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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1129832
審判番号 不服2002-13417  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-18 
確定日 2006-01-18 
事件の表示 平成 6年特許願第139144号「塗装マスキングテープおよびシート用フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月 9日出願公開、特開平 8- 3330〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成6年6月21日の出願であって、平成10年10月20日付けで審査請求がなされ、平成13年6月13日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成13年8月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成14年6月7日付けで拒絶査定され、これに対して平成14年7月18日付けで審判請求がなされ、平成14年8月19日付けで手続補正がなされたものである。

2.補正却下の決定
[結論]
平成14年8月19日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の発明
平成14年8月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「下記の成分(1)の2種以上のブレンド物、または(1)と(2)のブレンド物を製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルム。
(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンまたはプロピレンとα-オレフィンの共重合体であるハイα-オレフィン樹脂、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとエチルアクリレートの共重合体、エチレンとメチルメタクリレートの共重合体、エチレンを主成分とするポリマー連鎖間に金属イオン結合を有するアイオノマー樹脂およびエチレン-プロピレン-ジエン共重合体からなる群から選択されるポリオレフィン
(2)スチレン系エラストマー(SBC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)およびポリアミド系エラストマー(TPAE)からなる群から選択される熱可塑性エラストマー」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項2の
「下記の成分(1)、または(1)と(2)のブレンド物を製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルム(但し、ポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるものを除く)。
(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンまたはプロピレンとα-オレフィンの共重合体であるハイα-オレフィン樹脂、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとエチルアクリレートの共重合体、エチレンとメチルメタクリレートの共重合体、エチレンを主成分とするポリマー連鎖間に金属イオン結合を有するアイオノマー樹脂およびエチレン-プロピレン-ジエン共重合体からなる群から選択されるポリオレフィンの1種または2種以上のブレンド物
(2)スチレン系エラストマー(SBC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)およびポリアミド系エラストマー(TPAE)からなる群から選択される熱可塑性エラストマー」
において、「下記の成分(1)、または(1)と(2)のブレンド物を製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルムフィルム(但し、ポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるものを除く)」、及び、「(成分(1)が)・・・から選択されるポリオレフィンの1種または2種以上のブレンド物」とされていたものを、「下記の成分(1)の2種以上のブレンド物、または(1)と(2)のブレンド物を製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルム」、及び、「(成分(1)が)・・・から選択されるポリオレフィン」とするものであり、これにより、成分(1)を製膜する場合、「1種」のみからなるものは除かれ(当然、ポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるものも除かれる。)、「2種以上のブレンド物」が用いられることとなる。
したがって、本件補正により、製膜材料が限定的に減縮されるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に該当するか)否かについて、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-310764号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開平6-87978号公報(以下、「引用例6」という。)には、以下の点が記載されている。

引用例2
(2-1)「静電吹付塗装時のマスキングとして使用するのに適した帯電防止導電性フィルムであって、(1)カルボン酸部分を含むポリマー及び帯電防止有効量の第四アミン、(2)ポリオレフィン及び粒状導電充填剤、又は(3)(1)と(2)との混合物のいずれかからなるフィルム。」(特許請求の範囲の請求項1)

(2-2)「ポリオレフィンがエチレンビニルアセテート、エチレンアルキルアクリレート、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン又はこれらの混合物である請求項1に記載のマスキングフィルム。」(特許請求の範囲の請求項4)

(2-3)「本発明は、静電吹付塗装時に塗料が付着しないように防護したい領域を被覆するための帯電防止導電性マスキングフィルムに係わる。静電吹付塗装はRansburg塗装という通称で知られており、自動車、トラック、冷蔵庫、キャビネット等の部品の塗装に広く使用されている。」(第4頁右下欄第1〜6行)

