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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G07D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D |
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管理番号 | 1129703 |
審判番号 | 不服2004-8209 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-04-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-22 |
確定日 | 2006-01-12 |
事件の表示 | 特願2000-295654「現金取扱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-109595〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年9月28日の出願であって、平成16年3月15日付け(発送日:同月23日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月22日に審判請求がなされるとともに、同年5月19日に手続補正がなされたものである。 2.平成16年5月19日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年5月19日付け手続補正を却下する。 [理由] 補正後の請求項1に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「【請求項1】 利用者が自分で操作して現金を引き出すことができるとともに、現金、カード、通帳等を取り忘れた人を確認することができる現金取扱装置であって、現金取扱操作時に利用者の映像を撮影し記録する機能と、利用者が立去ったことを検出する機能と、利用者が立去ったことを検出したときに、現金を取り忘れたことを検出する機能と、取り忘れた現金の金額を確認する機能と、取り忘れた現金相当額を出す機能と、を有することを特徴とする現金取扱装置。」 上記補正は、補正前の「取り忘れた現金、カード、通帳等を一時退避する機能と、一時退避した現金、カード、通帳等を出す機能と、」を「取り忘れた現金の金額を確認する機能と、取り忘れた現金相当額を出す機能と、」とする補正を含むものであり、「現金、カード、通帳等」を「現金」とする点で特許請求の範囲を減縮するが、「取り忘れた現金を一時退避する機能と、一時退避した現金を出す機能と、」を「取り忘れた現金の金額を確認する機能と、取り忘れた現金相当額を出す機能と、」とする点で、特許請求の範囲を減縮するものでない。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年11月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。 「【請求項1】 利用者が自分で操作して現金を引き出すことができるとともに、現金、カード、通帳等を取り忘れた人を確認することができる現金取扱装置であって、現金取扱操作時に利用者の映像を撮影し記録する機能と、利用者が立去ったことを検出する機能と、利用者が立去ったことを検出したときに、現金、カード、通帳等を取り忘れたことを検出する機能と、取り忘れた現金、カード、通帳等を一時退避する機能と、一時退避した現金、カード、通帳等を出す機能と、を有することを特徴とする現金取扱装置。」 (2)引用例 ア.原査定の拒絶の理由に引用した特開平10-198843号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 ・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は自動取引装置に係り、特に、顧客が受取り忘れたカード、通帳または現金等の媒体の自動返却機能を有する自動取引装置に関する。」 ・「【0010】顧客が行う取引がキャッシュカード等のカードを用いるものであれば、カード取扱部2によってその顧客のカードを受け入れ、該カードから情報を読み取る。顧客が行う取引が通帳を用いるものであれば、通帳取扱部3によりその顧客の通帳を受け入れ、該通帳から情報を読み取る。このように、カードや通帳から読み取った情報をもとに、必要に応じて顧客の入力を求め、取引可と判断された場合、処理を続行する。」 ・「【0011】虹彩取得部5は内蔵するカメラを制御して顧客本人の虹彩の画像を撮り、該画像をもとに特徴抽出を行って虹彩データを取得する。顧客は、このようなことを意識する必要はなく、単に自動取引装置の通常の操作を行っているだけでよい。 取得した虹彩データを制御部7の図示しないメモリあるいは記憶部6に記憶させる。」 ・「【0012】ホストコンピュータ8の指示もしくは自動取引装置の判断により、取引処理を進める。これは例えば、現金取扱部4により、支払いや入金を実行することや、振込、振替その他の処理を行うということである。 カード、通帳あるいは現金等の媒体を返却し、顧客が受け取るのを待つ。 一定時間内に受け取られない場合、媒体を装置内部へ引き込む。この時、当該取引を特定できるように、取り込んだ媒体と口座情報を、本人の虹彩情報と合わせて記憶部6に記憶させる。」 ・「【0013】取り忘れをした顧客は受け取りに戻った場合、表示・入力部1を操作して申告を行う。表示・入力部1の最初の画面に、取り忘れ媒体の返却を申告するためのボタンを用意しておき、顧客はそのボタンを押下することにより、申告を開始する。例えば、顧客は、自分が取り忘れた媒体の種別についての情報を入力する。」 ・「【0014】再度、虹彩取得部5で虹彩データを読み取り、指定された口座情報、取り忘れ媒体種別等が、装置内に記憶されている情報と一致し、なおかつ虹彩データが一致した場合、自動的に返却を行う。