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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F17D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F17D
管理番号 1129862
審判番号 不服2004-11983  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-10 
確定日 2006-01-18 
事件の表示 平成 8年特許願第316297号「複数のポンプ場監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月16日出願公開、特開平10-160100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年11月27日の出願であって、平成16年4月22日付け(発送日 同年5月11日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月9日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年7月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数のポンプ場それぞれに設けられて各ポンプ場の情報信号を送信する複数の子局側監視装置と、
中央管理所に設けられて上記複数の子局側監視装置からの情報信号を受信する親局側監視装置とからなり、
上記各子局側監視装置は、ポンプ場の水位、ポンプ電流値を含むアナログ信号のデータを常時サンプリングする手段、そのサンプリングデータの所定時間分を記憶するデータ記憶手段および異常発生時にその異常発生直前の所定時間分の記憶データを含む情報信号を送信する手段を備えており、
上記親局側監視装置は、上記子局側監視装置から送信されてくる情報信号のうち異常発生直前の所定時間分の記憶データから異常原因の推定もしくは診断を行なう異常原因解明手段を備えていて、
この親局側監視装置の異常原因解明手段は、異常発生直前の所定時間分の水位とポンプ電流値の時間変化をトレンドグラフで表示して、「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という異常原因の推定を補助する手段であることを特徴とする複数のポンプ場監視装置。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「異常原因の推定を補助する手段」について「「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-298375号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

「本発明は、地方自治体、大規模工場等に設置される上下水道システムを監視するシステムに関する。」(第2頁第1欄第21行〜第23行)、

「本発明の一実施例である上下水道施設監視システムを図1〜図7により説明する。本実施例の上下水道施設監理システムは地方自治体の上下水道システムを監視するためのものであり、図1に示すように、浄水場、下水処理場等の上下水道施設13、各所の中継ポンプ所14、中央監視所である管轄役所11、及び、本上下水道システムの管理を請け負っている業者12が公衆電話回線15で接続されている。」(第3頁第3欄第17行〜第24行)、

「管轄役所11に備えられる監視装置は、図3、図4に示されるように、パソコン23を使用する。」(第3頁第3欄第30行〜第31行)、

「各上下水道施設には様々な装置が配備されているが、いずれの施設にも、その施設全体の動作を制御及び監視する施設制御装置55が設けられている。図5は浄水場の例を示しており、沈澱槽52の水位を検出する水位計53、及び、沈澱槽52に水を供給するポンプ51の駆動電流を検出する電流計54が検出器の例として示されている。これら検出器からの検出信号は、連続的又は所定の時間間隔で施設制御装置55に送られる。施設制御装置55は、送られてきた検出信号を基に施設各部の動作の制御を行なう(例えば、水位が所定のレベルに達した時点でポンプ51への給電を停止する等)とともに、その検出結果を所定のフォーマットに整えて、所定の記憶装置に記憶しておく。」(第3頁第4欄第9行〜第21行)、

「アプリケーションレイヤで施設制御装置55とパソコン23とが接続されると、施設制御装置55は記憶装置に記憶されている施設内の各検出器の検出結果をまとめてパソコン23上で稼働している上下水道施設監視プログラムに送信する。上下水道施設監視プログラムは、送信されてきたデータを整理し、分かりやすいグラフや表に加工して、複数のウィンドウに表示する。」(第3頁第4欄第40行〜第47行)、

「次に、異常発生時の動作を説明する。施設制御装置55は、各検出器からの検出信号を所定の許容範囲と比較することにより、異常でないか否かを常時判定する。いずれかの検出器からの検出信号に異常が見つかった場合、施設制御装置55は回線制御装置56を用いて直ちに上記手順でパソコン23と回線接続し、上下水道施設監視プログラムに、異常が発生した装置を特定する番号、及び、その異常の内容のデータを送信する。上下水道施設監視プログラムは、図6(a)に示すような地図を表示して、どの施設に異常が発生したのかを地図上に表わすとともに、図6(b)に示すような、その施設内の各装置の接続図を表示して、どの装置に異常が発生したのかを表わす。」(第4頁第5欄第31行〜第43行)。

