• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D
管理番号 1130551
審判番号 不服2004-11732  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-09 
確定日 2006-02-09 
事件の表示 平成10年特許願第 39363号「床暖房パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月31日出願公開、特開平11-237066〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年 2月20日の出願であって、平成16年 4月21日付けで拒絶査定がなされ(平成16年 5月12日発送)、これに対し、同年 6月 9日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成16年 1月19日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明」という。)。
「床材(3) の下方に配置される床暖房パネル(1) において、上記床材(3) に熱を伝える熱源としてのコードヒータ(9) と、コードヒータ(9) を収容する平滑な外郭材(6,7,8) とを備えており、コードヒータ(9) に一体に設けられて、上記外郭材(6,7,8) に貼りつける均熱シート(14)に、空気抜き用の開口形成手段(15,16) が分散配置されており、上記開口形成手段は切れ目(16)であることを特徴とする床暖房パネル。」

3.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-272879号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「本発明は、主として、家屋の発熱床、特に部屋の発熱床の周縁部分に使用される部分発熱床材の改良とその製造方法に関する。」(段落【0001】)
・「図1は本発明にかかる部分発熱床材(A)の一実施例の裏側から見た一部切欠斜視図、図2は第1実施例の縦断面図で、発熱部(H)側では、表面側から矩形表面材(1)、均熱板(3)、発熱体(2)、断熱材(4)及び矩形裏面材(5)と言うように積層されており、・・・(中略)・・・。発熱部(H)の断熱材(4)内には発熱体(2)の温度をコントロールするための制御機器(図示せず)が内蔵されており、(14)は前記制御機器を収納している型材である。・・・(中略)・・・。本実施例では均熱板(3)を使用している例を示しているが、発熱体(2)の上表面にアルミ箔が一体的に積層されている場合は、アルミ箔が均熱板(3)と同一の役目をするため、特に別体の均熱板(3)を用意する必要がない。」(段落【0009】)
・「発熱体(2)としては、ワイヤヒータや電熱性樹脂を積層一体化した面状発熱体が用いられる。本実施例ではワイヤヒータを用いた面発熱体(2)が用いられており、面発熱体(2)の表裏に樹脂層又はアルミ箔が積層されて均熱性の付与や防水処理がなされており、矩形表面材(1)の下面に配置される。また、上記面発熱体(2)表裏には適宜絶縁シートや均熱板(3)が積層され、安全性や熱効率の向上が図られている。」(段落【0012】)
・「この場合、前述のように発熱体(2)の表面にアルミ箔が貼着されていない場合には、別体の均熱板(3)を発熱体(2)と矩形表面材(1)との間に介装することになるが、アルミ箔が貼着されている場合には均熱板(3)は省略する事ができる。このようにして発熱部(H)側を構成する。」(段落【0013】)
以上の記載及び図面によると、引用例1には、
発熱床において、熱源としてのワイヤヒータと、ワイヤヒータを収容する平滑な、矩形表面材、長辺側枠材、短辺側枠材、矩形裏面材とを備えており、ワイヤーヒータに一体的に積層されるアルミ箔が設けられている発熱床(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-28893号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
.「【請求項1】金属箔の下面に発熱線を突出して設けてヒーターを形成すると共に表面板と裏面板の間にこのヒーターを配設し、ヒーターと裏面板の間で発泡材料を注入発泡させて断熱材を充填して形成した床暖房パネルにおいて、金属箔の下面に突出する発熱線の表面の全面に断熱材を密着させて成ることを特徴とする床暖房パネル。【請求項3】金属箔に表裏に開口する小孔を設けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の床暖房パネル。」(特許請求の範囲【請求項1】、【請求項3】)
・「そしてこのヒーター3の金属箔1には上下面に開口する針孔のような直径0.5mm程度の小孔9が穿設してある。この小孔9は上記サーモスタット10や接続チューブ11などの突起物の周辺部に数多く設けてあり、その他の部分にはランダムに形成してある。」(段落【0012】)
・「また断熱材6の上面を金属箔1の下面に密着させたので、金属箔1を介して表面板4の下面に断熱材6を弾接することができ、表面材4と断熱材6の間に隙間ができて断熱材6で表面板4を保持することができないという問題が発生しなくなり、歩行感の良い床暖房パネルを得ることができ、しかも断熱材6で表面板4を保持するために、表面板4にかかる外力がヒーター3の発熱線2に及ばないようにすることができ、発熱線2の断線などを防止することができる。」(段落【0017】)
・「さらにヒーター3の金属箔1には小孔9が形成してあるので、発泡材料が発泡する際にこの小孔9から凹部17の内部の空気を抜くことができ、発泡材料に空気溜まりを発生しにくくすることができ、しかもこの発泡材料で形成される断熱材6に欠肉を発生しないようにすることができる。特にサーミスタ10や接続チューブ11などの突起物周辺では空気溜まりや断熱材6の欠肉が起き易いが、本実施例ではサーミスタ10や接続チューブ11の周辺に小孔9を数多く設けることにより、これらの周辺で空気溜まりや断熱材6の欠肉が起きにくくすることができる。」(段落【0019】)
以上の記載によれば、引用例2には、
床暖房パネルにおいて、熱源としてのコード状ヒーターと、コード状ヒーターを収容する平滑な表面板、額縁材、裏面板とを備えており、コード状ヒーターに密着させて金属箔を設け、金属箔に、空気を抜くための針孔のような直径の小孔を突起物の周辺部に数多く、その他の部分にはランダムに設けた床暖房パネル(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭54-152570号(実開昭56-69888号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「金属箔ヒータ線を2枚の絶縁フィルムで挟んだ面発熱体と抵抗温度特性を有するプラスチック半導体フィルムを2枚の金属箔電極で挟んだ面状温度制御素子とを貼合わせた広面積輻射暖房器において、前記面状温度制御素子および前記面発熱体のヒータ線部を除く部分の少くとも一方に多数の透孔を設けたことを特徴とする広面積輻射暖房器」(実用新案登録請求の範囲)
