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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1130090
審判番号 不服2003-11074  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-17 
確定日 2006-01-26 
事件の表示 平成 7年特許願第326388号「走査レンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月 6日出願公開、特開平 9-145993〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成7年11月21日の出願であって、平成15年5月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年6月17日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月17日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)平成15年6月17日付けの補正は、平成15年4月11日付け手続補正書の特許請求の範囲に請求項1「光源から発して偏向器により偏向された光束を走査対象面上に結像させる走査レンズにおいて、
前記偏向器側から前記走査対象面側に向けて順に、互いに隣接して配列された第1、第2、第3レンズを備え、
前記第1レンズは、主走査、副走査両方向に負のパワーを有し、副走査方向の負のパワーが主走査方向における負のパワーより強く設定され、
前記第2レンズは、主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、主走査方向の正のパワーが副走査方向における正のパワーより強く設定され、
前記第3レンズは、主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、副走査方向の正のパワーが主走査方向における正のパワーより強く設定され、
前記第2レンズの主走査方向における正のパワーを強く設定することにより、前記第3レンズで発生する副走査方向の像面湾曲を小さくし、
前記第2レンズの副走査方向における正のパワーを弱く設定することにより、各レンズのパワーのバランスをとり、副走査方向の像面湾曲を抑えることを特徴とする走査レンズ。」を「光源から発して偏向器により偏向された光束を走査対象面上に結像させる走査レンズにおいて、
前記偏向器側から前記走査対象面側に向けて順に、
主走査、副走査両方向に負のパワーを有し、副走査方向の負のパワーが主走査方向における負のパワーより強い第1レンズ、
主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、主走査方向の正のパワーが副走査方向における正のパワーより強い第2レンズ、
主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、副走査方向の正のパワーが主走査方向における正のパワーより強い第3レンズ、が互いに隣接して配列されることを特徴とする走査レンズ。」と補正することを含むものである。

(2)平成15年6月17日付け手続補正書の請求項1の補正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(3) むすび
以上のとおりであるから、上記補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1) 平成15年6月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年4月11日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
請求項1
光源から発して偏向器により偏向された光束を走査対象面上に結像させる走査レンズにおいて、
前記偏向器側から前記走査対象面側に向けて順に、互いに隣接して配列された第1、第2、第3レンズを備え、
前記第1レンズは、主走査、副走査両方向に負のパワーを有し、副走査方向の負のパワーが主走査方向における負のパワーより強く設定され、
前記第2レンズは、主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、主走査方向の正のパワーが副走査方向における正のパワーより強く設定され、
前記第3レンズは、主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、副走査方向の正のパワーが主走査方向における正のパワーより強く設定され、
前記第2レンズの主走査方向における正のパワーを強く設定することにより、前記第3レンズで発生する副走査方向の像面湾曲を小さくし、
前記第2レンズの副走査方向における正のパワーを弱く設定することにより、各レンズのパワーのバランスをとり、副走査方向の像面湾曲を抑えることを特徴とする走査レンズ。

(2)原審の拒絶の理由で引用した引用例
引用例1 特開平3-33715号公報
引用例2 特開平7-146437号公報

(2).1 引用例1の記載内容
第1頁右欄第4行には、「本発明は、光走査装置に関する。」
と記載されている。
第2頁左上欄第19行ないし右上欄第4行には、「本発明の光走査装置は「光源装置から略平行な光束を主走査対応方向に長い線像を結像させ、この線像の結像位置の近傍に反射面を有する回転多面鏡により光束を…偏向し、この偏向光束を結像レンズ系により走査面上にスポット状に結像させて走査面を光走査する装置」であり、」
と記載されている。
第3頁左上欄第5行ないし右上欄第4行には、「以下、この実施例に関する具体的なデータを挙げる。結像レンズ系6は3群3枚構成であって、3枚のレンズ61,62,63で構成されている。
この結像レンズ系6に関してriXを回転多面鏡の側から数えてi番目のレンズ面の偏向面内の曲率半径、riYをi番目のレンズ面の偏向直交面…内の曲率半径、…とすると、これらは以下の値を持つ。

i riX riY …
1 -64.60 -64.60 …
2 ∞ 74.12 …
3 -197.00 -197.00 …
4 -95.34 -96.34 …
5 ∞ ∞ …
6 -129.489 -48.125 」
と記載されている。