上記記載事項及び図面の記載からみて、引用文献には、
「複数のポンプ場(上下水道施設13及び中継ポンプ所14)それぞれに設けられて各ポンプ場の検出信号を送信する複数の施設制御装置55と、
管轄役所11に設けられて上記複数の施設制御装置55からの検出信号を受信するパソコン23を利用した監視装置とからなり、
上記各施設制御装置55は、ポンプ場の水位、ポンプ51の駆動電流を含むアナログ信号のデータを常時サンプリングする手段、そのサンプリングデータの所定時間分を記憶する記憶装置および異常発生時に「異常が発生した装置を特定する番号、及び、その異常の内容のデータ」を送信する手段を備えており、
上記パソコン23を利用した監視装置は、上記施設制御装置55から送信されてくる検出信号により、どの施設に異常が発生したのかを地図上に表わすとともに、その施設内の各装置の接続図を表示して、どの装置に異常が発生したのかを表わす手段を備えていることを特徴とする複数のポンプ場監視システム。」
が記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に周知の技術として引用した特開平4-204115号公報(以下、「周知例」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

「設備1が正常に稼動している間は、コントローラ2は設備1の稼動情況を逐次入力し、その入力した稼動情況を記憶する。この記憶はデータファイル3に履歴データとしてファイルされることになる(S1〜S3)。ところが、コントローラ2が設備1の異常発生を検知すると、データファイル3から今まで蓄積された全ての履歴データが読み出され、表示部4にはその履歴データが表示される(S4〜S6)。作業者は、この表示されている履歴データに基づいて故障原因を推測し、設備の迅速なる復旧に努めることになる。」(第2頁左上欄第6行〜第16行)、

「設備コントローラ5は設備1の稼動状況を入力すると共に、設備1に異常(故障)が発生したかどうかを常に監視し、その入力した稼動情況をデータファイル3に記憶する。設備1に異常が生じなければ、稼動状況を記憶し続ける(S10〜S12)。設備コントローラ5によって異常が検出されると、データファイル3に今まで記憶されてきた履歴データをモデム6を介して送信する(S13,S14)。この履歴データは、開発部署に設けられている装置に送られることになるが、開発部署では、この履歴データに基づいて故障解析が行われ、故障復旧の指示を出力する。」(第3頁右下欄第5行〜第16行)、

「この履歴データを受信した開発部署では、この履歴データに基づいて、故障を起こした設備の動作をシュミレーションして故障の原因を究明する(S22,S23)。」(第4頁左上欄第7行〜第11行)。

(3)対比
本願補正発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「検出信号」、「施設制御装置55」、「管轄役所11」、「パソコン23を利用した監視装置」、「ポンプ場の水位」、「ポンプ51の駆動電流」、「記憶装置」、「送信する手段」、「複数のポンプ場監視システム」は、その機能に照らし、本願補正発明における「情報信号」、「子局側監視装置」、「中央管理所」、「親局側監視装置」、「ポンプ場の水位」、「ポンプ電流値」、「データ記憶手段」、「送信する手段」、「複数のポンプ場監視装置」にそれぞれ相当する。

したがって、上記両者は、
「複数のポンプ場それぞれに設けられて各ポンプ場の情報信号を送信する複数の子局側監視装置と、
中央管理所に設けられて上記複数の子局側監視装置からの情報信号を受信する親局側監視装置とからなり、
上記各子局側監視装置は、ポンプ場の水位、ポンプ電流値を含むアナログ信号のデータを常時サンプリングする手段、そのサンプリングデータの所定時間分を記憶するデータ記憶手段および異常発生時に情報信号を送信する手段を備えていることを特徴とする複数のポンプ場監視装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、各子局側監視装置は、異常発生時にその異常発生直前の所定時間分の記憶データを含む情報信号を送信する手段を備えているのに対し、引用文献に記載された発明では、各子局側監視装置は、異常発生時に「異常が発生した装置を特定する番号、及び、その異常の内容のデータ」を送信する手段を備えている点。

[相違点2]
本願補正発明では、親局側監視装置は、子局側監視装置から送信されてくる情報信号のうち異常発生直前の所定時間分の記憶データから異常原因の推定もしくは診断を行なう異常原因解明手段を備えているのに対し、引用文献に記載された発明では、親局側監視装置は、子局側監視装置から送信されてくる検出信号により、どの施設に異常が発生したのかを地図上に表わすとともに、その施設内の各装置の接続図を表示して、どの装置に異常が発生したのかを表わす手段を備えているが、本願補正発明にいう異常原因解明手段を備えているとは認められない点。

[相違点3]
本願補正発明では、親局側監視装置の異常原因解明手段は、異常発生直前の所定時間分の水位とポンプ電流値の時間変化をトレンドグラフで表示して、「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という異常原因の推定を補助する手段であるのに対し、引用文献に記載された発明では、本願補正発明にいう異常原因解明手段を備えているとは認められず、またこのような異常原因の推定を補助する手段を備えるものでもない点。