引用例6
(6-1)「 (A)(1)天然ゴム40〜97重量%、(2)スチレン-ブタジエン共重合ゴム3〜60重量%および(3)ポリイソブチレン0〜32重量%を含有するベースポリマー100重量部に対して、(B)酸化亜鉛0〜100重量部、(C)粘着付与樹脂20〜150重量部、(D)チウラム系化合物0.05〜7重量部、および(E)ジチオカルバミン酸塩系化合物、キサントゲン酸塩系化合物およびチアゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物0.05〜10重量部を含有せしめてなることを特徴とするマスキングテープ用感圧接着剤組成物。(註:()付き数字は、原文では○付き数字)」(特許請求の範囲の請求項1)

(6-2)「本発明は、自動車のバンバーや外板等の塗装の際に用いられるマスキングテープ用の感圧接着剤組成物に関する。」(段落【0001】)

(6-3)「感圧接着剤組成物は、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル等の一種もしくは二種以上の有機溶剤に溶解し、得られた溶液を支持体のプラスチックフィルム上に塗工し、乾燥・架橋する。
プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。」(段落【0039】〜【0040】)

(3)対比・判断
(i)引用例2との対比
上記のように、引用例2には、特許請求の範囲の請求項1に、「静電吹付塗装時のマスキングとして使用するのに適した帯電防止導電性フィルムであって、・・・(2)ポリオレフィン及び粒状帯電充填剤・・・からなるフィルム」(摘示記載(2-1))が記載されており、同請求項4には、「ポリオレフィンが・・・ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン又はこれらの混合物である請求項1に記載のマスキングフィルム」(摘示記載(2-2))が記載されている。
この請求項4に記載された「低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン」はいずれも「ポリエチレン」の範疇に属するものであり、「ポリオレフィンが・・・ポリプロピレン、・・・ポリエチレン又はこれらの混合物である」との記載からみて、このポリオレフィンは、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物、即ちブレンド物を含むものであるということができる。
そして、一般に、マスキングフィルムはテープあるいはシート状で用いられるものであるから、引用例2の特許請求の範囲には、「ポリプロピレン及びポリエチレンのブレンド物からなるマスキングテープおよびシート用フィルム」の発明が記載されているものということができる。
そこで、本件補正発明と引用例2の特許請求の範囲に記載された発明とを対比すると、後者における「ポリプロピレン及びポリエチレンのブレンド物」が、前者における「下記の成分(1)の2種以上のブレンド物、または(1)と(2)のブレンド物・・・(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、・・・からなる群から選択されるポリオレフィン」に包含されることは明らかであり、フィルムが製膜によって得られることは自明であるから、本件補正発明と引用例2の特許請求の範囲に記載された発明とは、ともに、「ポリエチレン及びポリプロピレンのブレンド物を製膜したマスキングテープおよびシート用フィルム」である点で一致しているが、
(あ)(マスキングテープおよびシート)が「車両塗装用」である
という本件補正発明の構成について引用例2の特許請求の範囲には直接記載されてはいない点で、これらの発明の間には一応の相違が認められる。
しかしながら、引用例2には、その発明の詳細な説明に、「本発明は、静電吹付塗装時に塗料が付着しないように防護したい領域を被覆するための帯電防止導電性マスキングフィルムに係わる。静電吹付塗装はRansburg塗装という通称で知られており、自動車、トラック、冷蔵庫、キャビネット等の部品の塗装に広く使用されている」(摘示記載(2-3))と記載されており、引用例2の特許請求の範囲に記載された発明が自動車、トラック等の部品の塗装に用いられることが開示されているのであるから、この点は、実質的な相違点とはいえない。
したがって、本件補正発明は、引用例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(ii)引用例6との対比
引用例6には、その特許請求の範囲に「マスキングテープ用感圧接着剤組成物」(摘示記載(6-1))の発明が記載されており、この発明が、「自動車のバンバーや外板等の塗装の際に用いられるマスキングテープ用の感圧接着剤組成物に関する」(摘示記載(6-2))ものであること、及び当該感圧接着剤組成物を塗工する支持体のプラスチックフィルムとして、「ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる」(摘示記載(6-3))ことも記載されている。
そして、上記のとおり、フィルムが製膜によって得られることは自明であり、また一般に、マスキングフィルムはテープあるいはシート状で用いられるものであるから、引用例6には、「ポリエチレン又はポリプロピレンを製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルム」の発明が記載されているものということができる。
