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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1129544
審判番号 不服2003-8211  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-08 
確定日 2006-01-10 
事件の表示 平成11年特許願第371802号「切替スイッチ付き同軸コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-185296号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年12月27日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年10月1日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。
「絶縁体からなるレセプタクルハウジングと、前記レセプタクルハウジングに形成された間隙に配設されて接点接触している一対のコンタクトと、前記レセプタクルハウジングに形成された開孔内で移動可能に支持され前記一対のコンタクトの一方を前記一対のコンタクトの離間方向に押圧可能な導電性の切替端子と、その弾性復帰力により前記切替端子を前記一対のコンタクトの一方から離間させる方向に移動させる皿ばねとを具え、接続される同軸プラグによる押圧力を前記切替端子を介して前記一対のコンタクトの一方に加えることにより、前記一対のコンタクトの接触を解除させかつ前記一対のコンタクトの一方を前記切替端子を介して同軸プラグ側のコンタクトに導通させる切替スイッチ付き同軸コネクタにおいて、
前記皿ばねと前記切替端子とが一体的に形成されることを特徴とする切替スイッチ付き同軸コネクタ。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である実願平3-55219号(実開平5-1184号)のCD-ROM(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(a)「【産業上の利用分野】
本考案は電気回路における信号を切換えができるスイッチを設けた携帯電話などの電子、情報機器に用いられるスイッチ付きコネクタに関する。」(段落【0001】)
(b)「【従来の技術】
スイッチ付きコネクタは高周波同軸ケーブルのようなケーブルを相互に、あるいは回路、機器などの相互間を接続し信号の授受を行うものである。このスイッチ付きコネクタは、特に、信号の高周波数化、大容量化及び部品の小型化に適応するものである。・・・
従来、スイッチ付きコネクタは、図6に示すように、インシュレータ12と、このインシュレータ12に一軸方向で移動可能に保持され、一軸方向での一端面を相手コンタクト(図示せず)に接触する接触部とした導電性のコンタクト1を有している。また、スイッチ付きコネクタはコンタクト1を一軸方向で一方へ向けて付勢したスプリング5と、インシュレータ12に保持され、コンタクト1の移動によりこのコンタクト1に接離する内部信号端子14とを有している。インシュレータ12の外周には接地端子となる外部導体(シェル)11が設けられている。インシュレータ12の中心孔16にはコンタクト1が貫入されている。コンタクト1は中心孔16の内面を一軸方向に移動する。また、インシュレータ12にはコンタクト1の後端が内部信号端子14に対してスイッチとなる切換接触片バネ17が設けられている。さらに、スプリング5は、その先端を常に先方に付勢するように中心孔16でコンタクト1の外周部分に嵌め込まれている。・・・
今、相手コネクタがスイッチ付きコネクタに結合されたとき、コンタクト1は、スプリング5の付勢に坑して押し込み移動され、その後端は切換接触片17を押圧し、これと内部信号端子14間で接離して信号を切換え授受する。」(段落【0002】〜【0004】)
(c)図6には、インシュレータ12に形成された間隙に内部信号端子14と切換接触片17とが配設されており、内部信号端子14と切換接触片17とが接点接触していることが図示されている。また、図6の記載から、コンタクト1の後端が切換接触片17を押圧すると切換接触片17は内部信号端子14と離間する構成となっていることが読み取れる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には、
「インシュレータ12と、インシュレータに形成された間隙に配設されて接点接触している内部信号端子14と切換接触片17と、インシュレータ12の中心孔16の内面を一軸方向に移動し、その後端は切換接触片17を押圧して内部信号端子14と離間させる導電性のコンタクト1と、その先端を常に先方に付勢するように中心孔16でコンタクト1の外周部分に嵌め込まれているスプリング5とを具え、相手コネクタが結合されたときコンタクト1はスプリング5の付勢に抗して押し込み移動され、その後端は切換接触片17を押圧し、これと内部信号端子14間で接離して信号を切換え授受するスイッチ付きコネクタ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である実願平1-49603号(実開平2-140716号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(d)「〔従来の技術〕従来のキーボードスイッチは、第3図に示すように、アッププレート31で密閉されたハウジング32内を上下に運動するプランジャ33に、キートップ34を取り付けた構造となっていた。
即ち、第4図に示すように、キートップ34を指で押圧することにより、プランジャ33がハウジング32内のコイルスプリング35に抗して押し下がり、エレメント36をオン状態にする構造になっていた。
〔考案が解決しようとする課題〕前述した従来のキーボードスイッチは、プランジャ33の上下運動によってキーボードスイッチをオン又はオフにする構造であるため、以下の欠点がある。
プランジャ33は、キーボードに対して上方向に突出して位置していることから、キーボードスイッチ自体の高さが高くなり、この結果、キーボード装置が厚型になってしまう。」(第2頁第3〜20行)