(2).2 引用例2の記載内容
引用例2の【0001】段落には、
「【産業上の利用分野】
本発明はレーザービームプリンタやデジタル複写機等に用いられる光ビーム走査光学系に関する。」
と記載されている。
引用例2の特許請求の範囲の【請求項1】には、
「【請求項1】 光ビームを偏向手段により偏向させて被走査面を走査する光ビーム走査装置の該偏向手段と被走査面の間に配置される光ビーム走査用光学系において、
前記光学系は、主走査断面のみに正のパワーを有するシリンドリカルレンズ、または、主走査断面に正のパワーを有し副走査断面はゼロに近いパワーしか有しないトーリックレンズから成る第一レンズ、及び、該第一レンズの被走査面側近傍に配置され、主,副走査断面とも正のパワーを有するトーリックレンズより成る第二レンズの2枚より構成され…る光ビーム走査用光学系。」
と記載されている。
引用例2の【0021】段落には、
「…メリジオナル方向(主走査方向)…」
と記載されており、メリジオナル方向は、主走査方向を意味することが理解される。
引用例2の【0022】段落には、
「【0022】…第二レンズ7は、第一レンズ6の後方近傍に配置され、主走査断面,副走査断面ともに正のパワーを有するトーリックレンズとしており、…」
と記載されている。
引用例2の【0023】ないし【0025】段落には、
「【0023】…第二レンズ7の主走査断面における焦点距離をf2a、第一レンズ6及び第二レンズ7の主走査断面における合成焦点距離をfaとするとき、
0.1 の関係を満たすように主走査断面における第二レンズ7のパワーを弱くするのがよい。

【0025】一方、第二レンズ7の副走査断面における焦点距離f2bは、サジタル方向(副走査断面内にあって光軸に直角な方向)の像面湾曲が十分に補正されるように、
0.25 の関係を満たすようにするのが良い。」
と記載されている。
引用例2の【0048】段落には、
「【0048】本発明の第二実施例においては、第一レンズ16が主走査断面のみにパワーを有するシリンドリカルレンズではなくて、主走査断面は正のパワーを有し、副走査断面にはゼロに近い正のパワーしか有さないトーリックレンズとしており、サジタル方向の像面湾曲をよりいっそう良好に補正することに成功している。第二レンズ17は第一実施例の構成とほぼ同じ構成となっている。」
と記載されている。

(2).3 引用例1記載の発明の認定
上記引用例1に記載を参照すると、引用例1には、3群3枚構成の光走査装置用の結像レンズ系であって、光源装置からの光束を回転多面鏡により光束を偏向し、この偏向光束を結像レンズ系により走査面上にスポット状に結像させて走査面を光走査するものであって、回転多面鏡の側から数えて1〜3番目のレンズを有し1番目のレンズは、偏向面、偏向直交面に負のパワーを有し、偏向直交面の負のパワーが偏向面における負のパワーより強く設定され、2番目のレンズは、偏向面、偏向直交面に正のパワーを有し、3番目のレンズは、偏向面、偏向直交面に正のパワーを有し、偏向直交面の正のパワーが偏向面における正のパワーより強く設定される結像レンズ系の発明が記載されている。

(2).4 引用例2記載の発明の認定
引用例2記載の発明の第2実施例として記載された発明(以下、「引用例2の発明2」という。)について検討する。
【0048】段落を参照すると、引用例2の発明2では、第一レンズ16が、主走査断面は正のパワーを有し(即ち主走査方向は正のパワーを有し)、副走査断面にはゼロに近い正のパワーを有し(即ち副走査方向は正のパワーを有し)たトーリックレンズであり、第二レンズ17は第一実施例の構成とほぼ同じ構成である。
そこで、第一実施例の第二レンズについて【0022】段落を参照すると、第二レンズ7は、主走査断面,副走査断面ともに正のパワーを有すると記載されている。
また、【0023】及び【0025】段落の式
0.1 0.25 を掛け合わせると、
0.1×0.25 となり、
0.025 となり、従って、
f2b となる。
これは、第二レンズの副走査断面におけるパワー即ち第二レンズの副走査方向におけるパワーが、第二レンズの主走査断面におけるパワー即ち第二レンズの主走査方向におけるパワーよりも強いことを意味する。
そうすると、引用例2の発明2は、第一レンズが、主走査断面は正のパワーを有し(即ち主走査方向は正のパワーを有し)、副走査断面にはゼロに近い正のパワーを有し(即ち副走査方向は正のパワーを有し)たトーリックレンズであり、第二レンズの副走査方向におけるパワーが、第二レンズの主走査方向におけるパワーよりも強い二枚のレンズ系である。