そこで、本件補正発明と引用例6に記載された発明とを対比すると、引用例6に記載された発明における「ポリエチレン又はポリプロピレン」は「ポリオレフィン」の概念に属するものであり、一方、本件補正発明は「成分(1)の2種以上のブレンド物・・・(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、・・・からなる群から選択されるポリオレフィン」を製膜する場合を含むから、これらの発明は、ともに、「ポリオレフィンを製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルム」である点で一致しているが、本件補正発明がポリオレフィンとしてポリエチレン、ポリプロピレン等の「ブレンド物」を用いるのに対して、引用例6に記載された発明においてはポリエチレン又はポリプロピレンを用いる点で、これらの発明の間には一応の相違が認められる。
しかしながら、上記のように引用例2には、マスキングフィルム用ポリオレフィンとして「・・・、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン又はこれらの混合物」(摘示記載(2-2))を用いることが記載されており、ポリプロピレン及びポリエチレンの単独使用並びにこれらの混合物の使用が選択肢として並列的に開示されているところからみて、引用例6に記載された発明において、ポリエチレン又はポリプロピレンに代えて本件補正発明のようにポリエチレンとポリプロピレンのブレンド物を用いるようにする点に、特に困難性はないものというべきである。
そして、本件補正発明においては「ブレンド物」を構成する各成分の配合量については何ら特定されておらず、主成分に対して副成分がごく少量含まれる場合も包含されているのであり、本件補正後の明細書の記載からみても、ポリエチレン等を単独使用した場合に比して、副成分をブレンドした場合には配合量の多少によらず常に顕著な作用効果を奏するものと認めるべき根拠を見出すことができない。
したがって、本件補正発明は、引用例2の記載事項を参酌して、引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
上記のとおり平成14年8月19日付の手続補正は却下された。
本願の請求項2に係る発明(本願発明)は、当該補正前に提出された平成13年8月31日付の手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「下記の成分(1)、または(1)と(2)のブレンド物を製膜した車両塗装マスキングテープおよびシート用フィルム(但し、ポリエチレン及びポリプロピレンのみからなるものを除く)。
(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンまたはプロピレンとα-オレフィンの共重合体であるハイα-オレフィン樹脂、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとエチルアクリレートの共重合体、エチレンとメチルメタクリレートの共重合体、エチレンを主成分とするポリマー連鎖間に金属イオン結合を有するアイオノマー樹脂およびエチレン-プロピレン-ジエン共重合体からなる群から選択されるポリオレフィンの1種または2種以上のブレンド物
(2)スチレン系エラストマー(SBC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)およびポリアミド系エラストマー(TPAE)からなる群から選択される熱可塑性エラストマー」
そして、上記のとおり、平成14年8月19日付の手続補正は特許請求の範囲を限定的に減縮する補正であり、補正前の本願発明は補正後の本件補正発明を下位概念として包含するものであるから、上記のように本件補正発明が引用例2に記載された発明であり、また、引用例2の記載事項を参酌して、引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も本件補正発明と同様の理由によって、引用例2に記載された発明であり、また、引用例2の記載事項を参酌して、引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同法第29条第2項の規定に違反するので、特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-09 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願平6-139144
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
P 1 8・ 575- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 栄和  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 船岡 嘉彦
藤原 浩子
発明の名称 塗装マスキングテープおよびシート用フィルム  
復代理人 齋藤 房幸  
代理人 津国 肇  
復代理人 伊藤 佐保子  
代理人 篠田 文雄  

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