(e)「第1図はこの考案の一実施例に係るキーボードスイッチの断面図である。
キーボードスイッチは、キートップ1と、スライダ2,3と、可動接点片4と、固定接点片5とを備えてなる。
キートップ1は、合成樹脂等の絶縁素材を平板状にして形成したもので、その上面がやや湾曲して指圧を容易にしている。キートップ1の下面中央部には、下方に垂直に突出した突出部6が設けられている。このキートップ1には、板バネ7が取り付けられている。この板バネ7は、断面略山形状をなし、その上端部でキートップ1を支持すると共に、その両下端部でスライダ2,3をスライド可能に支持している。従って、板バネ7は、上方への付勢力によってキートップ1を支持する機能とスライダ2,3を対向方向に開閉スライドさせる機能とを併せ持っている。」(第4頁第5行〜第5頁第1行)
(f)「〔考案の効果〕この考案のキーボードスイッチは、以上説明したように構成されているため、以下の効果がある。
(イ)極小高さの板バネをプランジャの代用としたため、キーボードスイッチ自体が低くなり、キーボード全体としての薄型化を図ることができる。」(第7頁第12〜17行)
(g)第1図には板バネ7が皿状の断面形状をしている皿ばねであることが図示されている。
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、スイッチの切替を行うための弾性復帰力を得るためのばねとして、従来のコイルスプリングに代えて皿ばねを用いることにより、装置の薄型化を図ることができることが記載されている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「インシュレータ12」が、その機能・構造からみて前者における「絶縁体からなるレセプタクルハウジング」に相当し、以下同様に、「内部信号端子14と切換接触片17」が「一対のコンタクト」に、「インシュレータ12の中心孔16の内面を一軸方向に移動し」が「レセプタクルハウジングに形成された開孔内で移動可能に支持され」に、「その後端は切換接触片17を押圧して内部信号端子14と離間させる」が「一対のコンタクトの一方を一対のコンタクトの離間方向に押圧可能な」に、「コンタクト1」が「切替端子」に、「その先端を常に先方に付勢するように中心孔16でコンタクト1の外周部分に嵌め込まれている」が「その弾性復帰力により切替端子を一対のコンタクトの一方から離間させる方向に移動させる」に、「結合され」が「接続され」に、「コンタクト1はスプリング5の付勢に抗して押し込み移動され」が「押圧力を切替端子を介して一対のコンタクトの一方に加える」に、「その後端は切換接触片17を押圧し、これと内部信号端子14間で接離して」が「一対のコンタクトの接触を解除させ」に、「スイッチ付き」が「切替スイッチ付き」に、それぞれ相当している。
また、後者の「スプリング5」と前者の「皿ばね」とは「ばね」という概念で共通している。
また、後者のスイッチ付きコネクタは、上記記載事項(b)の「スイッチ付きコネクタは高周波同軸ケーブルのようなケーブルを・・・相互に接続し」という記載を参酌すると、同軸ケーブルのようなケーブルに接続されるものであるから前者の切替スイッチ付き同軸コネクタに相当するといえ、後者のスイッチ付きコネクタに結合される相手コネクタも同様に同軸プラグに相当するといえる。
また、後者の「信号を切換え授受する」ためには、切換接触片17が導電性のコンタクト1により押圧されて内部信号端子14と離間した際に相手コンタクトと導電性のコンタクト1を介して導通しないと信号の授受を行えないことは明らかであるから、後者は前者の「一対のコンタクトの一方を切替端子を介して同軸プラグ側のコンタクトに導通させる」構成を有するといえる。
したがって、両者は、
「絶縁体からなるレセプタクルハウジングと、前記レセプタクルハウジングに形成された間隙に配設されて接点接触している一対のコンタクトと、前記レセプタクルハウジングに形成された開孔内で移動可能に支持され前記一対のコンタクトの一方を前記一対のコンタクトの離間方向に押圧可能な導電性の切替端子と、その弾性復帰力により前記切替端子を前記一対のコンタクトの一方から離間させる方向に移動させるばねとを具え、接続される同軸プラグによる押圧力を前記切替端子を介して前記一対のコンタクトの一方に加えることにより、前記一対のコンタクトの接触を解除させかつ前記一対のコンタクトの一方を前記切替端子を介して同軸プラグ側のコンタクトに導通させる切替スイッチ付き同軸コネクタ。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。

相違点:本願発明では、ばねが皿ばねであり、皿ばねと切替端子とが一体的に形成されているのに対し、引用発明では、ばねがスプリング5であり、スプリング5とコンタクト1が一体的に形成されていない点。

4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。
刊行物2には、スイッチの切替を行うための弾性復帰力を得るためのばねとして、従来のコイルスプリングに代えて皿ばねを用いることにより、装置の薄型化を図ることができることが記載されており、これを引用発明に適用して、引用発明のスプリング5に代えて皿ばねを採用し、コネクタ構造の低背化を図るようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。また、2つの部材を必要に応じて一体的に設けることは慣用の手段にすぎず、引用発明のスプリング5に代えて皿ばねを採用する際にコンタクト1と皿ばねを一体的に形成するようにする程度のことは単なる設計的事項にすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-16 
結審通知日 2005-11-18 
審決日 2005-11-29 
出願番号 特願平11-371802
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子金丸 治之  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 稲村 正義
北川 清伸
発明の名称 切替スイッチ付き同軸コネクタ  
代理人 谷 義一  
代理人 阿部 和夫  

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