(3) 対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明を対比する。
引用例1記載の発明の「光源装置」、「回転多面鏡」、「走査面」、「結像レンズ」、「偏向面」及び「偏向直交面」は、本願発明の「光源」、「偏向器」、「走査対象面」、「走査レンズ」、「主走査方向」及び「副走査方向」に相当するから、両者は、
「光源から発して偏向器により偏向された光束を走査対象面上に結像させる走査レンズにおいて、
前記偏向器側から前記走査対象面側に向けて順に、互いに隣接して配列された第1、第2、第3レンズを備え、
前記第1レンズは、主走査、副走査両方向に負のパワーを有し、副走査方向の負のパワーが主走査方向における負のパワーより強く設定され、
前記第2レンズは、主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、
前記第3レンズは、主走査、副走査両方向に正のパワーを有し、副走査方向の正のパワーが主走査方向における正のパワーより強く設定された、走査レンズ。」
において一致し、以下の点で相違する

相違点
本願発明では、第2レンズが「主走査方向の正のパワーが副走査方向における正のパワーより強く設定され」る構成を有するのに対し、引用例1記載の発明では、当該構成の記載がない点で相違(以下、「相違点1」という。)する。

本願発明では、「第2レンズの主走査方向における正のパワーを強く設定することにより、前記第3レンズで発生する副走査方向の像面湾曲を小さくし、
前記第2レンズの副走査方向における正のパワーを弱く設定することにより、各レンズのパワーのバランスをとり、副走査方向の像面湾曲を抑える」との構成を有するのに対し、引用例1記載の発明では、当該構成の記載がない点で相違(以下、「相違点2」という。)する。

相違点1について検討する。
走査レンズ系においては、主走査方向と副走査方向とのパワーが違う構成とすることは極めて一般的な周知事項である(例えば、特開平2-16522号公報、特開平2-171715号公報及び特開平2-42414号公報等がある)。そして、走査レンズ系に使用するレンズ素子として、走査方向と副走査方向とでパワーが同じもの(球面レンズ)を使用することは、製造容易性の観点からは有利であるものの、光学設計の自由度が少なくなり(言い換えれば、収差補正上制約が大きくなり)、走査方向と副走査方向とでパワーが違うもの(アナモフィックレンズ)を使用すれば、製造容易性の観点からは不利であるものの、光学設計の自由度が大きくなる(言い換えれば、収差補正上制約が小さくなる)、ということは技術常識である。
さらに、上記引用例2の【0048】段落に記載されているように、偏光器側の第一レンズが、主走査断面は正のパワーを有し(即ち主走査方向は正のパワーを有し)、副走査断面にはゼロに近い正のパワーを有し(即ち副走査方向は正のパワーを有し)たトーリックレンズであり、第二レンズの副走査方向におけるパワーが、第二レンズの主走査方向におけるパワーよりも強い構成とすることにより、サジタル方向(【0021】段落を参照すると、メリジオナル方向が主走査方向であるから、サジタル方向は、副走査方向である。)の像面湾曲をよりいっそう良好に補正することは、公知発明であること及び上記周知事項等も考慮すると、引用例1に記載された発明の第2レンズにおいて、主走査方向の正のパワーが副走査方向における正のパワーより強く設定する程度のことは、当業者が容易に想到できたことにすぎない。

相違点2について検討する。
相違点2については、上記周知事項等及び引用例2記載の公知発明が有する作用効果を単に構成要件として記載した程度のものにすぎないから、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到できたことにすぎない。

また、本願発明が有する効果についても引用例1に記載された発明、周知事項等及び引用例2に記載された公知発明から予測できた程度のものにすぎない。

(4) むすび
そうすると、本願請求項1に係る発明は、引用例1記載された発明、周知事項等及び引用例2に記載された公知発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-30 
結審通知日 2005-11-30 
審決日 2005-12-15 
出願番号 特願平7-326388
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 561- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 瀬川 勝久
辻 徹二
発明の名称 走査レンズ  
代理人 松岡 修平  

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