(4)当審の判断
そこで、上記相違点について以下検討する。

[相違点1]について
上記周知例には、子局側監視装置に相当する「工場に設置されている設備を監視、制御するコントロ-ラ5」は、異常発生時にデータファイル3に記憶されてきた履歴データ、すなわち異常発生直前の所定時間分の記憶データを含む情報信号を親局側監視装置に相当する「開発部署に設けられている装置」に送信する手段を備えていることが記載され、この技術は、従来よく知られた周知の技術と認められる。そして、上記周知の技術を引用文献に記載された複数のポンプ場監視装置に施し、各子局側監視装置は、異常発生時にその異常発生直前の所定時間分の記憶データを含む情報信号を送信する手段を備えること、すなわち[相違点1]における本願補正発明の構成とすることは、引用文献に記載のもの及び上記周知の技術がいずれも装置の監視又は診断に関する技術であって、同じ技術分野に属することから、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
上記周知例には、親局側監視装置に相当する「開発部署に設けられている装置」に子局側監視装置に相当する「工場に設置されている設備を監視、制御するコントロ-ラ5」側から送信されてくる履歴データである異常発生直前の所定時間分の記憶データから故障の原因の究明、すなわち異常原因の推定もしくは診断を行なう技術が記載され、これら異常原因の推定もしくは診断を行なう技術は、従来よく知られた周知の技術と認められる。そして、上記周知の技術を引用文献に記載された複数のポンプ場監視装置に施し、親局側監視装置は、子局側監視装置から送信されてくる情報信号のうち異常発生直前の所定時間分の記憶データから異常原因の推定もしくは診断を行なう手段、すなわち異常原因解明手段を備えること、すなわち[相違点2]における本願補正発明の構成とすることは、引用文献に記載のもの及び上記周知の技術がいずれも装置の監視又は診断に関する技術であって、同じ技術分野に属することから、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
引用文献には、親局側監視装置において、「上下水道施設監視プログラムは、送信されてきたデータを整理し、分かりやすいグラフや表に加工して、ウィンドウに表示する」こと、すなわち引用文献には、送信されてきたデータを整理し分かりやすいグラフや表で表示することが記載されているとともに、異常発生時に、データ表示装置は、受け取ったトレンドデータを見やすいようにトレンドグラフとして表わし、異常の原因を迅速に把え、速やかな対応をとれるようにすることは従来周知の技術事項である(必要とあれば、特開平3-52496号公報参照)。しかも、「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という異常は、ポンプ場の異常理由として極めて普通のものであるとともに、ポンプ場の異常のうち「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という異常理由は他の異常理由と比較して多いものと解される。

してみると、親局側監視装置の異常原因解明手段を、異常発生直前の所定時間分の水位とポンプ電流値の時間変化を上記周知の技術のように見やすく、分かりやすいトレンドグラフで表示し、「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という異常原因の推定を補助する手段とすること、すなわち、[相違点3]における本願補正発明の構成とすることは、上記周知の技術を参酌し、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明が奏する作用、効果は、引用文献の記載及び上記周知の技術から当業者が容易に予測することができたものである。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年7月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年1月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数のポンプ場それぞれに設けられて各ポンプ場の情報信号を送信する複数の子局側監視装置と、
中央管理所に設けられて上記複数の子局側監視装置からの情報信号を受信する親局側監視装置とからなり、
上記各子局側監視装置は、ポンプ場の水位、ポンプ電流値を含むアナログ信号のデータを常時サンプリングする手段、そのサンプリングデータの所定時間分を記憶するデータ記憶手段および異常発生時にその異常発生直前の所定時間分の記憶データを含む情報信号を送信する手段を備えており、
上記親局側監視装置は、上記子局側監視装置から送信されてくる情報信号のうち異常発生直前の所定時間分の記憶データから異常原因の推定もしくは診断を行なう異常原因解明手段を備えていて、この親局側監視装置の異常原因解明手段は、異常発生直前の所定時間分の水位とポンプ電流値の時間変化をトレンドグラフで表示して異常原因の推定を補助する手段であることを特徴とする複数のポンプ場監視装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「異常原因の推定を補助する手段」の限定事項である「「ポンプに詰まりが生じている。」、「ポンプが空転している。」という」を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」及び「2.(4)」に記載したとおり、引用文献に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-09 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願平8-316297
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F17D)
P 1 8・ 121- Z (F17D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神崎 孝之内山 隆史  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 会田 博行
櫻井 康平
発明の名称 複数のポンプ場監視装置  
代理人 木村 俊之  
代理人 鈴江 正二  

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