでは、各通信端末で現在使用されているプログラムとその使用期限を管理することが可能となり、端末管理システムでは、例えば、プログラムのダウンロードサービスの際に、ダウンロードしたプログラムの使用期間に応じて課金を行ない、当該サービスの料金を徴収することができる等、サービス形態の充実を図ることができる。また、端末管理システムにおいて各プログラムの利用状況を把握することができる。」(3頁3欄〜4欄、段落番号【0010】〜【0014】)、
サ 「さらに、このページャー5では、情報サービスセンター7に対するゲームソフトのダウンロード要求に応じて、情報サービスセンター7からページングセンター3を介して無線信号により当該ページャー5にダウンロードされたゲームソフトに基づいて、所定の契約期間の間、ゲームを行なうことができる。」(6頁9欄〜10欄、段落番号【0051】)、
シ 「なお、このゲーム機能エリア520Bを構成するブロックデータメモリ(BM)520g、コンフィグレーションデータメモリ(CF)520h、及びゲームプログラムメモリ(GM)520iにそれぞれ格納されるブロックデータテーブル、ゲーム表示制御プログラム、及びゲームプログラムデータは、ゲームソフトのダウンロード要求に応じて、情報サービスセンター7からページングセンター3を介して当該ページャー5に4thアドレスで無線送信され、後述するゲームデータ書き換え制御処理(図25参照)により対応する各メモリ520g〜520iにそれぞれ格納される。」(11頁20欄、段落番号【0120】)、
ス 「また、第1及び第2の実施の形態におけるページングシステム10によれば、ページャー5(通信端末)のCPU518は、ゲーム管理メモリ(GCM)521bのゲーム管理テーブル(第3の記憶手段)に記憶された契約期限データを参照し、計時回路518aにより計時された日時データに基づいてゲームソフトの契約期限が切れたことを検出すると、前記ゲーム管理テーブルに記憶された前記ゲームソフトに基づくゲームを制御するための各種制御データを消去する。したがって、ページャー5では、契約期限の切れたゲームソフトを、当該ゲームソフトに基づくゲームを制御するための各種制御データが記憶されたゲーム管理テーブルの記憶内容を消去することで実行不能に制御することができる。」(26頁49欄、段落番号【0305】〜【0306】)
が記載されている。
(3)対比・判断
そこで、本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「コンテンツソフトウエア」は、本願発明の「デジタルコンテンツ」に相当し、引用発明の「デジタルコンテンツを配信する工程」は、この配信により、データ記録装置がデジタルコンテンツの取得を行うこととなるので、本願発明の「デジタルコンテンツのダウンロード工程」と共に、デジタルコンテンツの取得工程であるといえる。
そして、引用発明の「デジタルコンテンツの配信方法」は、レンタルを目的としているといえるから、本願発明の「デジタルコンテンツのレンタル方法」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、「デジタルコンテンツの取得工程と、前記デジタルコンテンツを再生した回数をカウントし、予め設定した回数を経過したならば、デジタルコンテンツを削除する工程とを有するデジタルコンテンツのレンタル方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願発明では、デジタルコンテンツを再生するために、所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程を有するのに対して、引用発明では、データ記録装置と展開装置を用いている点。
相違点2
本願発明では、デジタルコンテンツの取得工程は、インターネットを介してコンピュータにダウンロードする工程であるが、引用発明では、サテライトシステム又は回線等の情報伝達手段2を介してデータ記録装置に対して配信する工程であり、また、本願発明では、デジタルコンテンツを削除するのはコンピュータからであるが、引用発明ではデータ記録装置からである点。
相違点3
本願発明では、回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムを有し、これらは、再生ソフトに組み込まれているのに対して、引用発明では、回数をカウントし、デジタルコンテンツを削除するデータ記録装置を有する点。
以下、相違点1〜3について検討する。
相違点1について
コンピュータの技術分野において、再生ソフトを用いデジタルコンテンツを再生することは、本願出願前周知であり(例:特開平10-240517号公報、特開2000-115766号公報、特開平10-269078号公報、国際公開第98/53411号パンフレット(1998))、使用に際して予め再生ソフトを、コンピュータにインストールすること及び所定の形式のデジタルコンテンツに対応可能とすることは、それぞれ技術常識であるから、引用発明において、デジタルコンテンツを再生するためのデータ記録装置と展開装置を用いることに代え、所定の形式のデジタルコンテンツを再生可能な再生ソフトをユーザーのコンピュータにインストールする工程を有することは、当業者が、通常の創作能力を発揮して、容易に想到できたことである。
相違点2について
デジタルコンテンツの取得工程として、インターネットを介してコンピュータにダウンロードするする工程は、本願出願前周知(例:特開平11-316729号公報、特開2000-49765号公報、特開2000-69452号公報)であるから、当業者が、サテライトシステム又は回線等の情報伝達手段2を介することに代え、インターネットを介すること及びデータ記録装置に対して配信するに代え、コンピュータにダウンロードすることは当業者が容易になし得たことである。
また、デジタルコンテンツをコンピュータにダウンロードするものを採用した際、該デジタルコンテンツを削除する必要が生じたとき、削除するのは該コンピュータから、であることは明らかである。そうすると、引用発明において、デジタルコンテンツを削除するのはコンピュータから、とすることは当業者が容易になし得たことである。
相違点3について
回数をカウントし、デジタルコンテンツを削除するフローチャートは上記引用例2記載クに記載されており、このフローチャートをプログラムで実行させることは、当業者であれば格別困難無く行えるものであるから、これを引用発明において適用し、データ記録装置が、回数をカウントしデジタルコンテンツを削除することに代え、回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムを採用することは、容易になし得たものである。
そして、各種プログラムを関係のある特定のソフトに組み込むことは、普通に行われていること(例えば、上記引用例3ではゲームソフトに、ゲーム表示制御プログラムを組み込んでいる。)であり、回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムは共に、再生ソフトによるデジタルコンテンツの再生の管理に関係するものであるから、引用発明において、回数をカウントするプログラムとデジタルコンテンツを削除するプログラムを採用するに際し、これらプログラムを再生ソフトに組み込むことは、当業者が、通常の創作能力を発揮して、容易に想到できたことである。

(4)むすび
以上のとおり、本願請求項2に係る発明は、引用文献1〜3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項に係る発明について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-15 
結審通知日 2005-09-27 
審決日 2005-11-07 
出願番号 特願2000-159669(P2000-159669)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 信行  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 大野 弘
岡本 俊威
発明の名称 デジタルコンテンツのレンタル方法  
代理人 大西 孝治  
代理人 大西 正夫  

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