このように、取り忘れた媒体を確実に本人に返却することができる。また、係員などの人手を介す必要もない。」 したがって、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。 「利用者が自分で操作して現金を引き出すことができるとともに、現金、カード、通帳等を取り忘れた人を確認することができる現金取扱装置であって、現金取扱操作時に利用者の虹彩を撮影し記録する機能と、現金、カード、通帳等を返却してから一定時間内に顧客が受け取らないことを検出する機能と、取り忘れた現金、カード、通帳等を装置内部へ引き込む機能と、装置内部へ引き込んだ現金、カード、通帳等を出す機能と、を有する現金取扱装置。」 イ.原査定の拒絶の理由に引用した特開平8-161594号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 ・「【0001】【産業上の利用分野】本発明は金融自動化機器に関し、特に金融自動化機器と顧客との間で扱う現金、通帳及びカードなどの各種媒体の取り忘れ防止機能を備えた金融自動化機器に関する。」 ・「【0004】【課題を解決するための手段】本発明に係る取り忘れ防止機能を備えた金融自動化機器は、顧客により操作されて、情報を入力する操作手段と、顧客が本体機器の前にいるかどうかを検出する検出手段と、検出手段により顧客が本体機器の前にいない状態が検出されたときに、放出した媒体が受取られていないと、放出された媒体を一時保留状態にし、顧客によって操作手段により、取り忘れ媒体返却の操作がされ、媒体の顧客であることを確定すると、一時保留状態にされた媒体を返却する媒体返却手段とを備えるものである。」 (3)対比 本願発明と引用例1発明とを対比すると、両者は、「利用者が自分で操作して現金を引き出すことができるとともに、現金、カード、通帳等を取り忘れた人を確認することができる現金取扱装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、「利用者の映像を撮影し記録する機能」を有するのに対して、引用例1発明では、「利用者の虹彩を撮影し記録する機能」を有する点。 [相違点2] 本願発明では、「利用者が立去ったことを検出する機能と、利用者が立去ったことを検出したときに、現金、カード、通帳等を取り忘れたことを検出する機能と、」を有するのに対して、引用例1発明では、「現金、カード、通帳等を返却してから一定時間内に利用者が受け取らないことを検出する機能」を有する点。 [相違点3] 本願発明では、「取り忘れた現金、カード、通帳等を一時退避する機能と、一時退避した現金、カード、通帳等を出す機能と、」を有するのに対して、引用例1発明では、「取り忘れた現金、カード、通帳等を装置内部へ引き込む機能と、装置内部へ引き込んだ現金、カード、通帳等を出す機能と、」を有する点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 相違点1について、 引用例1発明において、現金、カード、通帳等を取り忘れた人を確認するために、利用者の虹彩に代えて、「利用者の映像を撮影し記録する機能」を有することは、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点2について、 引用例1発明の「現金、カード、通帳等を返却してから一定時間内に利用者が受け取らないことを検出する機能」とは、通常は、現金、カード、通帳等を返却してから一定時間の経過を検出する機能と、その一定時間の経過時に現金、カード、通帳等が依然としてその場に存在することを検出する、すなわち、現金、カード、通帳等を取り忘れたことを検出する機能であることは、当業者にとって明らかなことである。 そして、引用例2には、「現金、通帳及びカードなどの各種媒体の取り忘れ防止機能を備えた金融自動化機器」において、「顧客が本体機器の前にいるかどうかを検出する検出手段と、検出手段により顧客が本体機器の前にいない状態が検出されたときに、放出した媒体が受取られていないと、放出された媒体を一時保留状態にし、」と記載されている。 したがって、引用例1発明において、一定時間の経過を検出する機能に代えて、顧客が本体機器の前にいるかどうかを検出する機能を設け、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点3について 引用例2には、「現金、通帳及びカードなどの各種媒体の取り忘れ防止機能を備えた金融自動化機器」において、「放出した媒体が受取られていないと、放出された媒体を一時保留状態に」する点が記載されている。 したがって、引用例1発明において、取り忘れた現金、カード、通帳等を装置内部へ引き込むことに代えて、一時退避することにより、上記相違点3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1及び引用例2に記載された事項から当業者が予測できた範囲内のものである。 (5)むすび 本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-09 |
結審通知日 | 2005-11-15 |
審決日 | 2005-11-28 |
出願番号 | 特願2000-295654(P2000-295654) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G07D)
P 1 8・ 572- Z (G07D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 氏原 康宏 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
岡本 昌直 今井 義男 |
発明の名称 | 現金取扱装置 |
代理人 | 特許業務法人第一国際特許事務所 |