・「従来の電気カーペットは、その性格上温度制御を必要とし、第1図に示すように、通気性を有する表面(保護)材1と、ピンホールを設けて通気性をもたせた接着フィルム2と、金属箔電極3a,ナイロン等の抵抗温度特性を有するプラスチック半導体フィルムを3b,金属箔電極3cおよび最外層に・・・(中略)・・・、通気性を有する裏面(保護)材5とを積層してホットプレス等で加熱圧着して構成していた。」(第1頁第15行〜第2頁第8行)
・「この考案の一実施例を第5図ないし第7図に示す。すなわち、この電気カーペットは、第5図および第6図に示すように、面発熱体4の金属箔ヒータ線4aの配置場所以外の部分に多数の透孔4cを設けることにより面状発熱体4に通気性をもたせたもので、その他の構成は従来と同様である。」(第3頁第5〜10行)
以上の記載及び図面によると、引用例3には、
ヒータ線を内蔵した面発熱体又は抵抗温度特性を有するプラスチック半導体フィルムを2枚を挟んだ面状温度制御素子に多数の透孔を設けて通気性をもたせるとともに、この表面に、通気性を有する接着フィルムおよび表面材を積層した広面積輻射暖房器(以下、「引用例3発明」という。)が記載されている。

4.対比・判断
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「発熱床」は本願発明の「床暖房パネル」に相当し、以下同様に「ワイヤヒータ」は「コードヒータ」に、「矩形表面材、長辺側枠材、短辺側枠材、矩形裏面材」は「外郭材」に、「一体的に積層され」は「一体に設けられ」に、「アルミ箔」は「均熱シート」に、それぞれ相当するから、両者は、
熱源としてのコードヒータと、コードヒータを収容する平滑な外郭材とを備えており、コードヒータに一体に設けられて、上記外郭材に配置される均熱シートを具備する床暖房パネルの点で一致し、次のア〜ウの点で相違している。
ア.本願発明の床暖房パネルは、床材の下方に配置され、床材に熱を伝えるものであるのに対し、引用例1発明の床暖房パネルは、床材の下方に配置され、床材に熱を伝えるとの記載はない点。
イ.本願発明の均熱シートは、外郭材に貼りつけるものであるのに対し、引用例1発明の均熱シートは、外郭材に一体に積層されるものであり、外郭材に貼りつけるとの記載はない点。
ウ.本願発明の均熱シートは、空気抜き用の開口形成手段が分散配置されており、上記開口形成手段は切れ目であるのに対し、引用例1発明の均熱シートは、該構成についての記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点アについて検討する。
床暖房パネルを床材の下方に配置し、床材に熱を伝えるようにした点は、本願出願前、周知の技術である(特開平9-287753号公報、特開平9-280582号公報参照。)。
そうすると、引用例1発明の床パネルを床材の下方に配置し、床材に熱を伝えるようにした点は、当業者であれば、周知の技術に基づいて、容易に想到し得たことである。
次に、相違点イについて検討する。
均熱シートと外郭材との関連構成につき、両者を近接配置することは、当該技術分野において、本願出願前、周知である(例を挙げると、特開平8-303801号公報では「固定され」とあり、特開平7-224524号公報では、「分離不能に一体化し」とあり、特開平1-196428号公報では、「接着」とある。)。
そして、引用例1発明において、均熱シートは、どのようにして外郭材に積層されるかについての記載はないが、貼りつけることによる積層を排除する記載は見当たらない。
また、シートを板状部材に貼りつけて積層すること自体は、一般的に行われることである。
そうすると、引用例1発明において、均熱シートを外郭材に貼りつけた点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、相違点ウについて検討する。
引用例2発明において、均熱シート(「金属箔」として記載されている。以下同)に、空気抜き用の開口形成手段(「空気を抜くための小孔」)が分散配置され(「突起物の周辺に数多く、その他の部分にはランダムに設け」)たものが記載されている。
また、引用例3発明においては、シート間の空気溜まりが生じないように、シート状の伝熱部材(「面発熱体」、「面状温度制御素子」)に空気抜き用の開口形成手段(「透孔」)を形成する技術や、表面材との接着部材(「接着フィルム」)に空気抜き用開口(「ピンホール」)を設けて通気性をもたせる技術が記載されている。
従来、床暖房パネルにおいて、内部に空気溜まりを形成しないようにすることは、よく知られた課題であり、空気溜まりを形成しないようにする課題は、引用例1発明においても内在的に具備しているものと考えられる。
そして、開口を設けるに際し、これを大きくすると、空気抜きは達成できるが、強度を損ねる等、開口を設けられる部材が持つ本来の機能を損ねることは明らかである。
そうすると、空気抜き用開口を形成するについて、開口をどのような形状とするかは、所望の機能を達成するために、当業者であれば適宜選択し得た設計的事項である。
以上のことから、引用例1発明において、均熱シートに空気抜き用の開口形成手段を分散配置し、開口形成手段を切れ目とした点は、引用例2発明、引用例3発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する作用効果をみても、引用例1発明ないし引用例3発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1発明ないし引用例3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明ないし引用例3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-30 
結審通知日 2005-12-06 
審決日 2005-12-19 
出願番号 特願平10-39363
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 克彦  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 東 勝之
岡本 昌直
発明の名称 床暖房パネル  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